説明

金属製機械部品の探傷方法及び探傷装置

【課題】探傷機構を既存のNC装置に組み込むことによって、機械部品に対する探傷プローブの走査を自動化することにより、機械部品の欠陥判別操作を自動化、且つ、無人化することを可能にし、以て探傷検査の高効率化と低コスト化を実現し得る金属製機械部品の探傷方法及び探傷装置を提供することを課題とする。
【解決手段】探傷プローブ2と、探傷プローブ2を回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニット3と、回転ユニット3に接続される画像処理装置とを含んで成る探傷手段を備えた機械部品の探傷装置である。探傷プローブ2は、回転ユニット3がNC装置5のコラム6のスライド部7に設置されてスライド部7と共に移動することにより、及び/又は、機械部品11がそれをチャックするNC装置のテーブル8と共に移動することにより、機械部品11に沿って移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリンダブロックのような金属製機械部品につき、製造後に探傷プローブを用いて巣穴(空洞)、傷等の欠陥の有無を判別するために行う探傷方法及び探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、マシニングセンター等によって製造した機械部品の表面または金属組織内に存在する可能性のある巣穴や傷等の欠陥の有無を判別するための探傷方法としては、探傷プローブで採得した探傷データを画像処理装置(パソコン)で画像処理する探傷方法が知られている。
【0003】
上記従来の探傷方法において用いる探傷装置は、マシニングセンター等の工作機械とは別体であって、それによる探傷検査は、探傷プローブを製造後の機械部品の外表面や穿孔部の内周面に沿って手動操作によって移動させることにより行っていた。従って、どうしても検査に時間と手間がかかるだけでなく、機械部品の精度にもよるが、手動操作によるために均一な走査ができず、均質な検査が期待できないという問題があった。
【0004】
ICパッケージや配線等の欠陥を判別する超音波探傷装置も知られているが、これらは単一用途用に構成されたもので、探傷プローブの走査機構を備えた独立の装置であって、高価なものとなる。
【特許文献1】特開昭62−115357号公報
【特許文献2】特開平7−27752号公報
【特許文献3】特開平8−75718号公報
【特許文献4】特開平10−54826号公報
【特許文献5】特開2000−149027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の探傷装置による探傷検査の場合は、探傷プローブの走査を手動操作で行っていたために時間と手間がかかって検査効率が悪く、また、均質な検査が期待できないという問題があり、探傷プローブの走査機構を備えた独立の装置の場合は、高価となるという問題がある。
【0006】
そこで本発明はそのような問題のない、即ち、探傷機構を既存のNC装置に組み込むこ
とによって、機械部品に対する探傷プローブの走査を自動化することにより、機械部品の欠陥判別操作を自動化、且つ、無人化することを可能にし、以て探傷検査の高効率化と低コスト化を実現し得る金属製機械部品の探傷方法及び探傷装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、探傷プローブと、前記探傷プローブを回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニットと、前記回転ユニットに接続される画像処理装置とを含んで成る探傷手段を用いた機械部品の探傷方法であって、前記回転ユニットをNC装置のコラムのスライド部に設置すると共に前記機械部品を前記NC装置のテーブル上においてチャックさせ、前記回転ユニットを前記コラムのスライド部と共に移動させ、及び/又は、前記機械部品を前記テーブルと共に移動させることにより、前記探傷プローブを前記機械部品に沿って移動させて探傷することを特徴とする金属製機械部品の探傷方法である。
【0008】
上記課題を解決するための請求項2に係る発明は、探傷プローブと、前記探傷プローブを回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニットと、前記回転ユニットに接続される画像処理装置とを含んで成る探傷手段を備えた機械部品の探傷装置であって、探傷検査に際して前記探傷プローブが、前記回転ユニットが前記NC装置のコラムのスライド部に設置されて前記コラムのスライド部と共に移動することにより、及び/又は、前記機械部品がそれをチャックする前記NC装置のテーブルと共に移動することにより、前記機械部品に沿って移動可能であることを特徴とする金属製機械部品の探傷装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のとおりであって、探傷機構を既存のNC装置に組み込むことにより、機械部品に対する探傷プローブの走査を自動化したので、機械部品の探傷操作を自動化、且つ、無人化することが可能となり、以て機械部品の探傷検査の高効率化、均質化並びに低コスト化を可能にし、且つ、検査の信頼性を高め得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に依拠して説明する。図1は本発明に係る探傷方法を実施するための本発明に係る探傷装置1の外観例を示す簡略正面図であり、図2はその簡略平面図であり、図3は、その要部斜視図である。
【0011】
探傷装置1は、探傷プローブ2と、探傷プローブ2を回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニット3と、アンプ4を介して回転ユニット3に接続される図示せぬ画像処理装置(パソコン)とから成る探傷手段を既存のNC装置5に組み込んだものである。画像処理装置は、通例、NC装置5の制御盤室9内に配置される。
【0012】
回転ユニット3内には、探傷プローブ2を軸支するための軸受部と、探傷プローブ2を回転させるための減速モーターとが配備される。探傷プローブ2は、それを支持する回転ユニット3がNC装置5のコラム6のスライド部7に設置されることによって、スライド部7の動きに追随することになる。
【0013】
コラム6のスライド部7は、NC装置5の本来の機能に基づいてX、Y、Zの各軸方向に移動するので、予めプログラミングしておくことにより、探傷プローブ2の動きを、検査対象である各機械部品1の形状に合ったものとすることができる。かくして、回転ユニット3がスライド部7と一体に移動することにより、探傷プローブ2を機械部品11の形状に合わせて、X、Y、Zの各軸方向に走査させることが可能となるのである。そして、本発明に係る探傷装置においては、探傷プローブ2は、回転ユニット3の作用で回転することにより、広範囲に探傷データを採得することになる。
【0014】
機械部品11は、NC装置5のテーブル8上においてチャックされる。通例、探傷検査中、機械部品11(テーブル8)の方は移動させず、探傷プローブ2のみを移動させるが、逆に、探傷プローブ2の方を固定しておいて、機械部品11(テーブル8)の方を移動させるようにすることもできる。あるいは、探傷プローブ2と機械部品11の双方を移動させるようにすることもできる。
【0015】
探傷プローブ2としては、例えば、レーザーファイバーセンサーを用い、これをX、Y軸方向に移動させ、また、Z軸方向に所定ピッチごとに昇降させて、各停止位置において探傷プローブ2を回転ユニット3の作用で回転させて、穿孔部12の内周面の探傷データを採得する。このようにしてレーザー探傷データを採得し、これを画像処理装置に取り込んで画像処理を行うが、そこにおける画像処理装置方法は、一般的な方法によることができるので、詳細な説明は省略する。
【0016】
このように、本発明に係る探傷方法及び探傷装置においては、探傷プローブ2の走査機能を独立して持たず、既存のNC装置5に取り付けることによってNC装置5の機能を利用するものであるため、簡易且つ低コストに構成できる利点がある。また、NC装置5の機能を利用するため、検査対象である機械部品11に合わせての探傷プローブ2の動きの変更が容易であり、且つ、その動きも各機械部品11の種類に応じて一定のものとなるので、均質な検査が可能となり、検査の信頼性も高まる。
【0017】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る機械部品の探傷装置の簡略正面図である。
【図2】本発明に係る機械部品の探傷装置の簡略平面図である。
【図3】本発明に係る機械部品の探傷装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 探傷装置
2 探傷プローブ
3 回転ユニット
4 アンプ
5 NC装置
6 コラム
7 スライド部
8 テーブル
9 制御盤室
11 機械部品
12 穿孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探傷プローブと、前記探傷プローブを回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニットと、前記回転ユニットに接続される画像処理装置とを含んで成る探傷手段を用いた機械部品の探傷方法であって、前記回転ユニットをNC装置のコラムのスライド部に設置すると共に前記機械部品を前記NC装置のテーブル上においてチャックさせ、前記回転ユニットを前記コラムのスライド部と共に移動させ、及び/又は、前記機械部品を前記テーブルと共に移動させることにより、前記探傷プローブを前記機械部品に沿って移動させて探傷することを特徴とする金属製機械部品の探傷方法。
【請求項2】
探傷プローブと、前記探傷プローブを回転可能に支持し且つ回転駆動する回転ユニットと、前記回転ユニットに接続される画像処理装置とを含んで成る探傷手段を備えた機械部品の探傷装置であって、探傷検査に際して前記探傷プローブが、前記回転ユニットが前記NC装置のコラムのスライド部に設置されて前記コラムのスライド部と共に移動することにより、及び/又は、前記機械部品がそれをチャックする前記NC装置のテーブルと共に移動することにより、前記機械部品に沿って移動可能であることを特徴とする金属製機械部品の探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−281516(P2008−281516A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128031(P2007−128031)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(394021605)豊田油気株式会社 (2)
【Fターム(参考)】