金属酸化物または金属の微粒子の製造方法
【課題】製造安定性、製造量、製造効率を向上させることができる金属酸化物または金属の微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、溶液生成工程で生成された溶液を複数の超音波振動子で振動させ、溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法である。
【解決手段】金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、溶液生成工程で生成された溶液を複数の超音波振動子で振動させ、溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成分を含む溶液のミストを加熱処理することによる、金属酸化物または金属の微粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイス、二次電池、燃料電池、触媒、環境浄化材料および生体材料などの分野において、高性能化および/または性能の高機能化が要求されており、微粒子が注目されている。
【0003】
微粒子の製造技術として気相法がある。また、試験装置レベルで、アークプラズマに代表されるプラズマ法が存在する。しかしながら海外の技術も含めて生産能力が非常に低く、微粒子を量産する装置は存在しない。
【0004】
この他、微粒子の製造技術として液相法がある。例えば、ゾル−ゲル法または水熱法は工業的に量産可能な設備も存在するが、溶媒から微粒子を分離する技術が必要なため、その後の乾燥・焼成工程で凝集するなどの課題がある。そこで、最近では、このような欠点を補う目的で、噴霧熱分解法が提案されている(例えば特許文献1〜11参照)。
【0005】
微粒子を効率的に製造するには、前駆体を微粒化し、それを効率的に捕集する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−253469号公報
【特許文献2】特開平10−218608号公報
【特許文献3】特許2001−233618号公報
【特許文献4】特開平8−170112号公報
【特許文献5】特開2003−313607号公報
【特許文献6】特開2005−75691号公報
【特許文献7】特開2007−83111号公報
【特許文献8】特開2005−183004号公報
【特許文献9】特開2007−238402号公報
【特許文献10】特開2003−19427号公報
【特許文献11】特開2004−161533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来の噴霧熱分解法による微粒子の製造方法は、連続プロセスであることから微粒子の量産装置として活用することができる。しかし、超音波振動子によるミスト発生装置では、ミストを大量に発生させることが困難である。また、熱分解効率が低いなどといった課題もある。
【0008】
なお、特許文献1〜特許文献3に記載の技術は、ミスト発生装置に二流体ノズルが使用されているため、目的の粒径の粒子を製造することが困難である。
【0009】
また、特許文献4〜特許文献6に記載の技術は、超音波振動子によるミスト発生装置であるが、ミスト発生量が少なく、量産に適していない。
【0010】
また、特許文献7〜特許文献9に記載の技術は、ミストの熱処理を熱風または火炎で行うものであるが、廃熱を利用していない。
【0011】
特許文献10および特許文献11に記載の技術は、KNO3、NaNO3などの低融点化合物を水溶液に含ませて、噴霧熱分解を行い、粒子形成後、粉砕することで100nm以下の酸化物または金属粒子を得る技術である。しかし、K、Naなどが粒子に含まれるために、電子材料、二次電池、磁性体、生体材料などへ適用することができない。
【0012】
本発明は、製造安定性、製造量、製造効率を向上させることができる金属酸化物または金属の微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面は、金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、前記溶液生成工程で生成された前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法である。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を、好適に生成することができる。
【0014】
また、本発明の他の側面において、前記溶液生成工程では、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成することを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0015】
また、本発明の他の側面において、前記溶液生成工程では、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成し、前記ミスト発生工程では、前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液から粒径が100nm〜3000nmの液滴によるミストを発生させることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0016】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理することを特徴とする。これによれば、好適な加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0017】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、火炎を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0018】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0019】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、電気加熱による輻射熱を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0020】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、均等な角度で配置された複数のガスバーナーそれぞれによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、最小限の燃焼ガス量で加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0021】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、ミストの流通方向上流側の先端の位置にカバーを設置した前記ガスバーナーによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、ガスバーナーへの、ミストおよび/または生成された微粒子の付着を抑制可能で、付着に起因した失火が起こらず、連続したガスバーナーの燃焼を実現することができる。
【0022】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、粒径が50nm〜500nmの金属酸化物または金属の微粒子が生成されることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0023】
また、本発明の他の側面において、前記ミスト発生工程では、ミストの発生量を4リットル/時間まで可能とすることを特徴とする。これによれば、好適に加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0024】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程での金属酸化物または金属の微粒子の生成時間が1分内であることを特徴とする。これによれば、好適な加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0025】
また、本発明の他の側面において、前記ミスト発生工程は、前記溶液の温度が一定の温度に保持された状態で、ミストの発生が連続的に行われることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を連続的に生成することができる。生成される、金属酸化物または金属の微粒子の粒径および/または化学組成などへの影響を防止することが可能となる。
【0026】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、前記加熱工程で用いられた熱の廃熱が利用されることを特徴とする。これによれば、製造時の消費エネルギーを削減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製造安定性、製造量、製造効率を向上させることができる金属酸化物または金属の微粒子の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】微粒子製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】ミスト発生装置の発生時間と装置温度との関係を示す図である。
【図3】超音波振動子の個数と1時間当たりのミスト発生量との関係を示す図である。
【図4】熱処理炉の概略を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、ガスバーナーの配置および概略構成を示す図である。
【図6】酸化亜鉛粉体の粉末X線回折図である。
【図7】酸化亜鉛粉体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】酸化亜鉛粉体の試薬濃度と粒径および1時間当たりの製造量との関係を示す図である。
【図9】銀粉体の粉末X線回折図である。
【図10】銀粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の粉末X線回折図である。
【図12】サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成(工程)において、所定の構成(工程)を省略することもできる。
【0030】
(微粒子の製造方法および微粒子製造装置)
本実施形態の製造方法は、金属酸化物または金属の微粒子、例えばナノ粒子の製造方法であって、噴霧熱分解法を含み、これを利用するものである。本実施形態の製造方法は、溶液生成工程とミスト発生工程と加熱工程とを含む。第1番目の工程である溶液生成工程では、金属成分を1種類以上含む溶液が調整される。例えば酢酸亜鉛をビーカーに入れ、水に溶解して1モルの水溶液が調製される。
【0031】
本実施形態の製造方法では、微粒子を生成するために、種々の原料試薬、具体的に、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液などを用いることができる。例えば、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属脂肪酸、金属アルコキシド、金属アセチルアセトナートを用いることが可能であり、単に、金属を硝酸、塩酸、硫酸など溶解した水溶液を用いることもできる。有機溶媒としては、例えばアルコールを用いることができる。アルコールは、エタノール以上の1級〜3級のアルコールであれば各種のアルコールを使用することができる。例えば、エタノールもしくはメタノール(1級)、イソプロピルアルコール(2級)または第3ブチルアルコール(3級)を使用することができる。なお、後述する加熱工程を所定の雰囲気中で行う場合、有機金属化合物のアルコール(有機溶媒)溶液を用いることもできる。
【0032】
第2番目の工程であるミスト発生工程では、溶液生成工程で生成された溶液を複数の超音波振動子で振動させ、溶液からミスト(エアロゾル)を発生させる。具体的に、2.4MHzの超音波振動子を40個備えたアクリル製樹脂の加湿装置(後述するミスト発生装置110参照)に入れて、4L/時間でミストを発生させる。なお、超音波振動子としては、例えば、本田電子株式会社製の「HM−2412」を採用することができる。
【0033】
ミスト発生工程において、超音波振動子の個数は、上記40個に限定されるものではなく、加湿装置の容積とミストの発生量とに応じて増減してもよい。加湿装置の超音波振動子の周波数は1.6MHzのものを用いてもよい。
【0034】
溶液のミスト発生にともなう発熱による超音波振動子の劣化を避けるため、冷却機構を用いて超音波振動子を冷却するとよい。具体的に、超音波振動子の周囲に冷却水を循環させて冷却するとよい。なお、冷却は、ファンによる空冷とすることもできる。溶液の温度は、均一に保持される。例えば、24時間連続稼働させる場合、溶液の温度は24時間均一に保たれる。
【0035】
溶液から発生させたミストの濃度は、1リットル当たり0.1モル〜2モルの範囲に設定される。ミストを構成する液滴(ミスト液滴)は、粒径が100nm〜3000nmに設定される。
【0036】
第3番目の工程である加熱工程では、ミスト発生工程で発生させたミストを、加熱空間をキャリアーガスによって流通させながら300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理する。すなわち、加熱空間を流通するミストは、300℃〜900℃の温度範囲で加熱され、乾燥し熱分解する。ミストを流通させるキャリアーガスには、例えば空気が用いられる。空気以外に、窒素ガス、アルゴンガス、アルゴン−水素混合ガス、窒素−水素混合ガスのいずれか1つを用いてもよい。ミストを加熱する温度は、生成される金属酸化物または金属の結晶化温度に応じて適宜変更される。結晶化温度を考慮したとき、所定の金属などでは、この温度範囲外の温度で加熱されることもある。加熱工程によって、粒径が50nm〜500nmまでの球状の微粒子が生成される。加熱工程でのこの微粒子の生成時間は1分内である。生成された微粒子は回収され、微粒子が集合した粉体(微粒子がナノ粒子である場合、ナノ粉体)が得られる。
【0037】
なお、加熱工程で生成され、回収装置150で回収された金属酸化物または金属の微粒子は、焼成工程において、例えば400℃〜900℃の温度範囲で再度熱処理(焼成)される。焼成工程は、電気炉などを用いて、所定の雰囲気中で行われる。
【0038】
本実施形態の製造方法(ミスト発生工程および加熱工程)で用いられる微粒子製造装置100の概略構成について、図1を参照して説明する。微粒子製造装置100は、ミスト発生装置(エアロゾル発生装置)110と、熱処理炉120と、ガスバーナー130と、熱交換器140と、回収装置150とを備える。ミスト発生装置110のこれら構成は、所定の配管などによって接続されている。なお、微粒子製造装置100は、全高6000mm(図1を正面視したとき垂直方向の高さ)、全幅3000mm(図1を正面視したとき水平方向の幅)程度の大きさを有する。
【0039】
ミスト発生装置110は、微粒子製造装置100の上部に設置される。ミスト発生装置110は、上記した加湿装置からなり、超音波振動子、冷却機構(図示を省略)などを備える。ミスト発生装置110で発生された溶液のミストは、熱処理炉120内で上下方向に形成された加熱空間を流通するキャリアーガスとともに、この加熱空間を上側から下側に流通する。
【0040】
微粒子製造装置100において、ミストを熱処理炉120内の加熱空間を流通させるためのキャリアーガスの流量は、1リットル/分〜30リットル/分程度に範囲に設定される。ただし、この流量は、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。なお、キャリアーガスの種別は、上記のとおりである。加熱空間を流通するミストは、複数のガスバーナー130による熱によって、300℃〜900℃の温度範囲で加熱され、乾燥し熱分解する。
【0041】
微粒子製造装置100では、粒径が50nm〜500nmまでの球状の微粒子が生成される。生成された微粒子は、回収装置150が備えるバグフィルター(図示を省略)で回収され、この微粒子が集合した粉体が得られる。この微粒子(粉体)は、電子材料から生体材料まで様々な用途に利用することができる。
【0042】
微粒子製造装置100では、ミスト発生装置110を上部に設置した構成としたが、ミスト発生装置を下部に設置した構成の微粒子製造装置とすることもできる。この場合、微粒子製造装置の下部に設置されたミスト発生装置で発生させたミストは、加熱空間を下側から上側に流通するキャリアーガスとともに、この加熱空間を下側から上側に押し上げられながら流通し、上記同様に加熱され、乾燥し熱分解する。
【0043】
ここで、ミスト発生装置110の発生時間と装置温度との関係について、図2を参照し説明する。図2で、横軸はミスト発生時間で、単位は時間である。縦軸はミスト発生装置110内部の水温で、単位は℃である。図2で、「●」は冷却機構を設置した場合、「▲」は設置しない場合の温度変化を示している。冷却機構がない場合は5時間で水溶液の温度が40℃になり、溶液の状態が変化し、超音波振動子の寿命や生成される微粒子の粒径および/または化学組成に影響を与えるため好ましくない。冷却機構を設けることで、24時間でも液温が25℃以下に維持されて、超音波振動子の寿命や生成される微粒子の粒径および/または化学組成などの影響がなく、好適な微粒子を生成することができる。
【0044】
次に、ミスト発生装置(加湿装置)110の超音波振動子の個数とミスト発生量との関係について、図3を参照して説明する。図3で、横軸は超音波振動子の個数で、単位はnである。縦軸は1時間当たりのミスト発生量で、単位はリットル/時間(L/hr)である。1個当たりの発生量は100mLである。超音波振動子の個数を40個にすることで、4リットル/時間まで発生させることが可能となった。
【0045】
説明を微粒子製造装置100に戻し、熱処理炉120について説明をつづける。熱処理炉120は、例えば、直径450mm、長さ4500mm程度の大きさを有する。図4に示すように熱処理炉120内で上下方向に形成された加熱空間は、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとを含む。加熱空間の上側の乾燥ゾーンは、ミスト発生装置110で発生させたミストが導入される側であり、キャリアーガスによって流通するミストは、この範囲で乾燥される。加熱空間の下側の熱分解ゾーンは、生成された微粒子が排出される側であり、乾燥ゾーンで乾燥されたミストは、この範囲で熱分解される。
【0046】
熱処理炉120において、ミストの十分な乾燥を確保するために、熱処理炉120の乾燥ゾーンは1000mm〜2000mmの範囲に設定されるが、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。熱処理炉120において、ミストの熱分解を確保するために、熱処理炉120の熱分解ゾーンは1000mm〜2000mmの範囲に設定されるが、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。
【0047】
熱処理炉120の下部には、螺旋状にかつ均等な間隔で複数のガスバーナー130が設置されている。なお、ガスバーナー130の配置については、後述する。熱処理炉120の中間部には、熱処理炉120からの廃熱を供給するための供給口122が設置されている。図4に示す構成では、供給口122は、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとの境界付近に設けられている。供給口122は、ミストの加熱処理量に応じて、その設置の有無、配置位置を適宜変更してもよく、このような構成に限定されるものではない。
【0048】
供給口122への廃熱の供給は、熱交換器140を介して行われる。例えば、熱処理炉120では、熱交換器140からの200℃の廃熱が加熱処理のエネルギーとして再利用される。熱交換器140から熱処理炉120へ廃熱を供給する速度は、風速3m/秒〜5m/秒の範囲に設定される。ただし、供給速度は、廃熱量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。廃熱を利用する場合、微粒子製造時の消費エネルギーを削減することができる。
【0049】
ガスバーナー130の配置および概略構成について、図5を参照して説明する。熱処理炉120には、複数本のガスバーナー130が、熱処理炉120の円周方向に均等な角度で配置されている。例えば、図5に示すように、6本のガスバーナー130が、円周方向に60°間隔で均等に配置されている。なお、図5(a)では、これら6本のガスバーナー130それぞれに対して、符号「130−1」〜「130−6」を付している。ここで、隣り合う2基のガスバーナー130それぞれは、熱処理炉120の高さ方向においても均等な間隔となるように配置されている。例えば、図5(b)に示すように、ガスバーナー130−1およびガスバーナー130−2、ガスバーナー130−2およびガスバーナー130−3は、熱処理炉120の高さ方向において400mm間隔で配置されている。同じく、ガスバーナー130−5およびガスバーナー130−6(図5(b)で図示を省略)は、熱処理炉120の高さ方向において400mm間隔で配置されている。ガスバーナー130の本数は、熱処理炉120の大きさなどに応じて増減させてもよい。例えば、9本のガスバーナー130が、円周方向に40°間隔で均等に配置されていてもよい。3本のガスバーナー130が、円周方向に120°間隔で均等に配置されていてもよい。さらに、18本のガスバーナー130が、円周方向に20°間隔で均等に配置されていてもよい。すなわち、複数本のガスバーナー130は、360°を均等に分割した間隔で配置されていればよい。
【0050】
なお、図5(a)に図示された熱処理炉120(加熱空間)は、円形の断面形状を有するため、熱処理炉120に配置された複数のガスバーナー130は、配置された状態において熱処理炉120の断面形状に沿った円周上の所定の位置に均等な間隔(60°間隔)で配置されている。熱処理炉120(加熱空間)の断面形状を円形とは異なる形状とすることもできる。具体的には多角形、例えば、正六角形以上の多角形とすることもでき、このような形状とした場合、複数のガスバーナー130は、この形状に沿って均等な間隔で配置される。例えば、正六角形である場合、その各辺の例えば中央部または角部に6本のガスバーナー130をそれぞれ配置してもよい。この場合、ガスバーナー130は、60°間隔で均等に配置される。ガスバーナー130の配置および本数については、断面形状が円形の場合と同様に適宜変更することができる。なお、熱処理炉120(加熱空間)の断面形状が、多角形である場合についても、複数のガスバーナー130を、熱処理炉120の高さ方向において均等な間隔で配置するようにしてもよい。
【0051】
図5(c)に示すように、ガスバーナー130が熱処理炉120に取り付けられた状態で加熱空間内に配置される側のガスバーナー130の先端部の端面には、複数のガス吹出口132が形成されている。ガスバーナー130の先端部には、ガス吹出口132の前方に向けて着火用電極134とカバー136とが取り付けられている。複数のガス吹出口132からは、燃料が吹き出され、吹き出された燃料に対して着火用電極134で着火される。ガスバーナー130の燃料には、LPガスを用いる。着火は設定温度に対してPID(比例、積分、微分の3つの組み合わせで制御する方法)制御で、ON・OFF制御される。燃料としては、LPガス以外に都市ガスを用いてもよい。ガスバーナー130のLPガス使用量は、0.8〜1.5Nm3/時間の範囲に設定される。例えば1Nm3/時間に設定される。ガスバーナー130のガス分圧は、空気とLPガスの比が1:1に設定される。
【0052】
カバー136は、ミストの流通方向の上流側で着火用電極134を覆うことが可能な形状を有し、これを覆うように設置されている。具体的に、微粒子製造装置100では、熱処理炉120内の加熱空間を上側から下側にミストが流通するため、図5(c)に示すようにカバー136は、着火用電極134の上側で、これを覆うように配置されている。なお、ミストの流通が下側から上側である場合、カバー136は、着火用電極134の下側に配置される。カバー136の配置を、ミストの流通方向の上流側の位置とすることで、加熱処理中に着火用電極134に流通するミストおよび/または生成された微粒子が付着せず、その結果、連続着火を実現することができる。
【0053】
回収装置150は、複数本のバグフィルターを備える。例えば、直径110mmで、長さ800mmのバグフィルターを7本備える。回収装置150は、生成された微粒子を吸引し、吸引された微粒子をバグフィルターに付着させ、微粒子を回収する。回収装置150への導入風量は、例えば3m/秒〜20m/秒程度に設定される。回収装置150で微粒子を回収することで、微粒子が集合した粉体が得られる。回収装置150による回収方法は、この他、サイクロン、ガラスフィルター、電気集塵のいずれか1つを用いてもよい。
【0054】
なお、加熱工程における加熱処理には、ガスバーナー130による火炎を熱源とした構成の他、ガスバーナー130による熱風を熱源とすることもできる。電気加熱による輻射熱を熱源とすることもできる。また、上記構成の熱処理炉120の他、マイクロ波誘導炉、赤外線炉、アークプラズマ炉、シリコニット発熱体による加熱炉、スーパーカンタル発熱体による加熱炉を用いてもよい。
【0055】
(実験結果)
上述した本実施形態の製造方法によって生成された、微粒子または微粒子が集合した粉体を対象として、所定の実験を行った。以下、この結果について説明する。
【0056】
酸化亜鉛粒子が集合した酸化亜鉛粉体の粉末X線回折結果について、図6を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図6で上側(「800℃」参照)は、本実施形態の製造方法によって生成され回収された酸化亜鉛粉体を、再度800℃で熱処理(焼成工程参照)したものを対象とし、下側(「As-prepared」参照)は、本実施形態の製造方法によって生成され回収された酸化亜鉛粉体を対象としたものである。図6によれば、粒子(粉体)は、酸化亜鉛へ結晶化していることがわかる。
【0057】
透過型電子顕微鏡による、酸化亜鉛粉体の観察結果について、図7を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の透過型電子顕微鏡(FX−2000)を用いた。観察試料は、酸化亜鉛粉体をイソプロピルアルコールで分散させた溶液を、コロジオン膜を張った銅メッシュへ滴下し、乾燥した後、加速電圧200kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は100nmであった。
【0058】
酸化亜鉛粉体の水溶液中での試薬濃度と粒径および1時間当たりの製造量との関係について、図8を参照して説明する。粒径の測定は走査型電子顕微鏡写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。図8で、「●」は粒径、「▲」は製造量である。図8によれば、試薬濃度が増加すると、粒径および1時間当たりの製造量は、ともに増加することがわかる。
【0059】
銀粒子が集合した銀粉体の粉末X線回折結果について、図9を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図9によれば、本実施形態の製造方法によって生成された粒子(粉体)は、銀へ結晶化していることがわかる。
【0060】
走査型電子顕微鏡による、銀粉体の観察結果について、図10を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡(S−2300)を用いた。観察試料は、イオンコーターで金コーティングした後、加速電圧25kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は300nmであった。
【0061】
サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粒子が集合した酸化セリウム粉体の粉末X線回折結果について、図11を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図11によれば、本実施形態の製造方法によって生成された粒子(粉体)は、酸化セリウムへ結晶化しており、スカンジウムは均一に添加されていることがわかる。
【0062】
走査型電子顕微鏡による、サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の観察結果について、図12を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡(S−2300)を用いた。観察試料は、イオンコーターで金コーティングした後、加速電圧25kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は500nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る製造方法によれば、金属酸化物または金属の微粒子を生成することが可能で、これを提供することができる。そして、安定したミストの発生により金属酸化物または金属の微粒子(粉体)の量産化に貢献することができる。
【0064】
このため、本発明は、微粒子(粉体)の製造の品質の改善ができ、しかも大量生産によりコストダウンが図れる非常に有益なものである。そして、本発明に係る製造方法によって生成された金属酸化物または金属の微粒子(粉体)は、例えば、誘電体材料、強誘電体材料、半導体材料、二次電池用電極材料、フォトニクス結晶、排ガス触媒材料、固体酸化物燃料電池用材料、磁性体材料、光触媒材料、蛍光体材料、歯科充填剤、液晶スペーサー、レーザー発振子、生体材料、ドラッグデリバリーシステム、導電ペースト剤として用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
100 微粒子製造装置
110 ミスト発生装置(加湿装置)
120 熱処理炉
130,130−1〜130−6 ガスバーナー
140 熱交換器
150 回収装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成分を含む溶液のミストを加熱処理することによる、金属酸化物または金属の微粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイス、二次電池、燃料電池、触媒、環境浄化材料および生体材料などの分野において、高性能化および/または性能の高機能化が要求されており、微粒子が注目されている。
【0003】
微粒子の製造技術として気相法がある。また、試験装置レベルで、アークプラズマに代表されるプラズマ法が存在する。しかしながら海外の技術も含めて生産能力が非常に低く、微粒子を量産する装置は存在しない。
【0004】
この他、微粒子の製造技術として液相法がある。例えば、ゾル−ゲル法または水熱法は工業的に量産可能な設備も存在するが、溶媒から微粒子を分離する技術が必要なため、その後の乾燥・焼成工程で凝集するなどの課題がある。そこで、最近では、このような欠点を補う目的で、噴霧熱分解法が提案されている(例えば特許文献1〜11参照)。
【0005】
微粒子を効率的に製造するには、前駆体を微粒化し、それを効率的に捕集する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−253469号公報
【特許文献2】特開平10−218608号公報
【特許文献3】特許2001−233618号公報
【特許文献4】特開平8−170112号公報
【特許文献5】特開2003−313607号公報
【特許文献6】特開2005−75691号公報
【特許文献7】特開2007−83111号公報
【特許文献8】特開2005−183004号公報
【特許文献9】特開2007−238402号公報
【特許文献10】特開2003−19427号公報
【特許文献11】特開2004−161533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来の噴霧熱分解法による微粒子の製造方法は、連続プロセスであることから微粒子の量産装置として活用することができる。しかし、超音波振動子によるミスト発生装置では、ミストを大量に発生させることが困難である。また、熱分解効率が低いなどといった課題もある。
【0008】
なお、特許文献1〜特許文献3に記載の技術は、ミスト発生装置に二流体ノズルが使用されているため、目的の粒径の粒子を製造することが困難である。
【0009】
また、特許文献4〜特許文献6に記載の技術は、超音波振動子によるミスト発生装置であるが、ミスト発生量が少なく、量産に適していない。
【0010】
また、特許文献7〜特許文献9に記載の技術は、ミストの熱処理を熱風または火炎で行うものであるが、廃熱を利用していない。
【0011】
特許文献10および特許文献11に記載の技術は、KNO3、NaNO3などの低融点化合物を水溶液に含ませて、噴霧熱分解を行い、粒子形成後、粉砕することで100nm以下の酸化物または金属粒子を得る技術である。しかし、K、Naなどが粒子に含まれるために、電子材料、二次電池、磁性体、生体材料などへ適用することができない。
【0012】
本発明は、製造安定性、製造量、製造効率を向上させることができる金属酸化物または金属の微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面は、金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、前記溶液生成工程で生成された前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法である。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を、好適に生成することができる。
【0014】
また、本発明の他の側面において、前記溶液生成工程では、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成することを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0015】
また、本発明の他の側面において、前記溶液生成工程では、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成し、前記ミスト発生工程では、前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液から粒径が100nm〜3000nmの液滴によるミストを発生させることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0016】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理することを特徴とする。これによれば、好適な加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0017】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、火炎を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0018】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0019】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、電気加熱による輻射熱を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0020】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、均等な角度で配置された複数のガスバーナーそれぞれによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、最小限の燃焼ガス量で加熱処理に必要な加熱温度を確保することができる。
【0021】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、ミストの流通方向上流側の先端の位置にカバーを設置した前記ガスバーナーによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする。これによれば、ガスバーナーへの、ミストおよび/または生成された微粒子の付着を抑制可能で、付着に起因した失火が起こらず、連続したガスバーナーの燃焼を実現することができる。
【0022】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、粒径が50nm〜500nmの金属酸化物または金属の微粒子が生成されることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0023】
また、本発明の他の側面において、前記ミスト発生工程では、ミストの発生量を4リットル/時間まで可能とすることを特徴とする。これによれば、好適に加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0024】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程での金属酸化物または金属の微粒子の生成時間が1分内であることを特徴とする。これによれば、好適な加熱処理を行うことが可能で、好適な金属酸化物または金属の微粒子を生成することができる。
【0025】
また、本発明の他の側面において、前記ミスト発生工程は、前記溶液の温度が一定の温度に保持された状態で、ミストの発生が連続的に行われることを特徴とする。これによれば、好適な金属酸化物または金属の微粒子を連続的に生成することができる。生成される、金属酸化物または金属の微粒子の粒径および/または化学組成などへの影響を防止することが可能となる。
【0026】
また、本発明の他の側面において、前記加熱工程では、前記加熱工程で用いられた熱の廃熱が利用されることを特徴とする。これによれば、製造時の消費エネルギーを削減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製造安定性、製造量、製造効率を向上させることができる金属酸化物または金属の微粒子の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】微粒子製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】ミスト発生装置の発生時間と装置温度との関係を示す図である。
【図3】超音波振動子の個数と1時間当たりのミスト発生量との関係を示す図である。
【図4】熱処理炉の概略を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、ガスバーナーの配置および概略構成を示す図である。
【図6】酸化亜鉛粉体の粉末X線回折図である。
【図7】酸化亜鉛粉体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】酸化亜鉛粉体の試薬濃度と粒径および1時間当たりの製造量との関係を示す図である。
【図9】銀粉体の粉末X線回折図である。
【図10】銀粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の粉末X線回折図である。
【図12】サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成(工程)において、所定の構成(工程)を省略することもできる。
【0030】
(微粒子の製造方法および微粒子製造装置)
本実施形態の製造方法は、金属酸化物または金属の微粒子、例えばナノ粒子の製造方法であって、噴霧熱分解法を含み、これを利用するものである。本実施形態の製造方法は、溶液生成工程とミスト発生工程と加熱工程とを含む。第1番目の工程である溶液生成工程では、金属成分を1種類以上含む溶液が調整される。例えば酢酸亜鉛をビーカーに入れ、水に溶解して1モルの水溶液が調製される。
【0031】
本実施形態の製造方法では、微粒子を生成するために、種々の原料試薬、具体的に、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液などを用いることができる。例えば、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属脂肪酸、金属アルコキシド、金属アセチルアセトナートを用いることが可能であり、単に、金属を硝酸、塩酸、硫酸など溶解した水溶液を用いることもできる。有機溶媒としては、例えばアルコールを用いることができる。アルコールは、エタノール以上の1級〜3級のアルコールであれば各種のアルコールを使用することができる。例えば、エタノールもしくはメタノール(1級)、イソプロピルアルコール(2級)または第3ブチルアルコール(3級)を使用することができる。なお、後述する加熱工程を所定の雰囲気中で行う場合、有機金属化合物のアルコール(有機溶媒)溶液を用いることもできる。
【0032】
第2番目の工程であるミスト発生工程では、溶液生成工程で生成された溶液を複数の超音波振動子で振動させ、溶液からミスト(エアロゾル)を発生させる。具体的に、2.4MHzの超音波振動子を40個備えたアクリル製樹脂の加湿装置(後述するミスト発生装置110参照)に入れて、4L/時間でミストを発生させる。なお、超音波振動子としては、例えば、本田電子株式会社製の「HM−2412」を採用することができる。
【0033】
ミスト発生工程において、超音波振動子の個数は、上記40個に限定されるものではなく、加湿装置の容積とミストの発生量とに応じて増減してもよい。加湿装置の超音波振動子の周波数は1.6MHzのものを用いてもよい。
【0034】
溶液のミスト発生にともなう発熱による超音波振動子の劣化を避けるため、冷却機構を用いて超音波振動子を冷却するとよい。具体的に、超音波振動子の周囲に冷却水を循環させて冷却するとよい。なお、冷却は、ファンによる空冷とすることもできる。溶液の温度は、均一に保持される。例えば、24時間連続稼働させる場合、溶液の温度は24時間均一に保たれる。
【0035】
溶液から発生させたミストの濃度は、1リットル当たり0.1モル〜2モルの範囲に設定される。ミストを構成する液滴(ミスト液滴)は、粒径が100nm〜3000nmに設定される。
【0036】
第3番目の工程である加熱工程では、ミスト発生工程で発生させたミストを、加熱空間をキャリアーガスによって流通させながら300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理する。すなわち、加熱空間を流通するミストは、300℃〜900℃の温度範囲で加熱され、乾燥し熱分解する。ミストを流通させるキャリアーガスには、例えば空気が用いられる。空気以外に、窒素ガス、アルゴンガス、アルゴン−水素混合ガス、窒素−水素混合ガスのいずれか1つを用いてもよい。ミストを加熱する温度は、生成される金属酸化物または金属の結晶化温度に応じて適宜変更される。結晶化温度を考慮したとき、所定の金属などでは、この温度範囲外の温度で加熱されることもある。加熱工程によって、粒径が50nm〜500nmまでの球状の微粒子が生成される。加熱工程でのこの微粒子の生成時間は1分内である。生成された微粒子は回収され、微粒子が集合した粉体(微粒子がナノ粒子である場合、ナノ粉体)が得られる。
【0037】
なお、加熱工程で生成され、回収装置150で回収された金属酸化物または金属の微粒子は、焼成工程において、例えば400℃〜900℃の温度範囲で再度熱処理(焼成)される。焼成工程は、電気炉などを用いて、所定の雰囲気中で行われる。
【0038】
本実施形態の製造方法(ミスト発生工程および加熱工程)で用いられる微粒子製造装置100の概略構成について、図1を参照して説明する。微粒子製造装置100は、ミスト発生装置(エアロゾル発生装置)110と、熱処理炉120と、ガスバーナー130と、熱交換器140と、回収装置150とを備える。ミスト発生装置110のこれら構成は、所定の配管などによって接続されている。なお、微粒子製造装置100は、全高6000mm(図1を正面視したとき垂直方向の高さ)、全幅3000mm(図1を正面視したとき水平方向の幅)程度の大きさを有する。
【0039】
ミスト発生装置110は、微粒子製造装置100の上部に設置される。ミスト発生装置110は、上記した加湿装置からなり、超音波振動子、冷却機構(図示を省略)などを備える。ミスト発生装置110で発生された溶液のミストは、熱処理炉120内で上下方向に形成された加熱空間を流通するキャリアーガスとともに、この加熱空間を上側から下側に流通する。
【0040】
微粒子製造装置100において、ミストを熱処理炉120内の加熱空間を流通させるためのキャリアーガスの流量は、1リットル/分〜30リットル/分程度に範囲に設定される。ただし、この流量は、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。なお、キャリアーガスの種別は、上記のとおりである。加熱空間を流通するミストは、複数のガスバーナー130による熱によって、300℃〜900℃の温度範囲で加熱され、乾燥し熱分解する。
【0041】
微粒子製造装置100では、粒径が50nm〜500nmまでの球状の微粒子が生成される。生成された微粒子は、回収装置150が備えるバグフィルター(図示を省略)で回収され、この微粒子が集合した粉体が得られる。この微粒子(粉体)は、電子材料から生体材料まで様々な用途に利用することができる。
【0042】
微粒子製造装置100では、ミスト発生装置110を上部に設置した構成としたが、ミスト発生装置を下部に設置した構成の微粒子製造装置とすることもできる。この場合、微粒子製造装置の下部に設置されたミスト発生装置で発生させたミストは、加熱空間を下側から上側に流通するキャリアーガスとともに、この加熱空間を下側から上側に押し上げられながら流通し、上記同様に加熱され、乾燥し熱分解する。
【0043】
ここで、ミスト発生装置110の発生時間と装置温度との関係について、図2を参照し説明する。図2で、横軸はミスト発生時間で、単位は時間である。縦軸はミスト発生装置110内部の水温で、単位は℃である。図2で、「●」は冷却機構を設置した場合、「▲」は設置しない場合の温度変化を示している。冷却機構がない場合は5時間で水溶液の温度が40℃になり、溶液の状態が変化し、超音波振動子の寿命や生成される微粒子の粒径および/または化学組成に影響を与えるため好ましくない。冷却機構を設けることで、24時間でも液温が25℃以下に維持されて、超音波振動子の寿命や生成される微粒子の粒径および/または化学組成などの影響がなく、好適な微粒子を生成することができる。
【0044】
次に、ミスト発生装置(加湿装置)110の超音波振動子の個数とミスト発生量との関係について、図3を参照して説明する。図3で、横軸は超音波振動子の個数で、単位はnである。縦軸は1時間当たりのミスト発生量で、単位はリットル/時間(L/hr)である。1個当たりの発生量は100mLである。超音波振動子の個数を40個にすることで、4リットル/時間まで発生させることが可能となった。
【0045】
説明を微粒子製造装置100に戻し、熱処理炉120について説明をつづける。熱処理炉120は、例えば、直径450mm、長さ4500mm程度の大きさを有する。図4に示すように熱処理炉120内で上下方向に形成された加熱空間は、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとを含む。加熱空間の上側の乾燥ゾーンは、ミスト発生装置110で発生させたミストが導入される側であり、キャリアーガスによって流通するミストは、この範囲で乾燥される。加熱空間の下側の熱分解ゾーンは、生成された微粒子が排出される側であり、乾燥ゾーンで乾燥されたミストは、この範囲で熱分解される。
【0046】
熱処理炉120において、ミストの十分な乾燥を確保するために、熱処理炉120の乾燥ゾーンは1000mm〜2000mmの範囲に設定されるが、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。熱処理炉120において、ミストの熱分解を確保するために、熱処理炉120の熱分解ゾーンは1000mm〜2000mmの範囲に設定されるが、ミストの加熱処理量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。
【0047】
熱処理炉120の下部には、螺旋状にかつ均等な間隔で複数のガスバーナー130が設置されている。なお、ガスバーナー130の配置については、後述する。熱処理炉120の中間部には、熱処理炉120からの廃熱を供給するための供給口122が設置されている。図4に示す構成では、供給口122は、乾燥ゾーンと熱分解ゾーンとの境界付近に設けられている。供給口122は、ミストの加熱処理量に応じて、その設置の有無、配置位置を適宜変更してもよく、このような構成に限定されるものではない。
【0048】
供給口122への廃熱の供給は、熱交換器140を介して行われる。例えば、熱処理炉120では、熱交換器140からの200℃の廃熱が加熱処理のエネルギーとして再利用される。熱交換器140から熱処理炉120へ廃熱を供給する速度は、風速3m/秒〜5m/秒の範囲に設定される。ただし、供給速度は、廃熱量に応じて適宜変更してもよく、この範囲に限定されるものではない。廃熱を利用する場合、微粒子製造時の消費エネルギーを削減することができる。
【0049】
ガスバーナー130の配置および概略構成について、図5を参照して説明する。熱処理炉120には、複数本のガスバーナー130が、熱処理炉120の円周方向に均等な角度で配置されている。例えば、図5に示すように、6本のガスバーナー130が、円周方向に60°間隔で均等に配置されている。なお、図5(a)では、これら6本のガスバーナー130それぞれに対して、符号「130−1」〜「130−6」を付している。ここで、隣り合う2基のガスバーナー130それぞれは、熱処理炉120の高さ方向においても均等な間隔となるように配置されている。例えば、図5(b)に示すように、ガスバーナー130−1およびガスバーナー130−2、ガスバーナー130−2およびガスバーナー130−3は、熱処理炉120の高さ方向において400mm間隔で配置されている。同じく、ガスバーナー130−5およびガスバーナー130−6(図5(b)で図示を省略)は、熱処理炉120の高さ方向において400mm間隔で配置されている。ガスバーナー130の本数は、熱処理炉120の大きさなどに応じて増減させてもよい。例えば、9本のガスバーナー130が、円周方向に40°間隔で均等に配置されていてもよい。3本のガスバーナー130が、円周方向に120°間隔で均等に配置されていてもよい。さらに、18本のガスバーナー130が、円周方向に20°間隔で均等に配置されていてもよい。すなわち、複数本のガスバーナー130は、360°を均等に分割した間隔で配置されていればよい。
【0050】
なお、図5(a)に図示された熱処理炉120(加熱空間)は、円形の断面形状を有するため、熱処理炉120に配置された複数のガスバーナー130は、配置された状態において熱処理炉120の断面形状に沿った円周上の所定の位置に均等な間隔(60°間隔)で配置されている。熱処理炉120(加熱空間)の断面形状を円形とは異なる形状とすることもできる。具体的には多角形、例えば、正六角形以上の多角形とすることもでき、このような形状とした場合、複数のガスバーナー130は、この形状に沿って均等な間隔で配置される。例えば、正六角形である場合、その各辺の例えば中央部または角部に6本のガスバーナー130をそれぞれ配置してもよい。この場合、ガスバーナー130は、60°間隔で均等に配置される。ガスバーナー130の配置および本数については、断面形状が円形の場合と同様に適宜変更することができる。なお、熱処理炉120(加熱空間)の断面形状が、多角形である場合についても、複数のガスバーナー130を、熱処理炉120の高さ方向において均等な間隔で配置するようにしてもよい。
【0051】
図5(c)に示すように、ガスバーナー130が熱処理炉120に取り付けられた状態で加熱空間内に配置される側のガスバーナー130の先端部の端面には、複数のガス吹出口132が形成されている。ガスバーナー130の先端部には、ガス吹出口132の前方に向けて着火用電極134とカバー136とが取り付けられている。複数のガス吹出口132からは、燃料が吹き出され、吹き出された燃料に対して着火用電極134で着火される。ガスバーナー130の燃料には、LPガスを用いる。着火は設定温度に対してPID(比例、積分、微分の3つの組み合わせで制御する方法)制御で、ON・OFF制御される。燃料としては、LPガス以外に都市ガスを用いてもよい。ガスバーナー130のLPガス使用量は、0.8〜1.5Nm3/時間の範囲に設定される。例えば1Nm3/時間に設定される。ガスバーナー130のガス分圧は、空気とLPガスの比が1:1に設定される。
【0052】
カバー136は、ミストの流通方向の上流側で着火用電極134を覆うことが可能な形状を有し、これを覆うように設置されている。具体的に、微粒子製造装置100では、熱処理炉120内の加熱空間を上側から下側にミストが流通するため、図5(c)に示すようにカバー136は、着火用電極134の上側で、これを覆うように配置されている。なお、ミストの流通が下側から上側である場合、カバー136は、着火用電極134の下側に配置される。カバー136の配置を、ミストの流通方向の上流側の位置とすることで、加熱処理中に着火用電極134に流通するミストおよび/または生成された微粒子が付着せず、その結果、連続着火を実現することができる。
【0053】
回収装置150は、複数本のバグフィルターを備える。例えば、直径110mmで、長さ800mmのバグフィルターを7本備える。回収装置150は、生成された微粒子を吸引し、吸引された微粒子をバグフィルターに付着させ、微粒子を回収する。回収装置150への導入風量は、例えば3m/秒〜20m/秒程度に設定される。回収装置150で微粒子を回収することで、微粒子が集合した粉体が得られる。回収装置150による回収方法は、この他、サイクロン、ガラスフィルター、電気集塵のいずれか1つを用いてもよい。
【0054】
なお、加熱工程における加熱処理には、ガスバーナー130による火炎を熱源とした構成の他、ガスバーナー130による熱風を熱源とすることもできる。電気加熱による輻射熱を熱源とすることもできる。また、上記構成の熱処理炉120の他、マイクロ波誘導炉、赤外線炉、アークプラズマ炉、シリコニット発熱体による加熱炉、スーパーカンタル発熱体による加熱炉を用いてもよい。
【0055】
(実験結果)
上述した本実施形態の製造方法によって生成された、微粒子または微粒子が集合した粉体を対象として、所定の実験を行った。以下、この結果について説明する。
【0056】
酸化亜鉛粒子が集合した酸化亜鉛粉体の粉末X線回折結果について、図6を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図6で上側(「800℃」参照)は、本実施形態の製造方法によって生成され回収された酸化亜鉛粉体を、再度800℃で熱処理(焼成工程参照)したものを対象とし、下側(「As-prepared」参照)は、本実施形態の製造方法によって生成され回収された酸化亜鉛粉体を対象としたものである。図6によれば、粒子(粉体)は、酸化亜鉛へ結晶化していることがわかる。
【0057】
透過型電子顕微鏡による、酸化亜鉛粉体の観察結果について、図7を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の透過型電子顕微鏡(FX−2000)を用いた。観察試料は、酸化亜鉛粉体をイソプロピルアルコールで分散させた溶液を、コロジオン膜を張った銅メッシュへ滴下し、乾燥した後、加速電圧200kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は100nmであった。
【0058】
酸化亜鉛粉体の水溶液中での試薬濃度と粒径および1時間当たりの製造量との関係について、図8を参照して説明する。粒径の測定は走査型電子顕微鏡写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。図8で、「●」は粒径、「▲」は製造量である。図8によれば、試薬濃度が増加すると、粒径および1時間当たりの製造量は、ともに増加することがわかる。
【0059】
銀粒子が集合した銀粉体の粉末X線回折結果について、図9を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図9によれば、本実施形態の製造方法によって生成された粒子(粉体)は、銀へ結晶化していることがわかる。
【0060】
走査型電子顕微鏡による、銀粉体の観察結果について、図10を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡(S−2300)を用いた。観察試料は、イオンコーターで金コーティングした後、加速電圧25kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は300nmであった。
【0061】
サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粒子が集合した酸化セリウム粉体の粉末X線回折結果について、図11を参照して説明する。測定には、株式会社島津製作所製のX線回折装置(XRD−6100)を用いた。X線源にはCuKα線を用い、印加電圧および印加電流はそれぞれ40kVおよび30mAとして、2θが10°〜80°の範囲を0.02°のステップ幅で測定した。図11によれば、本実施形態の製造方法によって生成された粒子(粉体)は、酸化セリウムへ結晶化しており、スカンジウムは均一に添加されていることがわかる。
【0062】
走査型電子顕微鏡による、サマリウムを20mol%添加した酸化セリウム粉体の観察結果について、図12を参照して説明する。観察には株式会社日立製作所製の走査型電子顕微鏡(S−2300)を用いた。観察試料は、イオンコーターで金コーティングした後、加速電圧25kVで測定した。平均粒径は、写真上の粒子の直径を測り、平均化したものを用いた。球状粒子で、平均粒径は500nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る製造方法によれば、金属酸化物または金属の微粒子を生成することが可能で、これを提供することができる。そして、安定したミストの発生により金属酸化物または金属の微粒子(粉体)の量産化に貢献することができる。
【0064】
このため、本発明は、微粒子(粉体)の製造の品質の改善ができ、しかも大量生産によりコストダウンが図れる非常に有益なものである。そして、本発明に係る製造方法によって生成された金属酸化物または金属の微粒子(粉体)は、例えば、誘電体材料、強誘電体材料、半導体材料、二次電池用電極材料、フォトニクス結晶、排ガス触媒材料、固体酸化物燃料電池用材料、磁性体材料、光触媒材料、蛍光体材料、歯科充填剤、液晶スペーサー、レーザー発振子、生体材料、ドラッグデリバリーシステム、導電ペースト剤として用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
100 微粒子製造装置
110 ミスト発生装置(加湿装置)
120 熱処理炉
130,130−1〜130−6 ガスバーナー
140 熱交換器
150 回収装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、
金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、
前記溶液生成工程で生成された前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、
前記ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記溶液生成工程では、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶液生成工程では、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成し、
前記ミスト発生工程では、前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液から粒径が100nm〜3000nmの液滴によるミストを発生させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、火炎を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程では、電気加熱による輻射熱を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程では、均等な角度で配置された複数のガスバーナーそれぞれによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程では、ミストの流通方向上流側の先端の位置にカバーを設置した前記ガスバーナーによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記加熱工程では、粒径が50nm〜500nmの金属酸化物または金属の微粒子が生成されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ミスト発生工程では、ミストの発生量を4リットル/時間まで可能とすることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記加熱工程での金属酸化物または金属の微粒子の生成時間が1分内であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ミスト発生工程は、前記溶液の温度が一定の温度に保持された状態で、ミストの発生が連続的に行われることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記加熱工程では、前記加熱工程で用いられた熱の廃熱が利用されることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項1】
金属酸化物または金属の微粒子の製造方法であって、
金属成分を含む溶液を生成する溶液生成工程と、
前記溶液生成工程で生成された前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液からミストを発生させるミスト発生工程と、
前記ミスト発生工程で発生させたミストを流通させながら加熱処理し、金属酸化物または金属の微粒子を生成する加熱工程とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記溶液生成工程では、無機塩水溶液、または、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶液生成工程では、有機金属化合物の水および有機溶媒の混合溶液を、前記溶液として生成し、
前記ミスト発生工程では、前記溶液を複数の超音波振動子で振動させ、前記溶液から粒径が100nm〜3000nmの液滴によるミストを発生させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、300℃〜900℃の温度範囲で加熱処理することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程では、火炎を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程では、電気加熱による輻射熱を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程では、均等な角度で配置された複数のガスバーナーそれぞれによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程では、ミストの流通方向上流側の先端の位置にカバーを設置した前記ガスバーナーによる、火炎または熱風を熱源とした加熱処理が行われることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記加熱工程では、粒径が50nm〜500nmの金属酸化物または金属の微粒子が生成されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ミスト発生工程では、ミストの発生量を4リットル/時間まで可能とすることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記加熱工程での金属酸化物または金属の微粒子の生成時間が1分内であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ミスト発生工程は、前記溶液の温度が一定の温度に保持された状態で、ミストの発生が連続的に行われることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記加熱工程では、前記加熱工程で用いられた熱の廃熱が利用されることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図7】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図7】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2011−98867(P2011−98867A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255601(P2009−255601)
【出願日】平成21年11月7日(2009.11.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月7日(2009.11.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】
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