説明

金属酸化物粒子の表面処理方法、該表面処理金属酸化物粒子を含む分散液、透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材

【課題】 分散性、分散安定性に優れた金属酸化物粒子の効率的な表面処理方法を提供す。
【解決手段】 金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液に、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解し、ついで、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解する。
(NH2−Cn2n−Z− Cm2mL −Si−Y4-L (1)
(但し、式中、Z:−NH、−CH2、Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素。L:1〜3の整数,n:0〜10の整数、m:0〜10の整数。)
p-SiX4-p (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、p:1〜3の整数、但し、アミノ基置換炭化水素基を除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子を、先ず、アミノ基を有する有機ケイ素化合物で表面処理し、ついで、アミノ基を含まない有機ケイ素化合物で表面処理することを特徴とする金属酸化物粒子の表面処理方法、表面処理金属酸化物粒子を含む塗布液および透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ、樹脂フィルム、表示装置前面板等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート膜を形成することが知られており、このようなハードコート膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、透明被膜中に導電性粒子を配合して帯電防止性能、電磁波遮蔽性能等を有する透明被膜付基材も知られている。さらに、透明被膜中に高屈折率粒子を配合した高屈折率透明被膜、透明被膜中に低屈折率粒子を配合した反射防止性能を有する低屈折率透明被膜、着色顔料粒子を配合した透明性被膜等が知られている。
透明被膜中に例えば金属酸化物微粒子を配合する場合、透明被膜を構成するマトリックス成分によっては分散性が悪く、透明被膜形成用塗布液の安定性が不充分となり、得られる被膜の透明性、基材との密着性、強度、耐擦傷性等が不充分となることがあった。このため、あらかじめ金属酸化物微粒子をシランカップリング剤で処理し、マトリックス成分への分散性を向上させることが行われている。
【0004】
しかしながら、シランカップリング剤で処理しても、ある程度分散性、分散安定性等は向上するものの、得られる透明被膜中に未反応のシランカップリング剤が残存したり、このため膜の平滑性が低下したり、硬化が不充分あるいは不均一な硬化が起きることがあり、このためクラックが発生したり、クラックが原因で耐湿性が不充分となることがあった。このため所望の反射率が得られない場合ことがあり、さらに、充分な基材との密着性や擦傷性等が得られないことがあった。
【0005】
本願出願人は、金属酸化物粒子をシランカップリング剤で処理する前に、あらかじめ4官能のアルコキシシランで表面処理することにより、金属酸化物粒子表面にシランカップリング剤との反応性、結合性の高い水酸基(シラノール基)が形成され、このため、シランカップリング剤が金属酸化物粒子表面に高密度で強固に結合し、分散性、分散安定性等が向上し、得られる透明被膜の性能が向上することを見出している。
しかしながら、この方法を用いても、膜の平滑性、硬化性等はある程度改善されるものの透明被膜中の未反応のシランカップリング剤が残存することがあり、充分な基材との密着性や擦傷性等が得られないことがあった。
【0006】
このような状況の下、本発明者は、上記問題点を解消すべく鋭意検討した結果、金属酸化物粒子を、先ず、アミノ基を有する有機ケイ素化合物で表面処理し、ついで、アミノ基を含まない有機ケイ素化合物で表面処理した金属酸化物粒子を用いると、得られる透明被膜にクラックが発生することがなく、耐湿性、基材との密着性、擦傷性等が大幅に向上することを見いだして本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、分散性、分散安定性に優れた金属酸化物粒子の効率的な表面処理方法および得られた表面処理金属酸化物粒子を含む分散液、透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属酸化物粒子の表面処理方法は、金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液に、下記(1)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解し、ついで、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解することを特徴とする。
(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-Si-Y4-L (1)
(但し、式中、Z:−NH、−CH2、Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素。L:1〜3の整数,n:0〜10の整数、m:0〜10の整数。)
p-SiX4-p (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、p:1〜3の整数、但し、置換炭化水素基中アミノ基置換炭化水素基を除く。)
【0009】
前記表面処理された金属酸化物粒子中の式(1)で表される有機ケイ素化合物の含有量が、[(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-SiO4-L/2]として0.001〜20重量%の範囲にあり、式(2)で表される有機ケイ素化合物の含有量がRp-Si-O4-p/2として1〜60重量%の範囲にあることが好ましい。
前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化インジウム、低次酸化チタンおよびこれらの複合酸化物、あるいはSbドープ酸化スズ(ATO)、Fドープ酸化スズ、Pドープ酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化インジウムから選ばれる1種または2種以上であり、平均粒子径が3〜300nmの範囲にあることが好ましい。
前記表面処理された金属酸化物粒子の平均粒子径が3〜300nmの範囲にあることが好ましい。
【0010】
本発明の表面処理金属酸化物粒子分散液は、前記表面処理方法で得られた表面処理金属酸化物粒子と分散媒とからなり、表面処理金属酸化物粒子の濃度が1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
本発明の透明被膜形成用塗布液は、前記表面処理方法で得られた表面処理金属酸化物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなることを特徴とする。
前記表面処理金属酸化物粒子の濃度(CP)が固形分として0.1〜40重量%の範囲にあり、前記マトリックス形成成分の濃度(CM)が固形分として1.9〜49.9重量%の範囲にあり、合計濃度(CP)+(CM)が固形分として2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0012】
本発明の透明被膜付基材は、基材と、基材上に設けられた透明被膜とからなり、該透明被膜がマトリックス成分と前記製造方法で得られた表面処理金属酸化物粒子とからなり、透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が固形分として0.2〜80重量%の範囲にあることを特徴とする。
前記透明被膜の膜厚が30nm〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明方法では、金属酸化物粒子があらかじめアミノ基を有する有機ケイ素化合物で表面処理されているので、ついで主たる表面処理剤であるアミノ基を含まない有機ケイ素化合物を金属酸化物粒子表面に均一にムラ無く表面処理することができる。
このため、金属酸化物粒子がマトリックス成分へ均一に安定的に高分散し、且つ、マトリックスとの結合性に優れ、緻密性、膜強度、耐薬品性等に優れるとともに耐湿性にも優れた透明被膜の形成に好適に用いることのできる金属酸化物粒子の表面処理方法、および表面処理金属酸化物粒子を含む分散液、透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、まず、本発明に係る金属酸化物粒子の表面処理方法について説明する。
【0015】
[金属酸化物粒子の表面処理方法]
本発明に係る金属酸化物粒子の表面処理方法は、金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液に、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解し、ついで、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解することを特徴としている。
(NH2−Cn2n−Z− Cm2mL −Si−Y4-L (1)
(但し、式中、Z:−NH、−CH2、Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素。L:1〜3の整数,n:0〜10の整数、m:0〜10の整数。)
p-SiX4-p (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、p:1〜3の整数、但し、アミノ基置換炭化水素基を除く。)
【0016】
金属酸化物粒子
本発明に用いる金属酸化物粒子としては、前記各種透明被膜に用いられる従来公知の金属酸化物粒子を用いることができる。
具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化インジウム、低次酸化チタン、酸化マグネシウム、ボリア、酸化ニオブ等の他、これらの複合酸化物、あるいはSbドープ酸化スズ(ATO)、Fドープ酸化スズ、Pドープ酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化インジウム等が挙げられる。
【0017】
なかでも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化インジウム、低次酸化チタンおよびこれらの複合酸化物あるいはSbドープ酸化スズ(ATO)、Fドープ酸化スズ、Pドープ酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化インジウム等は好適に用いることができる。
複合酸化物としては、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、アルミナ・チタニア、チタニア・ジルコニア、チタニア・酸化スズ・ジルコニア・シリカ、ジルコニア・酸化アンチモン・シリカ、ジルコニア・酸化アンチモン、チタニア・ジルコニア・シリカ、チタニア・ジルコニア・酸化アンチモン・シリカ・酸化スズ、チタニア・ジルコニア・酸化アンチモン・シリカ、ジルコニア・シリカ・酸化アンチモン、酸化アンチモン・シリカ等が挙げられる。
【0018】
さらに、この複合酸化物には金属酸化物粒子の表面を他の金属酸化物、複合酸化物で被覆したコアシェル構造を有する粒子が含まれる。また、本願出願人の出願による特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報等に開示した内部に空洞を有するシリカを主成分とするシリカ系粒子は屈折率が低く、反射防止膜用の透明被膜に好適に用いることができる。
さらに、特開2005−119909号公報に開示した、表面を酸化アンチモンで被覆した多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子も、反射防止・帯電防止膜として好適に用いることができる。また、上記各粒子が鎖状に連結した粒子であってもよい。
【0019】
金属酸化物粒子の平均粒子径は3〜300nm、さらには5〜200nmの範囲にあることが好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子径が3nm未満の場合は、得ることが困難であり、得られたとしても、分散液中で凝集する傾向があり、均一に表面処理することが困難で、得られる粒子を用いても本願の効果、すなわち、マトリックス成分への分散性の向上、マトリックスとの結合性向上、緻密性、膜強度、耐薬品性、膜平滑性等の効果が得られないことがある。
金属酸化物粒子の平均粒子径が300nmを越えると、得られる透明被膜の平滑性が悪くなり、緻密性、膜強度、耐薬品性が不充分となり、さらにヘーズが悪化する傾向にある。
【0020】
分散媒
表面処理する際の金属酸化物粒子の分散媒としては水および/または有機溶媒が用いられる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)等などのアルコール類を含む親水性溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
また、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセタートなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノアルコールが一般的である。
【0022】
金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液
分散液の濃度は固形分として1〜50重量%、さらには3〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
分散液の濃度が1重量%未満の場合は、粒子が凝集することはないものの生産性が低く実用的でない。
分散液の濃度が50重量%を越えると、粒子間の相互作用が強く粘度が上がったり場合によっては凝集することがある。
【0023】
式(1)で表される有機ケイ素化合物
本発明では下記式(1)で表されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物を用いる。
(NH2−Cn2n−Z− Cm2mL −Si−Y4-L (1)
(但し、式中、Z:−NH、−CH2、Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素。L:1〜3の整数,n:0〜10の整数、m:0〜10の整数。)
【0024】
このような有機ケイ素化合物としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルモノメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルモノエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルモノイソプロポキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルモノメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルモノエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルモノイソプロポキシシランから選ばれる1種または2種以上の有機ケイ素化合物が好適に用いられる。
【0025】
式(1)で表される有機ケイ素化合物の使用量は、得られる表面処理された金属酸化物粒子中の有機ケイ素化合物の含有量が[(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-SiO4-L/2]として0.001〜20重量%、さらには0.01〜15重量%の範囲となるように用いる。
式(1)で表される有機ケイ素化合物の使用量が[(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-SiO4-L/2]として0.001重量%未満の場合は、アミノ基を有する式(1)で表される有機ケイ素化合物の導入量が少ないために式(2)で表される有機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物の加水分解物が式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理された金属酸化物粒子表面に充分に結合せず、未結合の式(2)で表される有機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物の加水分解物が残存する傾向がある。
式(1)で表される有機ケイ素化合物の使用量が[(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-SiO4-L/2]として20重量%を越えてもさらに未結合の式(2)で表される有機ケイ素化合物等が減少することもなく、表面に過剰に処理されているため金属酸化物微粒子の割合が低下し、粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
【0026】
式(2)で表される有機ケイ素化合物
本発明では、ついで、下記式(2)で表されるアミノ基を含まない有機ケイ素化合物を用いる。
p-SiX4-p (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、p:1〜3の整数、但し、置換炭化水素基中アミノ基置換炭化水素基を除く。)
【0027】
このような有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
式(2)で表される有機ケイ素化合物の使用量は、得られる表面処理された金属酸化物粒子中の有機ケイ素化合物の含有量がRp-Si-O4-p/2として1〜60重量%、さらには2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
式(2)で表される有機ケイ素化合物の使用量がRp-Si-O4-p/2として1重量%未満の場合は、分散性、マトリックスとの結合性向上効果が不充分で、得られる透明被膜の緻密性、膜強度、耐薬品性、膜平滑性等が不充分となることがある。
式(2)で表される有機ケイ素化合物の使用量がRp-Si-O4-p/2として60重量%を越えると、表面処理された金属酸化物粒子中の金属酸化物微粒子の割合が低下し、粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
【0029】
表面処理方法
表面処理方法としては、従来公知のシランカップリング剤による表面処理と同様の方法を採用することができる。
例えば、金属酸化物粒子分散液に、先ず、前記式(1)で表される有機ケイ素化合物あるいは有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液を添加して加水分解する。この時、必要に応じて酸またはアルカリを加水分解触媒として添加することもできる。
加水分解する際の温度は用いる分散媒の沸点によっても異なるが、概ね30〜80℃の範囲である。
【0030】
ついで、前記式(2)で表される有機ケイ素化合物あるいは有機ケイ素化合物の有機溶媒溶液を添加して加水分解する。この時、必要に応じて酸またはアルカリを加水分解触媒として添加することもできる。
また、前記式(2)で表される有機ケイ素化合物のPの値によっても異なるが、水のモル数(MH2O)と有機ケイ素化合物の加水分解性官能基のモル数(MOS2)とのモル比(MH2O)/(MOS2)が1〜1000、さらには2〜500の範囲にとなる水を用いることが好ましい。
前記モル比(MH2O)/(MOS2)が1未満の場合は、加水分解に使用される水が少なすぎ、加水分解が不充分となるとともに未結合の有機ケイ素化合物、有機ケイ素化合物の加水分解物が残存する傾向がある。
前記モル比(MH2O)/(MOS2)が1000を越えると、前記式(2)で表される有機ケイ素化合物の種類によっても異なるが、加水分解速度が速く、金属酸化物微粒子表面に析出することなく分散媒中で有機ケイ素化合物の加水分解物であるゾル・ゲルあるいは粒子となることがあり、前記式(2)で表される有機ケイ素化合物による表面処理効果が充分得られないことがある。
【0031】
加水分解する際の温度は用いる分散媒の沸点によっても異なるが、概ね30〜100℃の範囲である。
このようにして得られた表面処理金属酸化物粒子の分散液は、必要に応じて、加熱熟成することができ、さらに、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去したり、限外濾過膜等により洗浄、濃縮、溶媒置換等して用いることができる。
【0032】
[表面処理金属酸化物粒子分散液]
得られる表面処理金属酸化物粒子の分散液は表面処理金属酸化物粒子の濃度が固形分として1〜50重量%、さらには1〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
表面処理金属酸化物粒子分散液の表面処理金属酸化物粒子の濃度が固形分として1重量%未満の場合は濃度が低いために本発明の透明被膜形成用塗布液に用いるには不向きであり、得られる透明被膜の膜厚が薄すぎたり、このため繰り返し、塗布、乾燥等を必要とする場合がある。
【0033】
表面処理金属酸化物粒子分散液の表面処理金属酸化物粒子の濃度が固形分として50重量%を超えると、粘度が高くなり、安定性が不充分となることがあり、本発明の透明被膜形成用塗布液に用いるには不向きである。
なお、表面処理金属酸化物粒子分散液の分散媒は前記表面処理する際と同様の分散媒を用いることができるが、後述する透明被膜形成用塗布液に用いる分散媒と同じであることが好ましい。
【0034】
[透明被膜形成用塗布液]
本発明の透明被膜形成用塗布液は、前記の方法で得られた表面処理金属酸化物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とからなっている。
表面処理金属酸化物粒子
表面処理金属酸化物粒子としては、前記で得られた表面処理金属酸化物粒子、あるいは表面処理金属酸化物粒子の分散液を用いる。
【0035】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分、有機樹脂系マトリックス形成成分等が用いられる。
シリコーン系マトリックス形成成分としては下記式(3)で表される有機珪素化合物、これらの加水分解物、加水分解重縮合物が好適に用いられる。
q-SiX4-q (3)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、q:0〜3の整数。)
【0036】
このような有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
また、有機樹脂系マトリックス形成成分としては、塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等が挙げられる。
このような樹脂として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。
【0038】
具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0039】
分散媒
本発明に用いる分散媒としてはマトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに表面処理金属酸化物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の分散媒を用いることができる。
【0040】
具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0041】
透明被膜形成用塗布液中の表面処理金属酸化物粒子の固形分としての濃度(CP)とマトリックス形成成分の固形分としての濃度(CM)との合計濃度は2〜50重量%、さらには3〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中の合計の固形分濃度が2重量%未満の場合は、透明被膜の膜厚が薄くなる場合があり、透明被膜の性能、例えば、ハードコート性能や反射防止性能が充分でない場合がある。このため、塗布、乾燥等を繰り返して膜厚を厚くすることはできるが経済性が低下する。
透明被膜形成用塗布液中の合計の固形分濃度が50重量%を越えると、塗布液の粘度が高くなるために塗布性が低下したり、塗布液の安定性が不充分となることがあり、得られる透明被膜の密着性、強度等が低下することがある。
【0042】
透明被膜形成用塗布液中の表面処理金属酸化物粒子の固形分としての濃度(CP)は0.1〜40重量%、さらには0.2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中の表面処理金属酸化物粒子の固形分としての濃度(CP)が0.1重量%未満の場合は、得られる透明被膜中の金属酸化物粒子の含有量が少なくなるために金属酸化物微粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
透明被膜形成用塗布液中の表面処理金属酸化物粒子の固形分としての濃度(CP)が40重量%を越えると、粒子間の相互作用が高く塗料の粘度が上昇し経時安定性が不充分となる場合がある。
【0043】
また、透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度(CM)は固形分として1.9〜49.9重量%、さらには2.8〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度(CM)が固形分として1.9重量%未満の場合は、得られる透明被膜の膜厚が薄過ぎたり、透明被膜の性能、例えば、ハードコート性能や反射防止性能が不充分となったり、粒子の割合が多すぎて密着性等が不充分となることがある。
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度(CM)が固形分として49.9重量%を越えると、得られる透明被膜のマトリックスの含有量が多く、逆に金属酸化物粒子の含有量が少なくなるために金属酸化物微粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
【0044】
また、透明被膜形成用塗布液中の表面処理金属酸化物粒子の固形分としての濃度(CP)とマトリックス形成成分の固形分としての濃度(CM)は、得られる透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が0.2〜80重量%、さらには0.5〜78重量%の範囲となるように調整して用いる。
得られる透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が0.2重量%未満の場合は、金属酸化物粒子の含有量が少なくなるために金属酸化物微粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
得られる透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が80重量%を越えると、粒子の割合が多すぎて密着性、膜強度等が不充分となることがある。
【0045】
本発明に係る透明被膜形成用塗布液を用いて透明被膜を形成する方法として従来公知の方法を採用することができる。
具体的には、透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0046】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に設けられた透明被膜とからなっている。
【0047】
基材
基材としては、従来公知の基材を用いることができ、ガラスの他、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム等のセルロース系基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系基材、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、環状ポリオレフィンフィルム等のポリオレフィン系基材、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド系基材、ポリアクリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニトリルフィルム等の基材が挙げられる。また、このような基材上に他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。
【0048】
透明被膜
透明被膜はマトリックス成分と表面処理金属酸化物粒子とからなっている。
表面処理金属酸化物粒子
表面処理金属酸化物粒子としては前記した表面処理金属酸化物粒子が用いられる。
【0049】
マトリックス成分
マトリックス成分としては、シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス成分、有機樹脂系マトリックス成分等が用いられる。
シリコーン系マトリックス成分としては前記式(3)と同様の有機珪素化合物の加水分解重縮合物が好適に用いられる。
また、有機樹脂系マトリックス成分としては、前記した塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等が用いられる。
【0050】
透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量は固形分として0.2〜80重量%、さらには0.5〜78重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が0.2重量%未満の場合は、金属酸化物粒子の含有量が少なくなるために金属酸化物微粒子の特性、例えば、導電性、屈折率等が充分発現されない場合がある。
透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が80重量%を越えると、粒子の割合が多すぎて密着性、膜強度等が不充分となることがある。
【0051】
また、透明被膜の膜厚は用途によっても異なるが、30nm〜50μm、さらには50nm〜30μmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、膜厚が薄く反射防止性能が不充分となったり、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、ハードコート機能が不充分となる。
【0052】
透明被膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるのでカーリング(ハードコート膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
本発明に係る透明被膜付基材には、目的または効果を異にした他の被膜を設けることができる。
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0054】
表面処理金属酸化物粒子(1)の調製
五酸化アンチモン微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:Rsb-Ku-70、固形分濃度14重量%、平均粒子径20nm)100gを純水100gで希釈した。これにγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学製:KBE-603、濃度81.2重量%)1.4gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-503、濃度81.2重量%)5g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(1)の 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(1)の平均粒子径を表に示した。
【0055】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒:イソプロピルアルコール)をイソプロピルアルコールで希釈して樹脂濃度30重量%の透明被膜形成用樹脂成分(1)を調製した。
この透明被膜形成用樹脂成分(1)10gに、表面処理金属酸化物粒子(1)分散液10gを混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0056】
塗布液の分散安定性の評価
透明被膜形成用塗布液(1)の粘度をB型粘度計で測定し、その後50℃の恒温槽にて24時間静置し、その後再度粘度を測定し粘度の変化を確認した。この時の粘度の変化が小さなものほど安定性に優れ、大きなものほど安定性が劣る。結果を表に示した。
【0057】
透明被膜付基材(1)の製造
透明被膜形成用塗布液(1)を、PETフィルム(東洋紡製コスモシャイン A4100、厚さ:188μm、屈折率:1.67、基材ヘーズ0.8%)にバーコーター法(#20)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
得られた透明被膜の表面抵抗値をハイレスタ(三菱化学製)、全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し、反射率を反射率計(大塚電子製MCPD-3000)で測定し、結果を表に示した。さらに、耐擦傷性および耐アルカリ性、耐湿性を次のように測定した。
【0058】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1000g/cm2で20回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0059】
耐アルカリ性の評価
透明被膜付基材(1)の透明被膜上に、0.01NのNaOH水溶液を滴下し、3分間放置した後拭き取り、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
滴下跡が認められない :◎
息をかけると滴下後が認められる:○
滴下跡が認められる :△
膜面が全体的に剥れている :×
【0060】
耐湿テスト
透明被膜付基材(1)をタバイエスペック製の環境試験機にて60℃、RH95%の条件で1000時間放置し、暴露前後の反射率の測定及び目視にて膜のクラックの確認を行った。
また、目視にてクラックが発生しているものについては反射率の評価は実施しなかった。
【実施例2】
【0061】
表面処理金属酸化物粒子(2)の調製
実施例1において、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学製:KBE-603)を0.7g用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(2) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(2)の平均粒子径を表に示した。
【0062】
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(2) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0063】
透明被膜付基材(2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(2)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例3】
【0064】
表面処理金属酸化物粒子(3)の調製
実施例1において、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学製:KBE-603)を5.6g用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(3) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(3)の平均粒子径を表に示した。
【0065】
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(3) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0066】
透明被膜付基材(3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(3)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例4】
【0067】
表面処理金属酸化物粒子(4)の調製
実施例1において、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-503)1.0gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(4) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(4)の平均粒子径を表に示した。
【0068】
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(4) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0069】
透明被膜付基材(4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(4)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例5】
【0070】
表面処理金属酸化物粒子(5)の調製
実施例1において、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-503)15gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(5) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(5)の平均粒子径を表に示した。
【0071】
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(5) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0072】
透明被膜付基材(5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(5)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例6】
【0073】
表面処理金属酸化物粒子(6)の調製
酸化チタン・ジルコニア・シリカ系微粒子のメタノール分散液(触媒化成工業(株)製:オプトレイク1130ZS7A8、固形分濃度20重量%、平均粒子径20nm)100gを純水100gで希釈した。ついでγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-603、濃度81.2重量%)2gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-5103、濃度81.2重量%)10g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(6) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(6)の平均粒子径を表に示した。
【0074】
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(6) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0075】
透明被膜付基材(6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(6)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例7】
【0076】
表面処理金属酸化物粒子(7)の調製
ジルコニア・シリカ系微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:固形分濃度5重量%、平均粒子径20nm)100gにN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-903、濃度81.2重量%)1gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後、γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-5103、濃度81.2重量%)0.5g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水0.1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(7) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(7)の平均粒子径を表に示した。
【0077】
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(7) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0078】
透明被膜付基材(7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(7)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例8】
【0079】
表面処理金属酸化物粒子(8)の調製
アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:TL-98-FDAR:固形分濃度20重量%、平均粒子径8nm)100gを純水100gで希釈し、ついでN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-903、濃度81.2重量%)10gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後、γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-5103、濃度81.2重量%)20g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水0.1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(8) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(8)の平均粒子径を表に示した。
【0080】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(8) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0081】
透明被膜付基材(8)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(8)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例9】
【0082】
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
アクリル-ウレタン系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートUA-306H、樹脂濃度100重量%、溶媒:イソプロピルアルコール)とイルガキュア184(チバスペシャリティ(株)製)を97:3の重量比率で混合し、メチルイソブチルケトン(MIBK)で希釈して樹脂濃度30重量%の透明被膜形成用樹脂成分(2)を調製した。
この透明被膜形成用樹脂成分(2)10gに、実施例1と同様に調製した表面処理金属酸化物粒子(1)分散液10gを混合して透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行った。
【0083】
透明被膜付基材(9)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(9)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例10】
【0084】
透明被膜形成用塗布液(10)の調製
メチルシリケート(多摩化学(株)製:MS-51、濃度SiO2換算:51重量%)10gとイソプロピルアルコール40g、水1gおよび濃度63重量%の硝酸0.1gを混合し、50℃にて1時間攪拌した。その後、イソプロピルアルコール/ブチルセロソルブ=9/1混合液で濃度3重量%に希釈して透明被膜形成用樹脂成分(3)を調製した。
この透明被膜形成用樹脂成分(3)7gに、実施例1と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(1)分散液10gをイソプロピルアルコールにて濃度3重量%に希釈したものを3g混合して透明被膜形成用塗布液(10)を調製した。ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行った。
【0085】
透明被膜付基材(10)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(10)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(10)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例11】
【0086】
透明被膜付基材(11)の製造
実施例1と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(#3)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(11)を製造した。このときの透明被膜の厚さは500nmであった。
透明被膜付基材(11)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【実施例12】
【0087】
透明被膜付基材(12)の製造
実施例1と同様にして調製した透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(#50)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(12)を製造した。このときの透明被膜の厚さは30μmであった。
透明被膜付基材(12)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【比較例1】
【0088】
表面処理金属酸化物粒子(R1)の調製
五酸化アンチモン微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:Rsb-Ku-70、固形分濃度14重量%、平均粒子径20nm)100gを純水100gで希釈した。その後、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-503、濃度81.2重量%)5g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換した。分散液は途中で粘度が上昇しゲル化してしまい、分散液を得ることができなかった。
【比較例2】
【0089】
表面処理金属酸化物粒子(R2)の調製
五酸化アンチモン微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:Rsb-Ku-70、固形分濃度14重量%、平均粒子径20nm)100gを純水100gで希釈した。ついでγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学製:KBE-603、濃度81.2重量%)1.4gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(R2) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(R2)の平均粒子径を表に示した。
【0090】
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(R2) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0091】
透明被膜付基材(R2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(R2)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【比較例3】
【0092】
表面処理金属酸化物粒子(R3)の調製
五酸化アンチモン微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:Rsb-Ku-70、固形分濃度14重量%、平均粒子径20nm)100gを純水100gで希釈した。ついで正珪酸エチル(多摩化学製:ES-28、濃度28.8重量%)3.6gを添加し、60℃で1時間熟成した。その後、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-503、濃度81.2重量%)5g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(R3) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(R3)の平均粒子径を表に示した。
【0093】
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(R3) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0094】
透明被膜付基材(R3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(R3)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【比較例4】
【0095】
透明被膜形成用塗布液(R4)の調製
実施例9と同様にして調製した透明被膜形成用樹脂成分(2)10gに、比較例3と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(R3)2-プロパノール分散液10gを混合して透明被膜形成用塗布液(R4)を調製した。ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0096】
透明被膜付基材(R4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(R4)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【比較例5】
【0097】
表面処理金属酸化物粒子(R5)の調製
アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子の水分散液(触媒化成工業(株)製:TL-98-FDAR:固形分濃度20重量%、平均粒子径8nm)100gを純水100gで希釈し、ついで正珪酸エチル(多摩化学製:ES-28、濃度28.8重量%)5.6g添加し、60℃で1時間熟成した。その後、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製:KBM-5103、濃度81.2重量%)20g、メタノール100gおよび濃度29.8重量%のアンモニア水0.1gを添加し、さらに60℃で5時間熟成した。その後、セラミック製限外膜を用いて2-プロパノールに溶剤置換し、固形分濃度30重量%の表面処理金属酸化物粒子(R5) 2-プロパノール分散液を調製した。表面処理金属酸化物粒子(R5)の平均粒子径を表に示した。
【0098】
透明被膜形成用塗布液(R5)の調製
実施例1において、表面処理金属酸化物粒子(R5) 2-プロパノール分散液10gを混合した以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0099】
透明被膜付基材(R5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R5)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(R5)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【比較例6】
【0100】
透明被膜形成用塗布液(R6)の調製
実施例10と同様にして調製した透明被膜形成用樹脂成分(3)7gに、比較例3と同様にして調製した表面処理金属酸化物粒子(R3) ) 2-プロパノール分散液10gをイソプロピルアルコールにて濃度3重量%に希釈したもの3gを混合し、さらにイソプロピルアルコールにて濃度0.5重量%に希釈して透明被膜形成用塗布液(R6)を調製した。ついで実施例1と同様に塗布液の分散安定性の評価を行い、結果を表に示した。
【0101】
透明被膜付基材(R6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R6)を製造した。このときの透明被膜の厚さは10μmであった。
透明被膜付基材(R6)について、実施例1と同様の評価を行い、結果を表に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液に、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解し、ついで、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物を加えて加水分解することを特徴とする金属酸化物粒子の表面処理方法。
(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-Si-Y4-L (1)
(但し、式中、Z:−NH、−CH2、Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素。L:1〜3の整数,n:0〜10の整数、m:0〜10の整数。)
p-SiX4-p (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、p:1〜3の整数、但し、置換炭化水素基中アミノ基置換炭化水素基を除く。)
【請求項2】
前記表面処理された金属酸化物粒子中の式(1)で表される有機ケイ素化合物の含有量が、[(NH2-Cn2n-Z-Cm2mL-SiO4-L/2]として0.001〜20重量%の範囲にあり、式(2)で表される有機ケイ素化合物の含有量がRp-Si-O4-p/2として1〜60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物粒子の表面処理方法。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化インジウム、低次酸化チタンおよびこれらの複合酸化物、あるいはSbドープ酸化スズ(ATO)、Fドープ酸化スズ、Pドープ酸化スズ、Snドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化インジウムから選ばれる1種または2種以上であり、平均粒子径が3〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物粒子の表面処理方法。
【請求項4】
前記表面処理された金属酸化物粒子の平均粒子径が3〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物粒子の表面処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の表面処理方法で得られた表面処理金属酸化物粒子と分散媒とからなり、表面処理金属酸化物粒子の濃度が1〜50重量%の範囲にある表面処理金属酸化物粒子分散液。
【請求項6】
請求項1〜4に記載の表面処理方法で得られた表面処理金属酸化物粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含んでなる透明被膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記表面処理金属酸化物粒子の濃度(CP)が固形分として0.1〜40重量%の範囲にあり、前記マトリックス形成成分の濃度(CM)が固形分として1.9〜49.9重量%の範囲にあり、合計濃度(CP)+(CM)が固形分として2〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項8】
基材と、基材上に設けられた透明被膜とからなり、該透明被膜がマトリックス成分と請求項1〜4に記載の製造方法で得られた表面処理金属酸化物粒子とからなり、透明被膜中の表面処理金属酸化物粒子の含有量が固形分として0.2〜80重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項9】
前記透明被膜の膜厚が30nm〜50μmの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の透明被膜付基材。
【請求項10】
金属酸化物粒子の水および/または有機溶媒分散液に、アミノ基を有する有機ケイ素化合物を加えて加水分解し、ついで、アミノ基を含まない有機ケイ素化合物を加えて加水分解することを特徴とする金属酸化物粒子の表面処理方法。
【請求項11】
五酸化アンチモン粒子の水および/または有機溶媒分散液に、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを加えて加水分解し、ついで、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシランを加えて加水分解することを特徴とする五酸化アンチモン粒子の表面処理方法。
【請求項12】
シリカ・ジルコニア系粒子の水および/または有機溶媒分散液に、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランを加えて加水分解し、ついで、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシランを加えて加水分解することを特徴とするシリカ・ジルコニア系粒子の表面処理方法。

【公開番号】特開2009−35573(P2009−35573A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198437(P2007−198437)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】