説明

金属量が制御された金属含有ポリイミド系複合材料の製造方法

【課題】 本発明の目的は、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造の方法を提供することである。
【解決手段】 金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理して前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料から任意の量の金属イオンを抜き出す工程を含んでなる金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を製造することができる。この金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理することによって金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を得ることができる。さらに、この金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を炭化処理することによって金属含有量が制御された金属含有炭化物複合材料を清掃することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理して前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料から任意の量の金属イオンを抜き出す工程を含んでなる金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子は日常生活を始め、電気、電子、情報、バイオ、航空、宇宙等の産業分野、環境分野や医療分野等に広く普及しており、その有用性は益々高まっている。高分子は無機材料と複合化することにより新たな機能が付加される場合があるので、高分子の高機能化を目指した高分子と無機材料との複合化の研究が活発に行われている。例えば高分子と金属を複合化すれば電気的、電子的、電磁気的、触媒的等の機能を高分子に付与することが可能であることから、高分子と無機材料との複合材料は新たな特性を持った機能材料となり得る。
【0003】
酸二無水物とジアミンとの反応により得られるポリアミック酸をイミド化することで製造されるポリイミドは、耐熱性、成形性、機械的及び電気的性質等に優れており、例えばフィルム化することで電子材料用途に広く用いられている。またポリイミドは加熱処理によって優れた特性を有する炭素材料へと誘導することができる。それ自身が優れた特性を有し且つそれから誘導体される炭化物も優れた特性を有するポリイミドを、金属と適切に複合化することができれば、更なる高機能材料とすることができると期待される。
【0004】
金属とポリイミドとを複合化して金属含有ポリイミド複合材料を製造する際に、一般には金属を均質に含有させることが困難である。機能を好適に発現させ最大化する為には、得られる複合材料が、金属を均質に含有していることが重要である。さらに、金属含有量が精密に制御されていることが極めて重要である。
【0005】
非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3には、ポリアミド酸溶液に金属化合物を添加した後で、それを加熱して金属含有ポリイミドを製造する方法が開示されている。この方法を用いれば、任意量の金属をポリイミドと複合化できる。しかしながら、この方法では、金属化合物の種類によってはポリアミック酸がゲル化を起こすなどの問題がある。また金属化合物を高粘度の高分子溶液中に添加するので、金属化合物を均質に分散させることが困難であり、斑などのある不均質な材料になり易いという問題があった。
【0006】
別の方法として、非特許文献4には、ポリアミック酸溶液をガラス面にキャストして得られたポリアミック酸膜を、1M濃度の硫酸銅、硫酸ニッケル、もしくは硝酸亜鉛水溶液にアンモニア水を加えた溶液中で、溶液のpHを9に保持しながらイオン交換反応を行わせて、金属イオン含有ポリアミド酸膜を得る方法が開示されている。この方法を用いれば、金属がイオン交換反応によってポリアミック酸へ導入されるので、得られる金属イオン含有ポリアミック酸膜の金属イオンは均質性が高い。しかし、ここではポリアミック酸に金属イオンを導入することが示されただけであって、ポリアミック酸に含有された金属イオンの量を制御することについては何ら検討されていなかった。
【0007】
【非特許文献1】Chem. Mater. 1998, 10, 3368-3378
【非特許文献2】Chem. Mater. 2004, 16, 1277-1284
【非特許文献3】炭素 1999, No.189, 165-170
【非特許文献4】化学工学論文集 2004, 第30巻, 122-128
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造の方法を提供することである。また、本発明の目的は、金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料及び金属含有炭化物複合材料を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理して前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料から任意の量の金属イオンを抜き出す工程を含んでなる金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造方法に関する。好ましくは、金属抽出剤で処理する前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料が、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液で処理して前記ポリアミック酸に金属イオンを導入する工程によって得られたものであることを特徴とする前記製造方法に関し、前記金属イオンが、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Pt、Auからなる群から選ばれた単独又は複数の元素の金属イオンであることを特徴とする前記製造方法に関し、また、前記金属抽出剤が、窒素原子含有カルボン酸であることを特徴とする前記製造方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、前記製造方法で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理する工程を含んでなる金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料の製造方法、及び、前記製造方法で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を炭化処理する工程を含んでなる金属含有量が制御された金属含有炭化物複合材料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理することによって、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得ることができる。この金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理することによって金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を得ることができる。さらに、この金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を炭化処理することによって金属含有量が制御された金属含有炭化物複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理することによって、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得ることに特徴がある。金属抽出剤で処理する前の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料は、どのような方法を用いて製造しても構わない。好ましくは、金属抽出剤で処理する前の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料は、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液で処理してイオン交換反応によって金属イオンを導入した金属イオン含有ポリアミック酸複合材料が、金属イオンが均質に含有されているので好適である。
したがって、以下では、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液で処理して金属イオンを導入して金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得る工程(工程1)、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理して前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料から任意の量の金属イオンを抜き出して金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得る工程(工程2)、前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理して金属含有ポリイミド複合材料を得る工程(工程3−1)、前記金属含有アミック酸複合材料を炭化処理して金属含有炭化物複合材料を得る工程(工程3−2)について順次に説明する。
なお、本発明で用いられるポリアミック酸や金属イオン元素などは、工程1について説明するものが工程2以降についても好適に用いられる。
【0013】
工程1について
工程1は、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液で処理して、ポリアミック酸に金属イオンを導入して金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得る工程である。
この工程で使用されるポリアミック酸は、自立した固体状態のものが好適である。ポリアミック酸は、有機溶媒中で酸二無水物とジアミンとをイミド化が進まない例えば90℃程度以下の低温好ましくは室温で反応させることによって、ポリアミック酸溶液として容易に得られる。ポリアミック酸溶液を例えば基材に塗布して溶媒を除去すれば、自立したフィルム状ポリアミック酸を容易に得ることができる。自立した固体状態であれば少量の溶媒が残留していても構わない。
本発明のポリアミック酸の形態は、限定されるものではないが、金属イオンの導入及び抽出の容易さから、好ましくはフィルム状、中空糸状もしくは粒子状であり、より好ましくは、厚さが5μm〜200μm更に10μm〜100μmのフィルム状である。なお、ポリアミック酸は、ガラス、セラミックス、シリコンウェハー、金属等の基材上に塗布されたものを用いてもよく、アミド溶媒等の有機溶媒を含有していても構わない。また、例えばシリカ等の易滑剤、無機フィラー、ガラス繊維強化材等の補強材、剥離剤等の他の成分を含有するものであってもよい。
【0014】
本発明のポリアミック酸は、下記一般式(1)の繰返し単位で表されるものである。
【0015】
【化1】

【0016】
前記一般式(1)のXは、テトラカルボン酸成分からカルボキシル基を除いた残基であり、下記化学式X-IからX-IXで表される有機基であることが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
また、前記一般式(1)のYは、ジアミン成分からアミノ基を除いた残基であり、下記化学式Y-IからY-XXVIIIで表される有機基であることが好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
工程1において、ポリアミック酸を処理する金属化合物含有溶液は、金属塩からなる金属化合物、もしくは金属塩と配位子との組み合わせからなる金属化合物を溶媒に溶解した溶液である。
【0021】
前記金属塩として用いられる金属元素は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Biからなる群から選ばれた単独又は複数の元素が好ましい。より好ましくは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Auからなる群から選ばれた単独又は複数の元素であり、さらにより好ましくは、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Pt、Auからなる群から選ばれた単独又は複数の元素である。
【0022】
前記金属塩として用いられる塩は、例えば、蟻酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ノルマルブチル酸塩、2−メチルプロピオン酸塩、ピバル酸塩、乳酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩等のカルボン酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、よう化物、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、シアン化物、チオシアン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過臭素酸塩等を挙げることができる。好ましくは、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物であり、より好ましくは塩化物、硝酸塩、硫酸塩である。
【0023】
これらの金属塩は、溶媒に溶解した際に金属イオンとして解離してもよい。金属イオンが陽イオンとなるものがポリアミック酸への導入効率が高いために好ましい。金属塩は、無水物でも水和物でも、いずれも用いることができる。
また、前記金属塩を配位子と組み合わせて好適に用いることができる。配位子は、単座配位子及び/又は二座配位子が好適に用いられる。前記金属塩を配位子と組み合わせて用いた場合も、溶媒に溶解した際には単座配位子及び/又は二座配位子が解離してもよい。
【0024】
金属塩と組み合わせる単座配位子としては、分子内の一つの窒素原子で金属へ単座配位できる単座窒素配位子が好ましく、特に下記一般式(2)〜(3)で示される化合物が好ましい。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
金属塩と組み合わせる単座配位子としては、具体的には、アンモニア、ピリジンが挙げられる。アンモニアは、金属塩を安定化する効果が高く、得られる金属化合物は反応溶媒への溶解性が高いので好適である。
【0028】
前記単座配位子は、金属塩1モルに対して1〜6倍モル配位していることが好ましい。
【0029】
本発明において、金属塩と単座配位子との組み合わせからなる金属化合物は、ポリアミック酸を処理する溶媒中で金属塩と単座配位子とを反応して調製してもよいし、予め金属塩と単座配位子とを反応して金属化合物を調製し単離しておいて、それを必要に応じて溶媒に溶解して用いてもよい。
【0030】
本発明で金属塩と組み合わせる二座配位子としては、分子内の二つの窒素原子で金属へキレート配位できる二座窒素配位子が好ましく、特に下記一般式(4)〜(6)で示される化合物が好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
金属塩と組み合わせる二座配位子としては、具体的には、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントレンが挙げられる。エチレンジアミン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントレンは、金属錯体の安定性が高く、経済的であるので好適である。
【0035】
前記二座配位子は、金属塩1モルに対して1〜3倍モル配位していることが好ましい。
【0036】
本発明において、金属塩と二座配位子との組み合わせからなる金属化合物は、ポリアミック酸を処理する溶媒中で金属塩と二座配位子とを反応して調製してもよいし、予め金属塩と二座配位子とを反応して金属化合物を調製し単離しておいて、それを必要に応じて溶媒に溶解して用いてもよい。
【0037】
工程1において、ポリアミック酸へ金属イオンを導入する際に用いる金属化合物含有溶液の溶媒としては有機溶媒、水溶媒が使用できるが、水溶媒、もしくは水溶媒と有機溶媒との混合溶媒が金属イオンの導入効率が高いことから好ましい。
【0038】
ポリアミック酸へ金属イオンを導入する際に、金属イオンの導入を効率的に行えるので塩基性条件下で反応を行うことが好ましい。金属化合物含有溶液を塩基性条件に調整する試剤としては、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような強い塩基はポリアミック酸を分解する可能性があるので、アンモニアを用いるのがより好ましい。アンモニアは水溶液として用いても良いし、ガスとして用いても良い。これらの試剤は、金属化合物1モルに対して0.01〜20倍モル程度、好ましくは1〜10倍モル程度である。0.01倍モル以下では、金属イオンを導入する効率が低く、20倍モル以上ではポリアミック酸の分解が促進され、劣化してしまうことがあるために好ましくない。水溶液での反応温度は、一般に、0〜90℃、好ましくは10〜50℃である。90℃以上では、ポリアミック酸の分解が促進ので好ましくない。また、0℃以下では溶液が凍ることがあるために好ましくない。反応時間は、通常、30秒〜5時間、好ましくは1分〜2時間、更に好ましくは10分〜1時間が適当である。5時間以上では、ポリアミック酸の分解が進むことがあるので好ましくなく、30秒以下では、金属イオンの導入が十分に行えないことがある。
【0039】
金属化合物含有溶液における金属化合物の濃度は、金属化合物含有溶液を調製した際の濃度として、0.001〜10モル/リットル程度が好ましく、より好ましくは0.01〜1モル/リットル程度である。
【0040】
工程1の金属イオンを導入する工程は、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液中に浸漬してイオン交換反応を行わせることによって好適に行われる。溶液中の金属イオンは容易にイオン交換反応を起こし、ポリアミック酸のカルボン酸基に配位するなどの特定の形態で、金属イオンとしてポリアミック酸と複合化する。そのため、最大でポリアミック酸のカルボキシル基の数に対応した量の金属を導入することが可能である。その際には、ポリアミック酸のカルボン酸基はポリアミック酸中に均質に分布していることから、金属イオンは金属イオン含有ポリアミック酸材料中に均質性が高い状態で複合化される。なお、金属イオンを導入する工程は、1回だけで行っても良いし、複数回を繰り返して行っても良い。
【0041】
以上のようにして、金属イオンが均質に複合化した金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を好適に得ることができる。得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料は、金属化合物含有液から取り出したあとで、必要に応じて水洗、乾燥等の処理を行うことが好適である。
【0042】
工程2について
本発明の製造方法は、以下説明する工程2を含むことを特徴としている。
工程2では、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料と金属抽出剤とを溶媒存在下で反応させることにより、任意の量の金属イオンを金属イオン含有ポリアミック酸から抽出して抜き出し、任意の量の金属イオンを残存させて、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得る。ポリアミック酸の種類や金属イオンの金属元素種などは工程1で説明したものと同じものを用いることができる。また、工程2では、工程1で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を、金属イオンが均質に分散しているので、特に好適に用いることができる。
【0043】
金属抽出剤で処理する前の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料は自立した固体状態のものが好適である。形態は、限定されるものではないが、工程2の容易さから、好ましくはフィルム状、中空糸状もしくは粒子状であり、より好ましくは、厚さが5μm〜200μm更に10μm〜100μmのフィルム状である。
【0044】
工程2で用いる金属抽出剤は、金属と結合して安定なキレート化合物を生成するものであり、少なくとも一つのヘテロ原子を分子内に有する化合物である。具体的には、リン酸、ポリリン酸などの無機酸、クエン酸、蓚酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸などの有機酸、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ジベンゾイルメタン、1,1,1−トリフルオロ−4−チエニル−2,4−ブタンジオンなどのベータジケトン化合物、ジメチルグリオキシムなどのオキシム化合物、ヒドロキシキノリン、5,7−ジクロロ−8−キノリノール、5,7−ジブロモ−8−キノリノール、5,7−ジヨード−8−キノリノール、2−メチル−8−キノリノール、5−スルホ−7−ヨード−8−キノリノール、1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトール(PAN)などの含窒素酸素ヘテロ環化合物、ジエチルジチオカルバミン酸、キサントゲン酸などの含硫黄化合物、1,1,1−トリフルオロ−4−(2−チエニル)−4−メルカプト−3−ブテン−2−オン(STAA)などの含酸素硫黄化合物、チオオキシン、ジチゾンなどの含窒素硫黄化合物、ヒドロキシエチレンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、ホスホノブタン三酢酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)などのホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、エチレンジアミン−ジ(オルト−ヒドロキシフェニル酢酸)(GEDTA)、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルイミノ四酢酸(HIDA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA−OH)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ADA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ピリジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸、キノリンカルボン酸、イソキノリンカルボン酸、N,N−ジメチルグリシンなどの含窒素カルボン酸、またはそれらの群から選ばれる複数の化合物の組み合わせを好適に挙げることができる。好ましくはEDTA、IDA、GEDTA、CyDTA、DTPA、HIDA、TTHA、PDTA、DPTA−OH、GLDA、DHEG、MGDA、ADA、NTA、HEDTA、ピリジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸、キノリンカルボン酸、イソキノリンカルボン酸、N,N−ジメチルグリシンなどの窒素原子含有カルボン酸であり、EDTA、CyDTA、DTPA、DHEG、NTA、ピリジンカルボン酸が、金属含有ポリアミック酸から金属を抽出する効果が高いので更に好ましい。
この金属抽出剤は、固体状で保管しておき、使用時に溶媒に溶かして所定濃度の金属抽出剤溶液を調製してもよいし、予め溶媒に溶かした金属抽出剤溶液として保管しておき、それをそのまま或いは希釈して用いてもよい。
【0045】
工程2で金属抽出剤を用いるときの濃度は、0.001〜50モル/リットル程度が好ましく、より好ましくは0.005〜10モル/リットル程度である。0.001モル/リットル以下では所定量の金属イオンを抽出して抜き出すために必要な反応時間が長くなる場合があり、50モル/リットル以上では、経済的でなくなるため好ましくない。
【0046】
金属イオン含有ポリアミック酸から金属イオンを抽出して抜き出す際に用いる溶媒としては有機溶媒、水溶媒が使用できるが、水溶媒、もしくは水溶媒と有機溶媒との混合溶媒が、金属イオンの抽出効率が高くなるので好ましい。
【0047】
金属イオン含有ポリアミック酸から金属イオンを抽出して抜き出す際に、金属イオンの抽出を効率的に行える場合があるので、塩基性条件で反応を行っても良い。金属抽出剤含有反応溶液を塩基性条件に調整する試剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような強い塩基は金属イオン含有ポリアミック酸を分解する可能性があるので、より好ましくはアンモニアである。アンモニアは水溶液として用いても良いし、ガス状のものを用いても良い。塩基性条件に調整する試剤は、金属抽出剤1モルに対して0.01〜20倍モル程度、好ましくは1〜10倍モル程度である。0.01倍モル以下では、金属イオンを抽出する効率が低くなることがあり、20倍モル以上では金属含有ポリアミック酸の分解を促進することがあるので好ましくない。
【0048】
金属イオンを抽出して抜き出す反応の温度は、0〜90℃、好ましくは10〜50℃である。90℃以上では、金属含有ポリアミック酸の分解が促進され、劣化してしまうことがあるために好ましくなく、0℃以下では溶液が凍ることがあるために好ましくない。反応時間は、通常、30秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間、更に好ましくは10分〜2時間が適当である。30秒以下では、金属イオンの抽出が十分に行えない場合があり、10時間以上では経済的でなくなるために好ましくない。
【0049】
金属抽出剤の濃度、反応時間、反応温度、pHを制御することにより、金属イオン含有ポリアミック酸から任意量の金属を抽出することができる。その結果、金属イオン含有ポリアミック酸複合材料中の金属イオン量に対して、10〜90%の金属イオンを好適に抽出して抜き出すことができる。
【0050】
金属イオン含有ポリアミック酸から金属イオンを抽出して抜き出す工程は、1回で行ってもよいし、複数回繰り返して行ってもよい。
【0051】
工程3−1について
工程3−1では、工程2で得られた金属イオン含有ポリアミック酸をイミド化処理することで、金属含有ポリイミドを製造する。金属イオン含有ポリアミック酸のイミド化処理は、アミック酸が閉環イミド化し且つ炭化が起こらない温度範囲の加熱処理によって好適に行うことができる。この加熱処理温度は、200〜600℃が好ましく、より好ましくは300から450℃である。十分にイミド化できれば加熱時間に限定は無いが、30分〜10時間程度とすればよい。加熱処理雰囲気は、大気中でも還元性ガス存在下でも、不活性ガス存在下でも良いが、含有する金属による酸化的な触媒反応による劣化を防ぐ為、還元性ガスもしくは不活性ガス存在下、好ましくは窒素ガス、水素ガス存在下、更には窒素気流下が好ましい。加熱処理の装置は例えば管状炉やマッフル炉を好適に用いることができる。
【0052】
工程3−1の結果、極めて微細な金属粒子が材料中に分散した金属含有ポリイミド複合材料が好適に得られる。なお、前記金属イオン含有ポリアミック酸のイミド化処理では一部脱炭酸反応が進行する場合もあるが構わない。
【0053】
工程3−2について
工程3−2では、工程2で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を加熱による炭化処理して、金属含有炭化物複合材料を製造することができる。前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の炭化処理の温度範囲は、好ましくは500〜3000℃、より好ましくは650〜1000℃である。加熱時間に限定はなく、通常30分〜10時間程度である。工程2で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を、予めイミド化処理して金属含有ポリイミド複合材料を製造し、その後に該金属含有ポリイミド複合材料を炭化処理する二段階の反応によって金属含有炭化物複合材料を製造しても構わない。炭化処理するときの雰囲気は、酸素存在下では燃焼が起こるため、還元性ガス雰囲気下もしくは不活性ガス雰囲気下、好ましくは水素ガス又は窒素ガス特に窒素ガス雰囲気下が好ましい。炭化処理を行う装置は例えば管状炉やマッフル炉を好適に用いることができる。工程3−2の結果、極めて微細な金属粒子が材料中に分散した金属含有炭素物複合材料が好適に得られる。
【0054】
本発明の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料、金属含有ポリイミド複合材料、及び金属含有炭化物複合材料は、金属と、ポリアミック酸、ポリイミド、又は炭化物とが複合した材料であるが、必要に応じて、例えばシリカ等の易滑剤、無機フィラー、ガラス繊維強化材等の補強材、剥離剤等の、他の種々の成分を含有しても構わない。限定するものではないが、これら他の成分はポリアミック酸を調製するときに予め混合することによって、前記成分を含有した金属イオン含有ポリアミック酸複合材料、金属含有ポリイミド複合材料、又は金属含有炭化物複合材料を好適に得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明を説明する。
【0056】
尚、以下の例で用いた測定方法は以下のとおりである。
蛍光X線分析(XRF)
分析装置:PHILIPS製 PW2400型 全自動蛍光X線分析装置
管球:Rh
測定元素:11Na〜92U
照射面積:25mmΦ
定量法:ファンダメンタル パラメーター法(定量分析プログラム:UniQuantV)
測定雰囲気:ヘリウム
【0057】
電子線マイクロアナライザ(EPMA)
分析装置:日本電子製 JXA-8800R (波長分散型)
加速電圧:15kV
照射電流:1.0×10-7
プローブ径:1μm
測定エリア:90×90μm
【0058】
X線回折法(XRD)
分析装置:理学電気製 RAD-RX型 広角X線回折装置
X線源:CuKα線
管電圧:50kV
管電流:150mA
【0059】
フーリエ変換赤外分光法(FTIR−ATR)
分析装置:DIGILAB製 FTS7000e
検出器:DTGS
全反射(ATR)法用プリズム:ZnSe
【0060】
(参考例1)
3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとをN,N−ジメチルアセトアミド溶媒中、室温で反応させることで得られるポリアミック酸溶液を基材上にキャストし、次いで溶媒を除去することによりポリアミック酸フィルム(厚み35〜50μm)を得た。
【0061】
工程1
(参考例2)
硫酸ニッケル六水和物(20mmol)、水(20mL)、28%アンモニア水(4.0mL)からなる1.0mol/Lのニッケル含有水溶液に、参考例で得たポリアミック酸フィルム(寸法:3.0cm×3.0cm)を浸漬し室温で1時間静置した。その後、フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温十分にで乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが13.0wt%検出された。
【0062】
(参考例3)
硫酸銅・五水和物(20mmol)、水(20mL)、28%アンモニア水(8.0mL)からなる1.0mol/Lの銅含有水溶液に、参考例1で得たポリアミック酸フィルム(寸法:3.0cm×3.0cm)を浸漬し室温で1時間静置した。その後、フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Cuが17.9wt%検出された。
【0063】
(参考例4)
硝酸銀(20mmol)、水(20mL)、28%アンモニア水(2.8mL)からなる1.0 mol/Lの銀含有水溶液に、参考例1で得たポリアミック酸フィルム(寸法:3.0cm×3.0cm)を浸漬し室温で1時間静置した。その後、フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Agが33.3wt% 検出された。
【0064】
(参考例5)
硫酸亜鉛・七水和物 (10 mmol)、水(10mL)、28%アンモニア水(4.0mL)からなる1.0 mol/Lの亜鉛含有水溶液に、参考例1で得たポリアミック酸フィルム(寸法:3.0cm×3.0cm)を浸漬し室温で1時間静置した。その後、フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温十分にで乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Znが11.2wt%検出された。
【0065】
(参考例6)
NiSO4とCuSO4がそれぞれ0.5mol/Lとなるように調製された水溶液(20mL)に28%アンモニア水(5.0mL)を加えた溶液に、参考例1で得たポリアミック酸フィルム(寸法:3.0cm×3.0cm)を浸漬し室温で1時間静置した。その後、フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが7.04wt%、Cuが8.38wt%検出された。
【0066】
工程2
(実施例1)
EDTA(0.50mmol)と水(50 mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、EDTA含有水溶液のpHを9.1に調整した。得られた溶液に、実施例2で製造したニッケルイオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが6.23wt%検出された。
【0067】
(実施例2)
pHを5.0に調整した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが7.31wt%検出された。
【0068】
(実施例3)
フィルムを静置する時間を5時間にした以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが0.17wt%検出された。
【0069】
(実施例4)
CyDTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、CyDTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例2で製造したニッケルイオン含有ポリアミック酸フィルムを加えて室温で1時間静置した。フィルムは精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが5.85wt% 検出された。
【0070】
(実施例5)
NTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、NTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られる溶液に、実施例2で製造したニッケルイオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが8.92wt%検出された。
【0071】
(実施例6)
ジメチルグリオキシム (0.50 mmol)、水 (25 mL)、エタノール (25 mL) からなる溶液に、実施例2で製造したニッケル含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で5h静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが9.60 wt% 検出された。
【0072】
(実施例7)
EDTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、EDTA含有水溶液のpHを9.1に調整した。得られた溶液に、実施例3で製造した銅イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Cuが7.89×10-2wt%検出された。
【0073】
(実施例8)
pHを5.0に調整した以外は、実施例7と同様の操作を行った。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Cuが7.97wt%検出された。
【0074】
(実施例9)
CyDTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、CyDTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例3で製造した銅イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Cuが1.21wt%検出された。
【0075】
(実施例10)
NTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、NTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例3で製造した銅イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Cuが2.52wt%検出された。
【0076】
(実施例11)
EDTA(0.50mmol)と水(50 mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、EDTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例4で製造した銀イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Agが9.74wt%検出された。
【0077】
(実施例12)
EDTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、EDTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例5で製造した亜鉛イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Znが2.87wt%検出された。
【0078】
(実施例13)
EDTA(0.50mmol)と水(50mL)からなる混合物に28%アンモニア水を加えて、EDTA含有水溶液のpHを9.0に調整した。得られた溶液に、実施例6で製造したニッケルイオン及び銅イオン含有ポリアミック酸フィルムを浸漬して室温で1時間静置した。フィルムを取り出し、精製水で洗浄後、常圧室温で十分に乾燥した。得られたフィルムのXRF分析を行ったところ、Niが4.52wt%、Cuが3.83wt% 検出された。
【0079】
工程3−1
(実施例14)
実施例1で製造したニッケルイオン含有ポリアミック酸フィルムを、管状炉を用い、脱酸素塔を通すことで精製した窒素を流速100mL/minで反応管内に流しながら、5℃/minで350℃まで昇温し、更に2時間恒温にすることでイミド化処理を行った。得られたニッケル含有ポリイミドフィルムについてFTIR-ATR、EPMA分析を行った。その結果を図1と図2に示す。FTIR-IR分析結果(図1の(a))より、1650〜1800cm-1の範囲にカルボニル基の強い吸収が見られ、イミド化反応が進行したことがわかった。また、フィルム断面のEPMA分析結果(図2)より、ニッケル金属は複合材料中に高い均質性を持った高分散の状態で含有されていることがわかった。
【0080】
工程3−2
(実施例15)
実施例1で製造したニッケルイオン含有ポリアミック酸フィルムを、管状炉を用い、脱酸素塔を通すことで精製した窒素を流速100mL/minで反応管内に流しながら、5℃/minで800℃まで昇温し、更に2時間恒温にすることで炭化処理を行った。得られたニッケル含有炭素フィルムについてFTIR-ATR、XRD分析を行った。その結果を図1と図3に示す。FTIR-ATR分析結果(図1の(b))より、1000〜2000cm-1の範囲には明瞭な吸収は見られず、炭化反応が進行したことがわかった。XRD分析結果(図3)より、ニッケルは0価ニッケル金属として複合材料中へ含有されていることがわかった。またシェラーの式により、ニッケル粒子の平均径を算出したところ32nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によって、金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を得ることができる。この金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理することによって金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を得ることができる。さらに、この金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料を炭化処理することによって金属含有量が制御された金属含有炭化物複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】:実施例14で得られたニッケル含有ポリイミドフィルム複合材料と実施例15で得られたニッケル含有炭素フィルム複合材料のFTIR-ATR分析チャートである。なお、前者を(a)後者を(b)で示している。
【図2】:実施例14で得られたニッケル含有ポリイミドフィルム複合材料のEPMA分析チャートである。なお、図中の白線は、フィルム断面に沿って分析した結果検出された、ニッケルの特性X線の任意強度(濃度に比例)に対応している。
【図3】:実施例15で得られたニッケル含有炭素フィルム複合材料のXRD分析チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を金属抽出剤で処理して前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料から任意の量の金属イオンを抜き出す工程を含んでなる金属イオン含有量が制御された金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造方法。
【請求項2】
金属抽出剤で処理する前記金属イオン含有ポリアミック酸複合材料が、ポリアミック酸を金属化合物含有溶液で処理して前記ポリアミック酸に金属イオンを導入する工程によって得られたものである請求項1の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記金属イオンが、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、Ag、Pt、Auからなる群から選ばれた単独又は複数の元素の金属イオンである請求項1の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記金属抽出剤が、窒素原子含有カルボン酸である請求項1の金属イオン含有ポリアミック酸複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料をイミド化処理する工程を含んでなる金属含有量が制御された金属含有ポリイミド複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1で得られた金属イオン含有ポリアミック酸複合材料を炭化処理する工程を含んでなる金属含有量が制御された金属含有炭化物複合材料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−282682(P2006−282682A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100402(P2005−100402)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】