金属錯体の連続合成法
【課題】金属錯体の連続合成法を提供する。
【解決手段】反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことから構成される、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【効果】有機金属錯体発光素子材料を、マイクロ波加熱により、短時間で、連続合成することができる。
【解決手段】反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことから構成される、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【効果】有機金属錯体発光素子材料を、マイクロ波加熱により、短時間で、連続合成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体の連続合成法に関するものであり、更に詳しくは、反応溶液に電磁波を照射して加熱することにより、高輝度発光性有機金属錯体を短時間で、連続的に合成することを可能にする有機金属錯体の連続製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高輝度発光性有機金属錯体は、フラットパネルディスプレーや、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子材料として注目されている。最近、有機EL素子における高効率発光材料として、りん光発光材料が注目されている。特に、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au及びAgなどの遷移金属や、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tmなどの希土類元素を中心に配位した錯体は、EL素子として、高輝度発光が得られることから、数多くの提案があり、実用化されているが、製造効率、製造工程、消費エネルギーなどにおいて、更なる改良が望まれる。
【0003】
このような背景から、先行技術として、有機EL合成反応において、反応場に電磁波を照射することにより、反応時間の大幅な短縮や、反応収率の向上を可能とする合成反応に関して、多くの技術が開発されてきた(特許文献1、非特許文献1−4)。例えば、電磁波照射を行わなかった場合に比べ、反応時間が6時間以上かかっていたものが、電磁波照射により、反応時間が5分程度に短縮され、収率も30%から90%に上がるなどの報告がある。
【0004】
また、反応場に電磁波を照射した場合には、従来の加熱に比べて、触媒の使用量を削減できる、溶媒の使用量を削減できるなど、特異な現象があり、電磁波照射の非熱効果として報告されている(非特許文献5)。
【0005】
ルテニウム錯体、イリジウム錯体など、金属を配位した錯体は、安定で、極めて高い発光強度を有し、赤色、緑色、青色など、様々の蛍光波長を有する。これらの錯体の合成は、マイクロ波照射をすることで、高純度に合成できることが知られている(特許文献2)。しかし、従来法では、電子レンジを改造した反応器を用いるため、連続的な合成が難しく、また、安定した製造には不向きであり、工業的な利用への適用には課題があった。
【0006】
従来のマイクロ波あるいは電磁波の照射装置では、マイクロ波あるいは電磁波が、被照射物に同位相かつ同偏波で集中せず、電力が有効に被照射物に到達していないという問題があったが、このような問題を解決し、マイクロ波又は電磁波の照射の効果を向上させ、電力の有効利用を図ることができる楕円柱の空胴を備えたマイクロ波又は電磁波の照射装置が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、マイクロ波利用化学反応の技術分野においては、従来の電磁波照射では、反応管内への電磁波の照射強度にムラが生じるため、再現性に課題があり、また、反応溶液を撹拌させる必要があるため、その多くは、バッチ型反応によって実施されるものであった。工業的な有機金属錯体合成には、連続生産が可能な流通型(フロー型)の反応プロセスが望ましいが、適切な電磁波照射方法が見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−272430号公報
【特許文献2】特許第3825956号公報
【特許文献3】特開2006−173069号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Saito K,Matsusue N,Kanno H,Hamada Y,Takahashi H,Matsumura T,JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS PART 1,Volume:43,Issue:5A,Pages:2733−2734,Published:MAY,2004
【非特許文献2】Konno H,Sasaki Y,CHEMISTRY LETTERS,Volume:32,Issue:3,Pages:252−253,Published:MAR 5,2003
【非特許文献3】T.Matsumura、Chemistry Letters, pp2443,1994
【非特許文献4】T.Matsumura−Inoue,et.al.,Optical Materials,27,18−191,2004
【非特許文献5】A.Loupy,Microwaves in Organic Synthesis,2nd Edition,Wiley−VCH,p134,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、有機金属錯体の合成法において、連続生産が可能な流通型(フロー型)の反応プロセスを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、流通する溶液系の化学反応に適用することが可能なマイクロ波利用化学反応方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、従来法では、有機金属錯体発光素子材料には、材料選択及びその合成方法に、多くの問題がある中で、本発明者らは、マイクロ波の集中的照射法と、溶媒のマイクロ波加熱法を組み合わせたマイクロ波利用化学反応方法を用いることで、従来技術では課題であった、フロー系での有機金属錯体発光素子材料の合成に成功し、従来、1〜20分かかっていたマイクロ波合成が、滞留時間2秒で終了できることを実証することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、高い発光強度を持つ有機金属錯体発光素子材料を、短時間で、高い収率で、かつ高エネルギー効率で、連続的に合成することを可能とする有機錯体発光素子材料の連続製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことを特徴とする、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(2)上記流通管の内側の細管状の内径が、大きくても2.9mmのミリメートルサイズ細長チューブ状であり、流通管の内側の非平滑状の形状及び/又は構造が、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造であるか、あるいは、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッドを充填した構造である、前記(1)に記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(3)遷移金属が、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au,及びAg、希土類元素が、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er及びTmから選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(4)電界もしくは磁界が集中している部位において、反応溶液と接触する流通管を細くする、流通管の表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面を帯電した状態に保つことができるよう化学処理する、表面を帯電した状態に保つことができるよう物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を有する流通管が設置されている、前記(1)から(3)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(5)上記流通管の材質が、ガラス、石英、アルミナ、プラスチック、フッ素樹脂、又はポリエーテルケトン樹脂である、前記(1)から(4)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(6)金属製の円筒状の管壁とその両端を塞ぐ側壁を有する円筒型空胴共振器を有しており、円筒内部の特定部分の電界強度が極大となり、管壁部分では電界強度が0となり、かつ円筒軸に沿っては、電界強度が一様な定在波を形成させる構造を有するシングルモードキャビティに設置した流通管に反応溶液を流通させる、前記(1)から(5)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(7)電界もしくは磁界が集中している部分に、流通管を設置し、その内部に保持もしくは流通させた反応溶液を、マイクロ波加熱する、前記(1)から(6)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で対象とされる、高い発光強度を持つ有機金属錯体発光素子材料としては、遷移金属及び典型金属の錯体にあっては、錯体の中心金属であるMとしては,Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au及びAgなどの遷移金属が最も望ましいが、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Wなどの遷移元素、Al,In,Ga,Zn,Cd,Sb,Sn,Ge,Be,Mgなどの典型元素であっても差し支えない.
【0015】
これらの金属と電子受容性の大きいπ結合性を有する有機化合物を、配位子間で、1つ以上の−O−M−O−,−N−M−N−,−C−M−N−,−S−M−S−,−S−M−N−,−S−M−O−,−C−M−S−の結合(ここで、Mは中心金属を、C,N,O,Sは配位子中の炭素、窒素、酸素、硫黄元素を示す。)を有する有機金属錯体であることが望ましい。配位子の有機化合物の例としては、二座配位子として、ポリピリジン、フェニルピリジン、8−キノリノール、チエニルピリジン、三座以上の配位子として、ターピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン4酢酸、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チオアザクラウンエーテルなどを骨格とし、種々の置換基Rを有するそれらの誘導体、又はこれらの2種以上の組み合わせ、補助的な配位子として、アルキルアミン、アリルアミン、ハロゲン、β―ジケトンなどが使われる。
【0016】
また、希土類元素としては、Eu又はTbが最も良く、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,又はTmであっても差し支えなく、また、これらの元素を混合して用いても良い。この場合、発光中心は金属のf軌道にあるので、配位子としては、上記配位子に加えて、2座配位子として、βジケトン、シッフ塩基とその誘導体が望ましい。
【0017】
例を挙げれば、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジ−トリフルオロメチル−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビキノリン、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸、イソキノリンなどが例示される。
【0018】
更に、テノイルトリフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、フルイルトリフルオロアセトン、ピバロイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルアセトン、ジピバロイルメタン、モノチオアセチルアセトンなどが例示される。
【0019】
更に、フェニルピリジン、及びフッ素基、アルキル基、アリル基、トリフルオロメチル基、カルボニル基の置換基を含むフェニルピリジン化合物及びその誘導体の2座配位子、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、アザチアクラウンエーテル、チオアザクラウンエーテル及びその誘導体の6座配位子などが例示される。
【0020】
この他、混合配位子として、ハロゲン化物イオン、シアン化物イオン、チオシアン化物イオン、カルボン酸イオン、アンモニウムイオン、アミン、ピリジン、イミダゾールなどの単座配位子を含んでも良い。
【0021】
錯体の電荷が零でないときは、対イオンXとして、6フッ化リン酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、沃化物イオン又はテトラフェニルホウ素イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、カルボン酸イオンから選択される1又は複数の陰イオンを含んでも良い。nは対イオンの数で、錯体の電荷が零となるように決定される。
【0022】
本発明は、前述の有機錯体を合成するために、中心金属を構成する金属元素の塩に、配位子を混合し、望ましくは溶媒を加え、溶液又は懸濁液を反応溶液とする。反応に用いる金属塩と配位子の割合は、通常は、合成する錯体の化学量論比とするが、いずれかの反応物が過剰に存在することも差し支えない。
【0023】
反応溶液として溶媒を加える場合は、電磁波吸収の大きく、沸点の高い溶媒が好適に使用される。例を挙げて説明すれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、グリセリンなどが特に好ましく、アルコール系溶媒、水及びその他の溶媒も使用できる。また、これら溶媒を混合して用いることも差し支えない。
【0024】
これまでは、電磁波の吸収が大きい溶媒が望ましいとされているが、本発明では、電磁波の吸収が小さい溶媒でも、反応溶液として用いることができる特徴を有している。例を挙げて説明すれば、トルエン、アセトン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが利用できる。また、これらの溶媒を混合しても良く、更に、少量のイオン液体を混合しても良い。
【0025】
本発明は、連続的に供給される前述の反応溶液に対し、電磁波を照射することで、短時間で、高い収率で、かつ高エネルギー効率で、連続的に、前述の有機錯体を合成できる方法を提供するものである。以下に、本発明に望ましい電磁波照射方法を説明する。
【0026】
一般に、物質がマイクロ波によって加熱されるときの発熱は、次式で表される。
【0027】
【化1】
【0028】
この中で、|E|[V/m],|H|[A/m]は、それぞれマイクロ波の電界強度、磁界強度であり、σ[S/m]は電気伝導度、f[1/sec]はマイクロ波の周波数、ε0[F/m]は真空中の誘電率、ε’’は誘電損率、μ0[H/m]は真空の透磁率、μ’’は磁気損率、である。
【0029】
このうち、上記式1の右辺の第2項で表される電界による発熱及び第3項で表される磁界による発熱が、マイクロ波加熱に大きな影響を与えることが多い。ここでは、第2項の電界による発熱を例にとり、説明するが、上記式1の第1項や第3項についても、同様に当てはまるものである。
【0030】
マイクロ波加熱による発熱量を大きくするには、誘電損率ε’’が大きい物質を選ぶか、電界強度を大きくすることが有効であることが、上記式1から分かる。このため、誘電損率の小さい物質(非極性物質)のマイクロ波加熱は難しい。このような物質を加熱するには、電界強度Eを大きくするか、物質の誘電損率を見かけ上大きくすることが有効であることが分かる。
【0031】
電界強度Eを大きくするためには、マイクロ波を特定の部位に集中させるように照射すること、見かけ上の誘電損率を大きくするためには、被加熱対象物質と流通管(すなわち、反応管壁)との間の相互作用を有効に用いること、を実現することが必要とされる。
【0032】
一般に、電界強度を高めるためには、大型のマイクロ波発生器を利用する必要があるが、そのために、装置の大型化や価格が上がるなど課題があり、また、マイクロ波の漏えいや部分的な異常加熱が起こるなど、装置設計も困難になってしまうなどの課題がある。マイクロ波を集中させ、特定の部位に電界強度が極大になるマイクロ波照射方法を構築することで、上記問題を解決しつつ、電界強度を大きくすることが可能となる。
【0033】
本発明では、マイクロ波を特定の部位に集中して照射できる機構として、定存波を形成するシングルモードキャビティを用いる方法を使用する。シングルモードキャビティ中では、電磁界強度の強い場所と弱い場所の時間変化がないため、強い場所にマイクロ波の被加熱対象物質を配置することで、効果的なマイクロ波加熱が可能になる。
【0034】
本発明では、シングルモードキャビティの空胴共振器として、例えば、TM010シングルモードキャビティの他に、TM110モードキャビティ、TM210モードキャビティ、TM020モードキャビティ、TE01モードキャビティなどが用いられる。また、流通管しては、内径2.9mm以下のミリメートルサイズの流通管、例えば、1.5mm以上2mm以下、1mm以上1.5mm以下、0.5mm以上1mm以下の流通管が用いられる。
【0035】
本発明では、上述のような、内径がミリメートルサイズの流通管を用いることが重要である。流通管の外径及び長さについては、特に制限されるものではなく、また、キャビティ内に配置される流通管の形状及び構造についても、適宜設計することができる。
【0036】
本発明では、キャビティ内に配置する流通管の本数は、単数に限らず、複数配置することも適宜可能であり、また、複数の流通管を適宜の接続方法で接続して配置することで、流通する溶液に対するマイクロ波加熱効率を向上させることが可能である。単数の流通管を配置する方式に限らず、電界強度が極大となる場所に対応して、2〜4本の流通管を配置する方式や、単数であっても、螺旋型の流通管を配置する方式など、適宜の方式を採用することができる。
【0037】
また、本発明では、流通管の内側が、非平滑形状及び/又は構造に加工されていることが重要である。具体的には、例えば、流通管の内側の形状及び/又は構造が、細長チューブ状、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造に加工したもの、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッド状物質を充填したものなどが例示される。
【0038】
更に、本発明では、流通管を細くする、表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面に帯電した状態に保つことができるように化学処理又は物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を、少なくとも被加熱対象物質の反応溶液と接触する流通管の内側部分に形成することが例示される。
【0039】
本発明では、流通管を2.9mm以下のミリメートルサイズに細くすることにより、所期の効果が得られるが、流通管の内側に対して、上述のような、流通管の内側と流通する溶液との接触面積を拡大できる適宜の加工を施すことで、更にその効果を向上させることができる。
【0040】
本発明では、見かけの誘電損率を大きくする方法として、被加熱対象物質とそれを保持する容器(流通管)壁面とに生じる相互作用を用いることを一つの特徴としている。例えば、帯電した壁面近傍の被加熱対象物質の分子は、壁面の電荷により、誘電分極が生じる。誘電分極は、電荷の偏りが生じる現象であり、この電荷の偏りにより、マイクロ波の吸収が高くなる。
【0041】
前述の現象は、帯電した壁面でなくても起き得る。すなわち、壁面を構成する分子は、その分子内で電荷の分布があり、正電荷の強い場所や負電荷の強い部位などがある。例えば、テフロン(登録商標)は、炭素(C)とフッ素(F)から構成されているが、炭素は正電荷、フッ素は負電荷の分布が強くなっている。
【0042】
反応溶液を保持する容器としては、マイクロ波を透過しやすいものが望ましく、該容器の材質としては、例えば、ガラス、石英、アルミナ、フッ素樹脂テフロン(登録商標)、プラスチック、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂などがあげられる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、これらと同等の材質のものであれば、同様に使用することができる。
【0043】
図11に、本発明で使用される流通管ないし容器の形状例を示す。この図に示されるように、流通管としては、例えば、細長チューブ状や扁平状に形成したもの、流通管の内側をひだ状や多孔質構造に加工したもの、あるいは、粒子やロッド状の物質を充填したもの、が例示される。これらの形状及び/又は構造を組み合わせることも、適宜可能である。
【0044】
本発明では、容器表面による誘電分極を高めるために、反応溶液と容器の接触面積を広くする手段が採用される。例えば、容器を小さくすることにより、反応溶液の体積当たりの表面積を高める方法、また、容器もしくは流通管を、図に示すように、細長くする方法、扁平にする方法、その他、表面をひだ状や多孔質構造に加工する方法、更に、容器内に粒子やロッドの固体物質を充填する方法、などが採用される。
【0045】
本発明では、前述のように、電界を集中させた部位に、容器もしくは流通管に保持した反応溶液を配置することで、非極性溶媒をもマイクロ波加熱することが可能である。本発明では、反応溶液の流体を流通させる流通管が用いられるが、該流通管は、通常の流通管や容器状の流通管であっても良い。本発明では、流通管もしくは容器を含めて流通管と云うが、本明細書では、これを容器もしくは流通管と記載して説明することがある。
【0046】
本発明は、非極性物質を加熱できる特徴を有するだけでなく、マイクロ波の吸収が良い物質であっても、更に、マイクロ波の吸収量を増加させることができる。そのため、本発明では、従来の方法よりも、マイクロ波の持つエネルギーを、高い効率で、反応溶液の加熱に利用することができるという格別の作用効果が得られる。
【0047】
本発明では、マイクロ波を照射することにより、化学反応を促進させるが、本発明において、化学反応の促進とは、反応温度の低温化や、反応収率の向上、反応選択性の向上、反応時間の短縮、副生物発生の抑制、溶媒使用量の削減、原料使用量の削減、使用エネルギーの削減などを含む。本発明を、電界を例にとって説明したが、磁界についても、誘電分極を、磁気誘導に、電荷を、磁荷に、正電荷及び負電荷を、N極、S極に読み替えれば、電界と同様に適用可能である。
【0048】
本発明では、電界集中型のマイクロ波照射装置の電界集中部に、例えば、ガラス細管を配置して、該ガラス細管に、流通する溶媒を通過させることで、エネルギー効率良く、迅速に、反応溶液をマイクロ波加熱することができ、迅速な化学反応を行うことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、流通する反応溶液の化学反応に流通型マイクロ波利用化学反応方法を適用することにより、有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造することができる。
(2)流通する反応溶液を、連続的に、しかも短時間で、マイクロ波加熱することが可能である。
(3)流通型マイクロ波利用化学反応方法を、流通する反応溶液の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より低い温度で、有機錯体発光素子材料合成の化学反応を進行させることができる。
(4)流通型マイクロ波利用化学反応方法を流通する溶液系の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より高い反応収率で、有機錯体発光素子材料の化学反応を進行させることができる。
(5)流通型マイクロ波利用化学反応方法を、流通する反応溶液の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より高い反応選択性で、有機錯体発光素子材料の化学反応を進行さることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】円筒状のシングルモードキャビティ及びその電界強度分布を示す。
【図2】中心軸に沿って、円筒を貫通するように設置した、内径の細い石英反応管を示す。
【図3】反応管出口の溶液の吸収スペクトルを示す。
【図4】溶液温度とRu(bpy)3生成率の関係を示す。
【図5】反応管出口での溶液の吸収スペクトルを示す。
【図6】反応物の460nmにおける吸光度の流速に対する変化(設定温度145℃)を示す。
【図7】反応物の460nmにおける吸光度の滞留時間に対する変化(設定温度145℃)を示す。
【図8】TM110キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図9】TM210キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図10】TM020キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図11】流通管の形状及び構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
本実施例では、有機化合物として、Ru(II)polybipyridine錯体[以下、Ru(bpy)32+と記載する]を、電磁波照射によって、短時間に連続製造した例を示す。
【0053】
原料として、塩化ルテニウムRuCl3・3H2O(以下、RuCl3と記載する)と、ビピリジンbipyridine(以下、bpyと記載する)を、1:5の混合比でエチレングリコール溶媒中に溶解したものを用いた。このときのルテニウムのモル濃度は、2mMであり、ビピリジンのモル濃度は、10mMとした。
【0054】
流通管である反応管として、外径2mm、内径1mmの石英管を用いた。原料の反応溶液は、シリンジポンプにより、毎分0.05ml〜1.1mlの速度で、反応管に注入した。反応管のうち、10cmの部分は、電磁波を均一に照射できるようにした。このため、溶液が反応管を流通する間の87秒から4秒の間に電磁波の暴露を受け、加熱され、反応が進むようにした。反応物の原料と、生成物は、反応管出口直後に設置した、吸光分光器で分析することで、反応物の純度を、リアルタイムに測定した。
【0055】
電磁波を反応溶液に集中して照射する方法として、シングルモードキャビティを用いた。図1に、円筒状のシングルモードキャビティと、該キャビティに電磁波照射口からキャビティ空間に電磁波を照射したときに形成されるTM010モードの定在波の電界強度分布を示す。図より、円筒の中心軸の電界強度が強く、軸方向が均一であることが分かる。本実施例では、図2に示すように、中心軸に沿って、内径が細管状の石英反応管を円筒を貫通するように設置した装置を用いた。
【0056】
石英反応管内に、原料の反応溶液を流通させると、原料の反応溶液は、電磁波を吸収し、温度が上昇した。反応溶液の温度は、反応管の中央部の温度を、非接触式の放射温度計により測定した。この温度が一定になるよう、電磁波強度をフィードバック回路を通じて制御した。
【0057】
送液ポンプによって、原料を0.5ml/分(電磁波照射空間を通過する時間;滞留時間τ=9秒)で送液したときの、出口の溶液の吸収スペクトルを、図3に示す。図中のno M.W.は、電磁波を照射していないとき吸収スペクトルであり、原料のスペクトルに一致する。電磁波を照射することで、反応溶液の温度は上昇した。
【0058】
溶液の温度が、125℃、135℃、145℃、155℃になるように制御したときの、出口における溶液の吸収スペクトルをみると、460nm付近の吸収が増加していることが分かる。Ru(bpy)32+溶液の吸収波長は、460nmであるため、原料のRuCl3、bpyは、電磁波の照射により反応し、有機EL材料として用いられる、Ru(bpy)3に変化していることが分かる。
【0059】
表1に、上記吸収スペクトルから解析した、反応器出口でのRu(bpy)32+の反応収率を示し、図4に、その時のグラフを示す。反応溶液温度は、125℃より155℃の方が、Ru(bpy)32+が多く生成していることが確認できる。反応温度125℃においても、目的物質が合成されており、反応温度155℃では、Ru(bpy)32+が100%の反応収率で合成されていることが分かる。
【0060】
【表1】
【0061】
この条件において、溶液に電磁波が照射されている時間(滞留時間)は、9秒である。既存の報告では、電磁波を照射しない場合は、7時間で、反応収率30%、バッチ型の反応器による電磁波照射の場合は、4分間で、反応収率80%と報告されている。これらの従来法の反応時間に対し、本発明では、照射時間9秒において、反応温度125℃でも、目的物質の合成反応が始まっており、150℃では、100%の反応収率が得られており、本発明の優位性が確認できる。
【0062】
図5に、送液ポンプによる原料の反応溶液の送液速度を調整したときの、反応管出口での溶液の吸収スペクトルを示す。図中、no mwは、電磁波を照射していない条件であり、原料の吸収スペクトルに相当する。電磁波を照射し、溶液温度を145℃となるように制御した条件では、460nmをピークとするRu(bpy)32+の吸収スペクトルを確認することができ、反応が進行していることが確認できる。
【0063】
送液速度が、0.1cc/分より遅い条件では、吸収スペクトルに変化がないことから、すべての原料が目的物質のRu(bpy)32+に変換されていることが分かる。図6に、Ru(bpy)32+の反応収率の送液速度に対する変化を示し、また、図7に、吸収スペクトルの滞留時間に対する変化を示す。反応溶液温度が145℃の条件では、滞留時間20秒で、反応収率80%となることが分かる。
【0064】
以上の結果より、本発明の方法を用いることで、RuCl3及びbpyをエチレングリコール溶媒に溶解させたものを原料物質とし、電磁波を10秒照射し、溶液温度を155℃とした場合、目的物質であるRu(bpy)32+を、反応収率100%で合成でき、反応収率は、溶液温度、電磁波照射時間によって変化すること、が示された。
【実施例2】
【0065】
本実施例では、上記実施例1の他に、電磁波の照射方法として、以下に示す形体でも、同様の結果を得ることができることを実験により確認した。
(1)TM110キャビティ
図8に、電磁波の照射方法として、TM110キャビティを用いた場合を示す。この場合、電界強度が極大となる場所が2か所あり、その部分に2本の反応管を配置することで、同時に2本の反応管による合成反応を実施することができた。この場合、片側の反応管の出口をもう一つの反応管の入口に接続することで、反応管を流通する反応溶液に対し、2倍の時間電磁波を照射することができ、滞留時間を2倍にすることができることが分かった。
【0066】
(2)TM210キャビティ
図9に、TM210モードとなるキャビティ及びその電界強度分布を示す。この場合、電界強度が極大とある場所は4か所あり、4本の反応管に同時に電磁波を照射することができ、また、接続方法を工夫することで、滞留時間を4倍とすることもできることが分かった。
【0067】
(3)TM020キャビティ
図10に、TM020モードとなるキャビティ及びその電界強度分布を示す。この場合、中心の電界強度が最も強いが、その外周にも、電磁波強度が極大となる場所がある。この部分に、螺旋型の反応管を配置することで、反応溶液を、長い時間電磁波照射することができることが分かった。
【0068】
(4)矩形型キャビティ
矩形型のTE01モードのキャビティの場合も、電界強度極大の部分に反応管を配置すれば、実施例1と同様の効果が得られることが分かった。
【0069】
(5)楕円型の照射空間
電磁波を集中させる方法として、楕円型の照射空間を用いた場合、楕円は二つの焦点があり、片側の焦点から電磁波を供給すれば、も一つの焦点に電磁波を集中させることができる。この部分に、反応管を配置し、反応溶液を流通させることで、実施例1と同様の効果を得ることができることが分かった。
【実施例3】
【0070】
本実施例では、高輝度発光性有機金属錯体として用いられるイリジウム錯体の迅速合成例を示す。
(1)トリスフェニルピリジナトイリジウム(III)の合成
塩化イリジウム25mgとフェニルピリジン1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させたものを反応溶液とした。この溶液を図1に示すマイクロ波照射装置に連続的に流通させマイクロ波を照射したところ、波長510nmの緑色の発光を有するトリスフェニルピリジナトイリジウム(III)の迅速合成を行うことができた。
【0071】
(2)トリス(1−フェニルイソキノリナト)イリジウム(III)の合成
また、塩化イリジウム25mgとフェニルイソキノリン1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させた反応溶液を用いた場合は、波長615nmの赤色の発光を有するトリス(1−フェニルイソキノリナト)イリジウム(III)をマイクロ波で連続合成することができた。
【0072】
(3)トリス〔2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジナト〕イリジウム(III)の合成
塩化イリジウム25mgと2―(4,6―ジフルオロフェニルピリジン)1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させた反応溶液を用いた場合には、波長471nmの青色の発光を有するトリス〔2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジナト〕イリジウム(III)をマイクロ波で連続合成することができた。
【0073】
以上のように、本実施例により、三原色の発光を有する高輝度発光製有機錯体材料を、連続的に、マイクロ波加熱で迅速合成できることが実証された。
【実施例4】
【0074】
本実施例では、高輝度発光性有機金属錯体の配位子として用いられる2-4ジフルオロフェニルピリジンの連続合成例を示す。2−ブロモピリジン8.2mmol、2−4ジフルオロフェニルボロン酸8.2mmol、酢酸パラジウム2.4mmol、フッ化カリウム5.5mmolを、ポリエチレングリコール溶媒に溶解させ、マイクロ波照射を行い、2-4ジフルオロフェニルピリジンを迅速に合成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上詳述したように、本発明は、金属錯体の連続合成法に係るものであり、本発明により、流通する溶液の化学反応へ流通型マイクロ波利用化学反応方法を適用することにより有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造することができる。本発明により、例えば、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの非極性溶媒をもマイクロ波加熱により加熱することができ、これらを、連続的に、しかも短時間でマイクロ波加熱することが可能である。本発明は、マイクロ波電力を効率良く熱エネルギーに変換して、反応溶液の化学反応の溶液自体を効率良く加熱することにより、有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造する方法を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0076】
(図1の符号)
1 円筒型TM010キャビティ
2 マイクロ波照射口
3 TM010キャビティ内に誘起される電界分布(半径方向)
(図2の符号)
1 マイクロ波照射口
2 円筒型TM010キャビティ
3 流通管としての石英反応管
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属錯体の連続合成法に関するものであり、更に詳しくは、反応溶液に電磁波を照射して加熱することにより、高輝度発光性有機金属錯体を短時間で、連続的に合成することを可能にする有機金属錯体の連続製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高輝度発光性有機金属錯体は、フラットパネルディスプレーや、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子材料として注目されている。最近、有機EL素子における高効率発光材料として、りん光発光材料が注目されている。特に、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au及びAgなどの遷移金属や、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tmなどの希土類元素を中心に配位した錯体は、EL素子として、高輝度発光が得られることから、数多くの提案があり、実用化されているが、製造効率、製造工程、消費エネルギーなどにおいて、更なる改良が望まれる。
【0003】
このような背景から、先行技術として、有機EL合成反応において、反応場に電磁波を照射することにより、反応時間の大幅な短縮や、反応収率の向上を可能とする合成反応に関して、多くの技術が開発されてきた(特許文献1、非特許文献1−4)。例えば、電磁波照射を行わなかった場合に比べ、反応時間が6時間以上かかっていたものが、電磁波照射により、反応時間が5分程度に短縮され、収率も30%から90%に上がるなどの報告がある。
【0004】
また、反応場に電磁波を照射した場合には、従来の加熱に比べて、触媒の使用量を削減できる、溶媒の使用量を削減できるなど、特異な現象があり、電磁波照射の非熱効果として報告されている(非特許文献5)。
【0005】
ルテニウム錯体、イリジウム錯体など、金属を配位した錯体は、安定で、極めて高い発光強度を有し、赤色、緑色、青色など、様々の蛍光波長を有する。これらの錯体の合成は、マイクロ波照射をすることで、高純度に合成できることが知られている(特許文献2)。しかし、従来法では、電子レンジを改造した反応器を用いるため、連続的な合成が難しく、また、安定した製造には不向きであり、工業的な利用への適用には課題があった。
【0006】
従来のマイクロ波あるいは電磁波の照射装置では、マイクロ波あるいは電磁波が、被照射物に同位相かつ同偏波で集中せず、電力が有効に被照射物に到達していないという問題があったが、このような問題を解決し、マイクロ波又は電磁波の照射の効果を向上させ、電力の有効利用を図ることができる楕円柱の空胴を備えたマイクロ波又は電磁波の照射装置が提案されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、マイクロ波利用化学反応の技術分野においては、従来の電磁波照射では、反応管内への電磁波の照射強度にムラが生じるため、再現性に課題があり、また、反応溶液を撹拌させる必要があるため、その多くは、バッチ型反応によって実施されるものであった。工業的な有機金属錯体合成には、連続生産が可能な流通型(フロー型)の反応プロセスが望ましいが、適切な電磁波照射方法が見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−272430号公報
【特許文献2】特許第3825956号公報
【特許文献3】特開2006−173069号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Saito K,Matsusue N,Kanno H,Hamada Y,Takahashi H,Matsumura T,JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS PART 1,Volume:43,Issue:5A,Pages:2733−2734,Published:MAY,2004
【非特許文献2】Konno H,Sasaki Y,CHEMISTRY LETTERS,Volume:32,Issue:3,Pages:252−253,Published:MAR 5,2003
【非特許文献3】T.Matsumura、Chemistry Letters, pp2443,1994
【非特許文献4】T.Matsumura−Inoue,et.al.,Optical Materials,27,18−191,2004
【非特許文献5】A.Loupy,Microwaves in Organic Synthesis,2nd Edition,Wiley−VCH,p134,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、有機金属錯体の合成法において、連続生産が可能な流通型(フロー型)の反応プロセスを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、流通する溶液系の化学反応に適用することが可能なマイクロ波利用化学反応方法を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、従来法では、有機金属錯体発光素子材料には、材料選択及びその合成方法に、多くの問題がある中で、本発明者らは、マイクロ波の集中的照射法と、溶媒のマイクロ波加熱法を組み合わせたマイクロ波利用化学反応方法を用いることで、従来技術では課題であった、フロー系での有機金属錯体発光素子材料の合成に成功し、従来、1〜20分かかっていたマイクロ波合成が、滞留時間2秒で終了できることを実証することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、高い発光強度を持つ有機金属錯体発光素子材料を、短時間で、高い収率で、かつ高エネルギー効率で、連続的に合成することを可能とする有機錯体発光素子材料の連続製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことを特徴とする、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(2)上記流通管の内側の細管状の内径が、大きくても2.9mmのミリメートルサイズ細長チューブ状であり、流通管の内側の非平滑状の形状及び/又は構造が、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造であるか、あるいは、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッドを充填した構造である、前記(1)に記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(3)遷移金属が、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au,及びAg、希土類元素が、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er及びTmから選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(4)電界もしくは磁界が集中している部位において、反応溶液と接触する流通管を細くする、流通管の表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面を帯電した状態に保つことができるよう化学処理する、表面を帯電した状態に保つことができるよう物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を有する流通管が設置されている、前記(1)から(3)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(5)上記流通管の材質が、ガラス、石英、アルミナ、プラスチック、フッ素樹脂、又はポリエーテルケトン樹脂である、前記(1)から(4)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
(6)金属製の円筒状の管壁とその両端を塞ぐ側壁を有する円筒型空胴共振器を有しており、円筒内部の特定部分の電界強度が極大となり、管壁部分では電界強度が0となり、かつ円筒軸に沿っては、電界強度が一様な定在波を形成させる構造を有するシングルモードキャビティに設置した流通管に反応溶液を流通させる、前記(1)から(5)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
(7)電界もしくは磁界が集中している部分に、流通管を設置し、その内部に保持もしくは流通させた反応溶液を、マイクロ波加熱する、前記(1)から(6)のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で対象とされる、高い発光強度を持つ有機金属錯体発光素子材料としては、遷移金属及び典型金属の錯体にあっては、錯体の中心金属であるMとしては,Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au及びAgなどの遷移金属が最も望ましいが、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Wなどの遷移元素、Al,In,Ga,Zn,Cd,Sb,Sn,Ge,Be,Mgなどの典型元素であっても差し支えない.
【0015】
これらの金属と電子受容性の大きいπ結合性を有する有機化合物を、配位子間で、1つ以上の−O−M−O−,−N−M−N−,−C−M−N−,−S−M−S−,−S−M−N−,−S−M−O−,−C−M−S−の結合(ここで、Mは中心金属を、C,N,O,Sは配位子中の炭素、窒素、酸素、硫黄元素を示す。)を有する有機金属錯体であることが望ましい。配位子の有機化合物の例としては、二座配位子として、ポリピリジン、フェニルピリジン、8−キノリノール、チエニルピリジン、三座以上の配位子として、ターピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン4酢酸、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チオアザクラウンエーテルなどを骨格とし、種々の置換基Rを有するそれらの誘導体、又はこれらの2種以上の組み合わせ、補助的な配位子として、アルキルアミン、アリルアミン、ハロゲン、β―ジケトンなどが使われる。
【0016】
また、希土類元素としては、Eu又はTbが最も良く、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,又はTmであっても差し支えなく、また、これらの元素を混合して用いても良い。この場合、発光中心は金属のf軌道にあるので、配位子としては、上記配位子に加えて、2座配位子として、βジケトン、シッフ塩基とその誘導体が望ましい。
【0017】
例を挙げれば、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジ−トリフルオロメチル−2,2’−ビピリジン、2,2’−ビピリジン−3,3’−ジオール、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチル−1,10−フェナントロリン、2,2’−ビキノリン、2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸、イソキノリンなどが例示される。
【0018】
更に、テノイルトリフルオロアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、フルイルトリフルオロアセトン、ピバロイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルアセトン、ジピバロイルメタン、モノチオアセチルアセトンなどが例示される。
【0019】
更に、フェニルピリジン、及びフッ素基、アルキル基、アリル基、トリフルオロメチル基、カルボニル基の置換基を含むフェニルピリジン化合物及びその誘導体の2座配位子、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、アザチアクラウンエーテル、チオアザクラウンエーテル及びその誘導体の6座配位子などが例示される。
【0020】
この他、混合配位子として、ハロゲン化物イオン、シアン化物イオン、チオシアン化物イオン、カルボン酸イオン、アンモニウムイオン、アミン、ピリジン、イミダゾールなどの単座配位子を含んでも良い。
【0021】
錯体の電荷が零でないときは、対イオンXとして、6フッ化リン酸イオン、4フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、沃化物イオン又はテトラフェニルホウ素イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、カルボン酸イオンから選択される1又は複数の陰イオンを含んでも良い。nは対イオンの数で、錯体の電荷が零となるように決定される。
【0022】
本発明は、前述の有機錯体を合成するために、中心金属を構成する金属元素の塩に、配位子を混合し、望ましくは溶媒を加え、溶液又は懸濁液を反応溶液とする。反応に用いる金属塩と配位子の割合は、通常は、合成する錯体の化学量論比とするが、いずれかの反応物が過剰に存在することも差し支えない。
【0023】
反応溶液として溶媒を加える場合は、電磁波吸収の大きく、沸点の高い溶媒が好適に使用される。例を挙げて説明すれば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、グリセリンなどが特に好ましく、アルコール系溶媒、水及びその他の溶媒も使用できる。また、これら溶媒を混合して用いることも差し支えない。
【0024】
これまでは、電磁波の吸収が大きい溶媒が望ましいとされているが、本発明では、電磁波の吸収が小さい溶媒でも、反応溶液として用いることができる特徴を有している。例を挙げて説明すれば、トルエン、アセトン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが利用できる。また、これらの溶媒を混合しても良く、更に、少量のイオン液体を混合しても良い。
【0025】
本発明は、連続的に供給される前述の反応溶液に対し、電磁波を照射することで、短時間で、高い収率で、かつ高エネルギー効率で、連続的に、前述の有機錯体を合成できる方法を提供するものである。以下に、本発明に望ましい電磁波照射方法を説明する。
【0026】
一般に、物質がマイクロ波によって加熱されるときの発熱は、次式で表される。
【0027】
【化1】
【0028】
この中で、|E|[V/m],|H|[A/m]は、それぞれマイクロ波の電界強度、磁界強度であり、σ[S/m]は電気伝導度、f[1/sec]はマイクロ波の周波数、ε0[F/m]は真空中の誘電率、ε’’は誘電損率、μ0[H/m]は真空の透磁率、μ’’は磁気損率、である。
【0029】
このうち、上記式1の右辺の第2項で表される電界による発熱及び第3項で表される磁界による発熱が、マイクロ波加熱に大きな影響を与えることが多い。ここでは、第2項の電界による発熱を例にとり、説明するが、上記式1の第1項や第3項についても、同様に当てはまるものである。
【0030】
マイクロ波加熱による発熱量を大きくするには、誘電損率ε’’が大きい物質を選ぶか、電界強度を大きくすることが有効であることが、上記式1から分かる。このため、誘電損率の小さい物質(非極性物質)のマイクロ波加熱は難しい。このような物質を加熱するには、電界強度Eを大きくするか、物質の誘電損率を見かけ上大きくすることが有効であることが分かる。
【0031】
電界強度Eを大きくするためには、マイクロ波を特定の部位に集中させるように照射すること、見かけ上の誘電損率を大きくするためには、被加熱対象物質と流通管(すなわち、反応管壁)との間の相互作用を有効に用いること、を実現することが必要とされる。
【0032】
一般に、電界強度を高めるためには、大型のマイクロ波発生器を利用する必要があるが、そのために、装置の大型化や価格が上がるなど課題があり、また、マイクロ波の漏えいや部分的な異常加熱が起こるなど、装置設計も困難になってしまうなどの課題がある。マイクロ波を集中させ、特定の部位に電界強度が極大になるマイクロ波照射方法を構築することで、上記問題を解決しつつ、電界強度を大きくすることが可能となる。
【0033】
本発明では、マイクロ波を特定の部位に集中して照射できる機構として、定存波を形成するシングルモードキャビティを用いる方法を使用する。シングルモードキャビティ中では、電磁界強度の強い場所と弱い場所の時間変化がないため、強い場所にマイクロ波の被加熱対象物質を配置することで、効果的なマイクロ波加熱が可能になる。
【0034】
本発明では、シングルモードキャビティの空胴共振器として、例えば、TM010シングルモードキャビティの他に、TM110モードキャビティ、TM210モードキャビティ、TM020モードキャビティ、TE01モードキャビティなどが用いられる。また、流通管しては、内径2.9mm以下のミリメートルサイズの流通管、例えば、1.5mm以上2mm以下、1mm以上1.5mm以下、0.5mm以上1mm以下の流通管が用いられる。
【0035】
本発明では、上述のような、内径がミリメートルサイズの流通管を用いることが重要である。流通管の外径及び長さについては、特に制限されるものではなく、また、キャビティ内に配置される流通管の形状及び構造についても、適宜設計することができる。
【0036】
本発明では、キャビティ内に配置する流通管の本数は、単数に限らず、複数配置することも適宜可能であり、また、複数の流通管を適宜の接続方法で接続して配置することで、流通する溶液に対するマイクロ波加熱効率を向上させることが可能である。単数の流通管を配置する方式に限らず、電界強度が極大となる場所に対応して、2〜4本の流通管を配置する方式や、単数であっても、螺旋型の流通管を配置する方式など、適宜の方式を採用することができる。
【0037】
また、本発明では、流通管の内側が、非平滑形状及び/又は構造に加工されていることが重要である。具体的には、例えば、流通管の内側の形状及び/又は構造が、細長チューブ状、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造に加工したもの、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッド状物質を充填したものなどが例示される。
【0038】
更に、本発明では、流通管を細くする、表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面に帯電した状態に保つことができるように化学処理又は物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を、少なくとも被加熱対象物質の反応溶液と接触する流通管の内側部分に形成することが例示される。
【0039】
本発明では、流通管を2.9mm以下のミリメートルサイズに細くすることにより、所期の効果が得られるが、流通管の内側に対して、上述のような、流通管の内側と流通する溶液との接触面積を拡大できる適宜の加工を施すことで、更にその効果を向上させることができる。
【0040】
本発明では、見かけの誘電損率を大きくする方法として、被加熱対象物質とそれを保持する容器(流通管)壁面とに生じる相互作用を用いることを一つの特徴としている。例えば、帯電した壁面近傍の被加熱対象物質の分子は、壁面の電荷により、誘電分極が生じる。誘電分極は、電荷の偏りが生じる現象であり、この電荷の偏りにより、マイクロ波の吸収が高くなる。
【0041】
前述の現象は、帯電した壁面でなくても起き得る。すなわち、壁面を構成する分子は、その分子内で電荷の分布があり、正電荷の強い場所や負電荷の強い部位などがある。例えば、テフロン(登録商標)は、炭素(C)とフッ素(F)から構成されているが、炭素は正電荷、フッ素は負電荷の分布が強くなっている。
【0042】
反応溶液を保持する容器としては、マイクロ波を透過しやすいものが望ましく、該容器の材質としては、例えば、ガラス、石英、アルミナ、フッ素樹脂テフロン(登録商標)、プラスチック、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂などがあげられる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、これらと同等の材質のものであれば、同様に使用することができる。
【0043】
図11に、本発明で使用される流通管ないし容器の形状例を示す。この図に示されるように、流通管としては、例えば、細長チューブ状や扁平状に形成したもの、流通管の内側をひだ状や多孔質構造に加工したもの、あるいは、粒子やロッド状の物質を充填したもの、が例示される。これらの形状及び/又は構造を組み合わせることも、適宜可能である。
【0044】
本発明では、容器表面による誘電分極を高めるために、反応溶液と容器の接触面積を広くする手段が採用される。例えば、容器を小さくすることにより、反応溶液の体積当たりの表面積を高める方法、また、容器もしくは流通管を、図に示すように、細長くする方法、扁平にする方法、その他、表面をひだ状や多孔質構造に加工する方法、更に、容器内に粒子やロッドの固体物質を充填する方法、などが採用される。
【0045】
本発明では、前述のように、電界を集中させた部位に、容器もしくは流通管に保持した反応溶液を配置することで、非極性溶媒をもマイクロ波加熱することが可能である。本発明では、反応溶液の流体を流通させる流通管が用いられるが、該流通管は、通常の流通管や容器状の流通管であっても良い。本発明では、流通管もしくは容器を含めて流通管と云うが、本明細書では、これを容器もしくは流通管と記載して説明することがある。
【0046】
本発明は、非極性物質を加熱できる特徴を有するだけでなく、マイクロ波の吸収が良い物質であっても、更に、マイクロ波の吸収量を増加させることができる。そのため、本発明では、従来の方法よりも、マイクロ波の持つエネルギーを、高い効率で、反応溶液の加熱に利用することができるという格別の作用効果が得られる。
【0047】
本発明では、マイクロ波を照射することにより、化学反応を促進させるが、本発明において、化学反応の促進とは、反応温度の低温化や、反応収率の向上、反応選択性の向上、反応時間の短縮、副生物発生の抑制、溶媒使用量の削減、原料使用量の削減、使用エネルギーの削減などを含む。本発明を、電界を例にとって説明したが、磁界についても、誘電分極を、磁気誘導に、電荷を、磁荷に、正電荷及び負電荷を、N極、S極に読み替えれば、電界と同様に適用可能である。
【0048】
本発明では、電界集中型のマイクロ波照射装置の電界集中部に、例えば、ガラス細管を配置して、該ガラス細管に、流通する溶媒を通過させることで、エネルギー効率良く、迅速に、反応溶液をマイクロ波加熱することができ、迅速な化学反応を行うことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、流通する反応溶液の化学反応に流通型マイクロ波利用化学反応方法を適用することにより、有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造することができる。
(2)流通する反応溶液を、連続的に、しかも短時間で、マイクロ波加熱することが可能である。
(3)流通型マイクロ波利用化学反応方法を、流通する反応溶液の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より低い温度で、有機錯体発光素子材料合成の化学反応を進行させることができる。
(4)流通型マイクロ波利用化学反応方法を流通する溶液系の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より高い反応収率で、有機錯体発光素子材料の化学反応を進行させることができる。
(5)流通型マイクロ波利用化学反応方法を、流通する反応溶液の化学反応に適用することにより、従来法と比べて、より高い反応選択性で、有機錯体発光素子材料の化学反応を進行さることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】円筒状のシングルモードキャビティ及びその電界強度分布を示す。
【図2】中心軸に沿って、円筒を貫通するように設置した、内径の細い石英反応管を示す。
【図3】反応管出口の溶液の吸収スペクトルを示す。
【図4】溶液温度とRu(bpy)3生成率の関係を示す。
【図5】反応管出口での溶液の吸収スペクトルを示す。
【図6】反応物の460nmにおける吸光度の流速に対する変化(設定温度145℃)を示す。
【図7】反応物の460nmにおける吸光度の滞留時間に対する変化(設定温度145℃)を示す。
【図8】TM110キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図9】TM210キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図10】TM020キャビティ及び電界強度分布を示す。
【図11】流通管の形状及び構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
本実施例では、有機化合物として、Ru(II)polybipyridine錯体[以下、Ru(bpy)32+と記載する]を、電磁波照射によって、短時間に連続製造した例を示す。
【0053】
原料として、塩化ルテニウムRuCl3・3H2O(以下、RuCl3と記載する)と、ビピリジンbipyridine(以下、bpyと記載する)を、1:5の混合比でエチレングリコール溶媒中に溶解したものを用いた。このときのルテニウムのモル濃度は、2mMであり、ビピリジンのモル濃度は、10mMとした。
【0054】
流通管である反応管として、外径2mm、内径1mmの石英管を用いた。原料の反応溶液は、シリンジポンプにより、毎分0.05ml〜1.1mlの速度で、反応管に注入した。反応管のうち、10cmの部分は、電磁波を均一に照射できるようにした。このため、溶液が反応管を流通する間の87秒から4秒の間に電磁波の暴露を受け、加熱され、反応が進むようにした。反応物の原料と、生成物は、反応管出口直後に設置した、吸光分光器で分析することで、反応物の純度を、リアルタイムに測定した。
【0055】
電磁波を反応溶液に集中して照射する方法として、シングルモードキャビティを用いた。図1に、円筒状のシングルモードキャビティと、該キャビティに電磁波照射口からキャビティ空間に電磁波を照射したときに形成されるTM010モードの定在波の電界強度分布を示す。図より、円筒の中心軸の電界強度が強く、軸方向が均一であることが分かる。本実施例では、図2に示すように、中心軸に沿って、内径が細管状の石英反応管を円筒を貫通するように設置した装置を用いた。
【0056】
石英反応管内に、原料の反応溶液を流通させると、原料の反応溶液は、電磁波を吸収し、温度が上昇した。反応溶液の温度は、反応管の中央部の温度を、非接触式の放射温度計により測定した。この温度が一定になるよう、電磁波強度をフィードバック回路を通じて制御した。
【0057】
送液ポンプによって、原料を0.5ml/分(電磁波照射空間を通過する時間;滞留時間τ=9秒)で送液したときの、出口の溶液の吸収スペクトルを、図3に示す。図中のno M.W.は、電磁波を照射していないとき吸収スペクトルであり、原料のスペクトルに一致する。電磁波を照射することで、反応溶液の温度は上昇した。
【0058】
溶液の温度が、125℃、135℃、145℃、155℃になるように制御したときの、出口における溶液の吸収スペクトルをみると、460nm付近の吸収が増加していることが分かる。Ru(bpy)32+溶液の吸収波長は、460nmであるため、原料のRuCl3、bpyは、電磁波の照射により反応し、有機EL材料として用いられる、Ru(bpy)3に変化していることが分かる。
【0059】
表1に、上記吸収スペクトルから解析した、反応器出口でのRu(bpy)32+の反応収率を示し、図4に、その時のグラフを示す。反応溶液温度は、125℃より155℃の方が、Ru(bpy)32+が多く生成していることが確認できる。反応温度125℃においても、目的物質が合成されており、反応温度155℃では、Ru(bpy)32+が100%の反応収率で合成されていることが分かる。
【0060】
【表1】
【0061】
この条件において、溶液に電磁波が照射されている時間(滞留時間)は、9秒である。既存の報告では、電磁波を照射しない場合は、7時間で、反応収率30%、バッチ型の反応器による電磁波照射の場合は、4分間で、反応収率80%と報告されている。これらの従来法の反応時間に対し、本発明では、照射時間9秒において、反応温度125℃でも、目的物質の合成反応が始まっており、150℃では、100%の反応収率が得られており、本発明の優位性が確認できる。
【0062】
図5に、送液ポンプによる原料の反応溶液の送液速度を調整したときの、反応管出口での溶液の吸収スペクトルを示す。図中、no mwは、電磁波を照射していない条件であり、原料の吸収スペクトルに相当する。電磁波を照射し、溶液温度を145℃となるように制御した条件では、460nmをピークとするRu(bpy)32+の吸収スペクトルを確認することができ、反応が進行していることが確認できる。
【0063】
送液速度が、0.1cc/分より遅い条件では、吸収スペクトルに変化がないことから、すべての原料が目的物質のRu(bpy)32+に変換されていることが分かる。図6に、Ru(bpy)32+の反応収率の送液速度に対する変化を示し、また、図7に、吸収スペクトルの滞留時間に対する変化を示す。反応溶液温度が145℃の条件では、滞留時間20秒で、反応収率80%となることが分かる。
【0064】
以上の結果より、本発明の方法を用いることで、RuCl3及びbpyをエチレングリコール溶媒に溶解させたものを原料物質とし、電磁波を10秒照射し、溶液温度を155℃とした場合、目的物質であるRu(bpy)32+を、反応収率100%で合成でき、反応収率は、溶液温度、電磁波照射時間によって変化すること、が示された。
【実施例2】
【0065】
本実施例では、上記実施例1の他に、電磁波の照射方法として、以下に示す形体でも、同様の結果を得ることができることを実験により確認した。
(1)TM110キャビティ
図8に、電磁波の照射方法として、TM110キャビティを用いた場合を示す。この場合、電界強度が極大となる場所が2か所あり、その部分に2本の反応管を配置することで、同時に2本の反応管による合成反応を実施することができた。この場合、片側の反応管の出口をもう一つの反応管の入口に接続することで、反応管を流通する反応溶液に対し、2倍の時間電磁波を照射することができ、滞留時間を2倍にすることができることが分かった。
【0066】
(2)TM210キャビティ
図9に、TM210モードとなるキャビティ及びその電界強度分布を示す。この場合、電界強度が極大とある場所は4か所あり、4本の反応管に同時に電磁波を照射することができ、また、接続方法を工夫することで、滞留時間を4倍とすることもできることが分かった。
【0067】
(3)TM020キャビティ
図10に、TM020モードとなるキャビティ及びその電界強度分布を示す。この場合、中心の電界強度が最も強いが、その外周にも、電磁波強度が極大となる場所がある。この部分に、螺旋型の反応管を配置することで、反応溶液を、長い時間電磁波照射することができることが分かった。
【0068】
(4)矩形型キャビティ
矩形型のTE01モードのキャビティの場合も、電界強度極大の部分に反応管を配置すれば、実施例1と同様の効果が得られることが分かった。
【0069】
(5)楕円型の照射空間
電磁波を集中させる方法として、楕円型の照射空間を用いた場合、楕円は二つの焦点があり、片側の焦点から電磁波を供給すれば、も一つの焦点に電磁波を集中させることができる。この部分に、反応管を配置し、反応溶液を流通させることで、実施例1と同様の効果を得ることができることが分かった。
【実施例3】
【0070】
本実施例では、高輝度発光性有機金属錯体として用いられるイリジウム錯体の迅速合成例を示す。
(1)トリスフェニルピリジナトイリジウム(III)の合成
塩化イリジウム25mgとフェニルピリジン1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させたものを反応溶液とした。この溶液を図1に示すマイクロ波照射装置に連続的に流通させマイクロ波を照射したところ、波長510nmの緑色の発光を有するトリスフェニルピリジナトイリジウム(III)の迅速合成を行うことができた。
【0071】
(2)トリス(1−フェニルイソキノリナト)イリジウム(III)の合成
また、塩化イリジウム25mgとフェニルイソキノリン1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させた反応溶液を用いた場合は、波長615nmの赤色の発光を有するトリス(1−フェニルイソキノリナト)イリジウム(III)をマイクロ波で連続合成することができた。
【0072】
(3)トリス〔2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジナト〕イリジウム(III)の合成
塩化イリジウム25mgと2―(4,6―ジフルオロフェニルピリジン)1.6gを、エチレングリコール溶媒に溶解させた反応溶液を用いた場合には、波長471nmの青色の発光を有するトリス〔2−(4,6−ジフルオロフェニルピリジナト〕イリジウム(III)をマイクロ波で連続合成することができた。
【0073】
以上のように、本実施例により、三原色の発光を有する高輝度発光製有機錯体材料を、連続的に、マイクロ波加熱で迅速合成できることが実証された。
【実施例4】
【0074】
本実施例では、高輝度発光性有機金属錯体の配位子として用いられる2-4ジフルオロフェニルピリジンの連続合成例を示す。2−ブロモピリジン8.2mmol、2−4ジフルオロフェニルボロン酸8.2mmol、酢酸パラジウム2.4mmol、フッ化カリウム5.5mmolを、ポリエチレングリコール溶媒に溶解させ、マイクロ波照射を行い、2-4ジフルオロフェニルピリジンを迅速に合成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上詳述したように、本発明は、金属錯体の連続合成法に係るものであり、本発明により、流通する溶液の化学反応へ流通型マイクロ波利用化学反応方法を適用することにより有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造することができる。本発明により、例えば、アセトン、トルエン、ヘキサンなどの非極性溶媒をもマイクロ波加熱により加熱することができ、これらを、連続的に、しかも短時間でマイクロ波加熱することが可能である。本発明は、マイクロ波電力を効率良く熱エネルギーに変換して、反応溶液の化学反応の溶液自体を効率良く加熱することにより、有機錯体発光素子材料を短時間で連続製造する方法を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0076】
(図1の符号)
1 円筒型TM010キャビティ
2 マイクロ波照射口
3 TM010キャビティ内に誘起される電界分布(半径方向)
(図2の符号)
1 マイクロ波照射口
2 円筒型TM010キャビティ
3 流通管としての石英反応管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことを特徴とする、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項2】
上記流通管の内側の細管状の内径が、大きくても2.9mmのミリメートルサイズ細長チューブ状であり、流通管の内側の非平滑状の形状及び/又は構造が、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造であるか、あるいは、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッドを充填した構造である、請求項1に記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項3】
遷移金属が、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au,及びAg、希土類元素が、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er及びTmから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項4】
電界もしくは磁界が集中している部位において、反応溶液と接触する流通管を細くする、流通管の表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面を帯電した状態に保つことができるよう化学処理する、表面を帯電した状態に保つことができるよう物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を有する流通管が設置されている、請求項1から3のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項5】
上記流通管の材質が、ガラス、石英、アルミナ、プラスチック、フッ素樹脂、又はポリエーテルケトン樹脂である、請求項1から4のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項6】
金属製の円筒状の管壁とその両端を塞ぐ側壁を有する円筒型空胴共振器を有しており、円筒内部の特定部分の電界強度が極大となり、管壁部分では電界強度が0となり、かつ円筒軸に沿っては、電界強度が一様な定在波を形成させる構造を有するシングルモードキャビティに設置した流通管に反応溶液を流通させる、請求項1から5のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項7】
電界もしくは磁界が集中している部分に、流通管を設置し、その内部に保持もしくは流通させた反応溶液を、マイクロ波加熱する、請求項1から6のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項1】
反応溶液を、マイクロ波照射空間に設置した流通管を流通させることにより、該流通する反応溶液に、900MHz〜30GHzの波長範囲の電磁波を照射してマイクロ波加熱することで、有機金属錯体発光素子材料を連続製造する方法であって、上記有機錯体発光素子材料が、遷移金属もしくは希土類元素と、1種類以上の有機配位子から構成される錯体であり、上記マイクロ波加熱を、上記流通管の内側が細管状乃至非平滑状の形状及び/又は構造に加工された流通管を用いたマイクロ波利用化学反応方法により行うことを特徴とする、上記有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項2】
上記流通管の内側の細管状の内径が、大きくても2.9mmのミリメートルサイズ細長チューブ状であり、流通管の内側の非平滑状の形状及び/又は構造が、扁平状、ひだ状形状、又は多孔構造であるか、あるいは、流通管と同材料又は非同一材料の粒子もしくはロッドを充填した構造である、請求項1に記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項3】
遷移金属が、Ir,Pt,Pd,Rh,Re,Ru,Os,Au,及びAg、希土類元素が、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er及びTmから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項4】
電界もしくは磁界が集中している部位において、反応溶液と接触する流通管を細くする、流通管の表面をひだ状にする、流通管内に空隙のある物質を充填する、表面に帯電した物質をコーティングする、表面を帯電した状態に保つことができるよう化学処理する、表面を帯電した状態に保つことができるよう物理処理する、あるいはこれらの組み合わせにより、流体と接する面を増やすように加工された形状及び/又は構造を有する流通管が設置されている、請求項1から3のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項5】
上記流通管の材質が、ガラス、石英、アルミナ、プラスチック、フッ素樹脂、又はポリエーテルケトン樹脂である、請求項1から4のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の連続製造方法。
【請求項6】
金属製の円筒状の管壁とその両端を塞ぐ側壁を有する円筒型空胴共振器を有しており、円筒内部の特定部分の電界強度が極大となり、管壁部分では電界強度が0となり、かつ円筒軸に沿っては、電界強度が一様な定在波を形成させる構造を有するシングルモードキャビティに設置した流通管に反応溶液を流通させる、請求項1から5のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【請求項7】
電界もしくは磁界が集中している部分に、流通管を設置し、その内部に保持もしくは流通させた反応溶液を、マイクロ波加熱する、請求項1から6のいずれかに記載の有機金属錯体発光素子材料の製造方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図2】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−215677(P2010−215677A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60342(P2009−60342)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 経済産業省「中小・ベンチャー企業の検査・計測機器等の調達に向けた実証研究事業」(「産業技術研究開発事業(中小企業支援型)」)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(304013331)有限会社ミネルバライトラボ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度 経済産業省「中小・ベンチャー企業の検査・計測機器等の調達に向けた実証研究事業」(「産業技術研究開発事業(中小企業支援型)」)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(304013331)有限会社ミネルバライトラボ (4)
【Fターム(参考)】
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