説明

金属間化合物含有複合体、及びそれを製造するための方法

ケイ素金属間化合物、例えば金属ケイ化物を特徴とするケイ素金属溶浸法によって作製された複合体。これは、複合材料技術者に、得られる複合材料の物理的性質を設計又は調整するより大きな柔軟性を与えるばかりでなく、該溶浸材を、固化の際の膨張の量をはるかに減少して有するように組成的に設計することができ、それによってネットシェイプ作製能力を高めることができる。ケイ素溶浸によってなされる複合体の金属成分を設計することによるこれらの及びその他の結果は、複雑な形状の大きな構造物の製作を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された複合材料及びそれを製造するための溶融溶浸法に関する。具体的には、本発明は、溶融した溶浸材が、ケイ素に加え、1つ又は複数のケイ素以外の金属成分を含有する金属間化合物含有複合材料に関する。好ましい実施形態において、該金属間化合物複合材料は、また、炭化ケイ素も含有し、その少なくとも一部が、反応性溶浸(reactive infiltration)によって製造される。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)複合材は、数十年に亘り、反応性溶浸技術によって製造されてきた。一般に、このような反応性溶浸法は、真空又は不活性雰囲気下で溶融ケイ素(Si)と炭化ケイ素及び炭素を含む多孔性塊とを接触させることを伴う。濡れ状態が生じると、その結果溶融ケイ素が多孔性塊に毛管作用によって引っ張られ、そこで溶融ケイ素は炭素と反応して、追加の炭化ケイ素を形成する。このインサイチュー(in-situ)の炭化ケイ素は、一般的には相互接続している。通常、高密度体が望ましいので、そのプロセスは一般に過剰なケイ素の存在下で起こる。得られる複合体は、したがって、主として炭化ケイ素を含んでいるが、幾分かの未反応のケイ素(このケイ素もまた、相互接続している)も含んでおり、簡便な表記法でSi/SiCと表すことができる。このような複合体本体を生成するために使用するプロセスは、「反応形成」、「反応結合」、「反応性溶浸」又は「自己結合」のように互換的に表される。
【0003】
反応結合した炭化ケイ素(時々「RBSC」という簡便な表記法で表される)セラミックは、高性能な従来のセラミックの有利な特性とネットシェイプ(net shape)加工のコスト有効性とを結びつける。反応結合した炭化ケイ素セラミックは、非常に高い水準の機械的及び熱的安定性を提供する。それは、高い硬度、低密度(Al合金に似ている)及び非常に高い剛性(スチールより約70%大きい)を有する。これらの特性は、荷重下で殆どたわみを示さず、高速の機械運動により正確に制御される短い移動量を許容し、望ましくない低周波の共鳴振動を有さないコンポーネントをもたらす。加えて、その材料の高い剛性及び硬度のおかげで、コンポーネントは、研削され、ラップ仕上げをして厳しい平面性の要件を満たすことができる。更に、非常に低い熱膨張率(CTE)及び高い熱伝導率の結果、RBSCコンポーネントは、温度変化による偏向又は変位を殆ど示さず、局部加熱が起こった場合のひずみに耐性を示す。なおその上に、Si及びSiCは、多くの高温及び熱衝撃の適用において複合材に良好な性能を生じる耐熱性を有する。最後に、高密度、高純度のSiCコーティングを、極めて高い純度及び/又は腐食に対する優れた耐性が必要なときには適用することができる。
【0004】
この技術の早い時期の実施の1つにおいて、Popper(米国特許第3,275,722号明細書)は、炭化ケイ素粒子の多孔性塊内にケイ素を溶浸させることにより自己結合炭化ケイ素体を生成し、真空中1800〜2300℃の温度でグラファイトを粉砕した。
【0005】
Taylor(米国特許第3,205,043号明細書)もまた、炭化ケイ素及び遊離炭素を含む多孔性塊にケイ素を反応的に溶浸させることにより、高密度炭化ケイ素体を生成した。Popperとは異なり、Taylorは最初に、本質的に粒状の炭化ケイ素から成るプリフォーム(preform)を作製し、次いで、制御された量の炭素をその成形した塊に導入した。彼の発明の一実施形態において、Taylorは、その樹脂を分解(炭化)させるために、炭化可能な樹脂の形の炭素を加え、次いで、炭化ケイ素及び溶浸された樹脂を含む塊を加熱した。成形されたその塊を、次にケイ素の存在下で少なくとも2000℃の温度に加熱し、ケイ素を成形した塊の細孔に浸入させ、導入された炭素と反応させて炭化ケイ素を形成した。
【0006】
「ジケイ化モリブデン合金を含有する炭化ケイ素体(Silicon Carbide Body Containing a Molybdenum Disilicide Alloy)」と題された、N.G.Schreweliusの米国特許第4,174,971号明細書は、SiCプラス炭素のプリフォームを、純粋なSiの代わりに溶融Mo−Si合金により溶浸させることを特徴とする。冷却すると、第2段階としてMoSiが形成される。Si−Mo合金の高い融点のために使用した溶浸温度が2150℃と非常に高かったことに注意されたい。
【0007】
上で列挙した、高い比剛性、低い熱膨張率、及び高い熱伝導率を含む多くの卓越した特性にもかかわらず、反応結合したSiCセラミックは、一般に低い破壊強度を有しており、それ故、衝撃荷重が起こる応用においては最適ではないかもしれない。
【0008】
これを受けて、材料研究者等は、かかる本質的に脆いセラミックを多量に含む材料の強度又は耐衝撃性を高めるための様々な技術により実験してきた。恐らく、最もポピュラーなアプローチであったのは、繊維強化材を組み込み、亀裂伝播過程中の亀裂偏向又は繊維剥離及び引き抜きのメカニズムを収拾する試みである。
【0009】
General Electric社におけるHillig及び彼の共同研究者等は、1つには従来技術のものより高い衝撃強さを有する炭化ケイ素耐熱性構造物を生み出したいという求めに動機付けられて、特に炭素繊維プリフォームを反応的に溶浸させることにより、Si/SiC複合体の繊維質のバージョンを生成した。例えば、米国特許第4,148,894号明細書を参照されたい。
【0010】
より最近の、Gadow等のドイツ特許公報第19711831号明細書(米国特許出願公開第2002/142146号明細書が英語の相当物である)は、高い耐熱性繊維を特徴とする反応結合炭化ケイ素複合体、特にケイ素/炭素/ホウ素/窒素、例えば、炭素又は炭化ケイ素に基づくものを開示した。その複合体は、繊維を含有する多孔質プリフォーム中へのケイ素合金の溶浸によって形成した。そのケイ素を基礎とする溶浸材のための合金化元素は、鉄、クロム、チタン、モリブデン、ニッケル及び/又はアルミニウムから成ることができ、鉄及びクロムが好ましく、5〜50%の鉄及び1〜10%のクロムが特に好ましい。その合金化は、凝固の際のケイ素の容積増大によって引き起こされる、跳ね上がるような内部歪みの問題を解決することを対象とする。これまで、合金を含まない大きな又は壁の厚い物品においては、この冷却歪みは、多くの場合複合体全体の微細な割れ目として現れるほど十分に大きかった。かくして、材料の安定性が低下し、熱的及び機械的応力の交互の適用のもとでの割れ目の重大な成長が予測された。したがって、ケイ素相を合金化することにより、跳ね上がるような歪みが減少されるか、若しくは避けられさえもし、それによって、ケイ素の冷却歪みと関連する問題が解決された。いくらかの脆いケイ素の異なる金属への交換もまた、複合体の強度及び延性のはっきりとした増加をもたらした。
【0011】
少なくとも、Gadow等の基材は、鉄を含有する。更なる改良においては、鉄含有ケイ素基材に、不動態化層(passivation layer)の形成に適切な比でクロム、チタン、アルミニウム、ニッケル又はモリブデンの更なる添加物を添加して、それが改善された酸化耐性及び腐食耐性を生ずるようにすることが望ましい。
【0012】
合金化によって提供される強度にもかかわらず、Gadow等は、依然として繊維強化材に依存している。実際、彼等は、複合材の強度の一部は、その繊維強化材、及び、彼等が繊維を造粒過程の間にそれらを損傷してそのためにそれらの強度を損なわないように優しく扱った事実に起因すると考えている。繊維、特に炭化ケイ素に基づく繊維は、高価であり得る。更に、チョップトファイバー又はウィスカー等の短繊維は、健康障害を引き起こす可能性が有り、かかる繊維が空気中に浮遊したり、吸い込まれることがないことを確保する努力がなされなくてはならない。繊維は、多くの場合、基材に対する剥離及び引き抜きを介する強度を増進するためにセラミック組成物に添加される。興味のある炭化ケイ素複合体を強化する別の方法がもし見出されれば、そのときは繊維を使わないで済ますことができよう。
【0013】
Chiang等(米国特許第5,509,555号明細書)は、加圧しない反応溶浸による複合体の製造を開示した。合金によって溶浸されるプリフォームは、炭素から成ることができ、又は、少なくとも1つの他の材料、例えば、Mo、W若しくはNbのような金属;SiC、TiC若しくはZrCのような炭化物;Si、TiN若しくはAlNのような窒化物;ZrO若しくはAlのような酸化物;又はMoSi若しくはWSiのような金属間化合物、又はこれらの混合物等と結合した炭素から本質的に成ることができる。とにかく、そのプリフォームの塊の密度はどちらかといえば低く、約0.20〜0.96g/ccである。その液体溶浸材は、ケイ素及び金属、例えばアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、チタン、銀、金、白金及びこれらの混合物を含む。
【0014】
Chiang等の発明の好ましい実施形態において、そのプリフォームは多孔質炭素プリフォームでよく、液体溶浸材合金は、約90原子%〜約40原子%の範囲のケイ素及び約10原子%〜約60原子%の範囲の銅を含むケイ素−銅合金でよく、炭素プリフォームはケイ素−銅合金と約900℃〜約1800℃の範囲の温度で十分な時間接触させることができ、これにより、多孔質炭素の少なくとも一部が反応して炭化ケイ素を形成する。冷却する際に、それによって形成された高密度複合材は、炭化ケイ素及び少なくとも1つの相、例えばケイ素−銅合金、ケイ素及び銅が豊富な化合物の混合物、実質的に純粋な銅又はその混合物を含む相集合体によって特徴づけることができる。
【0015】
炭素の大きな断片を含むプリフォームに、多数の成分から成る液体を溶浸させる際の1つの問題は、プリフォーム内のある場所から他へ移動する場合と同じように、溶浸の過程に亘り溶浸材の化学的性質が著しく変化し得ることである。Chiang等の表3は、この点を示している。ここで溶浸材は、最初に約54原子%のSi、46原子%のCuとして開始されるが、炭素プリフォームへの溶浸後には実質的に100%のCuであった。このような著しい組成の変化は、処理を困難にする可能性が有り、この同じ表から、溶浸材合金が約30原子%のSi、70原子%のCuから開始される場合、溶浸を達成するためには圧力が必要となることが明らかにされた。圧力溶浸は、加圧しない溶浸技術よりも非常に複雑で高価な機器を必要とし、通常、圧力溶浸によって製作できる部品のサイズ及び形状はより限定される。したがって、特に明記しない限り、本発明は加圧をしないシステムに限定はしないが、本発明の溶浸は圧力の適用を必要としないものを指す。
【0016】
Chiang等は、彼らの方法が、付加的な機械加工ステップを必要とせずに、非常にネットシェイプに近い複合体の製造を可能とすると述べた。彼らは、反応したプリフォーム表面上に残っている余分の未反応液体溶浸材合金を除去するためのいくつかの非機械的技術を記載した。具体的には、Chiang等は、溶浸に続いて、プリフォーム表面上の過剰の液体合金を蒸発又は揮発させるのに十分な温度まで複合体を加熱してもよいと述べた。別法では、反応したプリフォームを過剰な未反応液体溶浸材が溶解したエッチング液中に浸漬し、反応したプリフォームをそのままにしておくことができる。更に、反応したプリフォームは、未反応の液体溶浸材合金と化学的に反応する、例えば炭素又はTi、Zr、Mo又はWのような金属の粉末と接触させることができた。
【0017】
米国特許第5,205,970号明細書において、Milivoj Brun等も、溶浸プロセスによる炭化ケイ素体の生成に続く過剰な溶浸材を除去することを取り上げた。具体的には、Brun等は、反応生成体を炭素フェルトのような溶浸材「吸上げ手段」と接触させた。より一般的には、吸上げ手段は、溶浸材が溶融する温度で固体である、溶浸材に濡れることができる材料の多孔性体を含み得る。好ましくは、吸上げ手段は、少なくとも反応生成体中に残っている毛管と同じ、またはより大きい毛管を有する。したがって、孔を満たしていた反応生成物体中の溶浸材は、吸上げ手段中に引き寄せられ、反応生成体中の孔を離れる代わりに、反応生成体中に残った。その溶浸材は、ケイ素又はケイ素中の限定された溶解性を有する金属を含有し、その金属がケイ素中にその飽和点より上で存在するケイ素合金であり得る。
【0018】
過剰に付着したケイ素を除去する問題に対するBrun等の「吸上げ手段」の溶液は、恐らく有効なものであるが、形成された複合体を吸上げ手段と連絡させ、液相線温度(liquidus temperature)の上まで再加熱する付加的な処理ステップを必要とする。必要なことは、形成された複合体に付着した余分な溶浸材を除去するか、又はその割合を少なくとも最小にするための手段である。
【0019】
したがって、本発明の1つの目的は、改良された強度を有するケイ素含有複合体を生み出すことであり、好ましくは強度化メカニズムとしての繊維強化材に依存しないことである。
【0020】
本発明の1つの目的は、溶浸プロセスによって複合体を生成させ、それによって余分な溶浸材相が、固化の際に制御できる容積変化を有するようにすることである。
【0021】
本発明の1つの目的は、アルミニウム修飾した反応結合複合体より耐熱性を示す複合体を生み出すことである。
【0022】
本発明の1つの目的は、その物理的性質が、溶浸材中に更なる金属成分(1つ又は複数)を存在させることによって少なくとも幾分かは調整することができる複合体を生み出すことである。
【0023】
本発明の1つの目的は、純粋なケイ素の融点より著しくは高くない温度で複合体を生み出すことができることである。
【0024】
本発明の1つの目的は、大きくて単一の構造物である複合体を生み出すことができることである。
【0025】
本発明の1つの目的は、強化材中に負荷の大きい複雑な形状の複合体を生み出すことができることである。
【0026】
本発明の1つの目的は、必要に応じて又は望ましい場合は、インサイチューの炭化ケイ素相の含有が皆無かそれに近い複合体を生み出すことができることである。
【0027】
本発明の1つの目的は、高い速度の割合で数多く複合体を生み出すことができることである。
【0028】
本発明の1つの目的は、ネットシェイプに近く、それによって仕上がり物品の所要の寸法を獲得するために必要な研削及び/又は機械加工の量を最低限にする複合体を生み出すことである。
【0029】
本発明の1つの目的は、所要の研削又は機械加工はいずれも、プリフォームの段階で実質的に完全に実施することができる複合体を生み出すことである。
【0030】
本発明の1つの目的は、細かい点がプリフォームの段階でその物体に入り込むように研削及び/又は機械加工することができる複合体を生み出すことである。
【発明の開示】
【0031】
本発明のこれらの目的及び他の望ましい特性は、溶融ケイ素含有金属の溶浸によって複合体を作製する中で使用される材料及び採用されるいくつかの処理条件の慎重な制御を通して達成される。具体的には、そして本発明の最初の主要な態様によれば、当該溶浸材は、金属ケイ素を含有する少なくとも1つの成分と、金属チタンを含有する少なくとも1つの他の成分とによる、少なくとも2つの成分を含む。
【0032】
ケイ素は、固化に際し、正味約9パーセントの体積膨張を受けることが示されている。したがって、本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ケイ素を、固化時に正味の体積が縮小する材料と混合するか又は合金化することにより、固化時に正味の体積変化をはるかに少なく受けるか、又は実質的にすら受けない余分な溶浸材成分を有するケイ素含有複合体を生成させることが可能である。したがって、固化による多孔質化及び固化による溶浸材成分の浸出を示さないケイ素含有複合体の製造が実現できる。
【0033】
しかしながら、チタンがケイ素と混合されると、得られる混合物又は合金の成分は、互いに化学的に反応して金属間化合物を生成する傾向がある。したがって、溶浸による複合材形成の工程中にこれが起こる場合、その現象は、凝固の際のケイ素の膨張とチタンの収縮又は縮小を均衡させるものであるとはいえず、それよりもむしろ、より正確には、ケイ素金属を異なる物質−ケイ素含有金属間化合物に転化するものと説明することができよう。
【0034】
炭素は、溶浸を増強するために、しばしば多孔性塊に加えられる。(特に明記しない限り、以後、用語「多孔性塊」は、用語「プリフォーム」を含むものと理解される。)しかし、多成分溶浸材を用いる1つの派生的問題は、溶浸材が多孔性塊又はプリフォームに溶浸するときに、特に溶浸材金属のケイ素成分がそこに含まれる炭素と反応して炭化ケイ素を生成するときに、溶浸材の化学組成に起こる変化である。したがって、本発明者等は、溶浸される多孔性塊の反応できる又は「遊離」の炭素の含量を比較的低いレベルに保つ意義及び重要性を見出したものである。好ましくは、多孔性塊中の遊離炭素は、信頼できる方法で完全な溶浸を達成するために必要なだけの低い量に保つが、プリフォーム(例えば自立性の多孔性塊)を使用する場合には、炭素のバインダー品質を過度に譲歩することはしない。このように、大きい物体には、溶浸材金属組成の最小の変化で溶浸することができ、これにより、その物体全体に亘り比較的均一な組成の分散した残留金属成分を有する炭化ケイ素複合体がもたらされる。
【0035】
多成分溶浸材組成物の使用は、残留金属成分が固化の際にゼロ又は殆どゼロである体積変化(膨潤又は収縮)を有する、複合体を生成する能力を超える付加的な利点を有する。ケイ素金属は、脆いことで知られており、そこでケイ素を異なる物質に転化することは、脆い物質をより脆くないものに転化することである。その上、ケイ素金属は、金属類並みに相当硬いけれども、ケイ素金属間化合物は更に硬い。硬いことは、多くの候補となる用途、例えば、精密設備のためのバリスティックアーマー(ballistic armor)及びコンポーネント等における望ましい性質である。
【定義】
【0036】
本明細書で使用される「ブロッカー」又は「溶浸ブロッカー」とは、溶融溶浸材の溶浸の進行を停止させるために使用することができる材料を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「基礎」又は「基礎材料」とは、溶浸プロセスに参入する成分、例えば、溶浸すべき溶融溶浸材及び多孔性塊を支持するために使用される実質的に非溶浸性の材料である。これらの材料は、多孔質であってもなくてもよく、自由流動性又は自立性(free-flowing or self-supporting)のいずれであってもよい。
【0038】
本明細書で使用される「RBSC」とは、反応結合した炭化ケイ素を意味する。
【0039】
本明細書で使用される「反応結合」、「反応形成」、「反応性溶浸」又は「自己結合した」とは、インサイチューで生成した少なくとも幾分かの炭化ケイ素を含有する複合体を生成するケイ素金属を含有する溶浸材による炭素(反応させることができる形をしている)を含有する多孔性塊(例えばプリフォーム)への溶浸を意味する。
【0040】
本明細書で使用される「強化材」とは、溶浸されるべき多孔性のプリフォームに提供され、溶融溶浸材とは実質的に反応しない材料を意味する。したがって、該強化材は、形成された複合体中に存在し、一般に複合体全体に、特にインサイチューのSiC及び余分な溶浸材料の相中に分配されている。かくして、その強化材の物理的性質が、複合体材料の全体の物理的性質の少なくとも一部に寄与する。「充填剤」は、「強化材」と実施的に同義である。
【発明を実施するための様式】
【0041】
本発明の方法によれば、少なくとも1つの強化材及び場合によって炭素を含む多孔性塊には、少なくともケイ素及びチタンを含む溶融した多成分金属を溶浸する。一般的には、溶融金属と多孔性塊を構成している材料の物体の間には濡れ状態が存在するか又は生み出され、その結果溶浸は毛管現象によって起こり得る。ケイ素及びチタン金属の少なくとも1つは、例えば余分な溶浸材料として形成された複合体中に留まり得るが、より一般的には、少なくともチタンのいくらかは、溶浸材料のケイ素成分の少なくともいくらかと化学的に反応して1つ又は複数のチタン−ケイ素金属間化合物を形成する。そのケイ素含有金属間化合物、例えば、「ケイ化チタン」は、1つ又は複数の強化材料と同様に、複合体全体に分配される。該多孔性塊が、いくらかの反応可能な(「遊離の」)炭素を含むときは、溶浸材のケイ素成分はこの炭素と反応して炭化ケイ素を形成することができる。この炭化ケイ素は、時々「インサイチュー」の炭化ケイ素と呼ばれる。チタン成分を炭素との反応に何とか参入させることもそれが望ましい場合には可能であり得るが、好ましい実施形態においては、チタン成分は殆ど参入せず、せいぜいほんの少量のチタン炭化物(単数又は複数)を形成するのみであり、発明者等はこの状態で満足している。
【0042】
溶浸金属の始動時の量が多孔性塊の隙間を埋めるのに不十分である場合、少なくともその物体中の余分な未反応の金属のいくらかは不連続の分離したポケット(pockets)として分布させてもよい。通常は、過剰の溶浸金属が多孔性塊に供給され、複合体中の余分の金属は相互接続される。
【0043】
本発明において、溶浸材金属の他の成分(単数又は複数)は、ケイ素金属と化学的に反応して金属間化合物、即ち、金属間ケイ化物を形成するものである。多くのケイ化物は、耐熱性であり、反応なしでケイ素と合金化することができるいくつかの他の金属とは違って、複合体全体に対して耐熱特性を維持する助けをすることができる。ケイ素金属は、約1410℃の融点を有しており、比較的耐熱性である。しかし、ケイ素金属は、いくつかの欠点、最も顕著には、少なくともその延性/脆性転移より低い温度でのその固有の脆性が問題である。また、ケイ素は、それが、溶融状態から固化するとき、体積の跳ね上がるような増大を示す点で特異的である。これによって、ケイ素金属、例えばRBSCを含有する複合体から作られる構造、特に大きく及び/又は複雑な形状をした構造における問題が生じる。特に、ケイ素金属成分は、固化の間に約9%膨張し、この膨張が構造を破壊しない場合でも、それによって複合体材料から出てくる過剰のケイ素の小滴又はその他の形態がもたらされ、しばしば執拗に複合体材料の表面に付着する。本発明のケイ化物の形成は、そのとき、ケイ素金属をただ単に合金化するのではなく、むしろケイ素を異なる物質に転化する化学反応である。殆どのケイ化物は、固化の際にケイ素が示す、跳ね上がるような体積の増加は示さない。
【0044】
ケイ素−チタン溶浸材料を形成するためには、ケイ素元素及びチタン元素(elemental silicon and titanium)をるつぼに入れてそれらのそれぞれの融点より高い温度に加熱すればよい。しかし、チタン及びケイ素は、金属間化合物を形成できるために、最も早い結果を得るために、その加熱は、形成され得る任意の金属間化合物の融点よりで上であってもよい。このことは、また、チタンは最初に元素形態で提供されなければならないということはなく、代わりにそれ自体を1つ又は複数のケイ化チタン金属間化合物の形で提供することができることを示唆している。しかし、簡単にするために、これらの予備調査においては、チタンは、元素形態のケイ素に提供して溶浸材料を生み出すことにする。
【0045】
チタン−ケイ素相図(以下の図1参照)に示されているように、チタンは、ケイ素といくつかの金属間化合物を形成する。これらのケイ化物の大部分はチタンに富む、即ち、それらは相図のチタン側にある。ケイ素側にある2つ、したがって本発明に対する少なくとも初期の当該物は、Tiの原子パーセントがそれぞれ33パーセント及び50パーセントであるTiSi及びTiSiである。TiSiは、それが比較的高い融点を有しているが、この相を形成するために必要なチタン−ケイ素溶浸金属組成物を溶融するために過度に高い温度を必要とするほど高くはないという意味で耐火性なので、本発明に対しては興味深い。TiSiは、ケイ素金属よりわずかに高い融点を有しており、そのため溶浸及び反応の後に組成物中にケイ素金属がいくらかでも残っている場合は、TiSiが、最初に凝固する。遊離ケイ素の量が過剰でない限り、これは、凝固する最後の少量の金属が膨張するケイ素であり、それによって固化穿孔の効果を軽減する傾向があるという観点から望ましいものであり得る。
【0046】
本発明は、多成分溶浸材の1つ、数個又は全ての構成物質を溶浸すべき多孔性塊中、又はその塊と溶浸材料に隣接する物体の間の接触面に置くことを含む。しかし好ましくは、溶浸材料の構成物質は、場合によってインゴット又はその他のバルクの形をしている合金又は混合物として提供し、それを次に溶浸すべき多孔性塊と接触させる。その溶浸金属は、溶浸すべき多孔性塊と直接接触するように配置してもよく、又はその溶浸金属は、溶融した溶浸金属が多孔性塊に向かって移動して入り込むための通路又は導管を生み出す吸上げ手段を2つの間に置いて、多孔性塊から実質的に隔離したままとしてもよい。その吸上げ手段は、溶融溶浸金属によって濡れる殆どの任意の材料であり得るが、炭化ケイ素が好ましい。
【0047】
中空の複合体、又は少なくとも成形した内面を有する複合体を作製するために特に有用である1実施形態において、溶浸金属の固形物は、例えば、機械加工によって成形すればよく、次に反応的に溶浸される多孔性塊を、溶浸金属のその成形された表面の少なくとも一部に接触させる。その溶浸金属が多孔性塊に溶浸するとき、その部分は、形成されたケイ素含有複合体中で反対の又は逆行する形で再生される。例えば、成形した溶浸金属が、多孔性塊の材料によって実質的に完全に覆われている場合、得られる複合体は中空であり、その内面は、溶浸金属の逆行形又は反対形である。即ち、溶浸金属の成形体が依然として存在する場合、それは、2つのジグゾーパズルピースのように成形複合体と適合することができよう。ここでの形成された複合体の厚さは、溶浸金属との接触に持ち込まれる多孔質材料の量又は厚さ、及び溶浸に利用できる溶浸金属の量によって調節することができる。
【0048】
1実施形態において、本発明は、形成される複合体の構成物質としてインサイチューの炭化ケイ素を製造することを意図している。したがって、溶浸される多孔性塊又はプリフォームは、遊離の炭素を含有し、多成分溶浸材料の少なくとも1つの成分はケイ素であり、少なくとも1つの他の成分は、チタンであるかチタンを含む。
【0049】
ケイ素溶浸材への添加によりケイ素含有複合体を強化できることは、重要な良い結果を有する。例えば、これまでは、これらのどちらかといえば本質的に脆い材料を強化する好ましいアプローチは繊維強化材を複合材料に添加することであった。しかしこのアプローチは、いくつかの欠点を有する。長繊維は、撹拌を必要とするセラミック加工にはあまり受け入れられない。短繊維は呼吸障害をもたらす可能性がある。繊維の存在は、圧粉体機械加工の間に達成することができる表面仕上げを、特に従来技術においては評判の良いアプローチである繊維を束の形で加える場合には劣化する可能性がある。強化を実現するためには、繊維は、周囲の基材から剥離して引き抜かなければならない。この効果を獲得するために、しばしば、1つ又は複数のコーティングを繊維に塗布する必要があり、それはそのシステムの費用及び複雑さを追加する。コートした繊維は、そのコーティングが損傷されないようにしばしば加工中に優しく取り扱わなければならず、これによって恐らくミュラー混合(Muller mixing)又はボールミル粉砕等のいくつかの加工技術を排除することになる。したがって、ケイ素含有複合材料を繊維の添加に頼らずに強化できることは重要である。
【0050】
一般に、溶浸が実施される温度は、溶浸が迅速且つ確実に起こる最低の温度である。また、一般に、温度が高ければ高いほど、溶浸は強固となる。不必要に高い溶浸温度は、必要なエネルギーコストと余分な加熱及び冷却時間の点で無駄が多いばかりでなく、望ましくない「副」反応が多分に起こり得る。度を過ごさない温度では不活性であり、溶浸できないものと通常は思われているいくつかのセラミック材料(例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素)は、特に真空下での高温(例えば、約1550℃以上)においてそれらの不活性な性質を失い得るか又はケイ素−チタン融液によって溶浸される。したがって、溶浸されるべき多孔性塊を溶浸されるように収容又は担持し、担持材中への余分な溶浸、又はそれとの反応の度合いを最小にすることは、かなりの難題となる。かかる余分な溶浸は、一般的には溶浸した塊に付着した余分な溶浸材料を生じ、それを除去するための費用のかかる研削又はダイアモンド切削が必要となる。
【0051】
ケイ素及びチタン含有金属の溶浸が行われる雰囲気は、通常は、不活性又は穏やかな還元性である。したがって、アルゴン、ヘリウム、フォーミングガス及び一酸化炭素を使用することができる。しかし、少なくとも溶浸の信頼性又はロバスト性を促進する観点からは真空環境が好ましい。
【0052】
勿論、ケイ素/チタン含有溶浸材によって溶浸される塊又はプリフォームは、ローカル処理条件のもとで溶浸材に浸透性であるものでなくてはならない。十分な温度、例えば約2150℃が与えられて、純粋な炭化ケイ素多孔性塊は、加圧しない方式でのケイ素金属よって溶浸することができる(例えば、Alliegro等の米国特許第3,951,587号明細書参照)が、より一般的には、その多孔性塊は、そのプロセスを促進するいくらかの元素又は遊離炭素を含有する。炭素がより多く存在すればするほど、より多くの炭化ケイ素がインサイチューで生成する。多量の炭素を含有する多孔性塊を反応的に溶浸させることは可能であるけれども、本発明との関連ではそれは様々な理由により一般に好ましくない。例えば、溶融した溶浸金属は、組成的にあまりにも多くプリフォームの1ゾーンから次に変化する。大きな組成変化は、通常少なくとも2つの理由によって望ましくない。第1は、改まった金属組成は、最早それは溶浸されるべき多孔性塊を濡らさないようになり得る。第2に、首尾よく十分に溶浸した多孔性塊は、溶浸金属の成分の分布を均衡させるためにある程度の高温で一定時間維持しなければならない。大きなコンポーネントについては、かかる「焼きなまし時間(annealing times)」は、いつまでも非現実的であり得る。
【0053】
多量の炭素が望ましくないもう1つの理由は、炭素の化学反応の際の約2.35倍の体積変化のためである。生成するSiCの容積を、プリフォーム中に提供することができない場合、その複合体は肥大化して、寸法の制御を困難にし、悪くすると亀裂を生じ得る。
【0054】
その上更に、図2に示されるように、大量の炭素の反応は、形成されるインサイチューのSiCが相互接続したSiCの大きなゾーンを形成する原因となる。それはあたかもこれらのゾーンが、いくつかの特性、例えば強度及びバリスティックレジスタンス(ballistic resistance)等に対して有害である1つの大きなSiC粒子として挙動し、機械加工又は研削で得ることができる表面仕上げを害するかのようである。R.MorrellのHandbook of Properties of Technical Engineering Ceramics(1985)の47ページに登場する顕微鏡写真は、従来技術の反応結合した炭化ケイ素の典型である。アサイニー(assignee)の非合金化RBSC材料、例えば本明細書の実施例1のそれ等を表す図3との対比は、際立っている。この好ましい実施形態の微細構造は、あたかも炭素を含まないSiC粒子の緩慢な塊が、図2とは異なって、各SiC粒子の全体に近い「周囲」を見ることができるために、実質的に反応することなく、インサイチューでのSiCの形成なしでまるでケイ素によって溶浸されたかのように見える。しかし、プリフォーム中にはいくらかの炭素が存在するために、実際にはいくらかのインサイチューのSiCが存在する。実際、アサイニーのRBSCは、一般に、かなりわずか又は薄っぺらなネットワークではあるが、例えばSiC強化体を共に相互接続するそのネットワークを形成するように十分なインサイチューのSiCを含有し、少量又は軽量の上記相互接続性を生じる。
【0055】
したがって、インサイチューのSiCマトリックス相による軽度の相互接続のみによる比較的小さい粒径を有する複合体の製造は、本発明の好ましい実施形態を表す。この好ましい実施形態において、加工温度を「過剰」な状態、例えば、粒子がはっきりと成長したり、又は共に焼結することができる温度から守ることも重要である。例えば、炭化ケイ素のβ型からα型への結晶学的形態の転換は、約2050℃で起こる。その結晶転換は、しばしば大きな粒子の成長を伴う。的確な条件によっては、わずかに高めの温度(おおよそ約2100℃)に加熱し、それでもこの再結晶を避けることが可能であり得る。焼結もある程度粒径に依存するが、本発明者等は、従来技術においてはSiCプリフォーム管が、ケイ素による反応溶浸に先立って約2150℃で予備焼結されたことを指摘しておく。例えば、Schreweliusの米国特許第4,174,971号明細書を参照されたい。したがって、プリフォーム粒子への相互接続を低い量に維持するため、及びこの好ましい実施形態の特徴であるインサイチューのSiCのβ型を維持するために、本発明者等は、溶浸、又は溶浸した塊の後処理を、約2000℃を超える温度で実施することは推奨しない。
【0056】
1つ又は複数のSiC等の硬い又は高剛性の充填材が高度に装填されている複合体を製造することはしばしば望ましい。大量のβ型(インサイチュー)SiCを形成することにより高度のSiC装填を達成することは魅力的であり得る。この場合もやはり、このアプローチは好ましくない。それよりむしろ、望ましいのは、炭素ではなくむしろ硬い溶加材(単数又は複数)が高度に装填されるように多孔性の塊又はプリフォームを反応的に溶浸することである。本発明の代替の1実施形態として、反応できる炭素がほんの有るか無しかの硬い溶加材を高度に装填したプリフォームは、溶融したケイ素−チタン合金又はケイ素及びチタンを含有する金属を溶浸する。
【0057】
この代替の実施形態において、本発明のケイ素−チタン溶浸複合体は、改良したケイ素化プロセスによって製造することができる。ここで、ケイ素−チタン合金であり得るケイ素及びチタンを含有する多成分溶融溶浸材は、一般に真空又は不活性ガス(例えば、アルゴン)の環境であるように講じられた処理条件下で、溶融溶浸材によって濡らすことができるセラミック材料の多孔質の塊に接触させる。これらの要件を満たすことができる1つのセラミック材料は、実質的に接続していない微粒子の緩い塊等の粒子の形をしていてもよく、軽く焼結した若しくは「素焼きの(bisque-fired)」材料の形をしていてもよく、又は重度に焼結しており、高密度(しかし、依然として相互接続した細孔を含む)の形をしていてもよいSiCである。反応結合工程における炭素の存在は、そこの溶浸を促進する。この炭素は改良したケイ素化プロセス中には完全ではないにしても実質的に欠けているために、後者は一般に反応結合工程ほどには溶浸プロセスが盛んではない。したがって、幾分高い溶浸温度が必要であり得、及び/又は真空環境(例えば、不活性ガス環境とは違って)が必要であり得る。チタン含有強化材、例えば、炭化チタン又は二ホウ化チタンも多孔質の塊として機能することができる。
【0058】
更なる別の実施形態として、本発明者等は、ある塗装、最も顕著には、耐熱塗装が、プリフォーム粒子の比較的高い度合いのお互いへの相互接続を有することで有利であり得ることも指摘する。これは、比較的多量の炭素をプリフォームに導入して多量のインサイチューのSiCを生成させるか、溶浸の前又は途中にプリフォームを焼結させるか、又はこれらの何らかの組み合わせによって達成することができる。
【0059】
本発明者等がその発明の主たる実施形態に対して好ましいとするものは、約10容積パーセント以下、より好ましくは約6容積パーセント以下の炭素を含有する多孔質の塊である。本発明が意図している製品の多くに対して、その代表的な選択物は、実施例のいくつかに示されており、特に好ましい範囲は、約1容積パーセントから約5容積パーセントである。
【0060】
多孔質の塊の残りの殆ど又は全てを作り出すものは、作業条件のもとで実質的に不活性である1つ又は複数の材料、例えば、「強化材」から成ることができる。本発明で使用するための強化材の候補としては、炭化物、例えば、SiC、BC、TiC及びWC;窒化物、例えば、Si、TiN及びAlN;ホウ化物、例えば、SiB、TiB、及びAlB;並びに酸化物、例えば、Al及びMgOが挙げられる。その強化材の形態は、製造することができる任意のもの、例えば、微粒子、繊維、プレートレット、薄片(flake)、中空球等であり得る。個々の強化物体は、1ミクロン未満から数ミリメートル、例えば約5ミリメートルまでの範囲のサイズであることができ、数ミクロンから数百ミクロンまでの範囲のサイズが一般的である。好ましい微細構造を最大限生成させるため、本発明者等は、強化材の形態は、粒子等の個々の分離した物体を選ぶが、本発明によって同様に採用される代替の実施形態においては、その強化材は、網状、骨格又は他の相互接続した形態をしたものであり得る。
【0061】
上記材料の多くは、妥当な溶浸条件下ではケイ素含有溶融物によっては本質的に溶浸できない。したがって、これらの材料のいくつかは、後でより詳細に説明する基礎又は溶浸ブロッカー材料としての候補であり得よう。しかし、ケイ素含有溶浸材料に濡れることができ、及び/又は反応性であるコーティング材料、例えば炭素を塗布することによりこれらの材料への少なくともある程度の溶浸を通常は達成することができる。
【0062】
他の候補となる強化材は、処理中に化学的に反応する傾向があり得る。例えば、炭化ホウ素は、高温で溶融ケイ素及び溶融チタンの両方と反応する傾向がある。炭化ホウ素強化材を被覆することによって問題に対処することができる。別法では溶融溶浸材は、時々、この反応に対する傾向を抑えるように組成的に修正することができる。いくらかのホウ素及び場合によっていくらかの炭素を溶融ケイ素−チタン溶浸材中に溶解することは、この点における助けとなる。好ましくは、該溶浸材は、炭化ホウ素の反応を抑える助けをするために溶解ホウ素で飽和させる。
【0063】
強化材が炭化ケイ素を、特に微粒子の形態で含むときでさえ、反応形成された炭化ケイ素マトリックスを強化材又は充填材を構成する炭化ケイ素と区別することは可能である。具体的には、この反応形成された炭化ケイ素は、少なくとも本処理条件、例えば、比較的低い処理温度のもとでは、一般的に、β型多形体のものである。これに対して、殆どの市販の炭化ケイ素、特に汎用グレードは、強化材としてごく一般に使用されるα(即ち、高温)型である。したがって、当業者には知られている分析技術によって、その2つの形を区別することができ、複合体中に存在するそれぞれの相対量に関する少なくともおおよその定量的データを提供することができる。しかし、溶浸が例えば2000℃を超えるような高温で行われるか又は複合体が同様の高温で後処理される場合は、β型多形体は、α型に不可逆的に転換し、インサイチューのSiCをこの素地の強化材SiCと区別できなくする。
【0064】
1つ又は複数の強化材を含有する多孔性塊は、それらの充填密度又は理論密度に関してかなり幅をもたせることができる。例えば、薄片、組織の乱れた繊維、又は網状構造を含む多孔性塊は、わずか5〜10パーセントの密度であり得る。それとは正反対に、焼結したプリフォームは、85〜95パーセントの密度であり得る。しかし、少なくともバルク溶融溶浸材を使用する溶浸は、多孔性塊の少なくともいくらかの孔が、連結しており、その塊の外側まで連続していることが必要で、閉鎖した孔には溶浸することができない。その上、プリフォームを加工するために使用する処理の選択によって、充填密度に影響を及ぼすことができ、例えば、液相を使用する処理は、液体媒体を使用しない技術、例えば乾式プレス等より一般により高密度に充填する。かくして、名目上モノサイズの強化物体を約30〜55容量%の密度に乾式プレスすることができる場合、スリップ(slip)又は堆積成形プリフォームであれば、約40〜65容量%充填となり得る。しかし、異なるサイズを有する強化物体は、例えば粒子充填を増すために一緒にブレンドすることができる。かくして、かかる乾式プレスしたプリフォームは、約35〜65容量%充填であり得、スリップ成形等の液相を用いる成形は、約45〜70容量%充填であり得、堆積成形又はチキソトロピック(thixotropic)成形プリフォームは、約45〜75又は80容量%充填、或いは特定のパラメーターによっては、多分約85容量%もの高さでさえあり得る。以上のように、プリフォームの充填は、非常に柔軟性であり、高度のところまで技術的に誘導することができる。
【0065】
必須ではないが、多孔性塊又はプリフォームに加えることができる炭素源としては、通常、炭素元素の形のもの、例えば、グラファイト、カーボンブラック又はランプブラック(lampblack)等を望ましくは採用することができる。それ故、炭素は、結晶形又は非晶形であり得る。炭素成分の形は、しかし、普通は溶浸させるのが困難である強化材、例えば酸化物を溶浸させようとするとき、重要となり得る。微粒子形の炭素は、炭化ケイ素の塊に溶浸するには満足できるものであるが、その他の強化材は、炭素が、網状になっているかネットワーク若しくは骨格構造を形成していることを必要とするかもしれない。特に好ましいのは、強化物体上のコーティングの形をしている炭素である。かかる炭素の形は、例えば樹脂としての液体形態の炭素を多孔性塊中に導入することによって達成することができる。かかる炭素質の樹脂を含有する多孔性塊は、次に熱的に処理し、その樹脂を分解又は熱分解して、グラファイト、非晶性カーボン又はそれらのいくつかの組み合わせであり得る個体の炭素とする。いくつかの炭素質樹脂を利用することができ、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びフルフリルアルコールが挙げられる。本発明において好ましいのは、炭化水素系樹脂、例えば糖又はデンプンに基づくものであるが、プリフォーム中により多くの炭素が必要な場合は、より高い「チャー収量(char yields)」を提供するフェノール樹脂又はフルフリルアルコール等の樹脂を考えてみてもよい。樹脂溶浸と熱分解のサイクルは、1回又は複数回繰り返すことができ、それによって炭素含量を増加させることもできる。
【0066】
溶浸プロセスを支援することに加えて、炭素質樹脂により果たされるもう1つの重要な役割は、バインダーそのものである。強化材微粒子の緩い塊を溶浸することはできるが、特に目標が何らかの特別で望ましい形状の物品を作製することであるより好ましい手段は、自立性のプリフォームを使用することである。一般的には、強化材の緩い塊を、バインダー、好ましくはここでは炭素質バインダーと混合し、次に当技術分野では既知の技術を用いて所望の形状にプレス又注型又は成形する。次にバインダーを硬化することによって、形成した物体を自立性にする。
【0067】
注意深い観察及び実験を通して、本発明者等は、溶浸が起こるか増進される傾向がある一般的な条件(又は条件を変化させる動向)、及び溶浸が起こらない傾向、又は阻害される傾向があるような条件を示した。例えば、本発明者等は、ケイ素を含む溶浸材の炭素を含む多孔性塊中への反応性溶浸は、その炭素が他の元素と化学的に結合しているよりも元素形で存在するときにより力強く起こることを観察した。その上、その溶浸は、炭素元素(elemental carbon)が三次元的に接続した形で存在するときに、離散した粒子の形とは対照的により力強い。その多孔性塊が炭素元素以外の成分、例えば、窒化アルミニウムを含むとき、その三次元的に接続した炭素元素相は、例えば、少なくともいくらかの窒化アルミニウム体上のコーティングとして存在することができた。更に、その溶浸は、絶対温度に関して並びに同相温度(例えば、溶融温度の百分率又は画分)に関しての両方で溶浸の温度が上昇するときにより力強い。なお更に、溶浸は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とは対照的に真空下で行うときにより力強い。
【0068】
グラファイトは、伝統的に溶融溶浸材及びプリフォームを収容するために選択する伝統的材料であった。今や様々な多孔性塊の溶浸性の違いの注意深い観察によりこれらの違いを活用して利点にすることが可能となっている。具体的には、好ましい実施形態において、作業条件下で実質的に溶浸できないような材料は、溶浸すべき多孔性塊を支えるための「基礎」材料として使用することができる。この結果は、これらの溶浸できない支持材料は、時々「ボート(boats)」と呼ばれ、多くの場合グラファイトから加工される金型、ハウジング又は容器より通常は著しく安価であるために重要である。
【0069】
正味の全固化収縮を示すケイ素−チタン溶浸材組成物を使用する場合でさえ、プリフォーム、溶浸材料及び支持材料の組み立ての思慮深いレイアップ(lay-up)設計により、この収縮にしばしば起因する固化の孔は、大幅に回避することができる。例えば、プリフォームを完全に溶浸するために必要な最低限を超えて溶浸材料、言い換えれば、溶浸されるべき塊に供給する溶浸材の「溜め」を提供することができる。その組み立ては、そのとき、複合体中で凝固する最後の領域に溶融した溶浸材料をその物体の外側から供給するように設計する。この様にして、固化の孔は、いずれも複合体の外側に発生する。時々、この望ましい結果を達成するために、複合体の方向性固化が採用される。
【0070】
ケイ素の溶浸が関係する場合は、正反対の問題により頻繁に実際に遭遇し、その場合は溶浸材が固化に際して膨張し、複合体は、材料の余分な容積を持ちこたえることができない。複合体は、それ故、その(今や)過剰な溶浸材をにじみ出す。にじみ出たケイ素は、複合体の表面に小滴又はビーズとして現れ、しばしばそこに強力に付着する。この厄介な物質は、付着している複合体を損傷する危険が共存する、研削又はグリットブラスト仕上げによって除去しなければならないことがあり得る。この余分な製造のステップを受け入れなくてもよいこともまた望ましい。
【0071】
ケイ素成分の固化膨張の更により深刻な結果は、複合構造全体に起こり得る膨張であり、それによってネットシェイプ部品を製造する努力が困難になる。更に悪いのは、かかる固化膨張が複合体の亀裂を引き起こす危険、即ち、複合体の寸法が増すと増大する危険である。
【0072】
それ故、余分なケイ素金属のいくらか又は実質的に全てを上記のような固化を示さない物質に化学的に転化することによって溶浸材料のケイ素成分のこの固化膨張を減少又は解消さえできることは、ケイ素含有複合材料の分野における重大な進歩を意味する。かかる複合体は溶浸されるときの条件で寸法的により正確に作製できるばかりでなく、にじみ出たケイ素を除去する余分な工程ステップを必要とすることなく製造することができる。
【0073】
ケイ素溶浸複合材料のこれまでの製造業者は、溶浸後の研削又は機械加工を実施するしか選択の余地はなかったが、新たな現実は、かかる最終的な研削/機械加工は、大いに最小限化し、場合によっては排除することさえできるものである。それ故、この操作は、とにかく実施する必要がある程度まで、ケイ素溶浸の前の多孔性塊がまだプリフォームの段階のときに今では実施することができる。この「圧粉体機械加工」は、高密度の複合体を研削又は機械加工するより相当に容易で速い。しかし、本発明者等は、この段階で精度及び上質な細部を得るために、プリフォームの強化材成分を構成する物体のサイズは制限する必要があり得ることを認める。これは、最後の研削/機械加工とは違って、圧粉体機械加工は、物体の一部を除去するよりもむしろその全体を除去する傾向があるためである。つまり、プリフォームの段階の細部の機械加工の限界は、プリフォームに与えることができる表面仕上げによって制限され、言い換えるとプリフォームを構成している物体のサイズによって支配される。本発明者等は、実質的に全てのプリフォーム強化材、例えば、微粒子、薄片等が、約200ミクロン未満のサイズであり、好ましくは少なくとも90容量パーセントが約100ミクロン未満であり、更により好ましくは、少なくとも90容量パーセントが約50ミクロン未満のサイズであることが望ましいことを見出した。例えば、以下の実施例で使用されるプリフォームは、メジアン径が約13ミクロンである微粒子を特徴とするセラミック成分を含有する。
【0074】
ケイ素溶浸技術の能力、又はより特定的には、大きな金属間化合物を含有する複雑な形状の構造物を組み立てることの考えられる実現可能性を受け入れるか、少なくとも示すケイ素溶浸技術に関連する処理パラメーターの発見は、この可能性を最もうまく利用するプリフォーム化技術の選択の手引きを提供する。具体的には、ケイ素溶浸技術の可能性を実現させることは、プリフォーム化の選考方法を、大量生産には効果的であるが、1つには必要なプレス又は注入の圧力が高い傾向があるために一般に比較的小さい部品のみである乾式プレス又は注入成形等のプリフォーム化技術から排除する傾向がある。次に、複雑な形状の要件は、プリフォーム加工を、テープキャスティング又は押し出し等の技術から、これらがそれぞれ平らな若しくはシート状の、又は均一な断面のプリフォームを作製するために使用される傾向があるために排除する傾向がある。プリフォームの比較的高い、例えば、充填材又は強化材料の充填についての要件は、プリフォーム加工を、圧縮成形等の技術から排除する傾向がある。この技術は、乾式プレスの低圧の形であり、乾式プレスでは一般に高い充填にはつながらないと考えられる。
【0075】
本発明を、ここで以下の実施例を参照して更に説明する。
実施例I(合金化せず;本発明ではない)
【0076】
この実施例は、反応結合したSi/SiC複合体の生成を示す。より具体的には、この実施例は、樹脂状前駆物質に由来する相互接続した炭素相を含有する炭化ケイ素プリフォーム中への実質的に純粋なケイ素の溶浸を示す。
【0077】
反応結合したSiC(RBSC)の製造は、むしろ簡単であり、他所に詳細に記載されている。図4に示されているように、SiC粒子及び炭素から成るプリフォームを製造し、その後溶融したSiを溶浸する。溶浸中に、Siと炭素が反応してセラミック粒子を一緒にセラミックネットワークに結合するSiCを形成する−それ故反応結合したと称する。アサイニーの標準的な技法においてはプリフォーム中の炭素は熱分解したバインダーの結果である(即ち炭素又はグラファイト粉末は添加しない)。
【0078】
最初にプリフォームを以下のように調製した。100重量部のCRYSTOLONブロッキー(標準品)、グリーンの炭化ケイ素微粒子(St.Gobain/Norton Industrial Ceramics、マサチューセッツ州ウースター)を、15部のKAROコーンシロップ(corn syrup)(CPC International Inc.、ニュージャージー州エングルウッドクリフ)と混合して一体化した。その炭化ケイ素微粒子の内容は、約56ミクロンのメジアン粒径(グレードF240)を有する約70パーセント及び約13ミクロンのメジアン粒径(グレードF500)を有する残りからなった。混合は、モデルRV02アイリッヒ高剪断ミキサー中で以下のように行った。最初にSiC微粒子を「低速」で2分間混合した。次に半分のコーンシロップを加え、「低速」で更に1分間混合を続けた。次に混合を中断し、ミキシングボールをこすった。次いでコーンシロップの残りの半分を加え、「低速」で1分間混合した。ボールをこするための別の中断の後、混合を「低速」で更に2分間再び行い、次に「高速」での1分間で仕上げた。
【0079】
その混合物を、16メッシュの網(約1180ミクロンの平均口径)に押し通して凝集物を破壊した。
【0080】
次に、約51mm平方と厚さが約10mmあるクーポンを鋼製金型中で約28MPaの加圧のもとで一軸プレスした。
【0081】
SiC微粒子及びコーンシロップを含有するプリフォームを、金型から取り出し、制御された雰囲気の炉に入れた。市販の純粋な窒素が流れる雰囲気中で、プリフォームを1時間当り約100℃の割合で約800℃の温度まで加熱した。この温度を約2時間維持した後、コーンシロップは実質的に完全に熱分解して炭素となった。炉とその在中物を1時間当り約200℃の割合で冷却した。冷却して実質的に周囲温度に戻した後、プリフォームを炉から回収し、理論量の約61パーセントの容積充填を有するものと計算された(かさ密度測定に基づく)。同様の試料について行った酸化による炭素分析は、プリフォーム中に約2.5重量パーセントの遊離炭素の存在を示した。したがって、このプリフォームは約59パーセントのSiC充填を示した。
【0082】
次に、溶浸プロセスを閉じ込めるレイアップを調製した。具体的には、約375mm×約298mm×深さ約51mmのATJグレードのグラファイトハウジング(Union Carbide Corp.,Carbon Products Div.、オハイオ州クリーブランド)の内表面を、窒化ホウ素のスラリー又はペイントで1平方センチメートル当り約3.1mgの割合又は厚さで被覆した。その窒化ホウ素ペイントは、4重量部のLUBRICOAT窒化ホウ素ペースト(ZYP Coatings、テネシー州オークリッジ)を3部の水と混合して調製し、モデル95Binksスプレーガンを用いてスプレー塗装した。
【0083】
46グラムのプリフォームを、塗装したグラファイトハウジング中に入れた。重量で約0.5パーセントのFe(最大で)を含み、残りがSiである約23グラムの塊の形のケイ素(Elkem Metals Co.、ペンシルベニア州ピッツバーグ)を、そのプリフォームの最上部に配置した。ハウジングの上端をゆったりした(密封ではない)BNをコートしたグラファイトの蓋で覆った。
【0084】
その完成したレイアップを次にほぼ周囲温度(例えば、約20℃)の真空炉中に入れた。空気を粗引き機械ポンプを用いて抜き、約25ミリトルの残圧の低真空をその後維持した。そのレイアップを次に周囲温度から約1350℃の温度まで1時間当り約200℃の割合で加熱した。約1350℃の温度を約1時間維持した後、その温度を約1550℃の温度に1時間当り約200℃の割合で更に上昇させた。約1550℃の温度を約1時間維持した後、その温度を約1450℃の温度に1時間当り約100℃の割合で低下させた。この温度で保持することなく、そのレイアップ温度は約1300℃の温度まで1時間当り約25℃の割合で更に低下させ、それをすぐに続けて1時間当り約200℃の割合でほぼ周囲温度まで冷却した。
【0085】
炉の雰囲気を周囲圧に戻し、レイアップをその炉から取り出した。そのレイアップの分解により、ケイ素が完全にプリフォームに溶浸して、炭化ケイ素及びケイ素を含む複合体を形成したことが明らかとなった。溶浸が始まった表面の残留ケイ素をサンドブラストで除去した後、浸水技法により、約2.89g/ccのその複合体の密度が測定された。SiCとSiの理論密度を用いることにより、その物体が容量で約64パーセントのSiCと36パーセントのSiのものと計算された。この64容量%のSiCのうち、約5容量%はインサイチューで生成したことを示す(64%〜59%)。
【0086】
アサイニーの最近製造されたRBSCセラミック(SSC−802グレード)の特性を下の表1に提供する。これらのデータは、情報源、即ち実際の提供品のQCデータ、標準データシート、及び最近の試験結果(例えば、CTEについての)の組み合わせに由来する。
【0087】


【0088】
実施例II(本発明に属する)
この実施例は反応結合SiCのための特定の工程改善候補、即ちSi溶浸材へのTiの添加について論ずる。
【0089】
純粋なSiの代わりにTi−Si合金をプリフォームに溶浸するために、2ステップの方法を用いた。まず、真空融解を用いてTi−Si合金を生成させた。2番目にその合金を、一般的な反応溶浸稼動における標準的な純粋なSiの代わりに使用した。図1(E.A.Brandes及びG.B.Brookにより編集されたSmithells Metals Reference Book−第7版、Butterworth−Heinemann、英国オックスフォード、1998年)に示されているように、Ti−Siの融点は、Ti含量が約50重量%未満においては純粋なSiのそれより過度に高くはない。その上、Ti含量の増加によって、構造物中の元素ケイ素の量は減少するはずである(Ti−Si金属間化合物−凝固時の組成によって、TiSi又はTiSiのいずれかに転化する)。比較として、先に開示されたSchreweliusによる研究(米国特許第4,174,971号明細書)は、SiCプラス炭素のプリフォームに純粋なSiの代わりに溶融したMo−Si合金を溶浸することを特徴とした。冷却すると、第2の相としてのMoSiを形成した。Si−Mo合金類の高い融点のために、使用された溶浸温度は、アサイニーのその標準的な溶融Si溶浸プロセスのために使用される約1500℃の温度と比較して、2150℃と非常の高かったことに注目されたい。Schreweliusの研究の目標は、高性能SiC/MoSi複合体加熱素子を製造することであった。本プログラムは、処理温度から冷却した際にSi−Ti金属間化合物を形成させることを目標として、SiCプラス炭素のプリフォームに溶融したSi−Tiを溶浸することを試みることである。
【0090】
この変量(Si合金へのTiの添加)の反応結合SiC生成物への影響を検討するため、3水準のTi添加(1つは対照):Si、Si−15重量%Ti、及びSi−40重量%Tiを調査した。溶浸は真空下で行った。溶浸のための温度は、特にSi−40重量%Ti合金に対する液相線温度がわずかに高いために、非合金化ケイ素の「標準的」(本発明のものではない)溶浸用より少し高目にしたが、それでも約1600℃より下を保った。他の全てのパラメーターは実施例Iにおけるものと実質的に同じに保った。
【0091】








【0092】
X線回折による組成結果を表3に提供する。
【0093】


【0094】
Tiの添加は、Siを犠牲にしてケイ化チタンの形成が期待される応答を生じている(表3)。この置換は、表2に示されているようにより高い剛性(弾性率)を引き起こす。
【0095】
反応結合SiC成分を処理することの1つの大きな欠点は、Siが凝固する際に膨張する事実である。それ故、処理後、過剰に付着したSiが部品の表面に存在し、除去しなければならない(例えば、グリットブラスチング(grit blasting)により)。更に、部品が複雑な幾何学的配置(例えば、内部チャネル)を有する場合、これらの特殊品は、Siが処理温度から冷却する間に膨張するのでそれによって満たされる。複雑な特殊品、例えば、深い穴、ポケット又はチャネルからの余分なSiの除去は、非常に困難である。
【0096】
問題を最小限に抑える1つの方法は、微細構造中のSiの量を減少することである。そうすれば、凝固の際に膨張する材料の存在が少ない。これは、凝固の際にSiの膨張を他の金属の収縮によって均衡させるように、Siを別の金属と合金化することによって達成することができる。この考え方は、過去にAl−Si合金に対して本発明のアサイニーによって開示された。しかし、この系の不利な点はAl−Si合金に対する幅の広い凝固温度範囲である(図5)。冷却の際、Siが最初に凝固して(高温で)膨張する。次にずっと低い温度でAl−Si共晶混合物が凝固し、収縮する。Siの高温の凝固及び膨張は、満たされた内部チャネルをもたらし、Al−Si共晶混合物の低温の凝固及び収縮は固化空隙の形成をもたらす。Al−Si系での別の問題は、Alが最終構造中に残されることである。Alは、高い剛性、高温強度、耐食性、及び/又は高硬度が必要とされる用途には望ましくない。上で論じたTi−Si合金の使用は、小さい凝固範囲(図1)のためにはるかに有効である。全相が同じ温度近くで凝固するため、膨張及び収縮による問題は、大幅に軽減される。更に、最終の複合材料は、良好な特性を有する1つ又は複数のケイ化チタン金属間化合物を包含する。
【0097】
Ti−Si合金のアプローチを用いて複雑な形状の反応結合SiCコンポーネントを製造する能力を評価するため、次のステップを実施した:
・リブ付きプリフォーム及びカバーを製造する−標準処方(図6)
・SiC粉末及びエポキシ接着剤を用いてプリフォームを接着させる
・Si−40Ti合金を1520℃で溶浸する
・溶浸した部品をダイスカットして内部を示す(図7)
・断面をはめ込み、研磨してボンドライン(bond line)を示す(図8)
【0098】
「標準処方」とは、実施例Iのプリフォーム組成物及び処理を指す。プリフォームを互いに付着させる接着剤は、次のようにして調製した。付着用接着剤は、重量で約68パーセントのCRYSTOLONグリーン炭化ケイ素微粒子(St.Gobain/Norton Industrial Ceramics)と、重量で約15部の硬化剤対100部の樹脂から成るCiba 8603 ResinFusion(商標)エポキシ系(Ciba Specialty Chemicals Corp.、ミシガン州イーストランシング)である残りを含んだ。その炭化ケイ素微粒子は、プリフォームサブユニットを調製するために使用したものと同じグレード及び割合を特徴とした。この混合物は、単純に全ての成分をプラスチックのビーカーに加え、手でその混合物が均一になるまで撹拌することによって調製した。付着表面は接着剤混合物を塗布し、プリフォームの半分を軽い圧力の下で接合した。その組み立てられたプリフォームアッセンブリーを次に一晩おいて接着剤のエポキシ成分を硬化させた。
【0099】
図7に基づき、付着したプリフォームアッセンブリーは、余分な金属が内部空隙に入ることなく完全に溶浸した。図8に基づき、ボンドラインは、十分に溶浸されており、ピンと張っている。小レベルの孔が図8に見られるが、これはプリフォームに炭素を加え(少な目の第2段階)及び/又は溶浸合金中のTi−Si比を最適化することによって減少させることができる。
【0100】
したがって、この実施例により、チタンのケイ化物を含有する複合材料は、反応溶浸技術によって製造することができ、得られた複合材料は、産業上有用な複雑な形状の物品に加工することができることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の方法及び組成物は、複雑な形状、成果の中間段階での機械加工、高い精度と精密さ、高い比剛性、低い熱膨張係数、高硬度、改良された強靭性及び/又は高い耐摩耗性を必要とする用途での有用性が見出されよう。それにより、本発明のケイ化物金属間化合物含有複合体材料は、精密設備、ロボット工学、工具、装甲、自動車、電子部品実装及び温度管理、並びに半導体加工産業においてとりわけ興味深いものである。本ケイ化物含有複合材料は、磨耗が重大なコンポーネントに対する候補材料である。本発明により意図されている具体的製品としては、人体及び車両の外装、半導体ウェハー取扱装置の構成部品、真空チャック、静電チャック、空気軸受けハウジング又は支持フレーム、電子パッケージ及び基板、工作機械ブリッジ及びベース、反射鏡基板、反射鏡ステージ(mirror stages)並びにフラットパネルディスプレイセッターが挙げられる。
【0102】
通常の技量の技術者であれば、本明細書で説明されたものに本発明の範囲又は精神のいずれからも逸脱することなく様々な改良を加えることができること、及び特許法が保護しようとしているものが本明細書に添付されている特許請求の範囲内及び適切なその同等物に示されていることを容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】チタン−ケイ素二相図を示す図である。
【図2】従来技術のRBSCの光学写真であり、大量の炭素反応が、形成されるインサイチューのSiCが相互接続したSiCの大きなゾーンを形成する原因となることを示している。
【図3】アサイニーの非合金化RBSC材料、例えば、本明細書の実施例1のものを示す光学写真である。
【図4】Si/SiC複合材料を製造するための反応結合過程の概略図である。
【図5】Al−Si相の図である。
【図6】圧粉体機械加工したプリフォーム−リブ付きの物体とカバーの写真である。
【図7】Si−40Ti合金を溶浸し、きれいな内部を見せるように区分化したプリフォームの写真である。
【図8】図7の溶浸したプリフォームのボンドラインの光学写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素を含む第1成分と、
ケイ化物を含む少なくとも1つの金属間化合物を含む第2成分(該第2成分の少なくとも一部は相互接続している)と
を含み、前記第1成分と前記第2成分とが混合されている複合体。
【請求項2】
前記ケイ化物が少なくとも1つのケイ化チタンを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記少なくとも1つのケイ化チタンがTiSiを含む、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
チタン元素及びケイ素元素の少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記第2成分中に分散している少なくとも1つの強化材を含む、第3成分を更にを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記強化材が繊維質以外の形態を有する、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記強化材が、粒子、プレートレット、薄片及び中空球から成る群から選択される少なくとも1つの形状から本質的になる、請求項5に記載の複合体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの強化材がSiCを含む、請求項5に記載の複合体。
【請求項9】
前記強化材が、サブミクロンから約5ミリメートルまでの範囲のサイズの物体を含む、請求項5に記載の複合体。
【請求項10】
前記炭化ケイ素の少なくとも一部がα形をしている、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
前記強化材が炭化ケイ素を含まない、請求項5に記載の複合体。
【請求項12】
前記炭化ケイ素が、前記複合体の約24容量パーセント以下をなす、請求項1に記載の複合体。
【請求項13】
前記炭化ケイ素が、前記複合体の約12容量パーセント以下をなす、請求項1に記載の複合体。
【請求項14】
前記強化材が、複数の個々の物体を含み、前記複合体が、強化材の隣接する物体の間にほんの小量又は軽量の相互接続性を示す微細構造を更に含む、請求項5に記載の複合体。
【請求項15】
請求項1に記載の複合体であって、前記少なくとも1つの金属間化合物であるケイ化物が、前記複合体の少なくとも1つの物理的性質を意図的に修正するために存在し、前記複合体のどれか別の成分又は前記複合体の処理の不純物としてただ単に存在するのではない複合体。
【請求項16】
炭化ケイ素複合材料を製造するための方法であって、
少なくとも1つの強化材及び約10重量パーセントより多くはない、溶浸を促進する炭素を含む多孔性塊の提供と、
ケイ素と、チタンを含む少なくとも1つの金属とを含む溶浸材の提供と、
溶融溶浸材を形成するための前記溶浸材の液相線温度より上の温度への前記溶浸材の加熱と、
前記多孔性塊と接触するように前記溶融溶浸材を伝達することと、
前記溶融溶浸材の前記多孔性塊中への溶浸と、炭化ケイ素を形成させるための前記ケイ素の少なくとも一部と前記炭素の少なくとも一部との反応と、チタンの少なくとも1つのケイ化物を形成させるための前記ケイ素の少なくとも更なる一部と前記チタンの少なくとも一部との反応と、それによって、炭化ケイ素、前記少なくとも1つの強化材、及びチタンの少なくとも1つのケイ化物を含む、複合体の形成と、
を含む方法。
【請求項17】
残りの溶融溶浸材を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記強化材が炭化ケイ素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記強化材が、窒化ケイ素及び二ホウ化チタンの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記強化材が、微粒子、繊維、プレートレット、薄片及び網状構造から成る群から選択される少なくとも1つの形状を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記多孔性塊が、容量で約0.1パーセントから約10パーセントの遊離炭素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記遊離炭素を、炭水化物系樹脂を前記プリフォーム中に導入し、非酸化雰囲気中で該樹脂を熱分解することによって形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記遊離炭素が微粒子の形状をしている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記強化材が、約1ミクロンから約1ミリメートルの範囲のサイズの物体を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記多孔性塊がプリフォームを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記プリフォームが堆積成形によって製造される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶浸が非酸化雰囲気中で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記溶浸ステップが真空で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記溶浸材が、少なくとも10重量パーセントの前記チタンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの強化材が、炭化物、ホウ化物、窒化物及び酸化物から成る群から選択される物質を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの強化材が、SiC、BC、TiC及びWCから成る群から選択される炭化物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記多孔性塊が、約5重量パーセントより多くない前記溶浸促進性炭素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの強化材がSiCを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項34】
前記強化材が、サブミクロンから数ミリメートルの範囲のサイズの物体を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項35】
複合材料を製造する方法であって、
少なくとも1つの強化材を含み、溶浸促進性炭素を本質的に含まない多孔性塊の提供と、
ケイ素と、チタンを含む少なくとも1つの金属とを含む溶浸材の提供と、
溶融溶浸材を形成するために、前記溶浸材の液相線温度より上の温度に前記溶浸材を加熱することと、
前記多孔性塊と接触するように前記溶融溶浸材を伝達することと、
前記溶融溶浸材を、前記多孔性塊中に溶浸させ、前記チタンの少なくとも一部を前記ケイ素の少なくとも一部と反応させて前記少なくとも1つの強化材を含む複合体、及び前記少なくとも1つの強化材中に分布している少なくとも1つのケイ素含有金属間化合物を形成することと、
前記溶融溶浸材を凝固させることと
を含む方法。
【請求項36】
半導体ウェハー取扱装置の構成部品、空気軸受支持フレーム、電子パッケージ、電子基板、反射鏡基板、反射鏡ステージ、半導体ウェハーチャック、工作機械ブリッジ、工作機械ベース及びフラットパネルディスプレイセッターから成る群から選択される製品であって、
少なくとも1つの強化材、及び前記少なくとも1つの強化材中に分布されている残留溶浸成分を含む複合材料(前記残留溶浸成分は、ケイ素を含む少なくとも1つの金属間化合物を含む)
を含む製品。
【請求項37】
前記少なくとも1つの金属間化合物が、チタンのケイ化物を含む、請求項36に記載の製品。
【請求項38】
前記少なくとも1つの強化材が、微粒子、繊維、プレートレット、薄片及び網状構造物から成る群から選択される形態を有する、請求項36に記載の製品。
【請求項39】
前記複合材料が、容量で約10パーセントから約90パーセントの前記強化材を含む、請求項36に記載の製品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図1】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−527456(P2009−527456A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556451(P2008−556451)
【出願日】平成19年2月24日(2007.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/004797
【国際公開番号】WO2007/100698
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(502027329)エム キューブド テクノロジーズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】