説明

金担持粒子及びその製造方法、並びにその金担持粒子を用いた導電性膜及びその製造方法

【課題】金粒子が担体粒子上に単分散して担持された金担持粒子と、その金担持粒子を用いた導電性と透明性に優れた導電性膜を提供する。
【解決手段】本発明の金担持粒子は、担体粒子と、前記担体粒子の表面に担持された金粒子とからなる金担持粒子であって、前記金粒子の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径は、共に1〜10nmであり、前記金粒子の担持量は、金担持粒子の全重量に対して1〜50重量%であり、前記担体粒子は、酸化物粒子からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性材料として利用可能な、金担持粒子及びその製造方法、並びにその金担持粒子を用いた導電性膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金を含む貴金属ナノ粒子は、各種触媒としての効果が高く、古くから多種多様な分野で利用されている。また、金及び銀のナノ粒子は、熱をかけることで分解可能な有機材料と混合することにより、導電性ペーストとしても多く利用されている。これらの導電性ペーストは、他種の導電性材料と混合することで導電性の向上を図る、導電助剤としても使用される。更に、貴金属ナノ粒子を担体上に担持させた貴金属担持粒子は、燃料電池用電極触媒、排ガス浄化触媒、抗菌材料、空気清浄化触媒等として効果が高く、貴金属ナノ粒子の担持技術は、近年特に検討が進んでいる。
【0003】
これらの貴金属ナノ粒子の担持方法としては、最も簡便な方法として、貴金属ナノコロイド溶液を得た後、担体を分散させて貴金属ナノコロイドを担体表面に吸着させる方法がある。しかしながら、貴金属ナノコロイド溶液を作製する際には、貴金属ナノ粒子同士の凝集を防ぎ、溶液中での分散状態を保つために、保護コロイドとして有機高分子等の有機材料を用いることが必要となる。これらの有機材料は、ポリマー担体等の疎水性の担体表面と貴金属粒子との親和性を高めることにも有効に働くが、担体上に担持させた後も、貴金属粒子表面に残留する。このため、有機材料の隙間を縫って貴金属元素まで到達することの可能な、各種ガスに対する触媒としては有効であるが、貴金属粒子同士をホッピング伝導が可能な距離まで近接させて電子の移動を行う必要のある、導電性材料としては適さないものである。
【0004】
また、これらの有機材料を使用せずに、貴金属粒子のみを金属酸化物の担体上に担持させる方法としては、担体存在下の貴金属溶液中で、多価アルコールや水素化ホウ素ナトリウム等により還元すれば、担体上に貴金属を析出させることが可能である。しかしながら、これらの方法については、白金金属に関しては、白金元素の持つ特有の性質により、効率的にナノ微粒子を生成し、他種金属との合金にするなどにより、ナノサイズを保持することも可能である。しかし、金粒子に関しては、特許文献1、2に示したように、還元された金属の粒成長を抑制してナノ粒子を得るために、保護剤として有機材料を使用し、金粒子の表面を被覆することによって微粒子を保つ必要がある。更に、これらは有機溶剤中で金原料を還元する方法であり、量産には適さない。
【0005】
一方、特許文献3には、担体と金化合物との共沈法により、金化合物を担体上に担持させたものを得た後、加熱処理を行うことで金担持体が得られることが開示されている。この方法は、ごく一般的な共沈法であり、保護コロイド等を一切使用せずに、金粒子表面に金元素が露出した粒子を担体上に担持させることが可能であると共に、最も簡便であり、低コストに金微粒子を担持させることが可能である。また、前駆体となる金化合物が水酸化金であることから、熱分解により取り除かれるものは「水」のみであり、残留根を考慮する必要もない。
【0006】
また、特許文献4には、一つ目の方法として、上記のようにアルカリ沈澱法により水酸化金を沈殿させる代わりに、酸沈澱法により硫化金のナノ粒子を担体表面に析出させ、これを加熱処理することで金担持体が得られることが開示されている。この方法では、仕込んだ金の回収率を向上させるために、pHを約1程度の強酸にする必要があり、本発明において担体として使用することがある導電性酸化物のほとんどが溶解、劣化してしまうため、導電性酸化物を担体として用いることができない。
【0007】
また、特許文献4には、二つ目の方法として、カルコゲン化金イオンを担体表面に吸着させ、ろ過・乾燥後に加熱処理する方法が開示されている。この方法は、含浸法、あるいは錯体吸着法において、錯体イオン種としてカルコゲン化金イオンを用いたものであり、担体との相性が非常に重要となる。更に、金原料の仕込み量に対して、pHや温度等をいくら調整しても、全量を担持することができず、微量の担持しかすることができないという欠点がある。
【0008】
また、特許文献4においては、多量に担持させる場合には酸沈澱法を用いており、酸沈澱法及び含浸法又は錯体吸着法により担持量を調整しているが、ほとんどの遷移金属酸化物原料に対しては、酸沈澱法は強酸処理であるために適用が難しい。更に、上記いずれの方法においても前駆体となる金化合物粒子が硫化金粒子であることから、導電助剤として利用する際に硫酸根を完全に除去しようとすれば、約500℃以上での熱処理が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−161857号公報
【特許文献2】特開2009−220017号公報
【特許文献3】特開2008−279439号公報
【特許文献4】特開2009−240951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明においては、金ナノ粒子を担体上に担持させた金担持粒子を得ることにより、良好な透明導電性を示す金担持粒子を得ることが主たる目的である。このような意味で、金コロイド溶液を用いた吸着法では、金粒子表面に非導電性の有機物が付着しているために、逆に導電性を低下させる要因となり、導電性向上効果を得ることができない。また、このような自然吸着を利用した担持方法では、担持重量を増加させることが難しく、担持重量を増加させるために、更に複雑な構造の有機物を使用しなければならないなど、導電助剤として用いるのには適さない。
【0011】
一方、特許文献3では、触媒用途であるために本発明の主要な用途とは異なるが、金粒子表面に何も被覆することなく、金ナノ粒子を酸化鉄粒子上に担持することができる。共沈法を用いることで、最も簡便に、低コストで、有機材料を使用することなくナノ粒子を作製できることから、特許文献3に開示の方法は、本発明の目的に最も適ったものであると思われる。
【0012】
しかしながら、この方法をそのまま用いれば、担体表面に一次粒子まで単分散させた金ナノ粒子を担持させることができず、金ナノ粒子の凝集体の一部のみが、担体と接触することとなってしまう。このように、一箇所に集まった状態で金ナノ粒子の凝集体が生成することで、金ナノ粒子が全く存在しない担体粒子のみの箇所や、担体に全く接触しない金ナノ粒子が発生することとなり、このような金ナノ粒子の存在位置の偏りがあることで、最終的に得られる金担持粒子を用いた導電性膜において、効率的に導電性を向上させることができない。
【0013】
更に、従来この方法では、水酸化金を析出させるために、溶液の液性は常時pH8〜9以上の高いアルカリ性に保つことが必須である。このため、アルカリ溶解性のある金属酸化物(例えば、酸化モリブデンや酸化タングステン等)には、金粒子を担持させることができない。
【0014】
また、特許文献4の方法では、前駆体粒子として水酸化金ではなく、硫化金を用いることから、これを熱分解し、導電性を阻害する硫黄成分を完全に加熱除去するためには、約500℃以上での熱処理が必要となり、金粒子同士の凝集、粗大化を招くために、本発明の主目的には適さない。
【0015】
本発明は、上述の状況に照らしたもので、表面が何にも被覆されることなく、担持重量を増加させた場合にも単分散させた状態で金ナノ粒子を担体上に担持させた、膜に用いた際に良好な導電性を発現する金担持粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の金担持粒子は、担体粒子と、前記担体粒子の表面に担持された金粒子とからなる金担持粒子であって、前記金粒子の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径は、共に1〜10nmであり、前記金粒子の担持量は、金担持粒子の全重量に対して1〜50重量%であり、前記担体粒子は、酸化物粒子からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の導電性膜は、上記本発明の金担持粒子とバインダとを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の金担持粒子の製造方法は、水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する工程と、前記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する工程と、前記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する工程と、前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程と、前記水酸化金担持粒子を、250〜400℃の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の導電性膜の製造方法は、水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する工程と、前記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する工程と、前記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する工程と、前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程と、前記水酸化金担持粒子と、分解温度が250℃以上であるバインダとを含む膜を形成する工程と、前記膜を、250℃以上前記分解温度以下の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を含む導電性膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金担持粒子は、担体粒子と、その担体粒子の表面に担持された金粒子とからなる金担持粒子であるため、金粒子の表面が有機材料等の何物にも被覆されておらず、その平均一次粒子径が1〜10nmであり、かつ一次粒子まで単分散された状態で担体上に均一に担持されたものであり、担持重量を増加させた場合でも金粒子を凝集させることなく均一担持させることが可能であるため、特に担体粒子の導電性を高めるために、有効に使用できる。また、単分散された状態で担体上に均一に担持することが可能であることから、金粒子と担体との有効接触面積が増大し、各種触媒としても有用である。
【0021】
また、本発明の金担持粒子を用いて作製した導電性膜は、担体粒子のみを用いて作製した膜と比べて、高い導電性を示すことができる。
【0022】
また、本発明の金担持粒子の製造方法は、合成過程において常時pHを8未満に保持することを選択できるため、アルカリ溶解性のある酸化物担体へも適用することが可能である。本発明の製造方法により、上記金担持粒子を合理的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の金担持粒子の模式図である。
【図2】金粒子の凝集体が担体粒子上に担持された場合の模式図である。
【図3】実施例1で得られた金担持粒子のTEM写真を示した図である。
【図4】実施例1で得られた金担持粒子の粉末X線回折スペクトルを示した図である。
【図5】比較例2で得られた金担持粒子のTEM写真を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
先ず、本発明の金担持粒子の実施形態について説明する。本発明の金担持粒子は、担体粒子と、上記担体粒子の表面に担持された金粒子とからなり、上記金粒子の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径は、共に1〜10nmであり、即ち、上記金粒子は、一次粒子に単分散されて上記担体粒子の上に担持されており、上記金粒子の担持量は、金担持粒子の全重量に対して1〜50重量%であり、上記担体粒子は、酸化物粒子からなることを特徴とする。
【0025】
本発明の金粒子は、その表面が何物にも被覆されておらず、その平均一次粒子径が1〜10nmのシングルナノサイズであり、かつ、担持重量を増加させた場合にも、担体粒子上に単分散された状態で担持されており、担体粒子の導電性を向上させるための有用な材料として使用できる。
【0026】
本発明の金担持粒子に担持された金粒子は、平均一次粒子径及び平均凝集粒子径が共に1〜10nmである。ここで、平均凝集粒子径とは、一次粒子(単一粒子)及び二次粒子等(凝集粒子)を含む実際に分散して存在している粒子の平均粒子径をいう。上記金粒子の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径が1〜10nmであることは、上記金粒子は、一次粒子に単分散されており、ほとんど凝集粒子が存在しないことを意味する。
【0027】
担体粒子のみを使用した場合には、隣り合う担体粒子間の接点は一点のみとなるが、これと比べて、担体粒子と比較してより微細な導電体である金粒子が表面に担持されることにより、隣り合う粒子同士の接触点が増え、それと同時に、ホッピング伝導が可能な程度に近づく点も増えるため、担体粒子間の電子移動のパスが増えることとなり、効率的に電子の移動を行うことができる。また、上記金粒子をこのように担体粒子間の導電助剤として利用する際には、金粒子そのものの導電性を発現させることも必要であり、1nm未満の粒子では、Au−Au間結合が数個しか存在せず、効果的に導電性を発現させることができない。また、10nmを超えるサイズである場合には、担体との接触点が少なくなり、また、担体粒子間の距離が10nm以上開くことによって、隣接担体粒子間のホッピングによる電子伝導も起こりにくくなり、得られた金担持粒子を用いて導電性膜を作製した際に、担体粒子間の電子の移動を増加させる効果が得られない。
【0028】
本発明の金担持粒子の模式図を表す図1に示すように、上記金担持粒子は、金粒子12が一次粒子まで単分散された状態で担体粒子11上に担持されたものである。これは、金粒子が凝集体となって担体粒子上に担持された構造を持つ場合には、図2に示すように、凝集体の中で一部の金粒子群22のみが担体粒子21に担持された状態となり、その他の凝集体に含まれる大部分の金粒子群23は、担体粒子21と接触することなく独立して存在する金粒子となる。この場合にも、上記10nmを超えるサイズの金粒子を用いた場合と同様に、担体粒子との接触点が少なくなることによって、得られた金担持粒子を用いて導電性膜を作製した際に、導電性を向上させることが困難となる。
【0029】
上記金粒子は、その最表面が何物にも覆われず、担体粒子との接触面以外の全ての表面に金元素が露出した状態である。従来、金ナノ粒子を単分散させた状態で担体粒子上に担持させるためには、金粒子同士の凝集を抑えるために、保護剤として、クエン酸やポリビニルピロリドン(PVP)等の有機材料を用いる必要があった。しかしながら、これらの保護剤が表面に付着している場合には、得られた金担持粒子を用いて導電性膜を作製した際に、金粒子と担体、あるいは金粒子同士が、直接に接触することができなくなるため、導電パスを確保することができずに、価格の高い金を使用しているにも関わらず導電性をかえって低下させる要因となる。従って、本発明においては、隣り合った金担持粒子間の、金粒子と担体粒子、あるいは金粒子同士が直接に接触するために、金粒子の最表面を何物にも覆われない構造とする。
【0030】
上記金粒子の担持量は、金担持粒子の全重量に対して1〜50重量%である。金担持粒子を触媒として利用する場合であれば、用途によっては上記担持量が1重量%未満であってもかまわないと考えられるが、担体粒子の導電性を向上させる目的で利用する場合には、金粒子の担持量が少なすぎれば、導電性向上の効果が現れないために好ましくない。また、上記担持量が50重量%を超えても、担体粒子が十分に小さく、比表面積が大きいために、金粒子を担持する面積が広ければ問題ないと考えられる。しかしながら、例えば、直径約30nmの担体粒子の表面に粒子径3nmの金粒子を担持させた場合には、その表面に細密充填した場合でも、最大で約50重量%までしか担持することができないと計算できる。それ以上の金粒子は、担持された金粒子の上に担持されることとなり、もはや担体粒子の表面に金粒子を接触させて担持することができなくなる。更に、担体粒子の粒子径が小さい場合には、表面積が大きくなるため、理論上は細密充填すればより多くの金粒子を担持させられるが、実際には、金粒子が整列して表面に担持されることはなく、ランダムに配置されるために、50重量%を超えて多量に担持させれば、担体粒子上に担持された金粒子の上に、更に金粒子が重なりあって担持される結果となる。このように、保護剤を使用していない金粒子同士が接触することによって凝着し、粗大な金の塊となれば、金ペーストを用いた場合と同様に導電性は格段に良好になると思われるが、これを用いて導電性膜を作製した際には金光沢を伴う膜となり、可視光を50%以上透過する透明導電性膜としては使用できない。
【0031】
上記担体粒子は、酸化物粒子からなる。高分子ポリマー等からなる有機物粒子の表面に、水酸化金粒子を沈着させるためには、ポリマーとの親和性の高い疎水基を持つバインダを混合する必要があり、金粒子表面を何物でも覆わない構造を持たせることができないために、有機物粒子は担体粒子としては好ましくない。また、担持粒子が金属粒子である場合には、担体粒子の表面の結合欠陥が少なく、共沈法により水酸化金を沈着させることが難しいと共に、高度に分散させた場合でも透明導電性材料としては適さない。
【0032】
上記酸化物粒子の材質としては、黒色を呈しないものであれば導電性の有無は問わなず、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化ガドリニウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム等及び上記金属酸化物に含まれる金属元素を2種以上含む複合酸化物が使用できる。
【0033】
上記担体粒子として上記酸化物粒子を用いることで、担体粒子の表面に共沈法により水酸化金粒子を沈着させることが容易となり、また、最終工程において加熱処理を施した際にも、担体粒子が構造変化を伴うことなく安定に存在することができるため、好ましい。
【0034】
本発明の金担持粒子に用いられる担体粒子の平均粒子径は、15〜100nmであることが好ましい。担体粒子の平均粒子径は、最終的に得られる粒子の性能面では、15nmより小さくても構わないが、担体粒子の平均粒子径が15nmより小さいと、金粒子担持工程において担体粒子を溶液中に均一分散させることが困難となり、結果的に、「担体粒子の凝集体」の表面に金粒子が担持することとなり、担体粒子凝集体の内部に金粒子が担持されないため、好ましくない。また、金粒子の必要量が少なく、担持箇所が減少してもかまわない用途、あるいは、透明性を必要としない触媒等の用途であれば、担体粒子の平均粒子径が100nmより大きくても構わないが、金粒子を1重量%以上担持させ、透明導電性を発現させるためには、担体粒子の平均粒子径は100nm以下であることが好ましい。
【0035】
また、本発明において担体粒子として用いられる酸化物粒子は、導電性酸化物粒子であることが好ましい。例えば、非導電性の酸化物粒子を担体に用い、金粒子を担持させることでわずかに導電性を発現させ、帯電防止機能を持たせるなど、担体粒子と比較して導電性を高められればよい場合には、必ずしも導電性酸化物粒子を用いる必要はない。しかしながら、本発明の主目的である良好な導電性を示す導電性粒子とする際には、金粒子のみならず、担体粒子も導電性を持つことで、最終的に得られる金担持粒子の導電性を高めることが可能となるため、上記酸化物粒子としては、導電性酸化物粒子であることが好ましい。
【0036】
上記導電性酸化物粒子は、電子伝導性を持つものであることが好ましい。酸化物の電気伝導がホール伝導の場合には、担持された金粒子が持つ自由電子にホールの一部が補完され、導電性が低下する場合があるためである。代表的な電子伝導性酸化物としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物、アルミニウム置換酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ガリウム、インジウム−ガリウム−亜鉛複合酸化物等、汎用のものを用いることができる。中でも、インジウム−スズ複合酸化物は、特に高い電子伝導性を持つ材料であり、最も好ましい。
【0037】
以上、本発明の金担持粒子の実施形態について説明したが、本発明において平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真から観察される100個の粒子の直径又は長軸長さの算術平均から求めるものとし、平均凝集粒子径は、小角散乱法により測定するものとする。
【0038】
(実施形態2)
次に、本発明の金担持粒子の製造方法の実施形態を説明する。本発明の金担持粒子の製造方法は、水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する第1工程と、上記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する第2工程と、上記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する第3工程と、上記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を上記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する第4工程と、上記水酸化金担持粒子を、250〜400℃の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を形成する第5工程とを含んでいる。以下に、各工程について説明する。
【0039】
(第1工程)
先ず、第1工程において、水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する。上記金原料としては、水に溶解し、有機成分を持たない無機塩を用い、塩化金、塩化金酸カリウム、塩化金酸ナトリウム等を用いることができるが、安定な化合物であり大気中において容易に秤量が可能である塩化金酸ナトリウムが好ましい。
【0040】
(第2工程)
次に、第2工程において、上記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する。上記アルカリ水溶液のアルカリ原料としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の、一般的な無機アルカリ塩を用いることができる。最終生成物において炭酸根が残留せず、溶液中に多種の金属イオンが混在しないようにするために、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いるのが好ましい。
【0041】
第2工程において、上記金原料水溶液に上記アルカリ水溶液を加えて混合し、pHを7〜11に調整する際の液温は、必ず40℃以下であることが必要である。一般的に、金属塩原料とアルカリとの反応によって水酸化物沈澱を析出させる場合には、アルカリ水溶液と金属塩原料とを混合した瞬間から反応が開始し、沈澱が析出することがほとんどであるが、金元素の場合には、約60℃以上の温水中である場合にのみ水酸化金沈澱が析出する。従来、この特性を利用して、担体粒子を懸濁させた中性〜アルカリ性の溶液を、あらかじめ60〜80℃に加温しておき、金原料の溶解した金水溶液を滴下し、金化合物を析出させる方法が、水酸化金の沈澱法としてごく一般的に用いられている。しかしながら、本発明の第2工程においては、先ず、水酸化金沈澱を析出させることなく、上記金原料水溶液に上記アルカリ水溶液を加えてpHを調整した後、溶液中に均一に金イオンを分布させておくことが必要である。このような意味では、水が凍らない程度の温度であればよく、0℃より高く40℃以下の温度でpH調整すればよいが、最も簡便でコストのかからない、室温(20〜30℃)で行うことが好ましい。
【0042】
第2工程において、上記金原料水溶液に上記アルカリ水溶液を加えて、上記アルカリ金原料水溶液のpHを7〜11に調整しておく。本発明においては、水酸化金の析出工程において、新たにアルカリ水溶液を追加することは行わないため、全ての水酸化金が析出した後の溶液pHを見越して、初期のpH値を調整しておく必要がある。水酸化金の析出工程において、その途中で新たにアルカリ水溶液を追加すれば、追加した瞬間、局所的にpH値が全く異なる化学状態を作り出し、更に、局所的に高アルカリ域が発生するために、粗大な水酸化金粒子が析出する場合や、一度にその部分に固まって水酸化金粒子が析出し水酸化金粒子同士の凝集を招く場合、などが起こりやすくなるため、本発明においては、析出途中でのpH調整は行わない。また、全ての水酸化金が析出した後の反応終点のpHが5以下である場合には、水酸化金が再溶解しやすくなり、仕込み量に対する金の回収率が減少するため、反応終点のpHを5よりも高くするために、第2工程における上記アルカリ金原料水溶液のpHは7以上とすることが必要である。また、水酸化金の析出に関しては、通常であればアルカリ域での析出率に大きな差は見られないものであるが、本発明の検討の結果、酸化物担体への吸着の際には、反応終点のpHが10より大きいと仕込みに対して約10%量以下しか析出せず、同じくpHが9より大きい場合でも約20%量の析出に留まることが明らかになった。従って、反応終点のpHを5を下回らない範囲で低いpHとするために、第2工程における上記アルカリ金原料水溶液のpHを11以下に調整することが必要であり、pHを10以下とすることがより好ましい。
【0043】
(第3工程)
続いて、第3工程において、上記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する。第3工程においては、担体粒子の表面に均一に金イオンを吸着させることが重要である。分散方法は、超音波分散法やマグネチックスターラー、攪拌機等を用いる方法等、どのような方法でもよい。本発明においては、担体粒子の表面に金イオンの状態で完全に均一に吸着させておき、これを溶液中で析出させることによって、有機材料を使用することなく、一次粒子まで単分散した状態で担体粒子上に水酸化金粒子を担持させることができる。この吸着工程は、好ましくは1時間以上の時間をかけて行う。
【0044】
(第4工程)
次に、第4工程において、上記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を上記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する。
【0045】
第4工程において、上記昇温速度は、0.1℃/分より遅くてもかまわないが、これより遅いスピードで析出させても析出する水酸化金の粒子径や均一性に差が出ないため、時間がかかるのみで不効率である。また、上記昇温速度が3℃/分よりも速いと、溶液全体の温度を均一に保ち昇温することが難しく、析出する水酸化金の粒子径に不揃いが生じたり、急激に水酸化金の析出可能な環境へ移行することで、粗大な粒子が混合する結果となることが明らかになったため、上記昇温速度は3℃/分以下とすることが好ましい。溶液全体の温度を均一に保ち、かつ、迅速に昇温する手段として、マイクロ波加熱等の方法を用いれば、昇温速度は3℃/分より速くてもかまわない可能性はあるが、工業的に一般的な方法である、外部熱源による熱伝導を利用した加熱方法(例えば、マントルヒーターによる加熱方法)を用いる際には、3℃/分よりも速い昇温速度は、溶液内の不均一を生み、好ましくない。昇温する際の到達温度は、水酸化金を析出させるために60℃以上であればよい。より高い温度にしても反応に大差なく、水溶液を用いていることから90℃以上であると蒸発が激しくなるだけであり、これ以上の温度にする実益がない。
【0046】
上記第4工程により、水酸化金粒子を上記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成することができるが、上記分散水溶液を60〜90℃まで昇温した後に、更にアルカリ水溶液を加えて混合し、pHを6.5〜8.5に調整することが好ましい。これにより、水酸化金粒子を担体粒子の表面により安定的に担持、固着させることができる。
【0047】
即ち、前述の第2工程において、適切にpHを調整すれば、反応終点の予定pHは6〜8の間となる。昇温過程において、約30分以上の時間をかけて析出させた水酸化金粒子を、より安定に担体粒子の表面に固定するために、反応終点のpHを6.5〜8.5の範囲に調整することが好ましい。
【0048】
上記pH調整は、反応終点の予定pH6〜8よりも、ややアルカリ側にpH調整を行うことがより好ましい。pH6.5〜8.5とした後、更に30分〜2時間程度の間、攪拌を行い、水酸化金粒子を担体粒子上に固着させる。上記pH調整を行わなかった場合でも、担持量が減少するのみで水酸化金の担持は可能であるが、pH調整を行っておくことで、金の仕込み量に対して、より高い金の回収率を実現できる。上記pH調整の際のpHが6.5以下であっても、pHが5よりも低くなければ、水酸化金が再溶解するなどの問題は起こらないが、より安定に担体粒子の表面に金粒子を担持するためには、反応終点の予定pHの下限値6に対して、pH6.5程度に調整することが好ましい。また、pH8.5以上に調整してもよいが、これ以上の高いpHに調整しても、特段の効果は得られない。
【0049】
(第5工程)
上記第4工程において得られた水酸化金担持粒子を、ろ過し、洗浄し、乾燥した後、第5工程において、上記水酸化金担持粒子を、250〜400℃の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を形成する。
【0050】
上記熱処理温度が250℃より低ければ、水酸化金が金へと変態せず、目的とする金担持体を得ることができない。また、上記熱処理温度が400℃より高くても、金粒子の担持量が少なく、金粒子間の距離が離れているなどにより、金粒子同士が焼結しなければ問題はないが、担体粒子として用いた酸化物種によっては、高温で熱処理することにより構造変化する場合もあるため、担体粒子に影響を与えないという意味では、熱処理温度は、250℃以上の範囲でなるべく低い温度であることが好ましい。このような意味で、250℃〜300℃程度の範囲で加熱処理を行うことが最も好ましい。
【0051】
また、上記熱処理の際の雰囲気は、担体粒子となる酸化物粒子の種類により、空気中でも影響を受けないものであれば、最も簡便である空気中で行うことが好ましい。但し、例えばインジウム−スズ複合酸化物やアルミニウム置換酸化亜鉛等の優れた導電性を発現する透明導電性酸化物粒子には酸素欠損を持つものが多く、これらを担体粒子に用いる場合には、担体粒子の特性に及ぼす影響を最小限に止めるために、不活性ガス雰囲気、あるいは、還元性雰囲気の中で熱処理を行うことがより好ましい。
【0052】
(実施形態3)
次に、本発明の金担持粒子を含む導電性膜の製造方法の実施形態について説明する。本発明の導電性膜は、金担持粒子と、その金担持粒子を基板上に固定するためのバインダとを含む導電性膜である。本発明の導電性膜の製造方法としては、以下の二つの方法が可能である。
【0053】
第1の方法は、本発明の金担持粒子の製造方法により金担持粒子を得た後、金担持粒子及びバインダ溶液を混合し、金担持粒子をバインダ溶液中に分散させた塗料を作製し、得られた塗料を基板上に塗布し、乾燥させることにより、金担持粒子を含む導電性膜を得る方法である。
【0054】
また、第2の方法は、本発明の金担持粒子の製造方法の第4工程により水酸化金担持粒子を得た後、水酸化金担持粒子及びバインダ溶液を混合し、水酸化金担持粒子をバインダ溶液中に分散させた塗料を作製し、得られた塗料を基板上に塗布し、乾燥させて前駆体膜を得る。次に、得られた前駆体膜を、250℃以上、バインダの分解温度以下で熱処理することにより、金担持粒子を含む導電性膜を得る。
【0055】
先ず、第1の方法を説明する。第1の方法は、無機粒子及びバインダを含む膜を得る方法として、ごく一般的な既知の方法である。即ち、金担持粒子とバインダ溶液とを目的の比率で混合し、これをボールミル、ビーズミルやペイントシェイカー等の一般的な分散装置を用いて、水酸化金担持粒子をバインダ溶液中に分散させた塗料を作製する。次に、得られた塗料を、バーコーターやスピンコーター等の一般的な塗布装置を用いて基板上に塗布し、バインダ溶液に用いた溶媒が蒸発する程度の温度で乾燥させて、金担持粒子とバインダとを含む膜を得る。
【0056】
金担持粒子とバインダとの混合比率は、得られた膜が基板上に固定化されれば特に限定されず、また、用途、目的に応じて、金担持粒子の含有率を変更することで、膜の導電率を制御することが可能である。一般的な導電性無機粒子とバインダとを含む導電性膜においては、帯電防止用途等では導電性無機粒子の含有率が5重量%以上のものが用いられ、より高い導電性の求められる電極用途等では、導電性無機粒子の含有率が70重量%以上のものが用いられるのが一般的である。また、厳密にはバインダの分子量にもよるが、無機粒子の含有率が約98重量%以上では、バインダ量が足りず、ほとんどの場合、基板上に安定的に固定することができなくなる。本発明の金担持粒子についても、より高い導電性を求める場合であれば、金担持粒子の含有率が70〜95重量%程度とすることが好ましく、帯電防止用途の添加剤として使用するなどの場合であれば、10重量%程度以下の含有率であってもかまわないと考えられる。例えば、使用したいバインダが既に決まっており、これに帯電防止機能を持たせるために、本発明の金担持粒子を少量のみ添加する、といった使用方法も可能である。
【0057】
また、第1の方法で用いるバインダ種は、例えば、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂等の中から、使用する基板材料、目的とする用途に応じて選択すればよく、基板上に固定されれば、その種類は問わない。
【0058】
次に、第2の方法について説明する。本発明の金担持粒子の製造方法の第4工程による水酸化金粒子の担体粒子の表面への担持は、ランダムな位置に配置されるために、担持された水酸化金粒子の中には、隣接する水酸化金粒子とごく近い距離に存在しているものもある。そのような場合に、前述の第5工程により熱処理を行い、水酸化金から金への変態を行うと、隣接する粒子同士が接触した部分の焼結だけは防ぐことができない。本発明においては、表面への担持がほぼ均一であるために、第5工程によって金担持粒子を得た場合でも、TEM観察等で焼結部分はほとんど見受けられないが、より確実に金粒子を一次粒子まで分散させた状態に保持し、これを含む導電性膜を得るためには、第2の方法を取ることが好ましい。このように、一次粒子までの単分散状態を保持している場合には、より高い導電性を持つ膜を得ることが可能であるためである。
【0059】
即ち、第2の方法は、水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する第1工程と、上記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する第2工程と、上記アルカリ金原料溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する第3工程と、上記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を上記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する第4工程と、上記水酸化金担持粒子と、分解温度が250℃以上であるバインダとを含む膜を形成する第5工程と、上記膜を、250℃以上、上記分解温度以下の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を含む導電性膜を形成する第6工程とを含む。
【0060】
第2の方法の第1工程から第4工程までは、本発明の金担持粒子の製造方法の第1工程から第4工程までと同一工程であるため、重複する説明は省略する。
【0061】
第2の方法では、その第5工程、即ち、一切の焼結が起こっていない、水酸化金担持粒子の段階で、水酸化金担持粒子とバインダとを含む膜を作製する。但し、その後の第6工程での250℃以上の熱処理を考慮して、第5工程で用いるバインダは、分解温度が250℃以上であるバインダを用いる必要がある。
【0062】
上記分解温度が250℃以上のバインダについては、その種類は特に限定されないが、バインダの分解温度は、分散剤等の添加剤を加えた場合等の僅かな組成変化により変動するため、実際に使用する製膜用の塗料を作製した後に、測定することが必要である。上記分解温度の測定の際には、熱重量/示差熱(TG/DTA)測定における急激な重量減少が起こる温度として求めることができる。本発明においては、リガク社製のTG/DTA測定装置「TG−DTA/HUM−1」を用いて、空気フロー中にて測定を行った。
【0063】
上記分解温度が250℃以上のバインダとしては、例えば、分散剤としてアビシア社製の「Solspers56000」を用いて膜を作製した際の分解温度が、250℃以上であるものとして、三菱レーヨン社製の熱可塑性樹脂「BR113」、及び、サートマー社製の紫外線硬化型樹脂「SR399」を用いることができる。但し、上記バインダは用途に応じて選択すればよく、膜にした際の分解温度が250℃以上であれば、その種類や、特定の添加剤との組み合わせに限定されるものではない。
【0064】
次に、第5工程で得られた水酸化金担持粒子を含む膜を、次の第6工程で250℃以上の温度で熱処理し、膜中に含まれた水酸化金を金へと変態させて、金担持粒子を含む導電性膜を得る。水酸化金粒子は、膜中に含まれた状態で熱処理されれば、バインダに阻まれて焼結することなく、単分散状態を保った金粒子となる。この際の熱処理温度は、金粒子とするためには250℃以上であれば何度でもよいが、バインダの耐熱温度は一般的にそれほど高くはなく、250℃という温度はバインダの分解が始まる限界に近い温度であることが多い。このため、250℃以上、バインダの分解温度以下で熱処理を行う必要があり、好ましくは、250〜270℃で熱処理する。この際の熱処理温度が、バインダの分解温度以上では、バインダの劣化により、膜剥がれ、膜割れ等が生じて導電性が低下する恐れがある。
【0065】
また、上記熱処理の際の雰囲気は、担体粒子となる酸化物粒子の種類により、空気中でも影響を受けないものであれば、最も簡便である空気中で行うことが好ましい。但し、例えばインジウム−スズ複合酸化物やアルミニウム置換酸化亜鉛等の優れた導電性を発現する透明導電性酸化物粒子には酸素欠損を持つものが多く、これらを担体粒子に用いる場合には、担体粒子の特性に及ぼす影響を最小限に止めるために、不活性ガス雰囲気、あるいは、還元性雰囲気の中で熱処理を行うことがより好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0067】
<金担持粒子の作製>
下記のように金担持粒子を作製した。
【0068】
(実施例1)
先ず、室温において、塩化金酸ナトリウム二水和物1gを水300gに溶解し、金水溶液を作製した。この金水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて、液温40℃以下でpHを10.4に調整した。その後、平均粒子径28nmのITO粒子(同和鉱業社製)を7g、上記金水溶液中に混合し、約1時間の間、スリーワンモーターでフッ素樹脂製の攪拌羽根を用いて、500rpmで攪拌を行った。
【0069】
次に、500rpmで攪拌しながら、1.3℃/分の速度で上記溶液を加温し、溶液温度を80℃まで上昇させた。約30分間かけて、80℃に到達した。この時点での、反応終点の上記溶液のpHは7.53であった。溶液温度を80℃に保持したまま、更に約1時間の攪拌を行い、液温を室温まで戻した後、ろ過して洗浄し、60℃で乾燥させて、水酸化金担持粒子を得た。
【0070】
続いて、得られた水酸化金担持粒子を、空気中250℃で1時間の熱処理を行い、金担持粒子を得た。
【0071】
以上のようにして得られた金担持粒子について、蛍光X線(XRF)測定により元素分析を行った結果、原材料が100%反応した際に、金担持粒子の全重量に対して金粒子の重量が6.5重量%となるように、仕込み量(以下、単に金仕込み量という。)を調整したのに対して、得られた金担持粒子の全重量に対する実際の金粒子担持量(以下、単に金担持量という。)は4.3重量%であった。また、上記金担持粒子の粉末X線回折(XRD)測定により、金属状態の金のスペクトルを確認した。TEM観察によって、上記金担持粒子に担持された金の一次粒子100個の直径の平均値として金粒子の平均一次粒子径を求めた結果2.3nmであり、小角X線散乱測定により、金粒子の平均凝集粒子径を求めた結果2.7nmであった。上記金担持粒子のTEM写真を図3に、XRDスペクトルを図4に示す。
【0072】
(実施例2)
実施例1の金担持粒子の作製方法において、金水溶液の調整pH値を11に変更し、ITO粒子の混合量を15gに変更し、溶液の昇温速度を0.2℃/分として80℃まで昇温した以外は、実施例1と同様にして、金担持粒子を得た。80℃まで昇温した後の反応終点の溶液のpHは7.97であった。
【0073】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は2.9重量%であるのに対して、金担持量は1.1重量%であり、XRD測定により金属状態の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は2.2nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は2.3nmであった。
【0074】
(実施例3)
実施例1の金担持粒子の作製方法において、金水溶液の調整pH値を10に変更し、ITO粒子の混合量を15gに変更し、溶液の昇温速度を2.7℃/分として80℃まで昇温し、その反応終点の溶液のpHが7.45であったところへ、更に水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶液のpHを8.2に調整した後、約1時間攪拌した以外は、実施例1と同様にして、金担持粒子を得た。
【0075】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は2.9重量%であるのに対して、金担持量は2.6重量%であり、XRD測定により金属状態の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は2.3nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は2.5nmであった。
【0076】
(実施例4)
実施例1の金担持粒子の作製方法において、金水溶液の調整pH値を8に変更し、ITO粒子の混合量を2gに変更し、溶液の昇温速度を1.3℃/分として80℃まで昇温し、その反応終点の溶液のpHが6.68であったところへ、更に水酸化ナトリウム水溶液を添加して溶液のpHを7.05に調整した後、約1時間攪拌した以外は、実施例1と同様にして、金担持粒子を得た。
【0077】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は34.0重量%であるのに対して、金担持量は32.8重量%であり、XRD測定により金属の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は2.5nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は3.8nmであった。
【0078】
(比較例1)
塩化金酸ナトリウム二水和物1gを水200gに溶解し、金水溶液を作製した。この金水溶液に、実施例1で用いたものと同様のITO粒子7gを混合し、実施例1と同様にして攪拌を行った。
【0079】
次に、これとは別に、クエン酸5gと水酸化ナトリウム1.53gとを水100gに溶解し、クエン酸ナトリウム水溶液を作製した。このクエン酸ナトリウム水溶液を、上記ITO粒子を分散させた金水溶液に添加し、500rpmで約30分間の攪拌を行い、ITO粒子存在下において、クエン酸による還元作用により金コロイド粒子を析出させた。その後、得られた粉末をろ過して洗浄し、60℃で乾燥させて、金担持粒子を得た。なお、ろ液は薄い赤色を呈しており、金コロイド粒子の全量はITO粒子には担持せず、その一部がろ液に流出したものと思われる。
【0080】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は6.5重量%であるのに対して、金担持量は4.6重量%であり、XRD測定によりシャープな金属の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は13.3nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は21.6nmであった。
【0081】
上記状態では、クエン酸が残留した金担持粒子となっているため、クエン酸を焼失させるために、上記金担持粒子について空気中500℃で1時間の熱処理を行った。その結果、クエン酸重量分と思われる約3重量%が減少した。得られた金担持粒子の粒子径を上記と同様にして測定したところ、平均一次粒子径が22.4nmであり、平均凝集粒子径が43.7nmであった。
【0082】
(比較例2)
80℃の水200gに水酸化ナトリウムを溶解し、pH8.5に調整した後、この溶液に実施例1で用いたものと同様のITO粒子7gを混合し、実施例1と同様にして攪拌を行った。
【0083】
次に、これとは別に、塩化金酸ナトリウム二水和物1gを水100gに溶解して金水溶液を作製した。この金水溶液を、上記ITO粒子を分散させた水酸化ナトリウム水溶液に、約1時間の時間を掛けて少量ずつ滴下して混合し、ITO粒子存在下において、水酸化金の沈澱を析出させた。その後、得られた沈澱をろ過して洗浄し、60℃で乾燥させて、水酸化金担持粒子を得た。続いて、得られた水酸化金担持粒子を、空気中250℃で1時間の熱処理を行い、金担持粒子を得た。
【0084】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は6.5重量%であるのに対して、金担持量は4.7重量%であり、XRD測定により金属状態の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は4.1nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は36.8nmであった。
【0085】
TEM観察された上記金担持粒子は、金粒子の凝集体が各所に見られ、担体粒子上に接していない金粒子が多数存在すると共に、金粒子が全く担持されていない担体粒子も観測された。上記金担持粒子のTEM写真を図5に示す。
【0086】
(比較例3)
実施例1の金担持粒子の作製方法において、金水溶液の調整pH値を12に変更した以外は、実施例1と同様にして、金担持粒子を得た。80℃まで昇温した後の反応終点の溶液のpHは10.42であった。
【0087】
得られた金担持粒子について、XRF測定の結果、金仕込み量は6.5重量%であるのに対して、金担持量は0.6重量%であり、XRD測定により金属状態の金のスペクトルを確認し、TEM写真から求めた金粒子の平均一次粒子径は2.2nm、小角X線散乱測定から求めた金粒子の平均凝集粒子径は2.3nmであった。なお、本比較例については、担持量が少なすぎて、TEM写真において金の一次粒子100個を見出すことが困難であったため、金の一次粒子30個の直径の平均値として金粒子の平均一次粒子径を求めた。
【0088】
上記結果を金担持粒子の製造条件等と共に表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた金担持粒子においては、いずれの場合も、平均一次粒子径及び平均凝集粒子径は共に1〜10nmの範囲内であることが分かる。更に、平均一次粒子径と平均凝集粒子径がほぼ同等サイズとなっていることから、金粒子が一次粒子まで単分散されていることが分かる。また、作製時に調整するpHの値が11以下である場合には、金仕込み量に対して少なくとも35%分の金が担持されていることが分かる。
【0091】
これと比較して、還元剤及び保護剤としてクエン酸を用い、コロイド作製法を応用して作製した、比較例1の金担持粒子では、通常得られる赤色溶液の金コロイドと同様、約10nm以上のサイズの金粒子が析出しており、これより微粒子化するためには、保護剤として、更に何らかの有機物を添加する必要があると考えられる。また、用いたクエン酸は金粒子の周囲を取り囲む保護剤として働くため、これを除去するために500℃で焼成すれば、金粒子同士の焼結が起こり、粗大な金粒子となることが分かる。
【0092】
また、比較例2においては、あらかじめアルカリ水溶液を、水酸化金の析出可能温度に加熱しておき、これに金水溶液を滴下するという、通常の共沈法を使用して金担持粒子を作製したものであるが、この場合には、金水溶液の滴下と同時に、水滴サイズの局所的な領域においてのみ水酸化金が析出することとなり、金粒子の凝集体が生成していることが分かる。このために、担体粒子表面に一様に金粒子を担持させることができず、凝集体として担体粒子と接触している部分と、金粒子が全く存在しない、担体のみの領域とが存在すると考えられる。
【0093】
また、比較例3では、作製時に調整するpHの値が12と高いため、金担持量が著しく減少し、金仕込み量に対して10%以下の金回収率となっていることが分かる。
【0094】
<導電性膜の作製>
次に、下記のように導電性膜を作製した。
【0095】
(実施例)
実施例1〜4で得られた金担持粒子及び実施例1、4の過程で得られた水酸化金担持粒子(以下、両粒子を無機粒子ともいう。)を用いて、各粒子及びバインダを含む膜を作製した。バインダとしては三菱レーヨン社製の熱可塑性樹脂「BR113」又はサートマー社製の紫外線硬化型樹脂「SR399」を用い、無機粒子の含有率が81重量%となるように以下の各成分を配合して混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェイカー(東洋精機社製)で20分間攪拌して無機粒子を分散させて分散液を作製した。分散剤はアビシア社製の「Solspers56000」を使用し、光重合開始剤はチバ・ジャパン社製の光重合開始剤「IRGACURE907」を使用した。
【0096】
〔実施例1〜3の無機粒子を使用した場合の成分〕
無機粒子 100重量部
バインダ(BR113) 23重量部
分散剤(Solspers56000) 6重量部
シクロヘキサノン 214重量部
トルエン 214重量部
【0097】
〔実施例4の無機粒子を使用した場合の成分〕
無機粒子 100重量部
バインダ(SR399) 23重量部
光重合開始剤(IRGACURE907) 2重量部
分散剤(Solspers56000) 6重量部
シクロヘキサノン 214重量部
トルエン 214重量部
【0098】
得られた分散液をろ過してジルコニアビーズを除去して塗料を作製し、その塗料をスピンコーターを用いてガラス板上に膜厚3μmとなるように回転数を調整して塗布し、得られた膜を100℃で2分間乾燥させて、各粒子及びバインダを含む膜を作製した。バインダとしてSR399を用いた膜については、更に、高圧水銀ランプで1500mJ/cm2の強度で紫外線を照射してバインダを硬化させた。
【0099】
次に、実施例1、4の過程で得られた水酸化金担持粒子を用いた膜について、熱処理を行った。実施例1の水酸化金担持粒子を用いた膜は、バインダとしてBR113(分解開始温度・約255℃)を用いたため、熱処理温度は250℃とし、空気中で1時間の熱処理を行った。実施例4の水酸化金担持粒子を用いた膜は、バインダとしてSR399(分解開始温度・約297℃)を用いたため、熱処理温度は270℃とし、窒素ガス中で1時間の熱処理を行った。
【0100】
以上のようにして得られた膜は、いずれも濃青〜濃紫色を呈した透明膜であった。
【0101】
(比較例)
実施例1〜4及び比較例1〜3において担体粒子として用いたITO粒子、比較例1〜3で得られた金担持粒子、及び、実施例1、比較例2の過程で得られた水酸化金担持粒子を用いて、上記実施例と同様にして、各粒子とバインダとを含む膜を作製した。いずれも、バインダとしてBR113(分解開始温度・約255℃)を用いた。
【0102】
この際、比較例2で得られた金担持粒子を用いて作製した塗料は、塗料容器の底面に金色の金属光沢を伴う分離物が沈澱しているのが認められた。これは、金担持粒子の分散に伴い、担体から剥がれ落ちた金粒子同士が凝着し、金光沢が現れる約1μm程度の粗大な金の塊に成長したものと考えられる。
【0103】
次に、実施例1、比較例2の過程で得られた水酸化金担持粒子を用いた膜について、熱処理を行った。実施例1の水酸化金担持粒子を用いた膜は、BR113の分解温度よりも高い300℃で、空気中1時間の熱処理を行った。また、比較例2の水酸化金担持粒子を用いた膜は、250℃で空気中1時間の熱処理を行った。
【0104】
この際、実施例1の水酸化金担持粒子を用いた膜は、黒色に近い色を呈した不透明膜となり、比較例2の水酸化金担持粒子を用いた膜は、濃紫色に金光沢を伴う膜となった。
【0105】
以上のようにして得られた全ての導電性膜は、いずれも、無機粒子の含有率81重量%、膜厚3μm、担体粒子種がITO粒子となるように作製されており、金粒子を担持した効果を比較することが可能である。
【0106】
これらの導電性膜について、表面抵抗率及び全光線透過率を測定した。表面抵抗率は、三菱化学社製の抵抗率計「ロレスターGP」を用いて、四端子法により測定した。その際、電圧端子間距離は5mmとした。また、全光線透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光社製)を用いて、入射光強度に対する透過光強度の割合を測定した。
【0107】
これらの導電性膜の評価結果を、表2にまとめて示す。表2では、表面抵抗率の値が小さいほど、導電性が高く導電性膜として優れていることを示し、全光線透過率の値が大きいほど、透明性が高いことを示しており、透明導電性膜として優れていることを示している。また、表2では、水酸化金担持粒子を含む膜を作製した後に、膜状態で熱処理を行ったものについては、バインダ分解温度及びその熱処理条件も併せて示した。
【0108】
【表2】

【0109】
表2の結果から分かるように、実施例の条件で作製された導電性膜は、いずれも50%以上の全光線透過率を示し、かつ、担体粒子ITOのみを用いて作製された膜よりも、低い表面抵抗率を示しており、導電性を向上させることが可能であることが分かる。中でも、水酸化金担持粒子を用いて膜を作製した後、膜状態で熱処理を施したものについては、より優れた導電性を示した。実施例4の水酸化金担持粒子を用いて作製し、窒素ガス中270℃で焼成した膜では、担体粒子であるITOに対する熱処理の影響が最小限に抑えられたと考えられる。
【0110】
一方、比較例で作製した、実施例1の水酸化金担持粒子を用いて膜を作製した後、バインダの分解温度以上で熱処理を施したものについては、膜の劣化により全光線透過率は著しく低下すると共に、表面抵抗率が上昇し、導電性が低下した。また、比較例1(熱処理無し)の金担持粒子を用いた場合には、還元剤及び保護剤として利用したクエン酸が残留しているために、金粒子を担持したにもかかわらず、かえって導電性が低下していることが分かる。更に、比較例2で得られた金担持粒子、水酸化金担持粒子のいずれを用いて作製した膜についても、全光線透過率が低く、担体粒子ITOのみを用いて作製した膜と比べて、表面抵抗率は同等以上であり、導電性は同等か、もしくは低下する傾向にある。これは、金粒子同士が凝集しているために、熱処理により凝着して粗大な金粒子となり、これらの粗大な金粒子が全光線透過率を下げる要因となり、担体粒子との接点が減少するために導電性の向上も抑えられたものと考えられる。また、比較例3で得られた金担持粒子を用いた膜では、担持量が少なすぎて、金粒子を担持したことによる効果が現れていないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、ナノサイズの金粒子を担体粒子の表面に単分散させた状態で担持させることによって、これを用いた膜において約50%以上の全光線透過率を保持したまま導電性を向上させることができる。このような金担持粒子は、透明導電性材料として、あるいは、ナノ粒子担持体であることから、触媒用途等においても有用な材料となる。
【符号の説明】
【0112】
11、21 担体粒子
12 金粒子
22、23 金粒子群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体粒子と、前記担体粒子の表面に担持された金粒子とからなる金担持粒子であって、
前記金粒子の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径は、共に1〜10nmであり、
前記金粒子の担持量は、金担持粒子の全重量に対して1〜50重量%であり、
前記担体粒子は、酸化物粒子からなることを特徴とする金担持粒子。
【請求項2】
前記担体粒子の平均粒子径が、15〜100nmである請求項1に記載の金担持粒子。
【請求項3】
前記担体粒子は、導電性酸化物粒子である請求項1又は2に記載の金担持粒子。
【請求項4】
前記導電性酸化物粒子は、インジウム−スズ複合酸化物である請求項3に記載の金担持粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金担持粒子とバインダとを含むことを特徴とする導電性膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の金担持粒子の製造方法であって、
水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する工程と、
前記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する工程と、
前記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する工程と、
前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程と、
前記水酸化金担持粒子を、250〜400℃の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を形成する工程と、
を含むことを特徴とする金担持粒子の製造方法。
【請求項7】
前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程において、
前記分散水溶液を60〜90℃まで昇温した後に、更にアルカリ水溶液を加えて混合し、pHを6.5〜8.5に調整する請求項6に記載の金担持粒子の製造方法。
【請求項8】
前記250〜400℃の熱処理は、還元性雰囲気又は不活性ガス雰囲気の中で行う請求項6又は7に記載の金担持粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の導電性膜の製造方法であって、
水に金原料を溶解して金原料水溶液を調製する工程と、
前記金原料水溶液にアルカリ水溶液を加えて混合し、40℃以下の温度でpHを7〜11に調整したアルカリ金原料水溶液を調製する工程と、
前記アルカリ金原料水溶液に担体粒子を混合して分散させて分散水溶液を調製する工程と、
前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程と、
前記水酸化金担持粒子と、分解温度が250℃以上であるバインダとを含む膜を形成する工程と、
前記膜を、250℃以上前記分解温度以下の範囲で熱処理を行うことにより金担持粒子を含む導電性膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項10】
前記分散水溶液を攪拌しながら0.1〜3℃/分の速度で60〜90℃まで昇温し、水酸化金粒子を前記担体粒子の表面に析出させて水酸化金担持粒子を形成する工程において、
前記分散水溶液を60〜90℃まで昇温した後に、更にアルカリ水溶液を加えて混合し、pHを6.5〜8.5に調整する請求項9に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項11】
前記250℃以上前記分解温度以下の熱処理は、還元性雰囲気又は不活性ガス雰囲気の中で行う請求項9又は10に記載の導電性膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48949(P2012−48949A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189432(P2010−189432)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】