説明

金網継ぎ合わせ方法

【課題】金網の網目が細かくても、加工作業が簡単で、安定性・仕上がり性のすぐれた接合を行えること。
【解決手段】継ぎ合わせ部となる第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとを突き合わせた後、その上に介在部材としてたとえばステンレス板14を重ねる。次に、第1および第2の金網端部10L,10Rに対してその裏側(図の上方)からステンレス板14にレーザビームLBを照射する。ステンレス板14のレーザ被照射部分とその下の縦線材 および横線材とがレーザ溶接で接合される。このレーザ照射工程はシーム溶接の形態で実施され、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとがステンレス板14を介して継ぎ合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網を継ぎ合わせる方法に係り、特にレーザを用いて金網の端部同士を継ぎ合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金網を継ぎ足したり、無端状または筒状の金網を形成するために、金網の端部同士を継ぎ合わせる加工が行われている。これまで、この種の金網継ぎ合わせ加工には抵抗溶接法やろう付法が多く用いられてきた。
【0003】
抵抗溶接法は、金網の端部同士を重ね合わせて両側から一対の溶接電極を押し当てて通電し、金網端部同士をジュール熱で溶かして接合する。しかしながら、継ぎ合わせ部の一部で溶接不良が生じやすい(たとえば線材の先端部が外に突き出たりする)こと、溶接時に溶接電極からの加圧力で金網端部が潰れやすいこと、溶接後の曲げ強度が低い(折れやすい)こと、溶接品質が電極先端部の磨耗具合に依存する(安定しない)ことなどが問題になっている。
【0004】
一方、ろう付法は、450℃以上の融点を有する溶加材またはろう材(金ろう材、銀ろう材等)を介して金網端部同士を金属接合する。しかしながら、ろう付された金網製品の用途次第では(たとえば薬液に浸される場合には)電食が発生してろう付部が損壊しやすいこと、接合品質がろう材の量に依存してばらつきやすいこと、ろう材が所期の接合領域の外に流れて金網の外観を悪くすることなどが問題になっている。
【0005】
プラズマ溶接を用いる金網の継ぎ合わせ方法も知られている。たとえば、特許文献1に開示されている金網接合方法は、ステンレス金網の接合されるべき両端部を幅方向の線(端辺)の一部または全部と長さ方向の線とを以って突き合わせ部を形成し、この突き合わせ部を突き合わせてプラズマ溶接法により溶接して同一のステンレス素材からなる接合部を形成する。突き合わせ部は、典型的には、線径が約1/2になるまで削って形成し、双方突き合わせて1本分の線径になるようにしている。また、突き合わせ部の中間にステンレス素材の溶接補助片を挿入することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−21779
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなプラズマ溶接法は、金網の端部に突き合わせ部を形成する前処理(線材を線径が約1/2になるまで削る)作業と、突き合わせ部を正確に突き合わせる作業が非常に難しくて多くの手間を要し、実用性に欠ける。特に、金網の網目が小さくなると、この欠点は致命的であり、数10メッシュ以上の網目の細かい金網の継ぎ合わせには使えない。抵抗溶接法やろう付法も、金網の網目が小さいほど、上述したそれぞれの欠点が顕著に表われる。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、金網の網目が細かくても、加工作業が簡単で、安定性・仕上がり性のすぐれた接合を行える金網継ぎ合わせ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の金網継ぎ合わせ方法は、継ぎ合わせ部となる第1の金網端部と第2の金網端部とを突き合わせる工程と、前記第1の金網端部と前記第2の金網端部とに跨ってそれらの上に板状、リボン状またはワイヤ状の金属からなる介在部材を重ねる工程と、前記第1および第2の金網端部に対してその裏側から前記介在部材にレーザビームを照射して、前記介在部材と前記第1の金網端部とを、および前記介在部材と前記第2の金網端部とをレーザ溶接で接合する工程とを有する。
【0010】
上記の構成においては、介在部材にレーザビームが照射されると、最初に介在部材のレーザ被照射部分がレーザエネルギーによって溶融し、次にその下に位置する金網端部の線材も介在部材の溶融部を通じてレーザエネルギーによって溶融し、レーザビームが中断した後または隣に移動した後に冷えて凝固する。
【0011】
好適な一態様においては、熱伝導率の高い材質からなる支持部材を下にして第1および第2の金網端部の上に介在部材が重ねられ、押さえ治具が上から介在部材を押えつけながら上記のレーザ溶接が行われる。この場合、シーム溶接の形態が好ましく、第1の金網端部と第2の金網端部との間の突き合わせのラインに沿ってその一端から他端まで連続的に行われる。支持部材は、好ましくは熱伝導率の高い材質たとえば銅あるいはセラミックスからなり、介在部材および金網線材に供給されたレーザエネルギーの過剰分を速やかに吸収して外に逃がす。押さえ治具も、熱伝導率の高い材質たとえば銅あるいはセラミックスを材質とすることで、押さえつけの作用だけでなく熱引きの作用も奏することができる。
【0012】
好適な一態様として、押さえ治具は、ブレード状の押さえ部材からなり、突き合わせのラインに沿って介在部材の全体を押えつける。別の好適な一態様として、押さえ治具は、回転ローラからなり、突き合わせのラインに沿ってレーザビームと一緒に移動しながら介在部材を押さえつける。
【0013】
別の好適な一態様においては、介在部材が、突き合わせのラインに沿ってレーザビームの移動と連動して第1および第2の金網端部の上に繰り出される。押さえ治具は、介在部材を繰り出すヘッドからなり、介在部材を第1および第2の金網端部の上に繰り出しながら押さえつける。
【0014】
また、好適な一態様においては、レーザビームのビームスポット内に第1の金網端部の少なくとも一部と第2の金網端部の少なくとも一部とが含まれるように、第1および第2の金網端部間の突き合わせ間隔およびレーザビームのビームスポット径が選定され、介在部材および第1の金網端部間の接合と介在部材および第2の金網端部間の接合とが同時に行われる。この場合、レーザビームのビームスポット内に、第1の金網端部の少なくとも1つの網目と第2の金網端部の少なくとも1つの網目とが含まれるのが好ましい。あるいは、レーザビームのビームスポット内に、第1の金網端部または第2の金網端部の少なくとも1つの網目が含まれるのが好ましい。あるいは、レーザビームのビームスポット内に、第1の金網端部の突き合わせ方向と交差する少なくとも1本の線材と第2の金網端部の突き合わせ方向と交差する少なくとも1本の線材とが含まれるのが好ましい。
【0015】
別の好適な一態様においては、レーザビームのビームスポット内に第1の金網端部もしくは第2の金網端部のいずれか一方が含まれ、介在部材および第1の金網端部間の接合と介在部材および第2の金網端部間の接合とが別々に行われる。
【0016】
好適な一態様においては、介在部材は、好ましくはステンレスまたはニッケルからなり、第1および第2の金網端部をそれぞれ構成している線材の線径に対して0.5倍〜3倍の板厚を有する。第1および第2の金網端部は一枚の金網の相対向する両端部であり、第1の金網端部と第2の金網端部とが継ぎ合わさって金網の筒体が形成される。
【0017】
別の好適な一態様においては、第1および第2の金網端部は独立した第1および第2の金網のそれぞれの一端部であり、第1の金網端部と第2の金網端部とが継ぎ合わさって第1および第2の金網からなる一枚の金網が形成される。
【0018】
本発明は、特に50メッシュ以上の網目数を有する金網の継ぎ合わせに好適に適用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金網継ぎ合わせ方法によれば、上記のような構成および作用により、金網の網目が細かくても、加工作業が簡単で、安定性・仕上がり性のすぐれた接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態において金網の端部同士を突き合わせる工程を示す斜視図である。
【図2】実施形態において突き合わせた金網端部の上に板状の介在部材を重ねる工程を示す斜視図である。
【図3】実施形態において突き合わせの金網端部に介在部材を介してレーザビームを照射する工程を示す斜視図である。
【図4】実施形態のレーザ照射工程における突き合わせの金網端部周りの構成を示す断面図である。
【図5】実施形態におけるレーザ照射工程の継ぎ合わせ部の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】実施形態の一実験例におけるレーザ照射工程後の継ぎ合わせ部を介在部材側から撮った写真である。
【図7】上記実験例におけるレーザ照射工程後の継ぎ合わせ部を金網側から撮った写真である。
【図8】上記実験例の参考例として、介在部材を通さずに金網端部にレーザビームを直接照射した場合の継ぎ合わせ部を金網側から撮った写真である。
【図9】実施形態の一変形例におけるレーザ照射工程を示す一部断面側面図である。
【図10】実施形態の別の一変形例におけるレーザ照射工程を示す一部断面側面図である。
【図11】実施形態における金網端部同士の突き合わせ形態の一例を示す略平面図である。
【図12】実施形態における金網端部同士の突き合わせ形態の一例を示す略平面図である。
【図13】実施形態における金網端部同士の突き合わせ形態の一例を示す略平面図である。
【図14】実施形態における金網端部同士の突き合わせ形態の一例を示す略平面図である。
【図15】第2の実施形態におけるレーザ照射工程を示す断面図である。
【図16】第2の実施形態におけるレーザ照射工程後の継ぎ合わせ部の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0022】
図1〜図4に、本発明の一実施形態における金網継ぎ合わせ方法の一連の工程を示す。
【0023】
先ず、第1の工程として、図1に示すように、継ぎ合わせ部となる第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとを上下に重ならないように平坦な面内(図のXY面内)で突き合わせる。典型的なアプリケーションでは、第1および第2の金網端部10L,10Rが一枚の矩形の金網10の相対向する両端部であり、金網10を無端状の円筒体に形成するために継ぎ合わされる。
【0024】
金網10の材質はレーザ溶接の可能な任意の金属でよく、典型的にはSUS304、SUS316、SUS317等のステンレスである。
【0025】
金網10の織り方(種類)は任意でよい。図示の例は平織タイプであり、図示のY方向に延びる線材(以下“縦線材”と称する。)12YとX方向に延びる線材(以下“横線材”と称する。)12Xとを1本ずつ直角に交差させて織っている。図示の例では、両金網端部10L,10Rが、X方向(突き合わせの方向)においてそれぞれの横線材12X,12Xの先端を付き合わせ、突き合わせのラインEをY方向にまっすぐ延ばしている。なお、突き合わせのラインEは、両金網端部10L,10R間の中間位置を示すおおよその境界ラインである。
【0026】
金網10の網目数も任意でよいが、特にメッシュ50以上の細かい網目のものがこの実施形態の金網継ぎ合わせ加工に適している。なお、ステンレス金網においてメッシュ50の線径はJIS規格で0.16mmである。
【0027】
次に、第2の工程として、図2に示すように、継ぎ合わせ部となるべき第1および第2の金網端部10L,10Rの上に介在部材としてたとえばステンレス板14を重ねる。このステンレス板14は、Y方向では金網10の全長に等しく、X方向(突き合わせ方向)では両金網端部10L,10Rのそれぞれの少なくとも一部をカバーする長さを有している。ステンレス板14の厚みはレーザエネルギーを適度に貫通させるサイズが好ましく、線材12X,12Yの線径に対して0.5倍〜3倍の板厚が特に好ましい。
【0028】
次に、第3の工程として、図3に示すように、第1および第2の金網端部10L,10Rに対してその裏側(図の上方)からステンレス板14にレーザビームLBを照射する。レーザビームLBは、たとえばYAGレーザビームでよい。
【0029】
この実施形態では、図4に示すように、熱伝導率の高い材質たとえば銅あるいはセラミックスからなる支持部材16が使用される。上記第1、第2および第3の工程は、この支持部材16の平坦な載置面の上で順次行われる。第3の工程つまりレーザ照射工程では、押さえ治具として、熱伝導率の高い材質たとえば銅あるいはセラミックスからなる一対のブレード状押さえ部材18L,18Rが突き合わせのラインEの全長に亘ってステンレス板14の左右縁部を一定の加圧力Fで押さえつけ、レーザ出射ユニット(図示せず)より出射されたレーザビームLBが押さえ部材18L,18R間のギャップの中を通ってステンレス板14に入射するようになっている。
【0030】
このレーザ照射工程では、図3に示すように、シーム溶接が実施される。より詳しくは、一定の繰り返し周波数および一定のパワーを有するパルスのレーザビームLBを使用し、このパルスのレーザビームLBのビームスポットBSを一定ピッチでオーバーラップさせながら、突き合わせのラインEに沿ってステンレス板14の一端から他端までY方向に移動(スキャニング)させる。このシーム溶接のスキャニングのために、パルスレーザビームLBを出射する上記レーザ出射ユニットと被加工物(10L,10R,14)を支持する支持部材16との間で相対的なY方向の移動が行われる。
【0031】
図4において、パルスレーザビームLBのビームスポットBS内では、最初にステンレス板14のレーザ被照射部分14'がレーザエネルギーによって溶融し、次にその下に位置する縦線材12Y'および横線材12X'もステンレス板14の溶融部14'を通じてレーザエネルギーによって溶融し、パルスレーザビームLBが中断した後または隣に移動した後に冷えて凝固する。この際、支持部材16および押さえ部材18L,18Rは、ステンレス板14および線材12X,12Yに供給されたレーザエネルギーの過剰分を速やかに吸収して外に逃がす。また、溶融した線材12Y',12X'が銅あるいはセラミックスの支持部材16に接触してもそこに溶着することはない。
【0032】
こうして、図5に示すように、ステンレス板14のレーザ被照射部分14'とその下の縦線材12Y' および横線材12X'とがレーザ溶接で接合される。シーム溶接により、この接合部は、突き合わせのラインEに沿ってY方向で連続的かつ一様に形成される。結果として、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとがステンレス板14を介して継ぎ合わされる。
【0033】
図6および図7に、この実施形態の一実験例によって得られた金網継ぎ合わせ部の外観を写真で示す。図6はステンレス板14側(図5の上方)から撮影した写真であり、図7は金網端部10L,10R側(図5の下方)から撮影した写真である。この実験例の主な条件として、ステンレス金網10(10L,10R)のメッシュは200番(線径0.05mm)、ステンレス板14の板厚は0.1mm、パルスレーザビームLBのパワーは15W、ビームスポット径は0.6mmである。
【0034】
図6および図7に示すように、金網継ぎ合わせ部またはレーザ溶接部(14',12Y',12X')の外観構造は、両面とも突き合わせのラインEに沿って略均一である。図示省略するが、その内部構造も、突き合わせのラインEに沿って略均一である。
【0035】
また、図7に示すように、レーザ溶接部の縦線材12Y' および横線材12X'は変形・変色が少なくて、レーザ溶接前の原形を留めている。さらに、縦線材12Y' ,12Y'間の隙間、横線材12X' ,12X'間の隙間、および縦線材12Y'と横線材12X' ,12X'間の隙間にステンレス板14の溶融部14'が均一に隈なく入り込むので、溶接強度は十分大きく、均一で安定している。加えて、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rが、それぞれの線材12X,12Y同士を直接接合させるのではなくて、ステンレス板14を介して接合されるので、突き合わせ工程において精密な位置合わせは不要であり、突き合わせ方向(X方向)および突き合わせラインEの方向(Y方向)のいずれにおいても位置ずれが大目に許容される。つまり、突き合わせの位置ずれが金網継ぎ合わせ部の溶接品質に与える影響は非常に少ない。
【0036】
図8に、参考例として、ステンレス板14を通さずに金網端部10L,10Rに向けてレーザビームLBを直接照射した場合のレーザ溶接部(14',12Y',12X')の外観構造を金網10側から撮った写真を示す。図示のように、レーザ溶接部の縦線材12Y' および横線材12X'は黒く変色し、横線材12X'の先端部が屈曲したり、丸くなったりする。これは、レーザビームLBの直接照射により線材12Y',12X'が焼けただれてしまい、しかも熱引きが良くないので線材12Y',12X'が過剰に溶け込むためである。
【0037】
上記のように、この実施形態においては、金網の網目が細かくても、加工作業が簡単で、安定性・仕上がり性のすぐれた金網端部の継ぎ合わせを行うことができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0039】
たとえば、上記した実施形態では、レーザ照射工程において押さえ治具にブレード状押さえ部材18L,18Rを用いた(図4)。押さえ治具の別形態として、たとえば、図9に示すような回転ローラ型や、図10に示すようなリボン繰り出しヘッド型等も好適に使用可能である。
【0040】
図9の構成例は、レーザ出射ユニット20にブラケット22および垂直支持脚24を介して回転ローラ26を取り付ける。上記のようなシーム溶接において、レーザ出射ユニット20がレーザビームLBを出射しながらステンレス板14上でビームスポットBSを突き合わせのラインに沿って移動させる時、回転ローラ26もレーザ出射ユニット20と一体に移動(転動)し、ビームスポットBSの一歩前でステンレス板14を押さえつける。ビームスポットBSの後方(跡)は溶接接合されるので、押さえつけは不要である。回転ローラ26の材質も、熱引きに適した銅あるいはセラミックスが好ましい。本構成では、ステンレス板14をビームスポットBSの軌跡に沿って回転ローラ26で押えることができる。そのため、ステンレス板14の幅および回転ローラ26の幅サイズをビームスポットBSの口径サイズに可及的に近づけることができる。これにより、金網の継ぎ目に余分なステンレス板14を残すことなく金網同士を継ぎ合わせることができる。
【0041】
図10の構成例では、介在部材14としてステンレスあるいは弾力性に優れたニッケルからなるリボン28が使用される。突き合わせのラインに沿ってレーザビームLBないしビームスポットBSが移動する時に、これと連動して、中空のリボン繰り出しヘッド30がリボン28をビームスポットBSの上流側から第1および第2の金網端部10L,10Rの上に繰り出し、繰り出したリボン28を押さえつけるようになっている。この構成例においても、リボン28の幅サイズをビームスポットBSの口径サイズに可及的に近づけることができる。なお、リボン28をワイヤに置き換えることも可能である。
【0042】
また、本発明の突き合わせ工程(図1)では、上記のように、精密な位置合わせは不要であり、突き合わせ方向(X方向)および突き合わせラインEの方向(Y方向)のいずれにおいても位置ずれが大目に許容される。
【0043】
具体的には、図11に示すように、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとの間で、それぞれ(左右)の横線材12X,12Xが略一直線上に整列し、突き合わせの先端部に位置するそれぞれ(左右)の縦線材12Ym,12Ym間の距離間隔が網目の1ピッチに略等しい大きさになるのが通常の理想形である。
【0044】
しかし、図12に示すように突き合わせ先端部の縦線材12Ym,12Ym間の距離間隔が網目の1ピッチよりも相当大きくなっても、あるいは図13に示すように第1および第2の金網端部10L,10Rのそれぞれ(左右)の横線材12X,12XがY方向でずれて互いに入り組んでも、第1の金網端部10Lの少なくとも一部と第2の金網端部10Rの少なくとも一部とが介在部材14の下でレーザビームLBのビームスポット幅WBS内に収まっている限り、第1および第2の金網端部10L,10R間の継ぎ合わせには特に支障は生じない。
【0045】
さらには、図14に示すように、第1の金網端部10Lの網目と第2の金網端部10Rの網目が異なっていてもよい。
【0046】
もっとも、図11〜図14に示すように、レーザビームLBのビームスポット幅WBS内に、第1および第2の金網端部10L,10Rの先端部の縦線材12Ym,12Ymが少なくとも1本含まれるように、突き合わせの距離間隔およびビームスポット径が選定されるのが好ましい。
【0047】
また、別の実施形態として、図15に示すように、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとの突き合わせ距離間隔がレーザビームLBのビームスポット幅を優に超えてもよい。ただし、第1の金網端部10Lおよび第2の金網端部10Rに対してレーザビームLBを個別に照射する。この場合も、ステンレス板14のレーザ被照射部分14'がレーザエネルギーによって溶融し、次にその下に位置する縦線材12Y'もしくは横線材12X'もステンレス板14の溶融部14'を通じてレーザエネルギーによって溶融し、パルスレーザビームLBが途絶えた後または隣に移動した後に冷えて凝固する。
【0048】
こうして、図16に示すように、ステンレス板14のレーザ被照射部分14'とその下の縦線材12Y' もしくは横線材12X'とがレーザ溶接で接合される。やはり、シーム溶接により、この接合部は、突き合わせのラインEに沿ってY方向で連続的かつ一様に形成される。結果として、第1の金網端部10Lと第2の金網端部10Rとがステンレス板14を介して継ぎ合わされる。
【0049】
また、金網10ないし金網端部10L,10Rの材質が銅またはアルミニウムの場合は、レーザ照射工程ではYAG高調波のレーザビームを用いるのが好ましい。パルスレーザビームの代わりに連続発振(CW)のレーザビームも使用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 金網
10a 第1の金網端部
10b 第2の金網端部
12Y 縦線材
12X 横線材
14 ステンレス板(介在部材)
16 支持部材
18L,18R ブレード状押さえ部材
20 レーザ出射ユニット
26 ブラケット
28 リボン(介在部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網を継ぎ合わせる方法であって、
継ぎ合わせ部となる第1の金網端部と第2の金網端部とを突き合わせる工程と、
前記第1の金網端部と前記第2の金網端部とに跨ってそれらの上に板状、リボン状またはワイヤ状の金属からなる介在部材を重ねる工程と、
前記介在部材のうちの前記第1および第2の金網端部とは反対側からレーザビームを照射して、前記介在部材と前記第1の金網端部とを、および前記介在部材と前記第2の金網端部とをレーザ溶接で接合する工程と
を有する金網継ぎ合わせ方法。
【請求項2】
前記第1および第2の金網端部は熱伝導率の高い材質からなる支持部材上に載置されて、該第1および第2の金網端部の上に前記介在部材を重ね、
押さえ治具で前記介在部材を押えつけながら前記レーザ溶接を行う、
請求項1に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項3】
前記押さえ治具は、ブレード状の押さえ部材からなり、突き合わせのラインに沿って前記介在部材の全体を押えつける、請求項2に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項4】
前記押さえ治具は、回転ローラからなり、突き合わせのラインに沿って前記レーザビームと一緒に移動しながら前記介在部材を押さえつける、請求項2に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項5】
前記介在部材が、突き合わせのラインに沿って前記レーザビームの移動と連動して前記第1および第2の金網端部の上に繰り出され、
前記押さえ治具は、前記介在部材を繰り出すヘッドからなり、前記介在部材を前記第1および第2の金網端部の上に繰り出しながら押さえつける、請求項2に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項6】
前記レーザビームのビームスポット内に前記第1の金網端部の少なくとも一部と前記第2の金網端部の少なくとも一部とが含まれるように、前記第1および第2の金網端部間の突き合わせ間隔および前記レーザビームのビームスポット径が選定され、前記介在部材および前記第1の金網端部間の接合と前記介在部材および前記第2の金網端部間の接合とが同時に行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項7】
前記レーザビームのビームスポット内に、前記第1の金網端部の少なくとも1つの網目と前記第2の金網端部の少なくとも1つの網目とが含まれる、請求項6に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項8】
前記レーザビームのビームスポット内に、前記第1の金網端部または前記第2の金網端部の少なくとも1つの網目が含まれる、請求項6に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項9】
前記レーザビームのビームスポット内に、前記第1の金網端部の突き合わせ方向と交差する少なくとも1本の線材と前記第2の金網端部の突き合わせ方向と交差する少なくとも1本の線材とが含まれる、請求項6に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項10】
前記第1の金網端部の網目と前記第2の金網端部の網目は同じである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項11】
前記レーザビームのビームスポット内に前記第1の金網端部もしくは前記第2の金網端部のいずれか一方が含まれ、前記介在部材および前記第1の金網端部間の接合と前記介在部材および前記第2の金網端部間の接合とが別々に行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項12】
前記レーザ溶接はシーム溶接の形態で行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項13】
前記シーム溶接は、前記第1の金網端部と前記第2の金網端部との間の突き合わせのラインに沿ってその一端から他端まで連続的に行われる、請求項12に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項14】
前記介在部材が、前記第1および第2の金網端部をそれぞれ構成している線材の線径に対して0.5倍〜3倍の板厚を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項15】
前記第1および第2の金網端部は一枚の金網の相対向する両端部であり、前記第1の金網端部と前記第2の金網端部とが継ぎ合わさって金網の筒体が形成される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項16】
前記第1および第2の金網端部は独立した第1および第2の金網のそれぞれの一端部であり、前記第1の金網端部と前記第2の金網端部とが継ぎ合わさって前記第1および第2の金網からなる一枚の金網が形成される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項17】
前記金網は50メッシュ以上の網目数を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。
【請求項18】
前記金網はステンレス線材からなり、
前記介在部材がステンレスまたはニッケルからなる、
請求項1〜17のいずれか一項に記載の金網継ぎ合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−264462(P2010−264462A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115487(P2009−115487)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000161367)ミヤチテクノス株式会社 (103)
【Fターム(参考)】