説明

鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置

【課題】 車上の二次コイルとしてのレールブレーキ電機子と鉄道用レールに埋め込まれた一次コイルとにより、漏れ磁束の少ない磁気回路を構成することができ、低い周波数でエネルギーを良好に伝達するとともに鉄道車両の重量増を抑制することができる、レールブレーキ兼用非接触給電装置を提供する。
【解決手段】 鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置は、非接触給電地点の鉄道用レール1に埋め込まれた非接触給電一次コイル2と、鉄道車両の台車4に設置された交流励磁レールブレーキ装置の電機子と兼用される非接触給電二次コイル5と、前記非接触給電一次コイル2に電力を供給する電源7と、前記非接触給電二次コイル5に接続される電力変換器8とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、非接触給電装置では、一次コイル(地上)と二次コイル(車上)の結合をよくするため、高周波でエネルギーを伝達する必要があり、大きな容量(VA) の電源装置が必要となる。
そこで、駆動用リニアモーターを非接触給電に併用する提案がなされている(下記特許文献1参照)。
【0003】
一方、本発明者らは、小容量の電源のみで、レール発熱の温度上昇が低減できる交流励磁レールブレーキ装置を提案した(下記特許文献2及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−335289号公報
【特許文献2】特開2010−239683号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】坂本 泰明,柏木 隆行,長谷川 均,笹川 卓,藤井 信男,「リニアレールブレーキ用電機子の設計検討」,電気学会半導体電力変換・リニアドライブ合同研究会,2008年12月 SPC−08−180 LD−08−83,1/6−6/6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、レールブレーキ電機子を非接触給電の二次コイルとして兼用する着想はなく、レールブレーキ電機子を非接触給電の二次コイルとして兼用することにより、ブレーキの機能を有するとともに、非接触給電のために別個に二次コイルを設置しなくても給電することができるようにしたものは存在していない。
本発明は、上記した状況に鑑みて、車上の二次コイルとしてのレールブレーキ電機子と鉄道用レールに埋め込まれた一次コイルとにより、漏れ磁束の少ない磁気回路を構成することができ、商用周波数程度の低い周波数でエネルギーを良好に伝達するとともに鉄道車両の重量増を抑制することができる、レールブレーキ兼用非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、非接触給電地点の鉄道用レールに埋め込まれた非接触給電一次コイルと、鉄道車両の台車に設置された交流励磁レールブレーキ装置の電機子と兼用される非接触給電二次コイルと、前記非接触給電一次コイルに電力を供給する電源と、前記非接触給電二次コイルに接続される電力変換器とを具備することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記交流励磁レールブレーキ装置の電機子と兼用される非接触給電二次コイルは、前記鉄道車両の台車の下部に配置され、前記非接触給電一次コイルと対向することを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電一次コイルの表面に非磁性材からなる絶縁カバーを配置することを特徴とする。
【0009】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電地点は、前記鉄道車両が停止する駅構内や前記鉄道用レールの所定の給電地点に設置されることを特徴とする。
〔5〕上記〔4〕記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電地点で前記非接触給電一次コイルから商用周波数領域での非接触給電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車上に設置された交流励磁レールブレーキ装置の電機子を、非接触給電二次コイルと兼用させることにより、低い周波数でエネルギーを良好に伝達するとともに、鉄道車両の重量増を抑制することができる。
また、低周波でエネルギーを伝達できるため、電源装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置(車両停止時、給電地点)の模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置(車両走行時)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置は、非接触給電地点の鉄道用レールに埋め込まれた非接触給電一次コイルと、鉄道車両の台車に設置された交流励磁レールブレーキ装置の電機子と兼用される非接触給電二次コイルと、前記非接触給電一次コイルに電力を供給する電源と、前記非接触給電二次コイルに接続される電力変換器とを具備する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置(車両停止時、給電地点)の模式図、図2はその鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置(車両走行時)の模式図である。
これらの図において、1は鉄道用レール、2は給電地点の鉄道用レールに埋め込まれた非接触給電一次コイル、3はこの非接触給電一次コイル2の表面に配置される非磁性材からなる絶縁カバー、4は鉄道車両の台車、5は鉄道車両の台車4の下方に配置され、非接触給電一次コイル2と対向する非接触給電二次コイル、6は非接触給電一次コイル2と対向する非接触給電二次コイル5との間のギャップ、7は非接触給電一次コイル2に電力を供給する電源、8は非接触給電二次コイル5に接続される電力変換器(蓄電池やコンデンサなど)である。
【0014】
そこで、図1に示すように、給電地点に停車時は、電源7から非接触給電一次コイル2を励磁し、ギャップ6を介して、非接触給電二次コイル5に非接触で電気エネルギーを伝達する。非接触給電一次コイル2、非接触給電二次コイル5とも強磁性体による磁気回路を構成するため、電源7からの電流は、商用周波数領域でも充分な誘起電圧を得ることができる。
【0015】
鉄道車両の走行時(走行区間)では、図2に示すように、鉄道用レール1と非接触給電二次コイルとしての交流励磁レールブレーキ装置の電機子5′は対向し、非接触給電二次コイル5′(交流励磁レールブレーキ装置の電機子5′)は、交流励磁レールブレーキの電機子としてブレーキ動作を行う。
ここで、片台車に搭載する交流励磁レールブレーキを想定し、給電できるエネルギーを、例えば短時間定格で見積もると下記のようになる。
【0016】
一次入力は230kW(380kVA)、一次銅損は30kW、同期ワットは200kW、二次銅損は30kW、二次出力は170kW(320kVA)となり、すなわち、各台車に2本、一両4本のレールブレーキでは、170kW×4本=680kWとなり、蓄電池ハイブリッド型の通勤電車の駆動も可能な電力が得られる見込みとなる。
なお、この実施例では、停車時のみ非接触給電を行うことを想定しているが、非接触給電一次コイルを延伸することにより、停車時以外の走行時のような車両と地上に相対運動があるような場合でも給電することができる。
【0017】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置は、漏れ磁束の少ない磁気回路を構成することができ、低い周波数でエネルギーを良好に伝達するとともに鉄道車両の重量増を抑制することができる、レールブレーキ兼用非接触給電装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 鉄道用レール
2 非接触給電一次コイル
3 非磁性材からなる絶縁カバー
4 鉄道車両の台車
5 非接触給電二次コイル
5′ レールブレーキ装置の電機子
6 ギャップ
7 電源
8 電力変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電地点の鉄道用レールに埋め込まれた非接触給電一次コイルと、鉄道車両の台車に設置された交流励磁レールブレーキ装置の電機子が兼用される非接触給電二次コイルと、前記非接触給電一次コイルに電力を供給する電力変換器と、前記非接触給電二次コイルに接続される電力変換器とを具備することを特徴とする鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記交流励磁レールブレーキ装置の電機子と兼用される非接触給電二次コイルは、前記鉄道車両の台車の下部に配置され、前記非接触給電一次コイルと対向することを特徴とする鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置。
【請求項3】
請求項2記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電一次コイルの表面に非磁性材からなる絶縁カバーを配置することを特徴とする鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電地点は、前記鉄道車両が停止する駅構内や前記鉄道用レールの所定の給電地点に設置されることを特徴とする鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置。
【請求項5】
請求項4記載の鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置において、前記非接触給電地点で前記非接触給電一次コイルから商用周波数領域での非接触給電を行うことを特徴とする鉄道用レールブレーキ兼用非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−228120(P2012−228120A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95332(P2011−95332)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】