説明

鉄道車両用空気圧縮装置

【課題】フィルタ部において、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができる、鉄道車両空気圧縮装置を提供する。
【解決手段】フィルタユニット75のフィルタ部76は、収容ケース61の外側に向かって張り出すように形成された凸部79とこの凸部79から収容ケース61の内側に向かって斜面を介して凹むように形成された凹部80とが繰り返す凹凸形状に形成される。フィルタユニット75には、板状に形成された部分を有して凹部80を覆うようにフィルタ部76に対して取り付けられる板部材78が更に設けられる。フィルタ部76に形成された複数の凸部79と複数の凹部80とは、それぞれ上下方向に沿って連続して延びるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に設置され、この鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両に設置されてその鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置として、特許文献1乃至特許文献3に開示されたものが知られている。特許文献1乃至特許文献3に開示されたような鉄道車両用空気圧縮装置においては、吸い込まれた空気を圧縮する圧縮機、電動モータを有し圧縮機を駆動する圧縮機駆動部、冷却ファン等が設けられている。そして、これらの構成要素が収容ケースに収容されてパッケージ化されるように構成されている。
【0003】
尚、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、冷却ファンは、電動モータからの駆動力によって回転駆動され、冷却空気の流れを発生させるように構成されている。このような冷却ファンが設けられていることで、装置内の機器が冷却されることになる。また、上記のような鉄道車両用空気圧縮装置においては、収容ケースに、冷却ファンの回転によって冷却空気として吸い込まれる外気(空気)が通過する際に異物の通過を抑制するフィルタ部が設置されることがある。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示された鉄道車両用空気圧縮装置は、圧縮機、圧縮機駆動部、冷却ファン等が、収容ケースにコンパクトに収容されてパッケージ化されており、これによると、鉄道車両に対する取り付け性が非常に優れた鉄道車両用空気圧縮装置を実現することができる。尚、特許文献3においては、複数台が並列接続された圧縮機を備える鉄道車両用空気圧縮装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−227785号公報
【特許文献2】特開2003−200826号公報
【特許文献3】特開2005−76481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷却空気としての外気が収容ケース内に吸い込まれる際には、上述したフィルタ部において、異物の通過が抑制され、異物が収容ケース内に侵入してしまうことが防止される。そして、フィルタ部において通過が抑制される異物の大きさや形状等にもよるが、冷却ファンの回転による空気の吸い込み動作が行われているため、異物がフィルタ部に付着したままとなってしまう。そして、フィルタ部に付着した異物が、吸い込まれる空気に長時間さらされることよって、細かく崩れて収容ケース内に侵入してしまうことが懸念される。或いは、フィルタ部に長時間付着した異物が核となって他の異物が更に凝集してしまうことが懸念される。従って、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができるフィルタ部の構造が望ましい。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、フィルタ部において、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができる、鉄道車両用空気圧縮装置を提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る鉄道車両用空気圧縮装置は、鉄道車両に設置され、当該鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置であって、空気吸込み部から吸い込まれた空気を圧縮する圧縮機と、電動モータを有し、前記圧縮機を駆動する圧縮機駆動部と、前記電動モータからの駆動力によって回転駆動され、冷却空気の流れを発生させる冷却ファンと、前記圧縮機、前記圧縮機駆動部、及び前記冷却ファンを収容するとともに、前記空気吸込み部が設置された収容ケースと、前記収容ケースに設置され、前記冷却ファンの回転によって前記冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に異物の通過を抑制するフィルタ部を有するフィルタユニットと、を備えている。そして、第1発明に係る鉄道車両用空気圧縮装置は、前記フィルタ部は、前記収容ケースの外側に向かって張り出すように形成された凸部と当該凸部から前記収容ケースの内側に向かって斜面を介して凹むように形成された凹部とが繰り返す凹凸形状に形成され、前記フィルタユニットは、板状に形成された部分を有して前記凹部を覆うように前記フィルタ部に対して取り付けられる板部材を更に有し、前記フィルタ部に形成された複数の前記凸部及び複数の前記凹部は、前記凸部及び前記凹部のそれぞれが上下方向に沿って連続して延びるように配置されることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、圧縮機、圧縮機駆動部、冷却ファン等が、収容ケースにコンパクトに収容されてパッケージ化され、鉄道車両に対する取り付け性が非常に優れた鉄道車両用空気圧縮装置を実現することができる。そして、収容ケースに設置されるフィルタユニットに設けられて冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際の異物の通過を抑制するフィルタ部には、収容ケースの外側向きの凸部と内側向きの凹部とを繰り返す凹凸形状が施されている。このため、吸い込まれる空気とともにフィルタ部に衝突した異物は、吸い込まれる空気の流れにより、凸部から斜面に沿って凹部へと集まるようにして移動することになる。そして、凹部は凸部とともに上下方向に沿って連続して延びるように配置され、更に、凹部にはこの凹部を覆うように板部材が取り付けられている。このため、フィルタ部から吸い込まれる空気は板部材の側方を通過することになり、凹部に集まるように移動した異物が、凹部に付着したままとなることなく凹部に沿って下方に落下し、除去されることになる。これにより、異物がフィルタ部に付着したままとなってしまうことが抑制され、フィルタ部に付着した異物が、吸い込まれる空気に長時間さらされることよって、細かく崩れて収容ケース内に侵入してしまうことを防止できる。また、フィルタ部に長時間付着した異物が核となって他の異物が更に凝集してしまうことも防止できる。従って、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができるフィルタ部の構造を実現することができる。
【0010】
従って、本発明によると、フィルタ部において、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができる、鉄道車両用空気圧縮装置を提供することができる。
【0011】
第2発明に係鉄道車両用空気圧縮装置は、第1発明の鉄道車両用空気圧縮装置において、前記板部材は、前記収容ケースの内側から前記凹部を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、板部材が収容ケースの内側から凹部を覆うように配置されるため、凹部に移動した異物が、板部材の平滑な表面と接触せず、フィルタ部における粗くて摩擦が大きい表面と接触した状態となる。このため、凹部に移動した異物が、吸い込まれる空気の影響で板部材の表面で滑るようにして巻き上げられてしまってフィルタ部の表面で散
らされてしまうことが抑制される。従って、一旦凹部に集まった異物が散らされてしまうことを抑制でき、効率よく異物を除去することができる。
【0013】
第3発明に係る鉄道車両用空気圧縮装置は、第1発明又は第2発明の鉄道車両用空気圧縮装置において、前記フィルタユニットは、前記冷却空気として吸い込まれる空気の通過方向において並ぶ複数の前記フィルタ部を有し、複数の前記フィルタ部のうちの1つである第1のフィルタ部と、複数の前記フィルタ部のうちの前記第1のフィルタ部とは異なる第2のフィルタ部とにおいて、前記凹部の位置が前記通過方向においてずれるように配置されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、吸い込まれる空気の通過方向に並ぶ複数のフィルタ部が設けられており、これらの複数のフィルタ部における第1及び第2のフィルタ部にて、空気の通過方向においてずれた位置に凹部が配置される。このため、サイズの小さい異物が、空気の通過方向の上流側に配置された1つのフィルタ部(例えば、第1のフィルタ部)の凸部を通過した場合であっても、そのフィルタ部の下流側に配置されたフィルタ部(例えば、第2のフィルタ部)の凹部に効率よく捕捉されることになる。そして、このフィルタ部の凹部から下方に異物を除去することができる。これにより、異物が長時間付着してしまうことを抑制して異物を除去できる複数のフィルタ部が設けられているフィルタユニットにおいて、更に効率よく異物を除去することができる。
【0015】
第4発明に係る鉄道車両用空気圧縮装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかの鉄道車両用空気圧縮装置において、前記フィルタ部は、前記凹凸形状が形成された金属製の網として設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、フィルタ部が金属製の網として設けられるため、上下方向に延びる凹部と凸部とが繰り返す凹凸形状が施された構造のフィルタ部を金網を用いて容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、フィルタ部において、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができる、鉄道車両用空気圧縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用空気圧縮装置のシステム構成について、構成要素をブロック図で模式的に示す模式図である。
【図2】図1に示す鉄道車両用空気圧縮装置におけるフィルタユニットについて収容ケースの一部とともに示す断面図である。
【図3】図2に示すフィルタユニットの一部を拡大して示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態においては、油を伴った空気を圧縮した後に圧縮空気から油を分離して圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置を例にとって説明するが、この例に限らず、鉄道車両に設置されてこの鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置として本発明を広く適用することができる。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用空気圧縮装置1(以下、単に「空気圧縮装置1」ともいう)のシステム構成について、構成要素をブロック図で模式的に示す模式図である。図1に示す空気圧縮装置1は、図示しない鉄道車両に対して、例えば、その
下部において設置される。そして、この空気圧縮装置1において生成された圧縮空気は、鉄道車両において各種空圧機器を作動させるために用いられる。
【0021】
図1に示す空気圧縮装置1は、収容ケース61、圧縮機62、圧縮機駆動部63、カップリング64、カップリングケース65、冷却ファン66、アフタークーラー67、空気吸込み部68、圧縮空気送出部69、油回収器70、油分離エレメント71、水油用分離器72、除湿器73、オイルクーラー74、フィルタユニット75、等を備えて構成されている。
【0022】
そして、空気圧縮装置1は、空気吸込み部68から吸い込んだ空気を圧縮機62で圧縮し、アフタークーラー67で冷却した後に、圧縮空気送出部69から圧縮空気として送出する装置として構成されている。また、空気圧縮装置1は、油回収器70、油分離エレメント71、水油用分離器72、オイルクーラー74、等を備えることで、油を伴った空気を圧縮した後に圧縮空気から油を分離して圧縮空気を生成する装置として構成されている。これにより、圧縮熱の除去、油膜によるシール及び潤滑を行うことができるように構成されている。以下、空気圧縮装置1における各構成要素について、詳しく説明する。
【0023】
収容ケース61は、圧縮機62、圧縮機駆動部63、カップリングケース65、冷却ファン66、アフタークーラー67、油回収器70、油分離エレメント71、水油用分離器72、除湿器73、オイルクーラー74、等を収容する箱状の筐体として設けられている。そして、この収容ケース61には、その壁部において、空気吸込み部68と、圧縮空気送出部69と、フィルタユニット75とが設置されている。
【0024】
収容ケース61に設置される空気吸込み部68は、圧縮機62で圧縮される空気(外気)を吸い込むための機構として設けられ、圧縮機62に連通するように形成されている。そして、この空気吸込み部68には、吸い込まれる空気が通過する際に砂塵等の粉塵の通過を抑制する図示しない吸込みフィルタが設けられている。また、圧縮空気送出部69は、後述のアフタークーラー67で冷却された圧縮空気を送出する機構として設けられている。そして、この圧縮空気送出部69は、例えば、収容ケース61の外部に設置されて圧縮空気を貯留する図示しないアキュムレータタンク(圧縮空気溜め)に対して生成された圧縮空気を供給するように収容ケース61の外部に対して接続される配管系統として設けられている。
【0025】
圧縮機62は、空気吸込み部68に連通し、空気吸込み部68から吸い込まれた空気を圧縮するように構成されている。具体的な構造についての図示を省略するが、圧縮機62は、例えば、互いに逆方向に回転して空気を圧縮する一対のスクリューを有するスクリュー式の空気圧縮機として設けられている。スクリューが配置される圧縮機本体の内部では、空気吸込み部68に連通する部分から後述の油回収器70に連通する部分にかけて空気の圧力が上昇することになる。尚、圧縮機62は、スクリュー式以外の空気圧縮機として設けられていてもよい。例えば、圧縮機62が、スクロール式の空気圧縮機、或いは、圧縮機駆動部63からの回転駆動力がクランク軸を介して往復駆動力に変換されて伝達されて駆動されるレシプロ式の空気圧縮機、等として設けられていてもよい。
【0026】
圧縮機駆動部63は、図示しない電動モータを有し、圧縮機62を回転駆動する駆動機構として設けられている。この圧縮機駆動部63は、減速機部分が設けられておらずに電動モータの回転軸から直接に駆動力を出力する駆動機構として設けられていてもよく、また、電動モータに連結される減速機部分を備える減速機付モータとして設けられていてもよい。
【0027】
カップリング64は、圧縮機駆動部63と圧縮機62とを連結して圧縮機駆動部63の
駆動力を圧縮機62に伝達するように構成されており、例えば、軸継手として設けられている。また、カップリングケース65は、カップリング64を収容する箱状体として設けられている。そして、カップリングケース65は、圧縮機62及び圧縮機駆動部63の間に配置されるとともに、これらの圧縮機62及び圧縮機駆動部63に対して結合されている。
【0028】
冷却ファン66は、圧縮機駆動部63に対して、カップリング65が連結される側と反対側の端部において取り付けられている。この冷却ファン66は、例えば、軸流ファンとして設けられている。そして、冷却ファン66は、圧縮機駆動部63の電動モータの回転軸の駆動力がカップリング64側と反対側で伝達されるように設置されている。このように、冷却ファン66は、圧縮機駆動部63の電動モータからの駆動力によって回転駆動され、これにより、後述のフィルタユニット75から吸い込まれる空気による冷却空気の流れを発生させるように構成されている。図1では、冷却ファン66の回転によって発生する空気の流れの方向を二点鎖線の矢印Aで示している。尚、冷却ファン66は、軸流ファン以外の冷却ファンとして設けられていてもよい。例えば、冷却ファン66として、シロッコファン等の他の形態の冷却ファンを用いることもできる。
【0029】
アフタークーラー67は、圧縮機62で圧縮されて圧縮熱が残っている圧縮空気を冷却する熱交換器として設けられている。このアフタークーラー67は、冷却ファン66に対して、この冷却ファン66によって発生する冷却空気の流れの上流側に配置されている。これにより、アフタークーラー67が冷却ファン66によって発生する冷却空気によって外部から冷却され、更に、アフタークーラー67の内部を通過する圧縮空気が冷却されることになる。尚、アフタークーラー67は、後述するオイルクーラー74と一体的に結合されて形成されている。また、アフタークーラー67は、冷却ファン66に対して、この冷却ファン66によって発生する冷却空気の流れの下流側に配置されていてもよい。
【0030】
図2は、フィルタユニット75について収容ケース61の一部とともに示す断面図である。また、図3は、図2に示すフィルタユニット75の一部を拡大して示す一部拡大断面図である。尚、図2は、フィルタユニット75及び収容ケース61の一部について上方から見た状態を示す断面図であり、図2の図面と垂直な方向が上下方向となる。空気圧縮装置1は、図2の断面図と垂直な方向が上下方向に配置されるように、図示しない鉄道車両に対して設置される。
【0031】
図1乃至図3に示すフィルタユニット75は、収容ケース61に対して、冷却ファン66によって発生する冷却空気の流れの上流側に位置する壁部において、設置されている。そして、フィルタユニット75は、複数(本実施形態では、3つの場合を例示)のフィルタ部76(76a、76b、76c)と、フィルタ枠77と、複数の板部材78とを備えて構成されている。
【0032】
フィルタ枠77は、例えば、角筒状に形成されたフレーム構造体として設けられ、収容ケース61に固定され、収容ケース61に形成された開口部の周囲を囲むように設置されている。このフィルタ枠77の内側を冷却空気として吸い込まれる空気が通過して収容ケース61内に吸い込まれることになる。そして、フィルタ枠77の内側には、フィルタ部76が固定されている。
【0033】
フィルタ部76は、冷却ファン66の回転によって冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際にごみ等の異物(図示せず)の通過を抑制する濾過手段として設けられている。このフィルタ部76としては、冷却空気として吸い込まれる空気の通過方向(図2において二点鎖線の矢印Aで示す方向)において並ぶ複数のフィルタ部(76a、76b、76c)が設けられている。
【0034】
空気圧縮装置1が鉄道車両に設置された状態において上方から見た断面図である図2及び図3に示すように、各フィルタ部76(76a、76b、76c)は、凸部79と凹部80とが水平方向に繰り返す凹凸形状に形成されている。そして、このフィルタ部76は、上記の凹凸形状が形成された金属製の網(即ち、金網)として設けられている。また、凸部79と凹部80とは、各フィルタ部76(76a、76b、76c)において、それぞれ複数形成されている。尚、各フィルタ部76の外周は、フィルタ枠77の内壁に対して固定されている。
【0035】
各フィルタ部76における各凸部79は、収容ケース61の外側に向かって三角柱状に突出する部分の稜線部分を構成しながら張り出すように山状に形成されている。一方、各フィルタ部76における各凹部80は、水平方向における両側にて隣接して配置された凸部79から収容ケース61の内側に向かって斜面(収容ケース61の外側から内側に向かう方向に対して斜めの面)を介して凹むように谷状に形成されている。
【0036】
上記のように凸部79と凹部80とが水平方向に繰り返す凹凸形状に形成されることで、各フィルタ部76(76a、76b、76c)の水平方向の断面は、三角波状の断面を構成している。そして、各フィルタ部76に形成された複数の凸部79及び複数の凹部80は、各凸部79及び各凹部80のそれぞれが上下方向に沿って連続して延びるように配置されている。また、複数のフィルタ部76のうちの1つである第1のフィルタ部(例えば、フィルタ部76b)と、複数のフィルタ部76のうちの第1のフィルタ部とは異なる第2のフィルタ部(例えば、フィルタ部76a及びフィルタ部76c)とにおいて、凹部80の位置が空気の通過方向(図2の矢印A方向)においてずれるように配置されている。そして、フィルタ部76bにおける凹部80は、フィルタ部76a及びフィルタ部76cにおける凸部79に対して空気の通過方向において対向する位置までずれて配置されている。尚、本実施形態では、上記の例とは逆に、フィルタ部76a及びフィルタ部76cのいずれかが第1のフィルタ部を構成し、フィルタ部76bが第2のフィルタ部を構成しているものとしてもよい。
【0037】
板部材78は、板状に形成された部分を有して凹部80を覆うように、各フィルタ部76のそれぞれに対して複数取り付けられている。そして、各板部材78は、収容ケース61の内側から各凹部80を覆うように配置されている。これにより、各板部材78は、各凹部80とともに上下方向に延びるように配置されている。また、板部材78は、三角形の2辺を構成する断面形状(三角形の1辺が欠落したような断面形状)を有し、この断面形状で柱状に延びる金属製の部材(例えば、山形鋼)として設けられている。そして、各板部材78は、各フィルタ部76に対して、凹部80に対して収容ケース61の内側から重なった状態で、例えば、溶接により固定される。
【0038】
尚、図3においては、冷却ファン66の回転によって冷却空気として吸い込まれる空気の流れを破線の矢印で示している。この図3に示すように、冷却空気として吸い込まれる空気は、板部材78が取り付けられて空気の流れが遮られた凹部80以外の箇所において、フィルタ部76を通過することになる。また、冷却空気とともに異物がフィルタ部76に向かって流れ込んできた場合、その異物は、凸部79に衝突した場合であっても、フィルタ部76の表面の斜面に沿って凹部80に向かって集まるように移動することになる。そして、凹部80の表面においては冷却空気の流れが遮られているため、凹部80に集まるように移動した異物は、凹部80に沿って下方に落下して除去されることになる。
【0039】
図1に示す油回収器70は、油入り圧縮空気吐出経路70aと、油タンク70bとを備えて構成されている。油入り圧縮空気吐出経路70aは、圧縮機62と油タンク70bとに連通する経路として設けられている。圧縮機62において油を伴って圧縮された圧縮空
気は、油入り圧縮空気吐出経路70aを介して油タンク70bに誘導され、圧縮空気とともに油入り圧縮空気吐出経路70aから吐出された油が、油タンク70bに回収されることになる。尚、油入り圧縮空気吐出経路70aにおける油タンク70b内での吐出部分(図示せず)には、例えば、遠心分離機(図示せず)が設置されている。そして、油を伴った圧縮空気が油入り圧縮空気吐出経路70aを通過してその吐出部分から吐出されると、遠心分離機によって大きな油滴が分離されて油タンク70b内で飛散しながら重力で落下して油タンク70b内に回収されることになる。
【0040】
また、油回収器70の油タンク70bと圧縮機62との間には、それらに連通するように設置され、圧縮機62に油タンク70bから油を供給する油供給経路81が設けられている。そして、油供給経路81は、油入り圧縮空気吐出経路70aから吐出された圧縮空気が油タンク70b内に回収された油の油面を押し下げることで、圧縮機62に油を供給するように構成されている。
【0041】
図1に示す油分離エレメント71は、圧縮機62とアフタークーラー67とを連通する経路に配置されており、圧縮機62において油を伴って圧縮されて油回収器70を通過した圧縮空気から油を分離するフィルタ要素を備えて構成されている。この油分離エレメント71において、油回収器70において回収されなかった細かい油滴が圧縮空気から分離されることになる。
【0042】
図1に示すオイルクーラー74は、油供給経路81における油タンク70b側と圧縮機62側とに連通するように設けられ、油タンク70b内の油を冷却して油供給経路81に供給可能な熱交換器として設けられている。尚、図1では、オイルクーラー74と、油タンク70b及び圧縮機62とを連通する経路の図示は省略している。オイルクーラー74は、前述のように、アフタークーラー67と一体的に結合されて形成されている。そして、オイルクーラー74は、冷却ファン66に対して冷却空気の流れの上流側に配置されており、オイルクーラー74が冷却ファン66によって発生する冷却空気によって外部から冷却されることで、オイルクーラー74の内部を通過する油が冷却されることになる。尚、油タンク70b内の油温を検知する温度スイッチ(図示せず)と、オイルクーラー74の油の流動を制御するために、油温によって独立して作動する油温調整弁(図示せず)とが設けられていることで、圧縮機62に供給される油の温度が所定の温度範囲に収まるように制御されている。尚、オイルクーラー74は、冷却ファン66に対して冷却空気の流れの下流側に配置されていてもよい。
【0043】
図1に示す水油用分離器72は、アフタークーラー67と後述の除湿器73とを連通する経路に配置されており、アフタークーラー67で冷却された圧縮空気から水分と油分とを分離するフィルタ要素を備えて構成されている。この水油用分離器72において、圧縮空気から水分が分離されるとともに、油分離エレメント71において分離されなかった微量の油分も圧縮空気から分離されることになる。
【0044】
図1に示す除湿器73は、水油用分離器72と圧縮空気送出部69との間に配置され、水油用分離器72で水分と油分とが分離された圧縮空気に対して更に除湿を行う乾燥剤が含まれたフィルタ要素あるいは中空糸膜方式の除湿を行うフィルタ要素を備えて構成されている。この除湿器73において、圧縮空気送出部69から送出される圧縮空気に対する最終的な除湿が行われることになる。
【0045】
次に、上述した空気圧縮装置1の作動について説明する。空気圧縮装置1の運転が行われている状態では、まず、外気である空気が、圧縮機62の作動によって発生する負圧によって、空気吸込み部68から吸い込まれ、圧縮機62内に流入する。このとき、圧縮機62には、前述したように、油供給経路81から油が供給されており、圧縮機62内にお
いて、吸い込まれた空気が油を伴って圧縮されることになる。
【0046】
油を伴って圧縮された圧縮空気は、油入り圧縮空気吐出経路70aを通過し、油タンク70b内に吐出される。また、油入り圧縮空気吐出経路70aの吐出部分に設けられた遠心分離機で圧縮空気から分離された油は、油タンク70b内に回収されることになる。この回収された油は、油供給経路81を経て圧縮機62に対して供給されることになる。即ち、油は、油回収器70と圧縮機62との間を循環することになる。また、油タンク70b内の油の油温が所定の温度以上に上昇すると、オイルクーラー74による油の冷却が行われることになる。
【0047】
油タンク70b内に吐出された圧縮空気は、油分離エレメント71を通過し、油が分離されることになる。そして、油分離エレメント71を通過した圧縮空気は、アフタークーラー67へ誘導され、アフタークーラー67において冷却される。更に、アフタークーラー67で冷却された圧縮空気は、水油用分離器72において水分と油分とが分離され、除湿器73において更に除湿が行われ、圧縮空気送出部69から送出されることになる。
【0048】
また、冷却ファン66の回転によってフィルタユニット75のフィルタ部76を介して外気が冷却空気として吸い込まれ、収容ケース61内に冷却空気の流れが生じることになる。そして、冷却空気とともに異物がフィルタ部76に向かって流れ込んできた場合、その異物は、フィルタ部76の表面に衝突して凹部80に向かって集まるように移動し、更に、凹部80に沿って下方に落下して除去されることになる。
【0049】
以上説明したように、空気圧縮装置1によると、圧縮機62、圧縮機駆動部63、冷却ファン66等が、収容ケース61にコンパクトに収容されてパッケージ化され、鉄道車両に対する取り付け性が非常に優れた鉄道車両用空気圧縮装置を実現することができる。そして、収容ケース61に設置されるフィルタユニット75に設けられて冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際の異物の通過を抑制するフィルタ部76には、収容ケース61の外側向きの凸部79と内側向きの凹部80とを繰り返す凹凸形状が施されている。このため、吸い込まれる空気とともにフィルタ部76に衝突した異物は、吸い込まれる空気の流れにより、凸部79から斜面に沿って凹部80へと集まるようにして移動することになる。そして、凹部80は凸部79とともに上下方向に沿って連続して延びるように配置され、更に、凹部80にはこの凹部80を覆うように板部材78が取り付けられている。このため、フィルタ部76から吸い込まれる空気は板部材78の側方を通過することになり、凹部80に集まるように移動した異物が、凹部80に付着したままとなることなく凹部80に沿って下方に落下し、除去されることになる。これにより、異物がフィルタ部76に付着したままとなってしまうことが抑制され、フィルタ部76に付着した異物が、吸い込まれる空気に長時間さらされることよって、細かく崩れて収容ケース61内に侵入してしまうことを防止できる。また、フィルタ部76に長時間付着した異物が核となって他の異物が更に凝集してしまうことも防止できる。従って、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に異物を除去するとともに、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるフィルタ部76の構造を実現することができる。また、仮にフィルタ部76に異物が長時間付着していたとしても、凹凸形状であるため、平面形状の場合に比べ、異物が付着可能な面積が多くなる。そのため冷却空気の吸い込みが阻害されることが軽減される。
このように異物が長時間付着してしまうことを抑制することと、異物の付着可能面積が増加することにより、結果的に清掃等のメンテナンス周期を長くすることができる。
【0050】
従って、本実施形態によると、フィルタ部76において、冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に、異物が長時間付着してしまうことを抑制できるとともに、一旦付着した異物を除去することができる、鉄道車両用空気圧縮装置1を提供することができる。
【0051】
また、空気圧縮装置1によると、板部材78が収容ケース62の内側から凹部80を覆うように配置されるため、凹部80に移動した異物が、板部材78の平滑な表面と接触せず、フィルタ部76における粗くて摩擦が大きい表面と接触した状態となる。このため、凹部80に移動した異物が、吸い込まれる空気の影響で板部材78の表面で滑るようにして巻き上げられてしまってフィルタ部76の表面で散らされてしまうことが抑制される。従って、一旦凹部80に集まった異物が散らされてしまうことを抑制でき、効率よく異物を除去することができる。
【0052】
また、空気圧縮装置1によると、吸い込まれる空気の通過方向に並ぶ複数のフィルタ部76(76a、76b、76c)が設けられており、これらの複数のフィルタ部76における第1及び第2のフィルタ部にて、空気の通過方向においてずれた位置に凹部80が配置される。このため、サイズの小さい異物が、空気の通過方向の上流側に配置された1つのフィルタ部76a(例えば、第1のフィルタ部)の凸部80を通過した場合であっても、そのフィルタ部76aの下流側に配置されたフィルタ部76b(例えば、第2のフィルタ部)の凹部80に効率よく捕捉されることになる。そして、このフィルタ部76bの凹部80から下方に異物を除去することができる。これにより、異物が長時間付着してしまうことを抑制して異物を除去できる複数のフィルタ部76が設けられているフィルタユニット75において、更に効率よく異物を除去することができる。
【0053】
また、空気圧縮装置1によると、フィルタ部76が金属製の網として設けられるため、上下方向に延びる凹部80と凸部79とが繰り返す凹凸形状が施された構造のフィルタ部76を金網を用いて容易に形成することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、フィルタ部の個数は、本実施形態で例示した数に限らず、変更して実施してもよい。また、フィルタ部が1つのみ設けられているフィルタユニットを実施してもよい。また、フィルタ部における凹凸形状や板部材の形状については、変更して実施してもよい。また、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とは、ずれるように配置されているが、必ずしもずれて配置される必要はなく、さらにずれ量も適宜変更してもよい。つまり、ずれの量がゼロ(ずれていない場合)は異物が通過する可能性は高くなるものの空気の給気抵抗が最小となり、本実施例のようにずれた場合は、空気の給気抵抗が最大となるものの異物が通過する可能性は少なくなるので、どの程度ずらすかは適宜、決定すればよい。また、板部材については、収容ケースの外側から凹部を覆うように配置されていてもよい。この場合、板部材の表面に凹凸加工や粗面化処理等を施すことで、異物が散らされてしまうことを効率よく防止することができる。また、油を伴わずに空気を圧縮する形態の鉄道車両用空気圧縮装置に対して、本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、鉄道車両に設置されてこの鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 鉄道車両用空気圧縮装置
61 収容ケース
62 圧縮機
63 圧縮機駆動部
66 冷却ファン
75 フィルタユニット
76、76a、76b、76c フィルタ部
78 板部材
79 凸部
80 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に設置され、当該鉄道車両において用いられる圧縮空気を生成する鉄道車両用空気圧縮装置であって、
空気吸込み部から吸い込まれた空気を圧縮する圧縮機と、
電動モータを有し、前記圧縮機を駆動する圧縮機駆動部と、
前記電動モータからの駆動力によって回転駆動され、冷却空気の流れを発生させる冷却ファンと、
前記圧縮機、前記圧縮機駆動部、及び前記冷却ファンを収容するとともに、前記空気吸込み部が設置された収容ケースと、
前記収容ケースに設置され、前記冷却ファンの回転によって前記冷却空気として吸い込まれる空気が通過する際に異物の通過を抑制するフィルタ部を有するフィルタユニットと、
を備え、
前記フィルタ部は、前記収容ケースの外側に向かって張り出すように形成された凸部と当該凸部から前記収容ケースの内側に向かって斜面を介して凹むように形成された凹部とが繰り返す凹凸形状に形成され、
前記フィルタユニットは、板状に形成された部分を有して前記凹部を覆うように前記フィルタ部に対して取り付けられる板部材を更に有し、
前記フィルタ部に形成された複数の前記凸部及び複数の前記凹部は、前記凸部及び前記凹部のそれぞれが上下方向に沿って連続して延びるように配置されることを特徴とする、鉄道車両用空気圧縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用空気圧縮装置であって、
前記板部材は、前記収容ケースの内側から前記凹部を覆うように配置されていることを特徴とする、鉄道車両用空気圧縮装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道車両用空気圧縮装置であって、
前記フィルタユニットは、前記冷却空気として吸い込まれる空気の通過方向において並ぶ複数の前記フィルタ部を有し、
複数の前記フィルタ部のうちの1つである第1のフィルタ部と、複数の前記フィルタ部のうちの前記第1のフィルタ部とは異なる第2のフィルタ部とにおいて、前記凹部の位置が前記通過方向においてずれるように配置されていることを特徴とする、鉄道車両用空気圧縮装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気圧縮装置であって、
前記フィルタ部は、前記凹凸形状が形成された金属製の網として設けられていることを特徴とする、鉄道車両用空気圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153534(P2011−153534A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14209(P2010−14209)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】