鉄骨柱の耐火構造
【課題】鉄骨柱を囲む周壁に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる鉄骨柱の耐火構造を提供する。
【解決手段】鉄骨柱18を囲む複数のボード部材20により構成され開口部38を有する第1遮蔽部12と、開口部38を覆い設備スペースSを形成する第2遮蔽部14と、を有する鉄骨柱の耐火構造10により、第1遮蔽部12に開口部38を設けることによる鉄骨柱18の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【解決手段】鉄骨柱18を囲む複数のボード部材20により構成され開口部38を有する第1遮蔽部12と、開口部38を覆い設備スペースSを形成する第2遮蔽部14と、を有する鉄骨柱の耐火構造10により、第1遮蔽部12に開口部38を設けることによる鉄骨柱18の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
強化石膏ボードやモルタルボード等のボード部材によって鉄骨柱の周りを囲んで周壁を形成することにより鉄骨柱の耐火性を向上させる、鉄骨柱の耐火構造が提案されている。例えば、特許文献1には、鉄骨柱の外面を強化耐火ボードで被覆する鉄骨耐火被覆構造が紹介されている。
【0003】
このような耐火構造において、周壁と鉄骨柱との間に設備スペースを設け、この設備スペースと部屋空間とをつなぐ開口部を周壁の一部に設けた場合、鉄骨柱の耐火性が低下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−180569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、鉄骨柱を囲む周壁に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる鉄骨柱の耐火構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、構造物を構成する鉄骨柱の周りを前記鉄骨柱と間隔をあけて囲む複数のボード部材により構成され開口部を有する第1遮蔽部と、前記鉄骨柱側へ突出するように設けられて前記開口部を覆い、設備スペースを形成する第2遮蔽部と、を有する鉄骨柱の耐火構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、鉄骨柱と間隔をあけてこの鉄骨柱の周りを囲む複数のボード部材により、第1遮蔽部を構成する。また、鉄骨柱側へ突出するように設けられて、第1遮蔽部の有する開口部を覆う第2遮蔽部により、設備スペースを形成する。
【0008】
よって、開口部から設備スペースへ進入する火災時の火炎や熱に対して、鉄骨柱が第2遮蔽部により遮蔽され、第1遮蔽部に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第2遮蔽部は、前記構造物に上下両端部が支持され前記ボード部材が固定される支持部材に固定されている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、支持部材に第2遮蔽部を固定することにより、開口部を覆うように第2遮蔽部を確実に設置することができる。また、ボード部材が固定される支持部材を、第2遮蔽部が固定される部材として兼用することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第2遮蔽部は、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成され、該溝形部材間の目地は、シート部材で塞がれている。
【0012】
請求項3に記載の発明では、複数の溝形部材によって第2遮蔽部を形成することにより、第2遮蔽部の設置手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、鉄骨柱を囲む周壁に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す正面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る第2遮蔽部及び溝形部材の形成方法を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る第2遮蔽部及び溝形部材の形成方法を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す正面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0016】
図1の斜視図、及び図1のA−A断面図である図2に示すように、鉄骨柱の耐火構造10は、第1遮蔽部12と、第2遮蔽部14とを有している。第1遮蔽部12は、構造物16を構成する鉄骨柱18の周りを囲む複数のボード部材20により構成され、鉄骨柱18を耐火被覆している。鉄骨柱18は、横断面が略正方形状の鋼管である。
【0017】
ボード部材20は、下張りボード22と、仕上げ材としての役割りを兼ねる上張りボード24とによって構成されている。下張りボード22は、内側(鉄骨柱18側)に配置され、上張りボード24は、下張りボード22の外面に重ねられて外側(部屋空間26側)に配置されている。図2に示すように、下張りボード22は、鉄骨柱18と間隔をあけて配置されている。これにより、鉄骨柱18の周囲を囲むようにして、鉄骨柱18の外面と下張りボード22の内面との間に空間が形成されている。
【0018】
下張りボード22は、強化石膏ボードで形成され、上張りボード24は、石膏ボードで形成されている。石膏ボードは、石膏を主成分とした素材を板状にして特殊な用紙で包んで構成された耐火ボードであり、強化石膏ボードは、石膏にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した耐火ボードである。なお、通常、石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、この結晶水が蒸気として空気中に放出される。そして、結晶水の蒸発により熱が吸収されることによって、断熱効果が発揮される。
【0019】
ボード部材20は、略鉛直に配置された支持部材としてのスタッド28に固定されている。スタッド28は、軽鉄製のC形鋼によって構成されており、溝形状の横断面を有する軽鉄製のランナー30を介して、構造物16を構成する上下に配置された床スラブ32、34に上下両端部が固定されて床スラブ32、34に支持されている。
【0020】
図2に示すように、下張りボード22は、ドリリングタッピングねじ36によりスタッド28に取り付けられ、上張りボード24は、接着剤とステーブル(不図示)により下張りボード22に取り付けられている。なお、ドリリングタッピングねじ36を上張りボード24と下張りボード22とに貫通させて、上張りボード24と下張りボード22との両方をスタッド28に取り付けるようにしてもよい。
【0021】
図3の正面図に示すように、第1遮蔽部12の一部には、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って縦長に長方形状の開口部38が形成されている。また、この開口部38は、板状に形成され仕上げ材としての役割りを兼ねる蓋部材40によって塞がれている。説明の都合上、図1には、蓋部材40が省略されている。蓋部材40には、スイッチパネル42が取り付けられている。なお、蓋部材40には、スイッチパネル42の他に、コンセントボックス、スピーカー、照明装置等の器具や設備などを取り付けてもよい。
【0022】
図1、2に示すように、第2遮蔽部14は、強化石膏ボードを形成するものと同様の材料によって溝形状に一体に形成された、コの字状の横断面を有する長尺部材である。第2遮蔽部14は、鉄骨柱18側へ突出するように設けられて開口部38を覆い、開口部38の開口面と鉄骨柱18の外面との間に設備スペースSを形成している。第2遮蔽部14は、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って配置され、側壁部44A、44Bがドリリングタッピングねじ36によりスタッド28に固定されている。
【0023】
ここで、設備スペースとは、電気ケーブル(配電用ケーブル、電力ケーブル、ネットワークケーブル、信号ケーブル等)、分電盤、スイッチボックス、コンセントボックス、水道管などが配設されるスペースを意味する。
【0024】
図3では、設備スペースSに配設された配電用ケーブルがスイッチパネル42のスイッチにつながれている。設備スペースに配設された電気ケーブルや水道管は、床下空間や天井裏空間において横引きされて必要な場所へ至る。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
第1の実施形態の鉄骨柱の耐火構造10では、図2に示すように、火災により部屋空間26に発生する火炎や熱によって蓋部材40が形状を保持できない状態(例えば、蓋部材40が燃えた、壊れた、崩れた状態)になり、この火炎や熱が開口部38から設備スペースSへ進入した場合、第2遮蔽部14により、この火炎や熱に対して鉄骨柱18が遮蔽される。これによって、鉄骨柱18を囲む第1遮蔽部12に開口部38を設けることにより鉄骨柱18の耐火性が低下するのを防ぐ又は低減することができる。
【0027】
また、第2遮蔽部14をスタッド28に固定することにより、開口部38を覆うように第2遮蔽部14を確実に設置することができる。
【0028】
また、ボード部材20が固定されるスタッド28を、第2遮蔽部14が固定される部材として兼用することができる。すなわち、第2遮蔽部14が固定される部材を別途設けなくてもよい。
【0029】
また、開口部38を蓋部材40によって塞ぐことにより、設備スペースSが外部(部屋空間26)へ露出することにより美観が損ねられるのを防ぐことができる。
【0030】
また、蓋部材40にスイッチパネル等を取り付けたり、又は電気ケーブルや水道管等を通したりするための開口を蓋部材40に形成し易くしたりすることを目的として、加工が容易な材質の部材(例えば、木製の板材)を蓋部材40として用いることができる。また、設備スペースSをメンテナンスする際の蓋部材40の取り外しや開閉のし易さを目的として、軽い部材(例えば、樹脂製の板材)を蓋部材40として用いることができる。
【0031】
すなわち、鉄骨柱の耐火構造10では、第2遮蔽部14が、火炎や熱に対して鉄骨柱18を遮蔽するので、蓋部材40を必ずしも耐火性を有する部材にしなくてもよい。開口を形成し易い材料によって蓋部材40を構成すれば、蓋部材40の自由な位置に容易に開口を形成することができる。また、軽い材料によって蓋部材40を構成すれば、取り外しや開閉の容易な蓋部材40とすることができる。
【0032】
また、第2遮蔽部14は、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って配置されているので、開口部38から設備スペースSへ進入した火炎や熱が上下に移動し、上階の床スラブ32の下面や下階の床スラブ34の上面へ至った場合においても、第2遮蔽部14により、これらの火炎や熱に対して鉄骨柱18を遮蔽することができる。
【0033】
また、図1に示すように、第2遮蔽部14が、スタッド28の振れを止める棒状の振れ止め部材46の役割を果たすので、第2遮蔽部14が配置されている部分の振れ止め部材46が不要になる。また、振れ止め部材46を設置するためにスタッド28に形成されている穴を、第2遮蔽部14のスタッド28への固定に用いることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0035】
第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48では、図4の正面図に示すように、第2遮蔽部14が、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成されている。また、各溝形部材は、強化石膏ボードを形成するものと同様の材料によって溝形状に一体に形成されている。
【0036】
ここでは、上下方向の略中央付近に上下に配置された溝形部材50A、50Bについて説明する。説明の都合上、図4において蓋部材40は省略されているが、第1の実施形態と同様に、開口部38は蓋部材40によって塞がれている。
【0037】
溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面(鉄骨柱18側の面)には、溝形部材50Aの下端部と溝形部材50Bの上端部との間の横目地52を塞ぐように正面視にて帯状の固定部材54が略水平に設けられている。図4のB−B断面図である図5に示すように、固定部材54は、軽鉄等の薄鋼板を平面視にて略コの字状に折り曲げた部材であり、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面と、固定部材54の内面(部屋空間26側の面)との間に隙間を有さないようにして、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面に沿って固定部材54が配置されている。また、固定部材54の端部54A、54Bは、ボルト56により、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面に固定部材54の内面を押し付けるようにしてスタッド28に固定されている。
【0038】
図4、5に示すように、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部は、ドリリングタッピングねじ36により固定部材54に固定されている。これにより、炎や熱に晒されて溝形部材50A、50Bが収縮することによる横目地52の開きを低減することができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48では、図4に示すように、第2遮蔽部14を複数の溝形部材により形成することにより、溝形部材の標準化を図ることができる。また、溝形部材を小さく軽量の部材にすることができるので、溝形部材の搬送や取り付け作業が行ない易くなる。これにより、第2遮蔽部14の設置手間を軽減することができる。
【0041】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0042】
なお、本発明の第2の実施形態では、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部を固定部材54に固定する例を示したが、図6の平断面図に示すように、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面と、固定部材54の内面との間に、正面視にて帯状のシート部材58を設けて、このシート部材58によって横目地52を塞ぐようにしてもよい。これにより、炎や熱に晒されて溝形部材50A、50Bが収縮し横目地52が開いた場合に、炎や熱に対してシート部材58が横目地52を塞いで遮蔽し、鉄骨柱18の耐火性が低下するのを防ぐ又は低減することができる。
【0043】
なお、図6の構成において、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部を、ドリリングタッピングねじ36によって固定部材54に固定してもよい。シート部材58は、横目地52が開いた場合に、炎や熱に対して横目地52を塞いで遮蔽できるものであればよい。例えば、薄鋼板や高温時に発泡する発泡シート(熱膨張シート)としてもよい。また、シート部材58の上下方向の幅は、横目地52の想定される最大の開き以上(例えば、50mm以上)にする。
【0044】
また、例えば、溝形部材50Aの下端部と、溝形部材50Bの上端部とをほぞ接合したり、溝形部材50Aの下端部と、溝形部材50Bの上端部をラップさせるようにして、横目地52の開きによる耐火性低下を防ぐ又は低減するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0046】
なお、第1及び第2の実施形態では、下張りボード22が強化石膏ボードで形成され、上張りボード24が石膏ボードで形成され、第2遮蔽部14が強化石膏ボードを形成するものと同様の材料で形成された例を示したが、これに限定されず、上張りボード24、下張りボード22及び第2遮蔽部14は、火災等により所定時間加熱されたときに形状を保持できる(例えば、燃えない、壊れない、崩れない)部材であればよい。例えば、上張りボード24、下張りボード22及び第2遮蔽部14を、繊維混入けい酸カルシウム、モルタル、セラミックファイバー、軽量気泡コンクリート等により形成してもよいし、上張りボード24を化粧板としてもよい。また、上張りボード24を強化石膏ボードにして、さらに耐火性を高めるようにしてもよい。
【0047】
また、第1及び第2の実施形態のようにボード部材20が複数のボード(下張りボード22、上張りボード24)で構成されている場合は、石膏ボード、繊維混入けい酸カルシウム板、モルタルボード等の耐火ボードと、耐火ボード以外のボードとを組み合わせてボード部材20を構成してもよい。
【0048】
また、第1及び第2の実施形態では、2枚のボード(下張りボード22、上張りボード24)によりボード部材20を構成した例を示したが、3枚以上のボードや1枚のボードによりボード部材20を構成してもよい。
【0049】
また、第1及び第2の実施形態では、支持部材を、軽鉄製のC形鋼により構成されたスタッド28とした例を示したが、支持部材は、ボード部材20及び第2遮蔽部14を確実に固定して支持できるものであれば、他の構造断面形状を有する軸状部材を用いてもよいし、他の材料によって形成してもよい。耐火性に優れた部材であることが好ましい。
【0050】
また、第1の実施形態では、第2遮蔽部14が一体に形成され、第2の実施形態では、溝形部材が一体に形成されている例を示したが、第2遮蔽部14や溝形部材は、削り出しによって、コの字状の横断面を有する溝形状に成型してもよいし、石膏ボードや強化石膏ボード等のボード部材を組み合わせて形成してもよい。
【0051】
例えば、図7の平断面図に示すように、けい酸カルシウム板80を平面視にてコの字状に配置し、けい酸カルシウム板80の端部同士をドリリングタッピングねじ36や釘等で接合して、第2遮蔽部14や溝形部材を形成してもよい。
【0052】
また、例えば、図8の平断面図に示すように、石膏ボード82を平面視にてコの字状に配置し、この外周を薄鋼板84で覆い、ドリリングタッピングねじ36や釘等で石膏ボード82と薄鋼板84とを一体化して、第2遮蔽部14や溝形部材を形成してもよい。
【0053】
ボード部材を組み合わせて第2遮蔽部14や溝形部材を形成する場合には、ボード部材が炎や熱に晒されて収縮することによりボード部材同士の接合部に生じる隙間を、低減したり又は塞いだりする構造であることが好ましい。
【0054】
また、第1及び第2の実施形態で示した第2遮蔽部14が炎や熱に晒されて収縮することにより、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面と、下張りボード22の内面(鉄骨柱18側の面)との間に隙間が生じることが懸念される場合には、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bのできるだけ前方側(部屋空間26側)にドリリングタッピングねじ36を設けてスタッド28に固定するようにしたり、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bをスタッド28に固定するドリリングタッピングねじ36の数を多くすればよい。
【0055】
また、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面と、下張りボード22の内面(鉄骨柱18側の面)との間に生じる隙間が覆われるように隙間保護シート(例えば、薄鋼板、高温時に発泡する発泡シート等)を設けてもよい。また、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bと、下張りボード22とをほぞ接合するようにしてもよい。また、図9の平断面図に示すように、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)をL字状にして、ドリリングタッピングねじ36を下張りボード22と第2遮蔽部14の端部60A、60Bに貫通させて、下張りボード22と第2遮蔽部14の端部60A、60Bとの両方をスタッド28に取り付けるようにしてもよい。
【0056】
また、第1及び第2の実施形態では、下張りボード14の内側(鉄骨柱18側)へ第2遮蔽部14を配置した例を示したが、平面視にて、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面が、下張りボード22又は上張りボード24の外面(部屋空間26側の面)と面一になるように第2遮蔽部14を配置してもよい。
【0057】
また、第1及び第2の実施形態では、開口部38を床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って形成した例を示したが、開口部38は、この開口部38を覆う第2遮蔽部14を設けることができれば、第1遮蔽部12のどの位置に設けてもよいし、どのような大きさにしてもよい。
【0058】
例えば、図10の正面図に示す鉄骨柱の耐火構造62のように、上下方向の一部に開口部38を形成するようにしてもよい。この場合には、図10のC−C断面図である図11に示すように、第2遮蔽部14の上下に、略水平に上部ボード64及び下部ボード66を第2遮蔽部14と一体になるように設ける。すなわち、第2遮蔽部14、上部ボード64及び下部ボード66によって、開口部38へ開放された箱状の遮蔽部を構成する。上部ボード64及び下部ボード66は、第2遮蔽部14を形成するものと同様の材料で形成すればよい。
【0059】
鉄骨柱の耐火構造62において、例えば、上部ボード64に形成された、配電用ケーブル68を通す貫通孔70の挿入口付近を発泡材等の耐火材74によって覆うようにすれば、貫通孔70から火炎や熱が鉄骨柱18側へ進入するのを防ぐことができる。
【0060】
また、例えば、下部ボード66に形成された、配電用ケーブル68を通す貫通孔72と耐火性を有する管材76とを連通させて下部ボード66に管材76を接続すれば、貫通孔72から進入した火炎や熱が鉄骨柱18へ至らないようにすることができる。
【0061】
また、第1及び第2の実施形態では、開口部38が蓋部材40により塞がれている例を示したが、蓋部材40は開口部38を塞ぐものであればよく、例えば、扉、金網、ブラインド等としてもよい。また、開口部38を塞がなくてもよい。
【0062】
一般に、カーテンウォールを用いた建物では、建物の外周を柱と薄い非耐力壁とによって構成することが多いので、建物の外周においては、柱にしか設備スペースを設けることができない。よって、柱に設備スペースを設けても柱の耐火性が低下しない、第1の実施形態の鉄骨柱の耐火構造10、及び第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48は、カーテンウォールを用いた建物において特に有効となる。
【0063】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10、48、62 鉄骨柱の耐火構造
12 第1遮蔽部
14 第2遮蔽部
16 構造物
18 鉄骨柱
20 ボード部材
28 スタッド(支持部材)
32、34 床スラブ(構造物)
38 開口部
50A、50B 溝形部材
58 シート部材
S 設備スペース
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱の耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
強化石膏ボードやモルタルボード等のボード部材によって鉄骨柱の周りを囲んで周壁を形成することにより鉄骨柱の耐火性を向上させる、鉄骨柱の耐火構造が提案されている。例えば、特許文献1には、鉄骨柱の外面を強化耐火ボードで被覆する鉄骨耐火被覆構造が紹介されている。
【0003】
このような耐火構造において、周壁と鉄骨柱との間に設備スペースを設け、この設備スペースと部屋空間とをつなぐ開口部を周壁の一部に設けた場合、鉄骨柱の耐火性が低下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−180569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、鉄骨柱を囲む周壁に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる鉄骨柱の耐火構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、構造物を構成する鉄骨柱の周りを前記鉄骨柱と間隔をあけて囲む複数のボード部材により構成され開口部を有する第1遮蔽部と、前記鉄骨柱側へ突出するように設けられて前記開口部を覆い、設備スペースを形成する第2遮蔽部と、を有する鉄骨柱の耐火構造である。
【0007】
請求項1に記載の発明では、鉄骨柱と間隔をあけてこの鉄骨柱の周りを囲む複数のボード部材により、第1遮蔽部を構成する。また、鉄骨柱側へ突出するように設けられて、第1遮蔽部の有する開口部を覆う第2遮蔽部により、設備スペースを形成する。
【0008】
よって、開口部から設備スペースへ進入する火災時の火炎や熱に対して、鉄骨柱が第2遮蔽部により遮蔽され、第1遮蔽部に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第2遮蔽部は、前記構造物に上下両端部が支持され前記ボード部材が固定される支持部材に固定されている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、支持部材に第2遮蔽部を固定することにより、開口部を覆うように第2遮蔽部を確実に設置することができる。また、ボード部材が固定される支持部材を、第2遮蔽部が固定される部材として兼用することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第2遮蔽部は、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成され、該溝形部材間の目地は、シート部材で塞がれている。
【0012】
請求項3に記載の発明では、複数の溝形部材によって第2遮蔽部を形成することにより、第2遮蔽部の設置手間を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、鉄骨柱を囲む周壁に開口部を設けることによる鉄骨柱の耐火性の低下を防ぐ又は低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す正面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造を示す正面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る第2遮蔽部及び溝形部材の形成方法を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る第2遮蔽部及び溝形部材の形成方法を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る鉄骨柱の耐火構造の変形例を示す正面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0016】
図1の斜視図、及び図1のA−A断面図である図2に示すように、鉄骨柱の耐火構造10は、第1遮蔽部12と、第2遮蔽部14とを有している。第1遮蔽部12は、構造物16を構成する鉄骨柱18の周りを囲む複数のボード部材20により構成され、鉄骨柱18を耐火被覆している。鉄骨柱18は、横断面が略正方形状の鋼管である。
【0017】
ボード部材20は、下張りボード22と、仕上げ材としての役割りを兼ねる上張りボード24とによって構成されている。下張りボード22は、内側(鉄骨柱18側)に配置され、上張りボード24は、下張りボード22の外面に重ねられて外側(部屋空間26側)に配置されている。図2に示すように、下張りボード22は、鉄骨柱18と間隔をあけて配置されている。これにより、鉄骨柱18の周囲を囲むようにして、鉄骨柱18の外面と下張りボード22の内面との間に空間が形成されている。
【0018】
下張りボード22は、強化石膏ボードで形成され、上張りボード24は、石膏ボードで形成されている。石膏ボードは、石膏を主成分とした素材を板状にして特殊な用紙で包んで構成された耐火ボードであり、強化石膏ボードは、石膏にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化した耐火ボードである。なお、通常、石膏は多量の結晶水を含んでおり、炎や熱に晒されると、この結晶水が蒸気として空気中に放出される。そして、結晶水の蒸発により熱が吸収されることによって、断熱効果が発揮される。
【0019】
ボード部材20は、略鉛直に配置された支持部材としてのスタッド28に固定されている。スタッド28は、軽鉄製のC形鋼によって構成されており、溝形状の横断面を有する軽鉄製のランナー30を介して、構造物16を構成する上下に配置された床スラブ32、34に上下両端部が固定されて床スラブ32、34に支持されている。
【0020】
図2に示すように、下張りボード22は、ドリリングタッピングねじ36によりスタッド28に取り付けられ、上張りボード24は、接着剤とステーブル(不図示)により下張りボード22に取り付けられている。なお、ドリリングタッピングねじ36を上張りボード24と下張りボード22とに貫通させて、上張りボード24と下張りボード22との両方をスタッド28に取り付けるようにしてもよい。
【0021】
図3の正面図に示すように、第1遮蔽部12の一部には、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って縦長に長方形状の開口部38が形成されている。また、この開口部38は、板状に形成され仕上げ材としての役割りを兼ねる蓋部材40によって塞がれている。説明の都合上、図1には、蓋部材40が省略されている。蓋部材40には、スイッチパネル42が取り付けられている。なお、蓋部材40には、スイッチパネル42の他に、コンセントボックス、スピーカー、照明装置等の器具や設備などを取り付けてもよい。
【0022】
図1、2に示すように、第2遮蔽部14は、強化石膏ボードを形成するものと同様の材料によって溝形状に一体に形成された、コの字状の横断面を有する長尺部材である。第2遮蔽部14は、鉄骨柱18側へ突出するように設けられて開口部38を覆い、開口部38の開口面と鉄骨柱18の外面との間に設備スペースSを形成している。第2遮蔽部14は、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って配置され、側壁部44A、44Bがドリリングタッピングねじ36によりスタッド28に固定されている。
【0023】
ここで、設備スペースとは、電気ケーブル(配電用ケーブル、電力ケーブル、ネットワークケーブル、信号ケーブル等)、分電盤、スイッチボックス、コンセントボックス、水道管などが配設されるスペースを意味する。
【0024】
図3では、設備スペースSに配設された配電用ケーブルがスイッチパネル42のスイッチにつながれている。設備スペースに配設された電気ケーブルや水道管は、床下空間や天井裏空間において横引きされて必要な場所へ至る。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0026】
第1の実施形態の鉄骨柱の耐火構造10では、図2に示すように、火災により部屋空間26に発生する火炎や熱によって蓋部材40が形状を保持できない状態(例えば、蓋部材40が燃えた、壊れた、崩れた状態)になり、この火炎や熱が開口部38から設備スペースSへ進入した場合、第2遮蔽部14により、この火炎や熱に対して鉄骨柱18が遮蔽される。これによって、鉄骨柱18を囲む第1遮蔽部12に開口部38を設けることにより鉄骨柱18の耐火性が低下するのを防ぐ又は低減することができる。
【0027】
また、第2遮蔽部14をスタッド28に固定することにより、開口部38を覆うように第2遮蔽部14を確実に設置することができる。
【0028】
また、ボード部材20が固定されるスタッド28を、第2遮蔽部14が固定される部材として兼用することができる。すなわち、第2遮蔽部14が固定される部材を別途設けなくてもよい。
【0029】
また、開口部38を蓋部材40によって塞ぐことにより、設備スペースSが外部(部屋空間26)へ露出することにより美観が損ねられるのを防ぐことができる。
【0030】
また、蓋部材40にスイッチパネル等を取り付けたり、又は電気ケーブルや水道管等を通したりするための開口を蓋部材40に形成し易くしたりすることを目的として、加工が容易な材質の部材(例えば、木製の板材)を蓋部材40として用いることができる。また、設備スペースSをメンテナンスする際の蓋部材40の取り外しや開閉のし易さを目的として、軽い部材(例えば、樹脂製の板材)を蓋部材40として用いることができる。
【0031】
すなわち、鉄骨柱の耐火構造10では、第2遮蔽部14が、火炎や熱に対して鉄骨柱18を遮蔽するので、蓋部材40を必ずしも耐火性を有する部材にしなくてもよい。開口を形成し易い材料によって蓋部材40を構成すれば、蓋部材40の自由な位置に容易に開口を形成することができる。また、軽い材料によって蓋部材40を構成すれば、取り外しや開閉の容易な蓋部材40とすることができる。
【0032】
また、第2遮蔽部14は、床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って配置されているので、開口部38から設備スペースSへ進入した火炎や熱が上下に移動し、上階の床スラブ32の下面や下階の床スラブ34の上面へ至った場合においても、第2遮蔽部14により、これらの火炎や熱に対して鉄骨柱18を遮蔽することができる。
【0033】
また、図1に示すように、第2遮蔽部14が、スタッド28の振れを止める棒状の振れ止め部材46の役割を果たすので、第2遮蔽部14が配置されている部分の振れ止め部材46が不要になる。また、振れ止め部材46を設置するためにスタッド28に形成されている穴を、第2遮蔽部14のスタッド28への固定に用いることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0035】
第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48では、図4の正面図に示すように、第2遮蔽部14が、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成されている。また、各溝形部材は、強化石膏ボードを形成するものと同様の材料によって溝形状に一体に形成されている。
【0036】
ここでは、上下方向の略中央付近に上下に配置された溝形部材50A、50Bについて説明する。説明の都合上、図4において蓋部材40は省略されているが、第1の実施形態と同様に、開口部38は蓋部材40によって塞がれている。
【0037】
溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面(鉄骨柱18側の面)には、溝形部材50Aの下端部と溝形部材50Bの上端部との間の横目地52を塞ぐように正面視にて帯状の固定部材54が略水平に設けられている。図4のB−B断面図である図5に示すように、固定部材54は、軽鉄等の薄鋼板を平面視にて略コの字状に折り曲げた部材であり、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面と、固定部材54の内面(部屋空間26側の面)との間に隙間を有さないようにして、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面に沿って固定部材54が配置されている。また、固定部材54の端部54A、54Bは、ボルト56により、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面に固定部材54の内面を押し付けるようにしてスタッド28に固定されている。
【0038】
図4、5に示すように、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部は、ドリリングタッピングねじ36により固定部材54に固定されている。これにより、炎や熱に晒されて溝形部材50A、50Bが収縮することによる横目地52の開きを低減することができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48では、図4に示すように、第2遮蔽部14を複数の溝形部材により形成することにより、溝形部材の標準化を図ることができる。また、溝形部材を小さく軽量の部材にすることができるので、溝形部材の搬送や取り付け作業が行ない易くなる。これにより、第2遮蔽部14の設置手間を軽減することができる。
【0041】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0042】
なお、本発明の第2の実施形態では、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部を固定部材54に固定する例を示したが、図6の平断面図に示すように、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部の外面と、固定部材54の内面との間に、正面視にて帯状のシート部材58を設けて、このシート部材58によって横目地52を塞ぐようにしてもよい。これにより、炎や熱に晒されて溝形部材50A、50Bが収縮し横目地52が開いた場合に、炎や熱に対してシート部材58が横目地52を塞いで遮蔽し、鉄骨柱18の耐火性が低下するのを防ぐ又は低減することができる。
【0043】
なお、図6の構成において、溝形部材50Aの下端部、及び溝形部材50Bの上端部を、ドリリングタッピングねじ36によって固定部材54に固定してもよい。シート部材58は、横目地52が開いた場合に、炎や熱に対して横目地52を塞いで遮蔽できるものであればよい。例えば、薄鋼板や高温時に発泡する発泡シート(熱膨張シート)としてもよい。また、シート部材58の上下方向の幅は、横目地52の想定される最大の開き以上(例えば、50mm以上)にする。
【0044】
また、例えば、溝形部材50Aの下端部と、溝形部材50Bの上端部とをほぞ接合したり、溝形部材50Aの下端部と、溝形部材50Bの上端部をラップさせるようにして、横目地52の開きによる耐火性低下を防ぐ又は低減するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
【0046】
なお、第1及び第2の実施形態では、下張りボード22が強化石膏ボードで形成され、上張りボード24が石膏ボードで形成され、第2遮蔽部14が強化石膏ボードを形成するものと同様の材料で形成された例を示したが、これに限定されず、上張りボード24、下張りボード22及び第2遮蔽部14は、火災等により所定時間加熱されたときに形状を保持できる(例えば、燃えない、壊れない、崩れない)部材であればよい。例えば、上張りボード24、下張りボード22及び第2遮蔽部14を、繊維混入けい酸カルシウム、モルタル、セラミックファイバー、軽量気泡コンクリート等により形成してもよいし、上張りボード24を化粧板としてもよい。また、上張りボード24を強化石膏ボードにして、さらに耐火性を高めるようにしてもよい。
【0047】
また、第1及び第2の実施形態のようにボード部材20が複数のボード(下張りボード22、上張りボード24)で構成されている場合は、石膏ボード、繊維混入けい酸カルシウム板、モルタルボード等の耐火ボードと、耐火ボード以外のボードとを組み合わせてボード部材20を構成してもよい。
【0048】
また、第1及び第2の実施形態では、2枚のボード(下張りボード22、上張りボード24)によりボード部材20を構成した例を示したが、3枚以上のボードや1枚のボードによりボード部材20を構成してもよい。
【0049】
また、第1及び第2の実施形態では、支持部材を、軽鉄製のC形鋼により構成されたスタッド28とした例を示したが、支持部材は、ボード部材20及び第2遮蔽部14を確実に固定して支持できるものであれば、他の構造断面形状を有する軸状部材を用いてもよいし、他の材料によって形成してもよい。耐火性に優れた部材であることが好ましい。
【0050】
また、第1の実施形態では、第2遮蔽部14が一体に形成され、第2の実施形態では、溝形部材が一体に形成されている例を示したが、第2遮蔽部14や溝形部材は、削り出しによって、コの字状の横断面を有する溝形状に成型してもよいし、石膏ボードや強化石膏ボード等のボード部材を組み合わせて形成してもよい。
【0051】
例えば、図7の平断面図に示すように、けい酸カルシウム板80を平面視にてコの字状に配置し、けい酸カルシウム板80の端部同士をドリリングタッピングねじ36や釘等で接合して、第2遮蔽部14や溝形部材を形成してもよい。
【0052】
また、例えば、図8の平断面図に示すように、石膏ボード82を平面視にてコの字状に配置し、この外周を薄鋼板84で覆い、ドリリングタッピングねじ36や釘等で石膏ボード82と薄鋼板84とを一体化して、第2遮蔽部14や溝形部材を形成してもよい。
【0053】
ボード部材を組み合わせて第2遮蔽部14や溝形部材を形成する場合には、ボード部材が炎や熱に晒されて収縮することによりボード部材同士の接合部に生じる隙間を、低減したり又は塞いだりする構造であることが好ましい。
【0054】
また、第1及び第2の実施形態で示した第2遮蔽部14が炎や熱に晒されて収縮することにより、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面と、下張りボード22の内面(鉄骨柱18側の面)との間に隙間が生じることが懸念される場合には、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bのできるだけ前方側(部屋空間26側)にドリリングタッピングねじ36を設けてスタッド28に固定するようにしたり、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bをスタッド28に固定するドリリングタッピングねじ36の数を多くすればよい。
【0055】
また、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面と、下張りボード22の内面(鉄骨柱18側の面)との間に生じる隙間が覆われるように隙間保護シート(例えば、薄鋼板、高温時に発泡する発泡シート等)を設けてもよい。また、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bと、下張りボード22とをほぞ接合するようにしてもよい。また、図9の平断面図に示すように、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)をL字状にして、ドリリングタッピングねじ36を下張りボード22と第2遮蔽部14の端部60A、60Bに貫通させて、下張りボード22と第2遮蔽部14の端部60A、60Bとの両方をスタッド28に取り付けるようにしてもよい。
【0056】
また、第1及び第2の実施形態では、下張りボード14の内側(鉄骨柱18側)へ第2遮蔽部14を配置した例を示したが、平面視にて、第2遮蔽部14の側壁部44A、44Bの前方側(部屋空間26側)端面が、下張りボード22又は上張りボード24の外面(部屋空間26側の面)と面一になるように第2遮蔽部14を配置してもよい。
【0057】
また、第1及び第2の実施形態では、開口部38を床スラブ32の下面から床スラブ34の上面へ渡って形成した例を示したが、開口部38は、この開口部38を覆う第2遮蔽部14を設けることができれば、第1遮蔽部12のどの位置に設けてもよいし、どのような大きさにしてもよい。
【0058】
例えば、図10の正面図に示す鉄骨柱の耐火構造62のように、上下方向の一部に開口部38を形成するようにしてもよい。この場合には、図10のC−C断面図である図11に示すように、第2遮蔽部14の上下に、略水平に上部ボード64及び下部ボード66を第2遮蔽部14と一体になるように設ける。すなわち、第2遮蔽部14、上部ボード64及び下部ボード66によって、開口部38へ開放された箱状の遮蔽部を構成する。上部ボード64及び下部ボード66は、第2遮蔽部14を形成するものと同様の材料で形成すればよい。
【0059】
鉄骨柱の耐火構造62において、例えば、上部ボード64に形成された、配電用ケーブル68を通す貫通孔70の挿入口付近を発泡材等の耐火材74によって覆うようにすれば、貫通孔70から火炎や熱が鉄骨柱18側へ進入するのを防ぐことができる。
【0060】
また、例えば、下部ボード66に形成された、配電用ケーブル68を通す貫通孔72と耐火性を有する管材76とを連通させて下部ボード66に管材76を接続すれば、貫通孔72から進入した火炎や熱が鉄骨柱18へ至らないようにすることができる。
【0061】
また、第1及び第2の実施形態では、開口部38が蓋部材40により塞がれている例を示したが、蓋部材40は開口部38を塞ぐものであればよく、例えば、扉、金網、ブラインド等としてもよい。また、開口部38を塞がなくてもよい。
【0062】
一般に、カーテンウォールを用いた建物では、建物の外周を柱と薄い非耐力壁とによって構成することが多いので、建物の外周においては、柱にしか設備スペースを設けることができない。よって、柱に設備スペースを設けても柱の耐火性が低下しない、第1の実施形態の鉄骨柱の耐火構造10、及び第2の実施形態の鉄骨柱の耐火構造48は、カーテンウォールを用いた建物において特に有効となる。
【0063】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10、48、62 鉄骨柱の耐火構造
12 第1遮蔽部
14 第2遮蔽部
16 構造物
18 鉄骨柱
20 ボード部材
28 スタッド(支持部材)
32、34 床スラブ(構造物)
38 開口部
50A、50B 溝形部材
58 シート部材
S 設備スペース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成する鉄骨柱の周りを前記鉄骨柱と間隔をあけて囲む複数のボード部材により構成され開口部を有する第1遮蔽部と、
前記鉄骨柱側へ突出するように設けられて前記開口部を覆い、設備スペースを形成する第2遮蔽部と、
を有する鉄骨柱の耐火構造。
【請求項2】
前記第2遮蔽部は、前記構造物に上下両端部が支持され前記ボード部材が固定される支持部材に固定されている
請求項1に記載の鉄骨柱の耐火構造。
【請求項3】
前記第2遮蔽部は、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成され、
該溝形部材間の目地は、シート部材で塞がれている
請求項1又は2に記載の鉄骨柱の耐火構造。
【請求項1】
構造物を構成する鉄骨柱の周りを前記鉄骨柱と間隔をあけて囲む複数のボード部材により構成され開口部を有する第1遮蔽部と、
前記鉄骨柱側へ突出するように設けられて前記開口部を覆い、設備スペースを形成する第2遮蔽部と、
を有する鉄骨柱の耐火構造。
【請求項2】
前記第2遮蔽部は、前記構造物に上下両端部が支持され前記ボード部材が固定される支持部材に固定されている
請求項1に記載の鉄骨柱の耐火構造。
【請求項3】
前記第2遮蔽部は、上下方向に積まれた複数の溝形部材により形成され、
該溝形部材間の目地は、シート部材で塞がれている
請求項1又は2に記載の鉄骨柱の耐火構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−62683(P2012−62683A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207189(P2010−207189)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]