説明

鉛蓄電池

【課題】量産性に優れ、しかも長寿命な鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】枠部21と、枠部の内側に格子22を形成する横格子骨23及び縦格子骨24とを備えた格子板20に活物質を充填して極板を構成した鉛蓄電池において、横格子骨23を、枠部と厚みが等しい太横骨23bと、太横骨よりも幅及び厚みが小さい細横骨23aとにより構成し、縦格子骨24を、枠部よりも厚みが小さく、厚み方向の一端が枠部の厚み方向の一端と同一平面上に配置された太縦骨24bと、太縦骨よりも厚み及び幅が小さい細縦骨24aとにより構成して、細横骨及び細縦骨の厚み方向の一端側の端面を枠部の厚み方向の一端側の端面よりも厚み方向の内側に位置させ、細横骨及び細縦骨の厚み方向の他端側の端面を枠部の厚み方向の他端側の端面よりも厚み方向の内側に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に多く使用される二次電池として、リチウムイオン電池や、ニッケル水素電池等の高性能な電池の開発が進んでいる。しかしながら、リチウムイオン電池及びニッケル−水素電池は、価格の面で不利であり、特にリチウムイオン電池は、安全性の面で十分な配慮が必要であるため、停電時に備えてオフィスビルや病院等に設置するバックアップ電源に用いる電池や、瞬時電圧低下対策用の産業用電池、或いは自動車用電池等としては、鉛蓄電池が多く用いられている。また最近、太陽電池を用いた発電設備や風力発電機を用いた発電設備のように、自然エネルギを用いた発電設備が盛んに建設されるようになっているが、このような発電設備においては、電力の平準化を図るために、発電設備に二次電池を用いた蓄電設備を付属させることが検討されている。このような蓄電設備においては、多量の電池を必要とするため、電池としては、鉛蓄電池を用いるのが有利である。
【0003】
一般に鉛蓄電池は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層することにより構成した極板群を、電解液とともに電槽内に収容した構造を有する。鉛蓄電池の極板としては、クラッド式、ペースト式、チュードル式等、種々の構造を有するものが知られているが、産業用や自動車用の鉛蓄電池においては、大電流放電が可能であるペースト式の極板が多く用いられている。また産業用や自動車用の鉛蓄電池としては、メンテナンスを容易にするために、補水の必要性をなくした密閉型鉛蓄電池が多く用いられている。
【0004】
最近、鉛蓄電池の長寿命化を図ることの必要性が高まっている。特に、自然エネルギを利用した発電設備に付帯設備として設ける蓄電設備においては、鉛蓄電池の寿命を、風力発電機や太陽電池等の発電手段の耐用年数と同等の長さ(例えば17年以上)とすることが望まれている。
【0005】
ペースト式の正極板及び負極板は、集電体を構成する正極用格子板及び負極用格子板にそれぞれペースト状の正極活物質及び負極活物質を充填して保持させた構造を有する。正極用格子板及び負極用格子板としては、鋳造により製造されるものと、鉛または鉛合金の板にエキスパンド加工を施すことにより製造されるものとが用いられているが、電池の長寿命化を図ることを重視する場合には、後記するように、格子骨の断面積を大きくする必要があるため、正極用格子板及び負極用格子板として、鋳造により製造されるものを使用するのが有利である。
【0006】
鋳造により製造される格子板は、例えば特許文献1に示されているように、ほぼ四角形(長方形または正方形)の輪郭形状を有して、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨と、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨とを有する枠部と、この枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とにより構成される。
【0007】
なお本明細書においては、格子板及び極板の各部の特定を容易にするため、格子板の集電用耳部が設けられた部分を格子板の上部とし、縦枠骨が伸びる方向(縦枠骨の長手方向)を格子板の縦方向とする。また横枠骨が伸びる方向を格子板の横方向とし、格子板の縦方向及び横方向の双方に対して直角な方向を格子板の厚み方向とする。極板の縦方向、横方向及び厚み方向はそれぞれ、格子板の縦方向、横方向及び厚み方向に沿う方向とする。また各枠骨及び各格子骨については、格子板の厚み方向に沿う方向を厚み方向とし、それぞれの長手方向と厚み方向との双方に対して直角な方向を幅方向とする。更に、格子板を水平面上に寝かせた姿勢にして格子板に活物質を充填する際に、格子板の上方に向けられる面及び下方に向けられる面をそれぞれ格子板の表面及び裏面とする。
【0008】
正極用格子板及び負極用格子板に活物質を充填して正極板及び負極板を製造する際には、格子板を寝かせた状態で(その厚み方向を上下方向に向けた状態で)ペースト充填機内に送り込んで、上方から格子板の表面にペースト状の活物質を供給し、供給した活物質を格子板の表面(格子板の上方に向いた面)側から格子を通して裏面(格子板の下方に向いた面)側に流動させることにより、格子全体に活物質を充填する。格子全体にむら無く活物質を充填するためには、格子板の表面側から格子を通して格子板の裏面側に十分な量の活物質を供給し、かつ格子板の裏面側での活物質の流動を円滑に行わせることが必要である。
【0009】
鉛蓄電池の寿命を長くするためには、格子板(特に正極用格子板)の横格子骨及び縦格子骨の全体を活物質中に埋設した状態にするのが理想である。正極用格子板の格子骨の一部が活物質から露出した状態にあると、格子骨の活物質から露出した部分(格子骨の露出部分という。)が電解液である硫酸に直に接触するため、放電時に格子骨の露出部分の表面で放電反応が起って、格子骨の露出部分の表面に不動態である硫酸鉛(PbSO4)の膜が生成する。特に格子骨がカルシウムを含む鉛合金により形成されている場合には、格子骨の表面が活性を有するため、格子骨の表面が電解液に直接接触していると、格子骨の表面で放電反応が生じて硫酸鉛の膜が生成され易い。
【0010】
格子骨の表面に形成された不動態膜は、導電性を有しておらず、充電しても元に戻らない。正極用格子板の格子骨の一部が活物質から露出していると、その露出部分から格子骨と活物質との間の界面に電解液が侵入していくため、格子骨表面への不動態膜の生成が進展していき、やがてその格子骨の表面全体に不動態膜が生成された状態になる。格子骨の表面全体に不動態膜が生成された状態になると、その格子骨と活物質との間の導通が阻害されるため、充電を行うことができなくなって、電池の早期容量低下(PCL:Premature Capacity Loss)を招き、電池の長寿命化を図るという要請に応えることができなくなる。
【0011】
また鉛蓄電池は、使用に伴って各部の劣化が進むとやがて寿命に至る。鉛蓄電池が寿命に至る主な原因として、充電時に正極板で起こる格子板の腐食(酸化によるPbO2の生成)が挙げられる。正極用格子板へのPbO2の生成は、格子板の表面からその内部へと徐々に進展していく。PbO2は導電性を有するが、脆弱であるため、格子骨の腐食が進むと、格子骨が破断したり、格子骨の形が崩れて活物質を保持する機能が失われたりするようになり、やがて電池が寿命に達する。従って、鉛蓄電池の寿命を延ばすためには、格子板の腐食がその全体に及ぶまでの時間を長くするために、格子板の枠部及び格子骨の断面積を十分に大きくしておく必要がある。
【0012】
上記のことから、ペースト式の極板を用いた鉛蓄電池の寿命を延ばすためには、格子板(特に正極の格子板)の格子骨の断面積を十分に大きくしておくことが必要であり、また格子骨の活物質から露出している部分を極力少なくすることが必要である。
【0013】
ところが、極板の寿命を延ばすために、すべての格子骨の断面積を大きくすると、格子骨相互間の隙間が狭くなるため、所定の電池容量を得るために必要な量の活物質を格子板に充填することができなくなる。また格子骨の断面積を大きくすると、格子の隙間が小さくなって、格子板に活物質を充填する際に活物質を格子板の表面側から裏面側に円滑に流動させることが難しくなるため、活物質充填時に格子板の裏面側に活物質を十分に供給することができなくなり、格子板の裏面側で格子骨の露出部分が生じ易くなるという問題が生じる。
【0014】
特許文献2には、格子骨を太骨と細骨とにより構成して、太骨の部分に機械的強度を持たせるようにした格子板が提案されている。この格子板では、格子骨の一部を細骨としたことにより、格子の隙間を拡大することができるため、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動を容易にすることができる。
【0015】
しかしながらこの格子板では、すべての太骨の厚みと細骨の厚みとを枠部の厚みに等しく設定していたため、格子板に活物質を充填する際に、太骨及び細骨の厚み方向の端面を活物質で覆うことが難しいという問題があった。ペースト充填機により格子板に活物質を充填する際に、ペースト充填機から活物質が直接供給される格子板の表面側では、格子骨を完全に覆うように活物質を塗着することが容易である。しかし、格子板の裏面側では、もっぱら格子の隙間を通過した活物質の流動に頼って活物質を充填するため、格子骨の露出部分を覆うことが困難である。
【0016】
鉛蓄電池用の極板を製造する際には、搬送ベルト上に載せられた格子板に上方から送りローラを摩擦接触させて、各格子板を搬送ベルトと送りローラとの間に挟んだ状態でペースト充填機に送り込み、ペースト充填機により格子板に活物質を充填する活物質充填工程を行う。活物質充填工程を行った後、活物質が充填された格子板(極板)を、上下に相対する加圧ローラと送りローラとの間に通して、格子板に充填された活物質を極板の厚み方向に圧縮する活物質圧縮工程を行う。この活物質圧縮工程においても、僅かではあるが極板の表面側及び裏面側で活物質の流動を生じさせることができる。従って、ペースト充填機により格子板に活物質を充填した段階で、極板の裏面側に格子骨の露出部分が存在していても、その露出部分の面積が十分に狭ければ、活物質圧縮工程において、その露出部分を活物質で覆うことができる。しかしながら、極板の裏面側に存在する格子骨の露出部分の面積が広い場合には、活物質圧縮工程で生じる活物質の流動によっては、格子骨の露出部分を活物質で完全に覆うことができないことがある。
【0017】
特許文献2に示された格子板では、格子板の裏面側で太骨及び細骨の双方の厚み方向の端面が枠部の端面と同一平面上に配置されているため、活物質充填工程を完了した段階で、格子板の裏面側で太骨及び細骨の双方の厚み方向の端面が露出した状態にあり、格子骨の露出部分の面積が広くなるのを避けられない。このように、活物質充填工程を終了した時点で、格子板の裏面側で格子骨の露出部分が広い面積を有していると、その後に行われる活物質圧縮工程で、格子骨の露出部分を完全に活物質で覆うことが困難になり、格子骨の露出部分が露出したままの状態にされる可能性が高くなる。正極板に格子骨の露出部分が存在すると、前述のように、格子骨に不動態膜が生成され、この不動態膜の生成が電池の早期容量低下を招く原因になる。
【0018】
そこで、本発明者は、特許文献3に示されているように、格子骨を太骨と細骨とにより構成して、格子板に充填される活物質の量が少なくなるのを防ぐとともに、活物質を充填する際の活物質の流動を容易にして、極板の裏面側で格子骨の端面が活物質から露出した状態になるのを抑制することを可能にした格子板を提案した。
【0019】
本発明者が先に提案した格子板は、下記のように構成される。
a.縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方が太骨と細骨とにより構成されて、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とが配列される。
b.太骨の厚みが枠部の厚みよりも小さく設定されて、太骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面が枠部の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも厚み方向の内側に配置される。
c.細骨の幅及び厚みはそれぞれ太骨の幅及び厚みよりも小さく設定され、各細骨は、その厚み方向の一端側の端面を太骨の厚み方向の一端側の端面が配置された平面寄りに偏った位置させた状態で設けられる。
【0020】
上記のように、縦格子骨及び横格子骨の少なくとも一方を太骨と細骨とにより構成すると、細骨の部分の腐食が進んでその機械的強度が低下した場合でも、より長期間の腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて格子の形状を維持することができるため、すべての格子骨を細骨により構成した場合よりも更に長期間に亘って格子の活物質保持機能を維持することができる。
【0021】
また上記のように、各太骨に隣接する格子骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列しておくと、太骨の側方にペースト状活物質を流動させるための広いスペースを確保することができるため、格子板の表面側から活物質を充填する際に、活物質を格子板の裏面側に円滑に流動させて、格子板の裏面側への活物質の充填を良好に行わせることができる。
【0022】
更に上記のように構成すると、格子板の裏面側で、細骨及び太骨の端面が枠部の端面よりも内側に配置されるため、格子板の裏面側で細骨及び太骨の端面が活物質から露出した状態になるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2001−332268号公報
【特許文献2】特開平4−171666号公報
【特許文献3】WO(国際公開)2010/73588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者が先に提案した格子板を用いると、長期間腐食に耐える太骨の部分に機械的強度を持たせて、格子の形状を長期間維持することができるため、電池の寿命を延ばすことができる。また格子骨に露出部分が生じるのを抑制することができるため、格子骨に硫酸鉛の不動態膜が生成されるのを抑制して、電池の寿命を延ばすことができる。
【0025】
しかしながら、その後の検証により、本発明者が先に提案した格子板を用いた場合には、一連の格子板を連続的にペースト充填機に供給して極板を量産する際に、格子板をペースト充填機に正しい姿勢で送り込むことができなくなって、ラインが停止するトラブルが無視できない頻度で発生することが明らかになった。
【0026】
矩形状の格子板を用いて極板を量産するラインにおいて、格子板にペースト状の活物質を充填する際には、一連の格子板を、それぞれの横方向(短辺方向)を搬送方向に向けて寝かせた状態で搬送ベルトによりペースト充填機に向けて搬送し、格子板がペースト充填機に近づいたところで、搬送されてくる格子板に上方から送りローラを摩擦接触させ、格子板を送りローラと搬送ベルトとの間に挟んだ状態でペースト充填機に送り込む。
【0027】
先に提案した格子板においては、太骨の厚み方向の両端が枠部の厚み方向の両端よりも内側に配置され、また細骨の厚み方向の両端も枠部の厚み方向の両端より内側に配置されていたため、格子部全体の厚み方向の両端が枠部の厚み方向の両端よりも内側に引っ込んだ状態にある。そのため、格子板をペースト充填機に送り込む際には、搬送ベルト及び送りローラが格子板の枠部のみに摩擦接触することになる。搬送ベルト及び送りローラが格子板の枠部にしか接触することができないと、格子板と送りローラとの間及び格子板と搬送ベルトの間の摩擦抵抗が不足するため、格子板をペースト充填機に正しい姿勢で送り込むことができないことがある。格子板をペースト充填機に正しい姿勢で送り込むことができないと、格子板が変形したり、格子板への活物質の充填を正常に行うことができなくなる。ペースト充填機に正しい姿勢で送り込まれなかった格子板に活物質が充填されることにより得られた極板は不良品となるため、この極板を鉛蓄電池の組立工程に供給することは許されない。従って、格子板を正しい姿勢でペースト充填機に供給することができない事態が生じた場合には、一旦生産ラインを止めてその格子板をラインから撥ねる必要がある。
【0028】
上記のように、先に提案した格子板を用いた場合には、ラインを停止させる必要があるトラブルが無視できない頻度で発生するため、製造能率の低下を招くおそれがあった。鉛蓄電池の歩留まりを高め、生産性を向上させて、しかも高品質の極板を得るためには、ペースト充填機への格子板の供給を、格子板の姿勢を正しい状態に保って、確実に行わせることが重要である。
【0029】
本発明の目的は、量産性に優れ、しかも長寿命の鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、正極用の格子板に正極活物質を充填してなる正極板と、負極用の格子板に負極活物質を充填してなる負極板とを備えた鉛蓄電池に係わるものである。本発明においては、少なくとも正極用の格子板が下記のように構成される。
(1.1)横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有し、横方向及び縦方向の双方に対して直角な厚み方向に一定の厚み寸法を有する枠部と、横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備えている。
(1.2)縦格子骨及び横格子骨はそれぞれ、複数の細縦骨及び細横骨と、細縦骨及び細横骨よりも断面積が大きい複数の太縦骨及び太横骨とを有して、各太縦骨の側方に少なくとも一つの細縦骨が並び、各太横骨の側方に複数の細横骨が並ぶように、太縦骨及び細縦骨と太横骨及び細横骨とが配列される。
(1.3)複数の太縦骨は、枠部の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面を前記枠部の厚み方向の一端側の端面と同一平面上に位置させ、かつそれぞれの厚み方向の他端側の端面を前記枠部の厚み方向の他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置される。
(1.4)複数の細縦骨は、太縦骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ太縦骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置される。
(1.5)複数の太横骨は、枠部の厚みに等しい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ枠部の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面と同一の平面上に位置させた状態で配置される。
(1.6)各太横骨は、その厚み方向及び長手方向の双方に対して直角な方向を幅方向としたときに、その厚み方向の他端側の端面の幅寸法が、その厚み方向の一端側の端面の幅寸法よりも小さく設定される。
(1.7)複数の細横骨は、太横骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ太横骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置される。
(1.8)本発明の一態様では、上記複数の細縦骨が、太さが異なる複数種類の細縦骨を有している。
(1.9)本発明の他の態様では、上記複数の細横骨が、太さが異なる複数種類の細横骨を有している。
【0031】
格子板を上記のように構成すると、太横骨の厚み方向の一端と、太縦骨の厚み方向の一端とを枠部の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に位置させることができるため、格子板を送りローラによりペースト充填機内に送り込む際に、送りローラと格子板との接触面積を十分に確保して、送りローラと格子板との間の摩擦抵抗を大きくすることができる。また上記のように構成すると、太横骨の厚み方向の他端を枠部の厚み方向の他端側の端面と同一の平面上に位置させることができるため、格子板と搬送ベルトとの接触面積を大きくして、両者間の摩擦抵抗を大きくすることができる。従って、格子板を搬送ベルトと送りローラとの間に挟んでペースト充填機に供給する際に、格子板と送りローラとの間及び格子板と搬送ベルトとの間の摩擦抵抗を十分に大きくして、格子板を、その横方向を搬送方向に向けた正規の姿勢を保った状態で、ペースト充填機内に確実に送り込むことができ、活物質の充填作業を円滑に行わせることができる。
【0032】
本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板においては、その表面(活物質充填時に上方に向けられる面)側で、太横骨と太縦骨との双方の厚み方向の端面が枠部の厚み方向の端面と同一平面上に配置されているため、枠骨と太横骨及び太縦骨とにより、格子板の表面に開口した多数の矩形状の仕切り枠が縦横に並んだ状態で構成され、格子板の表面は、これらの仕切り枠により縦横に仕切られた状態にある。このように格子板の表面が、多数の仕切り枠により仕切られていると、活物質の充填圧力を分散させることなく、各仕切り枠内の制限された領域を通して格子板の表面側から裏面側に均一かつ確実に伝達することができるため、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動を均一かつ円滑に行わせて、格子板の裏面側への活物質の充填を良好に行わせることができる。
【0033】
格子板に活物質を充填した後は、格子板を加圧ローラと送給ローラとの間に通すことにより、充填された活物質を押し固める活物質圧縮工程を行う。このとき枠骨と太横骨及び太縦骨とにより構成される仕切り枠が、加圧ローラから格子板に与えられる加圧力を各部に均一に伝達する作用をするため、活物質が全体に均一に充填されて押し固められた高品質の極板を容易に得ることができる。
【0034】
本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板においては、その表面(活物質充填時にペースト充填機から活物質が供給される面であって、上方に向けられる面)側で、太横骨と太縦骨との双方の厚み方向の端面が枠部の厚み方向の端面と同一平面上に配置されている。しかし、格子板の表面側では、活物質充填時に太横骨及び太縦骨を隠すように、枠部の厚みを越えて活物質を塗着することが容易であるため、太横骨及び太縦骨の厚み方向の端面と、枠部の厚み方向の端面とが同一平面上に配置されていても、太横骨及び太縦骨を露出させないように活物質を充填することは容易である。
【0035】
格子板の裏面側では、太横骨の厚み方向の端面のみが、枠部の厚み方向の端面が配置されている平面と同一の平面上に配置される。格子板の裏面側で露出している骨の端面を、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動のみによって完全に覆うことは困難である。しかし、本発明においては、格子板の裏面側での各太横骨の厚み方向の端面の幅寸法が、格子板の表面側での各太横骨の厚み方向の端面の幅寸法よりも小さく設定されているため、活物質充填工程の終了時に極板の裏面側で太横骨の厚み方向の端面が露出したとしても、その露出部分の面積は十分に狭くすることができる。そのため、活物質充填工程の終了時に、極板の裏面側で太横骨の端面が露出していたとしても、その後に行われる活物質圧縮工程において生じる活物質の流動により、太横骨の露出部分を活物質により確実に覆うことができ、格子板の表裏両面に格子骨の露出部分を有しない極板を容易に得ることができる。さらに、本発明に係わる格子板と特許文献3に示された格子板とを太縦骨の太さ(厚み)を同一として対比した場合、特許文献3に示された格子板では、格子板の表面側で、太縦骨の厚み方向の端面が枠部の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置した状態で配置されているのに対し、本発明では、格子板の表面側で、太縦骨の厚み方向の端面が枠部の端面と同一平面上に配置されているため、本発明の格子板の裏面側では、太縦骨の厚み方向の端面が、特許文献3に示された格子板よりも一層枠部の厚み方向の内側に位置した状態で配置される。これにより、格子板の裏面側に、活物質の流動空間を十分に確保することができ、このことも活物質の充填性を高めることに役立つ。
【0036】
本発明の好ましい態様では、複数の細縦骨及び細横骨のそれぞれが、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐えるように設定された断面積を有するように構成される。
【0037】
上記のように細縦骨及び細横骨の断面積を設定しておくと、寿命期間の間格子板の形状を確実に維持して、格子板に集電機能を持たせることができるため、寿命期間の間電池の性能を高い状態に保持することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、格子板の表面側では太横骨の厚み方向の一端と、太縦骨の厚み方向の一端とを枠部の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に配置し、格子板の裏面側では、太横骨の厚み方向の他端を枠部の厚み方向の他端側の端面と同一平面上に配置したので、格子板を送りローラと搬送ベルトとの間に挟んでペースト充填機に向けて送給する際に、送りローラと格子板との接触面積及び搬送ベルトと格子板との接触面積を十分に確保して、送りローラと格子板との間の摩擦抵抗及び搬送ベルトと格子板との間の摩擦抵抗を十分に大きくすることができる。そのため、格子板を正しい姿勢を保った状態でペースト充填機内に確実に送り込むことができ、活物質の充填作業を正しく、かつ円滑に行わせることができる。従って、活物質の充填が不良な極板が製造されるのを防いで製品の歩留まりを高くすることができるだけでなく、格子板に活物質を充填する工程においてラインが停止するのを防いで、鉛蓄電池の生産性を向上させることができる。
【0039】
また本発明においては、太横骨と太縦骨との双方の厚み方向の端面を枠部の厚み方向の端面と同一平面上に配置して、枠骨と太横骨及び太縦骨とにより格子板の表面側に縦横に並ぶ多数の仕切り枠が構成されるようにしたので、活物質の充填圧力を分散させることなく、各仕切り枠内を通して格子板の表面側から裏面側に均一かつ確実に伝達することができる。従って、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動を均一かつ円滑に行わせて、格子板の裏面側への活物質の充填を良好に行わせることができる。また格子板に活物質を充填した後に行われる活物質圧縮工程においても、枠骨と太横骨と太縦骨とにより構成される仕切り枠を通して、加圧ローラから格子板に与えられる加圧力を各部に均一に伝達することができるため、活物質が全体に均一に充填されて押し固められた高品質の極板を容易に得ることができる。
【0040】
本発明においては、格子板の表面側での各太横骨の厚み方向の端面(厚み方向の一端側の端面)の幅寸法よりも、格子板の裏面側での各太横骨の厚み方向の端面(厚み方向の他端側の端面)の幅寸法が小さく設定されているため、活物質充填工程の終了時に極板の裏面側に生じる太横骨の露出部分の面積を狭くすることができる。そのため、活物質充填工程の終了時に極板の裏面側に太横骨の露出部分が存在していても、その後に行われる活物質圧縮工程において生じる活物質の流動により、極板の裏面側に生じた太横骨の露出部分を活物質で確実に覆うことができる。従って、格子板の表裏両面に格子骨の露出部分を有しない極板を容易に得ることができ、正極板に格子骨の露出部分を有しない長寿命の鉛蓄電池を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板の構成例を示した正面図である。
【図2】図2は、図1の格子板を図1のII−II線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図3】図3は、図1の格子板を図1のIII−III線に沿って断面して示した拡大断面図である。
【図4】図4は、図1の格子板の一部を拡大して示した正面図である。
【図5】図5は、図1の格子板を鋳造する際に用いる金型の構成の一例を示した断面図である。
【図6】図6は、本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板の他の例を示した正面図である。
【図7】図7は、本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板の更に他の例を示した正面図である。
【図8】図8は、格子板に活物質を充填する際に用いる装置の構成を示した斜視図である。
【図9】図9は、鉛蓄電池の構成の一例を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図9は、密閉型鉛蓄電池の構造の一例を示す分解斜視図である。同図において1及び2はそれぞれ正極板及び負極板、3はセパレータで、正極板1及び負極板2がセパレータ3を介して交互に積層されることにより極板群4が構成される。
【0043】
図9においては、構造をわかりやすくするために、正極板1,1,…と、負極板2,2,…と、セパレータ3,3,…とを、位置をずらして示しているが、実際には、正極板1及び負極板2がそれぞれの位置を合わせてセパレータ3を介して交互に積層される。
【0044】
5は複数の正極板1,1,…に設けられた耳部同士を接続する正極ストラップ、6は複数の負極板2,2,…に設けられた耳部同士を接続する負極ストラップで、正極ストラップ5及び負極ストラップ6にはそれぞれ正極柱5a及び負極柱6aが設けられている。
【0045】
極板群4は、電解液と共に電槽7のセル室7a内に収容される。電槽7の上端の開口部は、蓋8により閉じられ、蓋8に鋳込まれた正極端子ブッシング9及び負極端子ブッシング10にそれぞれ設けられた孔を通して正極柱5a及び負極柱6aが外部に導出される。蓋8には、電槽内の圧力が規定値を超えたときに開いて電槽内の圧力を開放する排気栓11が取り付けられている。
【0046】
図9に示した蓄電池は単電池であるため、電槽7に一つのセル室のみが設けられている。電池の定格電圧が2Vを超える場合には、電槽7に複数のセル室が設けられて、各セル室内に極板群が挿入され、隣接するセル室内に挿入された極板群の所定の極性のストラップの間がセル室間の隔壁を貫通して設けられたセル間接続部を介して相互に接続されることにより、複数のセル室内にそれぞれ構成された電池が直列又は並列に接続されて、所定の定格電圧と定格容量とを有する鉛蓄電池が構成される。
【0047】
正極板1及び負極板2はそれぞれ集電体を構成する正極用格子板及び負極用格子板にペースト状の正極活物質及び負極活物質を充填して保持させた構造を有する。集電体を構成する格子板としては、鋳造により製造されるものと、鉛または鉛合金の板にエキスパンド加工を施すことにより製造されるものとが用いられているが、本発明では、鋳造により製造される格子板を用いる。
【0048】
本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板は、主原料を鉛として、これにスズ、カルシウム、アンチモン、ナトリウム等の合金素材を添加した合金材料により形成することができる。主原料に添加する合金素材としては、特にスズ及びカルシウムの両方を用いるのが好ましい。カルシウムを添加すると、自己放電の割合を減少させることができる。主原料(鉛)にカルシウムを添加すると、骨の腐食が起り易いという問題が生じるが、骨の腐食は、スズの添加により抑制することができる。
【0049】
格子板は、枠部と、枠部の内側に設けられる格子と、枠部に設けられる集電用耳部とにより構成される。枠部は、縦方向に相対する一対の横枠骨と、横方向に相対する一対の縦枠骨とにより構成され、一方の横枠骨に集電用耳部が設けられる。枠部の内側に設けられる格子は、横枠骨と平行に伸びる横格子骨と、縦枠骨と平行に伸びる縦格子骨とにより構成される。
【0050】
図1は、本実施形態に係わる鉛蓄電池で用いる格子板20の一例を示したものである。図示の格子板20は、長方形の輪郭形状を有する枠部21と、枠部21の内側に形成された格子22とを備えている。図1は、格子板20の厚み方向の一端側の主面の形状を示しているが、同図においては、主面の形状の細部の図示が省略されている。後記するように、各骨が六角形の断面形状を有しているため、実際には、図4の拡大図に示されているように、各骨の稜線が格子板の主面に現れる。以下、格子板の各部について詳細に説明する。
【0051】
[枠部]
枠部21は、格子板の外形形状を画定するものである。枠部21の形状は、使用される鉛蓄電池の電槽(外装ケース)の内部形状に適合させた形状とされる。本実施形態では、立方体または直方体状の電槽を用いるため、枠部21の輪郭形状を正方形又は長方形とする。
【0052】
図示の枠部21は、横方向に伸び、縦方向に相対する一対の横枠骨21a,21aと、縦方向に伸び、横方向に相対する一対の縦枠骨21b,21bとを有する。枠部21の一方の横枠骨21aには、図示しないストラップを接続するための集電用耳部25が一体に形成されている。
【0053】
枠部21の他方の横枠骨21aには、集電用耳部25と反対側に突出した保持用耳部26と、保持用耳部26から横方向に離れた箇所から保持用耳部と同方向に突出した足部27とが枠部と一体に形成されている。集電用耳部25と格子板保持用耳部26とは対称に設けられていて、極板を製造する工程で、一連の格子板20を、それぞれの板面(主面)を水平方向に向けて吊下げた状態で並べて搬送する際に、各格子板を搬送具に保持するために用いられる。極板の製造工程では、集電用耳部25及び格子板保持用耳部26が搬送具に引っかけられることにより、格子板が懸垂した状態で保持される。保持用耳部26は、格子板への活物質の充填が完了した後に足部27と同形状の足部を構成するようにカットされる。足部27及び保持用耳部26をカットすることにより形成された足部は、極板群が電槽のセル室内に挿入された際に枠部21の下端とセル室の底面との間に隙間を形成するために用いられる。足部27を省略する場合もあるが、その場合には、格子板への活物質の充填が完了した後に保持用耳部26全体をカットする。
【0054】
集電用耳部25は、極板群の同極性の極板同士を接続するストラップを接続するために用いられる。集電用耳部25は、電槽及びその蓋の形状と極板の形状とに合わせて、適宜の形状及び大きさに形成することが好ましい。耳部25の個数は1個であるのが好ましく、その厚みは枠骨の厚みと同等程度であることが好ましい。製造を容易にするため、耳部は枠部及び格子部と同じ材料により形成するのが好ましい。
【0055】
前述のように、本明細書においては、格子板20の集電用耳部25が設けられた部分を格子板の上部とし、縦枠骨21bが伸びる方向(縦枠骨の長手方向)を格子板20の縦方向とする。また横枠骨21aが伸びる方向を格子板の横方向とし、格子板20の縦方向及び横方向の双方に対して直角な方向を格子板の厚み方向とする。極板の縦方向、横方向及び厚み方向はそれぞれ、格子板20の縦方向、横方向及び厚み方向に沿う方向とする。また縦枠骨、横枠骨、縦格子骨及び横格子骨については、格子板の厚み方向に沿う方向を厚み方向とし、それぞれの長手方向と厚み方向との双方に対して直角な方向を幅方向とする。更に、格子板を水平面上に寝かせた姿勢にして格子板に活物質を充填する際に、格子板の上方に向けられる面及び下方に向けられる面をそれぞれ格子板の表面及び裏面とする。
【0056】
横枠骨21a及び縦枠骨21bの断面形状は、活物質との接触面積が大きく、且つ活物質の充填が容易な形状とするのが好ましい。本実施形態では、図2及び図3に示したように、横枠骨21a及び縦枠骨21bの横断面の輪郭が、枠部の厚み方向に細長く伸された六角形を呈している。本実施形態では、横枠骨21a及び縦枠骨21bのそれぞれの横断面の輪郭をなす六角形の6辺のうちの相対する2辺が枠部21の厚み方向に対向し、これら2辺の対向方向に対して直角な方向に相対する2つの頂点が、枠部の厚み方向に対して直角をなすように設定された基準平面O1−O1上に位置するように、横枠骨21a及び縦枠骨21bの横断面の輪郭をなす六角形の向きが定められている。
【0057】
図示の例では、横枠骨21a(図2)及び縦枠骨21b(図3)の横断面の輪郭形状を、枠部21の厚み方向に細長く伸された六角形とするため、横枠骨21a及び縦枠骨21bのそれぞれの幅寸法Aが厚み寸法Bよりも小さく設定されている。横枠骨21a及び縦枠骨21bのそれぞれの厚み方向の両端には、平坦な端面21a1,21a2及び21b1,21b2が形成されている。本実施形態では、横枠骨21a及び縦枠骨21bのそれぞれの端面21a1,21a2及び21b1,21b2の幅寸法Cがすべて等しく設定されている。
【0058】
[格子]
格子22は、複数本の横格子骨23,23,…と、複数本の縦格子骨24,24,…とからなっている。横格子骨及び縦格子骨の材質は、先に述べた横枠骨及び縦枠骨と同じものであっても、異なるものであっても良いが、横枠骨、縦枠骨、横格子骨及び縦格子骨を、一括して一体成形することを容易にするために、横格子骨及び縦格子骨を構成する材料は、横枠骨及び縦枠骨を構成する材料と同じものであることが好ましい。
【0059】
複数本の横格子骨23,23,…は、横枠骨21aと平行に設けられて、縦枠骨21bの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置されている。複数本の縦格子骨24,24,…は、縦枠骨21bと平行に伸びるように設けられて、横枠骨21aの長手方向に一定の間隔を持って並べて配置され、横格子骨23,23,…と縦格子骨24,24,…とが直角に交差することにより、格子22が構成されている。図示の例では、横格子骨23,23,…が26本設けられ、縦格子骨24,24,…が9本設けられている。
【0060】
横格子骨23は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨23aと、細骨23aよりも断面積が大きい複数の太骨23bとからなっていて、各太骨23bに隣接する骨が細骨23aとなるように、太骨23bと細骨23aとが配列されている。図示の例では、細骨23aが21本設けられ、太骨23bが5本設けられている。
【0061】
同様に、縦格子骨24は、鉛蓄電池の寿命期間の間腐食に耐え得る断面積を有する複数の細骨24aと、細骨24aよりも断面積が大きい複数の太骨24bとからなっていて、各太骨24bに隣接する骨が細骨24aとなるように太骨24bと細骨24aとが配列されている。図示の例では、細骨24aが5本設けられ、太骨24bが4本設けられている。
【0062】
本明細書では、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bと、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bとを区別するため、横格子骨23を構成する細骨23a及び太骨23bをそれぞれ細横骨及び太横骨と呼び、縦格子骨24を構成する細骨24a及び太骨24bをそれぞれ細縦骨及び太縦骨と呼ぶ。
【0063】
本実施形態では、図2に示されているように、格子22を構成する細横骨23a及び太横骨23bが格子板の厚み方向に伸された縦長の六角形の断面形状を有するように形成されている。枠骨部と同様に、細横骨23a及び太横骨23bのそれぞれの横断面の輪郭をなす六角形の6辺のうちの相対する2辺が枠部21の厚み方向に対向し、該2辺の対向方向に対して直角な方向に相対する2つの頂点が、枠部の厚み方向に対して直角をなすように設定された基準平面O1−O1上に位置するように、細横骨23a及び太横骨23bのそれぞれの断面形状が定められている。基準平面O1−O1は、格子板を鋳造する金型の分割面に沿う平面である。
【0064】
図2に示されているように、太横骨23bは、枠部21の厚みBに等しい厚みD(=B)を有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面23b1及び他端側の端面23b2をそれぞれ枠部21の厚み方向の一端側の端面21a1及び他端側の端面21a2と同一の平面上に位置させた状態で設けられている。太横骨23bの断面の輪郭形状を厚み方向に伸された六角形とするため、太横骨23bの幅Eがその厚みDよりも小さく設定されている。本発明においては、各太横骨21bの厚み方向の他端側の端面23b2の幅寸法Gが、その厚み方向の一端側の端面の幅寸法Fよりも小さく設定される。本実施形態では、活物質の充填が完了した段階で太横骨の厚み方向の他端側の端面23b2が活物質で覆われることなく露出していた場合でも、その後に行われる活物質圧縮行程において生じる活物質の流動により、該端面23b2を活物質で完全に覆うことができるように、各太横骨21bの厚み方向の他端側の端面23b2の幅寸法Gが十分に小さく設定されている。
【0065】
細横骨23aは、太横骨23bの厚みD(=B)よりも小さい厚みHと、太横骨23bの幅Eよりも小さい幅Iとを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面23a1及び他端側の端面23a2をそれぞれ横枠骨21aの厚み方向の一端側の端面21a1及び他端側の端面21a2よりも、枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で(枠部21の厚み方向の内側に位置させた状態で)配置されている。細横骨23aの断面の輪郭形状を枠部の厚み方向に伸された六角形とするため、細横骨23aの幅Iがその厚みHよりも小さく設定されている。細横骨23aの厚み方向の一端側の端面23a1及び他端側の端面23a2の幅寸法は適宜に設定し得るが、本実施形態では、細横骨23aの厚み方向の一端側の端面23a1及び他端側の端面23a2が等しい幅寸法Jを有している。
【0066】
図3に示されているように、縦格子骨24を構成する複数の太縦骨24bは、枠部21の厚みBよりも小さい厚みK(<B)を有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面24b1を枠部21の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に位置させ、それぞれの厚み方向の他端側の端面24b2を枠部21の厚み方向の他端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置されている。太縦骨24bの断面の輪郭を枠部の厚み方向に長く伸された六角形とするため、太縦骨24bの幅Lは、厚みKよりも小さく設定されている。太縦骨24bの厚み方向の一端側の端面24b1及び他端側の端面24b2の幅寸法は適宜に設定し得るが、本実施形態では、これらの端面が等しい幅寸法Mを有している。
【0067】
縦格子骨を構成する細縦骨24aは、太縦骨24bの厚みK(<B)よりも小さい厚みNと、太縦骨24bの幅Lよりも小さい幅Pとを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面24a1及び他端側の端面24a2をそれぞれ縦枠骨21bの厚み方向の一端側の端面21b1及び他端側の端面21b2よりも枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置されている。細縦骨24aの断面の輪郭形状を枠部の厚み方向に伸された六角形とするため、細縦骨24aの幅Pがその厚みNよりも小さく設定されている。細縦骨24aの厚み方向の一端側の端面24a1及び他端側の端面24a2の幅寸法は適宜に設定し得るが、本実施形態では、細縦骨24aの厚み方向の一端側の端面24a1及び他端側の端面24a2が等しい幅寸法Qを有している。本実施形態ではまた、細縦骨24aの厚みNが細横骨の厚みHに等しく設定され、細縦骨24aの幅Pが細横骨23aの幅Iに等しく設定されている。また細縦骨24aの厚み方向の一端側及び他端側の端面の幅Qが、細横骨23aの厚み方向の一端側及び他端側の端面の幅Jに等しく設定されている。
【0068】
本発明においては、各太骨に隣接する骨が細骨となるように太骨と細骨とを配列するが、横格子骨及び縦格子骨を構成する細骨の太さ(幅及び厚み)は必ずしも1種類である必要はなく、幅及び厚みが異なる複数種類の細骨を設けることができる。また枠骨と太骨との間及び太骨と太骨との間に配置する細骨は、1本でも複数本でもよい。
【0069】
[細骨の太さと太骨の太さとの関係]
太横骨23b及び太縦骨24bの太さ(断面積)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。格子板の鋳造性を考慮して、太横骨の太さと太縦骨の太さとを異ならせることができる。例えば、太横骨の太さを縦太骨の太さよりも太くしておくと、格子板を鋳造する鋳型の横格子骨を鋳造するキャビティを鉛直方向に向けた状態で、重力鋳造方式により格子板を鋳造する際に、断面積が大きい太横骨23bを鋳造するキャビティ(鉛直方向に伸びるキャビティ)内を通して、大量の溶融鉛を円滑に流すことができるため、縦格子骨を鋳造するキャビティ内への溶湯の流れを円滑にして、鋳造を容易にすることができる。
【0070】
また太横骨23bの太さと細横骨23aの太さとの関係及び太縦骨24bの太さと細縦骨24aの太さとの関係は、活物質の充填の容易さ、極板の寿命などを考慮して適宜に設定する。
【0071】
[格子骨の配列]
本実施形態では、図1に示されているように、横枠骨21aの長手方向に太縦骨24bと細縦骨24aとが交互に並ぶように、縦格子骨24を構成する細縦骨24a及び太縦骨24bが設けられている。
【0072】
格子22は、集電用耳部25から遠ざかるに従って電気抵抗が大きくなり、耳部25から遠ざかるに従って格子骨で生じる電圧降下が大きくなっていく。そのため、集電用耳部25から遠い箇所で格子骨と活物質との間に流れる電流が制限され、耳部25から離れた箇所で活物質の充放電反応が活発に行われにくくなる。このような状態が生じるのを防ぐため、集電用耳部25が設けられた一方の横枠骨21aに隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、集電用耳部25から離れた他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合の方が小さくなるように格子骨を配置するのが好ましい。
【0073】
そのため、本実施形態では、耳部25が設けられた一方の横枠骨21a側及び耳部から離れた位置にある他方の横枠骨21a側にそれぞれ細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合とした第1の領域A1及び細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合を第1の割合よりも少ない第2の割合とした第2の領域A2が設定される。
【0074】
第1の領域A1及び第2の領域A2における細横骨の本数の太横骨の本数に対する割合は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、第1の領域A1で、1本の太横骨の隣に4本の細横骨が並び、第2の領域A2では、1本の太横骨の隣に3本の細横骨が並ぶように、太横骨の本数と細横骨の本数との割合が設定されている。すなわち第2の領域A2における太横骨23b相互間の間隔が、第1の領域A1における太横骨23b相互間の間隔よりも狭くなっている。このような割合で太横骨と細横骨とを設けると、耳部から遠ざかるに従って格子の電気抵抗(電圧降下)が大きくなるのを抑制しつつ、ペースト状活物質の充填を容易に行わせることができる。
【0075】
[格子板の枠部の寸法]
枠部21の厚みは以下の点を考慮して実験的に決定する。枠部21の厚みが薄すぎると、枠部の厚み未満に設定される太縦骨の厚みが薄くなり過ぎて、格子骨の腐食が限界に達するまでの期間が短くなり、極板の寿命が短くなる傾向がある。また枠部21の厚みが薄くなり過ぎると、横細骨及び縦細骨の厚みが薄くなり過ぎるため、活物質の保持能力が低下するおそれがある。枠部21の厚みを5mm以上として、格子骨を構成する太横骨23bの厚みを枠部21の厚みに等しくし、細横骨23aの厚みと太縦骨24b及び細縦骨24aの厚みとを5mm未満の範囲で適当な値に設定することができるようにしておくと、極板の寿命を長くするという要求と、活物質の保持能力を低下させることなく活物質の充填の容易性を高めるという要求との双方に応えることができる。
【0076】
枠部21は、現用の産業用鉛蓄電池で用いられている格子板の枠部と同じ程度の大きさの長方形、例えば、長辺の寸法が370〜390mm、短辺の寸法が130〜150mmの長方形の形に形成することが好ましい。
【0077】
格子板の枠部の寸法を上記の値に設定すると、比較的大形の極板を作製することができ、この極板を多数用いることにより、放電容量が大きい電池を作製することができる。また上記の格子板の寸法は、産業用の鉛蓄電池で用いられている格子板の寸法と同程度であるため、従来の産業用鉛蓄電池の電槽や蓋等を変更することなくそのまま用いて放電容量が大きく、寿命が長い鉛蓄電池を得ることができる。
【0078】
[太横骨及び太縦骨の寸法]
本発明においては、太横骨23b及び太縦骨24bの部分に、電池の寿命期間に亘って格子の形状を所定の形状に維持する機能を持たせる。従って本発明の格子板を製作するに当たって、太横骨23b及び太縦骨24bの本数は、所望の寿命期間の間格子の形状を維持するために必要な本数に設定される。格子板20に充填し得る活物質量を減少させることがないようにするために、太横骨23b及び太縦骨24bの本数は多すぎないように設定する。同様に、太横骨23b及び太縦骨24bの断面積は、格子板に充填し得る活物質量を減少させることがなく、かつ所望の寿命期間に亘って格子体の形を保持するために必要最小限の太さに(太すぎないように)設定する。太横骨及び太縦骨の本数及び断面積は、実験的に決定する。
【0079】
[細横骨及び細縦骨の寸法]
一方細横骨23a及び細縦骨24aは、太横骨23b及び太縦骨24bの力を借りて自らの形状を維持することを前提にして、所望の寿命期間の間所定の形状を保持し、活物質を保持する機能を維持するのに適した大きさの断面積(太横骨及び太縦骨の断面積よりは小さい断面積)を持つように形成する。また細横骨23a及び細縦骨24aの幅は、太横骨23bと細横骨23aとの間及び太縦骨24bと細縦骨24aとの間にペースト状活物質の流動を容易にするためのスペースを確保することができる大きさに設定される。
【0080】
細横骨23a及び細縦骨24aの幅が広すぎると、格子の目が狭くなるため、活物質を充填する際にその流動を容易にして活物質の充填を容易にし、格子体の一部が活物質で覆われない状態が生じるのを防ぐという、本発明の効果を得ることができなくなるだけでなく、格子板に充填し得る活物質量が減少してしまう。また細横骨及び細縦骨の断面積が小さすぎると、細横骨及び細縦骨の腐食が早期に深部に達してその機械的強度が低下するため、太横骨及び太縦骨の助けを借りても細横骨及び細縦骨の形を維持することができなくなって、活物質保持機能が低下してしまう。細横骨23a及び細縦骨24aの断面積も実験的に決定する。
【0081】
[格子板の鋳造]
格子板の製造方法としては、重力鋳造方式(GDC:Gravity Die Casting)、連続鋳造方式、エキスパンド方式、打ち抜き方式等があるが、本発明に係わる格子板の製造には重力鋳造方式を用いることが好ましい。重力鋳造方式は、格子板の原材料金属(合金)を溶融し、この溶融金属(合金)を、該溶融金属の温度に耐え得る材料からなる金型内に重力により流し込み、鋳造する方法である。重力鋳造方式では、鋳造可能な格子の太さに理論上限界がない。また重力鋳造方式によれば、太格子骨と細格子骨とを合わせ持つ格子の製造が容易であり、得られた格子板の集電特性及び耐食性が優れている。
【0082】
重力鋳造方式により格子板を鋳造する際には、図5に示したように、格子体の厚み方向の一方の半部を成形するためのキャビティ31aを有する第1の型31と、格子体の厚み方向の他方の半部を成形するためのキャビティ32aを有する第2の型32とからなる金型33を用いる。第2の型32には、鋳造された格子体を離型させるために用いる押し出しピン34が設けられている。第1の型と第2の型とを合わせた状態では、金型の内部に、格子板の各部を成形するためのキャビティが構成される。図5において、23b′は横太骨23bを鋳造するためのキャビティ、24a′及び24b′はそれぞれ細縦骨24a及び太縦骨24bを鋳造するキャビティであり、21b′は縦枠骨21bを鋳造するキャビティである。
【0083】
この金型を用いて格子板を成形する際には、第1の型31と第2の型32とを合わせ、図5に示されているように、金型内に形成された横太骨成形用のキャビティ23b′の長手方向を鉛直方向に向けた状態で、溶融した鉛合金(溶湯)を両型の合わせ面に沿って形成されたゲート35を通して型内に注入し、溶湯を重力により型内の各部に流入させる。金型内に注入した鉛合金を冷却して固化させた後、第1の型31を第2の型32から離し、第2の型32側に残った格子板を押し出しピン34により押して、第2の型32から離型させる。図5において、最上部に示された押出しピン34は、金型のゲート35内で固化した鉛合金を押し出すために用いられる。
【0084】
本実施形態では、鋳造された格子板を金型から押し出す際に押出しピン4を当接させる押出しピン当接用座部28が格子板20に設けられている。鋳造された格子板を押出しピンにより押し出す際に、押出しピンから与えられる力が一点に集中して格子板が変形するのを防ぐため、押出しピン当接用座部28は、枠骨と横格子骨または縦格子骨との交差部及び横格子骨と縦格子骨との交差部に、それぞれの交差部の断面積よりも大きい断面積を持たせて設けるのが好ましい。
【0085】
図1に示した例では、一方の縦枠骨21bと5本の太横骨23bとの交差部と、一方の縦枠骨21bと縦方向の一端寄り及び他端寄りにそれぞれ設けられた細横骨23a,23aとの交差部と、格子板の横方向の中央に配置された一つの細縦骨24aと5本の太横骨23bとの交差部と、格子板の横方向の中央に配置された一つの細縦骨24aと二つの横枠骨21a,21aとの交差部とにそれぞれ押出しピン当接用座部28が形成されている。各押出しピン当接用座部28は、縦枠骨21bと太横骨23bまたは細横骨23aとの交差部、横枠骨21aと細縦骨24aとの交差部及び太横骨23bと細縦骨24aとの交差部のそれぞれの断面積よりも大きい断面積を持つように形成されている。
【0086】
押出しピン当接用座部28の配列は図1に示した例に限定されない。例えば、図6または図7に示すように、押出しピン当接用座部28を配列してもよい。
【0087】
[極板の製造]
格子板20を用いて鉛蓄電池用極板を製造する際には、活物質充填工程と活物質圧縮行程とを行う。図8を参照すると、活物質充填工程を行うペースト充填機41の一例と、活物質圧縮行程を行う圧縮機42の一例とが示されている。図示のペースト充填機41は、ローラ41aによりガイドされて一方向に走行する搬送ベルト41bと、搬送ベルト41b上に供給された格子板20に上方から接して、格子板20を搬送ベルト41b側に押しつけながら回転する送りローラ41cと、搬送ベルト41b上の格子板20にペースト状の活物質を加圧しながら供給するペースト供給装置41dとからなっている。搬送ベルト41b及び送りローラ41cは、図示しないモータにより駆動される。
【0088】
圧縮機42は、軸線を搬送方向に対して直角な方向に向けて並べて配置された複数の送りローラ42aと、エアシリンダやバネなどにより送りローラ42a側に付勢された加圧ローラ42bとを備えていて、ペースト充填機41側から供給された極板を送りローラ42aと加圧ローラ42bとの間に挟んだ状態で一方向に送給しながら、格子板に充填された活物質を格子板の厚み方向に圧縮して押し固める。
【0089】
鋳造工程により鋳造された格子板20は、図示しない搬送装置により搬送されて、搬送ベルト41bの端部に供給される。格子板20は、その横方向を搬送方向に向け、縦方向を搬送方向に対して直角な方向に向け、かつその厚み方向の一方の主面(表面)を上方に向けた状態で搬送ベルト41b上に供給される。搬送ベルト41b上に供給された格子板20は、送りローラ41cと搬送ベルト41bとの間に挟まれた状態でペースト供給装置41d内に送り込まれる。
【0090】
ペースト供給装置41dは、格子板20の表面にペースト状の活物質を所定の圧力で供給する。格子板20の表面に供給された活物質は、格子板20の表面を覆うと共に、格子22の目を通して格子板の裏面側に流動して、格子22の目の内部と格子板の裏面側とに充填される。
【0091】
格子板に充填する活物質は特に限定されないが、一酸化鉛を含んだ鉛粉、水、硫酸等を混練して作製するのが好ましい。正極、負極の特性に合わせてカットファイバ、炭素粉末、リグニン、硫酸バリウム、鉛丹等の添加物を活物質に加える場合もある。また活物質の充填量は、枠骨の内側に形成される骨(細骨及び太骨)が完全に隠れれば問題はないが、枠骨の厚み以上まで充填するのが望ましい。
【0092】
活物質が充填された格子板(極板)は、搬送ベルト41bにより搬送されて、圧縮機42に供給される。圧縮機42に供給された極板は、送給ローラ42aと加圧ローラ42bとの間に挟まれて加圧されながら送給される。この過程で、活物質が格子板の厚み方向に圧縮されて押し固められる。
【0093】
本発明に係わる極板は、上述のペースト状活物質をペースト充填機によって格子板に充填し、熟成・乾燥することにより作製される。熟成・乾燥の時間や温度は特に限定されないが、格子板の厚みや活物質の物性によって適した値に調整することが好ましい。
【0094】
[鉛蓄電池の構成]
本発明に係わる鉛蓄電池の構成は、少なくとも正極板に本発明に係わる格子板を用いる点を除き、特に限定されるものではない。前述のように、鉛蓄電池は、正極板、負極板、電解液としての希硫酸、セパレータ(ガラス繊維製のリテーナ等)、電槽、蓋等の部材から作製される。例えば、図9に示されるように、正極板1と負極板2との間にセパレータを介在させながら、正極板1と負極板2とを1枚ずつ交互に積層して、同極板の耳部同士をストラップ5及び6で連結させ、極板群4を構成する。この極板群4を電槽7の中に入れて蓋をし、電槽内に希硫酸を注液した後に化成を行って鉛蓄電池を完成する。
【0095】
本実施形態のように格子板20を構成すると、太横骨23bの厚み方向の一端側の端面と、太縦骨24bの厚み方向の一端側の端面とを枠部21の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に位置させることができるため、格子板20を送りローラ41cによりペースト充填機内に送り込む際に、送りローラ41cと格子板20との接触面積を十分に確保して、送りローラ41cと格子板20との間の摩擦抵抗を大きくすることができる。また、本実施形態の格子板においては、太横骨23bの厚み方向の他端側の端面が枠部21の厚み方向の他端側の端面と同一の平面上に配置されるため、格子板20と搬送ベルトとの接触面積を大きくして、両者間の摩擦抵抗を大きくすることができる。従って、格子板を搬送ベルトと送りローラとの間に挟んでペースト充填機に供給する際に、格子板と送りローラとの間及び格子板と搬送ベルトとの間の摩擦抵抗を十分に大きくして、格子板を、その横方向を搬送方向に向けた正規の姿勢を保った状態で、ペースト充填機41内に確実に送り込むことができ、活物質の充填作業を円滑に行わせることができる。
【0096】
本実形態においては、格子板20の表面(活物質充填時に上方に向けられる面)側で、太横骨23bと太縦骨24bとの双方の厚み方向の端面と、枠部21の厚み方向の一端側の端面とが同一の平面上に配置されているため、枠骨21a,21bと太横骨23b及び太縦骨24bとにより、格子板の表面に開口した多数の矩形状の仕切り枠が縦横に並んだ状態で構成され、格子板20の表面がこれらの仕切り枠により縦横に仕切られた状態にある。このように格子板の表面が、多数の仕切り枠により仕切られていると、格子板の表面に加えられた活物質の充填圧力を分散させることなく、各仕切り枠内の制限された領域を通して格子板の裏面側に均一かつ確実に伝達することができるため、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動を均一かつ円滑に行わせることができる。また格子板の裏面側では、太縦骨24bの厚み方向の端面24b2と細縦骨24aの端面24a2とが枠部の端面21a2、21b2よりも枠部の厚み方向の内側に配置されていて、活物質充填時に太縦骨24bの厚み方向の端面24b2及び細縦骨24aの厚み方向の端面24a2と搬送ベルト41bとの間に隙間が形成されるため、格子板20の裏面側での活物質の流動を容易にして、活物質の充填を良好に行わせることができる。
【0097】
本発明に係わる鉛蓄電池で用いる格子板20においては、その表面側で、太横骨23bと太縦骨24bとの双方の厚み方向の端面が枠部21の厚み方向の端面と同一平面上に配置されているが、格子板の表面側では、活物質充填時に太横骨及び太縦骨を隠すように、活物質を塗着することが容易である。そのため、格子板の表面側で太横骨及び太縦骨の厚み方向の端面と、枠部の厚み方向の端面とが同一の平面上に配置されていても、太横骨及び太縦骨を露出させないように活物質を充填することは容易である。
【0098】
格子板20の裏面側では、太横骨23bの厚み方向の他端側の端面23b2が、枠部21の厚み方向の他端側の端面が配置されている平面と同一の平面上に配置されているため、太横骨23bの厚み方向の端面23b2が活物質で覆われずに露出することがある。格子板の裏面側で露出している太横骨の端面を、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動のみによって完全に覆うことは困難であるが。本実施形態では、格子板の裏面側での各太横骨23bの厚み方向の端面の幅寸法Gが、格子板の表面側での各太横骨の厚み方向の端面の幅寸法Fよりも小さく設定されているため、活物質充填工程の終了時に極板の裏面側で太横骨23bの厚み方向の端面23b2が露出したとしても、その露出部分の面積は十分に狭くすることができる。そのため、活物質充填工程の終了時に、極板の裏面側で太横骨の端部が露出していたとしても、その後に行われる活物質圧縮工程において生じる活物質の流動により、太横骨の厚み方向の他端側の端面23b2の露出部分を活物質により確実に覆うことができ、格子板の表裏両面に格子骨の露出部分を有しない極板を容易に得ることができる。
【0099】
[変形例]
図1に示した例では、太縦骨と細縦骨とが横枠骨21a,21bの長手方向に沿って交互に並ぶように縦格子骨を設けているが、本発明は、図1に示したように縦格子骨を構成する場合に限定されるものではない。例えば、太縦骨24bの隣に2本の細縦骨24aが並ぶように縦格子骨を構成しても良い。
【0100】
上記の実施形態では、格子板の主面を、耳部が設けられた一方の横枠骨側に位置する第1の領域A1と、耳部から離れた側の他方の横枠骨側に位置する第2の領域A2とを設けて、格子板の主面を縦方向(上下)に2分して、第1の領域では各太横骨の側方に4本の細横骨が並び、第2の領域では、各太横骨の側方に3本の細横骨が並ぶようにしたが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0101】
集電用耳部25から離れた領域で集電抵抗が大きくなるのを防ぐためには、耳部が設けられた一方の横枠骨に隣接する領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合よりも、耳部から離れた位置にある他方の横枠骨寄りの領域で一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合を小さくすればよく、格子板の主面の各領域における太横骨の本数に対する細横骨の本数の割合は、上記の例に限定されない。
【0102】
例えば、第1の領域A1と第2の領域A2との間に更に一つ以上の領域を設けて、格子板の主面を縦方向に3以上の領域に分け、耳部が設けられた一方の横枠骨側に設けられた領域から他方の横枠骨側に設けられた領域に向かうに従って、一定の面積当りに設けられている細横骨の数の太横骨の数に対する割合が段階的に少なくなっていくように(太横格子相互間の間隔が段階的に狭くなっていくように)、各領域における細横骨の数と太横骨の数とを設定してもよい。
【実施例】
【0103】
[格子板の作製]
鉛に、スズ:1.0〜1.8質量%、カルシウム:0.05〜0.1質量%を添加して作製した鉛合金を溶融し、異なる2種類の金型を用いて、重力鋳造方式により正極用の格子板A及び格子板Bを作製した。これらの格子板のうち、格子板Aは比較例であり、格子板Bは本発明の実施例である。
【0104】
<格子板A:比較例>
格子板Aは、本発明者が先に提案した構造を有するもの(特許文献3に示されたもの)である。格子板Aにおいて、枠部21の内側の横格子骨23及び縦格子骨24の配列パターンは図1に示した例と同様であるが、格子板Aでは太横骨23b及び太縦骨24bの厚みが枠部21の厚みよりも小さく設定されて、太横骨23bの厚み方向の一端側の端面23b1及び他端側の端面23b2が枠部21の厚み方向の一端側の端面21a1,21b1及び他端側の端面21a2,21b2よりも厚み方向の内側に配置されている。また太縦骨24bの厚み方向の一端側の端面24b1及び他端側の端面24b2が枠部21の厚み方向の一端側の端面21a1,21b1及び他端側の端面21a2,21b2よりも厚み方向の内側に配置されている。細横骨23aの幅及び厚みはそれぞれ太横骨23bの幅及び厚みよりも小さく設定され、細縦骨24aの幅及び厚みはそれぞれ太縦骨24bの幅及び厚みよりも小さく設定されている。各細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚み方向の一端側の端面を太横骨23b及び太縦骨24bの厚み方向の一端側の端面が配置された平面寄りに偏った位置に位置させた状態で設けられている。
【0105】
格子板Aにおいては、枠部21の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚みを5.8mm、幅を4.4mmとし、枠部21の内側に、太横骨23b及び細横骨23aを備えた横格子骨23と、太縦骨24b及び細縦骨24aを備えた縦格子骨24とを形成した。太横骨23b及び太縦骨24bの断面形状は、厚みが幅よりも大きい六角形とし、厚みを5.4mm、幅を4.3mmとした。また細横骨24a及び細縦骨24aの断面形状も厚みが幅よりも大きい六角形とし、それぞれの厚みを3.6mm、幅を2.8mmとした。格子板Aにおいては、活物質充填時に上方に向けた状態で配置される細横骨23a及び細縦骨24aの厚み方向の一端側の端面23a1及び24a1を、太横骨23b及び太縦骨24bの厚み方向の一端側の端面23b1及び24b1と同一の平面上に位置させた。
【0106】
<格子板B:実施例>
格子板Bにおいて、枠部21の内側の横格子骨23及び縦格子骨24の配列パターンは図1に示した例と同様である。格子板Bにおいては、図2に示すように、太横骨23bの厚みが枠部21の厚みに等しく設定されて、太横骨23bの厚み方向の一端側の端面23b1及び他端側の端面23b2が枠部21の厚み方向の一端側の端面21a1,21b1及び他端側の端面21a2,21b2と同一の平面上に配置されている。また図3に示すように、太縦骨24bの厚みは枠部21の厚みよりも小さく設定されて、その厚み方向の一端側の端面24b1は枠部21の厚み方向の一端側の端面21a1,21b1と同一平面上に配置され、太縦骨24bの厚み方向の他端側の端面24b2は、枠部21の厚み方向の他端側の端面21a2,21b2よりも枠部の厚み方向の内側に配置されている。
【0107】
格子板Bにおいて、細横骨23aの幅及び厚みはそれぞれ太横骨23bの幅及び厚みよりも小さく設定され、細縦骨24aの幅及び厚みはそれぞれ太縦骨24bの幅及び厚みよりも小さく設定されている。各細横骨23a及び細縦骨24aは、それぞれの厚み方向の一端側の端面23a1及び24a1を枠部21の厚み方向の一端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置させ、かつそれぞれの厚み方向の他端側の端面23a2及び24a2を枠部21の厚み方向の他端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で設けられている。
【0108】
格子板Bにおいては、枠部21の縦寸法を385mm、横寸法を140mm、厚みBを5.8mm、幅Aを4.4mmとし、枠部の内側に、太横骨23b及び細横骨23aを備えた横格子骨と、太縦骨24b及び細縦骨24aを備えた縦格子骨とを形成した。太横骨23bの断面形状は、厚みDが幅Eよりも大きい六角形とし、厚みDを5.8mm、幅Eを4.3mmとした。また太横骨23bの厚み方向の一端側の端面23b1の幅F及び他端側の端面23b2の幅Gはそれぞれ1.7mm及び1.0mmとした。太縦骨24bの断面形状も厚みKが幅Lよりも大きい六角形とし、厚みKを5.6mmとし、幅Lを4.3mmとした。
【0109】
また細横骨24a及び細縦骨24aの断面形状も、厚みH及びNが幅I及びPよりも大きい六角形とし、それぞれの厚みH及びNを3.6mm、幅I及びPを2.8mmとした。格子板Bにおいては、細横骨23a及び細縦骨24aの厚み方向の一端側の端面23a1及び24a1を、枠部21の厚み方向の一端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に寄った位置で同一の平面上に位置させ、細横骨23a及び細縦骨24aの厚み方向の他端側の端面23a2及び24a2を、枠部21の厚み方向の他端側の端面よりも枠部の厚み方向の内側に寄った位置で同一の平面上に位置させた。
【0110】
[活物質の充填状態の確認]
格子板A及びBに対して、ペースト充填機によりペースト状の活物質を充填する活物質充填実験を実施し、その後、熟成・乾燥をして未化成の正極板を作製した。
【0111】
活物質充填実験に用いたペースト状の正極用活物質は、一酸化鉛を主成分とする鉛粉の質量に対して、ポリエステル繊維を0.1質量%加えて混合した後、水を12質量%、希硫酸を16質量%加えて再び混練をして作製した。この正極用活物質の作製方法は、従来から行われている方法と同様である。
【0112】
[充填結果]
格子板A及びBにペースト状活物質を充填、圧縮した後、活物質充填時に下方に向いていた格子板の裏側への活物質の充填状態を視認した結果、格子板A及びBの双方とも、すべての格子骨が活物質中に綺麗に埋まっており、格子板の裏側への活物質の充填状態は良好であった。本発明においては、太横骨23bの厚みDを枠部21の厚みBに等しくしているにも拘わらず、格子板の裏面側で太横骨の端面23b2が露出しない理由は、格子板の表面側に太横骨と太縦骨とにより仕切り枠を形成したことにより、格子板の表面側から裏面側への活物質の流動を円滑にしたことと、太横骨の厚み方向の他端側の端面23b2の幅Gを太横骨の厚み方向の一端側の端面23b1に比べて小さくしたこととによるものと思われる。
【0113】
[活物質充填時の不具合]
格子板Aにおいては、格子板を、その横方向を搬送方向に向けた状態で搬送ベルトの上に載せて、搬送ベルト上の格子板20に送りローラを接触させることによりペースト充填機に送り込む際に、格子板の姿勢が正規の姿勢からずれてラインが停止するトラブルが全数の1.2%の割合で生じた。これは、正極板100個当たり1.2個の不良品が生じることを意味し,生産性を向上させる上で無視できない値である。これに対し、本発明の実施例である格子板Bにおいては、同様のトラブルが生じる割合が0.7%まで減少し、ペースト充填機への格子板の送り込みの不具合によるトラブルが既提案の格子板を用いる場合に比べて48%も減少するという好結果が得られた。
【0114】
上記の結果から、本発明によれば、先に提案された格子板を用いた場合と同様に格子板への活物質の充填を良好に行うことができるだけでなく、格子板をペースト充填機に供給する際にトラブルが生じてラインが停止する回数を既提案の格子板を用いる場合よりも大幅に少なくできることが明らかになった。
【0115】
本発明で用いる格子板は、太横骨の断面積を既提案の鉛蓄電池で用いる格子板の太横骨の断面積よりも大きくすることができる上に、太縦骨の断面積と、細横骨及び細縦骨の断面積とをそれぞれ既提案の格子板の太縦骨の断面積と細横骨及び細縦骨の断面積と同等にすることができるため、本発明に係わる鉛蓄電池が、既提案の鉛蓄電池と同等以上の寿命特性を有することは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、格子板をペースト充填機に円滑に送り込むことができるようにしたので、格子板をペースト充填機に正しく送り込むことができないことに起因してラインが停止する確率を少なくして、極板の生産性を向上させることができる。また本発明によれば、長期間腐食に耐える構造と活物質の充填を容易にする構造とを格子板に持たせることができるので、極板、特に正極板の寿命を延ばして、長寿命な制御弁式鉛蓄電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0117】
20 格子板
21 枠部
21a 横枠骨
21b 縦枠骨
22 格子
23 横格子骨
23a 細横骨
23a1 細横骨の厚み方向の一端側の端面
23a2 細横骨の厚み方向の他端側の端面
23b 太横骨
23b1 太横骨の厚み方向の一端側の端面
23b2 太横骨の厚み方向の他端側の端面
24 縦格子骨
24a 細縦骨
24a1 細縦骨の厚み方向の一端側の端面
24a2 細縦骨の厚み方向の他端側の端面
24b 太縦骨
24b1 太縦骨の厚み方向の一端側の端面
24b2 太縦骨の厚み方向の他端側の端面
25 集電用耳部
26 格子板保持用耳部
27 足部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用の格子板に正極活物質を充填してなる正極板と、負極用の格子板に負極活物質を充填してなる負極板とを備えた鉛蓄電池であって、
少なくとも前記正極用の格子板は、横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有し、前記横方向及び縦方向の双方に対して直角な厚み方向に一定の厚み寸法を有する枠部と、前記横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて前記枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、前記枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備え、
前記縦格子骨及び横格子骨はそれぞれ、複数の細縦骨及び細横骨と、前記細縦骨及び細横骨よりも断面積が大きい複数の太縦骨及び太横骨とを有して、各太縦骨の側方に少なくとも一つの細縦骨が並び、各太横骨の側方に複数の細横骨が並ぶように、前記太縦骨及び細縦骨と太横骨及び細横骨とが配列され、
前記複数の太縦骨は、前記枠部の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面を前記枠部の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に位置させ、かつそれぞれの厚み方向の他端側の端面を前記枠部の厚み方向の他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の細縦骨は、前記太縦骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記太縦骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の太横骨は、前記枠部の厚みに等しい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記枠部の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面と同一の平面上に位置させた状態で配置され、
各太横骨は、その厚み方向及び長手方向の双方に対して直角な方向を幅方向としたときに、その厚み方向の他端側の端面の幅寸法が、その厚み方向の一端側の端面の幅寸法よりも小さく設定され、
前記複数の細横骨は、前記太横骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記太横骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の細縦骨は、太さが異なる複数種類の細縦骨を有している、
鉛蓄電池。
【請求項2】
正極用の格子板に正極活物質を充填してなる正極板と、負極用の格子板に負極活物質を充填してなる負極板とを備えた鉛蓄電池であって、
少なくとも前記正極用の格子板は、横方向に伸び縦方向に相対する一対の横枠骨と縦方向に伸び横方向に相対する一対の縦枠骨とを有し、前記横方向及び縦方向の双方に対して直角な厚み方向に一定の厚み寸法を有する枠部と、前記横枠骨及び縦枠骨とそれぞれ平行に伸びるように設けられて前記枠部の内側に格子を形成する複数の横格子骨及び複数の縦格子骨と、前記枠部の一方の横枠骨に一体に形成された集電用耳部とを備え、
前記縦格子骨及び横格子骨はそれぞれ、複数の細縦骨及び細横骨と、前記細縦骨及び細横骨よりも断面積が大きい複数の太縦骨及び太横骨とを有して、各太縦骨の側方に少なくとも一つの細縦骨が並び、各太横骨の側方に複数の細横骨が並ぶように、前記太縦骨及び細縦骨と太横骨及び細横骨とが配列され、
前記複数の太縦骨は、前記枠部の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面を前記枠部の厚み方向の一端側の端面と同一の平面上に位置させ、かつそれぞれの厚み方向の他端側の端面を前記枠部の厚み方向の他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の細縦骨は、前記太縦骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記太縦骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の太横骨は、前記枠部の厚みに等しい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記枠部の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面と同一の平面上に位置させた状態で配置され、
各太横骨は、その厚み方向及び長手方向の双方に対して直角な方向を幅方向としたときに、その厚み方向の他端側の端面の幅寸法が、その厚み方向の一端側の端面の幅寸法よりも小さく設定され、
前記複数の細横骨は、前記太横骨の厚みよりも小さい厚みを有して、それぞれの厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面をそれぞれ前記太横骨の厚み方向の一端側の端面及び他端側の端面よりも前記枠部の厚み方向の内側に位置させた状態で配置され、
前記複数の細横骨は、太さが異なる複数種類の細横骨を有している、
鉛蓄電池。
【請求項3】
前記複数の細縦骨及び細横骨のそれぞれは、鉛蓄電池の所期の寿命期間の間腐食に耐えるように設定された断面積を有している請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−89511(P2012−89511A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274501(P2011−274501)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【分割の表示】特願2011−533458(P2011−533458)の分割
【原出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】