説明

鉱物油によって汚染された媒体を浄化するための添加剤及び浄化方法

【課題】鉱物油を微生物によって迅速に無害化するための添加剤及びその方法の提供する。
【解決手段】ペプトン等の1つ以上と等の1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩、さらには脂肪酸ナトリウム等の1つ以上からなる鉱物油の無害化剤を微生物が栄養源あるいは呼吸源として利用して活性化、増殖することによって微生物による鉱物油の無害化を促進する鉱物油の無害化方法によって、迅速かつ低コストに媒体の浄化を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染地域の土壌、地下水或いは底質土などといった媒体の中に添加される鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害な化学物質によって汚染された環境を浄化する手段として、微生物を利用して浄化する方法(バイオレメディエーション)が注目されている。この方法は、従来の物理的・化学的処理方法に比べて動力・設備等が低コストであり、原位置浄化が容易であることが大きな利点である。
このバイオレメディエーションは、汚染物質を分解する能力の高い外来微生物を添加することによって浄化するバイオオーギュメンテーションと、微生物に栄養源等を供給して増殖力、あるいは汚染物質の代謝力を高めることによって浄化するバイオスティミュレーションに大別される。
【0003】
外来微生物を利用するバイオオーギュメンテーションについては、微生物の変異、域外への拡散などを考慮しながら、現在、実用化の検討が進められている。一方、バイオスティミュレーションは、土着の微生物を利用することができ、また栄養塩類その他の材料を対象となる環境に添加するだけでよいので、多くの汚染サイトの原位置浄化工事において採用されるようになってきている。
【0004】
本発明者らは、有機塩素化合物に対する従来のバイオレメディエーション剤の課題を解消すべく、嫌気性微生物による有機塩素化合物の浄化に関して特許文献1及び特許文献2において汚染された土壌、地下水或いは底質土の修復に使用する添加剤を開示している。これらの添加剤は、栄養源、エネルギー源となる材料の水溶性が高く、また生分解性がよいので、土壌中において拡散しやすく、また溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen、以下「DO」と表記する)も結合性の酸素(NOX‐のO)も存在しない嫌気状態を造成し有機塩素化合物を分解・浄化するまでの工程が迅速に進行する。
【0005】
この結果、栄養剤を注入するための井戸の間隔を広く取ることが可能となり、少ない地点から注入することによって広い範囲に効果を及ぼすことが可能である。また妨害物質の影響が及ぶ前に有機塩素化合物を分解・浄化することが可能となり、浄化における作業量の低減、浄化期間の短縮を達成することが可能となった。さらに、環境中における生分解性の高い成分が選択されており、浄化完了後に材料は二酸化炭素及び水になり、現場に残留することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−185870号公報
【特許文献2】特開2005−288276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来の有機塩素化合物のバイオレメディエーションにおいては、例えばバイオスティミュレーションを原位置浄化に適用する場合に、嫌気生微生物を利用する技術が主流である。一方、ベンゼン類、ガソリン等に代表される鉱物油については、好気性微生物を利用するバイオレメディエーションが有効である。
【0008】
本発明の目的は、土壌、地下水及び底質が鉱物油によって汚染されている場合に、鉱物油を原位置においてかつ効果的に浄化する方法において、汚染物質を土着の微生物によって短期間で浄化するための無害化剤によって、環境に対する負荷が小さく使用前の環境への速やかな復元が可能な鉱物油の無害化剤及び鉱物油の無害化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉱物油の無害化剤は、ペプトン、酵母エキス、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、トレオニン、バリンの1つ以上とマンガン、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ナトリウム、カリウム、カルシウムとこれらの塩類の1つ以上とチアミン、p−アミノ安息香酸、コリン、アスコルビン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、イノシトール、葉酸、リポ酸、シアノコバラミンの1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成されることを特徴とする。
【0010】
また本発明の鉱物油の無害化方法は、対象とする媒体を好気状態にする工程と、ペプトン、酵母エキス、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、トレオニン、バリンの1つ以上とマンガン、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ナトリウム、カリウム、カルシウムとこれらの塩類の1つ以上とチアミン、p−アミノ安息香酸、コリン、アスコルビン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、イノシトール、葉酸、リポ酸、シアノコバラミンの1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成される本発明の鉱物油の無害化剤を供給する工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の鉱物油の無害化剤には、さらに脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッドの1つ以上を加えることができる。
【0012】
対象とする媒体の透水係数が10−4cm/秒未満の場合は圧力をかけることができる。また対象とする媒体を好気状態にする工程が、対象とする媒体のpH の範囲を5.5〜9.0に管理し、さらにDO濃度が5mg/L以上の水を注入する工程とするのがよい。
【0013】
対象とする媒体を好気状態にする工程が、対象とする媒体のDO濃度が2mg/L以上、酸化還元電位(Oxidation−reduction Potential;ORP、以下「ORP」と表記する)値が0mV以上である好気状態にする工程としてもよい。
[作用]
本発明の鉱物油の無害化剤及びこれを用いる本発明の鉱物油の無害化方法は、対象となる媒体に対して供給した物質を、微生物が栄養源あるいは呼吸源として利用して活性化、増殖して鉱物油を無害化する。
このように、鉱物油を分解する過程で関与する微生物群を構成する各種の微生物全体の働きを考慮して、複数種類の性質の異なる物質を添加剤として供給することで、効率的であって、しかも有害物質が残留しにくいバイオレメディエーション工法が可能となる。
なお、添加剤を構成するそれぞれの物質の配合比は修復対象の土質に合わせて設定することで修復の効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法によれば、鉱物油を迅速かつ低コストで浄化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
本発明の鉱物油の無害化剤に用いられるアンモニウム塩の1つ以上とは、例えば硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等の1つ以上であって、係るアンモニウム塩としては構造的にアンモニウム塩として認識若しくは評価される全ての物質を用いることができる。水溶性が高いことが好ましく、対象とする媒体における供給において供給した場所からの移動性が高いことが本発明の効果を高める上で有効である。
また本発明の鉱物油の無害化剤に用いられるリン酸塩の1つ以上とは、例えばリン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム等の1つ以上であって、係るリン酸塩としては構造的にリン酸塩として認識若しくは評価される全ての物質を用いることができる。水溶性が高いことが好ましく、対象とする媒体における供給において供給した場所からの移動性が高いことが本発明の効果を高める上で有効である。
【0017】
本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法が対象とする媒体は、例えば一般的に土着の微生物が存在する土壌、地下水或いは底質があるが、媒体が微生物の生息できる環境であれば、外部から微生物を添加する手法によっても、同等の効果を得ることができる。
本発明の鉱物油の無害化剤は、汚染地域の土壌、地下水或いは底質土などといった媒体の中に添加される。本発明の鉱物油の無害化剤を構成するそれぞれの物質の配合比は媒体の性質に合わせて設定することで修復の効果を高めることができる。
また添加剤の形態は、固体状、液体状、スラリー状などであり、汚染地域の地層などの地質状態や、汚染地域の汚染状況に基づいて決定される。供給方法は、例えば、水に溶解させて媒体に供給する方法が一般的であるが、機械によって媒体と混合する方法などによっても同等の効果を得ることができる。
【0018】
本発明が無害化の対象とする物質は、鉱物油であり、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのベンゼン類、ガソリン、灯油、軽油といった物質であるが、一般的に鉱物油、もしくは鉱油として認識される物質であれば、これらに限定されない。
本発明の鉱物油の無害化剤による無害化に利用される微生物とは、汚染土壌に存在し、一般的な微生物と同様の方法で増殖させることができる微生物であり、無機塩、窒素源、その他栄養源を含む無機栄養培地、有機栄養培地等において増殖できる、鉱物油を無害化することのできる微生物である。外来微生物を混合したり、微生物から抽出した遺伝子によって作成した組み換え微生物を使用したり、微生物を単体に固定化した場合も本発明の汚染物質の無害化剤及び無害化方法は適用可能である。
【0019】
ペプトン、酵母エキス、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、トレオニン、バリンの1つ以上とマンガン、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ナトリウム、カリウム、カルシウムとこれらの塩類の1つ以上とチアミン、p−アミノ安息香酸、コリン、アスコルビン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、イノシトール、葉酸、リポ酸、シアノコバラミンの1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成される添加物は、汚染物質を分解する微生物の活性化、増殖に関る栄養源として有効であり、対象とする汚染物質の種類及び濃度、媒体の種類、利用する微生物種などに応じて使用する物質の種類、添加量が選択される。
【0020】
脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッドの1つ以上から構成される添加物は、土壌に吸着した鉱物油を水相へと移行しやすくするための物質群であり、脂溶性の物質の水への移動性を高める材料として微生物が対象物質を無害化する際の利用性(バイオアベイラビリティ)を高めるために有効であり、食品工業分野において食品添加物などとして利用されている有害性の低い物質である。
【0021】
酸素は、空気による供給、土壌の混練など、供給方法は問わない。水に溶かしてDOの形態で媒体に供給する方法が、媒体内での拡散、効果の波及の面から好ましい。最も好適な方法として、DO濃度が5mg/L以上の水を注入することによってDO濃度で2mg/L以上、ORP値0mV以上の好気状態にすることが、対象となる汚染物質を分解する好気性微生物の活性化、増殖の観点から好ましい。
【0022】
本発明の無害化剤あるいは酸素を溶解させた水を媒体へと供給する場合、水のとおりやすさを示す指標である透水係数に応じて注入方法を選定することが望ましい。すなわち、透水係数が10−4cm/秒未満の場合は圧力をかけることによって、透水係数が10−4cm/s以上の場合は自然流下によって供給することが適当である。
【0023】
本発明では、微生物を利用することによって鉱物油の無害化を迅速に行う為、一般的に微生物が好適に生息できる環境において適用するか、もしくは環境を形成・管理することが必要である。この観点から、pHを5.5から9.0の範囲に管理することが望ましい。
以上の条件で、本発明は鉱物油を無害化することができる。従って、従来の浄化対策によっては困難、もしくは時間のかかっていた汚染媒体においても環境負荷、短工期、コスト面での負担を小さくし無害化できる浄化方法である。
以下、実施例を用いて本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法によって地下水中のベンゼン類を無害化した事例を示す。
ベンゼン類によって汚染された地下水の原位置浄化において、添加剤による浄化効果を実証するため、ベンゼン類による地下水汚染が確認されているサイトにおいてパイロット試験を実施した。パイロット試験現場は、平面領域が縦10m×横10mで、地下水位は2.2m、地表からの対象層厚が5mの範囲である。この試験においては、ベンゼン類(ベンゼン、トルエン、キシレン)の濃度、DO濃度(mg/L)、ORP値(mV)をパラメータとして測定した。
ベンゼン類の濃度は、公定分析法(JIS−K0125)に準拠してガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定した。この試験において使用した添加剤は、酵母エキス2kg、アルギニン2kg、アスコルビン酸1kg、リン酸水素二アンモニウム350kg、塩化カリウム50kg、塩化ナトリウム5kg、リン酸水素二カリウム50kg、しょ糖脂肪酸エステル20kgの混合物である。
【0025】
現場において水道水50トンにこの添加剤をタンクにおいて混合しながら注入井戸から地下水に滴下し、同時に水道水に酸素を平均20mg/Lで溶解させて3?/分の流速で地下水に継続的に注入した。当該現場土壌の透水係数は、5.1×10−3cm/秒であったので、井戸への自然流下方式によって注入を実施した。
また、比較例として同一現場内において井戸水に空気を吹き込んで曝気する方法も実施した。
双方の場合において注入井戸から地下水流の下流0.5mと3mの位置に設置した観測井戸において、地下水中のDO濃度(mg/L)を定期的に測定した。
また実施例における地下水中のベンゼン類濃度及びORP値(mV)を定期的に測定した。
以上の実施例1及び比較例における各パラメータの測定結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から添加剤の注入によって汚染地域のDOとORPが微生物による好気分解に好適な条件となって汚染の分解環境が形成され、試験期間中維持されたことが分かる。対象となるベンゼン類は、試験開始から15〜30日後には、環境基準を満足するまで濃度が低減された。一方、比較例に示す従来の技術である曝気法の場合には、注入井戸から0.5mの地点で初期に一時的な酸素濃度の増加が見られたものの、その後は、2mg/Lを下回り、好気性微生物の活動に十分な酸素を供給できなかった。原因として注入井戸において曝気をしたことによって気泡が井戸周囲にたまり、以後の水及び酸素の移動が妨げられたためと考えられる。以上の結果から微生物による地下水中の鉱物油、特にはベンゼン類の浄化に本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法が有効であることを実証することができた。
【実施例2】
【0028】
本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法によって地下水中の鉱物油を無害化した事例を示す。
鉱物油によって汚染された地下水の原位置浄化において、添加剤による浄化効果を実証するため、鉱物油によって地下水汚染が確認されているサイトにおいてパイロット試験を実施した。パイロット試験現場は、平面領域が縦10m×横10mで、地下水位は1.5m、地表からの対象層厚が3mの範囲である。
この試験においては、鉱物油については、全石油系炭化水素(以下、TPHと表記する。)の濃度、DO濃度(mg/L)、ORP値(mV)をパラメータとして測定した。TPH濃度は、水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(以下、GC−FIDと表記する)を使用して測定した。この試験において使用した添加剤は、ペプトン2kg、トレオニン2kg、リボフラビン1kg、リン酸水素二アンモニウム220kg、塩化カリウム30kg、塩化ナトリウム5kg、塩化マグネシウム5kg、燐酸水素二カリウム30kg、ソルビタン脂肪酸エステル20kgの混合物である。
【0029】
現場において水道水30トンにこの添加剤をタンクにおいて混合しながら注入井戸から地下水に滴下し、同時に水道水に酸素を平均30mg/Lで溶解させて3?/分の流速で地下水に継続的に注入した。当該現場土壌の透水係数は、1.4×10−3cm/秒であったので、井戸への自然流下方式によって注入を実施した。注入井戸から地下水流の下流2mの位置に設置した観測井戸において、定期的にTPH濃度及びDO濃度(mg/L)、ORP値(mV)、pHを測定した。実施例2における各パラメータの測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2から添加剤の注入によって汚染地域のDOとORPが微生物による好気分解に好適な条件となって汚染の分解環境が形成され、試験期間中維持されたことが分かる。対象となる鉱物油は、試験開始から30日後には、定量下限以下まで濃度が低減された。以上の結果から本発明の鉱物油の無害化剤及び本発明の鉱物油の無害化方法が、微生物による地下水中の鉱物油の浄化に有効であることを実証することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプトン、酵母エキス、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、トレオニン、バリンの1つ以上とマンガン、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ナトリウム、カリウム、カルシウムとこれらの塩類の1つ以上とチアミン、p−アミノ安息香酸、コリン、アスコルビン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、イノシトール、葉酸、リポ酸、シアノコバラミンの1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成されることを特徴とする鉱物油の無害化剤。

【請求項2】
脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッドの1つ以上を加えることを特徴とする請求項1の鉱物油の無害化剤。
【請求項3】
対象とする媒体を好気状態にする工程と、ペプトン、酵母エキス、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、トレオニン、バリンの1つ以上とマンガン、亜鉛、鉄、マグネシウム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ナトリウム、カリウム、カルシウムとこれらの塩類の1つ以上とチアミン、p−アミノ安息香酸、コリン、アスコルビン酸、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、ニコチン酸、ビオチン、イノシトール、葉酸、リポ酸、シアノコバラミンの1つ以上とアンモニウム塩の1つ以上とリン酸塩の1つ以上から構成される鉱物油の無害化剤を供給する工程と、からなることを特徴とする鉱物油の無害化方法。
【請求項4】
脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ラムノリピッド、マンノシルエリスリトールリピッドの1つ以上を加える請求項3に記載の鉱物油の無害化方法。
【請求項5】
対象とする媒体の透水係数が10−4cm/s未満の場合は圧力をかける請求項3に記載の鉱物油の無害化方法。
【請求項6】
対象とする媒体を好気状態にする工程が、対象とする媒体のpHの範囲を5.5〜9.0に管理し、さらに溶存酸素濃度が5mg/L以上の水を注入する工程である請求項3に記載の鉱物油の無害化方法。
【請求項7】
対象とする媒体を好気状態にする工程が、対象とする媒体の溶存酸素濃度が2mg/L以上で、酸化還元電位値が0mV以上である好気状態にする工程である請求項3〜請求項6のいずれか一に記載の鉱物油の無害化方法。


【公開番号】特開2010−269244(P2010−269244A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123093(P2009−123093)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(302008467)エコサイクル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】