説明

銀−共役化合物複合体

【課題】導電性、電荷注入性に優れ、又、非極性溶媒への分散性に優れた銀−共役化合物複合体を提供する。
【解決手段】数平均のフェレー径が1000nm以下の銀粒子と、該銀粒子に吸着した重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを含む銀−共役化合物複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀−共役化合物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
銀微粒子と有機化合物との複合体は電子素子の電極、回路パターンなどを形成する材料として近年注目されている。特許文献1には、1分子中に1個以上の不飽和結合を有する有機化合物、具体的にはオレイルアミンを表面に有する平均粒子径20nm以下の銀粒子が、インクジェット法用インク材料として記載されている。特許文献2には、導電性部材の形成に用いることは記載されていないものの、平均粒径10nm以下の銀粒子の表面に、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン又はポリエチレンイミンからなる被覆層を設けた銀系粒子を含む銀コロイド溶液が、インクジェットプリンタのインク材料として記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−190025号公報
【特許文献2】特開2007−146279号公報
【0004】
しかし、上述の特許文献に記載の銀−有機化合物複合体は、銀粒子が本来有する導電性又は電荷注入性を損なう傾向がある。
【0005】
更に、特許文献2に記載の銀−有機化合物複合体を塗布用インクの調製に用いる場合、分散媒として非極性溶媒を用いることがあるが、該銀複合体は非極性溶媒中での分散性が悪く凝集してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、導電性、電荷注入性に優れ、又、非極性溶媒への分散性に優れた銀−共役化合物複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第一に、数平均のフェレー径が1000nm以下の銀粒子と、該銀粒子に結合した重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを含む銀−共役化合物複合体を提供する。
【0008】
本発明は第二に、銀化合物を、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物の存在下で還元させる工程を含む上記銀−共役化合物複合体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は第三に、数平均フェレー径1000nm以下の銀粒子を予め非共役化合物で被覆した銀粒子と、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを溶媒中で接触させる工程を含む、上記銀−共役化合物複合体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は第四に、前記銀−共役化合物複合体を含む分散液、電極材料及び有機電子素子を提供する。
【0011】
本発明は第五に、基体と、該基体上に形成された上記銀−共役化合物複合体を含む層とを有する積層構造体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の銀−共役化合物複合体は、導電性、電荷注入性に優れ、又、非極性溶媒への分散性に優れた銀−共役化合物複合体である。本発明の銀−共役化合物複合体は、電極、回路パターン等の導電性部材の作製において非極性溶媒を用いた塗布法を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた銀−共役化合物複合体(1)の発光スペクトルである。
【図2】実施例2で得られた銀−共役化合物複合体(2)の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。
<銀−共役化合物複合体>
本発明の銀−共役化合物複合体は、銀粒子と、その表面に吸着した共役化合物とから構成される複合体からなる粒子である。
【0015】
ここで「吸着(adsorption)」は、化学吸着でも物理吸着でもそれらが組み合わさったものでもよい。吸着の強さの観点からは、化学吸着が好ましい。化学吸着とは、吸着質と吸着媒の間で共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合、水素結合等の化学結合を伴って起こる吸着を意味する。物理吸着とは、ファンデルワールス力、静電引力、磁力等の相互作用により起こる吸着を意味する。本発明の銀−共役化合物複合体では、吸着質は共役化合物であり、吸着媒は銀粒子である。
【0016】
・銀粒子:
本発明の銀−共役化合物複合体において基質である銀粒子は、数平均のフェレー径(Feret径)が、通常、1000nm以下であるが、合成の容易さの観点から、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下である。また、前記銀粒子の数平均のフェレー径は、通常、1nm以上である。
【0017】
また、銀粒子の形状を規定する指標となるアスペクト比は、通常、1.5未満であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下である。本明細書において、アスペクト比とは、(最も長い径)/(最も短い径)を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には数平均値を意味する。
【0018】
・共役化合物:
前記共役化合物の重量平均分子量は、銀−共役化合物複合体の安定性の観点から、好ましくは3.0×102以上、より好ましくは5.0×102以上、更に好ましくは1.0×103以上であり、上限は、好ましくは1.0×108以下、より好ましくは1.0×10以下、更に好ましくは5.0×106以下である。従って、該重量平均分子量の範囲としては、好ましくは3.0×102〜1.0×108であり、より好ましくは5.0×102〜1.0×107であり、更に好ましくは1.0×103〜5.0×106である。前記共役化合物の重量平均分子量が3.0×102未満である場合、銀−共役化合物複合体に吸着した共役化合物が蒸発等で分離し易くなることがある。なお、本明細書において、化合物の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)を用いて測定したポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を意味する。
【0019】
本明細書において、共役化合物とは、主鎖中に複数の多重結合(例えば、二重結合及び三重結合)を有し、その内の隣接する多重結合が単結合で結合されることによって連なっている領域、又は、そのような多重結合の連なりの中に非共有電子対を有するヘテロ原子(例えば、窒素原子及び酸素原子)が介在している領域であって、領域内において共役π電子の非局在化が実現している領域を含む化合物を意味する。
【0020】
この共役化合物は、電子輸送性の観点から、
{(主鎖中の、共役π電子の非局在化領域に含まれる原子の数)/(主鎖上の全原子の個数)}×100%で計算される値が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることがとりわけ好ましい。
【0021】
本発明に用いられる共役化合物は、非水溶性であることが好ましい。
本発明において共役化合物が非水溶性であるとは、標準温度、標準圧力において、100mlの水に溶ける共役化合物の量が、20mg未満であることを意味する。その量が20mg以上である場合、銀−共役化合物複合体を水で洗うと共役化合物が銀粒子から離脱するので水洗が困難になることがある。
【0022】
本発明に用いられる共役化合物は、芳香族化合物であることが好ましい。
本発明に用いられる銀−共役化合物複合体中における共役化合物の割合は、該複合体の分散性の点で、銀−共役化合物複合体の1.0重量%以上であることが好ましく、5.0重量%以上であることが更に好ましい。銀粒子への共役化合物の吸着量が不十分であると、銀−共役化合物複合体が凝集し易い。
【0023】
本発明に用いられる共役化合物は、銀−共役化合物複合体の安定性の観点からは、ヘテロ原子を含む1価の基を有することが好ましい。なお、本願において、「ヘテロ原子」とは炭素及び水素以外の元素の原子を意味する。
【0024】
本発明に用いられる共役化合物としては、下記式(I)で表される1価の基、若しくは下記式(II)で表される繰り返し単位、又はこれらの両方を有する化合物が好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Ar1は(n1+1)価の芳香族基であり、R1は独立に単結合又は(m1+1)価の基であり、X1はヘテロ原子を含む1価の基である。m1及びn1は、同一又は異なり、1以上の整数である。R1、X1及びm1の各々についてであるが、複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、Ar2は(n2+2)価の芳香族基であり、R2は独立に単結合又は(m2+1)価の基であり、X2はヘテロ原子を含む1価の基である。m2及びn2は、同一又は異なり、1以上の整数である。R2、X2及びm2の各々についてであるが、複数ある場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0029】
上記式(II)で表される繰り返し単位の式量は、銀−共役化合物複合体の安定性の観点から、3.0×10以上であることが好ましく、5.0×10以上であることがより好ましく、1.0×10以上であることが更に好ましい。又、前記繰り返し単位の式量の上限に特に制限は無いが、繰り返し単位を構成するモノマーの合成上の観点及び銀−共役化合物複合体の安定性の観点から、好ましくは1.0×108以下であり、より好ましくは1.0×107以下、更に好ましくは5.0×106以下、特に好ましくは1.0×10以下、とりわけ好ましくは1.0×10以下である。前記繰り返し単位の式量が3.0×102未満である場合、銀−共役化合物複合体に吸着した共役化合物が蒸発等で分離し易くなることがある。
【0030】
上記繰り返し単位の式量とは、下記式(III)で表される分子の分子量から、水素原子の原子量2個分を除いたものである。
【0031】
【化3】

【0032】
上記式(I)中、Ar1で表される(n1+1)価の芳香族基は、例えば、下記の式(1)〜(57)で表される芳香族化合物から(n1+1)個の水素原子を取り除いた残りの原子団を意味する。この(n1+1)価の芳香族基Ar1は、少なくとも1個の置換基を有していてもよい。
【0033】
該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルチオカルボニル基、ヒドロカルビルジチオ基、水酸基、ヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、ヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、ヒドロカルビルホスフィノ基、ジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOMで表される基、式:−POMで表される基、式:−SOMで表される基(式中、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。)、及び式:−NRM’で表される基(式中、Rは、水素原子又は1価の炭化水素基を表し、M’は、アニオンを表す。)からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基が挙げられ、ハロゲン原子、1価の炭化水素基、カルボキシル基、アミノ基、1価の複素環式基、式:−COOMで表される基、式:−SOMで表される基が好ましく、1価の炭化水素基、カルボキシル基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジニル基、式:−COOMで表される基がより好ましく、1価の炭化水素基、カルボキシル基、1価の複素環式基、式:−COOMで表される基が更に好ましく、1価の炭化水素基、カルボキシル基、ピリジニル基、式:−COOMで表される基が特に好ましい。
【0034】
上記式(II)中、Ar2で表される(n2+2)価の芳香族基は、例えば、下記の式(1)〜(57)で表される芳香族化合物から(n2+2)個の水素原子を取り除いた残りの原子団を意味する。この(n2+2)価の芳香族基Ar2は、少なくとも1個の置換基を有していてもよい。該置換基としては、Arについて上述したものが挙げられる。
【0035】
下記の式(1)〜(57)で表される芳香族化合物の中では、合成の容易さの観点から、式(1)〜(8)、(17)、(24)〜(33)、(36)〜(51)、(55)で表される化合物が好ましく、式(1)〜(8)、(17)、(30)〜(33)、(36)〜(42)、(48)〜(51)、(55)で表される化合物がより好ましく、式(1)〜(8)で表される化合物が更に好ましく、式(3)、(8)で表される化合物が特に好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
(式中、Rは、前記と同じ意味を有する。)
上でAr及びAr2が有していてもよい置換基として挙げられた原子及び基は、本明細書を通じて次の意味で用いられる。
【0039】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Ar及びAr2の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0040】
「1価の炭化水素基」は置換又は非置換の1価の炭化水素基を意味し、非置換の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基等の炭素原子数3〜50のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の炭素原子数4〜50のビシクロアルキル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。置換1価の炭化水素基としては、これらの非置換1価の炭化水素基における水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、メルカプト基等により置換されものが挙げられる。
【0041】
Ar及びAr2の置換基としては、炭素原子数1〜50のアルキル基、炭素原子数6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基が更に好ましい。これらの基における水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子、メルカプト基等により置換されていてもよい。
【0042】
「ヒドロカルビルチオ基」、「ヒドロカルビルチオカルボニル基」、「ヒドロカルビルジチオ基」、「ヒドロカルビルオキシ基」及び「ヒドロカルビルカルボニル基」は、それぞれ、置換又は非置換のヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルチオカルボニル基、ヒドロカルビルジチオ基、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロカルビルカルボニル基を意味する。
【0043】
ここで、「ヒドロカルビルチオ基」は、非置換のヒドロカルビルチオ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルチオ基を意味する。
【0044】
非置換のヒドロカルビルチオ基としては、非置換の、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、ビシクロアルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基が挙げられる。
【0045】
非置換のアルキルチオ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、非置換のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ドデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0046】
非置換のシクロアルキルチオ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロへキシルチオ基、シクロノニルチオ基、シクロドデシルチオ基が挙げられる。
【0047】
非置換のビシクロアルキルチオ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルチオ基、アダマンチルチオ基が挙げられる。
【0048】
非置換のアルケニルチオ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルチオ基、プロペニルチオ基、3−ブテニルチオ基、2−ブテニルチオ基、2−ペンテニルチオ基、2−ヘキセニルチオ基、2−ノネニルチオ基、2−ドデセニルチオ基等が挙げられる。
【0049】
非置換のアリールチオ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、3−メチルフェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、4−エチルフェニルチオ基、4−プロピルフェニルチオ基、4−イソプロピルフェニルチオ基、4−ブチルフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基、4−ヘキシルフェニルチオ基、4−シクロヘキシルフェニルチオ基、4−アダマンチルフェニルチオ基、4−フェニルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0050】
非置換のアラルキルチオ基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルチオ基、1−フェニルエチルチオ基、2−フェニルエチルチオ基、1−フェニル−1−プロピルチオ基、1−フェニル−2−プロピルチオ基、2−フェニル−2−プロピルチオ基、3−フェニル−1−プロピルチオ基、4−フェニル−1−ブチルチオ基、5−フェニル−1−ペンチルチオ基、6−フェニル−1−ヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0051】
「ヒドロカルビルチオカルボニル基」は、非置換のヒドロカルビルチオカルボニル基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルチオカルボニル基を意味する。
【0052】
非置換のヒドロカルビルチオカルボニル基としては、例えば、非置換の、アルキルチオカルボニル基、シクロアルキルチオカルボニル基、ビシクロアルキルチオカルボニル基、アルケニルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アラルキルチオカルボニル基が挙げられる。
【0053】
非置換のアルキルチオカルボニル基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数2〜21、好ましくは2〜16、より好ましくは2〜11である。非置換のアルキルチオカルボニル基としては、例えば、メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、イソプロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、イソブチルチオカルボニル基、s−ブチルチオカルボニル基、t−ブチルチオカルボニル基、ペンチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、ヘプチルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、2−エチルヘキシルチオカルボニル基、ノニルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルチオカルボニル基、ドデシルチオカルボニル基、トリフルオロメチルチオカルボニル基が挙げられる。
【0054】
非置換のシクロアルキルチオカルボニル基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばシクロプロピルチオカルボニル基、シクロブチルチオカルボニル基、シクロペンチルチオカルボニル基、シクロへキシルチオカルボニル基、シクロノニルチオカルボニル基、シクロドデシルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0055】
非置換のビシクロアルキルチオカルボニル基は、通常炭素原子数5〜50であり、例えばノルボルニルチオカルボニル基、アダマンチルチオカルボニル基等が挙げられる。
非置換のアルケニルチオカルボニル基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばエテニルチオカルボニル基、プロペニルチオカルボニル基、3−ブテニルチオカルボニル基、2−ブテニルチオカルボニル基、2−ペンテニルチオカルボニル基、2−ヘキセニルチオカルボニル基、2−ノネニルチオカルボニル基、2−ドデセニルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0056】
非置換のアリールチオカルボニル基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルチオカルボニル基、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、3−メチルフェニルチオカルボニル基、4−メチルフェニルチオカルボニル基、4−エチルフェニルチオカルボニル基、4−プロピルフェニルチオカルボニル基、4−イソプロピルフェニルチオカルボニル基、4−ブチルフェニルチオカルボニル基、4−t−ブチルフェニルチオカルボニル基、4−ヘキシルフェニルチオカルボニル基、4−シクロヘキシルフェニルチオカルボニル基、4−アダマンチルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルフェニルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0057】
非置換のアラルキルチオカルボニル基は、通常炭素原子数8〜50であり、例えばフェニルメチルチオカルボニル基、1−フェニルエチルチオカルボニル基、2−フェニルエチルチオカルボニル基、1−フェニル−1−プロピルチオカルボニル基、1−フェニル−2−プロピルチオカルボニル基、2−フェニル−2−プロピルチオカルボニル基、3−フェニル−1−プロピルチオカルボニル基、4−フェニル−1−ブチルチオカルボニル基、5−フェニル−1−ペンチルチオカルボニル基、6−フェニル−1−ヘキシルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0058】
「ヒドロカルビルジチオ基」は、非置換のヒドロカルビルジチオ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で置換された置換ヒドロカルビルジチオ基を意味する。
非置換のヒドロカルビルジチオ基としては、アルキルジチオ基、シクロアルキルジチオ基、ビシクロアルキルジチオ基、アルケニルジチオ基、アリールジチオ基、アラルキルジチオ基が挙げられる。
【0059】
非置換のアルキルジチオ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、非置換のアルキルジチオ基としては、例えば、メチルジチオ基、エチルジチオ基、プロピルジチオ基、イソプロピルジチオ基、ブチルジチオ基、イソブチルジチオ基、s−ブチルジチオ基、t−ブチルジチオ基、ペンチルジチオ基、ヘキシルジチオ基、ヘプチルジチオ基、オクチルジチオ基、2−エチルヘキシルジチオ基、ノニルジチオ基、デシルジチオ基、3,7−ジメチルオクチルジチオ基、ドデシルジチオ基、トリフルオロメチルジチオ基等が挙げられる。
【0060】
非置換のシクロアルキルジチオ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルジチオ基、シクロブチルジチオ基、シクロペンチルジチオ基、シクロへキシルジチオ基、シクロノニルジチオ基、シクロドデシルジチオ基が挙げられる。
非置換のビシクロアルキルジチオ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えば、ノルボルニルジチオ基、アダマンチルジチオ基等が挙げられる。
非置換のアルケニルジチオ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルジチオ基、プロペニルジチオ基、3−ブテニルジチオ基、2−ブテニルジチオ基、2−ペンテニルジチオ基、2−ヘキセニルジチオ基、2−ノネニルジチオ基、2−ドデセニルジチオ基等が挙げられる。
【0061】
非置換のアリールジチオ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルジチオ基、1−ナフチルジチオ基、2−ナフチルジチオ基、2−メチルフェニルジチオ基、3−メチルフェニルジチオ基、4−メチルフェニルジチオ基、4−エチルフェニルジチオ基、4−プロピルフェニルジチオ基、4−イソプロピルフェニルジチオ基、4−ブチルフェニルジチオ基、4−t−ブチルフェニルジチオ基、4−ヘキシルフェニルジチオ基、4−シクロヘキシルフェニルジチオ基、4−アダマンチルフェニルジチオ基、4−フェニルフェニルジチオ基等が挙げられる。
【0062】
非置換のアラルキルジチオ基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルジチオ基、1−フェニルエチルジチオ基、2−フェニルエチルジチオ基、1−フェニルプロピルジチオ基、2−フェニル−1−メチルエチルジチオ基、1−フェニル−1−メチルエチルジチオ基、3−フェニルプロピルジチオ基、4−フェニルブチルジチオ基、5−フェニルペンチルジチオ基、6−フェニルヘキシルジチオ基等が挙げられる。
【0063】
「ヒドロカルビルオキシ基」は、非置換のヒドロカルビルオキシ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルオキシ基を意味する。
非置換のヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、非置換のアルコキシ基、シクロアルコキシ基、ビシクロアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基が挙げられる。
【0064】
非置換のアルコキシ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0065】
非置換のシクロアルコキシ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0066】
非置換のビシクロアルコキシ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
非置換のアルケニルオキシ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、2−ペンテニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基、2−ノネニルオキシ基、2−ドデセニルオキシ基等が挙げられる。
【0067】
非置換のアリールオキシ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−エチルフェノキシ基、4−プロピルフェノキシ基、4−イソプロピルフェノキシ基、4−ブチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、4−ヘキシルフェノキシ基、4−シクロヘキシルフェノキシ基、4−アダマンチルフェノキシ基、4−フェニルフェノキシ基等が挙げられる。
【0068】
非置換のアラルキルオキシ基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメトキシ基、1−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニル−1−プロポキシ基、1−フェニル−2−プロポキシ基、2−フェニル−2−プロポキシ基、3−フェニル−1−プロポキシ基、4−フェニル−1−ブトキシ基、5−フェニル−1−ペンチルオキシ基、6−フェニル−1−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0069】
「ヒドロカルビルカルボニル基」は、非置換のヒドロカルビルカルボニル基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で置換された置換ヒドロカルビルカルボニル基を意味する。
【0070】
非置換のヒドロカルビルカルボニル基としては、非置換の、アルキルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、ビシクロアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基が挙げられる。
【0071】
非置換のアルキルカルボニル基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、非置換のアルキルカルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、s−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ヘプチルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ノニルカルボニル基、デシルカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、トリフルオロメチルカルボニル基等が挙げられる。
【0072】
非置換のシクロアルキルカルボニル基としては、通常炭素原子数4〜50であり、例えばシクロプロピルカルボニル基、シクロブチルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、シクロノニルカルボニル基、シクロドデシルカルボニル基等が挙げられる。
【0073】
非置換のビシクロアルキルカルボニル基としては、通常炭素原子数5〜50であり、例えばノルボルニルカルボニル基、アダマンチルカルボニル基等が挙げられる。
【0074】
非置換のアルケニルカルボニル基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルカルボニル基、プロペニルカルボニル基、3−ブテニルカルボニル基、2−ブテニルカルボニル基、2−ペンテニルカルボニル基、2−ヘキセニルカルボニル基、2−ノネニルカルボニル基、2−ドデセニルカルボニル基等が挙げられる。
【0075】
非置換のアリールカルボニル基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルカルボニル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、2−メチルフェニルカルボニル基、3−メチルフェニルカルボニル基、4−メチルフェニルカルボニル基、4−エチルフェニルカルボニル基、4−プロピルフェニルカルボニル基、4−イソプロピルフェニルカルボニル基、4−ブチルフェニルカルボニル基、4−t−ブチルフェニルカルボニル基、4−ヘキシルフェニルカルボニル基、4−シクロヘキシルフェニルカルボニル基、4−アダマンチルフェニルカルボニル基、4−フェニルフェニルカルボニル基等が挙げられる。
【0076】
非置換のアラルキルカルボニル基は、炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルカルボニル基、1−フェニルエチルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基、1−フェニル−1−プロピルカルボニル基、1−フェニル−2−プロピルカルボニル基、2−フェニル−2−プロピルカルボニル基、3−フェニル−1−プロピルカルボニル基、4−フェニル−1−ブチルカルボニル基、5−フェニル−1−ペンチルカルボニル基、6−フェニル−1−ヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
【0077】
「ヒドロカルビルアミノ基」、「ジヒドロカルビルアミノ基」、「ヒドロカルビルホスフィノ基」、及び「ジヒドロカルビルホスフィノ基」は、それぞれ、置換又は非置換のヒドロカルビルアミノ基、置換又は非置換のジヒドロカルビルアミノ基、置換又は非置換のヒドロカルビルホスフィノ基及び置換又は非置換のジヒドロカルビルホスフィノ基を意味する。
【0078】
「ヒドロカルビルアミノ基」は、非置換のヒドロカルビルアミノ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で置換された置換ヒドロカルビルアミノ基を意味する。
非置換のヒドロカルビルアミノ基としては、非置換の、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、ビシクロアルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
【0079】
非置換のアルキルアミノ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基等が挙げられる。
【0080】
非置換のシクロアルキルアミノ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、シクロノニルアミノ基、シクロドデシルアミノ基等が挙げられる。
【0081】
非置換のビシクロアルキルアミノ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルアミノ基、アダマンチルアミノ基等が挙げられる。
非置換のアルケニルアミノ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルアミノ基、プロペニルアミノ基、3−ブテニルアミノ基、2−ブテニルアミノ基、2−ペンテニルアミノ基、2−ヘキセニルアミノ基、2−ノネニルアミノ基、2−ドデセニルアミノ基等が挙げられる。
【0082】
非置換のアリールアミノ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、2−メチルフェニルアミノ基、3−メチルフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、4−プロピルフェニルアミノ基、4−イソプロピルフェニルアミノ基、4−ブチルフェニルアミノ基、4−t−ブチルフェニルアミノ基、4−ヘキシルフェニルアミノ基、4−シクロヘキシルフェニルアミノ基、4−アダマンチルフェニルアミノ基、4−フェニルフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0083】
非置換のアラルキルアミノ基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルアミノ基、1−フェニルエチルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、1−フェニル−1−プロピルアミノ基、1−フェニル−2−プロピルアミノ基、2−フェニル−2−プロピルアミノ基、3−フェニル−1−プロピルアミノ基、4−フェニル−1−ブチルアミノ基、5−フェニル−1−ペンチルアミノ基、6−フェニル−1−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0084】
「ジヒドロカルビルアミノ基」としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−s−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基のようなのジアルキルアミノ基;メチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基のようなアルキルアリールアミノ基;ジ(4−メチルフェニル)アミノ基、ジ(2,3−キシリル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルトルイルアミノ基のようなのジアリールアミノ基が挙げられるように、同種又は異種の炭素原子数1〜20の1価の炭化水素基により二つの水素原子が置換されたアミノ基等が挙げられる。
【0085】
また、更に、ジヒドロカルビルアミノ基として、1−ピロリジニル、3−メチル−1−ピロリジニル、1−ピロリル、3−エチル−1−ピロリル、1−インドリル、1−ピペリジニル、3−メチル−1−ピペリジニル、1−ピペラジニル、4−メチル−1−ピペラジニル、1−イミダゾリジニル、4−モルホリニル等の5員環又は6員環の環状アミノ基等が挙げられる。
【0086】
「ヒドロカルビルホスフィノ基」は、非置換のヒドロカルビルホスフィノ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で炭化水素基部分が置換された置換モノヒドロカルビルホスフィノ基を意味する。
【0087】
非置換のヒドロカルビルホスフィノ基としては、例えば、非置換の、アルキルホスフィノ基、シクロアルキルホスフィノ基、ビシクロアルキルホスフィノ基、アルケニルホスフィノ基、アリールホスフィノ基、アラルキルホスフィノ基が挙げられる。
【0088】
非置換のアルキルホスフィノ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、アルキルホスフィノ基としては、例えばメチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、プロピルホスフィノ基、イソプロピルホスフィノ基、ブチルホスフィノ基、イソブチルホスフィノ基、s−ブチルホスフィノ基、t−ブチルホスフィノ基、ペンチルホスフィノ基、ヘキシルホスフィノ基、ヘプチルホスフィノ基、オクチルホスフィノ基、2−エチルヘキシルホスフィノ基、ノニルホスフィノ基、デシルホスフィノ基、3,7−ジメチルオクチルホスフィノ基、ドデシルホスフィノ基、トリフルオロメチルホスフィノ基が挙げられる。
【0089】
非置換のシクロアルキルホスフィノ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルホスフィノ基、シクロブチルホスフィノ基、シクロペンチルホスフィノ基、シクロへキシルホスフィノ基、シクロノニルホスフィノ基、シクロドデシルホスフィノ基が挙げられる。
【0090】
非置換のビシクロアルキルホスフィノ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルホスフィノ基、アダマンチルホスフィノ基が挙げられる。
【0091】
非置換のアルケニルホスフィノ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルホスフィノ基、プロペニルホスフィノ基、3−ブテニルホスフィノ基、2−ブテニルホスフィノ基、2−ペンテニルホスフィノ基、2−ヘキセニルホスフィノ基、2−ノネニルホスフィノ基、2−ドデセニルホスフィノ基が挙げられる。
【0092】
非置換のアリールホスフィノ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルホスフィノ基、1−ナフチルホスフィノ基、2−ナフチルホスフィノ基、2−メチルフェニルホスフィノ基、3−メチルフェニルホスフィノ基、4−メチルフェニルホスフィノ基、4−エチルフェニルホスフィノ基、4−プロピルフェニルホスフィノ基、4−イソプロピルフェニルホスフィノ基、4−ブチルフェニルホスフィノ基、4−t−ブチルフェニルホスフィノ基、4−ヘキシルフェニルホスフィノ基、4−シクロヘキシルフェニルホスフィノ基、4−アダマンチルフェニルホスフィノ基、4−フェニルフェニルホスフィノ基が挙げられる。
【0093】
非置換のアラルキルホスフィノ基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルホスフィノ基、1−フェニルエチルホスフィノ基、2−フェニルエチルホスフィノ基、1−フェニル−1−プロピルホスフィノ基、1−フェニル−2−プロピルホスフィノ基、2−フェニル−2−プロピルホスフィノ基、3−フェニル−1−プロピルホスフィノ基、4−フェニル−1−ブチルホスフィノ基、5−フェニル−1−ペンチルホスフィノ基、6−フェニル−1−ヘキシルホスフィノ基等が挙げられる。
【0094】
「ジヒドロカルビルホスフィノ基」は、非置換のジヒドロカルビルホスフィノ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で二つの炭化水素基部分が少なくともモノ置換された置換ジヒドロカルビルホスフィノ基を意味する。
【0095】
非置換のジヒドロカルビルホスフィノ基としては、例えば、非置換の、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、メチルエチルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、メチルプロピルホスフィノ基、ジイソプロピルホスフィノ基、ジブチルホスフィノ基、メチルブチルホスフィノ基、ジイソブチルホスフィノ基、ジ−s−ブチルホスフィノ基、ジ−t−ブチルホスフィノ基、ジペンチルホスフィノ基、ジヘキシルホスフィノ基、エチルヘキシルホスフィノ基、ジヘプチルホスフィノ基、ジオクチルホスフィノ基、ジノニルホスフィノ基、ジデシルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェニルホスフィノ基、エチルフェニルホスフィノ基、ジ−4−メチルフェニルホスフィノ基、ジ−2,3−キシリルホスフィノ基、フェニルトルイルホスフィノ基が挙げられるように、同種又は異種の炭素原子数1〜20の1価の炭化水素基によりホスフィノ基の二つの水素原子が置換されたホスフィノ基が挙げられる。
【0096】
「1価の複素環式基」とは、複素環式化合物の複素環に結合した水素原子1個を取り除いた残りの原子団である。前記複素環としては、ピリジン環、ピロリドン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等が挙げられ、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。前記1価の複素環式基はハロゲン原子、1価の炭化水素基等により置換されていてもよい。また、1価の複素環式基としては、1価の芳香族複素環式基が好ましい。
【0097】
「式:−COOMで表される基」、「式:−POMで表される基」、「式:−SOMで表される基」において、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。
【0098】
前記金属カチオンとしては、1価、2価又は3価のイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等の金属のイオンが挙げられる。
【0099】
前記アンモニウムカチオンが有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0100】
式:−COOM、−POM、又は−SOMで表される基全体の電荷が中和されるように、これらの基にはM以外の別の金属カチオンが伴ってもよく、また、アニオンが伴ってもよい。
【0101】
前記アニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、BF4-、PF6-、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオン等が挙げられ、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオンが好ましい。
【0102】
−NRM’中、Rは、水素原子又は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基のような1価の炭化水素基を表す。
【0103】
−NRM’中、M’は、アニオンを表す。このアニオンとしては、上述のとおりである。
【0104】
前記式(I)中のX及び式(II)中のX2で表されるヘテロ原子を含む1価の基は、吸着性、溶媒への分散性の観点から、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を少なくとも1個含む基が好ましい。
【0105】
このようなヘテロ原子を含む一価の基としては、例えば、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルチオカルボニル基、ヒドロカルビルジチオ基、水酸基、ヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、ヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ピロリドニル基、ヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、ヒドロカルビルホスフィノ基、ジヒドロカルビルホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基、ハロゲン原子、ホルミル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、モノヒドロカルビルカルバモイル基、ジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NR2で表される基、式:−B(OH)2で表される基、式:−BR2で表される基、式:
【0106】
【化6】

【0107】
(式中、R及びRは独立に1価の炭化水素基であるか、又は、RとRは結合して2価の炭化水素基を形成する。)
で表されるホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)3で表される基、ヒドロカルビルスルホ基、式:−S(=O)Rで表される基、スルフィノ基、ヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基、式:−NRC(=S)NR2で表される基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−S(=O)Mで表される基、式:−S(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、下記式(n−1)〜(n−13)で表される芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、
【0108】
【化7】

【0109】
及び、下記式(p−1)〜(p−9)で表される1価の基がより好ましい。
【0110】
−O−(R’O)−R’’ (p−1)
【0111】
【化8】

−S−(R’S)−R’’ (p−3)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (p−4)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (p−5)
−N{(R’)R’’}2 (p−6)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (p−7)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (p−8)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (p−9)
【0112】
(式中、Rは、水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、Mは金属カチオン又は置換若しくは非置換のアンモニウムカチオンを表し、M’はアニオンを表し、R’は置換若しくは非置換の2価の炭化水素基又は式−RO−(ここで、Rは炭素原子数1〜50のアルキレン基)を表し、R’’は水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、−COH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、ここでRcは置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素原子数6〜50のアリール基を表し、R’’’は置換若しくは非置換の3価の炭化水素基を表し、mは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表し、R’、R’’、及びR’’’の各々は複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0113】
これらのヘテロ原子を含む一価の基は、1種でも2種以上の組み合わせでも存在することができる。
【0114】
上述したヘテロ原子を含む一価の基の中でも、メルカプト基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルジチオ基、水酸基、ヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、ヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOM、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基で表される基、ハロゲン原子、ホルミル基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、式(n−1)で表される基、式(n−5)で表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基が更に好ましく、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOM、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基が特に好ましく、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリドニル基、スルホ基、ピリジニル基、式:−COOMで表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基がとりわけ好ましく、その中でも水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジニル基、式:−COOMで表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基が一層好ましく、ピロリドニル基、式:−COOMで表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基が更に一層好ましい。
【0115】
上に例示したヘテロ原子を含む1価の基の一部は、Ar及びArが有していてもよい置換基として説明し例示した通りである。それら以外のヘテロ原子を含む1価の基について説明するが、これらは本明細書を通じて次の意味で用いられる。
【0116】
「ヒドロカルビルオキシカルボニル基」としては、非置換のヒドロカルビルオキシカルボニル基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルオキシカルボニル基を意味する。
【0117】
非置換のヒドロカルビルオキシカルボニル基としては、非置換の、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、ビシクロアルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0118】
非置換のアルコキシカルボニル基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0119】
非置換のシクロアルコキシカルボニル基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばシクロプロポキシカルボニル基、シクロブトキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、シクロノニルオキシカルボニル基、シクロドデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0120】
非置換のビシクロアルコキシカルボニル基は、通常炭素原子数5〜50であり、例えばノルボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0121】
非置換のアルケニルオキシカルボニル基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルオキシカルボニル基、プロペニルオキシカルボニル基、3−ブテニルオキシカルボニル基、2−ブテニルオキシカルボニル基、2−ペンテニルオキシカルボニル基、2−ヘキセニルオキシカルボニル基、2−ノネニルオキシカルボニル基、2−ドデセニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0122】
非置換のアリールオキシカルボニル基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、3−メチルフェノキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、4−エチルフェノキシカルボニル基、4−プロピルフェノキシカルボニル基、4−イソプロピルフェノキシカルボニル基、4−ブチルフェノキシカルボニル基、4−t−ブチルフェノキシカルボニル基、4−ヘキシルフェノキシカルボニル基、4−シクロヘキシルフェノキシカルボニル基、4−アダマンチルフェノキシカルボニル基、4−フェニルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0123】
非置換のアラルキルオキシカルボニル基は、炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメトキシカルボニル基、1−フェニルエトキシカルボニル基、2−フェニルエトキシカルボニル基、1−フェニル−1−プロポキシカルボニル基、1−フェニル−2−プロポキシカルボニル基、2−フェニル−2−プロポキシカルボニル基、3−フェニル−1−プロポキシカルボニル基、4−フェニル−1−ブトキシカルボニル基、5−フェニル−1−ペンチルオキシカルボニル基、6−フェニル−1−ヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0124】
「ヒドロカルビルカルボニルオキシ基」は、非置換のヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルカルボニルオキシ基を意味する。
【0125】
非置換のヒドロカルビルカルボニルオキシ基としては、非置換の、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ビシクロアルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0126】
非置換のアルキルカルボニルオキシ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、s−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基、ノニルカルボニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、トリフルオロメチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0127】
非置換のシクロアルキルカルボニルオキシ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばシクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロブチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロへキシルカルボニルオキシ基、シクロノニルカルボニルオキシ基、シクロドデシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0128】
非置換のビシクロアルキルカルボニルオキシ基は、通常炭素原子数5〜50であり、例えばノルボルニルカルボニルオキシ基、アダマンチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0129】
非置換のアルケニルカルボニルオキシ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルカルボニルオキシ基、プロペニルカルボニルオキシ基、3−ブテニルカルボニルオキシ基、2−ブテニルカルボニルオキシ基、2−ペンテニルカルボニルオキシ基、2−ヘキセニルカルボニルオキシ基、2−ノネニルカルボニルオキシ基、2−ドデセニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0130】
非置換のアリールカルボニルオキシ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルカルボニルオキシ基、1−ナフチルカルボニルオキシ基、2−ナフチルカルボニルオキシ基、2−メチルフェニルカルボニルオキシ基、3−メチルフェニルカルボニルオキシ基、4−メチルフェニルカルボニルオキシ基、4−エチルフェニルカルボニルオキシ基、4−プロピルフェニルカルボニルオキシ基、4−イソプロピルフェニルカルボニルオキシ基、4−ブチルフェニルカルボニルオキシ基、4−t−ブチルフェニルカルボニルオキシ基、4−ヘキシルフェニルカルボニルオキシ基、4−シクロヘキシルフェニルカルボニルオキシ基、4−アダマンチルフェニルカルボニルオキシ基、4−フェニルフェニルカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0131】
非置換のアラルキルカルボニルオキシ基は、炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルカルボニルオキシ基、1−フェニルエチルカルボニルオキシ基、2−フェニルエチルカルボニルオキシ基、1−フェニルプロピルカルボニルオキシ基、2−フェニル−1−メチルエチルプロピルカルボニルオキシ基、1−フェニル−1−メチルエチルカルボニルオキシ基、3−フェニルプロピルカルボニルオキシ基、4−フェニルブチルカルボニルオキシ基、5−フェニルペンチルカルボニルオキシ基、6−フェニルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0132】
「ヒドロカルビルカルバモイル基」としては、非置換のヒドロカルビルカルバモイル基(即ち、モノヒドロカルビルカルバモイル基)及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で炭化水素基部分が置換された置換ヒドロカルビルカルバモイル基を意味する。
【0133】
非置換のヒドロカルビルカルバモイル基としては、例えば、非置換の、アルキルカルバモイル基、シクロアルキルカルバモイル基、ビシクロアルキルカルバモイル基、アルケニルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アラルキルカルバモイル基が挙げられる。
【0134】
非置換のアルキルカルバモイル基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−イソプロピルカルバモイル基、N−ブチルカルバモイル基、N−イソブチルカルバモイル基、N−s−ブチルカルバモイル基、N−t−ブチルカルバモイル基、N−ペンチルカルバモイル基、N−ヘキシルカルバモイル基、N−ヘプチルカルバモイル基、N−オクチルカルバモイル基、N−2−エチルヘキシルカルバモイル基、N−ノニルカルバモイル基、N−デシルカルバモイル基、N−3,7−ジメチルオクチルカルバモイル基、N−ドデシルカルバモイル基が挙げられる。置換ヒドロカルビルカルバモイル基の例として、N−トリフルオロメチルカルバモイル基が挙げられる。
【0135】
非置換のシクロアルキルカルバモイル基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばN−シクロプロピルカルバモイル基、N−シクロブチルカルバモイル基、N−シクロペンチルカルバモイル基、N−シクロへキシルカルバモイル基、N−シクロノニルカルバモイル基、N−シクロドデシルカルバモイル基が挙げられる。
【0136】
非置換のビシクロアルキルカルバモイル基は、通常炭素原子数5〜50であり、例えばN−ノルボルニルカルバモイル基、N−アダマンチルカルバモイル基が挙げられる。
【0137】
非置換のアルケニルカルバモイル基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばN−エテニルカルバモイル基、N−プロペニルカルバモイル基、N−3−ブテニルカルバモイル基、N−2−ブテニルカルバモイル基、N−2−ペンテニルカルバモイル基、N−2−ヘキセニルカルバモイル基、N−2−ノネニルカルバモイル基、N−2−ドデセニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0138】
非置換のアリールカルバモイル基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばN−フェルカルバモイル基、N−1−ナフチルカルバモイル基、N−(2−ナフチル)カルバモイル基、N−(2−メチルフェニル)カルバモイル基、N−(3−メチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−メチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−エチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−プロピルフェニル)カルバモイル基、N−(4−イソプロピルフェニル)カルバモイル基、N−(4−ブチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−t−ブチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−ヘキシルフェニル)カルバモイル基、N−(4−シクロヘキシルフェニル)カルバモイル基、N−(4−アダマンチルフェニル)カルバモイル基、N−(4−フェニルフェニル)カルバモイル基等が挙げられる。
【0139】
非置換のアラルキルカルバモイル基は、炭素原子数7〜50であり、例えばN−フェニルメチルカルバモイル基、N−(1−フェニルエチル)カルバモイル基、N−(2−フェニルエチル)カルバモイル基、N−(1−フェニルプロピル)カルバモイル基、N−(2−フェニル−1−メチルエチル)カルバモイル基、N−(1−フェニル−1−メチルエチル)カルバモイル基、N−(3−フェニルプロピル)カルバモイル基、N−(4−フェニルブチル)カルバモイル基、N−(5−フェニルペンチル)カルバモイル基、N−(6−フェニルヘキシルカルバモイル基等が挙げられる。
【0140】
「ジヒドロカルビルカルバモイル基」としては、非置換のジヒドロカルビルカルバモイル基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で炭化水素基部分が置換された置換ジヒドロカルビルカルバモイル基を意味する。
【0141】
非置換のジヒドロカルビルカルバモイル基としては、例えば、非置換の、ジアルキルカルバモイル基、ジシクロアルキルカルバモイル基、ビスビシクロアルキルカルバモイル基、ジアルケニルカルバモイル基、ジアリールカルバモイル基、ジアラルキルカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基が挙げられる。
【0142】
非置換のジアルキルカルバモイル基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N,N−ジプロピルカルバモイル基、N,N−ジイソプロピルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N,N−ジイソブチルカルバモイル基、N,N−ジ−s−ブチルカルバモイル基、N,N−ジ−t−ブチルカルバモイル基、N,N−ジペンチルカルバモイル基、N,N−ジヘキシルカルバモイル基、N,N−ジヘプチルカルバモイル基、N,N−ジオクチルカルバモイル基、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)カルバモイル基、N,N−ジノニルカルバモイル基、N,N−ジデシルカルバモイル基、N,N−ジ−3,7−ジメチルオクチルカルバモイル基、N,N−ジドデシルカルバモイル基、N−エチル−N−メチルカルバモイル基、N−エチル−N−プロピルカルバモイル基等が挙げられる。置換ジヒドロカルビルカルバモイル基の例として、例えばN,N−ビス(トリフルオロメチル)カルバモイル基が挙げられる。
【0143】
非置換のジシクロアルキルカルバモイル基は、通常炭素原子数7〜50であり、例えばN,N−ジシクロプロピルカルバモイル基、N,N−ジシクロブチルカルバモイル基、N,N−ジシクロペンチルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基、N,N−ジシクロノニルカルバモイル基、N,N−ジシクロドデシルカルバモイル基等が挙げられる。
【0144】
非置換のビスビシクロアルキルカルバモイル基は、通常炭素原子数9〜50であり、例えばN,N−ジノルボルニルカルバモイル基、N,N−ジアダマンチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0145】
非置換のジアルケニルカルバモイル基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばN,N−ジエテニルカルバモイル基、N,N−ジプロペニルカルバモイル基、N,N−ジ(3−ブテニル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−ブテニル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−ペンテニル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−ヘキセニル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−ノネニル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−ドデセニル)カルバモイル基等が挙げられる。
【0146】
非置換のジアリールカルバモイル基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばN,N−ジフェニルカルバモイル基、N,N−ジ(1−ナフチル)カルバモイルル基、N,N−ジ(2−ナフチル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−メチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(3−メチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−メチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−エチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−プロピルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−イソプロピルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−ブチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−t−ブチルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−ヘキシルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−シクロヘキシルフェニル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−アダマンチルフェニルカルバモイル基、N,N−ジ(4−フェニルフェニル)カルバモイル基が挙げられる。
【0147】
非置換のジアラルキルカルバモイル基は、炭素原子数7〜50であり、例えばN,N−ジ(フェニルメチル)カルバモイル基、N,N−ジ(1−フェニルエチル)カルバモイル基、N,N−ジ(2−フェニルエチル)カルバモイル基、N,N−ジ(1−フェニルプロピル)カルバモイル基、N,N−ジ−(2−フェニル−1−メチルエチル)カルバモイル基、N,N−ジ−(1−フェニル−1−メチルエチル)カルバモイル基、N,N−ジ(3−フェニルプロピル)カルバモイル基、N,N−ジ(4−フェニルブチル)カルバモイル基、N,N−ジ(5−フェニルペンチル)カルバモイル基、N,N−ジ(6−フェニルヘキシル)カルバモイル基、N−フェニルエチル−N−フェニルメチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0148】
非置換のN−アルキル−N−アリールカルバモイル基は、炭素原子数7〜50であり、例えば、N−メチル−N−フェニルカルバモイル基、N−エチル−N−フェニルカルバモイル基、N−プロピル−N−フェニルカルバモイル基、N−イソプロピル−N−フェニルカルバモイル基、N−ブチル−N−フェニルカルバモイル基、N−メチル−N−ナフチルカルバモイル基、N−メチル−N−(2−メチルフェニル)カルバモイル基が挙げられる。
【0149】
−C(=S)NR、−BR中、Rは、水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基を表す。
【0150】
「ホウ酸エステル残基」は、式:
式:
【0151】
【化9】

【0152】
(式中、R及びRは独立に1価の炭化水素基であるか、又は、RとRは結合して2価の炭化水素基を形成する。1価の炭化水素基としては炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアリール基が挙げられ、2価の炭化水素基としては、炭素原子数2〜10のアルキレン基、フェニレン基が挙げられる。)
で表され、以下の式で表される基が好ましい。
【0153】
【化10】

【0154】
式:−Si(OR)で表される基において、Rは、水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基を表す。
【0155】
「ヒドロカルビルスルホ基」としては、非置換のヒドロカルビルスルホ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基で置換された置換ヒドロカルビルスルホ基を意味する。
【0156】
非置換のヒドロカルビルスルホ基としては、例えば、非置換の、アルキルスルホ基、シクロアルキルスルホ基、ビシクロアルキルスルホ基、アルケニルスルホ基、アリールスルホ基、アラルキルスルホ基が挙げられる。
【0157】
非置換のアルキルスルホ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、メチルスルホ基、エチルスルホ基、プロピルスルホ基、イソプロピルスルホ基、ブチルスルホ基、イソブチルスルホ基、s−ブチルスルホ基、t−ブチルスルホ基、ペンチルスルホ基、ヘキシルスルホ基、ヘプチルスルホ基、オクチルスルホ基、2−エチルヘキシルスルホ基、ノニルスルホ基、デシルスルホ基、3,7−ジメチルオクチルスルホ基、ドデシルスルホ基が挙げられる。置換アルキルスルホ基としては、例えばトリフルオロメチルスルホ基が挙げられる。
【0158】
非置換のシクロアルキルスルホ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルスルホ基、シクロブチルスルホ基、シクロペンチルスルホ基、シクロへキシルスルホ基、シクロノニルスルホ基、シクロドデシルスルホ基等が挙げられる。
【0159】
非置換のビシクロアルキルスルホ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルスルホ基、アダマンチルスルホ基等が挙げられる。
【0160】
非置換のアルケニルスルホ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルスルホ基、プロペニルスルホ基、3−ブテニルスルホ基、2−ブテニルスルホ基、2−ペンテニルスルホ基、2−ヘキセニルスルホ基、2−ノネニルスルホ基、2−ドデセニルスルホ基等が挙げられる。
【0161】
非置換のアリールスルホ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルスルホ基、1−ナフチルスルホ基、2−ナフチルスルホ基、2−メチルフェニルスルホ基、3−メチルフェニルスルホ基、4−メチルフェニルスルホ基、4−エチルフェニルスルホ基、4−プロピルフェニルスルホ基、4−イソプロピルフェニルスルホ基、4−ブチルフェニルスルホ基、4−t−ブチルフェニルスルホ基、4−ヘキシルフェニルスルホ基、4−シクロヘキシルフェニルスルホ基、4−アダマンチルフェニルスルホ基、4−フェニルフェニルスルホ基等が挙げられる。
【0162】
非置換のアラルキルスルホ基は、炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルスルホ基、1−フェニルエチルスルホ基、2−フェニルエチルスルホ基、1−フェニルプロピルスルホ基、2−フェニル−1−メチルエチルスルホ基、1−フェニル−1−メチルエチルスルホ基、3−フェニルプロピルスルホ基、4−フェニルブチルスルホ基、5−フェニルペンチルスルホ基、6−フェニルヘキシルスルホ基等が挙げられる。
【0163】
−S(=O)R中、Rは、水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基を表す。
【0164】
「ヒドロカルビルスルフィノ基」としては、非置換のヒドロカルビルスルフィノ基及び例えばハロゲン原子、メルカプト基等で置換された置換ヒドロカルビルスルフィノ基を意味する。
【0165】
非置換のヒドロカルビルスルフィノ基としては、例えば、非置換の、アルキルスルフィノ基、シクロアルキルスルフィノ基、ビシクロアルキルスルフィノ基、アルケニルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、アラルキルスルフィノ基が挙げられる。
【0166】
非置換のアルキルスルフィノ基は直鎖状でも分岐していてもよく、通常炭素原子数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10であり、例えば、メチルスルフィノ基、エチルスルフィノ基、プロピルスルフィノ基、イソプロピルスルフィノ基、ブチルスルフィノ基、イソブチルスルフィノ基、s−ブチルスルフィノ基、t−ブチルスルフィノ基、ペンチルスルフィノ基、ヘキシルスルフィノ基、ヘプチルスルフィノ基、オクチルスルフィノ基、2−エチルヘキシルスルフィノ基、ノニルスルフィノ基、デシルスルフィノ基、3,7−ジメチルオクチルスルフィノ基、ドデシルスルフィノ基、トリフルオロメチルスルフィノ基等が挙げられる。
【0167】
非置換のシクロアルキルスルフィノ基は、通常炭素原子数3〜50であり、例えばシクロプロピルスルフィノ基、シクロブチルスルフィノ基、シクロペンチルスルフィノ基、シクロへキシルスルフィノ基、シクロノニルスルフィノ基、シクロドデシルスルフィノ基等が挙げられる。
【0168】
非置換のビシクロアルキルスルフィノ基は、通常炭素原子数4〜50であり、例えばノルボルニルスルフィノ基、アダマンチルスルフィノ基等が挙げられる。
【0169】
非置換のアルケニルスルフィノ基は、通常炭素原子数2〜50であり、例えばエテニルスルフィノ基、プロペニルスルフィノ基、3−ブテニルスルフィノ基、2−ブテニルスルフィノ基、2−ペンテニルスルフィノ基、2−ヘキセニルスルフィノ基、2−ノネニルスルフィノ基、2−ドデセニルスルフィノ基等が挙げられる。
【0170】
非置換のアリールスルフィノ基は、通常炭素原子数6〜50であり、例えばフェニルスルフィノ基、1−ナフチルスルフィノ基、2−ナフチルスルフィノ基、2−メチルフェニルスルフィノ基、3−メチルフェニルスルフィノ基、4−メチルフェニルスルフィノ基、4−エチルフェニルスルフィノ基、4−プロピルフェニルスルフィノ基、4−イソプロピルフェニルスルフィノ基、4−ブチルフェニルスルフィノ基、4−t−ブチルフェニルスルフィノ基、4−ヘキシルフェニルスルフィノ基、4−シクロヘキシルフェニルスルフィノ基、4−アダマンチルフェニルスルフィノ基、4−フェニルフェニルスルフィノ基等が挙げられる。
【0171】
非置換のアラルキルスルフィノ基は、炭素原子数7〜50であり、例えばフェニルメチルスルフィノ基、1−フェニルエチルスルフィノ基、2−フェニルエチルスルフィノ基、1−フェニルプロピルスルフィノ基、2−フェニル−1−メチルエチルスルフィノ基、1−フェニル−1−メチルスルフィノ基、3−フェニルプロピルスルフィノ基、4−フェニルブチルスルフィノ基、5−フェニルペンチルスルフィノ基、6−フェニルヘキシルスルフィノ基等が挙げられる。
【0172】
式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基、式:−NRC(=S)NR2で表される基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、下記式(n−1)〜(n−13)で表される芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団中、Rは水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基を表し、Mは、金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’はアニオンを表す。R、M及びM’は上述のとおりである。
【0173】
ヘテロ原子を含む1価の基中、R’は置換若しくは非置換の2価の炭化水素基又は式:−RO−(ここで、Rは炭素原子数1〜50の、好ましくは1〜10のアルキレン基)を表し、R’’は水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、−COH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CN又は−C(=O)NRc2を表し、ここでRcは置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素原子数6〜50のアリール基を表し、R’’’は置換若しくは非置換の3価の炭化水素基を表し、mは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表し、R’、R’’、及びR’’’のおのおのは複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0174】
R’で表される2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数1〜50の2価の飽和炭化水素基、エテニレン基、プロペニレン基、2−ブテニレン基、3−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数2〜50のアルケニレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基等の炭素原子数3〜50の2価のシクロアルキレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数4〜50の2価のビシクロアルキレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数6〜50のアリーレン基が挙げられる。また、上記のアルキレンオキシ基としては、例えば、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、ペンチレンオキシ基、ヘキシレンオキシ基等の炭素原子数1〜50のアルキレンオキシ基が挙げられる。
【0175】
R’’で表される1価の炭化水素基は前記定義の通りであり、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基が好ましい。特に、共役化合物の溶媒への溶解性の観点からは、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基がより好ましい。
【0176】
R’’’で表される3価の炭化水素基は置換又は非置換の3価の炭化水素基を意味し、通常炭素原子数1〜50、好ましくは1〜30のものである。例えばメタントリイル基、エタントリイル基、1,2,3−プロパントリイル基、1,2,4−ブタントリイル基、1,2,5−ペンタントリイル基、1,3,5−ペンタントリイル基、1,2,6−ヘキサントリイル基、1,3,6−ヘキサントリイル基のような炭素原子数1〜20の非置換アルカントリイル基、及びこれらの基の中の少なくとも1個の水素原子が置換された置換アルカントリイル;1,2,3−ベンゼントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基のような炭素原子数6〜30の非置換の3価芳香族環式基、及びこれらの基の中の少なくとも1個の水素原子が置換されたものが挙げられる。共役化合物の溶媒への溶解性の観点からは、メタントリイル基、エタントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基が好ましい。
【0177】
mは1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜15が更に好ましく、6〜10がとりわけ好ましい。
qは0以上の整数を表す。qは、式(p−3)においては、0〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜10が更に好ましく、6〜10がとりわけ好ましい。qは、式(p−4)〜(p−7)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜10が更に好ましく、0〜5がとりわけ好ましい。qは、式(p−8)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、3〜20が更に好ましく、3〜10がとりわけ好ましい。qは、式(p−9)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜15がより好ましく、0〜10が更に好ましい。
【0178】
cは、共役化合物の溶媒への溶解性の観点からは、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
【0179】
前記式(I)中、R1で表される(m1+1)価の基としては、前記1価の炭化水素基及び前記1価の複素環式基のいずれかからm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられ、好ましくは、アルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、アリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基で置換されたアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基で置換されたアリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0180】
ここで、アルキル基及びアリール基としては、それぞれ、1価の炭化水素基の説明において上述した置換又は非置換のアルキル基及び置換又は非置換のアリール基が挙げられる。特に述べると、非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等が挙げられ、非置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基等が挙げられる。
【0181】
1価の複素環式基は上述した通りである。
1価の複素環式基で置換されたアルキル基としては、例えば2−ピリジニルメチル基、3−ピリジニルメチル基、4−ピリジニルメチル基、3−ピリダジニルメチル基、4−ピリダジニルメチル基、2−ピリミジニルメチル基、4−ピリミジニルメチル基、5−ピリミジニルメチル基、2−ピラジニルメチル基、2−トリアジニルメチル基、キノリルメチル基、キノキサリニルメチル基、1,10−フェナントロリニルメチル基、2−ピリジニルエチル基、3−ピリジニルエチル基、4−ピリジニルエチル基、3−ピリダジニルエチル基、4−ピリダジニルエチル基、2−ピリミジニルエチル基、4−ピリミジニルエチル基、5−ピリミジニルエチル基、2−ピラジニルエチル基、2−トリアジニルエチル基、キノリルエチル基、キノキサリニルエチル基、1,10−フェナントロリニルエチル基等の炭素原子数3〜30の基等が挙げられる。
【0182】
1価の複素環式基で置換されたアリール基としては、2−ピリジニルフェニル基、3−ピリジニルフェニル基、4−ピリジニルフェニル基、3−ピリダジニルフェニル基、4−ピリダジニルフェニル基、2−ピリミジニルフェニル基、4−ピリミジニルフェニル基、5−ピリミジニルフェニル基、2−ピラジニルフェニル基、2−トリアジニルフェニル基、キノリルフェニル基、キノキサリニルフェニル基、1,10−フェナントロリニルフェニル基等の炭素原子数9〜30の基等が挙げられる。
【0183】
前記式(II)中、R2で表される(m2+1)価の基としては、前記1価の炭化水素基及び前記1価の複素環式基のいずれかからm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられ、好ましくは、アルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、アリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環式基で置換されたアリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。アルキル基、アリール基、1価の複素環式基、1価の複素環式基で置換されたアルキル基、1価の複素環式基で置換されたアリール基は上述した通りである。
【0184】
本発明に用いられる共役化合物の具体例としては、以下の式(a−1)〜(a−35)、(b−1)〜(b−39)、(c−1)〜(c−38)、(d−1)〜(d−48)、(e−1)〜(e−16)、(f−1)〜(f−35)、(g−1)〜(g−24)で表される繰り返し単位を有する共役化合物が挙げられる。これらの式中、n3は2以上の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましく、6〜10の整数が更に好ましい。n4は1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、2〜6の整数が更に好ましい。これらの式中、Rは前記の通り、水素原子又は1価の炭化水素基を表し、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が更に好ましい。
【0185】
【化11】

【0186】
【化12】

【0187】
【化13】

【0188】
【化14】

【0189】
【化15】

【0190】
【化16】

【0191】
【化17】

【0192】
【化18】

【0193】
共役化合物としては、銀粒子への吸着性、溶媒への分散性、導電性、電荷注入性がより優れるので、式(a−1)〜(a−7)、(a−10)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−35)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)〜(b−16)、(b−22)、(b−31)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)、(c−30)〜(c−38)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)〜(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)〜(d-48)、(e−1)〜(e−3)、(e−5)〜(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)〜(f−16)、(f−22)、(f−31)〜(f−35)、(g−1)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される繰り返し単位を有する共役化合物が好ましく、式(a−1)〜(a−3)、(a−5)、(a−7)、(a−10)、(a−12)、(a−14)〜(a−19)、(a−21)〜(a−27)、(a−29)〜(a−33)、(b−1)〜(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−15)、(b−16)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−15)、(c−17)、(c−20)〜(c−22)、(c−24)〜(c−27)、(c−29)〜(c−38)、(d−1)〜(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−15)、(d−16)、(d−22)、(d−31)〜(d−39)、(d−41)、(d−42)、(d−47)、(d−48)、(e−1)、(e−5)〜(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)〜(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−15)、(f−16)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)〜(g−13)、(g−16)〜(g−24)で表される繰り返し単位を有する共役化合物がより好ましく、式(a−1)、(a−3)、(a−7)、(a−10)、(a−14)、(a−15)、(a−17)、(a−19)、(a−22)、(a−23)、(a−25)〜(a−27)、(a−30)、(a−31)、(b−1)、(b−2)、(b−5)、(b−6)、(b−9)、(b−11)、(b−13)、(b−22)、(b−34)〜(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−13)(c−15)、(c−20)〜(c−22)、(c−25)〜(c−27)、(c−30)〜(c−33)、(d−1)、(d−2)、(d−5)、(d−6)、(d−9)、(d−11)、(d−13)、(d−22)、(d−31)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−47)、(d−48)、(e−1)、(e−5)、(e−7)、(e−8)、(e−11)、(e−12)、(e−15)、(e−16)、(f−1)、(f−2)、(f−5)、(f−6)、(f−9)、(f−11)、(f−13)、(f−22)、(f−31)、(f−34)、(f−35)、(g−1)〜(g−3)、(g−6)、(g−7)、(g−9)〜(g−13)、(g−18)〜(g−21)で表される繰り返し単位を有する共役化合物が更に好ましく、式(a−3)、(a−14)、(a−22)、(a−17)、(a−25)、(a−30)、(a−31)、(b−6)、(b−22)、(b−34)〜(b−37)、(b−39)、(c−1)〜(c−4)、(c−15)、(c−22)、(c−27)、(c−33)、(d−6)、(d−22)、(d−34)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−48)、(e−1)、(e−5)、(e−8)、(e−12)、(e−15)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−6)、(g−7)、(g−10)〜(g−12)、(g−18)〜(g−21)で表される繰り返し単位を有する共役化合物が特に好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−35)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(c−33)、(d−6)、(d−34)、(d−36)〜(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−48)、(f−6)、(f−34)、(g−2)、(g−10)〜(g−12)で表される繰り返し単位を有する共役化合物がとりわけ好ましく、式(b−6)、(b−34)、(b−37)、(c−1)〜(c−4)、(c−33)、(d−38)、(d−41)、(d−42)、(d−48)、で表される繰り返し単位を有する共役化合物が殊更に好ましく、式(c−33)、(d−41)、(d−48)で表される繰り返し単位を有する共役化合物がとりわけ特に好ましい。
【0194】
繰り返し単位を有する共役化合物の前記の例のうち、2つの結合のうちの一つを、水素原子に置き換えたものは、式(I)で示された基の例となる。
【0195】
前記共役化合物は、前記式(I)で表される基、前記式(II)で表される繰り返し単位、又はこれらの両方を有する化合物であるが、更に、前記式(II)で表される繰り返
し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0196】
別の繰り返し単位としては、前記式(1)〜(57)及び前記式(n−1)〜(n−13)で表される芳香族化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価の炭化水素基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価の複素環式基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられ、前記芳香族化合物(好ましくは、式(1)〜(57)で表される化合物)から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価の炭化水素基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が好ましく、前記芳香族化合物(好ましくは、式(1)〜(57)で表される化合物)から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団がより好ましく、式(1)〜(8)、(17)、(24)〜(33)、(36)〜(51)、(55)、(56)で表される化合物が更に好ましく、式(1)〜(8)、(17)、(30)〜(33)、(36)〜(42)、(48)〜(51)、(55)、(56)で表される化合物が特に好ましく、式(1)〜(8)で表される化合物がとりわけ好ましく、式(3)、(8)で表される化合物がとりわけ特に好ましい。これらの原子団はハロゲン原子等により置換されていてもよい。式(II)で表される繰り返し単位は、下記式(h−1)〜(h−19)で挙げられる2価の基により結合していてもよく、好ましくは式(h−1)、式(h−3)〜(h−6)、式(h−9)、式(h−13)が挙げられ、より好ましくは式(h−9)、式(h−13)が挙げられる。前記異なる繰り返し単位を有する場合、共役化合物の共役を妨げない範囲で導入することが好ましい。
【0197】
【化19】

【0198】
(式中、Rは前記の通り、水素原子又は置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
本発明に用いられる共役化合物としては、次の1.〜3.が好ましい。これらの共役化合物は上述の意味において非水溶性である。
1.前記式(I)で表される基を有し、Ar1が水素原子又はハロゲン原子と結合した化合物。
2.前記式(II)で表される繰り返し単位を有する化合物。
3.前記式(I)で表される基を片末端又は両末端に有し、前記式(II)で表される繰り返し単位を有する化合物。
【0199】
前記2.の化合物を一例として具体的に説明すると、下記式:
【0200】
【化20】

【0201】
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、下記式:
【0202】
【化21】

【0203】
で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。なお、これらの高分子化合物は、芳香族化合物でもある。
共役化合物には、ドーパントをドープして使用することができる。このドーパントは、共役化合物100重量部あたり、1〜50重量部の割合で用いることが好ましい。
【0204】
ドーパントとしては、ハロゲン、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、ニトリル化合物、有機金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素、ハロゲン化合物としては、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素のようなハロゲン間化合物が挙げられる。ルイス酸としては、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素、無水硫酸等が挙げられる。プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸、及びカルボン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環式のカルボニル基を有するもの、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸が挙げられる。有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、又は環式炭化水素であって、スルホ基を有するもの、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に1つのスルホ基を有するスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等のスルホ基を複数個有するスルホン酸化合物が挙げられる。また、本発明においるドーパントとして、有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸が挙げられる。ニトリル化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が挙げられる。このような化合物としては、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、テトラブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体が挙げられる。アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。
【0205】
・銀−共役化合物複合体
本発明の銀−共役化合物複合体は、分光学的分析、熱分析、質量分析、元素分析等により分析を行うことで、吸着している共役化合物を検出することもできる。
本発明における分光学的分析とは、例えば、核磁気共鳴スペクトル法、赤外分光法、ラマン分光法、原子吸光分析法、アーク放電発光分析法、スパーク放電発光分析法、誘導結合プラズマ発光分析法、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法、紫外・可視分光法、蛍光分析法が挙げられ、熱分析とは、例えば、熱重量測定法、示差熱分析、示差走査熱量測定が挙げられ、質量分析とは、例えば、各種イオン化法を用いた質量分析法、元素分析等により、吸着している共役化合物を検出することもできる。
【0206】
本発明の銀−共役化合物複合体は、X線光電子分光法により求められる該複合体中に存在する全原子の個数を1としたときに、銀原子以外のヘテロ原子の個数の割合は、銀粒子へ吸着した共役化合物の分散性等の効果の点で、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.02以上であり、更に好ましくは0.025以上であり、特に好ましくは0.03以上であり、また、通常、上限は0.7である。
【0207】
本発明の銀−共役化合物複合体は、共役化合物の特性を銀粒子に与えることができる点で、X線光電子分光法により、純粋な金属銀では検出されない、共役化合物由来のピークが検出されることが好ましい。
【0208】
銀−共役化合物複合体をX線光電子分光法による測定に供する場合には、該銀−共役化合物複合体を、その表面に弱く付着している共役化合物が溶解可能な溶媒及び銀粒子に付着した他の化合物が溶解可能な溶媒により、5回以上洗浄した後に用いる。ここで洗浄は、試料である銀−共役化合物複合体を溶媒に添加するなどして接触させた後、攪拌、振盪、超音波分散を行い、必要に応じて遠心分離、上澄み除去、再分散、透析、ろ過、加熱等を行うことにより行うことができる。
【0209】
本発明において、ヘテロ原子とは、炭素原子、水素原子以外の元素を意味するが、合成の容易さや銀−共役化合物複合体の安定性の観点から、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びリン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子であることがより好ましい。
【0210】
本発明に用いられる共役化合物は、その安定性と発光性の観点から、ひいては複合体の安定性と発光性の観点から、バンドギャップが2.10eV以上であることが好ましく、より好ましくは2.20eV以上、更に好ましくは2.40eV以上、特に好ましくは2.60eV以上である。また、大気中において光電子分光法により(即ち、光電子分光装置を用いて)求めたイオン化ポテンシャルは、好ましくは5.20eV以上であり、より好ましくは5.25eV以上である。
【0211】
前記バンドギャップの値は、紫外・可視・近赤外分光法により(即ち、紫外・可視・近赤外分光装置を用いて)得られる吸収スペクトルの長波長側の吸収端から求めることができる。
本発明の銀−共役化合物複合体は通常粒子状であり、数平均のフェレー径が通常1100nm以下であり、700nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましい。粒径の下限は特に制限されないが、通常1nm以上である。
【0212】
<製造方法>
・製法1:
本発明の銀−共役化合物複合体は、例えば、数平均フェレー径1000nm以下の銀粒子を予め非共役化合物で被覆した銀粒子と、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを溶媒中で接触させる、例えば混合する、工程を含む方法で製造することができる。
【0213】
被覆銀粒子を使用すると、数平均フェレー径が1000nm以下の銀粒子を簡便に得ることができる点で有利である。
【0214】
この製造方法において、非共役化合物で被覆処理を行った被覆銀粒子を用いた場合には、得られる銀−共役化合物複合体は銀粒子、共役化合物の他に該非共役化合物を含む。該非共役化合物は該製造方法において共役化合物が銀粒子に吸着するのを媒介する役割を果たすと考えられ、非共役化合物のかなりの部分が共役化合物により置き換わる結果、共役化合物の少なくとも一部は銀粒子に直接吸着する。したがって、非共役化合物はこの役割を果たす十分な量存在すればよい。具体的には、該非共役化合物の該複合体中の含有量は0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上が更に好ましい。また、上限は99重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、50重量%以下が更に好ましく、30重量%以下が特に好ましく、10重量%以下がとりわけ好ましい。
【0215】
この製造方法で用いることができる非共役化合物とは、π電子の共役領域、即ち前述した共役化合物の定義における共役π電子の非局在化領域を有しない有機化合物を意味する。
【0216】
該非共役化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミド、ポリアクリル酸等が挙げられ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアリルアミドが好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミドがより好ましく、ポリビニルピロリドンが更に好ましい。
【0217】
非共役化合物による被覆処理は、例えば、非共役化合物を含む溶液に銀粒子を分散させればよく、また、非共役化合物の存在下で銀化合物を還元させる工程により合成してもよい。
【0218】
前記製造工程で用いる事ができる溶媒は、特に制限は無いが、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物が溶解する溶媒が好ましい。また、被覆銀粒子を用いる場合は、銀粒子に被覆している非共役化合物が溶解する溶媒が好ましい。例えばベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、水を使用することができる。これらの溶媒は、2種類以上を混合して用いてもよく、異なる溶媒で繰り返し接触させる工程を行ってもよい。
【0219】
本製法で用いられる重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物の溶液の濃度は、特に限定は無いが、銀粒子と共役化合物の吸着が進みやすくなる点から、10μmol/l以上が好ましく、50μmol/l以上がより好ましく、100μmol/l以上が更に好ましく、200μmol/l以上がとりわけ好ましい。上限は特に無いが、溶媒に共役化合物が溶解していれば良い。
【0220】
重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物の溶液が10mlの場合、銀粒子又は被覆銀粒子の量は、例えば、0.1mg以上が好ましく、1mg以上がより好ましく、5mg以上が更に好ましく、10mg以上がとりわけ好ましい。上限は通常10g程度であり、5g以下が好ましく、1g以下がより好ましく、100mg以下が更に好ましい。銀粒子又は被覆銀粒子の量が多い場合は、共役化合物との吸着が不十分となる可能性がある。
【0221】
・製法2:
本発明の銀−共役化合物複合体は、例えば、銀化合物を、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物の存在下で還元させる工程(以下、「還元工程」と言う。)を含む製造方法によっても得られる。
【0222】
銀化合物としては、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、硫化銀、酸化銀、硝酸銀、次亜塩素酸銀、亜塩素酸銀、塩素酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、リン酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等が挙げられ、銀化合物の還元剤に対する溶解性の観点から、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、リン酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀が好ましく、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、炭酸銀、テトラフルオロホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀がより好ましい。
これらの銀化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0223】
前記還元工程で用いてもよい還元剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の芳香環を有しない還元剤;フェノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、アニリン、チオフェノール、フェニルメチルチオール、フェニルエチルチオール、チオフェン、ヒドロキシチオフェン、チオフェンアルデヒド、フルフラール、ピロール及びこれらの誘導体等の芳香環を有する還元剤が挙げられ、それらの中でも、還元剤の安定性と還元性の観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、アニリン、チオフェノール、フェニルメチルチオール、フェニルエチルチオール、ヒドロキシチオフェンが好ましい。これらの還元剤が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。これらの還元剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0224】
前記還元工程では、溶媒として、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、N−メチルピロリドンを使用することができる。なお、上記の還元剤を溶媒として使用してもよい。
【0225】
前記還元工程は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化水素、又はこれらの両方の存在下で行われることが好ましい。
前記金属ハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化セシウム、塩化タングステン、塩化モリブデン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化スカンジウム、塩化チタン、塩化バナジウム、塩化クロム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化プラチナ、塩化スズ、塩化銀、臭化ナトリウム、臭化マグネシウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化鉄、臭化銅、臭化ニッケル、臭化銀、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銀等が挙げられ、溶解性の観点から、塩化リチウム、塩化セシウム、塩化タングステン、塩化モリブデン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化スカンジウム、塩化チタン、塩化バナジウム、塩化クロム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化プラチナ、塩化スズ、臭化鉄、臭化銅が好ましく、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化銀、塩化鉄、塩化ナトリウム、塩化銅がより好ましい。なお、これらの金属ハロゲン化物は、水和物であってもよい。
【0226】
前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられ、銀化合物との親和性の観点から、塩化水素が好ましい。
【0227】
なお、金属ハロゲン化物、ハロゲン化水素は、おのおの、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0228】
本発明の製造方法は、前記還元工程のみからなる1工程であっても、その他の工程を含む2以上の工程であってもよい。以下、好ましい実施形態である2以上の工程からなる製造方法を説明する。
【0229】
具体的には、前記還元工程と、該還元工程の前に前記芳香環を有する還元剤を加熱する加熱工程を有する製造方法であり、この製造方法は、還元剤の活性化という観点で好ましい。なお、この加熱工程では、還元工程と同様の溶媒を用いてもよい。
【0230】
まず、前記芳香環を有する還元剤を、必要に応じて溶媒に溶解させた後に、加熱(予備加熱)する。その後、加熱された還元剤に銀化合物を添加し、必要に応じて分散剤の存在下、該銀化合物を還元させる。こうして、所望の銀−共役化合物複合体を製造することができる。なお、加熱された還元剤に銀化合物を添加する際には、銀−共役化合物複合体が原料である銀粒子に戻ることを制御するため、金属ハロゲン化物及び/又はハロゲン化水素を添加してもよい。
【0231】
前記加熱工程は、酸素の存在下で行われることが好ましく、窒素と酸素とを、窒素:酸素=4:1の割合(体積基準)で混合したガス(空気で代用してもよい)の存在下で行われることがより好ましい。
【0232】
前記還元工程は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気で行われることが好ましい
前記加熱工程と前記還元工程における温度は、通常、40〜200℃であり、好ましくは、60〜190℃、より好ましくは100〜190℃である。なお、前記加熱工程と前記還元工程では、温度が異なっていてもよい。
【0233】
前記加熱工程に必要な時間は、通常、5分以上であり、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上であるが、上限は、通常、400分である。
【0234】
前記還元工程に必要な時間は、通常、5分以上であり、好ましくは10分以上、特に好ましくは15分以上であるが、上限は、通常、400分である。
【0235】
本発明の製造方法は、前記還元工程の後に、還元工程で得られた未精製の銀−共役化合物複合体を精製する精製工程を有していてもよい。この精製工程は、遠心分離、上澄み除去、再分散、洗浄、加熱、乾燥等により行うことができる。
【0236】
また、前記還元工程、前記精製工程で得られた銀−共役化合物複合体が分散液の状態である場合には、遠心分離、ろ過、蒸留等の方法により、固体の状態の銀−共役化合物複合体を得るための回収工程を有していてもよい。
【0237】
<分散液>
本発明の銀−共役化合物複合体は、そのまま使用してもよいが、塗布等の際の作業性を高めるために溶媒に分散させて、該複合体を含む分散液として使用することもできる。溶媒としては、非極性及び極性の有機溶媒を使用することができる。非極性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ジエチルエーテルが挙げられ、極性有機溶媒としては例えばアセトニトリル;N−メチルピロリドン;メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコールが挙げられる。本発明の銀−共役化合物複合体の分散液において、銀−共役化合物複合体の濃度は、好ましくは0.01〜75重量%であり、より好ましくは0.05〜50重量%であり、更に好ましくは0.1〜30重量%である。なお、この分散液には、本発明の銀−共役化合物複合体のほかに、分散安定剤、界面活性剤、粘度調整剤、腐食防止剤等を分散又は溶解させてもよい。
【0238】
本発明の分散液は、導電性塗料、熱伝導性塗料、粘着剤、接着剤、機能性コーティング材料として有用である。
【0239】
<積層構造体>
本発明の銀−共役化合物複合体は、積層構造体に用いることにより、電子素子等の製造に有用な材料となる。この積層構造体は、基体と、該基体上に形成された本発明の銀−共役化合物複合体を含む層とを有するものである。発光素子を一例として説明すると、基体とは、例えばガラス基板、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等からなるプラスチック基板であり、本発明の銀−共役化合物複合体を含む層は、陽極又は陰極のような電極として機能する。
【0240】
<用途>
以下、本発明の銀−共役化合物複合体の代表的な用途について説明する。
本発明の銀−共役化合物複合体は、導電性が優れている。そのため、本発明の銀−共役化合物複合体は、例えば、電極材料として用いることができる。
【0241】
本発明の銀−共役化合物複合体を上述した分散液の状態で導電性塗料として用いることができ、その場合施与に塗布方法を選択することによって、パターンニングされた導電性部位を作製することが可能である。この方法によれば、蒸着、スパッタリング、エッチング、メッキ等の工程を必要とせずに電極等を作製することができる。また、本発明の銀−共役化合物複合体は高い導電性と電荷注入性を有しているため、こうして得られた電極は、導電性と電荷注入性を両立したものである。この電極は、有機EL素子等の発光素子、有機トランジスタ、太陽電池等の光電変換素子等の有機電子素子のほか、発熱体、電磁波遮断フィルム、アンテナ、集積回路、帯電防止剤等に用いられる。塗布の際には上述した分散液の状態が適する。
【0242】
前記発光素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた発光層とを有するものであって、該電極に本発明の銀−共役化合物複合体が用いられたものである。この発光素子は、基板、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、インターレイヤー層等を更に有していてもよい。
【0243】
前記有機トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁されたゲート電極層を有するものであって、該電極に本発明の銀−共役化合物複合体が用いられたものである。この有機トランジスタは、基板、半導体層を更に有していてもよい。
【0244】
前記光電変換素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた有機層とを有するものであって、該電極に本発明の銀−共役化合物複合体が用いられたものである。この光電変換素子は、基板、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、インターレイヤー層、電化分離層等を更に有していてもよい。
【0245】
なお、如何なる用途であっても、本発明の銀−共役化合物複合体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0246】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0247】
−測定方法−
・重合体の構造分析はVarian社製300MHzNMRスペクトロメータ−を用いた、1H−NMR解析によって行った。また、測定は、20 mg/mlの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0248】
・重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入する。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。
【0249】
・得られた重合体のイオン化ポテンシャルは、大気中、光電子分光装置(理研計器株式会社製、商品名:AC2)で測定した。測定用の試料は、重合体の1重量%クロロホルム溶液を調製し、該溶液を回転数1000rpmで30秒間、石英基板上にスピンコートし、100℃で15分間乾燥させて作成した。
【0250】
・得られた重合体の吸収波長は、紫外・可視・近赤外分光装置(Varian社製、Cary 5E)で測定した。測定用の試料は重合体の1重量%クロロホルム溶液を調製し、回転数1000rpmで30秒間、石英基板上にスピンコートし、100℃で15分間乾燥させて作成した。
【0251】
・銀−共役化合物複合体の形状は、日本電子社製の走査型電子顕微鏡(商品名:JSM−5500)を用いて、倍率20000倍で撮影(この撮影の際に試料台の角度は0°、撮影箇所は任意の場所であり、試料作成時に配列させる等の操作はしなかった。)して得られた写真を目視で観察し確認した。数平均のフェレー径は、倍率20000倍の写真から200個以上の粒子を任意に抽出し、フェレー径を計測し、算術平均した値である。
【0252】
・銀−共役化合物複合体は、走査型X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製、商品名:PHI Quantera SXM)を用いてX線光電子分光スペクトルを測定し、表面組成分析を行った。分析手法はX線光電子分光法(以下、「XPS」と略す)であり、X線源はAlKα線(1486.6eV)、X線のスポット径は100μm、中和条件は中和電子銃・低速Arイオン銃使用した。銀−共役化合物複合体の試料をステンレス製のカップに詰めて測定を行った。
【0253】
・合成した銀−共役化合物複合体の固体状態の発光スペクトルを、蛍光分光光度計(JOBINYVON−SPEX社製、商品名:Fluorolog)を用いて測定した。
【0254】
<合成例1>(化合物(1)の合成)
500 mlの3つ口フラスコに、1−フェニル−2−ピロリドン4.11 g(25.5 mmol)を入れ、乾燥、窒素置換を行った。そこにクロロホルム100 mlを入れ、1‐フェニル−2−ピロリドンを該クロロホルムに溶解させた後、該フラスコに、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と言う。)50 mlに溶解させたN―ブロモスクシンイミド(以下、「NBS」と言う。)4.52 g(25.4 mmol)を仕込み、5時間撹拌した。得られた反応液に蒸留水150mlを加え、撹拌後、クロロホルムと蒸留水で分液し、有機層を回収、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶により精製し5.98 gの生成物を得た。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物Aと判断した。
【0255】
【化22】

【0256】
乾燥、窒素置換した200 mlの3つ口フラスコに、化合物A 5.80 g(24.1 mmol)、ジフェニルアミン4.28 g(25.3 mmol)、酢酸パラジウム 0.11 g(0.12 mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン0.07 g(0.24 mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド4.63 g(48.2 mmol)、及び脱水トルエンを50 ml仕込み、還流温度で4時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、反応液に蒸留水50mlを加え、蒸留水とクロロホルムで分液し、有機層を回収、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶により精製し7.32 gの生成物を得た。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物Bと判断した。
【0257】
【化23】

【0258】
乾燥、窒素置換を行った300 mlの3つ口フラスコに、化合物B 7.01 g(21.3mmol)を仕込み、それを脱水クロロホルム100 mlに溶解させた。ここにDMF50 mlに溶解させたNBS 7.39 g(41.5 mmol)を滴下ロートで仕込んだ。室温で5時間攪拌した。得られた反応溶液に蒸留水100mlを加え、反応液をクロロホルムと蒸留水で分液し、有機層を回収、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶により精製し9.84 gの生成物を得た。
生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物Cと判断した。
【0259】
【化24】

【0260】
乾燥、窒素置換を行った300 mlの3つ口フラスコに、化合物C 1.00 g(2.11 mmol)、ビスピナコレート・ジボロン(bis pinacolate dibron)1.34 g(5.28 mmol)、塩化パラジウム−1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体0.172 g(0.211 mmol)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.115 g(0.211 mmol)、及び酢酸カリウム2.07g(21.1 mmol)を仕込み、それらを脱水ジオキサン18mlに溶解させ、100℃で5時間攪拌した。5時間撹拌後、活性炭を1g入れて更に1時間撹拌した。反応液をセライトでろ過した後、濃縮した。得られた粗生成物を再結晶により精製し0.735gの生成物を得た。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物(1)と判断した。
【0261】
【化25】

【0262】
<合成例2>(化合物(2)の合成)
不活性雰囲気下、2,7−ジブロモフルオレノン(50 g)及びカテコール(345g)を混合し、130℃に昇温した。そこに、3−メルカプトプロピオン酸(1.96 g)及び硫酸(7 g)を添加し、130℃で1.5時間反応させた。反応液を、放冷後、水(2L)に滴下し、析出した結晶をろ過により回収した。得られた結晶をエタノールに溶解させ、ろ過をした後、ろ液を濃縮し、濃縮液を水に加えて再沈殿を行った。生じた固体をろ過により回収し、トルエンに溶解させ、ろ過をした後、エタノールを加え、溶液をヘキサンに滴下し、5℃に冷却した。生じた固体をろ過により回収し、減圧乾燥することで白色固体を得た。不活性雰囲気下、白色固体20g、トリエチレングリコールモノメチルエステルトシラート(72g)、無水炭酸カリウム(52g)、及びアセトニトリル(500mL)を混合し、加熱還流下、4時間攪拌した。放冷後、反応溶液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物を、酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィー、更にテトラヒドロフラン及び酢酸エチルの混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することで生成物を18g得た。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物(2)と判断した。
【0263】
【化26】

【0264】
<合成例3>(重合体(1)の合成)
アルゴン雰囲気下のフラスコに、化合物(1) 100 mg、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン 93 mg、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、Aldrich製)(以下、「Aliquat336」と言う。)6.87 mg、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム19.6 mg、及びトルエン10 mlを混合して、溶液を調製した。この溶液に2Mの炭酸ナトリウム水溶液(10 ml)を滴下し、100℃で20時間加熱しながら攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、メタノール300 mlに滴下し、攪拌したところ、固体が析出した。この固体をろ取し、乾燥させて、下記式:
【0265】
【化27】

【0266】
で表される繰り返し単位を有する化合物(以下、重合体(1)と言う。)を75.9mg得た。重合体(1)のポリスチレン換算の数平均分子量は5.1×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は9.2×10であった。重合体(1)の最大発光波長432nmであった。重合体(1)のイオン化ポテンシャルは5.29eV、バンドギャップは2.8eVであった。
【0267】
<合成例4>(重合体(2)の合成)
アルゴン雰囲気下のフラスコに、化合物(1) 393 mg、化合物(2) 530 mg、Aliquat336 40 mg、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム58 mg、及びトルエン10 mlを混合して、溶液を調製した。この溶液に2Mの炭酸ナトリウム水溶液(10 ml)を滴下し、100℃で6時間加熱しながら攪拌した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、メタノール300 mlに滴下し、1時間攪拌したところ、固体が析出した。この固体をろ取し、乾燥させて、下記式:
【0268】
【化28】

【0269】
で表される繰り返し単位を有する化合物(以下、重合体(2)と言う。)を568mg得た。重合体(2)のポリスチレン換算の数平均分子量は3.5×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.0×10であった。重合体(1)の最大発光波長は435nmであった。重合体(2)のイオン化ポテンシャルは5.29eV、バンドギャップは2.75eVであった。
【0270】
<合成例5>(化合物(3)の合成)
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン52.5g(0.16mol)、サリチル酸エチル154.8g(0.93mol)、及びメルカプト酢酸1.4g(0.016mol)を3000mLフラスコに入れ、該フラスコ内を窒素置換した。そこに、メタンスルホン酸(630mL)を添加し、混合物を75℃で終夜撹拌した。混合物を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌した。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄された固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させ、ろ別した。得られた固体(62.7g)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル p−トルエンスルホネート86.3g(0.27mmol)、炭酸カリウム62.6g(0.45mmol)、及び18−クラウン−67.2g(0.027mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(670 mL)に溶解させ、溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。得られた混合物を室温まで放冷し、氷水へ加え、1時間撹拌した。反応液にクロロホルム(300mL)を加えて分液抽出を行い、分離した有機層を濃縮することで、生成物を51.2g得た。収率31%。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物(3)と判断した。
【0271】
【化29】

【0272】
<合成例6>(化合物(4)の合成)
アルゴンガスで置換した1000mlのフラスコに、化合物(3)(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)、ジオキサン(400mL)を入れて混合し、110℃に加熱し、10時間加熱還流させた。放冷後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物をメタノールで3回洗浄した。沈殿物をトルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した。その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮することで、生成物を11.7g得た。生成物はH−NMRを用いて構造確認した。その結果、下記式で表される化合物(4)と判断した。
【0273】
【化30】

【0274】
<合成例7>(重合体(3)の合成)
【0275】
アルゴンガスで置換した100mlのフラスコに、化合物(3)(0.55g)、化合物(4)(0.61g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、及びトルエン(10mL)を入れて混合し、105℃に加熱した。得られた反応液に2M 炭酸ナトリウム水溶液(6mL)を滴下し、8時間還流させた。反応液に4−t−ブチルフェニルボロン酸(0.01g)を加え、6時間還流させた。次いで、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液(10mL、濃度:0.05g/mL)を加え、2時間撹拌した。混合溶液をメタノール300mL中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させ、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。得られた溶液をメタノール120ml、3重量%酢酸水溶液50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過し、テトラヒドロフラン20mlに溶解させた。こうして得られた溶液をメタノール200mlに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。カラムから回収したテトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、メタノール(200mL)に滴下し、析出した固体をろ過し、乾燥させることにより、重合体(以下、重合体(3)という。)を520mg得た。
【0276】
H−NMRの結果から重合体(3)は、下記式で表される繰り返し単位を有していた。
【0277】
【化31】

【0278】
重合体(3)のポリスチレン換算の数平均分子量は2.4×104であり、重量平均分子量は4.8×104であった。
【0279】
<合成例8>(重合体(4)の合成)
重合体(3)(200mg)を100mLフラスコに入れ、該フラスコ内を窒素置換した。そこに、テトラヒドロフラン(20mL)、及びエタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶解させた水溶液を添加し、55℃で6時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで下記式:
【0280】
【化32】

【0281】
で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、重合体(4)と言う。)を150mg得た。H−NMRスペクトルにより、重合体(3)内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。重合体(4)のポリスチレン換算の数平均分子量、重量平均分子量は重合体(3)と同様であった。重合体(4)の最大発光波長は426nmであった。重合体(4)のイオン化ポテンシャルは5.50eV、バンドギャップは2.80eVであった。
【0282】
<合成例9>
エチレングリコール15mLを入れた100mLフラスコを160℃のオイルバスに浸漬しながら、加熱を1時間行った。次いで、そこに、0.1mol/Lの硝酸銀−エチレングリコール溶液9mL、0.15mol/Lのポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と言う。シグマ−アルドリッチ製、カタログ記載の重量平均分子量:5.5×104)−エチレングリコール溶液9mL、及び2mmol/Lのトリスアセチルアセトナト鉄(III)−エチレングリコール溶液36μLを入れ、60分間攪拌したところ、被覆銀粒子の分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離し、沈殿物を取得した。取得した沈殿物を乾燥し、被覆銀粒子(以下、「被覆銀粒子A」と呼称する。)を得た。
【0283】
得られた被覆銀粒子AをSEMで観察しフェレー径を計測した結果、数平均のフェレー径は200nmであった。XPS測定を行った結果、銀粒子の表面にポリビニルピロリドンが吸着しているものであることが明らかとなった。
【0284】
<実施例1>(銀−共役化合物複合体の製造)
ベンジルアルコール5 mlを入れた50 mlフラスコを150℃のオイルバスに浸漬し、このベンジルアルコールを60分間空気でバブリングしながら、予備加熱を行った。
予備加熱後に、通気する気体を空気から窒素ガスに切り替えて5分後にバブリングを止めた。次いで、そこに、0.1Mの硝酸銀−ベンジルアルコール溶液1.5 mL、0.15 Mの重合体(1)−ベンジルアルコール溶液1.5 ml、及び4 mMの塩化銅2水和物−ベンジルアルコール溶液40 μlを入れ、120分間攪拌したところ、分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離し、沈殿物を回収した。回収した沈殿物をベンジルアルコールで洗浄、乾燥した後、XPS測定を行い、銀と重合体(1)との複合化を確認した。こうして得られた銀と重合体(1)との粒子状の複合体を、以下、銀−共役化合物複合体(1)と呼ぶ。該銀−共役化合物複合体(1)の全原子の個数を1としたときに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びリン原子を合計したヘテロ原子の個数の割合は0.13であった。銀−共役化合物複合体(1)をSEMで観察しフェレー径を計測した結果、数平均のフェレー径は205nm(従って、複合化前の銀粒子のフェレー径は、205nm以下であると認められる。)であった。
【0285】
この銀−共役化合物複合体(1)10 mgを6.2重量%のポリ(メチルメタクリレート)−クロロホルム溶液1 mlに分散させた。こうして得られた分散液をスピンコート法により石英基板上に塗布し、130℃のホットプレート上で乾燥させることにより成膜し、蛍光分光光度計で発光スペクトルを測定した。最大発光波長は432 nmであった。重合体(1)の最大発光波長とのずれはなかった。
【0286】
また、銀−共役化合物複合体(1)10mgとキシレン1mlとを混合し、超音波によりほぼ均一となるように分散させ、分散液を調製した。前記分散液を1時間放置したが、該分散液中の銀粒子複合体(1)は凝集することなく分散状態を保持していた。更に、銀−共役化合物複合体(1)の石英基板上に成膜した薄膜の導電性を、カスタム社製デジタルテスタCDM−03Dにて測定すると、導電性が良好であった。
【0287】
<実施例2>
ベンジルアルコール5 mlを入れた50 mlフラスコを150℃のオイルバスに浸漬し、このベンジルアルコールを60分間空気でバブリングしながら、予備加熱を行った。
予備加熱後に、通気する気体を空気から窒素ガスに切り替て5分後にバブリングを止めた。次いで、そこに、0.1 Mの硝酸銀−ベンジルアルコール溶液1.5 ml、0.15 Mの重合体(2)−ベンジルアルコール溶液1.5 ml、及び4 mMの塩化銅2水和物−ベンジルアルコール溶液40 μlを入れ、120分間攪拌したところ、分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離し、沈殿物を回収した。回収した沈殿物をベンジルアルコールで洗浄、乾燥した後XPS測定を行い、銀と重合体(2)の複合化を確認した。こうして得られた銀と重合体(2)との粒子状の複合体を、以下、銀−共役化合物複合体(2)と呼ぶ。該銀−共役化合物複合体(2)の全原子の個数を1としたときに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びリン原子を合計したヘテロ原子の個数の割合は0.14であった。銀−共役化合物複合体(2)をSEMで観察しフェレー径を計測した結果、数平均のフェレー径は98.0nm(従って、複合化前の銀粒子のフェレー径は、98.0nm以下であると認められる。)であった。
【0288】
この銀−共役化合物複合体(2) 10 mgを6.2重量%のポリ(メチルメタクリレート)―クロロホルム溶液1 mlに分散させた。こうして得られた分散液をスピンコート法により石英基板上に塗布し、130℃のホットプレート上で乾燥させることにより成膜し、蛍光分光光度計で発光スペクトルを測定した。最大発光波長は435 nmであった。重合体(2)の最大発光波長とのずれはなかった。
【0289】
また、銀−共役化合物複合体(2)10mgとキシレン1mlとを混合し、超音波によりほぼ均一となるように分散させ、分散液を調製した。前記分散液を1時間放置したが、該分散液中の銀粒子複合体(2)は凝集することなく分散状態を保持していた。更に、銀−共役化合物複合体(2)の石英基板上に成膜した薄膜の導電性を、カスタム社製デジタルテスタCDM−03Dにて測定すると、導電性が良好であった。
【0290】
<実施例3>
重合体(4)のメタノール溶液10ml(繰り返し単位換算で100μM)に被覆銀粒子A40mgを加え、超音波により分散させた。その後、1時間攪拌した後に遠心分離し上澄みを除去した。この残渣に重合体(4)のメタノール溶液10ml(繰り返し単位換算で100μM)を加え、超音波により分散、1時間攪拌、遠心分離、上澄み除去の操作を5回繰り返した。次いで、メタノール30mlを加え、超音波により分散させた。その後、1時間攪拌した後に遠心分離し上澄みを除去し、メタノール30mlを加え超音波により分散させ、1時間攪拌、遠心分離、上澄み除去の操作を5回繰り返した後に残渣を乾燥させた。得られた固体について、XPS測定を行い、銀と重合体(4)の複合化を確認した。こうして得られた銀と重合体(4)との粒子状の複合体を、以下、銀−共役化合物複合体(3)と呼ぶ。該銀−共役化合物複合体(3)の全原子の個数を1としたときに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びリン原子を合計したヘテロ原子の個数の割合は0.20であった。銀−共役化合物複合体(3)をSEMで観察しフェレー径を計測した結果、数平均のフェレー径は203nm(従って、複合化前の銀粒子のフェレー径は、203nm以下であると認められる。)であった。
【0291】
この銀−共役化合物複合体(3)10 mgを6.2重量%のポリ(メチルメタクリレート)―クロロホルム溶液1 mlに分散させた。こうして得られた分散液をスピンコート法により石英基板上に塗布し、130℃のホットプレート上で乾燥させることにより成膜し、蛍光分光光度計で発光スペクトルを測定した。最大発光波長は426nmであった。重合体(4)の最大発光波長とのずれはなかった。
【0292】
また、銀−共役化合物複合体(3)10mgとキシレン1mlとを混合し、超音波によりほぼ均一となるように分散させ、分散液を調製した。前記分散液を1時間放置したが、該分散液中の銀粒子複合体(3)は凝集することなく分散状態を保持していた。更に、銀−共役化合物複合体(3)の石英基板上に成膜した薄膜の導電性を、カスタム社製デジタルテスタCDM−03Dにて測定すると、導電性が良好であった。
【0293】
<比較例1>
特許文献2(特開2007-146279号公報)の実施例4に記載されたポリビニルピロリドンと銀粒子との複合体の発光スペクトルを、実施例1と同様の方法で測定したが、発光は確認できなかった。
【0294】
また、前記複合体10mgとキシレン1mlとを混合し、超音波によりほぼ均一となるように分散させ、分散液を調製した。前記分散液を1時間放置したところ、該分散液中の前記複合体は凝集した。更に、前記複合体の石英基板上に成膜した薄膜の導電性を、カスタム社製デジタルテスタCDM−03Dにて測定すると、抵抗が高く電流が流れないことから、上述の銀−共役化合物複合体(1)、(2)、(3)に比して、劣ることが分かる。
【0295】
<実施例4>(発光素子k−1の作製)
第一に、陽極としてITOが成膜されたガラス基板のITOの上に、正孔注入材料溶液として、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP Al 4083)0.5mlを塗布し、スピンコート法によって、膜厚が70nmになるように成膜した。こうして得られた成膜ガラス基板を空気中で、200℃で10分間加熱した後、基板を室温まで自然に冷却させることにより、正孔注入層が形成されたガラス基板Aを得た。
【0296】
第二に、正孔輸送材料5.2mgとキシレン1mlとを混合し、正孔輸送材料が0.6重量%の正孔輸送層用組成物を調製した。なお、正孔輸送材料は以下の方法で合成した。
【0297】
不活性ガス雰囲気下、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g、2.5mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g、10.0mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g、6mmol)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g、1.5mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g、2.3mmol)、酢酸パラジウム(4.5mg、0.02mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g、0.08mmol)、トルエン(100mL)を混合し、混合物を100℃で2時間加熱攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.06g、0.5mmol)を添加し、得られた混合物を10時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した後、水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水で順次洗浄した。有機層をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた後、濾取したポリマーを再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。ポリマーを含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを濾取後50℃で真空乾燥し、正孔輸送材料である高分子化合物(12.1g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた正孔輸送材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は3.1であった。
【0298】
正孔輸送材料は、下記式:
【0299】
【化33】

【0300】
で表される構成単位と、下記式:
【0301】
【化34】

【0302】
で表される構成単位と、下記式:
【0303】
【化35】

【0304】
で表される構成単位とを62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0305】
正孔輸送層用組成物を、スピンコート法により、正孔注入層が形成されたガラス基板A中の正孔注入層上に塗布し、膜厚33nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成させたガラス基板を窒素雰囲気下で、200℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Bを得た。
【0306】
第三に、発光材料とキシレンとを混合し、発光材料が1.3重量%の発光層用組成物を調製した。なお、発光材料は以下の方法で合成した。
【0307】
不活性ガス雰囲気下、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g、16.4mmol)、N,N’-ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチル-2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.3g、1.8mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g、18.0mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g、58.3mmol)、酢酸パラジウム(8mg、0.04mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g、0.1mmol)、トルエン(200mL)を混合し、混合物を90℃で8時間加熱攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.22g、1.8mmol)を添加し、得られた混合物を14時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し撹拌した後、水層を除去し、有機層を水、3重量%酢酸水で順次洗浄した。有機層をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた後、濾取したポリマーを再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。ポリマーを含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを50℃で真空乾燥し、発光材料である高分子化合物(12.5g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた発光材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.9であった。
【0308】
発光材料は、下記式:
【0309】
【化36】

【0310】
で表される構成単位と、下記式:
【0311】
【化37】

【0312】
で表される構成単位と、下記式:
【0313】
【化38】

【0314】
で表される構成単位とを50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0315】
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板B中の正孔輸送層上に塗布し、膜厚99nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成させた基板を窒素雰囲気下で、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Cを得た。
【0316】
第四に、発光層が形成されたガラス基板C上に、前記銀−共役化合物複合体(3)の薄膜を形成し、本発明の銀−共役化合物複合体が形成された積層構造体m−1を得た。ここで、銀−共役化合物複合体(3)は陰極として作用する。
【0317】
最後に、この陰極が形成された積層構造体m−1を、窒素雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)にて封止することにより、発光素子k−1を作製した。
【0318】
発光素子k−1に20Vの順方向電圧の印加を行うと、発光が観測された。
【0319】
<比較例2>(発光素子k−2の作製)
実施例4において、銀−共役化合物複合体(3)の代わりに被覆銀粒子Aを用いた以外は、実施例4と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−2」と言う。)を作製した。発光素子k−2に20Vの順方向電圧を印加したが、発光は観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0320】
本発明の銀−共役化合物複合体は、塗布電極、透明電極、導電塗料、粘着剤、接着剤、導電性塗料、回路、集積回路、電磁波遮断材料、センサー、アンテナ、発熱体等の材料;繊維;包装材料;抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤等の材料、医療用材料等として有用である。
【0321】
また、本発明の積層構造体は、前記銀−共役化合物複合体を含む層を有するが、かかる層は導電性が優れているため、該積層構造体は発光素子、太陽電池、有機トランジスタ等の有機電子素子(特にはその電極)に有用である。本発明の銀−共役化合物複合体を用いてなる発光素子は、本発明の銀−共役化合物複合体を用いない発光素子に比べて、発光輝度が優れる。これは、本発明の銀−共役化合物複合体の電荷注入性が優れているためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均のフェレー径が1000nm以下の銀粒子と、該銀粒子に吸着した重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを含む銀−共役化合物複合体。
【請求項2】
前記共役化合物が芳香族化合物である請求項1に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項3】
該銀−共役化合物複合体中の前記共役化合物の割合が1.0重量%以上である請求項1又は2に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項4】
更に、非共役化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項5】
数平均のフェレー径が1100nm以下の粒子状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項6】
前記共役化合物が非水溶性である請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項7】
前記共役化合物がヘテロ原子を含む1価の基を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項8】
前記共役化合物が、下記式(I)で表される1価の基、下記式(II)で表される繰り返し単位、又はこれらの両方を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【化1】

(式中、Arは(n+1)価の芳香族基であり、Rは独立に単結合又は(m+1)価の基であり、Xはヘテロ原子を含む1価の基である。m及びnは、同一又は異なり、1以上の整数である。)
【化2】

(式中、Arは(n+2)価の芳香族基であり、Rは独立に単結合又は(m+1)価の基であり、Xはヘテロ原子を含む1価の基である。m及びnは、同一又は異なり、1以上の整数である。)
【請求項9】
上記式(II)で表される繰り返し単位の式量が、3.0×10以上であることを特徴とする請求項8に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項10】
前記のArで表される(n+1)価の芳香族基及び前記のArで表される(n+2)価の芳香族基が、それぞれ、下記の式(1)〜(57)で表される芳香族化合物及びこれらが置換された芳香族化合物から芳香環に結合した(n+1)個の水素原子を取り除いた残基及び(n+2)個の水素原子を取り除いた残基である請求項8又は9に記載の銀−共役化合物複合体。
【化3】

【化4】

(式中、Rは、水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す。)
【請求項11】
前記へテロ原子を含む1価の基が、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルチオ基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルチオカルボニル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルジチオ基、水酸基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、モノ(置換若しくは非置換のヒドロカルビル)アミノ基、ジ(置換若しくは非置換のヒドロカルビル)アミノ基、ホスフィノ基、モノ(置換若しくは非置換のヒドロカルビル)ホスフィノ基、ジ(置換若しくは非置換のヒドロカルビル)ホスフィノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOMで表される基、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基、ハロゲン原子、ホルミル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、モノヒドロカルビルカルバモイル基、ジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NR2で表される基、式:−B(OH)2で表される基、式:−BR2で表される基、式:
【化5】

(式中、R及びRは独立に1価の炭化水素基であるか、又は、RとRは結合して2価の炭化水素基を形成する。)
で表されるホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)3で表されるシリル基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルスルホ基、式:−S(=O)Rで表される基、スルフィノ基、置換若しくは非置換のヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基、式:−NRC(=S)NR2で表される基、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−S(=O)Mで表される基、式:−S(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、下記式(n−1)〜(n−13)で表される芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、
【化6】

又は、下記式(p−1)〜(p−9):

−O−(R’O)−R’’ (p−1)
【化7】

−S−(R’S)−R’’ (p−3)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (p−4)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (p−5)
−N{(R’)R’’}2 (p−6)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (p−7)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (p−8)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (p−9)

(式中、Rは、水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、Mは金属カチオン又は置換若しくは非置換のアンモニウムカチオンを表し、M’はアニオンを表し、R’は置換若しくは非置換の2価の炭化水素基又は式−RO−(ここで、Rは炭素原子数1〜50のアルキレン基)を表し、R’’は水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、−COH、−SO3H、−OH、−SH、−NRc2、−CNまたは−C(=O)NRc2を表し、ここでRcは置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換若しくは非置換の炭素原子数6〜50のアリール基を表し、R’’’は置換若しくは非置換の3価の炭化水素基を表し、mは1以上の整数を表し、qは0以上の整数を表し、R’、R’’、及びR’’’の各々は複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
で表されるいずれかの1価の基、又は、これらの2種以上の組み合わせである請求項7〜10のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項12】
前記のヘテロ原子を含む一価の基が、メルカプト基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルジチオ基、水酸基、ヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、ヒドロカルビルカルボニル基、シアノ基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOM、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基で表される基、ハロゲン原子、ホルミル基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、式(n−1)で表される基、式(n−5)で表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基、又は、これらの2種以上の組み合わせである請求項7〜11のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項13】
前記のヘテロ原子を含む一価の基が、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環式基、式:−COOM、式:−SOMで表される基、式:−NRM’で表される基、式(p−1)で表される基、式(p−2)で表される基、又は、これらの2種以上の組み合わせである請求項7〜12のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項14】
X線光電子分光法により求められる該複合体中に存在する全原子の数を1としたときに、銀原子以外のヘテロ原子の割合が0.01以上である請求項1〜13のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項15】
X線光電子分光法により、純粋な金属銀では検出されない、共役化合物由来のピークが検出されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項16】
前記共役化合物の紫外・可視・近赤外分光装置の測定により求めたバンドギャップが2.1eV以上である請求項1〜15のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項17】
前記共役化合物の大気中において光電子分光装置により求めたイオン化ポテンシャルが5.2eV以上である請求項1〜16のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体。
【請求項18】
銀化合物を、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物の存在下で還元させる工程を含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体の製造方法。
【請求項19】
数平均フェレー径1000nm以下の銀粒子を予め非共役化合物で被覆した銀粒子と、重量平均分子量3.0×10以上の共役化合物とを溶媒中で接触させる工程を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体を含む分散液。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体を含む電極材料。
【請求項22】
基体と、該基体上に形成された請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体を含む層とを有する積層構造体。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の銀−共役化合物複合体を含む有機電子素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−84814(P2011−84814A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209284(P2010−209284)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】