銀反射膜およびその形成方法、放射線検出器、並びに太陽電池
【課題】 基板に接する面は平坦で反射率が高く、基板に接する面の反対面は面が粗く、上層に積層した膜との密着性に優れた銀反射膜、およびその形成方法を提供する。
【解決手段】 有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜において、
前記銀反射膜は基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。基板に接する面は平坦な多結晶構造とし、基板に接する面の反対側の面は粗い面とする。
【解決手段】 有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜において、
前記銀反射膜は基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。基板に接する面は平坦な多結晶構造とし、基板に接する面の反対側の面は粗い面とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀反射膜およびその形成方法、放射線検出器、並びに太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ銀インクは、銀の融点より低温で焼成可能であり、インクジェット法などと組み合わせて基板上に直接パターンを描画することが可能である。電子ペーパーやRFIDタグの分野では、耐熱性の低い基板にナノ銀インクのパターンを形成し、焼成することで、配線膜を形成する。配線膜を構成する銀粒子同士がある程度融着すると、電流の経路が確保される。配線膜の電気抵抗を下げるには、抵抗率を低くするか、膜厚を大きくする。
【0003】
一方、銀の光学特性に着目して、ナノ銀インクで反射膜を形成することが検討されている。反射率の高い膜を得るには、ナノ銀粒子同士を融着させるだけでなく、気孔などの欠陥が少ない平坦な膜を形成しなければならない。
【0004】
特許文献1に、ナノ銀インクを用いて太陽電池用の反射膜を形成することが開示されている。粒径10〜50nmの銀ナノ粒子を分散させた分散液を基材に塗布し、塗膜を焼結することで、銀の反射膜を得る。この反射膜は、基材に接する面に気孔を生成する。気孔の平均直径が100nm以下、気孔が位置する平均深さが100nm以下、気孔の数密度が30個/μm以下となり、高い反射率を有する銀の反射膜が得られるとしている。
【0005】
特許文献2に、金属粒子の焼成体を反射膜とすることが開示されている。粒径1μm以下、好ましくは0.1μm以下の金属微粒子を溶媒に分散させ、分散溶媒を塗布し、塗膜を焼結することで、金属反射膜が得られるとしている。
【0006】
特許文献3には、有機銀化合物の焼成物である銀反射膜が開示されている。
【0007】
特許文献4には薄膜シリコン型太陽電池に銀反射材を使用することが開示されている。入射した太陽光の一部はシリコン薄膜を透過するので、エネルギーとして利用されず、変換効率が低くなる。シリコン薄膜を透過した太陽光を反射させ、光電変換層に戻すために、裏面に反射膜を形成することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−288568号公報
【特許文献2】特開平09−246577号公報
【特許文献3】国際公開第2010/092869号
【特許文献4】特開2005−175449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では特許文献1のように、銀ナノ粒子を分散媒に分散させた液を塗布した後、塗膜を焼結して銀反射膜を形成する。銀ナノ粒子を微粒化したり、銀ナノ粒子の周囲に形成する有機保護膜の炭素数を少なくして分解温度を低温化したりするなどの方法で、気孔の発生や大きさを抑制して反射率の低下を抑制することが検討されている。
【0010】
しかし、銀ナノ粒子の表面は大気に晒されると容易に活性が低下する。銀ナノ粒子の表面同士は融着しやすいものの、粒子の内部までは融着しづらい。表面活性が低下すると、銀ナノ粒子同士の融着が不安定になりやすく、気孔発生の抑制には限界がある。また、焼結後の銀反射膜は銀ナノ粒子の形状を反映するため、表面の凹凸が大きい膜になりやすいという課題がある。これらのことから反射率の向上には限界があり、銀のスパッタ膜より低い反射率しか得られていない。
【0011】
さらに、特許文献2に記載されているように、銀ナノ粒子を分散媒に分散させた液を塗布、焼結して得た銀反射膜は反射面の反対の面、すなわち膜の表面が鏡面になりやすいという特徴を有している。膜の表面が鏡面の場合、アンカー効果が期待できないため、反射膜の表面に接して形成される材料との密着が得づらいという課題がある。例えば、反射膜の表面にワイヤーボンディングを行う場合、ボンディング強度が不足して断線する恐れがある。また、反射膜の表面に別の材料を積層形成する場合、密着強度不足による膜剥離の恐れがある。
【0012】
特許文献3では、有機銀化合物を用いて高反射率の反射膜を形成している。より低温での焼成を行うと、膜の表面では銀粒子が緻密になり、平坦化が進み、反射率は高くなる。しかし、低温で焼成することで、銀粒子に与えるエネルギーが小さくなるため、膜の中では、銀粒子同士の融着および一体化は進まない。密着性を向上させることは難しい。
【0013】
特許文献4では、スパッタリング法で銀の裏面反射材を形成することが示されている。スパッタリング法を用いると容易に高い反射率を有する銀反射膜を得ることが可能である。しかし、製造コストが高いという問題があった。基板表面に凹凸があると、凹凸上に形成した銀の膜質が悪くなり、反射率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の銀反射膜は、有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜であり、
前記銀反射膜は、基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴としている。
【0015】
前記基板に接触する面では、多結晶の結晶粒同士は凹みやボイドがほとんど無い状態で密に繋がっており、結晶粒界の段差が1nm以下である。基板は、単体の基板、或いは下地層等を被覆した基板を包含する。
結晶粒界の段差が1nmをこえると、段差部で光が散乱し銀反射膜の反射率が低下するため、結晶粒界の段差は1nm未満であることが好ましい。
【0016】
実施態様としては、前記多結晶において平均結晶粒径が100nm以上であることが好ましい。平均結晶粒径は、SEM像に対して2μm長さのラインを5本引き、ラインにかかる銀の結晶の数をカウントして平均個数を求め、2μm長さを平均個数で割って求める。“μm”はミクロンである。銀の平均結晶粒径が大きいほど、銀反射膜の単位面積あたりの結晶粒界相の割合が低下するため、高い反射率を得ることができる。銀の平均結晶粒径が100nm未満になると銀反射膜の反射率が大きく低下するため、銀の平均結晶粒径は100nm以上であることが好ましい。
【0017】
実施態様としては、基板に接する面の面粗さがRa1nm未満であることをが好ましい。
また、実施態様としては、銀反射膜は、良好なアンカー効果を得るために、基板に接する面と反対側の面の面粗さがRa10nm以上であることが好ましい。
【0018】
本願発明の銀反射膜の形成方法は、有機銀化合物溶液を基板に塗布する工程と、前記基板を熱処理する工程とを備え、
前記還元剤は、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀粒子の表面活性を維持するための還元剤であることを特徴とする。
【0019】
有機銀化合物溶液は、前記塗布工程よりも前に、有機銀化合物及び還元剤を溶媒に溶解して有機銀化合物溶液を作製することが好ましい。
すなわち、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀の粒子の表面活性を維持するための還元剤を有機銀化合物溶液に添加した溶液を基板上に塗布し、焼成して有機銀化合物を熱分解させた銀粒子を析出させ、銀粒子を結合させて、銀薄膜を形成することができる。
【0020】
前記有機銀化合物溶液は、炭素数10以上の有機銀塩をグリコール系溶媒に溶解したものが好ましい。前記還元剤は、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルであることが好ましい。
【0021】
また、実施態様としては、前記有機銀化合物溶液を、スプレーコート法、インクジェット印刷法、スピンコート法、ディップ法、スクリーン印刷法、スリットコート法、ダイコート法のいずれかで塗布し、焼成することが好ましい。
また、実施態様としては、前記有機銀化合物溶液の塗膜の焼成温度が130℃〜200℃であることが好ましい。
【0022】
本発明の放射線検出器は、複数の半導体光検出素子がマトリクス状に配列された半導体光検出素子アレイ上に、複数のシンチレータ素子の各々がその底面を各半導体光検出素子に対向して配列され、シンチレータ素子の底面および表面を除く面に光反射材を設けた放射線検出器であって、
前記シンチレータ素子は互いに100μm以下の間隔をもって隣り合って配列され、前記光反射材は下地材と銀反射膜とが順に形成されたものであり、
前記銀反射膜は、シンチレータ素子側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下である銀反射膜の面は、下地材に接触する。ここでは、下地材を有するシンチレータ素子が、基板に相当する。
【0023】
下地材には、酸化シリコンや酸化チタンなど、シンチレータ素子の発光波長において光透過率が高い無機酸化物材料を用いて、10nm〜10μmの厚さとすることが好ましい。銀反射膜の厚さは0.1μm〜10μmとするのが好ましい。酸化を防ぐために、銀反射膜を酸化シリコンなどの保護材で被覆してもよい。
【0024】
側面に下地材および銀反射材を形成した複数のシンチレータ素子の間に隙間が生じる場合には、隣り合うシンチレータ素子との隙間に充填材を充填しても良い。充填材にはエポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂を用いることができる。さらに、これらの樹脂にタングステン、モリブデンなどの重金属粉末を混練したものを充填すれば、シンチレータ素子間の放射線遮蔽効果を強め、クロストークの発生をより一層防ぐことができる。
【0025】
シンチレータ素子の半導体光検出素子と対向する面の反対面には、上面反射材が形成される。この上面反射材はシンチレータ側面と同様に、下地材および金属反射材を順に形成したものを用いても良いし、従来の放射線検出器で反射材として用いられる、酸化チタン粉末などをエポキシ系樹脂などで混練した白色塗料を用いても良い。
【0026】
本発明の太陽電池は、基板と、透明電極と、光電変換層と、銀反射膜とを備える太陽電池であって、
前記銀反射膜は、光電変換層側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。ここでは、光電変換層及び透明電極を設けた基板が、上記基板に相当する。
【発明の効果】
【0027】
本願発明によれば、基板に接する面は平坦で反射率が高く、基板に接する面の反対面は面が粗く、前記反対面に積層する膜との密着性に優れた銀反射膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である。
【図2】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である。
【図3】本発明の実施例に係る銀反射膜の反射率を表わすグラフである。
【図4】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である
【図5】比較例の銀反射膜を表わすSEM像である。
【図6】比較例の銀反射膜の反射率を表わすグラフである。
【図7】本発明の実施例に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【図8】図7の一部を拡大した断面模式図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る放射線検出器の製造方法を示す断面模式図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るシンチレータ素子の間隙に形成された銀反射膜を表わすSEM像である。
【図11】本発明の他の実施例に係る太陽電池の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明の銀反射膜およびその形成方法を以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施例1)
有機銀化合物溶液は藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069を用いた。次にダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)10gを有機銀化合物溶液10gに加えて攪拌し、塗液を調製した。
【0031】
液の塗布にはノードソン(株)製、精密スプレーコーターを用いた。まず、スプレーガンの液吐出量を調整した。スプレーガンに関東化学(株)製、ジエチレングリコールジエチルエーテルをセットし、ニードルバルブの開口度を所定の値に調整した。次にビーカーに不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)を入れ、不織布に向けて3分間、液をスプレーし、吐出された液の重量を測定した。実施例1では、上記の方法で測定した液の重量が0.75〜0.80gの範囲になるように、ニードルバルブの開口度を調整した。
【0032】
次に、基板をスプレーコーター内のホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。基板は松浪硝子工業(株)製、マイクロスライドガラス S−1111を用いた。さらに、スプレーガンに前記の塗液をセットし、スプレーガンが基板表面から30mmの高さになるように位置を調整した。次にスプレーガンから塗液を噴霧し、X方向に100mm/秒の速度で往復運動しながら、Y方向に0.25mmピッチで移動させ、基板全体に塗液を塗布した。
【0033】
塗布が完了した後、基板をスプレーコーター内のホットプレートから外し、150℃に加熱した別のホットプレートに乗せて大気中で焼成を行った。基板を2枚作製し、1枚は銀ナノ粒子の析出過程を観察するため焼成途中の2分でホットプレートから外し、もう一枚は60分間焼成した後、ホットプレートから外した。
【0034】
次に、得られた銀反射膜の膜構造評価を行った。テープで銀反射膜を基板から剥がし、基板と接触している面の評価を行った。膜構造の観察には(株)日立ハイテクノロジーズ製、FE−SEM S−4500を用いた。観察条件は、加速電圧1kV、ワーキングディスタンス10mmとした。図1に2分間焼成後の銀反射膜の表面を示す。有機銀化合物が分解し、粒径約50〜100nm程度の粒状の銀粒子が表面に析出している。図1において、右下のドットは600nmを示す目盛りである。
【0035】
図2に60分間焼成後の銀反射膜の表面を示す。図1に示した粒状構造は観察されず、表面は平坦であり、多結晶であることがわかった。図2のSEM像に対して2μm長さのラインを5本引き、ラインにかかる銀の結晶粒の数をカウントして平均個数を求め、2μm長さを平均個数で割って平均結晶粒径を求めた結果、カウント数6.6個、平均粒径303nmであった。この結果から、図1で示した粒状の銀粒子が複数個結合して一つの結晶となったと考えられる。膜厚は100nmであった。
【0036】
また、Veeco社製、原子間力顕微鏡 NanoscopeIIIを用いて表面の凹凸を評価した。測定範囲は1μm角とした。結晶粒界の段差は原子間力顕微鏡で明確に検出できないほど微小であることがわかった。面粗さはRa=0.40nmであった。結晶粒界の段差は1nm未満となった。
【0037】
さらに、日本分光(株)製、分光光度計 V−570を用いて、反射率の測定を行った。測定光を基板側から照射し、基板を透過して銀反射膜で反射されて帰ってきた光を、積分球で集めて測定した。測定条件は、測定波長400nm〜900nm、波長ピッチ1nmとし、標準白色板の反射率を100%としたときの相対反射率とした。反射率測定結果を図3に示す。波長500nm〜900nmの範囲で97%以上の反射率が得られた。この結果から、本実施例で得られた銀反射膜の基板に接する面は、スパッタ法で得られる銀薄膜と同等の反射率が得られることが確認された。
【0038】
次に、反射面の反対面、すなわち膜表面の評価を行った。SEMで膜構造の観察を、原子間力顕微鏡で面粗さを評価した。測定範囲は1μm角とした。評価方法は反射面の評価方法と同じである。膜表面は反射面として使用しないため、反射率の測定は実施しなかった。図4にSEM観察結果を示す。粒径約100nmの銀粒子の表面が融着した構造となっており、銀粒子の形状がそのまま残った構造となっている。また、原子間力顕微鏡で膜表面の面粗さを測定した。銀粒子の寸法を反映した面粗さとなっており、Ra=22.2nmであった。反射面と比較して粗い面となっており、アンカー効果が期待できるため、この面にワイヤーボンディングした場合、十分なボンディング強度が得られることが期待できる。また、この面の上に樹脂や金属膜などを積層形成する場合も、十分な密着力が得られることが期待できる。
【0039】
このように、実施例1で得られた銀反射膜は、基板に接する面は平坦で反射率が高く、基板に接する面の反対面は面が粗く、前記反対面に積層した膜との密着性に優れた膜が得られた。
【0040】
(比較例1)
藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069の原液を用いて銀反射膜を形成した。塗布、焼成、評価方法は実施例1と同一とした。
【0041】
比較例1で得られた銀反射膜の評価を行った。銀反射膜を基板から剥がし、基板と接触している面、すなわち反射面の評価を行った。図5にSEMで膜構造を評価した結果を示す。銀粒子同士が融着して連続膜が形成されているが、銀粒子の表面同士が融着しているだけなので、銀粒子の形状が残って凹凸のある面となっている。原子間力顕微鏡で面粗さを評価した結果、Ra=1.04nmで、実施例1と比較すると粗い面が得られた。凸部の平均粒径は52nmとなった。次に反射率の測定を行った。反射率測定結果を図6に示す。波長500nmで95%の反射率が得られたが、500nmから400nmにかけての反射率低下が顕著であることがわかった。比較例1で得られた銀反射膜の基板に接する面は、実施例1と比較して反射率が低く、不安定であることが確認された。
【0042】
(実施例2)
本願発明の銀反射膜を放射線検出器の反射膜に適用した例を説明する。
図7は、実施例2の放射線検出器を示す斜視図である。放射線検出器1では、半導体光検出素子アレイ2上にシンチレータアレイ3を接着層4を介して取り付けた。半導体光検出素子アレイ2では、複数の半導体光検出素子21を長さと幅方向のマトリクス状に配列した。柱状に加工されたシンチレータ素子31の底面を、半導体光検出素子21に接着層4を介して取り付け、放射線検出器を形成した。実施例2において、隣り合うシンチレータ素子31の間隔は100μm以下とした。
【0043】
シンチレータ素子31にはGd2O2Sのセラミックスシンチレータ材料を用いた。接着層4には光透過率が高い光学用接着剤として、Epoxy Technologies社製、Epo−Tek301を用いた。図7中には示されていないが、シンチレータ素子31の側面および上面(半導体光検出素子21と対向する面の反対面)には、シンチレータ素子31が発した可視光を反射する反射材を形成した。
【0044】
図8は図7に示した放射線検出器1の断面拡大図である。シンチレータ素子31の側面には、下地材32、銀反射膜33を順に形成した。銀反射膜33の形成方法を以下に詳細に述べる。
【0045】
銀反射膜33は有機銀化合物溶液を加熱して得た。有機銀化合物溶液は藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069を用いた。次にダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)10gを有機銀化合物溶液10gに加えて攪拌し、塗液を調製した。
【0046】
液の塗布にはノードソン(株)製、精密スプレーコーターを用いた。まず、スプレーガンの液吐出量を調整した。スプレーガンに関東化学(株)製、ジエチレングリコールジエチルエーテルをセットし、ニードルバルブの開口度を所定の値に調整した。次にビーカーに不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)を入れ、不織布に向けて3分間、液をスプレーし、吐出された液の重量を測定した。実施例2では、上記の方法で測定した液の重量が0.75〜0.80gの範囲になるように、ニードルバルブの開口度を調整した。
【0047】
次に、シンチレータアレイ3をスプレーコーター内のホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。さらに、スプレーガンに前記の塗液をセットし、スプレーガンが基板表面から30mmの高さになるように位置を調整した。次にスプレーガンから塗液を噴霧し、X方向に100mm/秒の速度で往復運動しながら、Y方向に0.25mmピッチで移動させ、シンチレータアレイ3に塗液を塗布した。
【0048】
塗布が完了した後、シンチレータアレイ3をスプレーコーター内のホットプレートから外し、150℃に加熱した別のホットプレートに乗せて大気中で焼成を行い、銀反射膜33を得た。
【0049】
次に、図9を用いて、実施例2の放射線検出器の製造方法を、工程を追いながら説明する。
【0050】
まず工程1で、幅73mm、高さ22mm、厚さ2.0mmに加工したGd2O2Sのシンチレータ基板5に、機械加工で、幅80μm、深さ1.7mmの溝を1mmピッチで格子状に形成した(図9(a))。
【0051】
次に工程2で、溝加工したシンチレータ基板5を、ディップコーティング法で日立化成工業(株)製、HSG−R7−13のSOG液6に浸漬して、シンチレータ基板5に形成した溝内にSOG液6を充填した(図9(b))。
【0052】
SOG液6とシンチレータ基板5の濡れ性が悪い場合には、SOG液6を溝内部に充填する前に、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理、あるいは酸素プラズマ照射を、濡れ性改善の前処理として行った。さらに、溝内のSOG液6が過剰な場合には、遠心力を使ってSOG液6を振り切るか、あるいは、不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)でSOG液6を吸いとって、余分なSOG液6を除去した。
【0053】
SOG液6は、粘度が高くなると溝内に充填される際に気泡を巻き込みやすく、均一充填が困難になる。本願発明者は、種々の粘度のSOG液6を作製して検討を重ねた結果、SOG液6の粘度が20cP(0.020Pa・s)以下であれば気泡を巻き込まずに均一に充填できることを確認し、実施例2では、余裕をもって15cP(0.015Pa・s)の粘度のSOG液6を用いた。
【0054】
次に工程3で、SOG液6を焼成して酸化シリコンを含む下地材32を形成した。焼成には電気炉を用い、室温から昇温して400℃で30分間保持した。焼成中の酸素濃度は1000ppm以下とした。焼成後、酸化シリコンを含む下地材32が溝加工面に形成され、溝加工面の面荒れが平坦化された。溝加工面上の下地材32の厚さは0.1〜2μm、溝加工面の表面粗さRaは500nm以下となった(図9(c))。
【0055】
無機酸化物を含む下地材32とすることで、次工程において、下地材32上の有機銀化合物溶液7から銀が偏析しにくく、均一な銀反射材33とすることができた。この効果は、無機酸化物を含む下地材32が有機銀化合物溶液7に含まれる有機溶剤と反応しにくく、銀が偏析する起点が生じにくいためと考えられる。
【0056】
次に工程4で、下地材32を形成したシンチレータ基板5を、ディップコーティング法で有機銀化合物溶液7に浸漬して、シンチレータ基板5の溝内に有機銀化合物溶液7を充填した。本実施例では、有機銀化合物溶液7として、藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069とダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)を重量比1:1で混合した液を用いた(図9(d))。
【0057】
有機銀化合物溶液7は、粘度が高くなると溝内に充填される際に気泡を巻き込みやすく、均一充填が困難になる。本願発明者は、種々の粘度の有機銀化合物溶液7を作製して検討を重ねた結果、有機銀化合物溶液7の粘度が20cP(0.020Pa・s)以下であれば気泡を巻き込まずに均一に充填できることを確認し、実施例2では、余裕をもって15cP(0.015Pa・s)の粘度の有機銀化合物溶液7を用いた。
【0058】
次に工程5で、有機銀化合物7を焼成して銀反射材33を形成した。焼成にはホットプレートを用い、150℃で30分間保持した。焼成前の有機銀化合物7は無色透明であったが、焼成中に銀粒子が析出すると茶色に変色し、その後銀粒子どうしが結合して結晶粒となり、銀色の連続膜になった。溝内の銀反射材33の厚さは0.1〜数μmであった(図9(e))。
【0059】
図10は、焼成後の銀反射材33表面のSEM像である。図2に示したスライドガラス上に形成した銀反射膜と同様の平坦な多結晶構造の銀反射膜が得られた。
【0060】
次に工程6で、シンチレータ基板5の溝内に充填材34を充填した。実施例2では、充填材34として、(株)スリーボンド製、主剤2023、硬化剤2131Dのエポキシ樹脂を、主剤100:硬化剤30(重量比)で混合したものを用い、スクリーン印刷法でシンチレータ基板5の溝内に充填した。エポキシ樹脂は、電気オーブン中100℃で1時間加熱して硬化させた(図9(f))。
【0061】
次に工程7で、シンチレータ基板5の表面を研削した。基板表面(溝加工面)を研削することで、シンチレータ基板5表面に付着した、下地材32、金属反射材33、充填材34を除去した(図9(g))。
【0062】
次に工程8で、上面反射材35を形成した。実施例2では、上面反射材35として、(株)スリーボンド製、主剤2023、硬化剤2131Dのエポキシ樹脂を、主剤100:硬化剤30(重量比)で混合したものに、平均粒径約0.3μmの酸化チタン粉末を混練して白色塗料としたものを用い、シンチレータ基板5の表面(溝加工面)にスクリーン印刷法で塗布した。白色塗料は、電気オーブン中100℃で1時間加熱して硬化させた。(図9(h))。
【0063】
次に工程9で、シンチレータ基板5の裏面(溝加工面の反対面)を研削した。シンチレータ基板5の裏面に付着した下地材32と金属反射材33、充填材34を除去し、シンチレータ基板5の厚みが、当初の2.0mmから1.7mmになるまで研削したことで、シンチレータ基板5は複数の柱状のシンチレータ素子31に分離され、シンチレータアレイ3が形成された(図9(i))。
【0064】
最後に工程10で、複数のシンチレータ素子31と複数の半導体光検出素子21とが対向するようにして、シンチレータアレイ3の上面反射材35の反対面と半導体光検出素子アレイ2の表面とを接着層4を介して接着した。接着層4には、Epoxy Technologies社製、Epo−Tek301の光学用接着剤を用い、電気炉中80℃で1時間加熱することで、シンチレータアレイ3と半導体光検出素子アレイ2は硬化して接着し、放射線検出器1が完成した(図9(j))。
【0065】
(実施例3)
本願発明の銀反射膜を、薄膜シリコン型太陽電池の反射材に適用した例を説明する。
図11は実施例3の薄膜シリコン型太陽電池を示す断面模式図である。ガラス基板8上に透明電極層9、光電変換層10を形成した後、有機銀化合物溶液7をスプレーコート法で基板上に塗布した。有機銀化合物溶液7は、藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069とダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)を重量比1:1で混合した液を用いた。次に基板を150℃に加熱したホットプレート上で60分間焼成し、銀反射膜を備える金属反射材11を得た。このようにして得られた銀反射膜は、波長500nmから900nmの範囲で97%以上の反射率を有し、スパッタ膜と遜色のない特性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
放射線検出器または太陽電池に、本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 放射線検出器、
2 半導体光検出素子アレイ、
21 半導体光検出素子、
3 シンチレータアレイ、
31 シンチレータ素子、
32 下地材、
33 金属反射材、
34 充填材、
35 上面反射材、
4 接着層、
5 シンチレータ基板、
6 SOG液、
7 有機銀化合物溶液、
8 ガラス基板、
9 透明電極層、
10 光電変換層、
11 金属反射材
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀反射膜およびその形成方法、放射線検出器、並びに太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ銀インクは、銀の融点より低温で焼成可能であり、インクジェット法などと組み合わせて基板上に直接パターンを描画することが可能である。電子ペーパーやRFIDタグの分野では、耐熱性の低い基板にナノ銀インクのパターンを形成し、焼成することで、配線膜を形成する。配線膜を構成する銀粒子同士がある程度融着すると、電流の経路が確保される。配線膜の電気抵抗を下げるには、抵抗率を低くするか、膜厚を大きくする。
【0003】
一方、銀の光学特性に着目して、ナノ銀インクで反射膜を形成することが検討されている。反射率の高い膜を得るには、ナノ銀粒子同士を融着させるだけでなく、気孔などの欠陥が少ない平坦な膜を形成しなければならない。
【0004】
特許文献1に、ナノ銀インクを用いて太陽電池用の反射膜を形成することが開示されている。粒径10〜50nmの銀ナノ粒子を分散させた分散液を基材に塗布し、塗膜を焼結することで、銀の反射膜を得る。この反射膜は、基材に接する面に気孔を生成する。気孔の平均直径が100nm以下、気孔が位置する平均深さが100nm以下、気孔の数密度が30個/μm以下となり、高い反射率を有する銀の反射膜が得られるとしている。
【0005】
特許文献2に、金属粒子の焼成体を反射膜とすることが開示されている。粒径1μm以下、好ましくは0.1μm以下の金属微粒子を溶媒に分散させ、分散溶媒を塗布し、塗膜を焼結することで、金属反射膜が得られるとしている。
【0006】
特許文献3には、有機銀化合物の焼成物である銀反射膜が開示されている。
【0007】
特許文献4には薄膜シリコン型太陽電池に銀反射材を使用することが開示されている。入射した太陽光の一部はシリコン薄膜を透過するので、エネルギーとして利用されず、変換効率が低くなる。シリコン薄膜を透過した太陽光を反射させ、光電変換層に戻すために、裏面に反射膜を形成することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−288568号公報
【特許文献2】特開平09−246577号公報
【特許文献3】国際公開第2010/092869号
【特許文献4】特開2005−175449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では特許文献1のように、銀ナノ粒子を分散媒に分散させた液を塗布した後、塗膜を焼結して銀反射膜を形成する。銀ナノ粒子を微粒化したり、銀ナノ粒子の周囲に形成する有機保護膜の炭素数を少なくして分解温度を低温化したりするなどの方法で、気孔の発生や大きさを抑制して反射率の低下を抑制することが検討されている。
【0010】
しかし、銀ナノ粒子の表面は大気に晒されると容易に活性が低下する。銀ナノ粒子の表面同士は融着しやすいものの、粒子の内部までは融着しづらい。表面活性が低下すると、銀ナノ粒子同士の融着が不安定になりやすく、気孔発生の抑制には限界がある。また、焼結後の銀反射膜は銀ナノ粒子の形状を反映するため、表面の凹凸が大きい膜になりやすいという課題がある。これらのことから反射率の向上には限界があり、銀のスパッタ膜より低い反射率しか得られていない。
【0011】
さらに、特許文献2に記載されているように、銀ナノ粒子を分散媒に分散させた液を塗布、焼結して得た銀反射膜は反射面の反対の面、すなわち膜の表面が鏡面になりやすいという特徴を有している。膜の表面が鏡面の場合、アンカー効果が期待できないため、反射膜の表面に接して形成される材料との密着が得づらいという課題がある。例えば、反射膜の表面にワイヤーボンディングを行う場合、ボンディング強度が不足して断線する恐れがある。また、反射膜の表面に別の材料を積層形成する場合、密着強度不足による膜剥離の恐れがある。
【0012】
特許文献3では、有機銀化合物を用いて高反射率の反射膜を形成している。より低温での焼成を行うと、膜の表面では銀粒子が緻密になり、平坦化が進み、反射率は高くなる。しかし、低温で焼成することで、銀粒子に与えるエネルギーが小さくなるため、膜の中では、銀粒子同士の融着および一体化は進まない。密着性を向上させることは難しい。
【0013】
特許文献4では、スパッタリング法で銀の裏面反射材を形成することが示されている。スパッタリング法を用いると容易に高い反射率を有する銀反射膜を得ることが可能である。しかし、製造コストが高いという問題があった。基板表面に凹凸があると、凹凸上に形成した銀の膜質が悪くなり、反射率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の銀反射膜は、有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜であり、
前記銀反射膜は、基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴としている。
【0015】
前記基板に接触する面では、多結晶の結晶粒同士は凹みやボイドがほとんど無い状態で密に繋がっており、結晶粒界の段差が1nm以下である。基板は、単体の基板、或いは下地層等を被覆した基板を包含する。
結晶粒界の段差が1nmをこえると、段差部で光が散乱し銀反射膜の反射率が低下するため、結晶粒界の段差は1nm未満であることが好ましい。
【0016】
実施態様としては、前記多結晶において平均結晶粒径が100nm以上であることが好ましい。平均結晶粒径は、SEM像に対して2μm長さのラインを5本引き、ラインにかかる銀の結晶の数をカウントして平均個数を求め、2μm長さを平均個数で割って求める。“μm”はミクロンである。銀の平均結晶粒径が大きいほど、銀反射膜の単位面積あたりの結晶粒界相の割合が低下するため、高い反射率を得ることができる。銀の平均結晶粒径が100nm未満になると銀反射膜の反射率が大きく低下するため、銀の平均結晶粒径は100nm以上であることが好ましい。
【0017】
実施態様としては、基板に接する面の面粗さがRa1nm未満であることをが好ましい。
また、実施態様としては、銀反射膜は、良好なアンカー効果を得るために、基板に接する面と反対側の面の面粗さがRa10nm以上であることが好ましい。
【0018】
本願発明の銀反射膜の形成方法は、有機銀化合物溶液を基板に塗布する工程と、前記基板を熱処理する工程とを備え、
前記還元剤は、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀粒子の表面活性を維持するための還元剤であることを特徴とする。
【0019】
有機銀化合物溶液は、前記塗布工程よりも前に、有機銀化合物及び還元剤を溶媒に溶解して有機銀化合物溶液を作製することが好ましい。
すなわち、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀の粒子の表面活性を維持するための還元剤を有機銀化合物溶液に添加した溶液を基板上に塗布し、焼成して有機銀化合物を熱分解させた銀粒子を析出させ、銀粒子を結合させて、銀薄膜を形成することができる。
【0020】
前記有機銀化合物溶液は、炭素数10以上の有機銀塩をグリコール系溶媒に溶解したものが好ましい。前記還元剤は、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルであることが好ましい。
【0021】
また、実施態様としては、前記有機銀化合物溶液を、スプレーコート法、インクジェット印刷法、スピンコート法、ディップ法、スクリーン印刷法、スリットコート法、ダイコート法のいずれかで塗布し、焼成することが好ましい。
また、実施態様としては、前記有機銀化合物溶液の塗膜の焼成温度が130℃〜200℃であることが好ましい。
【0022】
本発明の放射線検出器は、複数の半導体光検出素子がマトリクス状に配列された半導体光検出素子アレイ上に、複数のシンチレータ素子の各々がその底面を各半導体光検出素子に対向して配列され、シンチレータ素子の底面および表面を除く面に光反射材を設けた放射線検出器であって、
前記シンチレータ素子は互いに100μm以下の間隔をもって隣り合って配列され、前記光反射材は下地材と銀反射膜とが順に形成されたものであり、
前記銀反射膜は、シンチレータ素子側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下である銀反射膜の面は、下地材に接触する。ここでは、下地材を有するシンチレータ素子が、基板に相当する。
【0023】
下地材には、酸化シリコンや酸化チタンなど、シンチレータ素子の発光波長において光透過率が高い無機酸化物材料を用いて、10nm〜10μmの厚さとすることが好ましい。銀反射膜の厚さは0.1μm〜10μmとするのが好ましい。酸化を防ぐために、銀反射膜を酸化シリコンなどの保護材で被覆してもよい。
【0024】
側面に下地材および銀反射材を形成した複数のシンチレータ素子の間に隙間が生じる場合には、隣り合うシンチレータ素子との隙間に充填材を充填しても良い。充填材にはエポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂を用いることができる。さらに、これらの樹脂にタングステン、モリブデンなどの重金属粉末を混練したものを充填すれば、シンチレータ素子間の放射線遮蔽効果を強め、クロストークの発生をより一層防ぐことができる。
【0025】
シンチレータ素子の半導体光検出素子と対向する面の反対面には、上面反射材が形成される。この上面反射材はシンチレータ側面と同様に、下地材および金属反射材を順に形成したものを用いても良いし、従来の放射線検出器で反射材として用いられる、酸化チタン粉末などをエポキシ系樹脂などで混練した白色塗料を用いても良い。
【0026】
本発明の太陽電池は、基板と、透明電極と、光電変換層と、銀反射膜とを備える太陽電池であって、
前記銀反射膜は、光電変換層側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする。ここでは、光電変換層及び透明電極を設けた基板が、上記基板に相当する。
【発明の効果】
【0027】
本願発明によれば、基板に接する面は平坦で反射率が高く、基板に接する面の反対面は面が粗く、前記反対面に積層する膜との密着性に優れた銀反射膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である。
【図2】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である。
【図3】本発明の実施例に係る銀反射膜の反射率を表わすグラフである。
【図4】本発明の実施例に係る銀反射膜を表わすSEM像である
【図5】比較例の銀反射膜を表わすSEM像である。
【図6】比較例の銀反射膜の反射率を表わすグラフである。
【図7】本発明の実施例に係る放射線検出器の概略斜視図である。
【図8】図7の一部を拡大した断面模式図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る放射線検出器の製造方法を示す断面模式図である。
【図10】本発明の他の実施例に係るシンチレータ素子の間隙に形成された銀反射膜を表わすSEM像である。
【図11】本発明の他の実施例に係る太陽電池の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明の銀反射膜およびその形成方法を以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(実施例1)
有機銀化合物溶液は藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069を用いた。次にダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)10gを有機銀化合物溶液10gに加えて攪拌し、塗液を調製した。
【0031】
液の塗布にはノードソン(株)製、精密スプレーコーターを用いた。まず、スプレーガンの液吐出量を調整した。スプレーガンに関東化学(株)製、ジエチレングリコールジエチルエーテルをセットし、ニードルバルブの開口度を所定の値に調整した。次にビーカーに不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)を入れ、不織布に向けて3分間、液をスプレーし、吐出された液の重量を測定した。実施例1では、上記の方法で測定した液の重量が0.75〜0.80gの範囲になるように、ニードルバルブの開口度を調整した。
【0032】
次に、基板をスプレーコーター内のホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。基板は松浪硝子工業(株)製、マイクロスライドガラス S−1111を用いた。さらに、スプレーガンに前記の塗液をセットし、スプレーガンが基板表面から30mmの高さになるように位置を調整した。次にスプレーガンから塗液を噴霧し、X方向に100mm/秒の速度で往復運動しながら、Y方向に0.25mmピッチで移動させ、基板全体に塗液を塗布した。
【0033】
塗布が完了した後、基板をスプレーコーター内のホットプレートから外し、150℃に加熱した別のホットプレートに乗せて大気中で焼成を行った。基板を2枚作製し、1枚は銀ナノ粒子の析出過程を観察するため焼成途中の2分でホットプレートから外し、もう一枚は60分間焼成した後、ホットプレートから外した。
【0034】
次に、得られた銀反射膜の膜構造評価を行った。テープで銀反射膜を基板から剥がし、基板と接触している面の評価を行った。膜構造の観察には(株)日立ハイテクノロジーズ製、FE−SEM S−4500を用いた。観察条件は、加速電圧1kV、ワーキングディスタンス10mmとした。図1に2分間焼成後の銀反射膜の表面を示す。有機銀化合物が分解し、粒径約50〜100nm程度の粒状の銀粒子が表面に析出している。図1において、右下のドットは600nmを示す目盛りである。
【0035】
図2に60分間焼成後の銀反射膜の表面を示す。図1に示した粒状構造は観察されず、表面は平坦であり、多結晶であることがわかった。図2のSEM像に対して2μm長さのラインを5本引き、ラインにかかる銀の結晶粒の数をカウントして平均個数を求め、2μm長さを平均個数で割って平均結晶粒径を求めた結果、カウント数6.6個、平均粒径303nmであった。この結果から、図1で示した粒状の銀粒子が複数個結合して一つの結晶となったと考えられる。膜厚は100nmであった。
【0036】
また、Veeco社製、原子間力顕微鏡 NanoscopeIIIを用いて表面の凹凸を評価した。測定範囲は1μm角とした。結晶粒界の段差は原子間力顕微鏡で明確に検出できないほど微小であることがわかった。面粗さはRa=0.40nmであった。結晶粒界の段差は1nm未満となった。
【0037】
さらに、日本分光(株)製、分光光度計 V−570を用いて、反射率の測定を行った。測定光を基板側から照射し、基板を透過して銀反射膜で反射されて帰ってきた光を、積分球で集めて測定した。測定条件は、測定波長400nm〜900nm、波長ピッチ1nmとし、標準白色板の反射率を100%としたときの相対反射率とした。反射率測定結果を図3に示す。波長500nm〜900nmの範囲で97%以上の反射率が得られた。この結果から、本実施例で得られた銀反射膜の基板に接する面は、スパッタ法で得られる銀薄膜と同等の反射率が得られることが確認された。
【0038】
次に、反射面の反対面、すなわち膜表面の評価を行った。SEMで膜構造の観察を、原子間力顕微鏡で面粗さを評価した。測定範囲は1μm角とした。評価方法は反射面の評価方法と同じである。膜表面は反射面として使用しないため、反射率の測定は実施しなかった。図4にSEM観察結果を示す。粒径約100nmの銀粒子の表面が融着した構造となっており、銀粒子の形状がそのまま残った構造となっている。また、原子間力顕微鏡で膜表面の面粗さを測定した。銀粒子の寸法を反映した面粗さとなっており、Ra=22.2nmであった。反射面と比較して粗い面となっており、アンカー効果が期待できるため、この面にワイヤーボンディングした場合、十分なボンディング強度が得られることが期待できる。また、この面の上に樹脂や金属膜などを積層形成する場合も、十分な密着力が得られることが期待できる。
【0039】
このように、実施例1で得られた銀反射膜は、基板に接する面は平坦で反射率が高く、基板に接する面の反対面は面が粗く、前記反対面に積層した膜との密着性に優れた膜が得られた。
【0040】
(比較例1)
藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069の原液を用いて銀反射膜を形成した。塗布、焼成、評価方法は実施例1と同一とした。
【0041】
比較例1で得られた銀反射膜の評価を行った。銀反射膜を基板から剥がし、基板と接触している面、すなわち反射面の評価を行った。図5にSEMで膜構造を評価した結果を示す。銀粒子同士が融着して連続膜が形成されているが、銀粒子の表面同士が融着しているだけなので、銀粒子の形状が残って凹凸のある面となっている。原子間力顕微鏡で面粗さを評価した結果、Ra=1.04nmで、実施例1と比較すると粗い面が得られた。凸部の平均粒径は52nmとなった。次に反射率の測定を行った。反射率測定結果を図6に示す。波長500nmで95%の反射率が得られたが、500nmから400nmにかけての反射率低下が顕著であることがわかった。比較例1で得られた銀反射膜の基板に接する面は、実施例1と比較して反射率が低く、不安定であることが確認された。
【0042】
(実施例2)
本願発明の銀反射膜を放射線検出器の反射膜に適用した例を説明する。
図7は、実施例2の放射線検出器を示す斜視図である。放射線検出器1では、半導体光検出素子アレイ2上にシンチレータアレイ3を接着層4を介して取り付けた。半導体光検出素子アレイ2では、複数の半導体光検出素子21を長さと幅方向のマトリクス状に配列した。柱状に加工されたシンチレータ素子31の底面を、半導体光検出素子21に接着層4を介して取り付け、放射線検出器を形成した。実施例2において、隣り合うシンチレータ素子31の間隔は100μm以下とした。
【0043】
シンチレータ素子31にはGd2O2Sのセラミックスシンチレータ材料を用いた。接着層4には光透過率が高い光学用接着剤として、Epoxy Technologies社製、Epo−Tek301を用いた。図7中には示されていないが、シンチレータ素子31の側面および上面(半導体光検出素子21と対向する面の反対面)には、シンチレータ素子31が発した可視光を反射する反射材を形成した。
【0044】
図8は図7に示した放射線検出器1の断面拡大図である。シンチレータ素子31の側面には、下地材32、銀反射膜33を順に形成した。銀反射膜33の形成方法を以下に詳細に述べる。
【0045】
銀反射膜33は有機銀化合物溶液を加熱して得た。有機銀化合物溶液は藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069を用いた。次にダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)10gを有機銀化合物溶液10gに加えて攪拌し、塗液を調製した。
【0046】
液の塗布にはノードソン(株)製、精密スプレーコーターを用いた。まず、スプレーガンの液吐出量を調整した。スプレーガンに関東化学(株)製、ジエチレングリコールジエチルエーテルをセットし、ニードルバルブの開口度を所定の値に調整した。次にビーカーに不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)を入れ、不織布に向けて3分間、液をスプレーし、吐出された液の重量を測定した。実施例2では、上記の方法で測定した液の重量が0.75〜0.80gの範囲になるように、ニードルバルブの開口度を調整した。
【0047】
次に、シンチレータアレイ3をスプレーコーター内のホットプレート上に固定し、120℃に加熱した。さらに、スプレーガンに前記の塗液をセットし、スプレーガンが基板表面から30mmの高さになるように位置を調整した。次にスプレーガンから塗液を噴霧し、X方向に100mm/秒の速度で往復運動しながら、Y方向に0.25mmピッチで移動させ、シンチレータアレイ3に塗液を塗布した。
【0048】
塗布が完了した後、シンチレータアレイ3をスプレーコーター内のホットプレートから外し、150℃に加熱した別のホットプレートに乗せて大気中で焼成を行い、銀反射膜33を得た。
【0049】
次に、図9を用いて、実施例2の放射線検出器の製造方法を、工程を追いながら説明する。
【0050】
まず工程1で、幅73mm、高さ22mm、厚さ2.0mmに加工したGd2O2Sのシンチレータ基板5に、機械加工で、幅80μm、深さ1.7mmの溝を1mmピッチで格子状に形成した(図9(a))。
【0051】
次に工程2で、溝加工したシンチレータ基板5を、ディップコーティング法で日立化成工業(株)製、HSG−R7−13のSOG液6に浸漬して、シンチレータ基板5に形成した溝内にSOG液6を充填した(図9(b))。
【0052】
SOG液6とシンチレータ基板5の濡れ性が悪い場合には、SOG液6を溝内部に充填する前に、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理、あるいは酸素プラズマ照射を、濡れ性改善の前処理として行った。さらに、溝内のSOG液6が過剰な場合には、遠心力を使ってSOG液6を振り切るか、あるいは、不織布(旭化成せんい(株)製、ベンコット)でSOG液6を吸いとって、余分なSOG液6を除去した。
【0053】
SOG液6は、粘度が高くなると溝内に充填される際に気泡を巻き込みやすく、均一充填が困難になる。本願発明者は、種々の粘度のSOG液6を作製して検討を重ねた結果、SOG液6の粘度が20cP(0.020Pa・s)以下であれば気泡を巻き込まずに均一に充填できることを確認し、実施例2では、余裕をもって15cP(0.015Pa・s)の粘度のSOG液6を用いた。
【0054】
次に工程3で、SOG液6を焼成して酸化シリコンを含む下地材32を形成した。焼成には電気炉を用い、室温から昇温して400℃で30分間保持した。焼成中の酸素濃度は1000ppm以下とした。焼成後、酸化シリコンを含む下地材32が溝加工面に形成され、溝加工面の面荒れが平坦化された。溝加工面上の下地材32の厚さは0.1〜2μm、溝加工面の表面粗さRaは500nm以下となった(図9(c))。
【0055】
無機酸化物を含む下地材32とすることで、次工程において、下地材32上の有機銀化合物溶液7から銀が偏析しにくく、均一な銀反射材33とすることができた。この効果は、無機酸化物を含む下地材32が有機銀化合物溶液7に含まれる有機溶剤と反応しにくく、銀が偏析する起点が生じにくいためと考えられる。
【0056】
次に工程4で、下地材32を形成したシンチレータ基板5を、ディップコーティング法で有機銀化合物溶液7に浸漬して、シンチレータ基板5の溝内に有機銀化合物溶液7を充填した。本実施例では、有機銀化合物溶液7として、藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069とダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)を重量比1:1で混合した液を用いた(図9(d))。
【0057】
有機銀化合物溶液7は、粘度が高くなると溝内に充填される際に気泡を巻き込みやすく、均一充填が困難になる。本願発明者は、種々の粘度の有機銀化合物溶液7を作製して検討を重ねた結果、有機銀化合物溶液7の粘度が20cP(0.020Pa・s)以下であれば気泡を巻き込まずに均一に充填できることを確認し、実施例2では、余裕をもって15cP(0.015Pa・s)の粘度の有機銀化合物溶液7を用いた。
【0058】
次に工程5で、有機銀化合物7を焼成して銀反射材33を形成した。焼成にはホットプレートを用い、150℃で30分間保持した。焼成前の有機銀化合物7は無色透明であったが、焼成中に銀粒子が析出すると茶色に変色し、その後銀粒子どうしが結合して結晶粒となり、銀色の連続膜になった。溝内の銀反射材33の厚さは0.1〜数μmであった(図9(e))。
【0059】
図10は、焼成後の銀反射材33表面のSEM像である。図2に示したスライドガラス上に形成した銀反射膜と同様の平坦な多結晶構造の銀反射膜が得られた。
【0060】
次に工程6で、シンチレータ基板5の溝内に充填材34を充填した。実施例2では、充填材34として、(株)スリーボンド製、主剤2023、硬化剤2131Dのエポキシ樹脂を、主剤100:硬化剤30(重量比)で混合したものを用い、スクリーン印刷法でシンチレータ基板5の溝内に充填した。エポキシ樹脂は、電気オーブン中100℃で1時間加熱して硬化させた(図9(f))。
【0061】
次に工程7で、シンチレータ基板5の表面を研削した。基板表面(溝加工面)を研削することで、シンチレータ基板5表面に付着した、下地材32、金属反射材33、充填材34を除去した(図9(g))。
【0062】
次に工程8で、上面反射材35を形成した。実施例2では、上面反射材35として、(株)スリーボンド製、主剤2023、硬化剤2131Dのエポキシ樹脂を、主剤100:硬化剤30(重量比)で混合したものに、平均粒径約0.3μmの酸化チタン粉末を混練して白色塗料としたものを用い、シンチレータ基板5の表面(溝加工面)にスクリーン印刷法で塗布した。白色塗料は、電気オーブン中100℃で1時間加熱して硬化させた。(図9(h))。
【0063】
次に工程9で、シンチレータ基板5の裏面(溝加工面の反対面)を研削した。シンチレータ基板5の裏面に付着した下地材32と金属反射材33、充填材34を除去し、シンチレータ基板5の厚みが、当初の2.0mmから1.7mmになるまで研削したことで、シンチレータ基板5は複数の柱状のシンチレータ素子31に分離され、シンチレータアレイ3が形成された(図9(i))。
【0064】
最後に工程10で、複数のシンチレータ素子31と複数の半導体光検出素子21とが対向するようにして、シンチレータアレイ3の上面反射材35の反対面と半導体光検出素子アレイ2の表面とを接着層4を介して接着した。接着層4には、Epoxy Technologies社製、Epo−Tek301の光学用接着剤を用い、電気炉中80℃で1時間加熱することで、シンチレータアレイ3と半導体光検出素子アレイ2は硬化して接着し、放射線検出器1が完成した(図9(j))。
【0065】
(実施例3)
本願発明の銀反射膜を、薄膜シリコン型太陽電池の反射材に適用した例を説明する。
図11は実施例3の薄膜シリコン型太陽電池を示す断面模式図である。ガラス基板8上に透明電極層9、光電変換層10を形成した後、有機銀化合物溶液7をスプレーコート法で基板上に塗布した。有機銀化合物溶液7は、藤倉化成(株)製、ナノ・ドータイト XA−9069とダウ・ケミカル日本(株)製、ダワノールTPnB(化学名 トリプロピレングリコール n−ブチルエーテル)を重量比1:1で混合した液を用いた。次に基板を150℃に加熱したホットプレート上で60分間焼成し、銀反射膜を備える金属反射材11を得た。このようにして得られた銀反射膜は、波長500nmから900nmの範囲で97%以上の反射率を有し、スパッタ膜と遜色のない特性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
放射線検出器または太陽電池に、本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 放射線検出器、
2 半導体光検出素子アレイ、
21 半導体光検出素子、
3 シンチレータアレイ、
31 シンチレータ素子、
32 下地材、
33 金属反射材、
34 充填材、
35 上面反射材、
4 接着層、
5 シンチレータ基板、
6 SOG液、
7 有機銀化合物溶液、
8 ガラス基板、
9 透明電極層、
10 光電変換層、
11 金属反射材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜において、
前記銀反射膜は、基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする銀反射膜。
【請求項2】
前記多結晶において平均結晶粒径が100nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の銀反射膜。
【請求項3】
前記銀反射膜の基板に接触する面の面粗さがRa1nm未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の銀反射膜。
【請求項4】
前記銀反射膜の表面の面粗さがRa10nm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の銀反射膜。
【請求項5】
有機銀化合物溶液を基板に塗布する工程と、前記基板を熱処理する工程とを備え、
前記還元剤は、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀粒子の表面活性を維持するための還元剤であることを特徴とする銀反射膜の形成方法。
【請求項6】
前記還元剤は、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルであることを特徴とする請求項5に記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項7】
有機銀化合物溶液の塗布方法が、スプレーコート法、インクジェット印刷法、スピンコート法、ディップ法、スクリーン印刷法、スリットコート法、ダイコート法のいずれかであることを特徴とする、請求項5または6に記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項8】
有機銀化合物溶液の焼成温度が、130℃〜200℃であることを特徴とする、請求項5ないし7いずれかに記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項9】
複数の半導体光検出素子がマトリクス状に配列された半導体光検出素子アレイ上に、複数のシンチレータ素子の各々がその底面を各半導体光検出素子に対向して配列され、シンチレータ素子の底面および表面を除く面に光反射材を設けた放射線検出器であって、
前記シンチレータ素子は互いに100μm以下の間隔をもって隣り合って配列され、前記光反射材は下地材と銀反射膜とが順に形成されたものであり、
前記銀反射膜は、シンチレータ素子側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項10】
基板と、透明電極と、光電変換層と、銀反射膜とを備える太陽電池であって、
前記銀反射膜は、光電変換層側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする太陽電池。
【請求項1】
有機銀化合物を溶媒に溶解した有機銀化合物溶液を、基板上に塗布し、焼成することによって得られる銀反射膜において、
前記銀反射膜は、基板に接触する面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする銀反射膜。
【請求項2】
前記多結晶において平均結晶粒径が100nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の銀反射膜。
【請求項3】
前記銀反射膜の基板に接触する面の面粗さがRa1nm未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の銀反射膜。
【請求項4】
前記銀反射膜の表面の面粗さがRa10nm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の銀反射膜。
【請求項5】
有機銀化合物溶液を基板に塗布する工程と、前記基板を熱処理する工程とを備え、
前記還元剤は、有機銀化合物が熱分解されて析出した銀粒子の表面活性を維持するための還元剤であることを特徴とする銀反射膜の形成方法。
【請求項6】
前記還元剤は、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルであることを特徴とする請求項5に記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項7】
有機銀化合物溶液の塗布方法が、スプレーコート法、インクジェット印刷法、スピンコート法、ディップ法、スクリーン印刷法、スリットコート法、ダイコート法のいずれかであることを特徴とする、請求項5または6に記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項8】
有機銀化合物溶液の焼成温度が、130℃〜200℃であることを特徴とする、請求項5ないし7いずれかに記載の銀反射膜の形成方法。
【請求項9】
複数の半導体光検出素子がマトリクス状に配列された半導体光検出素子アレイ上に、複数のシンチレータ素子の各々がその底面を各半導体光検出素子に対向して配列され、シンチレータ素子の底面および表面を除く面に光反射材を設けた放射線検出器であって、
前記シンチレータ素子は互いに100μm以下の間隔をもって隣り合って配列され、前記光反射材は下地材と銀反射膜とが順に形成されたものであり、
前記銀反射膜は、シンチレータ素子側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項10】
基板と、透明電極と、光電変換層と、銀反射膜とを備える太陽電池であって、
前記銀反射膜は、光電変換層側の面が多結晶であり且つ結晶粒界の段差が1nm以下であることを特徴とする太陽電池。
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−128402(P2012−128402A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221680(P2011−221680)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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