説明

銀触媒組成物、触媒組成物の調製方法およびエチレンのエポキシ化のための触媒組成物の使用

少なくとも500m/kgの表面積を有する担体と、前記担体上に堆積した銀金属、レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分とを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンのエポキシ化に適した触媒組成物、その触媒組成物の調製方法およびその触媒組成物が使用されるエチレンのエポキシ化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀をベースとした触媒を使用するエチレンの触媒エポキシ化は、長年にわたって行われてきている。然しながら、従来の銀をベースとした触媒は、周知の如くに、低選択率で酸化エチレンを与えるものであった。例えば、従来の触媒を使用すると、転換されたエチレンの割合として表される酸化エチレンに対する選択率は、6/7を超える値には達せずまたは85.7モル%が限界である。したがって、この限界は、反応式、
7C+6O ⇒ 6CO+2CO+2H
の化学量論に基づいて、この反応の理論的最大選択率であると長い間考えられていた(Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology、3rded.、Vol.9、1980年、445頁を参照)。
【0003】
然しながら、現在の銀をベースとした触媒は、酸化エチレンの製造に対して高度に選択的である。エチレンのエポキシ化において現在の触媒を使用すると、酸化エチレンに対する選択率は、言われている6/7または85.7モル%の限界を超える値に達することができる。そのような選択性の高い触媒は、その活性成分として銀、および、レニウム、タングステンもしくはモリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物等の1種または複数種のドーパント、あるいは、レニウム、タングステンもしくはモリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む成分を含んでもよい。しばしば、選択性の高い触媒は、追加ドーパントとして1種または複数種のIA族金属、あるいは、IA族金属を含む1種または複数種の成分を含む。好ましいIA族金属は、少なくとも37の原子番号を有する高級IA族金属であり、例えば、ルビジウム、特にセシウムである。少なくとも37の原子番号を有するIA族金属は、以降、「高級IA族金属」と言う用語で参照することがある。選択性の高い触媒は、例えば、米国特許第4761394A号および米国特許第4766105A号および幾つかのそれに続く特許公開において開示されている。
【0004】
選択性の高い触媒は、特に、通常の操作中に老化に関わる性能低下に陥りやすく、それらは、通常の触媒よりも更に頻繁に交換が必要になる。老化は、触媒の活性減少によって明らかになる。通常、触媒の活性減少が明らかになると、反応温度は、活性減少を補うために高められる。反応温度は、触媒が、その寿命の最後にあるとみなされて交換の必要性に迫られる望ましくない高さになる時点まで高められてもよい。経済的観点からして、できる限り長く触媒寿命を引き伸ばすことが極めて望ましいことであることは言うまでもない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高級IA族金属を含む選択性の高い触媒の調製において、高級IA族金属の一部をカリウムで置き換えると、触媒の初期活性、その寿命の間の触媒の性能および寿命それ自身が改善されることが意外にも見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、少なくとも500m/kgの表面積を有する担体と、その担体上に堆積した
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分とを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物を提供するものである。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物を基準とする。)
本発明は、また、少なくとも500m/kgの表面積を有する担体を選択するステップと、その担体上に、
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分を堆積するステップとを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物を調製する方法を提供するものである。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、ミリモル/kg単位は、触媒組成物の重量を基準とする。)
本発明は、また、本発明の触媒組成物の存在下で、エチレンと酸素とを反応させて酸化エチレンを調製する方法を提供するものである。
【0007】
本発明は、また、本発明の酸化エチレンを調製する方法によって得られた酸化エチレンを1,2−エタンジオール、1,2−エタンジオールエーテルまたはエタノールアミンへ転換するステップを含む、1,2−エタンジオール、1,2−エタンジオールエーテルまたはエタノールアミンを作製するための酸化エチレンの使用方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用する触媒組成物は、担持された組成物である。担体は、広範囲の不活性担体から選択されてもよい。そのような担体は、天然または合成無機材料であってもよく、それらは、炭化珪素、粘土、軽石、ゼオライト、活性炭および炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩を含む。アルミナ、マグネシア、ジルコニアおよびシリカ等の耐火性担体が好ましい。最も好ましい担体はα−アルミナである。
【0009】
担体は、好ましくは多孔性であり、少なくとも500m/kg、好ましくは少なくとも600m/kgの表面積を有する。一般的には、表面積は、5000m/kg未満であり、更に一般的には、多くても4000m/kgである。本明細書において使用される表面積は、Brunauer、Emmet and Teller in J.Am.Chem.Soc.60(1938年)309頁〜316頁に記載されている方法によって測定されるB.E.T.表面積であるとみなされる。表面積は、担体の重量を基準に表示される。大きい表面積は、一層活性な触媒をもたらす。
【0010】
担体の吸水率は、一般的には、少なくとも0.3g/g、更に一般的には、少なくとも0.35g/gである。しばしば、吸水率は、多くても0.8g/g、更に頻繁には多くても0.7g/g、または多くても0.55g/g、例えば、0.39g/g、または0.5g/gである。本明細書で使用される吸水率は、ASTM C393に従って測定され、吸水率は、担体の重量に対する、担体の細孔中に吸収されることのできる水の重量として表示される。吸水率が高く、全細孔容積が大きいことが、浸漬による担体上における銀および更なる元素(もしあれば)のより効果的な堆積の観点から好ましい。しかしながら、吸水率が高く、全細孔容積が大きければ、担体、またはそれらから作製される触媒は、低い破砕強度を有する可能性がある。
【0011】
触媒組成物の性能は、担体上でのその他の触媒成分の堆積前に、可溶性残渣を除去するために担体を洗浄すると高めることができる。一方、未洗浄の担体も問題なく使用することができる。担体を洗浄するための有用な方法は、担体を、熱い脱塩水で連続形式で、流出水の電気伝導度がこれ以上減少しなくなるまで洗浄することを含む。脱塩水の適当な温度は、80〜100℃の範囲、例えば、90℃または95℃である。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6368998B1号、米国公開第2002/0010094号およびWO−00/15333が参照されてもよい。
【0012】
本発明の触媒組成物は、触媒活性金属として銀を含む。かなりの触媒活性は、触媒組成物の重量に対して少なくとも10g/kgの銀含有量を用いることによって得ることができる。好ましくは、銀含有量は、触媒組成物の重量に対して10〜500g/kg、更に好ましくは50〜250g/kgの範囲、例えば、105g/kg、または130g/kg、または200g/kgである。
【0013】
触媒の調製は、当業界においては知られており、その知られている方法は、本発明の触媒の調製に適用できる。触媒を調製する方法は、担体を、銀化合物およびその他の触媒成分で浸漬するステップと、銀金属粒子を形成するために還元をステップとを含む。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4761394A号、米国特許第4766105A号、米国特許第5380697A号、米国特許第5739075A号、米国特許第6368998B1号、米国公開第2002/0010094号、WO−00/15333、WO−00/15334およびWO−00/15335が参照されてもよい。
【0014】
浸漬は、pHが12を超える値、例えば、13または13.2以上を有する溶液での浸漬を含むことができる。これは、浸漬溶液への塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウムあるいは水酸化テトラメチルアンモニウムまたは水酸化テトラエチルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウムの十分な量の添加によって達成されてもよい。浸漬溶液の組成によって、20〜70ミリモル/kg(触媒組成物)の範囲、例えば、30、40、50または60ミリモル/kg(触媒組成物)の塩基の量は、十分に高いpHを達成するのに十分であることができる。
【0015】
銀カチオンの銀金属への還元は、それ自体別の処理ステップを必要としないように、触媒組成物が乾燥されるステップ中に達成されてもよい。これは、以下の実施例において記載されるように、浸漬溶液が、還元剤、例えば、オキサレートを含む場合であってもよい。
【0016】
本発明の触媒組成物は、銀に加えて、レニウム、モリブデン、タングステンおよび硝酸塩または亜硝酸塩形成化合物の1種または複数種、あるいは、レニウム、モリブデン、タングステンおよび硝酸塩または亜硝酸塩形成化合物の1種または複数種を含む成分を含む。好ましくは、触媒は、レニウムまたはレニウムを含む成分を含む。レニウム、モリブデンおよびタングステンならびに硝酸塩または亜硝酸塩形成化合物は、オキシアニオンとして、例えば、塩または酸形態の、過レニウム酸(塩)、モリブデン酸(塩)、タングステン酸(塩)、硝酸(塩)または亜硝酸(塩)として適当に用意されてもよい。代表的に、レニウム、モリブデン、タングステンおよび/または硝酸塩または亜硝酸塩形成化合物は、全触媒組成物における元素(レニウム、モリブデン、タングステンまたは窒素)として計算して、それぞれ、0.01〜500ミリモル/kgの量で存在することができる。レニウムは、好ましくは、0.1〜10ミリモル/kgの量で、例えば、0.2ミリモル/kg、または1.5ミリモル/kg、または2ミリモル/kg、または5ミリモル/kgで存在することができる。タングステンは、好ましくは、0.5〜20ミリモル/kgの範囲で、0.75ミリモル/kg、または5ミリモル/kg、または15ミリモル/kg等の量で存在することができる。
【0017】
IA族金属として、本発明の触媒組成物は、高級IA族金属および更にカリウムを含む。本発明によれば、これらのIA族金属の量は、(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にあるような量である(ここで、QHIAおよびQは、それぞれ触媒中に存在する高級IA族金属およびカリウムの量を表す)。Qは、触媒組成物の重量に対して少なくとも0.01ミリモル/kg、より代表的には、少なくとも0.1ミリモル/kgである。代表的には、Qは、触媒組成物の重量に対して多くても50ミリモル/kg、更に代表的には、多くても30ミリモル/kgである。
【0018】
好ましくは、触媒組成物は、高級IA族金属として、ルビジウムおよび、特に、セシウムを含む。セシウムが存在する場合は、セシウムは、高級IA族金属の少なくとも75モル%、特に、少なくとも90モル%、更に詳細には少なくとも99モル%を表してもよい。セシウムが存在する場合は、その他の高級IA族金属(ルビジウムおよびフランシウム)は、存在しないか実質的に存在しなくてもよい。好ましくは、セシウムだけが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属を表す。
【0019】
Rは、1.5〜5の範囲の無次元数である。より代表的には、Rの値は、2〜3の範囲、例えば、2.5である。Rの適当な値は、以下の実施例1〜7および実施例1〜7に続く検討において示されるように、通常の実験によって決定されてもよい。
【0020】
HIAとQの比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.1:1であってもよい。好ましい実施形態においては、とりわけ、QHIAとQの比は、多くても5:1、好ましくは多くても3.5:1、特に、良好な初期活性、触媒の寿命の間の触媒の良好な性能および一層延長された触媒寿命をもたらすものとして多くても2.5:1であってもよい。
【0021】
また、改善された初期触媒活性、触媒の寿命の間の触媒の改善された性能および触媒の改善された寿命にとって、(Q/R)+QHIAの値は、担体の表面積が大きくなるにつれて大きくなってもよいことが分かった。これに関しては、好ましくは、次の式が適用される:
(Q/R)+QHIA=F×SA
(式中、SAは、担体の表面積をm/kgで表し、Fは、0.001〜0.01ミリモル/mの範囲の値を有する係数である)。代表的には、Fの値は、0.002〜0.008ミリモル/mの範囲にある。より代表的には、Fの値は、0.003〜0.006ミリモル/mの範囲にある。これらの範囲内で、触媒は、一定の表面積または一定の(Q/R)+QHIAの値に対して最適なまたは最適に近い初期活性を示す。
【0022】
換言すれば、即ち更に具体的に言えば、担体の表面積が500〜1500m/kg、特に、600〜1500m/kgの範囲にあるときは、(Q/R)+QHIAの値は、好ましくは、1.5〜12ミリモル/kg、特に、2〜6ミリモル/kgの範囲にある。
【0023】
同様に、担体の表面積が1500〜2500m/kgの範囲にあるときは、(Q/R)+QHIAの値は、好ましくは、4〜15ミリモル/kg、特に、6〜10ミリモル/kgの範囲にある。
【0024】
同様に、担体の表面積が2500〜5000m/kg、特に、2500〜4000m/kgの範囲にあるときは、(Q/R)+QHIAの値は、好ましくは、5〜25ミリモル/kg、特に、10〜20ミリモル/kgの範囲にある。
【0025】
本発明の触媒組成物は、更なるIA族金属として、リチウムまたはその化合物を含んでもよい。特に、触媒は、IA族金属としてセシウム、カリウムおよびリチウムを含み、その他のIA族金属は存在しない。リチウムの適当な量は、触媒組成物の全重量に対して1〜500ミリモル/kgの範囲であり、更に適当な量は5〜100ミリモル/kgの範囲であり、例えば、10ミリモル/kg、または15ミリモル/kg、または40ミリモル/kg、または50ミリモル/kgである。触媒表面におけるリチウムまたはその化合物の存在は、一般的に、触媒性能を改善することが分かる。
【0026】
特に好ましい触媒は、担体材料上において、銀に加えてレニウムと、更に、硫黄、リン、ホウ素ならびに硫黄、リンおよびホウ素の1種または複数種を含む成分の1種または複数種から選ぶことができるレニウム補助触媒とを含む。そのような触媒は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4761394A号および米国特許第4766105A号から分かる。レニウム補助触媒は、塩または酸形態において、オキシアニオンとして提供されてもよい。レニウム補助触媒(単一または複数)は、それぞれ、0.1〜30ミリモル/kgの量で存在してもよい。更に、IIA族金属またはIIA族金属を含む成分が存在してもよい。適切には、それぞれのIIA族金属は、0.1〜500ミリモル/kgの量で存在する。IIA族金属は、例えば、カルシウムおよびバリウムであってもよい。
【0027】
本明細書において使用される、触媒組成物中に存在するIA族金属の量は、100℃において脱イオン水で抽出できる限りの量とみなされる。抽出方法は、触媒組成物のサンプル10gを、20mlの脱イオン水中で、100℃で5分間加熱して3回抽出を行い、一緒にした抽出物中で、知られている方法、例えば、原子吸光分光法を使用して該当金属を測定することを含む。
【0028】
本明細書において使用される、触媒組成物中に存在するIIA族金属の量は、100℃において脱イオン水中の10重量%硝酸で抽出できる限りの量とみなされる。抽出方法は、触媒組成物のサンプル10gを、100mlの10重量%硝酸と一緒に30分間沸騰させ(1atm、即ち、101.3kPa)、一緒にした抽出物中で、知られている方法、例えば、原子吸光分光法を使用して該当金属を測定することを含む。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5801259A号が参照される。
【0029】
酸化エチレンを調製するための本発明方法(以降、「エポキシ化方法」とも言う)は多数の方法で行うことができるが、気相方法、即ち、供給原料が気相で、代表的には充填床において、固体物質として存在する触媒と接触させる方法で行うのが好ましい。一般的に、この方法は、連続方法として行われる。
【0030】
供給原料におけるエチレン濃度は、広範囲の内で選択されてもよい。代表的には、供給原料におけるエチレン濃度は、全供給原料当り、多くても80モル%である。好ましくは、同じ基準で、0.5〜70モル%、特に、1〜60モル%の範囲にある。本明細書において使用される供給原料は、触媒と接触する組成物であるとみなされる。
【0031】
本発明のエポキシ化方法は、空気をベースとしたものまたは酸素をベースとしたものであってもよい(「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、3rdedition、Volume 9、1980年、445頁〜447頁を参照)。空気をベースとした方法においては、空気または酸素を富化した空気が、酸化剤源として使用されるが、酸素をベースとした方法においては、高純度酸素(少なくとも95モル%)が、酸化剤源として使用される。現在、ほとんどのエポキシ化プラントは酸素をベースとしたもので、これは、本発明の好ましい実施形態である。
【0032】
供給原料における酸素濃度は、広範囲の内で選択されてもよい。然しながら、実際には、酸素は、一般的に、可燃領域を避ける濃度で適用される。代表的に、適用される酸素濃度は、全供給原料の1〜15モル%、より代表的には2〜12モル%の範囲内である。
【0033】
可燃領域外を維持するためには、供給原料における酸素濃度は、エチレンの濃度を増加するように低くされてもよい。実際に安全な操作範囲は、供給原料組成と共に、また、反応温度および圧力等の反応条件にも依存する。
【0034】
反応調節剤は、酸化エチレンの望ましい形成に関連して、選択性を増加し、エチレンおよび酸化エチレンの二酸化炭素および水への望ましくない酸化を抑制するために供給原料中に存在してもよい。多くの有機化合物、特に有機ハロゲン化物は、反応調節剤として使用されてもよい。窒素酸化物、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはアンモニア等の有機窒素化合物または無機化合物は、同様に使用されてもよいが、これは、一般的にあまり好ましくない。エポキシ化方法の操作条件下では、窒素含有反応調節剤は、硝酸塩または亜硝酸塩の前駆体、即ち、それらは、いわゆる硝酸塩または亜硝酸塩形成化合物であるとみなされる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、EP−A−3642および米国特許第4822900号を参照)。
【0035】
有機ハロゲン化物は、好ましい反応調節剤であり、特に、有機臭素化物、更には有機塩化物が好ましい反応調節剤である。好ましい有機ハロゲン化物は、クロロ炭化水素またはブロモ炭化水素である。更に好ましくはそれらは、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、二臭化エチレン、塩化ビニルまたはそれらの混合物の群から選ばれる。最も好ましい反応調節剤は、塩化エチルおよび二塩化エチレンである。
【0036】
適当な窒素酸化物は、一般式がNO(式中、xは、1〜2の範囲である)のものであり、例えば、NO、NおよびNが挙げられる。適当な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン、硝酸塩および亜硝酸塩であり、例えば、ニトロメタン、1−ニトロプロパンまたは2−ニトロプロパンである。硝酸塩および亜硝酸塩形成化合物、例えば、窒素酸化物および/または有機窒素化合物は、有機ハロゲン化物、特に、有機塩化物と一緒に使用されてもよい。
【0037】
反応調節剤は、一般的に、供給原料において低濃度で、例えば、全供給原料当り、0.01モル%までの濃度で使用されるときに有効である。反応調節剤は、供給原料において、全供給原料当り、0.1×10−4〜50×10−4モル%、特に、0.3×10−4〜30×10−4モル%の濃度で存在するのが好ましい。
【0038】
エチレン、酸素および反応調節剤に加えて、供給原料は、二酸化炭素、不活性ガスおよび飽和炭化水素等の1種または複数種の成分を更に含んでもよい。二酸化炭素は、エポキシ化方法の副生成物である。然しながら、二酸化炭素は、一般的に、触媒活性に逆効果を有する。代表的に、全供給原料当り、25モル%を超える、好ましくは10モル%を超える、供給原料における二酸化炭素の濃度は避けられる。全供給原料当り、0.5モル%以下の低い二酸化炭素濃度が、例えば、全供給原料当り、0.5〜4モル%、特に、0.5〜2モル%の範囲において使用されてもよい。不活性ガス、例えば、窒素またはアルゴンは、30〜90モル%、代表的には40〜80モル%の濃度で供給原料中に存在してもよい。適当な飽和炭化水素は、メタンおよびエタンである。飽和炭化水素が存在する場合は、それらは、全供給原料当り、80モル%までの量で、特に、75モル%までの量で存在してもよい。しばしば、それらは、少なくとも30モル%の量で、更に頻繁には少なくとも40モル%の量で存在する。飽和炭化水素は、酸素可燃限界を増加するために供給原料に添加されてもよい。
【0039】
エポキシ化方法は、広範囲から選ばれる反応温度を使用して行われてもよい。好ましくは、反応温度は、150〜325℃の範囲、更に好ましくは180〜300℃の範囲にある。
【0040】
エポキシ化方法は、好ましくは、1000〜3500kPaの範囲の反応器入口圧力で行われる。「GHSV」またはガス空間速度は、1時間当りに充填触媒の1単位容積上を通過する、標準温度および圧力(0℃、1atm、即ち、101.3kPa)における気体の単位容積である。好ましくは、エポキシ化方法が充填触媒床を含む気相法であるときは、GHSVは、1000〜10000Nl/(l.h)の範囲である。好ましくは、この方法は、1時間当り触媒の1m当り、0.5〜10キロモルの酸化エチレンが生成される範囲、特に、1時間当り触媒の1m当り、0.7〜8キロモルの酸化エチレンが生成される範囲、例えば、1時間当り触媒の1m当り、5キロモルの酸化エチレンが生成される作業速度で行われる。本明細書において使用される作業速度は、1時間当り触媒の単位容積に対する生成される酸化エチレンの量であり、選択率は、転換されるエチレンのモル量に対する形成される酸化エチレンのモル量である。
【0041】
生成された酸化エチレンは、反応混合物から、当業界において知られている方法を使用して、例えば、反応器出口流からの酸化エチレンを水に吸収させることによって、そして、蒸留によって水溶液から酸化エチレンを場合によって回収することによって回収されてもよい。酸化エチレンを含む水溶液の少なくとも一部分は、酸化エチレンを、1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルに転換するためのその後の工程において利用されてもよい。
【0042】
エポキシ化方法において生成された酸化エチレンは、1,2−エタンジオール、1,2−エタンジオールエーテルまたはエタノールアミンに転換されてもよい。本発明は、酸化エチレンの製造のための一層魅力のある方法をもたらすので、それは、同時に、本発明による酸化エチレンの製造および1,2−エタンジオール、1,2−エタンジオールエーテルおよび/またはエタノールアミンの製造における、得られた酸化エチレンのその後の使用を含む一層魅力のある方法をもたらす。
【0043】
1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルへの転換は、例えば、酸性または塩基性触媒を適当に使用する酸化エチレンと水との反応を含んでもよい。例えば、主に1,2−エタンジオールと少量の1,2−エタンジオールエーテルを作製するためには、酸化エチレンは、液相反応において、酸性触媒、例えば、全反応混合物を基準として0.5〜1.0重量%の硫酸の存在下で、50〜70℃で、1bar(絶対、100kPa)で、または、130〜240℃でかつ20〜40bar(絶対、2〜4MPa)の気相反応で、好ましくは触媒の不存在において、10倍モル過剰の水と反応させてもよい。水の割合が低い場合は、反応混合物における1,2−エタンジオールエーテルの割合が増加する。このように生成された1,2−エタンジオールエーテルは、ジ−エーテル、トリ−エーテル、テトラ−エーテルまたはそれに続くエーテルであってもよい。あるいは、1,2−エタンジオールエーテルは、酸化エチレンをアルコール、特に、メタノールまたはエタノール等の第1級アルコールで転換して、水の少なくとも一部分をアルコールで置き換えることによって調製されてよい。
【0044】
エタノールアミンへの転換は、例えば、酸化エチレンとアンモニアとの反応を含んでもよい。無水アンモニアは、モノエタノールアミンの製造を助けるために代表的に使用されるが、無水または水性アンモニアが使用されてもよい。酸化エチレンのエタノールアミンへの転換において適用できる方法については、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4845296A号を参照することができる。
【0045】
1,2−エタンジオールおよび1,2−エタンジオールエーテルは、多種類の工業的用途、例えば、食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗浄剤、伝熱方式等の分野において使用されてもよい。エタノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スイートニング」)において使用されてもよい。
【0046】
特段の指示がない限り、本明細書において記載された低分量有機化合物、例えば、1,2−エタンジオールエーテルおよび反応調節剤は、代表的には、多くても40個の炭素原子、より代表的には、多くても20個の炭素原子、特に、多くても10個の炭素原子、更に詳細には多くても6個の炭素原子を有する。本明細書において定義される炭素原子の数の範囲(即ち、炭素数)は、その範囲の上限に対して特定された数を含む。
【0047】
本発明を一般的に記述したが、更なる理解は、例示のみを目的として用意されかつ特段の指示がない限り限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによって得られてもよい。
【0048】
以下の実施例は、本発明を例示するものである。
【0049】
(実施例1〜9)(実施例3〜5は本発明によるものであり、実施例1、2および6〜9は比較例である)
担体の調製
α−アルミナ担体は、米国特許第5100859A号の実施例1において記載された方法により調製された。担体の表面積は790m/kgであり、吸水率は0.39g/gであった。
【0050】
触媒の調製
銀−アミン−シュウ酸塩貯蔵溶液は、以下の手順で調製された。
【0051】
415gの試薬級水酸化ナトリウムを、2340mlの脱イオン水に溶解し、温度を50℃に調整した。
【0052】
1699gの高純度「スペクトロピュアー」硝酸銀を、2100mlの脱イオン水に溶解し、温度を50℃に調整した。
【0053】
水酸化ナトリウム溶液を硝酸銀溶液に、50℃の溶液温度を維持しながら攪拌しながらゆっくりと添加した。この混合物を15分間攪拌し、次いで、温度を40℃まで下げた。
【0054】
混合ステップにおいて得られた沈殿物から水を除去し、ナトリウムイオンおよび硝酸塩イオンを含んだ水の伝導率を測定した。除去された量に等しい新鮮な脱イオン水の量を銀溶液に戻すために添加した。溶液を、40℃で15分間攪拌した。この方法を、除去された水の伝導率が90μmho/cm未満になるまで繰り返した。次いで、1500mlの新鮮な脱イオン水を添加した。
【0055】
630gの高純度シュウ酸二水和物を、約100g増分で添加した。温度を40℃に保ち、pHを、7.8より上に保持した。
【0056】
高度に濃縮された銀含有スラリーを残すために、この混合物から水を除去した。シュウ酸銀スラリーを30℃まで冷却した。
【0057】
699gの92重量%エチレンジアミン(8重量%脱イオン水)を、30℃を超えない温度に維持しながら添加した。水を添加して、20℃で1.5〜1.55g/mlの密度を有する溶液を得た。得られた銀−アミン−シュウ酸塩貯蔵溶液は、約28〜30重量%の銀を含んでいた。
【0058】
含浸溶液は、硝酸リチウム、過レニウム酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、水酸化セシウム(任意)、硝酸カリウム(任意)および水の予め決められた量を含む水溶液を、記載された銀−アミン−シュウ酸塩貯蔵溶液のサンプルに添加することによって調製された。この量は、調製されるべき触媒の所望の組成を基準として計算によって予め決められた。
【0059】
「担体の調製」の項で示されたように調製された担体のサンプルを、次のようにして含浸溶液で含浸し、乾燥した。担体サンプル(それぞれ、約30g)を、1分間、周囲温度で25mmHg真空下に置いた。次いで、先に示したように調製された約50gの含浸溶液を、担体を浸すために導入し、真空を、更に3分間、25mmHgで維持した。次いで、真空を解除し、500rpmで2分間遠心分離に掛けて触媒前駆体から過剰の含浸溶液を除去した。触媒前駆体を、空気流において、250℃で5.5分間振とうさせながら乾燥した。そのように調製された触媒は、全て、触媒の重量に対して、13.2重量%の銀、1.5ミリモル/kgのレニウム、0.75ミリモル/kgのタングステンおよび15ミリモル/kgのリチウムを含み、それらは、以下の表Iにおいて示されるようなセシウムおよびカリウムを担持していた。
【0060】
触媒のテスト
そのように調製された触媒を、エチレンおよび酸素からの酸化エチレンの製造においてテストした。これを行うために、3.5〜4.5gの粉砕触媒を、ステンレススチール製U字管に入れた。管を溶融金属浴(加熱媒体)に浸漬し、その末端をガス流系に接続した。ガスおよびガス混合物を、「ワンススルー」操作において触媒床を通過させた。使用された触媒の重量および入口ガス流速度は、3300Nl/(l.h)のガス空間速度を与えるために調整された。入口ガス圧は1550kPa(絶対)であった。
【0061】
初めに、触媒を、225℃で3時間、窒素で予備処理し、次いで、ガス混合物の組成を、エチレン30容量%、酸素8容量%、二酸化炭素5容量%、塩化エチル2.5ppm(容量)、残りを窒素に調整した。
【0062】
反応器温度を、1時間当り10℃の速度で245℃まで上昇させ、次いで、温度を、出口ガス流において3.1容量%の酸化エチレン含有量を達成するために調整した。ガス混合物における塩化エチルの濃度は、出口ガス流において一定の酸化エチレン濃度で最適選択率を得るために、2.5〜5ppm(容量)に調整した。老化の結果としての触媒性能低下を補償するために、即ち、出口ガス流において一定の酸化エチレン含有量が維持されるように、温度をゆっくりと増加させた。
【0063】
触媒に対しての、選択率および温度に対する性能値は、以下の表Iにおいて報告される。出口ガス流において一定の酸化エチレン(EO)含有量を達成するために必要とされる低い温度は、触媒の高活性を暗示している。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1および2の触媒のセシウム含有量は、触媒の初期性能が、ほぼ最適であるように選ばれた。実施例2の触媒から出発して、(Q/2.5)+QHIAの値をほぼ一定(即ち、R=2.5)に保ちながらセシウムの一部をカリウムで置き換えることによって、セシウムの選ばれた量に対して最適な初期活性にあって、更に、それらの触媒の(最適)初期活性が、実施例1および2の触媒の初期活性よりも高い触媒を調製することができることが明らかになった(実施例3〜7における、253℃、252℃、251℃、255℃、255℃の初期活性と、実施例1および2における、256℃および257℃の初期活性とを比較されたい)。
【0066】
実施例は、更に、触媒の長期使用において、例えば、少なくとも160T/m(触媒)の蓄積酸化エチレン製造において、本発明の触媒が、比較触媒に比べて、極めて有利に改善された活性および選択率を示すことを示している(例えば、実施例5における、640T/mの蓄積酸化エチレン製造における267℃の活性および87.2モル%の選択率と、実施例2における640T/mでの277℃の活性および85.8モル%の選択率ならびに実施例6における580T/mでの278℃の活性および86.5モル%の選択率とを比較されたい)。特に、本発明の触媒の改善された長期間選択率は、その初期選択率が最高ではない点から見て予想外のものである。
【0067】
一般的に、Rの値は、選択性の高い触媒に対して、触媒が最適初期活性を示すQHIAの値を決め(2種以上の高級IA族金属が存在する場合は、個々の高級IA族金属のモル量の一定比率で)、次いで、1種の高級IA族金属(2種以上の高級IA族金属が存在する場合は、個々の高級IA族金属のモル量の同じ比率で)の一部が、触媒が最適初期活性を示したままであるようにカリウムによって置き換えられてもよいRの割合を決定することによって、通常の実験によって決められてもよい。Rの値は、本明細書を通して使用される初期活性が、160T/m(触媒)未満の蓄積酸化エチレン製造において得られる最高活性である、実施例1〜7において用意されている実験設備を使用して、エチレンの酸化エチレンへのエポキシ化における初期活性を測定することによって決められてもよい。
【0068】
Rの値が、高級IA族金属の含有量によってそれらの初期活性を最適化した触媒から出発することを含む通常の実験によって決定することができるという事実は、初期活性の最適化が本発明の本質的特徴であるということを意味するものではない。例えば、異なる(即ち、非最適の)セシウム含有量を有する以外は実施例1の触媒に類似の触媒からの場合は、本発明に従ってセシウムの一部が、置換されるセシウムの1ミリモル当りカリウム2.5ミリモルの割合で(即ち、R=2.5)カリウムで置換すると、得られる触媒は、それが、実施例1の触媒と比較して、実施例2の触媒に対して得られたものと同様に、高い初期活性を示し、その寿命の間のその性能および寿命それ自身が改善される点で有利である。
【0069】
(実施例10)(本発明による)
α−アルミナ担体は、以下の成分を混合して調製された。
【0070】
1.29μmのd50を持つα−アルミナ67.4重量部(pbw)、
2.3μmのd50を持つα−アルミナ29pbw、
3.酸化アルミニウム(ベーマイト形態)3pbw、
4.シリカ(アンモニア安定化シリカゾルの形態)0.5pbw、および
5.酸化ナトリウム(酢酸ナトリウムの形態)0.1pbw。
【0071】
平均粒径(本明細書においては「d50」と表示する)は、Horiba LA900粒径分析器で測定されたものであり、表示の平均粒径よりも大きい粒子と小さい粒子の等しい球状の等容量で存在する粒子直径を表す。この方法は、粒子を超音波処理で分散させ、二次粒子を一次粒子に分割することを含む。この超音波処理は、値d50における更なる変化が現れなくなるまで続けられ、Horiba LA900粒径分析器を使用する時は、一般的に、5分の超音波処理を必要とする。
【0072】
この混合物に、混合物の重量に対して5重量%のワセリンおよび、混合物の重量に対して9重量%の焼却材料および、混合物の重量に対して0.1重量%のホウ酸を添加した。次いで、水(混合物の重量に対して約30重量%)が、混合物を押し出すことができるようにする量において添加され、次いで、この混合物は、約8mmの直径と8mmの長さの中空円筒の形態の成形体を形成するために押し出された。これらは、次いで、乾燥され、担体Aを製造するために、キルンで、空気中で、1425℃で4時間焼成された。この担体調製のための手順に関しては、米国特許第5100859A号が参照されてもよい。
【0073】
そのように調製された担体の表面積は、2000m/kgであり、吸水率は0.42g/gであった。
【0074】
担体は、米国公開第2002/0010094号の段落0034において記載されている方法に従って、沸騰させた脱イオン水で洗浄に掛けられた。乾燥された担体は、次いで、実施例1〜9において述べられた「触媒の調製」の項において適用された手順による触媒の調製のために使用された。そのように調製された触媒は、触媒の重量に対して13.2重量%の銀、2ミリモル/kgのレニウム、1ミリモル/kgのタングステン、6.4ミリモル/kgのセシウム、4ミリモル/kgのカリウムおよび40ミリモル/kgのリチウムを含んでいた。触媒は、実施例1〜9において概説された手順を使用してテストされた。結果は表IIにおいて与えられる。
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも500m/kgの表面積を有する担体と、前記担体上に堆積した
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分とを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする。)
【請求項2】
Rの値が、2.5である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
が、触媒組成物の重量に対して0.1〜30ミリモル/kgの範囲にある、請求項1または2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
セシウムが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属の少なくとも90モル%である、請求項1から3のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項5】
セシウムが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属の少なくとも99モル%である、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
実質的にセシウムのみが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属である、請求項5に記載の触媒組成物。
【請求項7】
HIAとQの比が、1:1〜5:1の範囲にある、請求項1から6のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項8】
HIAとQの比が、1:1〜3.5:1の範囲にある、請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
担体の表面積が、500〜5000m/kgの範囲にあり、
(Q/R)+QHIA=F×SA
である、請求項1から8のいずれかに記載の触媒組成物。
(式中、SAは、担体の表面積をm/kgで表し、Fは、0.001〜0.01ミリモル/mの範囲の値を有する係数である。)
【請求項10】
Fの値が、0.002〜0.008ミリモル/mの範囲にある、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
Fの値が、0.003〜0.006ミリモル/mの範囲にある、請求項10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
担体の表面積が、500〜1500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜12ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、1500〜2500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、4〜15ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、2500〜5000m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、5〜25ミリモル/kgの範囲にある、請求項1から11のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項13】
担体の表面積が、500〜1500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、2〜6ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、1500〜2500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、6〜10ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、2500〜5000m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIA+の値が、10〜20ミリモル/kgの範囲にある、請求項12に記載の触媒組成物。
【請求項14】
触媒組成物が、更なるIA族金属として、リチウムを、全触媒組成物に対して1〜500ミリモル/kgの量で含む、請求項1から13のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項15】
触媒組成物が、銀に加えて、レニウムと、更に硫黄、リン、ホウ素ならびに硫黄、リンおよびホウ素の1種または複数種を含む成分の1種または複数種から選ぶことができるレニウム補助触媒とを含む、請求項1から14のいずれかに記載の触媒組成物。
【請求項16】
少なくとも500m/kgの表面積を有する担体を選択するステップと、前記担体上に、
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分
を堆積するステップとを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物を調製する方法。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする。)
【請求項17】
請求項1から15のいずれかに記載の触媒組成物の存在下で、エチレンと酸素とを反応させて酸化エチレンを調製する方法。
【請求項18】
有機ハロゲン化物または有機もしくは無機窒素化合物が反応調節剤として存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エチレンおよび酸素を含む供給原料が触媒組成物と接触し、前記供給原料が、エチレンおよび酸素に加えて、二酸化炭素を、前記全供給原料当り、0.5〜2モル%の範囲の濃度で含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれかに記載の、酸化エチレンを調製する方法によって得られた酸化エチレンを、1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルへ転換するステップを含む、1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルを作製するための酸化エチレンの使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも500m/kgの表面積を有する担体を選択するステップと、前記担体上に、
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分とを、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲になるように堆積するステップとを含む、触媒組成物を調製する方法。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする)
【請求項2】
Rの値が、2.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、触媒組成物の重量に対して0.1〜30ミリモル/kgの範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
セシウムが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属の少なくとも90モル%である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
セシウムが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属の少なくとも99モル%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
実質的にセシウムのみが、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
HIAとQの比が、1:1〜3.5:1の範囲にある、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
HIAとQの比が、1:1〜2.5:1の範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
担体の表面積が、500〜5000m/kgの範囲にあり、
(Q/R)+QHIA=F×SA
である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
(式中、SAは、担体の表面積をm/kgで表し、Fは、0.001〜0.01ミリモル/mの範囲の値を有する係数である)
【請求項10】
Fの値が、0.002〜0.008ミリモル/mの範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Fの値が、0.003〜0.006ミリモル/mの範囲にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
担体の表面積が、500〜1500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜12ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、1500〜2500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、4〜15ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、2500〜5000m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、5〜25ミリモル/kgの範囲にある、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
担体の表面積が、500〜1500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、2〜6ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、1500〜2500m/kgの範囲にあり、(Q/R)+QHIAの値が、6〜10ミリモル/kgの範囲にあるか、または、担体の表面積が、2500〜5000m/kgの範囲にあり、かつ(Q/R)+QHIAの値が、10〜20ミリモル/kgの範囲にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更にIA族金属であるリチウムを、全触媒組成物に対して1〜500ミリモル/kgの量で担体上に堆積させる、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
銀に加えて、レニウムと、更に硫黄、リン、ホウ素ならびに硫黄、リンおよびホウ素の1種または複数種を含む成分の1種または複数種から選ぶことができるレニウム補助触媒とを担体上に堆積させる、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも500m/kgの表面積を有する担体と、前記担体上に堆積した
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属および更にカリウムを含むIA族金属または成分とを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1、多くとも2.5:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする)
【請求項17】
少なくとも1500m/kgの表面積を有する担体と、前記担体上に堆積した
銀金属、
レニウム、タングステン、モリブデンまたは硝酸塩もしくは亜硝酸塩形成化合物を含む金属または成分、ならびに
少なくとも37の原子番号を有するIA族金属と更にカリウムを含むIA族金属または成分とを含み、式(Q/R)+QHIAの値が、1.5〜30ミリモル/kgの範囲にある触媒組成物。(式中、QHIAおよびQは、それぞれ前記触媒組成物に存在する、少なくとも37の原子番号を有するIA族金属およびカリウムの量をミリモル/kgで表し、QHIAとQの比は、少なくとも1:1であり、Qの値は、少なくとも0.01ミリモル/kgであり、Rは、1.5〜5の範囲の無次元数であり、前記ミリモル/kg単位は、前記触媒組成物の重量を基準とする)
【請求項18】
担体の表面積が、1500〜2500m/kgの範囲にある、請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項19】
(Q/R)+QHIA=F×SA
である、請求項16から18のいずれかに記載の触媒組成物。
(式中、SAは、担体の表面積をm/kgで表し、Fは、0.001〜0.01ミリモル/mの範囲の値を有する係数である)
【請求項20】
請求項16から19のいずれかに記載の触媒組成物、または請求項1から15のいずれかに記載の方法で得られた触媒の存在下で、エチレンと酸素とを反応させて酸化エチレンを調製する方法。
【請求項21】
有機ハロゲン化物または有機もしくは無機窒素化合物が反応調節剤として存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
エチレンおよび酸素を含む供給原料が触媒組成物と接触し、前記供給原料が、エチレンおよび酸素に加えて、二酸化炭素を、前記全供給原料当り、0.5〜2モル%の範囲の濃度で含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20から22のいずれかに記載の、酸化エチレンを調製する方法によって酸化エチレンを得るステップと、
酸化エチレンを、1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルへ転換するステップと
を含む、1,2−エタンジオールまたは1,2−エタンジオールエーテルを作製する方法。

【公表番号】特表2006−521927(P2006−521927A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509526(P2006−509526)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/009884
【国際公開番号】WO2004/089539
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】