説明

銅の無電解析出のためのめっき溶液

本明細書では無電解銅めっき溶液を開示する。この溶液は、水性銅塩成分と、水性コバルト塩成分と、ポリアミン系錯化剤と、化学光沢剤成分と、ハロゲン化物成分と、この無電解銅めっき溶液を酸性にするのに十分な量のpH調整物質とを含む。また、無電解銅溶液を調製する方法も提供する。水性銅塩成分は、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、酢酸銅(II)、エチレンジアミン硫酸銅(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸銅(II)、およびジエチレンアミン硝酸銅(II)からなる群から選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
集積回路、メモリセルなどの半導体デバイスの製造には、半導体ウェーハ(「ウェーハ」)上に特徴を画定するために行われる一連の製造操作が含まれる。ウェーハは、シリコン基板上に画定される多層構造体の集積回路デバイスを含む。基板レベルには、拡散領域を有するトランジスタデバイスが形成され、その上のレベルには、相互接続金属配線がパターン形成され、トランジスタ素子と電気的に接続されて、所望の集積回路デバイスが画定される。また、パターン形成された導電層は、誘電材料によって他の導電層から絶縁される。
【0002】
集積回路を構築するには、まずトランジスタをウェーハの表面に作製する。次いで、一連の製造プロセス工程によって、配線構造と絶縁構造を多層薄膜層として追加する。通常は、最初に誘電材料(絶縁材料)層を、すでに形成されているトランジスタの上に析出する。続いて金属層(例えば、銅、アルミニウムなど)をこの基層の上に形成し、エッチングにより電気を伝導する導電線を作製し、次いで誘電材料を充填して配線の間に必要な絶縁体を形成する。銅配線の製造に使用されるプロセスは、デュアルダマシンプロセスと呼ばれ、平面コンフォーマル誘電層にトレンチを形成し、そのトレンチにビアを形成して、すでに形成されている下層の金属層との接点を設け、全体に銅を析出させる。次いで、銅を平坦化し(過度に負荷されたものを除去し)、ビアとトレンチにのみ銅が残るようにする。
【0003】
銅配線は通常プラズマ蒸着(PVD)シード層(すなわち、PVD Cu)と、その上に形成される電気めっき層(すなわち、ECP Cu)から構成されるが、このPVD Cuの代わりに、さらにはECP Cuの代わりとしての無電解化学の使用が検討されている。このようにして、銅導電配線の構築に無電解銅析出法と呼ばれるプロセスを使用することができる。無電解銅析出時に、還元剤から銅イオンへ電子が移動し、それにより還元銅がウェーハ表面に析出される。この銅イオンを伴う電子移動プロセスを最大限に活用するために、無電解銅めっき溶液の配合が最適化される。
【0004】
従来の配合では、全体の析出速度を向上させるために、無電解めっき溶液を高アルカリ性のpH(すなわち、pH>9)に維持することが求められる。無電解銅析出に高アルカリ性の銅めっき溶液を使用する上での制限事項としては、ウェーハ表面のポジ型フォトレジストとの不適合性、より長い誘導時間、および(中性からアルカリ性環境において生じる)銅界面のヒドロキシル化による阻害を原因とする核生成密度の低下がある。これらは、溶液が酸性pH環境(すなわち、pH<7)に維持されれば解消することができる制限事項である。酸性無電解銅めっき溶液を使用する上で見出される1つの顕著な制限事項としては、アルカリ性環境において窒化タンタル(TaN)などの特定の基板表面が容易に酸化され、還元銅の接着の問題を生じ、ウェーハのTaN表面のめっきにむらができる傾向がある点がある。パラジウムやルテニウムなどの種々の金属をTaN表面にシーディングすることによってこの制限事項を排除する取組みがこれまで行われてきたが、主に配線抵抗の増大によって最低限の成功しか収められていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の観点から、無電解銅析出プロセスで使用するために酸性pH環境に維持することができる銅めっき溶液の配合を改良することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
大まかに言えば、本発明は、無電解銅析出プロセスで使用するために酸性pH環境に維持することができる銅めっき溶液の改良された配合を提供することにより、これらの必要性を満たす。本発明は、方法および化学溶液を含めた数多くの方法で実現できることを理解する必要がある。以下では本発明のいくつかの実施形態を説明する。
【0007】
一例示的実施形態においては、無電解銅めっき溶液が開示される。この溶液は、水性銅塩成分(aqueous copper salt component)、水性コバルト塩成分(aqueous cobalt salt component)、ポリアミン系錯化剤(polyamine−based complexing agent)、化学光沢剤成分、およびpH調整物質を含む。別の実施形態において、この無電解銅めっき溶液は、約0.001モル濃度(M)からこの塩の溶解度の限界までの間の濃度範囲の水性銅塩成分を含む。さらに別の実施形態において、この無電解銅めっき溶液は、約0.001モル濃度(M)からこの塩の溶解度の限界までの間の濃度範囲の水性コバルト塩成分を含む。尚別の実施形態において、無電解銅めっき溶液は、約0.005モル濃度(M)〜約10.0Mの間の濃度範囲のトリアミン基を有する錯化剤を含む。尚さらに別の実施形態において、無電解銅めっき溶液は、約0.000001モル濃度(M)〜約0.01Mの間の濃度範囲の化学光沢剤成分を含む。
【0008】
本発明の別の態様においては、無電解銅めっき溶液を調製するための方法が開示される。この方法は、めっき溶液の水性銅塩成分と、錯化剤成分の一部と、化学光沢剤成分と、ハロゲン化物成分と、酸性成分とを混合して第1の混合物にすることを含む。水性コバルト塩成分と錯化剤の残りは、混合されて、第2の混合物にされる。無電解銅析出操作で使用する前に、第1の混合物と第2の混合物とを合わせて、最終的な銅めっき溶液にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付の図面とともに以下の詳細な説明によって容易に理解される。この場合、同じ参照番号は同じ構造要素を示す。
【図1】図1は、本発明の一実施形態に基づき無電解銅めっき溶液を調製するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本発明を、無電解銅析出プロセスで使用するための、酸性pH環境から弱アルカリ性環境に維持することができる無電解銅めっき溶液の改良された配合の提供について説明する。しかし、これらの特定の詳細の一部またはすべてがなくても、本発明が実施され得ることは、当業者に明らかである。他の例では、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセスの操作の詳細な説明は記載されていない。
【0011】
半導体製造の用途で使用される無電解金属析出プロセスは、簡単な電子移動概念に基づいている。これらのプロセスは、製造した半導体ウェーハを無電解金属めっき溶液槽に入れること、次いで金属イオンが還元剤から電子を受容するように誘導し、それによってウェーハ表面に還元された金属を析出させることを含む。無電解金属析出プロセスの成功は、めっき溶液の種々の物理的パラメータ(例えば、温度など)および化学的パラメータ(例えば、pH、試薬など)に大いに依存している。本明細書で使用される場合、還元剤とは、酸化還元反応において別の化合物または元素を還元する元素または化合物である。これを行う際に、還元剤は酸化される。すなわち、還元剤は、還元されている化合物または元素に電子を提供する電子供与体である。
【0012】
錯化剤(すなわち、キレート剤またはキレート化剤)は、化合物および元素に可逆的に結合して錯体を形成するために利用することができる任意の化学試薬である。塩は、正荷電陽イオン(例えば、Cu2+など)と負荷電陰イオンとから構成される任意のイオン化合物であり、そのため生成物は中性であり、正味電荷を持たない。単塩は、陽イオンを1種類のみ(酸性塩の水素イオン以外)含む任意の塩種である。錯塩は、1つ以上の電子供与分子に結合した金属イオンからなる錯イオンを含有する任意の塩種である。通常、錯イオンは、1つ以上の電子供与分子が結合した金属原子または金属イオンから構成される(例えば、Cu(II)エチレンジアミン2+など)。プロトン化された化合物は、水素イオン(すなわち、H)を受容して正味の正電荷を有する化合物を形成している化合物である。
【0013】
無電解銅析出用途で使用するための銅めっき溶液を以下に開示する。この溶液の成分は、銅(II)塩、コバルト(II)塩、化学光沢剤成分、およびポリアミン系錯化剤がある。一例示的実施形態において、銅めっき溶液は、脱酸素化した液体を使用して調製される。脱酸素化した液体の使用によって、ウェーハ表面の酸化が実質的に排除され、最終的に調製される銅めっき溶液のレドックス電位に対してこの液体が及ぼす可能性がある一切の効果が無効となる。一実施形態において、銅めっき溶液はさらにハロゲン化物成分も含む。使用できるハロゲン化物種の例には、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物が含まれる。
【0014】
一実施形態において、上記銅(II)塩は単塩である。銅(II)単塩の例には、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、酢酸銅(II)、およびこれらの混合物が含まれる。塩が効果的に溶解して溶液になり、ポリアミン系錯化剤と錯体を形成し、酸性環境において還元剤により酸化されて、ウェーハの表面に還元銅を析出させる限りは、本質的に任意の銅(II)単塩がこの溶液で使用できることを理解するべきである。
【0015】
一実施形態において、上記銅(II)塩は、銅(II)イオンに結合したポリアミン電子供与分子との錯塩である。銅(II)の錯塩の例には、エチレンジアミン硫酸銅(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸銅(II)、ジエチレントリアミン硝酸銅(II)、ビス(ジエチレントリアミン)硝酸銅(II)、およびこれらの混合物が含まれる。得られる塩が溶液に溶解し、ポリアミン系錯化剤と錯体を形成し、酸性環境において還元剤により酸化され、ウェーハの表面上に還元銅を析出させる限りは、ポリアミン分子に結合した本質的に任意の銅(II)の錯塩がこの溶液で使用できることを理解するべきである。
【0016】
一実施形態において、銅めっき溶液の銅(II)塩成分の濃度は、約0.0001モル濃度(M)から、上記に開示した種々の銅(II)塩の溶解度の限界までの間の濃度に維持される。別の例示的実施形態において、銅めっき溶液の銅(II)塩成分の濃度は、約0.001Mから、1.0Mまたは溶解度の限界までに維持される。得られる銅めっき溶液が、無電解銅析出プロセス時にウェーハ表面への銅の無電解析出を行える限りは、銅(II)塩の溶解度の限界までの本質的に任意の値に銅めっき溶液の銅(II)塩成分の濃度を調整できることを理解すべきである。
【0017】
一実施形態において、コバルト(II)塩はコバルト単塩である。コバルト(II)単塩の例には、硫酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、およびこれらの混合物が含まれる。この塩が、効果的に溶液に溶解し、ポリアミン系錯化剤と錯体を形成し、酸性環境においてコバルト(II)塩を還元して、ウェーハの表面に還元銅を析出させる限りは、本質的に任意のコバルト(II)単塩をこの溶液で使用できることを理解するべきである。
【0018】
別の実施形態において、上記コバルト(II)塩は、コバルト(II)イオンに結合したポリアミン電子供与分子との錯塩である。コバルト(II)の錯塩の例には、エチレンジアミン硫酸コバルト(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸コバルト(II)、ジエチレントリアミン硝酸コバルト(II)、ビス(ジエチレントリアミン)硝酸コバルト(II)、およびこれらの混合物が含まれる。この塩が、効果的に溶液に溶解し、ポリアミン系錯化剤と錯体を形成し、酸性環境において銅(II)塩を還元して、ウェーハの表面に還元銅を析出させる限りは、本質的に任意のコバルト(II)の単塩をこの溶液で使用できることを理解するべきである。
【0019】
一実施形態において、銅めっき溶液のコバルト(II)塩成分の濃度は、約0.0001モル濃度(M)から、上記に開示した種々のコバルト(II)塩種の溶解度の限界までの間に維持される。一例示的実施形態において、銅めっき溶液のコバルト(II)塩成分の濃度は、約0.001M〜1.0Mまでの間に維持される。得られる銅めっき溶液が、無電解銅析出プロセス時に許容される速度にてウェーハ表面への銅の無電解析出を行える限りは、コバルト(II)塩の溶解度の限界までの本質的に任意の値に銅めっき溶液のコバルト(II)塩成分の濃度を調整できることを理解するべきである。
【0020】
一実施形態において、化学光沢剤成分は、被膜層内で機能して、微視的レベルで銅の析出を制御する。光沢剤は、高電位の部分に誘引される傾向があるため、本実施形態においては、その領域を一時的に覆い、他の部分に銅を析出させる。析出物が平らになるとすぐに高電位の局所部分が消失して、光沢剤が他へ移動する、すなわち、銅めっき溶液が優先的に高電位の領域にめっきを形成して荒く艶のないめっきを不可避的に形成する通常の傾向を、光沢剤が阻害することを理解すべきである。光沢剤(レベリング剤とも呼ばれる)は、最も電位が高い表面の間を連続して移動することにより、大きな銅結晶の形成を防ぎ、小さな等軸結晶の充填密度を可能な限り高める(すなわち、核形成を向上させる)ことにより、本実施形態においては、滑らかで光沢があり延性の高い銅析出が得られる。光沢剤の一例はビス−(3−スルホプロピル)−ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)であるが、吸着された担体と置き換わることによってめっき反応を促進する任意の低分子量の硫黄含有化合物が、本明細書に記載の実施形態において機能し得る。一実施形態において、化学光沢剤成分の濃度は、約0.000001モル濃度(M)から光沢剤の溶解度の限界までの間に維持される。別の実施形態において、化学光沢剤成分は、約0.000001Mから約0.01Mまでの間の濃度を有する。さらに別の実施形態において、化学光沢剤は、約0.000141Mから約0.000282Mまでの間の濃度を有する。得られる銅めっき溶液において、化学光沢剤の核形成を促進する特性が維持され、ウェーハ表面への十分な密度の銅の析出を可能にする限りは、化学光沢剤の溶解度の限界までの本質的に任意の値に銅めっき溶液の化学光沢剤成分の濃度を調整できることを理解するべきである。
【0021】
一実施形態において、上記ポリアミン系錯化剤は、ジアミン化合物である。上記溶液に使用できるジアミン化合物の例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、3−メチレンジアミン、およびこれらの混合物が含まれる。別の実施形態において、ポリアミン系錯化剤は、トリアミン化合物である。上記溶液に使用できるトリアミン化合物の例には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、エチレンプロピレントリアミン、およびこれらの混合物が含まれる。さらに別の実施形態において、ポリアミン系錯化剤は、芳香族ポリアミン化合物または環状ポリアミン化合物である。芳香族ポリアミン化合物の例には、ベンゼン−1,2−ジアミン、ピリジン、ジピリド、ピリジン−1−アミンが含まれる。化合物が、上記溶液中の遊離金属イオン(すなわち、銅(II)金属イオンおよびコバルト(II)金属イオン)と錯体を形成し、容易にこの溶液に溶解し、酸性環境においてプロトン化される限りは、本質的に任意のジアミン化合物、トリアミン化合物、または芳香族ポリアミン化合物をめっき溶液の錯化剤として使用できることを理解するべきである。一実施形態においては、この溶液の本用途に特有の特性を向上させるために、促進剤(すなわち、スルホン酸スルホプロピル)および抑制剤(すなわち、PEG(ポリエチレングリコール))を含めた他の化学添加剤が銅めっき溶液に低濃度で含有される。
【0022】
別の実施形態において、銅めっき溶液の錯化剤成分の濃度は、約0.0001モル濃度(M)から、上記に考察した種々のジアミン系、トリアミン系、および芳香族ポリアミンまたは環状ポリアミンの錯化剤種の溶解度の限界までの間に維持される。一例示的実施形態において、銅めっき溶液の錯化剤成分の濃度は、約0.005M〜10.0Mの間に維持されるが、溶解した総金属濃度よりも高くなければならない。
【0023】
通常、溶液は、銅めっき溶液の錯化剤成分によって、高アルカリ性となり、そのため(銅(II)とコバルト(II)のレドックス対の間の電位差が大きすぎるために)幾分不安定となる。一例示的実施形態においては、溶液をpH≦約6.4の酸性にするのに十分な量の酸がめっき溶液に添加される。別の実施形態においては、溶液をpH≦約6.4の酸性にして、調整後の得られる溶液のpHが変わるのを防ぐために、緩衝剤が添加される。さらに別の実施形態においては、この溶液のpHを約4.0〜6.4の間に維持するために、酸および/または緩衝剤が添加される。さらに別の実施形態においては、この溶液のpHを約4.3〜4.6の間に維持するために、酸および/または緩衝剤が添加される。一実施形態において、上記酸のアニオン種は、銅めっき溶液の銅(II)塩成分およびコバルト(II)塩成分のそれぞれのアニオン種と一致するが、これらのアニオン種は一致しなくてもよいことを理解するべきである。さらに別の実施形態においては、溶液を弱アルカリ性(すなわち、pHを約8未満)にするために、pH調整物質が添加される。
【0024】
酸性銅めっき溶液は、無電解銅析出の用途で利用される場合に、アルカリ性めっき溶液よりも優れた操作上の利点が数多くある。酸性銅めっき溶液は、ウェーハ表面に析出する還元銅イオンの付着性を向上させる。これは、ヒドロキシル末端基が形成されることに起因して核形成反応が阻害され、核形成密度が減少し、大きな粒子が成長して表面粗さが増すという、アルカリ性銅めっき溶液に認められることが多い問題である。さらにまた、パターン化フィルムを通した銅の無電解銅析出による銅配線の直接パターン化などの用途では、酸性銅めっき溶液が、ウェーハ表面上の遮断材料およびマスク材料に対する選択性を向上させるのを助け、通常塩基性溶液に溶解する標準的なポジ型レジストフォトマスク樹脂材料を使用できるようにする。
【0025】
上記で考察した利点に加えて、酸性銅めっき溶液を使用して析出させた銅は、アルカリ性銅めっき溶液を使用して析出させた銅よりも、より低い予備アニーリング抵抗性特性を示す。本明細書に開示の通り、無電解銅析出プロセス時の得られる銅析出速度が、目的とする用途に許容され、この溶液が上記で考察した操作上のすべての利点を示す限りは、本明細書に開示する通りに銅めっき溶液のpHを本質的に任意の酸性環境(すなわち、pH<7.0)に調整できることを理解するべきである。一般的に、溶液のpHが低下する(すなわち、より酸性になる)ほど、銅の析出速度は遅くなる。しかし、錯化剤の選択(例えば、ジアミン系、トリアミン系、芳香族ポリアミンなど)と銅(II)塩およびコバルト(II)塩の濃度を変えることにより、酸性pH環境による銅析出速度の何らかの低下を補うのを助けることができる。
【0026】
一実施形態において、銅めっき溶液は、無電解銅析出プロセス時に約摂氏0度(℃)〜70℃に維持される。一例示的実施形態において、銅めっき溶液は、無電解銅析出プロセス時に約20℃〜70℃の間の温度に維持される。温度は、銅析出時におけるウェーハ表面への核形成密度および銅析出速度に影響を及ぼす(主に、核形成密度と銅析出速度は温度に正比例する)ことを理解するべきである。析出速度は、得られる銅層の厚さに影響を及ぼし、核形成密度は、空隙、銅層内の吸蔵形成、および銅層の下層遮断材料への接着性に影響を及ぼす。そのため、無電解銅析出プロセス時の銅めっき溶液の温度設定を最適化することで、銅の核形成密度が高められ、バルク析出の核形成相に続く析出が制御されて、銅析出速度が、目標とする銅の膜厚を達成するのに最適化される。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態による、無電解銅めっき溶液を調製するための方法のフローチャートである。方法100は、水性銅塩成分と、ポリアミン系錯化剤の一部と、化学光沢剤成分と、ハロゲン化物成分と、銅めっき溶液の酸性成分の一部とを混合して第1の混合物とする操作102から始まる。続いて、方法100は、錯化剤の残り部分と水性コバルト塩成分とを混合して第2の混合物とする操作104に進む。一実施形態においては、第2の混合物のpHが酸性となるように、第2の混合物のpHが調整される。第2の混合物を酸性に維持することの利点は、このことによってコバルト(II)が活性形態に維持されることであることを理解するべきである。次いで、方法100は、銅めっき工程で使用する前に、第1の混合物と第2の混合物とを混合して最終的な銅めっき溶液とする操作106へと続く。
【0028】
一実施形態においては、第1の混合物と第2の混合物は、合わせる前に個別の永久貯蔵容器に保存される。上記永久保存容器は、第1の混合物と第2の混合物とを混合して最終的な銅めっき溶液とする準備ができるまで、これらの混合物を輸送および長期間保存できるように設計されている。容器が第1の混合物および第2の混合物のいずれの成分とも反応しない限りは、任意のタイプの永久貯蔵容器が使用され得る。この予備混合ストラテジーには、貯蔵中に経時的にプレートアウト(すなわち、銅の還元をもたらす)を生じることがない、より安定した銅めっき溶液を配合するという利点があることを理解するべきである。
【0029】
本発明は、本発明の一実施形態に従って銅めっき溶液の試料配合物を説明した実施例1を参照することにより、さらに理解することができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1 硝酸塩系銅めっき配合物)
本実施形態では、pH6.0、硝酸銅(Cu(NO)濃度0.05M、硝酸コバルト(Co(NO)濃度0.15M、エチレンジアミン(すなわち、ジアミン系錯化剤)濃度0.6M、硝酸(HNO)濃度0.875M、臭化カリウム(すなわち、ハロゲン化物成分)濃度3ミリモル濃度(mM)、およびSPS(すなわち、化学光沢剤)濃度約0.000141M〜約0.000282Mの間の、硝酸塩系銅めっき溶液の配合物を開示する。次いで、得られた混合物を、アルゴンガスを使用して脱酸素化して、電位を下げ、銅めっき溶液を酸化させる。
【0031】
実施例1を続けると、一実施形態において、エチレンジアミンの一部と、硝酸銅と、硝酸と、臭化カリウムとを予備混合して第1の予備混合溶液とすることを含む予備混合配合ストラテジーを使用して、硝酸塩系銅めっき溶液の配合物を調製する。錯化剤成分の残りの部分とコバルト塩成分とを予備混合して、第2の予備混合溶液とする。次いで、無電解銅析出操作で使用する前に、最終的な混合のために、第1の予備混合溶液と第2の予備混合溶液とを適切な容器に加えて、最終的な無電解銅めっき溶液とする。上記に開示した通り、この予備混合ストラテジーには、貯蔵中に経時的にプレートアウトを生じることがない、より安定した銅めっき溶液を配合するという利点がある。
【0032】
以上、本明細書において本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明してきたが、本発明は、その趣旨および範囲から逸脱することなく多くの他の特定の形態で実現され得ることを、当業者は理解するべきである。したがって、本実施例および本実施形態は例示的なものとして見なされ、限定的なものとして見なされず、また本発明は、本実施例および本実施形態において示す詳細に限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲内において改変され実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解銅めっき溶液であって、
水性銅塩成分と、
水性コバルト塩成分と、
ポリアミン系錯化剤と、
化学光沢剤成分と、
該無電解銅めっき溶液のpHを約8未満にするのに十分な量のpH調整物質と、
を含む、無電解銅めっき溶液。
【請求項2】
前記水性銅塩成分が、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、酢酸銅(II)、エチレンジアミン硫酸銅(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸銅(II)、およびジエチレンアミン硝酸銅(II)からなる群から選択される、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項3】
前記水性コバルト塩成分が、硫酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、エチレンジアミン硫酸コバルト(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸コバルト(II)、トリス(エチレンジアミン)硫酸コバルト(II)、およびジエチレンアミン硝酸コバルト(II)からなる群から選択される、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項4】
前記ポリアミン系錯化剤が、ジアミン化合物、トリアミン化合物、または芳香族ポリアミン化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項5】
前記ジアミン化合物が、3−メチレンジアミン、エチレンジアミン、およびプロピレンジアミンからなる群から選択される、請求項4に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項6】
前記芳香族ポリアミン化合物が、ベンゼン−1,2−ジアミン、ピリジン、ジピリド、およびピリジン−1−アミンからなる群から選択される、請求項4に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項7】
前記無電解銅めっき溶液のpHが約4.0と約6.8との間にある、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項8】
前記pH調整物質が、硫酸、硝酸、塩酸、フルオロホウ酸、および酢酸からなる群から選択される、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項9】
ハロゲン化物成分もさらに含む、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項10】
前記ハロゲン化物成分の濃度が約0.0001モル濃度(M)〜約5.0Mである、請求項9に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項11】
前記ハロゲン化物成分が、臭化カリウム、塩化リチウム、ヨウ化カリウム、フッ化塩素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、フッ化アンモニウム、およびヨウ化アンモニウムからなる群から選択される、請求項10に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項12】
前記化学光沢剤成分が、ビス−(3−スルホプロピル)−ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)である、請求項1に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項13】
無電解銅めっき溶液であって、
水性銅塩成分であって、約0.001モル濃度(M)から該水性銅塩成分の溶解度の限界までの濃度を有する、水性銅塩成分と、
水性コバルト塩成分と、
ポリアミン系錯化剤と、
化学光沢剤成分と、
該無電解銅めっき溶液のpHを約8未満にするのに十分な量のpH調整物質と、
を含む、無電解銅めっき溶液。
【請求項14】
ハロゲン化物成分もさらに含む、請求項13に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項15】
無電解銅めっき溶液であって、
水性銅塩成分と、
水性コバルト塩成分であって、約0.001モル濃度(M)から該水性コバルト塩成分の溶解度の限界までの濃度を有する、水性コバルト塩成分と、
ポリアミン系錯化剤と、
化学光沢剤成分と、
該無電解銅めっき溶液のpHを約8未満にするのに十分な量のpH調整物質と、
を含む、無電解銅めっき溶液。
【請求項16】
ハロゲン化物成分もさらに含む、請求項15に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項17】
無電解銅めっき溶液であって、
水性銅塩成分と、
水性コバルト塩成分と、
約0.005モル濃度(M)〜約10.0Mの間の濃度を有するポリアミン系錯化剤と、
化学光沢剤成分と、
該無電解銅めっき溶液のpHを約8未満にするのに十分な量のpH調整物質と、
を含む、無電解銅めっき溶液。
【請求項18】
ハロゲン化物成分もさらに含む、請求項17に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項19】
無電解銅めっき溶液であって、
水性銅塩成分と、
水性コバルト塩成分と、
ポリアミン系錯化剤と、
約0.000001モル濃度(M)〜約0.01Mの間の濃度を有する化学光沢剤成分と、
該無電解銅めっき溶液のpHを約8未満にするのに十分な量のpH調整物質と、
を含む、無電解銅めっき溶液。
【請求項20】
ハロゲン化物成分もさらに含む、請求項19に記載の無電解銅めっき溶液。
【請求項21】
無電解銅めっき溶液を調製するための方法であって、
水性銅塩成分と、錯化剤の一部と、化学光沢剤成分と、ハロゲン化物成分と、酸とを混合して、第1の混合物とすることと、
水性コバルト塩成分と該錯化剤の残りの部分とを混合して、第2の混合物とすることと、
銅析出操作で使用する前に、該第1の混合物と該第2の混合物とを一緒に合わせることと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記水性銅塩成分が、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、酢酸銅(II)、エチレンジアミン硫酸銅(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸銅(II)、およびジエチレンアミン硝酸銅(II)からなる群から選択される、請求項21に記載の無電解銅めっき溶液を調製するための方法。
【請求項23】
前記水性コバルト塩成分が、硫酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、エチレンジアミン硫酸コバルト(II)、ビス(エチレンジアミン)硫酸コバルト(II)、トリス(エチレンジアミン)硫酸コバルト(II)、およびジエチレンアミン硝酸コバルト(II)からなる群から選択される、請求項21に記載の無電解銅めっき溶液を調製するための方法。
【請求項24】
前記化学光沢剤が、ビス−(3−スルホプロピル)−ジスルフィド二ナトリウム塩(SPS)である、請求項21に記載の無電解銅めっき溶液を調製するための方法。
【請求項25】
前記第2の混合物が酸性pHを有する、請求項21に記載の無電解銅めっき溶液を調製するための方法。
【請求項26】
前記錯化剤が、ジアミン化合物、トリアミン化合物、または芳香族ポリアミン化合物からなる群から選択されるポリアミン系錯化剤である、請求項21に記載の無電解銅めっき溶液を調製する方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−542911(P2009−542911A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518421(P2009−518421)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/069762
【国際公開番号】WO2008/002737
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(598161761)ラム リサーチ コーポレイション (19)
【Fターム(参考)】