説明

銅合金付着抗菌紙及びその製造方法

【課題】コストが安値で、優れた印字性および易読性を有し、Cuを70〜90質量%以上含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物がシート状の紙面上に非連続に付着された銅合金抗菌紙及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70〜90質量%含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物を電子ビーム加熱式蒸着にて30〜94mg/m付着させてなる連続ではない非緻密な膜を有し、その膜が前記シート状紙の少なくとも一つの主面上の総面積の70〜90%を被覆している銅合金付着抗菌紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金組成物が電子ビーム加熱式蒸着にてシート状紙の少なくとも一つの主面上に非連続に付着された抗菌紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌効果を有する金属原子が紙製品の表面に付着された、所謂、金属原子付着抗菌紙は、医療や介護の現場、或いは、一般家庭においてもニーズが高く、その金属原子の紙製品の表面への付着方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等のドライプロセス方式が多用されている。
付着される金属原子としては、銅、銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種類の金属の原子が主に使用されており、特に、銀および銅は、高い抗菌性を示す一般的な金属として使用されている。
最近では、特に医療や介護の現場での感染症対策として、カルテ、メモ用紙等の抗菌紙への需要が高まっており、抗菌性と共に、医療用記録媒体として、ボールペン等の筆記具での書き易さと書かれた字の消え難さ(印字性)と、書かれた字の見え易さ(易読性)とが要求されている。
また、製造コスト面からも、一般的に多用されている銀よりも安価であり、且つ、保管時に変色し難い金属或いは金属合金を使用した金属原子付着抗菌紙に対する需要も高まっている。
【0003】
特許文献1には、Ag20〜60原子%、Cu20〜60原子%、Sn20〜60原子%の組成で、非晶質相を呈するときに、一層優れた抗菌・防カビ作用を発現するAg−Cu−Sn系合金及びその利用方法が開示されている。
特許文献2には、病院のカルテなどに好適である優れた抗菌性を示す、シート状の紙の少なくとも一つの主面に1×1014〜1×1017原子/cm
の金属原子が付着した、抗菌紙の酸塩基度のpHが6〜9の範囲に調整された抗菌紙が開示されており、使用される金属原子は、銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる少なくとも1種類の金属の原子である。
特許文献3には、抗菌性及び抗カビ性の少なくともいずれかを有する抗菌性積層体において、その抗菌性積層体は、ポリマーフィルムまたは紙を含む基材層4、抗菌性及び抗カビ性の少なくともいずれかを有する金属が蒸着された抗菌層2、前記抗菌層2を被覆するための被覆層1とから少なくとも構成され、前記抗菌層2が前記基材層4と前記被覆層1との間に形成され、前記被覆層1が、実質的に無孔のポリマー被膜であることを特徴とする抗菌性積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特開平09−111378号公報
特許文献2:特開平11−179870号公報
特許文献3:国際公開WO2007/132912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献に開示される従来の銀或いは銀合金を主体とする抗菌紙或いは抗菌性積層体は、抗菌性は充分ではあるが、製造コストが高く、特に、印字性および易読性が充分とは言えなかった。
本発明は、これらの欠点を改良し、製造コストが安く、優れた印字性および易読性を有し、Cuを70〜90質量%以上含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物がシート状の紙面上に非連続に付着された銅合金抗菌紙及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、金属原子が付着された金属原子付着抗菌紙の印字性および易読性を高めるためには、抗菌性を損なわない範囲の量の金属原子を、下地となるシート状の紙面上に電子ビーム加熱式蒸着にて付着させ、連続状態ではない非緻密な膜を形成することが効果的であることを見出した。
従来の金属原子付着抗菌紙では、下地となるシート状の紙面上に金属原子により構成された金属膜が連続して緻密に形成されており、その表面が滑り易くてボールペン等の筆記具にて印字し難く、更に、光が反射して印字が見辛い状態になり易くなっていた。
そこで、下地となるシート状の紙面を、抗菌性が損なわれない範囲で、不連続に部分的に露出させることにより、印字性が良くなり、易読性も改良されるのである。
また、付着される金属原子としては高価な銀の代替品として、製造コスト面から安価な銅を使用することが好ましいが、銅は経時変化による変色が激しいので、比較的製造コストの安い適切な銅と他の適切な金属との銅合金組成物を使用することにより、経時変化による変色を防止することができる。
【0007】
即ち、本発明の抗菌紙は、シート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70〜90質量%含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物を電子ビーム加熱式蒸着にて30〜94mg/m付着させてなる連続ではない非緻密な膜を有し、その膜が前記シート状紙の少なくとも一つの主面上の総面積の70〜90%を被覆していることを特徴とする。
【0008】
Cuの含有量が70質量%未満では、使用される他の金属のコストとの関係でコスト高となり、90質量%を超えると経時変化による変色が激しくなる。
Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素は、抗菌性、蒸着光沢色、製造コスト等を考慮し、必要に応じて適切に選択されれば良い。
銅合金組成物の付着量が、30mg/m未満では抗菌性が不充分となり、94mg/mを超えると形成される蒸着膜が連続になり易い。
連続ではない非緻密な膜の被覆面積率がシート主面上の総面積の70%未満では、抗菌性が不十分であり、90%を超えると印字性及び易読性が悪くなる。
【0009】
本発明にて、非連続で非緻密な膜とは、連続した緻密な蒸着膜ではないが、表面の均質性を有しており、その膜表面の算術平均表面粗さRaが0.02〜0.1μmで、最大高さRzが0.2〜0.5μmで、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.3〜1.3であることを特徴とする。
算術平均表面粗さRaが0.02μm未満では、印字性及び易読性が悪くなり、0.1μmを超えると、表面が粗くなり手触り感が悪くなる。
最大高さRzが0.2μm未満では、印字性及び易読性が悪くなり、0.5μmを超えると、表面が粗くなり手触り感が悪くなる。
二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが1.3を超えると、膜の均質性が失われ、0.3未満では、均質性が飽和する。
【0010】
また、本発明の抗菌紙の製造方法は、電子ビームを発生させる電子ビーム発生機構と、前記電子ビームの照射位置に蒸着材料を保持する蒸着材料保持部と、この蒸着材料保持部に対し外周面の一部を対向して設けられ、駆動機により回転駆動される冷却ドラムと、この冷却ドラムの前記外周面の一部に紙を巻回した状態でシート状紙を走行させる紙走行手段と、以上の各機構を収容する真空容器とを有する電子ビーム加熱式蒸着装置において、銅合金組成物を構成する融点の異なるそれぞれの金属が単独に投入された複数の坩堝を、前記走行しているシート状紙の幅方向に並列に設置し、前記電子ビームを、前記複数の坩堝上に、走行しているシート状紙の幅方向に順次スキャンして照射し、前記走行しているシート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70重量%以上含有しAg、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素からなる銅合金組成物を30〜94mg/m付着させることを特徴とする。
【0011】
本製造方法により、シート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70〜90質量%
含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物を電子ビーム加熱式蒸着にて30〜94mg/m付着させてなる連続ではない非緻密な膜を有し、その膜がシート状紙の少なくとも一つの主面上の総面積の70〜90%を被覆していることを特徴とする抗菌紙が製造される。
電子ビームを複数の坩堝上に、走行しているシート紙の幅方向に順次スキャンして照射することにより、シート状紙の主面上に、連続した緻密な蒸着膜ではないが、その表面が均質性を有しており、表面の算術平均表面粗さRaが0.02〜0.1μmで、最大高さRzが0.2〜0.5μmで、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.3〜1.3である蒸着膜が形成される。
【0012】
この場合、銅合金組成物を形成するCuと他の金属種では融点が異なるので、Cuを収容した坩堝と他の金属種を収容した坩堝への電子ビームの滞留時間を一定として、各々の坩堝の電子ビーム照射面積を適切に調整するか、或いは、電子ビームの照射面積を一定として、各々の坩堝への電子ビームの滞留時間を適切に調整することにより、目的とする銅合金組成物の蒸着膜形成が促進される。
また、電子ビームのスキャン照射は一回ではなく、適切な回数のスキャン照射をすることが均質な目的とする銅合金組成物の蒸着膜を形成するうえで好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、製造コストが安く、優れた印字性および易読性を有し、Cuを70〜90質量%以上含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物が非連続に付着された銅合金抗菌紙及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である銅合金付着抗菌紙の模式断面図である。
【図2】本発明の製造方法の一実施形態にて使用する電子ビーム加熱式蒸着装置を示す概略図である。
【図3】本発明の製造方法の一実施形態にて使用する電子ビーム加熱式蒸着装置にて使用する蒸着材料保持部の平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態である銅合金付着抗菌紙について、添付の図面を参照に詳細を説明する。
図1に示すように、本発明の銅合金付着抗菌紙21は、シート状紙22の表面に不連続な非緻密膜23が30〜94mg/m付着されており、その被覆面積は、シート状紙22の総面積の70〜90%である。
シート状紙22は、薄紙、上質紙、画用紙、ケント紙、コート紙であり、一般的にその表面にボールペン等の筆記用具を用いて記録を行うことを目的とする紙である。特に、好ましくは、上質なPPCコピー用紙等である。
不連続な非緻密膜23は、Cuを70〜90質量%含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物を、シート状紙22の表面上に電子ビーム加熱式蒸着にて、30〜94mg/m付着させて形成される。
Cuの含有量が70質量%未満ではコスト高となり、90質量%を超えると経時変化による変色が激しくなり、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素は、抗菌性、蒸着光沢色、価格等を考慮し、必要に応じて適宜選択されれば良い。
【0016】
その付着量が30mg/m未満では抗菌性が充分ではなく、94mg/mを超えると、不連続な非緻密膜23が連続になり易くなる。
また、不連続な非緻密膜23の被覆面積率が、シート状紙22の面積の70%未満では抗菌性が不充分となり、90%を超えると印字性及び易読性が悪くなる。
また、不連続な非緻密23は、連続した緻密な蒸着膜ではないが、均質性を有しており、その表面の算術平均表面粗さRaが0.02〜0.1μm、最大高さRzが0.2〜0.5μm、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.3〜1.3である。
算術平均表面粗さRaが0.02μm未満では、印字性及び易読性が悪くなり、0.1μmを超えると、表面が粗くなり手触りが悪くなる。
最大高さRzが0.2μm未満では、印字性及び易読性が悪くなり、0.5μmを超えると、表面が粗くなり手触りが悪くなる。
二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが1.3を超えると、膜の均質性が失われる。0.3未満では、均質性は飽和する傾向がある。
【0017】
図2は、本発明の製造方法において使用する電子ビーム加熱式蒸着装置の一例を示す概略図である。図中符号1は真空容器であり、図示しない真空ポンプにより内部が減圧される。真空容器1の内部中央には、金属等からなる円筒状の冷却ドラム2が配置され、図示しない駆動装置により回転駆動される。
冷却ドラム2の外周面の一部には、長尺のシート状紙5がドラム周方向に向けて巻回され、アンコイラ3およびリコイラ4の間で連続走行されるようになっている。冷却ドラム2のシート状紙巻回部と対向して、例えば、図3に示す様な、複数の坩堝8を有する蒸着材料保持部6が配置され、坩堝AにはCuが、坩堝BにはAg、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種の金属が収容されている。坩堝Aと坩堝Bには、その上部に坩堝上蓋A1、B1がなされ、Cuと金属の融点及び目標とする銅合金膜の組成を考慮して、蒸着材料保持部6の側方に配置された電子銃等の電子ビーム発生機構(図示略)より発生される電子ビーム12が照射される坩堝開口部A2、B2がそれぞれ最適の面積に調整される。
電子ビーム12は坩堝AのA2、坩堝BのB2を繰り返し複数回スキャン照射する。このスキャン照射によりA2よりのCuとB2よりの金属とが銅合金化した蒸気14が冷却ドラム2上のシート状紙5上に蒸着する。
冷却ドラム2と蒸着材料保持部6との間には、蒸着範囲を規制するための隔壁16が設けられている。この隔壁16は、冷却ドラム2を収容する半円筒状部分16Aを有し、この半円筒状部分16Aの内周面と、冷却ドラム2のフィルム巻回部の外周面との間には
一定の間隙が形成されている。半円筒状部分16Aには、蒸着材料保持部6と対向する位置に、長方形状の蒸気通過口18が冷却ドラム2の軸線方向へ向けて形成されている。この蒸気通過口18はシート状紙5の蒸着幅と同じ全長を有する。
【0018】
次に、上記装置を用いた本発明の銅合金付着抗菌紙の製造方法について説明する。
先ず、真空容器1内の圧力を1×10−2
〜1Pa、より好ましくは、5×10−2〜5×10−1
Paで平衡させる。
電子ビーム発生機構および磁界発生機構10を作動させ、電子ビーム12を、走行しているシート状紙5の幅方向に並列に設置された銅合金組成物を構成するCuが収容された坩堝Aと金属が収容された坩堝Bを有する蒸着材料保持部6の直上を、走行しているシート状紙5の幅方向に繰り返し複数回スキャン照射し、連続的に銅合金化蒸気14を発生させることにより、シート状紙5の表面に、シート紙の幅方向に連続した緻密な蒸着膜ではないが、均質性を有しており、その表面の算術平均表面粗さRaが0.02〜0.1μmで、最大高さRzが0.2〜0.5μmで、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比Rq/Rzが0.3〜1.3である銅合金蒸着膜を形成させる。
【0019】
上記の例では、目的とする均質な銅合金組成物を得るために、坩堝AのA2、坩堝BのB2にて各々の電子ビーム照射面積を適切に調整したが、照射面積を同一として坩堝A、坩堝Bへの電子ビーム照射の滞留時間を適切に調整し、目的とする均質な銅合金組成物を得ても良い。
【実施例】
【0020】
図2の装置、図3の蒸着材料保持部を使用して、PPC用コピー用紙表面上に、次の運転条件にて、坩堝AにCu、坩堝BにZnを入れて、坩堝照射部面積比(Cu入り坩堝へのビーム照射面積/Zn入り坩堝へのビーム照射面積)とPPC用コピー用紙表面上への付着量を表1に示すように変更し、銅亜鉛合金が蒸着された抗菌紙を作製した。
[運転条件]
真空容器内圧力:10-2 〜5×10-1 Pa
酸素導入圧力:1×10-1 Pa
電子ビーム発生機構:電子衝撃陰極式自己加速型電子銃(90゜偏向)
加速電圧:30kV
エミッション電流:2A
電子銃のスキャン幅:500mm
スキャン照射回数:20回
蒸着材料保持部とシート状紙間の距離:250mm
冷却ドラム2の外径:400mm
シート状紙の走行速度:10m/分
【0021】
作製された各抗菌紙につき、銅亜鉛合金蒸着膜の面積被覆率、銅亜鉛合金組成、表面粗さRa、Rz、Rqを測定した。
面積被覆率は、走査イオン顕微鏡で観察した抗菌紙表面の走査イオン像(SIM像)から確認した。
銅亜鉛合金組成は、原子吸光分析装置により皮膜の表面を10箇所分析し、その平均値を求めた。
表面粗さRa、Rz、Rqは、皮膜の表面をオリンパス株式会社製の走査型共焦点レーザ顕微鏡LEXT OLS−3000を用い、対物レンズ100倍の条件でレーザ光を照射して、その反射光から距離を測定し、そのレーザ光を試料の表面に沿って直線的にスキャンしながら距離を連続的に測定することにより求めた。
その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
また、得られた各試料につき、印字性、易読性、抗菌性につき測定した。
印字性は、市販インクジェットプリンター(エプソン社製、PM−950C)にて印字した後、ティッシュペーパーでふき取り印字跡の状態を目視し、完全に残るものを○、一部残るものを△、全く残らないものを×とした。
易読性は、市販インクジェットプリンター(エプソン社製、PM−950C)にて印字した後、得られた印字を目視し、眩しくなく非常に読み易いものを○、読み易いものを△、眩しくて読み難いものを×とした。
抗菌性は、試料を100cm切り取り、銅合金皮膜側に黄色ブドウ球菌の洗浄菌体を10個になるように塗布した。この様にして得た供試体を室内で24時間放置後の菌数を測定し、残存菌数が300個/cm以下のものを○とし、300個/cm以上のものを×とした。
その結果を表2に示す。
【0024】
【表2】

表1、表2より、本発明の銅合金付着抗菌紙は、優れた印字性、易読性および抗菌性を有することがわかる。
【0025】
以上、本発明の実施形態の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
21 銅合金抗菌紙
22 シート状紙
23 不連続な非緻密膜
1 真空容器
2 冷却ドラム
3 アンコイラ
4 リコイラ
5 シート状紙
6 蒸着材料保持部
8 坩堝
10 磁界発生機構
12 電子ビーム
14 銅合金蒸気
16 隔壁
16A 半円筒状部分
18 蒸気通過口
A 坩堝
B 坩堝
A1 坩堝上蓋
B1 坩堝上蓋
A2 坩堝開口部
B2 坩堝開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70〜90質量%含有し、Ag、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素を10〜30質量%含有する銅合金組成物を電子ビーム加熱式蒸着にて30〜94mg/m付着させてなる連続ではない非緻密な膜を有し、その膜が前記シート状紙の少なくとも一つの主面上の総面積の70〜90%を被覆していることを特徴とする抗菌紙。
【請求項2】
電子ビームを発生させる電子ビーム発生機構と、前記電子ビームの照射位置に蒸着材料を保持する蒸着材料保持部と、この蒸着材料保持部に対し外周面の一部を対向して設けられ、駆動機により回転駆動される冷却ドラムと、この冷却ドラムの前記外周面の一部に紙を巻回した状態でシート状紙を走行させる紙走行手段と、以上の各機構を収容する真空容器とを有する電子ビーム加熱式蒸着装置において、銅合金組成物を構成する融点の異なるそれぞれの金属が単独に投入された複数の坩堝を、前記走行しているシート状紙の幅方向に並列に設置し、前記電子ビームを前記複数の坩堝上に前記走行しているシート紙の幅方向に順次スキャンして照射し、前記走行しているシート状紙の少なくとも一つの主面上に、Cuを70重量%以上含有しAg、Al、Cr、Fe、Mg、Ni、Si、Sn、Ti、Zn、Zrからなるグループから選択された一種或いは複数の元素からなる銅合金組成物を30〜94mg/m付着させることを特徴とする請求項1に記載の抗菌紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40798(P2012−40798A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184947(P2010−184947)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】