説明

銅膜の製造方法

【課題】本発明は、雰囲気制御をすることなく、従来より低温にて、基材上で銅微粒子を焼結して銅膜を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布し、液体又は固体からなる遮蔽物を該組成物の直上に配置して塗膜を加熱して銅微粒子を焼結する工程を含む銅膜の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布する工程とこれをを加熱する工程とを含む、銅膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス分野において利用される配線基板は集積度向上を目的として微細化が進んでいる。従来、配線パターンの作製にはスパッタ・真空蒸着などの真空プロセスが用いられることが主であり、これらのプロセスを利用して数十nmといった微細なパターンの作製が可能になってきている。しかし、真空プロセスは精度の良い薄膜ができるが、一方で成膜速度が遅くプロセスコストが高価であった。
【0003】
近年、これら真空プロセスに替わる手法として注目されているのがプリント配線技術である。この手法は、金属粒子を分散させたペーストを基材状に印刷し、加熱処理して基板上に配線する技術である。真空プロセスに比べて微細配線の点では劣るが、近年の印刷技術の発展に伴い数ミクロンレベルのパターン形成が可能になっており低コストプロセスの配線技術として期待されている。
【0004】
しかし、プリント配線技術においては金属を焼結するために非常に高温で加熱処理する必要があるためにポリマー基板などは損傷されてしまう可能性がある。一方、安価なプリント配線基板を作るためにはポリエステルフィルムなどの汎用性の高いフィルム基板を用いることが望ましい。例えば、最も汎用性の高いポリエステルフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合は、基板の耐久性から200℃以下の加熱処理で焼結できることが望ましい。
【0005】
一般に、金属粒子の粒径を微小にすることによって、金属ペーストの焼成温度を低減させるという技術は公知である。例えば、粒径100nm以下の金属微粒子を用いることで比較的低温で焼結できる技術が開示されている(特許文献1)。また、粒子が微小であることは微細な印刷配線をする上でもパターン精度が上がり有利になる。
【0006】
金属微粒子を利用して微細な配線パターンを形成する手法に関しては、例えば銀微粒子では既に方法論が確立されていて、スクリーン印刷法で印刷可能な銀微粒子ペーストが商品化されている(藤倉化成社製:ドータイト、ハリマ化成社製:導電性銀ペースト、ナミックス社製:HIMEC)。しかし、銀微粒子を用いると材料の銀自体が高価であるため、ペーストの作製単価も高価になりプリント配線のメリットであるコストダウンには限界があり、汎用品として広く普及する上では大きな障害となっている。
【0007】
加えて、銀微粒子は配線幅及び配線間スペースが狭くなっていくにつれ、エレクトロマイグレーションに起因する断線が問題となる。エレクトロマイグレーション現象に起因する断線を回避する上では、金属微粒子として銅微粒子を用いることが有効であることが知られている。銅は、導電性が金や銀と同等である上にエレクトロマイグレーションが格段に少なく、さらに銀よりも材料単価が低いため、銅微粒子のプリント配線技術への応用は大いに期待されている。
【0008】
貴金属である銀は、酸化を受けがたい特性を有しておりペースト状にして保存する上でも酸化されない状態で維持することが容易である。一方で卑金属である銅微粒子は酸化されやすい特性を有しており、特に焼結させるために加熱すると周囲の酸素と容易に反応し酸化される。銅微粒子が一旦酸化されると表面が安定化され焼結現象は起きにくくなる。そのため銅微粒子を焼結させるには、雰囲気制御をして還元性ガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で行う必要があった。
【0009】
公知の例では、350℃で窒素ガス雰囲気中で加熱することによって焼結し抵抗率5.0μW・cmを得ている例や(特許文献2)、窒素ガス雰囲気において250℃で加熱焼成後、水素ガス雰囲気中において300℃で加熱焼成し、3μΩ・cmを得ている例(特許文献3)、グリセリンなど有機物還元剤を充満させた炉内にて300℃で焼成して、4.8μΩ・cmの薄膜を得ている例(特許文献4)がある。これらの例では、プロセス中に雰囲気制御をしなければならないためにプロセスコストが高く、また加熱温度も高温であり使用できる基板が限られる。
【0010】
他にも、単に加熱するだけでなくプロセスの工夫によって焼結度を上げている例がある。アルゴン/水素混合気体中において150℃でプラズマ還元を行っている例(特許文献5)や、銀粒子焼結の実施例ではあるが電子線照射により焼結を進める例(特許文献6)や、レーザーを用いて焼成している例(特許文献7)が公知の例として挙げられる。これらの例は単なる加熱による焼成とは異なる手法であり、ポリマー基板の使用を可能に出来る可能性があるが、プラズマ還元は真空プロセスを経るためコストが高くなり、電子線照射・レーザーも新たな装置を用いなければならない点でコストの問題が大きい。
【0011】
このように、従来の技術では銅微粒子を焼結するために雰囲気制御などの高価なプロセスや高温加熱が必要であり、プロセスコスト・基板の汎用性の点で問題があるために銅微粒子ペーストをプリント配線基盤の配線材料として実用化することは困難であった。
【特許文献1】特許第2561537号公報
【特許文献2】国際公開第2004−050559号パンフレット
【特許文献3】特開2004−164876号公報
【特許文献4】特許第3939735号公報
【特許文献5】特開2004−247572号公報
【特許文献6】特開2006−26602号公報
【特許文献7】特開2006−38999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、銅微粒子を雰囲気制御をすることなく従来より低温にて焼結できる方法を提供し、その方法により基材上に銅膜を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、銅微粒子と還元性物質を含有する塗膜の直上に遮蔽物を配置して加熱することによって従来より低温で焼結して銅膜を製造することが可能であることを見出した。
【0014】
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、該組成物の外気との接触を遮断するための液体又は固体からなる遮蔽物を該組成物の直上に配置して基材上に形成した塗膜を加熱して銅微粒子を焼結する工程とを含む銅膜の製造方法。
(2)銅微粒子成分の個数平均粒子径が1nm以上200nm以下である、(1)に記載の銅膜の製造方法。
(3)基材上の塗膜を加熱する工程において、加熱温度が100℃以上300℃以下である、(1)又は(2)に記載の銅膜の製造方法。
(4)前記遮蔽物が、前記組成物に対して形状追随性を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の銅膜の製造方法。
(5)前記遮蔽物がシリコンオイル、シリコングリース、シリコンゴムシート、フッ素系ゴムシートのいずれかである(1)〜(4)のいずれかに記載の銅膜の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、銅微粒子を還元ガスや不活性ガスなどの雰囲気での制御を要することなく、大気雰囲気で、例えば200℃以下といった従来よりも低温で加熱することにより、銅微粒子を焼結して、銅膜を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の銅膜の製造方法は、銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、遮蔽物を該組成物の直上に配置して塗膜を加熱する工程とを含む、銅膜の製造方法である。
【0017】
本発明に用いられる銅微粒子は、粒子径が1μmより小さい粒子である銅ナノ粒子が含まれるものである。具体的には、本発明に用いられる銅微粒子の平均粒子径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。ここで、粒子径とは、一次粒径を指し、電子顕微鏡による形態観察によって測定できる。また、平均粒子径の算出は、個数平均に基づいており、電子顕微鏡で観察できる範囲の粒子の内、任意の100個の粒子の選び出し、それらの粒子径を粒子の個数で平均することにより求められる。
【0018】
粒子径が200nm以下の銅微粒子は、表面エネルギーが大きくなり、融点が低下して、金属粒子間が低温で融着して銅薄膜が形成しやすくなるので、好ましい。また、印刷配線をする上でも粒子径が小さいことは好ましく、数ミクロン幅・間隔の印刷をするためには、銅粒子径は100nm以下であることが好ましい。
【0019】
銅微粒子の様態は酸化されていないことが好ましいが、塗膜に還元性物質を含有させるため、必ずしも酸化されていないことが必須であるわけではなく、粒子が一部又は全部酸化されていても良い。酸化銅としては酸化第一銅及び酸化第二銅があり、銅の酸化状態に制限はないが、金属銅への還元の容易性から、酸化第一銅が好ましい。
【0020】
本発明で用いる銅微粒子は、例えばアルドリッチ社から粒子径50nm、100nmの銅微粒子を、Alfa Aesar社から粒子径200の銅微粒子を、入手することが可能である。また、特開平1−259108などに記述されているような公知の手法で合成することができる。
【0021】
本発明に用いられる銅微粒子には、上記銅ナノ粒子のほかに、粒子径が1μm以上10μm以下の銅マイクロ粒子が含まれていてもよい。この場合、本発明に用いられる銅微粒子のうちの銅ナノ粒子の重量分率をMa、銅マイクロ粒子の重量分率をMbとしたときに、Ma/(Ma+Mb)の値が0.7以上であることが好ましく、0.8以上1以下であることがより好ましい。この値が0.7より小さい場合は、膜全体の焼結に影響を及ぼす可能性がある。銅マイクロ粒子は、銅ナノ粒子に比べて焼結しにくいが、銅微粒子の中に少量存在していることで、導電パスとして利用できるので、導電しやすくなる利点がある。
【0022】
還元性物質:
銅微粒子を従来より低温で加熱して焼結するためには、加熱時に銅微粒子表面が酸化されていないことが好ましい。そのため、本発明においては、銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布して、還元性物質を含有する塗膜を形成する。
【0023】
本発明で用いる還元性物質としては、常温においてで銅微粒子の酸化を妨げる作用、すなわち抗酸化作用を有する物質、銅微粒子を焼結する工程で加熱したときに抗酸化作用を発揮する物質、またはその両方の性質を有する物質のいずれも用いることができる、また、これらの還元性物質を複数を混合して用いてもよい。本発明の製造方法においては、銅微粒子を焼結する工程において、塗膜、すなわち塗布した組成物中の銅微粒子表面が酸化されていない状態を保つことが重要である。
【0024】
本発明で使用する還元性物質は、上記の性質を有する無機還元性物質、有機還元性物質のいずれであってもよい。無機還元性物質としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等水素化合物、二酸化イオウ等のイオウ化合物、亜硫酸塩などの低級酸化物の塩、ヨウ化水素、などを例示できる。有機還元性物質としては、アルコール類、糖類、アルデヒド類、ヒドラジン又はその誘導体、シュウ酸、フェノール類、アスコルビン酸などを例示できる。
【0025】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等の多価アルコール類が例示できる。また、グリセロール、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、ヘキシトール等の糖アルコール類も使用可能であり、ペンチトールにはキシリトール、リビトール、アラビトールが含まれる。また、ヘキシトールには、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等が含まれる。
【0026】
糖類としては、リボース、キシロース、キシルロース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、タガトース、ガラクトース、ラクトース、キシロース、トレハロース、が例示できる。
【0027】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソビチルアルデヒド等の脂肪族飽和アルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド等の脂肪族ジアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒド等の脂肪族不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒオ、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド等の芳香族アルデヒド、フルフラール等の複素環式アルデヒド等を例示できる。
【0028】
フェノール類としては、フェノール、カテコール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、レゾルシノール等を例示できる。
【0029】
ヒドラジン誘導体としては、N−アミノモルホリン、オキサロヒドラジド、4,4−ジメチル−1−フェニル−3−ピラゾリジノン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、2,4,6−トリスイソプロピルベンゼンスルホニルヒドラジド、クロロアセチルヒドラジド、o−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド、m−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド、p−ニトロベンゼンスルホニルヒドラジド等を例示することができる。
【0030】
銅微粒子と還元性物質を含む組成物:
本発明において、基材上に塗布される組成物は、銅微粒子及び還元性物質を含有する。必要に応じて、後記する分散媒、バインダー、その他添加剤を含有していてもよい。
【0031】
組成物中の銅微粒子の重量は、好ましくは3重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上90重量%以下である。銅微粒子の含有量が少なすぎる場合には、1回の焼成によって得られる銅焼結体(銅膜)の量が少なくなる可能性がある。また、銅微粒子の含有量が多すぎる場合は、塗膜がペースト状になりにくく、基材への塗布がしにくくなる可能性がある。
【0032】
組成物中の還元性物質の含有量は、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。還元性物質の量が少なすぎると、塗膜焼成の際に焼成中の銅微粒子の還元が不十分になる可能性がある。還元性物質が多すぎると、還元性物質が固体の場合には、固形分を溶解させるにくくなる可能性があり、また還元性物質が液体の場合には、ペーストの固形分濃度が低くなりすぎて塗膜として基材に塗布しにくくなる可能性がある。
【0033】
基材上に塗布する組成物には、基材上に形成する塗膜中で銅微粒子と還元性物質を分散させるために、適量の液体が分散媒として含まれていることが好ましい。本発明において使用できる分散媒としては、有機溶媒及び/または水が挙げられる。分散媒として用いる有機溶媒の例としては、液体であるアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒およびエーテル系溶媒を例示できる。また、上記の還元性物質が液体である場合には、これを分散媒として兼ねて使用してもよい。
【0034】
分散媒として用いるアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール系溶媒、およびエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0035】
分散媒として用いるケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどのほか、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン類などが挙げられる。
【0036】
分散媒として用いるアミド系溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチルなどが挙げられる。これらエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0037】
分散媒として用いるエーテル系溶媒としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0038】
これらの分散媒は、単独で用いても、2種以上の分散媒を混合して用いても良い。
【0039】
本発明における基材に塗布される組成物には、必要に応じて分散剤、バインダー、その他添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
銅微粒子がを焼結する上、焼結後の膜状態の緻密性や印刷プロセスにおける取扱いを考慮すると、銅微粒子は組成物中または基材に塗布後の塗膜中に良好に分散していることが好ましい。良好に分散している状態とは、塗膜中において銅微粒子が凝集体を形成していない又は凝集体の形成が少なく、塗膜内の銅微粒子の流動性が高い状態をいう。銅微粒子を組成物中に良好に分散させるには、分散剤を添加することにより化学的に分散状態を補助する方法と、物理的に分散させる方法、及びこれらを組み合わせる方法が挙げられる。
【0041】
銅微粒子を分散させるのに適した分散剤としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の極性基を有する低分子化合物、オリゴマー、ポリマーを例示できる。極性基を有する低分子化合物としては、アルコール系化合物、アミン化合物、アミド化合物、アンモニウム化合物、燐系化合物等を例示できる。極性基を有するポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル等を例示できる。また、分散剤として界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非極性界面活性剤等を例示できる。極性基を有するポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、等を例示できる。
【0042】
分散剤を用いて銅微粒子を分散させる方法としては、分散剤の存在下で銅微粒子を合成して銅微粒子の表面に分散剤を配位させる方法や、分散剤の存在下で銅微粒子の分散処理を行うことで銅微粒子の表面に配位させる方法などが考えられる。分散処理の手法については後述する。
【0043】
バインダーとは、粒子間同士や粒子と基板との間を接着させる樹脂のことであって、添加することにより、緻密な膜を形成しやすくなる。バインダーとして使用しうる樹脂は、塗膜に含まれる液体に可溶であるか、樹脂自体が塗布されるのに十分な流動性を持っていれば、特に制限はない。
【0044】
バインダーとして使用できる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリイミド樹脂等を例示できる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(クレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェノルエタン型エポキシ樹脂、ポリアルコールポリグリコール型エポキシ樹脂、グリセリントリエーテル型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、シクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどが挙げられる。液状のエポキシ樹脂は粘度が低いので好ましく、具体的にはフェノキシアルキルモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントグリシジルエーテルおよび液状の各種ポリシロキサンジグリシジルエーテルなどが例示される。
【0045】
その他添加剤としては、金属塩化合物が例示できる。金属塩化合物は還元されると金属が析出するので、析出した金属が焼結銅微粒子間をつなぐ役割をしてより緻密な焼結が出来る可能性がある。具体的には、ギ酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、銅メトキシド、ネオデカン酸銅、銅ケトイミン、2−エチルヘキサン酸銅、チオ硫酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、オクタン酸銅等が挙げられる。
【0046】
本発明で用いる銅微粒子と還元性物質を含有する組成物またはこれを塗布した塗膜中には、銅微粒子以外の金属の粒子が含まれていても良い。具体的には金、銀、プラチナ、亜鉛、錫の粒子が挙げられる。金、銀、プラチナは、銅よりも酸化されにくく導電性も非常に高いので、組成物またはこれを塗布した塗膜中に一部混合していることで、より導電性の高い焼結体が得られる効果がある。また、亜鉛、錫は銅よりも融点が低いため、容易に融解して焼結を補助する効果が得られる。これら銅微粒子以外の金属の組成物中の含有率は、銅微粒子に対する割合が好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0047】
銅微粒子と還元性物質を含有する組成物(ペースト)の調製方法:
本発明で用いる組成物は、上記の銅微粒子、還元性物質、分散媒、必要に応じて分散剤、バインダー、その他の添加剤等の塗膜構成物を適切に混合することによりペーストとして形成することが好ましい(本明細書において、ペースト状の該組成物を「ペースト」と記載することがある。)。各構成物が良好に混練されているペーストが好ましく、特に銅微粒子がペースト内で良好に分散され、銅微粒子の凝集が少なく流動性の高い状態になっていることが好ましい。
【0048】
銅微粒子をペースト中に分散させる方法としては、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、2本ロール法、プラネタリーミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ジェットミル、乳鉢による破砕等を挙げることができる。通常は、これらの分散手段の複数を組み合わせて分散を行う。これらの分散処理は室温で行ってもよく、溶媒の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。これらの分散方法の中でも、ペースト中の銅微粒子の凝集を再分散させるためには、3本ロール法、乳鉢による破砕が特に好ましい。また、これらの分散処理を、上記の分散剤の存在下で行うとさらに分散状態が良くなることがある。
【0049】
基材:
本発明において用いられる基材は、基板状基材又はフィルム状基材が好ましい。基板としては、無機物質を素材とする無機基板及び有機物質を素材とする有機基板のいずれも使用可能である。無機基板としては、シリコン・ゲルマニウムなどの半導体基板、ガラス基板、セラミック基板を用いることが出来る。有機基板としては、焼成過程において損傷を受けない素材からなる基板であればよく、ポリイミド基板、ポリエステル基板、エポキシ基板、アラミド基板、フッ素樹脂基板などの基板を使用可能である。具体的には、カプトン、ウルテム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。また、製造過程においてロールトゥロールで処理することが可能であるフィルム状の基材も好ましく用いることができる。200℃以上の高温で処理する場合には耐熱性の高いカプトンフィルム、150℃以下の低温で処理する場合にはPETフィルムが、入手が容易であり品質も安定しており、好ましい。
【0050】
ペーストの基材への塗布:
基材への銅微粒子を含有するペーストの塗布は、ペースト状物を基板に塗布する場合に用いられる一般的な方法を用いることができ、例えばコーティング法、印刷法を適用することができる。コーティング法としては、例えばバーコート法、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法などが挙げられる。印刷方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、マイクロコンタクトプリント法、インクジェット法などが挙げられる。
【0051】
液体又は固体からなる遮蔽物:
本発明は、液体又は固体からなる遮蔽物を銅微粒子及び還元剤を含有する組成物の直上に配置することにより、該組成物の外気との接触を遮断して、塗膜を加熱して銅微粒子を焼結する工程を含む。外気との接触を遮断することにより、酸素と銅微粒子との反応を防ぐことができる。
【0052】
遮蔽物の配置:
本発明は、固体又は液体からなる遮蔽物を、銅微粒子と還元剤を含有する組成物の直上に配置して、該組成物と外気(外部雰囲気)接触を遮断し、塗膜を加熱して銅微粒子を焼結する工程を含む。遮蔽物を配置した状態で組成物を加熱することで、特に外気中の酸素との反応を防ぎながら銅微粒子を焼結させて銅膜を得ることができる。
【0053】
遮蔽物として液体を配置する場合は、液体により組成物と外気が接触しないように配置されていればよい。例えば、液体が組成物を塗布した基材全体を覆っていても良いし、組成物のみを覆っていても良い。液体を配置する場合、塗膜組成物と該液体は直接接触することになる。ただし、加熱工程で塗膜組成物に含まれる分散媒の一部又は全てが蒸発し、その蒸気が気泡等の形で塗膜組成物と液体遮蔽物との間に存在することにより、結果として一部の塗膜組成物と液体遮蔽物が直接接触しない状態になっても、組成物と外気は接触しないので問題はない。
【0054】
具体的な手法としては、液体を満たした容器に、組成物を塗布した基材を投入し基材を液体に浸漬させた状態で加熱する手法が挙げられる。また、粘性の高い液体の場合は、基材上の塗膜上に液体を直接滴下することにより該液体により被覆する方法を適用することが可能である。
【0055】
遮蔽物として用いる液体は、沸点が塗膜を加熱する温度よりも高い必要がある。好ましい液体は、高温であっても蒸気圧が低く、揮発しにくい液体である。具体的には、シリコンオイル、植物油、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル化合物、流動パラフィン、ノベック7600HFE(住友スリーエム社製)、ノベックFC43(住友スリーエム社製)等のフッ素系液体、イミダゾリウム塩誘導体、ピリジニウム塩誘導体等のイオン性液体、シリコングリースなどが挙げられ、これらの液体を組み合わせても良い。なかでもシリコンオイルは沸点が400℃以上と高く、高温でも蒸気圧が低く揮発しにくいことから、遮蔽物としては好ましい。
【0056】
例えば、遮蔽物としてシリコンオイルを用い、基材としてポリマーフィルムを用いる場合は、シリコンオイルを容器に入れて、そのシリコンオイル中に、銅微粒子を含むペーストを塗布したポリマーフィルムを浸漬させることにより基材の直上に配置し、シリコンオイルごとポリマーフィルム全体を加熱する方法を好ましく適用することができる。また、銅微粒子を含むペーストがポリマーフィルム上の一部分にだけパターニングされている場合は、銅微粒子を含むペーストが存在する部分にのみ遮蔽物としてシリコンオイルを滴下したり、またはペーストが存在する部分に遮蔽物としてシリコングリースを塗布して、ポリマーフィルムを加熱する方法も好ましく用いることができる。
【0057】
遮蔽物として固体を配置する場合は、組成物を塗布した基材の上に固体をのせて覆い、組成物が外気(外部雰囲気)との接触ができないようにする方法を用いることができる。この場合、遮蔽物である固体は、固体の自重で押さえて固定しても良いし、固体上に重りをのせて組成物とより密着させても良い。エラストマーなどの柔軟性のある素材を用いる場合は、加熱工程において組成物から発生する蒸気により固体と組成物の間に空間ができる場合があるが、発生した蒸気により外気が直接組成物に触れない状態であれば問題ない。
【0058】
遮蔽物として用いる固体としては、金属製、セラミック製、樹脂製等、塗膜の加熱温度より低い温度で融解や変性などを起こさないものであれば特に限定されない。可撓性のある物質からなる固体の遮蔽物は、基板や塗膜への形状追随性があり、外気との遮断性がより高まるので好ましい。例えば、樹脂、特にエラストマーからなる遮蔽物は、基板や塗膜の形状に追随性があり好適である。特にシリコーン系ゴム、フッ素系ゴムは融解温度が比較的高い上に化学的変性に強いため、遮蔽物として優れている。形状追随性の点から、エラストマーの弾性率は0.1MPa〜100MPaであることが好ましい。
【0059】
遮蔽物として用いる固体の形状は制限される物ではないが、形状が追随しやすいフィルム状又はシート状であることが好ましい。
【0060】
本発明の製造方法によれば、遮蔽物を用いることにより外気と組成物との接触が遮断されるので、外気(外部雰囲気)の条件は特に制限されず、これを制御する必要はない。外気は大気であっても良く、その他反応性の低い窒素等の不活性ガス雰囲気、還元性ガス雰囲気でも良い。
【0061】
塗膜の加熱工程:
本発明における組成物を塗布した基材上の塗膜の加熱は、組成物を安定に加熱して銅微粒子を焼結することが出来れば特に制限されない。加熱する工程は、前記の遮蔽物を配置する工程の後であっても良い。加熱方法としては、オーブン、ホットプレート、加熱炉等を用いて加熱する方法、また予め加熱した遮蔽物を塗膜に接触させることにより塗膜を加熱する方法が挙げられる。また、レーザーなどの電磁波による加熱や、プラズマなどの活性化された気体を用いた加熱方法などによっても良い。好ましい加熱処理温度は、50℃以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さらに好ましくは130℃以上180℃以下である。加熱温度が低すぎると還元剤の活性が下がり、銅微粒子同士の焼結現象も起こりにくくなる。加熱温度が高すぎると銅微粒子が酸化しやすくなり、特にポリマー製基材を用いる場合には基材の耐熱性に問題が出てくる可能性がある。
【0062】
塗膜の加熱時間は加熱温度に応じて適宜調整することができる。例えば200℃で加熱する場合は20分程度加熱すれば十分な抵抗率をもった銅膜を製造することができる。加熱時間は、加熱温度や基材の耐熱性等を勘案して適切に決めることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定される物ではない。
【0064】
焼結体の金属組成は、株式会社リガク製X線回折装置(Rigaku−RINT 2000)を用いて測定した。銅微粒子については回折角度2θの値のピークが金属銅では43.3°、50.4°、酸化第一銅では36.4°、42.3°、酸化第二銅では35.6°,38.7°にそれぞれ得られることが知られており、このピーク面積比から焼結体の組成を求めた。
【0065】
焼結体の構造は、日立ハイテクノロジー社製走査電子顕微鏡装置(S−4800)により測定した。
【0066】
銅薄膜の抵抗率は、株式会社ダイアインスツルメンツ製ロレスターGPを用いて4端子4探針法により測定した。
【0067】
[実施例1]
エチレングリコールにポリビニルピロリドン(Mw=40000)を10重量%溶解させた(以下、PVP10%エチレングリコール溶液という)。銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストをバーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、フィルム上に銅微粒子ペースト膜を形成した。アルミ容器中にシリコンオイル(東レダウコーニング、SRX100)を満たし、シリコンオイル中に銅微粒子ペースト膜を塗布したカプトンフィルムを浸漬して、アルミ容器ごとオーブンに入れて、大気雰囲気中で200℃で20分加熱した。
【0068】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜を走査電子顕微鏡装置(SEM)により構造分析を行ったところ、元の粒子の構造が無くなって融着しており、焼結していることが判明した(図1)。薄膜の抵抗率は、8.0×10−4Ω・cmであった。
【0069】
[実施例2]
銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、フィルム上に銅微粒子ペースト膜を形成した。銅微粒子ペースト膜を塗布したカプトンフィルムをホットプレート上で100℃で1分間加熱し、塗膜の液分を一部蒸発させた後、シリコンゴムシートでカプトンフィルム全体を覆い、1kgのセラミック製重りをシリコンゴムシートの上に載せ、ホットプレートを用いて、200℃で20分間加熱した。
【0070】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士が融着しており、焼結していることが判明した。薄膜の抵抗率は、6.0×10−4Ω・cmであった。
【0071】
[実施例3]
銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、フィルム上に銅微粒子ペースト膜を形成した。銅微粒子ペースト膜を塗布したカプトンフィルムをホットプレート上で100℃で1分間加熱し、塗膜の液分を一部蒸発させた後、テフロンシートでカプトンフィルム全体を覆い、1kgのセラミック製重りをテフロンシートの上に載せ、ホットプレートを用いて200℃で20分間加熱した。
【0072】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士が融着しており、焼結していることが判明した。薄膜の抵抗率は、1.5×10−3Ω・cmであった。
【0073】
[実施例4]
銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、ホットプレート上で100℃で1分間加熱し、塗膜の液分を一部蒸発させた後、シリコンゴムシートでカプトンフィルム全体を覆い、1kgのセラミック製重りをシリコンゴムシートの上に載せ、ホットプレートを用いて150℃で40分間加熱した。
【0074】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士が融着しており、焼結していることが判明した。薄膜の抵抗率は、2.2×10−3Ω・cmであった。
【0075】
[実施例5]
銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布し、ホットプレート上で100℃で1分間加熱し、塗膜の液分を一部蒸発させた後、シリコンゴムシートでカプトンフィルム全体を覆い、1kgのセラミック製重りをシリコンゴムシートの上に載せ、ホットプレートを用いて150℃で40分間加熱した。
【0076】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士が融着しており、焼結していることが判明した。薄膜の抵抗率は、2.5×10−3Ω・cmであった。
【0077】
[実施例6]
銅微粒子(銅ナノ粒子)(Aldrich社製 粒子径:50nm)1.8g、銅微粒子(銅マイクロ粒子)(Aldrich社製 粒子径:3μm)0.2g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストをバーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、フィルム上に銅微粒子ペースト膜を形成した。アルミ容器中にシリコンオイル(東レダウコーニング、SRX100)を満たし、シリコンオイル中に銅微粒子ペースト膜を塗布したカプトンフィルムを浸漬して、アルミ容器ごとオーブンに入れて、大気雰囲気中で200℃で20分加熱した。
【0078】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜を走査電子顕微鏡装置(SEM)により構造分析を行ったところ、元の粒子の構造が無くなって融着しており、焼結していることが判明した。薄膜の抵抗率は、8.6×10−4Ω・cmであった。
【0079】
[比較例1]
銅微粒子(Aldrich社製 粒子径:50nm)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、遮蔽物を用いることなく、窒素フロー下のオーブン中で200℃で20分間加熱した。
【0080】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅が検出された。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士の融着は起こっていなかった(図2)。薄膜の抵抗率は、4.6×10Ω・cmであった。
【0081】
[比較例2]
銅微粒子(銅マイクロ粒子)(Aldrich社製 粒子径:3μm。銅ナノ粒子を含まない。)2.0g、上記PVP10%エチレングリコール溶液1.0gを、攪拌機(シンキー社製 ARV−100)を用いて5分間攪拌しペースト化した。このペーストを、バーコーター(No.11)を用いて3cm角のカプトンフィルムに塗布し、ホットプレート上で100℃で1分間加熱し、塗膜の液分を一部蒸発させた後、シリコンゴムシートでカプトンフィルム全体を覆い、1kgのセラミック製重りをシリコンゴムシートの上に載せ、ホットプレートを用いて、200℃20分間加熱した。
【0082】
加熱した後取り出した銅薄膜をX線回折装置による組成分析を行ったところ、酸化銅は検出されなかった。また、薄膜をSEM観察により構造分析を行ったところ、粒子同士の融着はみられず焼結していないことがわかった。薄膜の抵抗率は、6.5×10−1Ω・cmであった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、実施例1で得られた銅膜の走査電子顕微鏡像である。
【図2】図2は、比較例1で得られた銅膜の走査電子顕微鏡像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅微粒子と還元性物質を含有する組成物を基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、該組成物の外気との接触を遮断するための液体又は固体からなる遮蔽物を該組成物の直上に配置して基材上に形成した塗膜を加熱して銅微粒子を焼結する工程とを含む銅膜の製造方法。
【請求項2】
銅微粒子成分の個数平均粒子径が1nm以上200nm以下である、請求項1に記載の銅膜の製造方法。
【請求項3】
基材上の塗膜を加熱する工程において、加熱温度が100℃以上300℃以下である、請求項1又は2に記載の銅膜の製造方法。
【請求項4】
前記遮蔽物が、前記組成物に対して形状追随性を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の銅膜の製造方法。
【請求項5】
前記遮蔽物がシリコンオイル、シリコングリース、シリコンゴムシート、フッ素系ゴムシートのいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の銅膜の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−21101(P2010−21101A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182639(P2008−182639)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】