説明

銅配線製造方法、その方法で製造された銅配線、及びCVD装置

【課題】 CVD法を用いて幅の異なる凹部に銅配線を形成できる技術を提供する。
【解決手段】 基板上10に形成され、凹部131、132が設けられた絶縁膜12上にCVD法によって銅薄膜を形成し、凹部131、132内をその銅薄膜の銅材料で充填する際、銅薄膜を形成するCVD工程を2回以上に分割し、分割されたCVD工程の間に熱処理工程を設ける。熱処理により流動化し、断面すり鉢状の窪みが形成された銅薄膜上に銅薄膜を形成でき、また、1回のCVD工程で形成する銅薄膜が薄くなり、表面が滑らかになるので、幅の広い凹部132内にも空洞が形成されなくなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁膜表面の微細な凹部に銅材料を充填して銅配線を形成する技術にかかり、特に、CVD法を用いて銅配線を形成する銅配線製造方法、その方法により形成される銅配線、及び、その方法に適したCVD装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、半導体集積回路では、加工の容易性等から、主にアルミニウム(Al)を主成分とする電極配線材料が使用されている。
【0003】しかし、アルミニウムで構成した電極配線では、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションに対する耐性が弱いため、半導体集積回路の微細化が進むに連れ、不良が多発して問題となっている。
【0004】そこで従来より、アルミニウムを主成分とする電極配線材料に替え、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションに対する耐性が高いタングステン(W)やモリブデン(Mo)を用いることが提案されている。しかし、それらの材料はアルミニウムに比較して抵抗値が大きいため、微細な配線パターンに適用した場合には、大きな電圧降下による信号遅延が新たな問題として生じている。
【0005】その解決のため、抵抗値が小さく、しかもエレクトロマイグレーション耐性やストレスマイグレーション耐性に優れた銅(Cu)を電極配線材料として用いることが検討されており、種々の銅配線製造方法が提案されている。
【0006】そのような、銅配線製造方法のうち、CMP法(化学的機械研磨法)を用いた従来技術の方法の工程を説明する。図5(a)〜(c)を参照し、符号111は配線対象物であり、基板110とその表面に形成された絶縁膜112上と、ドライエッチング法により、絶縁膜112に設けられた凹部1131、1132と、絶縁膜112の表面に全面成膜された拡散防止膜114とを有している(図5(a))。
【0007】この配線対象物111に対し、CVD法を用い、凹部1131、1132内で銅を等方的に成長させて銅薄膜116を形成し(同図(b))、銅薄膜116を構成する銅材料によって凹部1131、1132内充填し、表面の銅薄膜116をCMP法によって研磨除去すると、銅配線1251、1252が得られる(同図(c))。
【0008】しかしながら、上述のような銅配線製造方法では、溝幅の狭い凹部1131(溝幅が0.25μm以下)内は比較的良好な埋込が完成されているのにもかかわらず、溝幅が広い凹部1132内には、空洞120が生じてしまっている場合がある。このような銅配線1252内の空洞120は、配線を高抵抗にする他、断線等の種々の不良を引き起こす原因となり、特性や信頼性を低下させてしまう。
【0009】実際に配線パターンを形成しようとする場合、同じ絶縁膜に形成された種々のアスペクト比の溝やホール等の凹部を銅材料で完全に充填する必要があるため、比較的幅の広い凹部1132内に空洞が形成されることは、配線パターン設計の自由度に大きな制約を与えることになるため、その解決が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の不都合を解決するために創作されたもので、その目的は、CVD法を用いて幅の異なる凹部に銅配線を形成できる技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明方法は、基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上にCVD法によって銅薄膜を形成し、前記凹部を前記銅薄膜の銅材料で充填する銅配線製造方法において、前記銅薄膜を形成するCVD工程を2回以上に分割し、分割されたCVD工程の間に熱処理工程を設けたことを特徴とする。
【0012】この場合には、請求項2記載の発明のように、前記基板上に拡散防止膜を設けておくことよい。
【0013】また、請求項3記載の発明のように、前記基板上の銅薄膜を化学的機械研磨法で除去し、前記凹部内に充填された銅材料で銅配線を形成することもできる。
【0014】他方、請求項4記載の発明は、基板上の絶縁膜に形成された凹部内に、銅薄膜の銅材料が充填されて成る銅配線であって、前記銅薄膜は少なくとも下層の銅薄膜と上層の銅薄膜とを有し、前記下層の銅薄膜が熱処理により流動化された後、その上に上層の銅薄膜が形成されたことを特徴とする。
【0015】更に、請求項5記載の発明は、真空排気可能な反応槽を有し、該反応槽内に設けられた成膜領域内に基板を配置し、CVD反応を生じさせて前記基板表面に薄膜を形成できるように構成されたCVD装置であって、前記反応槽内で前記成膜領域とは異なる場所に加熱領域が設けられ、前記基板を前記CVD領域から前記加熱領域に移動させて、その基板を加熱できるように構成されたことを特徴とする。
【0016】その場合、請求項6記載の発明のように、前記成膜領域内と前記加熱領域内には真空排気口を設け、前記成膜領域内に前記CVD反応の原料ガスを導入し、前記加熱領域内にパージガスとを導入したときに、前記各領域内の前記真空排気孔から前記原料ガスと前記パージガスとを排気すると、それぞれの領域に導入されたガスが他の領域に侵入しないように構成しておくことができる。
【0017】一般に、CVD法によって銅薄膜を形成する場合は、凹部内に銅が等方的に成長し、凹部側面に形成された銅薄膜同士が密着し、その凹部内を銅薄膜で充填できるとされている。
【0018】しかしながら、例えば図5(a)に示すような、幅の狭い凹部1131と幅の広い凹部1132とをCVD法によって銅材料で一緒に充填しようとする場合には、幅の狭い凹部1131内は充填できるが、幅の広い凹部1132内には、空洞120が生じてしまうという不都合がある。
【0019】本発明の発明者等がCVD法によって形成した銅薄膜表面を調査したところ、CVD法を用いて銅薄膜を厚く形成した場合には、その銅薄膜表面に大きな荒れが生じ、窪みや突起が発生していることを見出した。そのため、幅の狭い凹部1131内では、銅の成長初期で側面に形成された滑らかな銅薄膜116同士が密着するので充填が完了するが、幅の広い凹部1132内では、その段階では充填は完了しておらず、更に銅を成長させて充填させようとした場合、荒れている銅薄膜116の大きく荒れている表面117の突起部分が閉塞し、その下に空洞120が発生してしまうことを突き止めた(図5(b))。
【0020】一旦空洞120が発生した場合は、それ以上CVD反応を進めても空洞120内には銅は成長せず、そのような銅薄膜116をCMP法によって研磨し、銅配線1252を形成した場合、その内部に空洞120が残ってしまう。
【0021】ところで、そのような空洞がアルミニウム薄膜で発生した場合には、リフローイング法によって消滅させられることが知られているが、銅薄膜はアルミニウム薄膜と異なって、熱処理をしてもリフローされないと言われている。実際、スパッタ法によって拡散防止膜上に形成した銅薄膜を熱処理したが、流動化は観察されなかった。
【0022】しかしながら本発明の発明者等は、CVD法によって形成された銅薄膜は、一旦内部に生じた空洞を消滅さることはできないものの、低温の熱処理で銅薄膜表面を容易に流動化させられることを見出した。
【0023】本発明は上記各知見に基いて創作されたものである。即ち、CVD法によって銅薄膜を厚く形成した場合に、幅の狭い凹部内が銅材料で充填され、幅の広い凹部内に空洞が形成されてしまうのであるから、その空洞の発生を防止するためには、銅薄膜を形成するCVD工程を2回以上に分割し、一度に厚い銅薄膜を形成しないようにすると共に、各CVD工程の間に熱処理工程を設け、熱処理によって流動化し、滑らかになった銅薄膜上に、更にCVD法によって銅薄膜を形成するようにすれば空洞を形成することなく凹部内を銅材料で充填できるので、銅配線内に空洞を発生させないですむようになる。
【0024】このような銅配線製造方法においては、銅の拡散を防止するために、基板上に拡散防止膜を設けておくとよい。
【0025】また、凹部内に充填された銅材料を残し、他の部分の銅材料を化学的機械研磨法で除去すれば、前述したような銅薄膜を形成することにより、凹部内に銅配線を形成することができる。このように形成された銅配線では、下層の銅薄膜が熱処理により流動化された後、その上に上層の銅薄膜が形成されていることになる。
【0026】以上説明した銅配線製造方法を行うためのCVD装置では、真空排気可能な反応槽を有し、その反応槽内に成膜領域を設けて基板を配置し、CVD反応を生じさせ、基板表面への薄膜形成を行うように構成されており、その反応槽内で成膜領域とは異なる場所に加熱領域を設け、基板をCVD領域から加熱領域に移動させて加熱できるように構成しておくと、基板を大気に曝さないで連続的に処理を行うことが可能となる。
【0027】その場合、成膜領域内と加熱領域内とにそれぞれ排気口を設けておき、成膜領域内にCVD反応の原料ガスを導入し、加熱領域内にパージガスを導入したときに、各領域内の真空排気孔から原料ガスとパージガスを排気し、それぞれの領域に導入されたガスが他の領域に侵入しないように構成しておけば、膜厚制御が容易となり、また、汚染が生じることがないので好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明方法の実施の形態を本発明装置の実施の形態と共に図面を用いて説明する。図1の符号3は、本発明のCVD装置の一例を示しており、搬出入室51と、反応槽52と、搬送室53とを有している。搬出入室51と反応槽52とは、それぞれゲートバルブ581、582を介して搬送室53に気密に接続されている。
【0029】反応槽52内には、基板移動機構56を中心として、基板受け渡し領域90と、第1の成膜領域30と、加熱領域40と、第2の成膜領域80とが、基板受け渡し領域90をゲートバルブ582の正面にし、時計回りでこの順に設けられており、基板移動機構56を動作させて各領域内にある配線対象物を順次移動させると、第1の成膜領域30で最初のCVD工程を行って1層目の銅薄膜(下層の銅薄膜)を形成し、加熱領域40でその1層目の銅薄膜の流動化を行い、第2の成膜領域80で次のCVD工程を行ってその表面に2層目の銅薄膜(上層の銅薄膜)を形成できるように構成されている。
【0030】このような反応槽52を有するCVD装置3を用い、図4の符号11に示す配線対象物に銅配線を形成する工程を説明する。
【0031】この配線対象物11は、シリコン単結晶から成る基板10と、該基板12上に形成されたシリコン酸化膜から成る絶縁物12と、ドライエッチング法によって絶縁物12表面に設けられた凹部131、132と、絶縁膜12上に全面成膜された拡散防止膜14とを有している。絶縁膜12は、膜厚1.0μmに形成されており、前記凹部131、132底面には、僅かに絶縁膜12が残され、基板10表面が露出しないようにされている。
【0032】先ず、CVD装置3のゲートバルブ581を閉じた状態で配線対象物11を搬出入室51内に納め、その内部を真空排気した後、ゲートバルブ581を開け、搬送室53内に配置された搬送ロボット54を動作させ、アーム55によって配線対象物11を反応槽52内に搬入し、基板受け渡し領域90上に載置した。
【0033】次いで、基板搬送機構56を動作させ、基板受け渡し領域90内の配線対象物11を第1の成膜領域30まで移動させた。
【0034】第1の成膜領域30とその隣の加熱領域40の部分の概略構造を図3に示す。第1の成膜領域30内と加熱領域40内には、底面にそれぞれ基板支持台31、42が設けられており、各基板支持台31、41の上方には、それぞれガス拡散板33、43が設けられている。反応槽52の底面には、基板支持台31、41を囲うようにして拡散防止板32、42が設けられており、また、反応槽52の天井には、ガス拡散板33、43を囲うようにして、拡散防止板34、44が設けられている。このような拡散防止板32、34によって第1の成膜領域30の境界が形成され、拡散防止板42、44によって加熱領域40の境界が形成されている。
【0035】第1の成膜領域30内と加熱領域40内の天井には、それぞれガス導入口36、46が設けられており、第1の成膜領域30内のガス導入口36は、マスフローコントローラー381、382が設けられたガスパイプ37を介して、水素ガスボンベと原料ガスボンベに接続されている。また、加熱領域40内のガス導入口46は、マスフローコントローラー481が設けられたガスパイプ47を介して水素ガスボンベに接続されている。
【0036】反応槽52底面のうち、拡散防止板32、42内には、排気口39、49がそれぞれ設けられており、各排気口39、49は、バルブ71、72を介して同じ排気パイプ73に接続されている。そのバルブ71、72を開状態にし、排気パイプ73に接続された図示しない真空ポンプを起動すると各排気口39、49から反応槽52内を真空排気できるように構成されている。
【0037】反応領域30の拡散防止板32、34の間と、加熱領域40の拡散防止板32、34の間には、それぞれ隙間が設けられ、配線対象物11はその隙間を通って搬出入できるように構成されており、前述の基板搬送機構56によって移動された配線対象物11を、拡散防止板32、34間の隙間から第1の成膜領域30内に搬入し、基板支持台31上に載置した。
【0038】その基板支持台31内には図示しないヒーターが設けられており、ゲートバルブ581を閉じ、そのヒーターに通電し、配線対象物11の温度を170℃にした状態で、拡散防止板34内にガス導入口36からキャリアガスと原料ガスとを導入し、拡散板33に多数設けられたシャワー孔35から配線対象物11上に散布すると共に、配線対象物11上から拡散防止板32内に流れ込んだ原料ガスとキャリアガスとを排気口39から排気した。
【0039】この例では、キャリアガスには水素ガスを用い、原料ガスには、銅・ヘキサフルオロアセチルアセトン・ビニルトリメチルシラン(HexafluoroacetylacetonateCu(I) vinyltrimetylsilane)([Cu(hfac)(vtms)]と略されている)ガスを用いた。
【0040】導入するキャリアガスと原料ガスの流量はマスフローコントローラー381、382によって制御し、また、排気速度をコントロールバルブ74によって制御し、キャリアガス流量は600sccm、原料ガス供給量は0.5g/分、成膜圧力は3.0Torrになるようにした。
【0041】その条件でCVD反応を行ったところ、配線対象物11の表面に膜厚1500Åの1層目の銅薄膜16が形成された(図4(b))。このときの成膜速度は300Å/分であった。
【0042】1層目の銅薄膜16の表面を観察すると、凹部131、132上の部分には、それらの形状を反映した断面細溝形状の空間211、212が形成されていた。但し、CVD反応の時間が短く、銅薄膜16の膜厚が薄いため、表面荒れは小さく、凹部131、132内には閉塞した空洞は形成されていなかった。
【0043】次に、その銅薄膜16が形成された配線対象物11を第1の成膜領域30から加熱領域40内に搬送し、基板支持台41上に載置した。このとき、基板受け渡し領域90内に既に搬入されていた次の配線対象物は第1の成膜領域30内に搬入されている。
【0044】配線対象物11を基板支持台41上に載置した後、ガス導入口46からパージガスを導入し、拡散板43に設けられたシャワー孔45から配線対象物11上に散布すると共に、配線対象物11表面から拡散防止板42内に流れ込んだパージガスを排気口49から排気し、そのパージガスが加熱領域40外へ流出しないようにして、基板支持台41に設けられた図示しないヒーターに通電し、配線対象物11を400℃に加熱した。
【0045】このような熱処理(アニール処理)を10分間行ったところ、配線対象物11上の銅薄膜16が流動化し、凹部131、132内に銅薄膜16を構成する銅材料が流れ込み、前述の空間211、212が変形し、底面が狭く、開口部が広い断面すり鉢形状の窪み221、222が形成された(図4(c))。
【0046】このとき、第1の成膜領域30内に搬入された次の配線対象物上には原料ガスとキャリアガスとが導入され、CVD反応が行われているが、原料ガスとキャリアガスとは排気口39から排気され、また、加熱領域40にはキャリアガスが供給されると共に、加熱領域内の排気口49から排気されているので、熱処理中の配線対象物11表面に、原料ガスやキャリアガスが侵入することはない。成膜領域30と加熱領域40内の排気速度については、コントロールバルブ74によって調節し、バランスが保たれている。
【0047】熱処理の終了後、基板搬送機構56によって配線対象物11を加熱領域40から第2の成膜領域80内に搬送した。それと同時に、第1の成膜領域30内での銅薄膜形成が終了した配線対象物を加熱領域40へ搬送し、また、基板受け渡し領域90内上に載置されていた配線対象物を第1の成膜領域30へ搬送した。
【0048】第2の成膜領域80内では、第1の成膜領域30におけるCVD反応と同じ条件でCVD工程を行い、流動化後の銅薄膜16上に2層目の銅薄膜18を形成した。この2回目のCVD工程により、流動化後の銅薄膜16に形成されていた窪み221、222内は2層目の銅薄膜18の銅材料で充填され、空洞が生じることはなかった(図4(d))。
【0049】このとき、加熱領域40では、第1の成膜領域30で銅薄膜が形成された配線対象物の熱処理が行われており、第1の成膜領域30では絶縁膜に設けられた凹部表面に拡散防止膜を介して1層目の銅薄膜形成が行われている。このように、各領域で配線対象物の処理が同時に行われている場合でも、各領域に導入されたガスは他の領域に侵入することはない。
【0050】2層目の銅薄膜18が形成された配線対象物11を、第2の成膜領域80から基板受け渡し領域90に搬送した後、搬送室53を介して反応槽52から搬出入室51に搬出し、ゲートバルブ581を閉じた状態にして搬出入室51内に大気を導入し、CVD装置3から取り出した。
【0051】その配線対象物11の表面をCMP法で研磨したところ、凹部131、132内には、1層目の銅薄膜16と2層目の銅薄膜18の銅材料で充分充填され、空洞の無い銅配線51、52が得られた(図4(e))。
【0052】以上は、CVD工程を2回に分割し、その間に熱処理工程を設けた場合を説明したが、厚い銅薄膜を形成したい場合等には、CVD工程を3回以上に分割し、各工程の間に熱処理工程を設け、一つのCVD工程では薄い銅薄膜を形成するようにするとよい。
【0053】CVD工程を3回に分割する場合を例にとると、図2の符号62で示す反応槽のように、基板受け渡し領域71をゲートバルブ782の正面に置き、基板搬送機構79を中心として、成膜領域72、74、76と、加熱領域73、75とを、時計回りで交互に配置したものを用いてCVD装置を構成し、配線対象物を、各領域で順番に処理することができる。
【0054】他方、上述の反応槽52や反応槽62を用いず、従来のマルチチャンバー型真空成膜装置のように、各々独立して真空排気できるCVD室と加熱室とを複数有するCVD装置を用いて配線対象物を処理してもよい。また、同じCVD室と加熱室との間で配線対象物を繰り返し移動させて処理してもよい。要するに、本発明方法は、CVD工程を複数に分割し、その間に熱処理工程を設けて配線対象物を処理すればよい。その熱処理工程は、分割されたCVD工程の間の全てに設ける場合に限定されるものではなく、CVD反応により銅を堆積する際に、空洞が形成される前に銅薄膜を流動化させ、その上に更にCVD法により銅薄膜を形成できればよい。
【0055】また、以上説明した配線対象物は、絶縁膜中に形成した凹部131、132が細溝形状を成していたが、凹部の形状はそれに限定されるものではない。更に、上述の凹部131、132底面の拡散防止膜14下には絶縁膜12があり、拡散防止膜14と基板10表面とは接触していなかったが、基板表面が露出するコンタクトホールや、下層の金属配線表面が露出するビアホールに対しても、必要に応じて拡散防止膜を形成した後、本発明方法を適用して銅配線を形成することができる。
【0056】その拡散防止膜は、上記実施例ではTiN薄膜を用いたが、本発明に用いることができる拡散防止膜はそれに限定されるものではない。拡散防止膜としては、絶縁膜や酸化膜中への銅の拡散を防止できる薄膜で、例えば、TiW、Ta、Mo、W等の高融点金属や、それら高融点金属の化合物を用いることができる。それらの単層膜で拡散防止膜を構成してもよく、多層膜を形成して拡散防止膜を構成してもよい。拡散防止膜の形成は、スパッタリング法に限定されず、CVD法等の種々の薄膜形成方法を用いることができる。
【0057】また、本発明に言う絶縁膜はシリコン酸化膜に限定されるものではなく、窒化シリコン膜等各種の絶縁性の薄膜が含まれる。基板についてもシリコン基板に限定されるものではない。銅薄膜や銅材料については、銅を主成分とする金属薄膜や金属材料を広く含む。例えば、CVD法によって銅薄膜を成長させる際、他の金属を含有するガスを添加し、特性を改善させた銅薄膜や、その銅薄膜が流動化された銅薄膜も含まれる。
【0058】そのような銅薄膜を形成するCVD法については、基板温度を170℃にする場合に限定されるものではないが、本実施例で用いた銅薄膜の原料ガスでは、高温になると成膜反応が供給律速状態となり、等方的な銅薄膜の成長を行えなくなり、凹部開口端でオーバーハングを生じやすくなるので、180℃以下の基板温度でCVD法を行うことが望ましい。
【0059】銅薄膜を加熱する熱処理工程の温度については、上述した400℃に限定されるものではない。高温で行った場合、処理時間が短くなり、コスト面からは望ましいが、絶縁膜や基板中に銅が拡散しない温度で行う必要がある。拡散防止膜としてTiNを用いた場合、600℃を超える温度になるとバリア性が低下してしまうので、その温度以下にする必要がある。但し、TiN膜等の拡散防止膜は、膜質によっては600℃以下の温度でバリア性が低下してしまう場合もあるため、温度範囲としては300℃以上450℃以下が実用的である。
【0060】熱処理の際に用いるパージガスは必ずしも水素ガスに限定されるものではなく、各種のガスを用いることができる。また、パージガスを用いず、真空中で加熱するだけでも銅薄膜を流動化させることができる。
【0061】なお、上記実施例では、CMP法による表面研磨を行う場合について説明したが、凹部内の銅材料を残して絶縁膜表面の銅薄膜を除去できる研磨法、エッチング法を広く用いることができる。
【0062】
【発明の効果】本発明方法によれば、高アスペクト比の凹部と低アスペクト比の凹部とを銅材料で充填できる。また、銅配線の中に空洞がなくなるので、特性に優れ、信頼性が高い銅配線を得ることができる。
【0063】本発明のCVD装置によれば、銅薄膜界面が大気に曝されず、不純物による汚染が生じないので銅配線の信頼性が向上する。また、連続してCVD反応と熱処理とを行えるので、銅配線製造工程の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のCVD装置の一例
【図2】 そのCVD装置の反応槽の他の例
【図3】 本発明のCVD装置の反応槽の内部構造を説明するための図
【図4】(a)〜(e):本発明の銅配線製造工程を説明するための図
【図5】(a)〜(c):従来技術の銅配線製造工程を説明するための図
【符号の説明】
3……CVD装置 51、52……銅配線 10……基板
12……絶縁膜 131、132……凹部 14……拡散防止膜
16、18……銅薄膜 52、62……反応槽
30、80;72、74、76……成膜領域
40;73、75……加熱領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に形成され、凹部が設けられた絶縁膜上にCVD法によって銅薄膜を形成し、前記凹部を前記銅薄膜の銅材料で充填する銅配線製造方法において、前記銅薄膜を形成するCVD工程を2回以上に分割し、分割されたCVD工程の間に熱処理工程を設けたことを特徴とする銅配線製造方法。
【請求項2】 前記基板上に拡散防止膜を設けることを特徴とする請求項1記載の銅配線製造方法。
【請求項3】 前記基板上の銅薄膜を化学的機械研磨法で除去し、前記凹部内に充填された銅材料で銅配線を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の銅配線製造方法。
【請求項4】 基板上の絶縁膜に形成された凹部内に、銅薄膜の銅材料が充填されて成る銅配線であって、前記銅薄膜は少なくとも下層の銅薄膜と上層の銅薄膜とを有し、前記下層の銅薄膜が熱処理により流動化された後、その上に上層の銅薄膜が形成されたことを特徴とする銅配線。
【請求項5】 真空排気可能な反応槽を有し、該反応槽内に設けられた成膜領域内に基板を配置し、CVD反応を生じさせて前記基板表面に薄膜を形成できるように構成されたCVD装置であって、前記反応槽内で前記成膜領域とは異なる場所に加熱領域が設けられ、前記基板を前記CVD領域から前記加熱領域に移動させて、その基板を加熱できるように構成されたことを特徴とするCVD装置。
【請求項6】 前記成膜領域内と前記加熱領域内には真空排気口が設けられ、前記成膜領域内に前記CVD反応の原料ガスを導入し、前記加熱領域内にパージガスとを導入したときに、前記各領域内の前記真空排気孔から前記原料ガスと前記パージガスとを排気し、それぞれの領域に導入されたガスが他の領域に侵入しないように構成されたことを特徴とする請求項5記載のCVD装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平10−79389
【公開日】平成10年(1998)3月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−250968
【出願日】平成8年(1996)9月2日
【出願人】(000231464)日本真空技術株式会社 (1,740)