説明

鋳造品の中空部閉塞検査装置及び検査方法

【課題】エアの乱流を整流化させることにより、安定した検査が可能となる鋳造品の中空部閉塞検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】複数の経路を有する中空部であるウォータジャケット7が設けられたシリンダヘッドの閉塞の有無を検査するための検査装置であって、前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍に設置され、該一端近傍から前記経路8に対してエアを供給するエア供給手段2と、前記経路8の他端近傍に設置され、該他端近傍から排出されるエアを整流化する整流化手段である整流化コマ3と、前記整流化コマ3の下流側に設置され、該整流化コマ3から排出されるエアの風速を計測する風速計測手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品の中空部閉塞検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造により形成されるエンジンのシリンダヘッドの内部には、シリンダヘッドに形成された中空部にて構成されるウォータジャケットが設けられている。ウォータジャケットは、複雑な形状を有しており、シリンダヘッドの内部に形成された空間形状であるため、その形状品質を外観で検査することは出来ない。また、ウォータジャケットは中子を用いて形成されるものであり、シリンダヘッドの品質検査の一つとして中子折れなどによるウォータジャケットの閉塞が無いことを検査する必要がある。
従来から、シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットの形状品質確認方法として、ウォータジャケットを構成する中空部の各経路にエアを吹き込み、エアの通気流量の検出により閉塞の有無を検査する方法は公知となっている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、シリンダヘッドのウォータジャケットの砂詰り検査装置について記載されており、この検査装置は、ウォータジャケット内へ一定圧のエアを供給するエア供給手段とウォータジャケットの下流側でのエア圧の変化を検出する差圧計を主に備え、ウォータジャケット入口部へ一定圧のエアを供給し、その供給圧の変化をウォータジャケットの下流側に配置した差圧計にて測定することにより、砂詰りの有無を検査する装置である。
【0004】
また、特許文献2においては、鋳造成形品の中子折れ検査方法について記載されており、この検査方法は、周知の超音波探傷試験の原理を利用して探触子による超音波の送受信に基づいて、鋳造成形品(シリンダヘッド)の中子の折れを検出する検査方法である。
【特許文献1】実開平4−34646号公報
【特許文献2】特開2006−162331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような検査装置により、通気流速でウォータジャケットの閉塞の有無を検査する場合、ウォータジャケットの形状が複雑なため、流速が安定せず誤検知が発生してしまうという課題がある。すなわち、特許文献1に記載されている検査装置では、ウォータジャケットのように中空部形状が複数の経路から構成される場合には、エアを供給する通気経路に隣接する別経路にもエアが流れることで通気経路出口側近傍でエアの乱流が起こってしまい、安定した風速の計測が出来なくなるため、ウォータジャケットが良品である場合でも不良と判定されてしまう虞がある。
【0006】
具体的には、閉塞の有無を検査する経路における全開状態(経路に全く詰まりがない状態)のエアの通気流量、および全閉塞状態(経路が完全に詰まっている状態)のエアの通気流量を予め測定し、各測定値の3σの値をとったときに両者の値が重ならない流量域で良品(全開)と不良品(全閉塞)とを判定する閾値を設定し、この閾値に基づき検査判定を行うような場合においては、上述した理由により、エアの乱流が発生し通気流量が安定しないため、図4に示すように、全開時における通気流量値の3σの範囲である良品域(図4のOK 平均−3σ)と、全閉時における通気流量値の3σの範囲である不良品域(図4のNG 平均−3σ)が重なってしまい、誤検知が発生してしまうという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、エアの乱流を整流化させることにより、安定した検査が可能となる鋳造品の中空部閉塞検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、
複数の経路を有する中空部が設けられた鋳造品の閉塞の有無を検査するための検査装置であって、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路の一端近傍に設置され、該一端近傍から閉塞の有無を検査する経路に対してエアを供給するエア供給手段と、
前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍に設置され、該他端近傍から排出されるエアを整流化する整流化手段と、
前記整流化手段の下流側に設置され、該整流化手段から排出されるエアの風速を計測する風速計測手段と、を備えるものである。
【0010】
請求項2においては、
前記整流化手段は、整流化コマであるものである。
【0011】
請求項3においては、
複数の経路を有する中空部が設けられた鋳造品の閉塞の有無を検査するための検査方法であって、
前記鋳造品を所定位置に位置決めする位置決め工程と、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路の一端近傍にエア供給手段を設置するエア供給手段設置工程と、
前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍に整流化手段を介して風速計測手段を設置する風速計測手段設置工程と、
前記エア供給手段により前記閉塞の有無を検査する経路の一端近傍から閉塞の有無を検査する経路に対してエアを供給し、前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍から排出されるエアを前記整流化手段により整流化し、当該整流化されたエアの風速を前記風速計測手段により計測する風速計測工程と、を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、
前記風速計測工程の後に、前記風速計測工程により計測されたエアの風速に基づき、前記閉塞の有無を検査する経路における閉塞の有無を判定する判定工程を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、閉塞の有無を検査する経路のエアの出口近傍に整流化手段を設置することで、別経路から回ってきたエアによる乱流を整流化させることができるため、風速の計測値が安定し、検査精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係る鋳造品の中空部閉塞検査装置は、鋳造品の一例である内燃機関のシリンダヘッドの中空部であるウォータジャケットの所定の経路入口部にエア供給手段を装着し、このエア供給手段から一定圧のエアを供給し、経路入口部より経路下流側である経路出口部から排出されるエアの風速を検出し、中子折れや砂詰まり等による閉塞の検査を行う装置である。
なお、本実施形態における「閉塞の有無を検査する」とは、検査する経路が全開状態(全く閉塞していない状態)もしくは全閉塞状態(完全に閉塞している状態)かどうかを検査することをいうが、特に限定するものではなく、全開状態と全閉塞状態との間の状態(例えば、断面形状において経路の一部が閉塞している状態)を風速の計測値により検査してもかまわない。以下、本実施形態に係る鋳造品の中空部閉塞検査装置について具体的に説明する。
【0015】
中空部閉塞検査装置1は、図1に示すように、複数の経路を有する中空部であるウォータジャケット7が設けられたシリンダヘッドであるワーク5の閉塞の有無を検査するための検査装置である。中空部閉塞検査装置1は、エア供給手段2、整流化手段である整流化コマ3及び風速計測手段である風速計4を主に備えている。
中空部閉塞検査装置1は、検査対象物であるワーク5を所定位置にセットして、閉塞の有無を検査するために経路8にエアを所定圧力及び所定風量にて通気させて風速計4により通気流速を計測することにより経路8が全開状態か全閉塞状態かどうかを検査する装置である。
本実施形態におけるワーク5は、内燃機関におけるシリンダヘッドであり、検査部位としては、シリンダヘッドの内部に形成された冷却水を通す複数の経路からなるウォータジャケット7である。
経路8は、複数の経路を有するウォータジャケット7の一つの経路であり(図1点線部参照)、中空部閉塞検査装置1の検査対象となる経路の一例である。
なお、検査対象となる経路としては、図1に示した経路8に限定するものではなく、ウォータジャケット7の任意の経路を適宜検査対象とすることが可能である。
【0016】
エア供給手段2は、図1に示すように、ウォータジャケット7の経路8の一端近傍に設置され、該一端近傍から経路8にエアを供給する手段であり、エアノズル6と、エア供給源14とから主に構成されている。
エアノズル6は、その一端にエア噴出口6aを有しており、エアノズル6の長手方向中途部の周囲にはゴムからなるシール部材6bを備えている。
エア供給源14は、エアノズル6の他端に接続されており、該エアノズル6を介してエアを所定圧力及び所定風量にて供給することが可能である。
また、エアノズル6は、その先端部をウォータジャケット7の経路8の一端近傍(本実施形態においてはエアを供給する入口近傍となる開口部9)に差し込み、シール部材6bの一端をワーク5表面に密着させた状態で固定して開口部9をシールすることで開口部9からエアが漏れないように設置することが可能である。このようにエアノズル6を開口部9に設置した状態にて、エア供給源14を駆動制御することで、エアノズル6のエア噴出口6aからエアを一定圧力と一定風量にて所定方向(経路8出口方向)に噴射することが可能である。
なお、エアノズル6から噴射するエアの圧力と風量は、ワーク5が有するウォータジャケット7(中空部)の形状・大きさ等に応じて適宜変更することは可能である。
【0017】
風速計4は、整流化コマ3の下流側に設置され、該整流化コマ3から排出されるエアの風速を計測する手段である。
【0018】
整流化コマ3は、図1に示すように、テーパ状の貫通孔3aを備えた部材であり、該貫通孔3aの一端が貫通孔3aの他端よりも広い断面形状を有するものであり、該貫通孔3aの一端が、経路8の他端近傍に設置され、該他端近傍から排出されるエアを整流化する手段である。すなわち、大径に形成される整流化コマ3の一端側(上流側)開口部から入るエアを整流化して、小径に形成される他端側(下流側)開口部から排出することでエアを乱流から整流へと整流化することが可能である整流化手段である。
【0019】
本実施形態に係る風速計4及び整流化コマ3においては、図1に示すように、側面視L字状部材である風速計測治具10の内部に一体的に組付けられている。整流化コマ3(貫通孔3a)の他端は排出路13を介して風速計4の風速検知部4aに連通している。また、風速計測治具10の一端には、緩衝部材11(本実施形態においてはゴム部材)が配設されており、経路8の他端近傍である開口部12の周縁部のワーク5表面に緩衝部材11の一端を当接させることで、ワーク5と風速計測治具10との当接部分をシールして、開口部12から排出されるエアを当該当接部分から漏らさないように整流化コマ3内に導くことが可能となっている。
こうして、風速計測治具10の内部に風速計4及び整流化コマ3を一体的に組付けることで、風速計4及び整流化コマ3を一体的に移動させて所定位置に容易に設置することが可能となる。
なお、本実施形態においては、整流化手段として、テーパ状の貫通孔3aを有する整流化コマ3を用いたが、特に限定するものではなく、例えば、貫通孔3a内に多孔タイプの仕切りもしくは羽根状部材を配設して整流化コマを構成し、エアの乱流をより効率的に整流化させることも可能である。
また、本実施形態においては、整流化コマ3を風速計測治具10に組みつけた状態で用いているが、特に限定するものではなく、経路8の他端近傍(開口部12近傍)と風速計測手段である風速計4(風速検知部4a)との間に整流化手段を介装できればよく、例えば、経路8の開口部12近傍に整流化コマの一端を設置した後で、整流化コマの他端に風速計4の風速検知部4aを設置するように構成することも可能である。
【0020】
また、上述した中空部閉塞検査装置1においては、エア供給手段2及び風速計4(風速計測治具10)のそれぞれを制御手段(図示せず)に接続して、該制御手段により、自動的にエアの供給およびエアの風速の計測をするように構成することも可能である。このように検査装置を構成した場合、制御手段は、あらかじめ設定されている圧力及び風量により経路8の一端近傍である開口部9近傍からエアを自動的に供給し、経路8の他端近傍である開口部12から排出されるエアを整流化コマ3を介して風速を自動的に計測することが可能である。さらに、この風速の計測結果を、所定の良否判定条件に基づいて良品か不良品かどうかを判定することが可能であり、例えば、予め算出しておいた良品(全開)についての風速の測定値について算出した3σの範囲の値と、不良品(全閉塞)についての風速の測定値について算出した3σの範囲の値との間に設定した閾値に基づき、良否判定することが可能である。
【0021】
以上のように、本実施形態に係る中空部閉塞検査装置1は、
複数の経路を有する中空部であるウォータジャケット7が設けられた鋳造品であるワーク5の閉塞の有無を検査するための検査装置であって、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍に設置され、該一端近傍から経路8に対してエアを供給するエア供給手段2と、
前記閉塞の有無を検査する経路8の他端近傍に設置され、該他端近傍から排出されるエアを整流化する整流化手段である整流化コマ3と、
前記整流化コマ3の下流側に設置され、該整流化コマ3から排出されるエアの風速を計測する風速計測手段と、を備えるものである。
これにより、閉塞の有無を検査する経路8のエアの出口近傍に整流化手段である整流化コマ3を設置することで、別経路から回ってきたエアによる乱流を整流化させることができるため、風速の計測値が安定し、検査精度を向上させることができる。
【0022】
次に、上述した中空部閉塞検査装置1を用いた中空部閉塞検査方法について説明する。
【0023】
中空部閉塞検査方法は、図2に示すように、位置決め工程S10、エア供給手段設置工程S20、風速計測手段設置工程S30、風速計測工程S40及び判定工程S50を有している。以下、各工程について具体的に説明する。
【0024】
位置決め工程S10は、ワーク5を所定位置に位置決めする工程である。
すなわち、位置決め工程S10では、ワーク5を中空部閉塞検査装置1上の載置台(図示せず)の所定位置に固定することで、位置決め行う。
位置決め工程S10が終了したら、エア供給手段設置工程S20に移行する。
【0025】
エア供給手段設置工程S20は、ウォータジャケット7が有する複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍にエア供給手段を設置する工程である。
すなわち、エア供給手段設置工程S20では、ウォータジャケット7形状の閉塞の有無を検査したい経路8の入口近傍にエア供給手段2のエアノズル6の先端を差し込み、シール部材6bにより開口部9を塞いでシールを行う。
エア供給手段設置工程S20が終了したら、風速計測手段設置工程S30に移行する。
【0026】
風速計測手段設置工程S30は、閉塞の有無を検査する経路8の他端近傍に整流化手段である整流化コマ3を介して風速計測手段である風速計4を設置する工程である。
すなわち、風速計測手段設置工程S30では、ウォータジャケット7形状の閉塞の有無を検査したい経路8の出口近傍である開口部12の周縁部に風速計4を具備した風速計測部材10の一端を当接させて設置する。
風速計測手段設置工程S30が終了したら、風速計測工程S40に移行する。
なお、エア供給手段設置工程S20と風速計測手段設置工程S30とは、同時に行うことも可能であり、風速計測手段設置工程S30をエア供給手段設置工程S20の前に行うことも可能であり、これらの工程の順序は適宜設定することが可能である。
【0027】
風速計測工程S40は、エア供給手段2により閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍から経路8に対してエアを供給し、経路8の他端近傍から排出されるエアを整流化手段である整流化コマ3により整流化し、当該整流化されたエアの風速を風速計測手段である風速計4により計測する工程である。
すなわち、風速計測工程S40では、エア供給手段設置工程S20と風速計測手段設置工程S30とによりエア供給手段2と風速計測手段(風速計測治具10)とがそれぞれワーク5に設置された状態で、エア供給手段2によりエアノズル6の先端にあるエア噴出口6aから一定圧力及び一定風量のエアを検査したい経路8の方向(図1においては右方)に向けて供給を行うことで、このエアは経路8や別経路を流れていく。経路8を通過してきたエア及び別経路を通過してきたエアは、経路8の出口近傍(開口部12近傍)にて合流しつつ開口部12を通じて排出される。排出されたエアは整流化コマ3に入り、該整流化コマ3により乱流が整流化され、整流化コマ3の後段に配置された風速計4によりエアの風速が計測される。
風速計測工程S40が終了したら、判定工程S50に移行する。
なお、ワーク5は、経路8の入口となる開口部9や経路8の出口となる開口部12以外にも幾つか開口部を有しており、風速計測時において完全な密閉状態を保っていないが、本実施形態に係る中空部検査方法は通気流量の変化により閉塞の有無を検査する方法であるため、特にそれらを塞ぐ必要もなく、この開口部から外部へ出るエアの量も予め想定して経路8における風速の計測が行われる。
【0028】
判定工程S50は、風速計測工程S40の後に、風速計測手段である風速計4により計測されたエアの風速に基づき、閉塞の有無を検査する経路8における閉塞の有無を判定する工程である。
すなわち、判定工程S50では、所定の良否判定条件に基づいて良品か不良品かどうかを判定することが可能であり、例えば、予め算出しておいた良品及び不良品の3σ(良品(全開)・不良品(全閉塞)の閾値)に基づき、良否判定することが可能である。つまり、風速計4により計測された風速値が、予め取得している良品について計測した風速値の3σの範囲内の値、または不良品について計測した風速値の3σの範囲内の値のどちらであるかの判定を行う。計測された風速値が良品範囲に入る場合は良品と判定がされ、計測された風速値が不良品範囲に入る場合は不良品であると判定される。
また、良否判定は、良品について計測した風速値の3σの範囲の値と、不良品について計測した風速値の3σの範囲の値との間に設定した閾値に基づいて行うことも可能である。
判定工程S50については、以下に具体例を説明する。
【0029】
次に、上述した中空部閉塞検査方法(整流化コマ有り)を適用した場合の3σ値と従来法(整流化コマ無し)を適用した場合の3σ値との比較を行った。
図3は、本実施形態に係る中空部閉塞検査方法(整流化コマ有り)を適用した場合の風速の取得データ例であり、図4は従来法(整流化コマ無し)を適用した場合の風速の取得データ例である。
図3、図4は、横軸が検査数(N=10)を示し、縦軸が風速の計測値を示すものである。図3、図4は、それぞれにおいて良品(OK)の各風速値(「◆」にて表示)と良品(OK)の各風速値に基づく[平均−3σ]の値(実線にて表示)、不良品(NG)の各風速値(「■」にて表示)と不良品(NG)の各風速値に基づく[平均+3σ]の値(点線にて表示)を示したものである。
【0030】
図4においては、良品(OK)の[平均−3σ]と不良品(NG)の[平均+3σ]との差が、−17mm/sとなってしまい、良品の下限値と不良品の上限値とが重なった状態となっており、良品と不良品とが区別できない領域が存在する。それに対して、本実施形態における中空部閉塞検査方法を適用した場合は、図3に示すように、[平均−3σ]と[平均+3σ]との差が129mm/sとなり、良品の下限値と不良品の上限値とは重ならず、両者間には十分な間隔を設けることができるため、良品と不良品とが十分に区別可能である。
これらの結果から明らかなように、整流化コマを用いることにより経路8の出口近傍の乱流となったエアが整流化されることにより、風速の計測値が安定し、良品域・不良品域の差が広がり、誤検出の虞がなくなり、検査精度が向上した。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る中空部閉塞検査方法は、
複数の経路を有する中空部であるウォータジャケット6が設けられた鋳造品であるワーク5の閉塞の有無を検査するための検査方法であって、
前記鋳造品であるワーク5を所定位置に位置決めする位置決め工程S10と、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍にエア供給手段2を設置するエア供給手段設置工程S20と、
前記閉塞の有無を検査する経路8の他端近傍に整流化手段である整流化コマ3を介して風速計測手段である風速計4を設置する風速計測手段設置工程S30と、
前記エア供給手段2により前記閉塞の有無を検査する経路8の一端近傍から経路8に対してエアを供給し、前記閉塞の有無を検査する経路8の他端近傍から排出されるエアを前記整流化手段である整流化コマ3により整流化し、当該整流化されたエアの風速を前記風速計測手段である風速計4により計測する風速計測工程S40と、を具備するものである。
これにより、閉塞の有無を検査する経路8のエアの出口近傍に整流化手段である整流化コマ3を設置することで、別経路から回ってきたエアによる乱流を整流化させることができるため、風速の計測値が安定し、検査精度を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る中空部閉塞検査方法は、
前記風速計測工程S40の後に、前記風速計測工程S40により計測されたエアの風速に基づき、前記閉塞の有無を検査する経路8における閉塞の有無を判定する判定工程S50を有するものである。
これにより、精度良くワーク5の良否判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋳造品の中空部閉塞検査装置の全体構成を示す側面模式断面図。
【図2】本実施形態に係る中空部閉塞検査方法のフローを示す図。
【図3】本実施形態に係る中空部閉塞検査方法を適用した場合(整流化コマ有りの場合)における風速の計測値を示す図。
【図4】従来の中空部閉塞検査方法を適用した場合(整流化コマ無しの場合)における風速の計測値を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 中空部閉塞検査装置
2 エア供給手段
3 整流化コマ
4 風速計
5 ワーク(シリンダヘッド)
7 ウォータジャケット
8 経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の経路を有する中空部が設けられた鋳造品の閉塞の有無を検査するための検査装置であって、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路の一端近傍に設置され、該一端近傍から閉塞の有無を検査する経路に対してエアを供給するエア供給手段と、
前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍に設置され、該他端近傍から排出されるエアを整流化する整流化手段と、
前記整流化手段の下流側に設置され、該整流化手段から排出されるエアの風速を計測する風速計測手段と、を備えることを特徴とする鋳造品の中空部閉塞検査装置。
【請求項2】
前記整流化手段は、整流化コマであることを特徴とする請求項1に記載の鋳造品の中空部閉塞検査装置。
【請求項3】
複数の経路を有する中空部が設けられた鋳造品の閉塞の有無を検査するための検査方法であって、
前記鋳造品を所定位置に位置決めする位置決め工程と、
前記複数の経路のうち閉塞の有無を検査する経路の一端近傍にエア供給手段を設置するエア供給手段設置工程と、
前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍に整流化手段を介して風速計測手段を設置する風速計測手段設置工程と、
前記エア供給手段により前記閉塞の有無を検査する経路の一端近傍から閉塞の有無を検査する経路に対してエアを供給し、前記閉塞の有無を検査する経路の他端近傍から排出されるエアを前記整流化手段により整流化し、当該整流化されたエアの風速を前記風速計測手段により計測する風速計測工程と、を具備することを特徴とする鋳造品の中空部閉塞検査方法。
【請求項4】
前記風速計測工程の後に、前記風速計測工程により計測されたエアの風速に基づき、前記閉塞の有無を検査する経路における閉塞の有無を判定する判定工程を有することを特徴とする請求項3に記載の鋳造品の中空部閉塞検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125479(P2010−125479A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301379(P2008−301379)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】