説明

鋳造装置、および鋳造方法

【課題】簡単な構成で、鋳造型として金型を用いて、鋳包まれた中子を鋳造品とともに容易に取り出すことができる鋳造装置と鋳造方法を提供する。
【解決手段】中子1を保持して鋳包む鋳造装置であって、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型2、3と、金型2、3に設けられて、型閉じすることにより中子1の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより中子1の端部を解放する中子保持手段5とを備えている。中子保持手段5は、金型2、3に形成された収容部50と、複数の保持部材51と、型閉じすることによって保持部材51を収容部50内に収容させるとともに、型開きすることによって保持部材51を収容部50から突出させるよう駆動する駆動手段52とを備えてなり、収容部50の内周面と各保持部材51の外周面は、テーパ状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造装置、および鋳造方法に関し、特に、中子を保持して鋳包む鋳造装置、および鋳造型内で中子を保持して鋳包む鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば孔が形成された製品を鋳造により成形する場合、この孔を形成するための中子を鋳造型内に保持し、溶融金属をキャビティ内に注湯して中子を鋳包み、後工程で中子を鋳造品から抜き取ることが従来から一般に行われている。また、鋳造品のなかには、たとえば通路を形成するために中空パイプ状など所定形状の部品を組み込む場合や、部分的に異なる材質の部材で構成するために溶融金属とは異なる材質の部品を組み込む場合に、これらの部品を中子として鋳包むことが従来から一般に行われている。
【0003】
このように孔を形成したり鋳造品に所定の形状や材質の部品を組み込むための中子は、その端部が鋳造型に保持される。そして、注湯された溶融金属が中子の端部と鋳造型の保持部との間に入り込んでバリが発生するのを防ぐため、一般に、中子の端部と鋳造型の保持部との間にはできるだけ隙間が生じないように設定されている。
【0004】
このような鋳造型で成形された鋳造品は、その表面から中子の鋳造型に保持されていた端部が突出した状態となっている。
【0005】
ところで、鋳造型としては、砂型や金型などがある。鋳造型として砂型を採用した場合には、上述したように中子の端部が突出している状態で成形された鋳造品であっても、この鋳造品の成形後に砂型を崩壊させることにより容易に取り出すことができる。これに対して、鋳造型として金型を採用した場合には、上述したように中子の端部が突出している状態で成形された鋳造品を取り出すために、金型を充分に型開きさせる必要があり、したがって、この充分な型開きのストロークを保障するために鋳造装置全体が大型化することとなる。
【0006】
一方、鋳造型として砂型を採用した場合には、鋳造品を鋳造する毎に崩壊させることから、各鋳造品を鋳造する毎に製作する必要があり、そのため、砂型を製作するための設備や工程が増大することとなる。また、砂型の場合には、金型と比較して、キャビティ内に注湯した溶融金属の凝固する速度が遅いため、鋳造工程に要する時間が長くなることから生産数を増大させることが困難となり、また、温度制御による鋳造品の品質管理が困難である。
【0007】
鋳造型として金型を採用した場合には、上述した砂型の場合と比較して、耐久性があるために繰り返し使用することができ、また、キャビティ内に注湯した溶融金属を比較的速く凝固させることが可能であるため、鋳造工程に要する時間を短縮して生産数を増大させ、また、温度制御によって品質の良好な鋳造品を成形することが容易となる。
【0008】
これらのことを考慮して、鋳造型の一部を砂型で構成し、他を金型で構成することが知られている(たとえば特許文献1)。
【0009】
特許文献1には、中央部を中抜きした定盤と、その定盤の上に設置された上型及び下金型と、その上型及び下金型並びにそれらで形成されるキャビティを貫通して設けた複数の管部材と、前記上型の上部に位置して前記定盤に案内部材を介して連結され、前記複数の管部材の上端に嵌合する複数の冷却ノズル、冷媒供給手段に連結される1つの冷媒カプラ及び前記冷媒カプラから前記複数の冷却ノズル冷媒を分配する冷媒管を備えてなる冷却プレートと、前記定盤の中抜きの範囲の下金型を冷却する冷媒噴射装置とからなることなどを特徴とする強制冷却鋳造装置が記載されている。
【0010】
すなわち、特許文献1では、上型を砂型で構成し、下型を金型とした構成としている。そして、特許文献1には、管部材を上型と下金型の孔に挿通しておき、この管部材を鋳造時に鋳包み、管部材に冷媒を通して溶湯の強制冷却を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平3−78180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、上型として砂型を採用しているために、この上型を製作するための設備や工程が依然として必要であることからコストを低減させることが困難であり、さらに、キャビティ内に注湯した溶融金属の凝固する速度が金型と比較して遅いため、一成形サイクルに要する時間が長くなるために生産性をさらに向上させることが困難であり、また、温度制御による鋳造品の品質管理を向上させることが困難であった。
【0013】
また、上記特許文献1にあっては、上型と下金型にそれぞれ形成した孔に対して管部材を挿通するだけであるため、この管部材と、この管部材の上端に嵌合する複数の冷却ノズルとの間などに位置ズレが生じる可能性があり、そのために設置異常を検知するための異常検出装置を設ける必要があるため、構造が複雑でコストがかかるなどの問題があった。そして、上型と下金型の孔と管部材との間の隙間に溶融金属が侵入してバリが発生する場合があるなどの問題もあった。
【0014】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、鋳造型として金型を用いて、鋳包まれた中子を鋳造品とともに容易に取り出すことができる鋳造装置と鋳造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、中子の内部に通路が形成されている場合に、簡単な構成で、この通路を有する中子を容易にかつ確実に鋳包むとともに、通路に冷却媒体を容易にかつ確実に流通させて溶融金属の凝固を任意に制御することができる鋳造装置と鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の鋳造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、中子を保持して鋳包む鋳造装置であって、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型と、該金型に設けられて、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段とを備えていることを特徴とするものである。
請求項2の鋳造装置に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明にいて、前記中子の内部には通路が形成されており、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項3の鋳造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、鋳造型内で中子を保持して鋳包む鋳造方法であって、
前記鋳造型を、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型により構成し、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段を前記金型に設けておき、前記金型を型閉じして前記中子保持手段により前記中子の端部を保持し、キャビティ内に溶融金属を注湯して前記中子を鋳包むことを特徴とするものである。
請求項4の鋳造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明にいて、さらに、前記中子の内部に通路を形成しておくとともに、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段を設けておき、キャビティ内に溶融金属を注湯した以後に、前記冷却媒体流通手段により前記中子の通路に冷却媒体を流通させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の鋳造装置に係る発明によれば、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型と、該金型に設けられて、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段とを備えているという簡単な構成で、鋳造型として金型を用いて鋳包まれた中子を鋳造品とともに容易に取り出すことが可能な鋳造装置を提供することができる。
請求項2の鋳造装置に係る発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記中子の内部には通路が形成されており、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段が設けられているという簡単な構成で、内部に通路が形成された中子の端部を中子保持手段により容易にかつ確実に保持して鋳包むことができ、さらに、冷却媒体流通手段によって中子の通路に冷却媒体を容易にかつ確実に流通させて溶融金属の凝固を任意に制御することが可能な鋳造装置を提供することができる。
請求項3の鋳造方法に係る発明によれば、前記鋳造型を、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型により構成し、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段を前記金型に設けておき、前記金型を型閉じして前記中子保持手段により前記中子の端部を保持し、キャビティ内に溶融金属を注湯して前記中子を鋳包むという簡単な構成で、鋳造型として金型を用いて鋳包まれた中子を鋳造品とともに容易に取り出すことが可能な鋳造方法を提供することができる。
請求項4の鋳造装置に係る発明によれば、請求項3に記載の発明において、さらに、前記中子の内部に通路を形成しておくとともに、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段を設けておき、キャビティ内に溶融金属を注湯した以後に任意のタイミングで、前記冷却媒体流通手段により前記中子の通路に冷却媒体を流通させるという簡単な構成で、内部に通路が形成された中子の端部を中子保持手段により容易にかつ確実に保持して鋳包むことができ、さらに、冷却媒体流通手段によって中子の通路に冷却媒体を容易にかつ確実に流通させて溶融金属の凝固を任意に制御することが可能な鋳造方法を提供することができる。
【0017】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に相当し、(5)項が請求項3に相当し、(8)項が請求項4に相当する。
【0018】
(1) 中子を保持して鋳包む鋳造装置であって、
開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型と、
該金型に設けられて、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段とを備えていることを特徴とする鋳造装置。
【0019】
(1)項の発明では、金型を開いた状態で中子保持手段に中子をセットし、金型を閉じると、中子保持手段が中子の端部に密着するように接して保持する。このとき、中子保持手段は、金型を閉じることにより、この金型とともにキャビティ面を構成する。そして、金型内に形成されたキャビティに溶融金属を注湯すると中子が鋳包まれ、溶融金属が凝固すると表面から中子の端部が突出した鋳造品が成形されることとなる。金型を開くことにより、中子保持手段が鋳造品の表面から突出している中子の端部から離れて解放する。そのため、金型を大きく開くことなく、中子の端部が表面から突出した鋳造品を金型内から容易にかつ確実に取り出すことができる。
【0020】
(2) 前記中子保持手段は、金型に形成された収容部と、複数の保持部材と、型閉じすることによって前記保持部材を前記収容部内に収容させるとともに、型開きすることによって前記保持部材を前記収容部から突出させるよう駆動する駆動手段とを備えてなり、
前記収容部と各保持部材の側面は、前記保持部材が前記収容部内に収容されたときに互いに集合し、前記保持部材が前記収容部から突出されたときに互いに離間させる、テーパ状に形成されていることを特徴とする(1)項に記載の鋳造装置。
【0021】
(2)項の発明では、(1)項に記載の発明において、型閉じすることによって駆動手段が保持部材を金型の収容部内に収容させる。収容部と各保持部材の側面がテーパ状に形成されているため、各保持部材が収容部内に収容されることによって互いに集合して中子の端部を保持する。このとき、各保持部材の表面は、金型とともにキャビティ面を構成する。また、型開きすることによって駆動手段が保持部材を金型の収容部から突出させる。収容部と各保持部材の側面がテーパ状に形成されているため、各保持部材が収容部から突出することによって互いに離間するのを許容され、中子の端部を解放する。なお、中子保持手段の駆動手段は、金型に備わっている鋳造品押し出し装置などのリターンピンを含むことができる。この場合、金型の開閉によってリターンピンが作動することにより、各保持部材が中子の端部を保持し、また、解放するよう移動される。
【0022】
(3) 前記中子保持手段は、前記中子を位置決めする位置決め機構を有していることを特徴とする(1)または(2)項のいずれかに記載の鋳造装置。
【0023】
(3)項の発明では、(1)または(2)項のいずれかに記載の発明において、中子は、その端部を中子保持手段によって保持されるときに、位置決め機構によって位置決めされる。
【0024】
(4) 前記中子の内部には通路が形成されており、
前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段が設けられていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋳造装置。
【0025】
(4)項の発明では、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の発明において、型閉じすることにより、中子保持手段に保持された中子の通路に対して冷却媒体流通手段が接続される。そして、任意のタイミングで冷却媒体流通手段により中子の通路に冷却媒体を供給し、キャビティ内に注湯された溶融金属を所定の温度に冷却する。
【0026】
(5) 鋳造型内で中子を保持して鋳包む鋳造方法であって、
前記鋳造型を、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型により構成し、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段を前記金型に設けておき、
前記金型を型閉じして前記中子保持手段により前記中子の端部を保持し、
キャビティ内に溶融金属を注湯して前記中子を鋳包むことを特徴とする鋳造方法。
【0027】
(5)項の発明では、金型を開いた状態で中子保持手段に中子をセットし、金型を閉じて中子の端部に中子保持手段を密着させて保持する。このとき、中子保持手段は、金型を閉じることにより、この金型とともにキャビティ面を構成する。そして、金型内に形成されたキャビティに溶融金属を注湯して中子を鋳包み、溶融金属を凝固させる。成形された鋳造品は、その表面から中子の端部が突出している。金型を開くことにより、中子保持手段が鋳造品の表面から突出している中子の端部から離れて解放する。そのため、金型を大きく開くことなく、中子の端部が表面から突出した鋳造品を金型内から容易にかつ確実に取り出すことができる。
【0028】
(6) 前記中子保持手段を、金型に形成された収容部と、複数の保持部材と、型閉じすることによって前記保持部材を前記収容部内に収容させるとともに、型開きすることによって前記保持部材を前記収容部から突出させるよう駆動する駆動手段とを備えなる構成とし、前記収容部と各保持部材の側面を、前記保持部材が前記収容部内に収容されたときに互いに集合し、前記保持部材が前記収容部から突出されたときに互いに離間させる、テーパ状に形成しておくことを特徴とする(5)項に記載の鋳造方法。
【0029】
(6)項の発明では、(5)項に記載の発明において、型閉じすることによって駆動手段が保持部材を金型の収容部内に収容させる。収容部と各保持部材の側面がテーパ状に形成されているため、各保持部材を収容部内に収容させることによって互いに集合して中子の端部が保持される。このとき、各保持部材の表面が金型とともにキャビティ面を構成する。また、型開きすることによって駆動手段が保持部材を金型の収容部から突出させる。収容部と各保持部材の側面がテーパ状に形成されているため、各保持部材を収容部から突出させることによって互いに離間するのが許容され、中子の端部を解放する。なお、中子保持手段の駆動手段に、金型に備わっている鋳造品押し出し装置などのリターンピンを含めることができる。この場合、金型の開閉によってリターンピンが作動することにより、各保持部材が中子の端部を保持し、また、解放するよう移動される。
【0030】
(7) 前記中子保持手段に、前記中子を位置決めする位置決め機構を設けておき、
前記金型の中子保持手段で前記中子の端部を保持するときに、前記位置決め機構によって前記中子保持手段に対して前記中子を位置決めすることを特徴とする(5)または(6)項のいずれかに記載の鋳造方法。
【0031】
(7)項の発明では、(5)または(6)項のいずれかに記載の発明において、中子の端部を中子保持手段が保持するときに、位置決め機構によって中子の中子保持手段に対する位置を位置決めする。
【0032】
(8) さらに、前記中子の内部に通路を形成しておくとともに、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段を設けておき、
キャビティ内に溶融金属を注湯した以後に、前記冷却媒体流通手段により前記中子の通路に冷却媒体を流通させることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1項に記載の鋳造方法。
【0033】
(8)項の発明では、(5)〜(7)のいずれか1項に記載の発明において、型閉じすることにより、中子保持手段に保持された中子の通路に対して冷却媒体流通手段を接続する。そして、任意のタイミングで冷却媒体流通手段により中子の通路に冷却媒体を供給し、キャビティ内に注湯された溶融金属を所定の温度に冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の鋳造装置の第1の実施の形態を説明するために型開きした状態で示した要部の断面図である。
【図2】図1の状態から型閉じした状態を説明するために示した断面図である。
【図3】中子保持手段の中子を保持する状態を説明するために示した平面図である。
【図4】図3の状態から中子を解放した状態、または、中子をセットして保持する前の状態を説明するために示した平面図である。
【図5】本発明の鋳造装置の第2の実施の形態を説明するために型開きした状態で示した要部の断面図である。
【図6】図5の状態から型閉じした状態を説明するために示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
最初に、本発明の鋳造装置の第1の実施の形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
本発明の鋳造装置は、概略、中子1を保持して鋳包むものであって、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型2、3と、この金型2、3に設けられて、型閉じすることにより中子1の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより中子1の端部を解放する中子保持手段5とを備えている。
さらに、本発明の鋳造装置は、この実施の形態の場合、中子保持手段5が、金型2、3に形成された収容部50と、複数の保持部材51と、型閉じすることによって保持部材51を収容部50内に収容させるとともに、型開きすることによって保持部材51を収容部50から突出させるよう駆動する駆動手段52とを備えてなり、収容部50の内周面と各保持部材51の外周面は、保持部材51が収容部50内に収容されたときに互いに集合し、保持部材51が収容部50から突出されたときに互いに離間させ得るように、テーパ状に形成されている。
【0036】
この実施の形態における金型は、上型2と下型3とにより構成されている。上型2と下型3の少なくとも一方は、他方に対して開閉するよう型締装置に支持されている。上型2と下型3の互いに対向する面には、成形する鋳造品の形状に応じたキャビティを形成するためのキャビティ面が形成されている。中子1は、この実施の形態の場合、中実のものでも、後述する第2の実施の形態と同様に中空のものでも、必要に応じて選択することができる。
【0037】
上型2と下型3の対応する位置には、中子保持手段5の収容部50が形成されている。収容部50の内周面は、底部から開口部に向かって拡がるようにテーパ状に形成されている。すなわち、この実施の形態における収容部50は、裁頭円錐台形状をなす凹部により構成されている。中子保持手段5の保持部材51は、集合した状態(後述する)の外形形状全体が収容部50と対応するようテーパ状の裁頭円錐台形状に形成されており、中心に中子1の端部と対応する孔が形成される。そして、各保持部材51は、集合した状態で裁頭円錐台状の外径形状を周方向に均等に分割した形状、たとえば図3および図4に示すように3分割されて、平面視における端面が扇状となる形状に成形されている。各保持部材51は、収容部50に収容されることにより、互いに集合して中心に中子1の端部と密着してこれを保持する孔を形成し、大径側端面が金型2、3のキャビティ面を構成する。また、各保持部材51は、収容部50から突出されることにより、全体が拡がるように互いに離間することが許容され、したがって、中子1の端部から離れてこれを解放することが可能となる。なお、保持部材51は、集合した状態での裁頭円錐台状の外形形状を3分割した形状に限定されることはなく、半割状または4分割以上に分割した形状とすることもできる。
【0038】
中子保持手段5の駆動手段52は、各保持部材51の底側端面(小径側端面ともいうことができる)にそれぞれ接続された作動ロッド53と、各作動ロッド53を連結する作動プレート54とを備えている。そして、この実施の形態においては、図1および図2に示したように、鋳造品押し出し装置などのリターンピン60が作動プレート54に接続されている。鋳造品押し出し装置などの押し出しプレートを作動プレート54としても用い、この押し出しプレート54に作動ロッド53を取付けてもよい。
【0039】
作動ロッド53は、上型2と下型3の収容部50から背面に貫通するよう形成された孔20、30に摺動可能に挿通されており、後端が作動プレート54に接続されている。作動プレート54は、上型2および下型3の背面に近付くように付勢されている。そのため、型開きした状態では、図1に示すように、リターンピン60の先端部が上型2と下型3の衝合面から突出している。
【0040】
各保持部材51の底側端面は、収容部50に収容されたときに互いに集合し、収容部から突出されたときに拡がって互いに離れることが可能となるように、作動ロッド53に対して径方向に移動可能に接続されている。この実施の形態では、各保持部材51の底側端面に形成された段付き溝51aと、作動ロッド53の先端に形成された係合部53aとが摺動可能に係合されている。本発明は、この実施の形態に限定されることはなく、各保持部材51の底側端面に作動ロッド53の先端を固定し、上型2と下型3に形成する孔20、30を各保持部材51の径方向の移動方向と対応する長孔とし、作動ロッド53の後端を作動プレート54に対して径方向に移動可能に接続するなど、他の構成とすることもできる。
【0041】
下型3に設けられた保持手段5の各保持部材51の中子1を保持する内側面には、中子1の下端面を支持して位置決めする突起55が設けられている。この実施の形態では、金型を上型2と下型3により構成したため、中子1は、その下端面が突起55に支持されることにより適切な位置に位置決めされる。そして、この突起55が設けられていることにより、型開きした状態であっても、中子1が落下するのを防止することができる。なお、金型2、3を横方向に開閉するよう配置する場合には、両金型2、3の保持手段5の各保持部材51に突起などの位置決め手段55がそれぞれ設けられる。
【0042】
なお、図1および図2では、上型2と下型3にそれぞれ中子保持手段5を単一で設けた場合を示したが、本発明は、鋳包む中子1の数や配置に応じて、複数の中子保持手段5を各所に設けることができる。
【0043】
次に、本発明の鋳造方法の第1の実施の形態を、上述したように構成された鋳造装置を用いる場合により、その作動とともに説明する。
【0044】
本発明の鋳造方法は、概略、鋳造型2、3内で中子1を保持して鋳包むものであって、鋳造型を、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型2,3により構成し、型閉じすることにより中子1の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより中子1の端部を解放する中子保持手段5を金型2、3に設けておき、金型2、3を型閉じして中子保持手段5により中子1の端部を保持し、キャビティ内に溶融金属を注湯して中子1を鋳包むものである。
さらに、本発明の鋳造装置は、この実施の形態の場合、中子保持手段5を、金型2、3に形成された収容部50と、複数の保持部材51と、型閉じすることによって保持部材51を収容部50内に収容させるとともに、型開きすることによって保持部材51を収容部50から突出させるよう駆動する駆動手段52とを備えてなる構成とし、収容部50の内周面と各保持部材51の外周面を、保持部材51が収容部50内に収容されたときに互いに集合し、保持部材51が収容部50から突出されたときに互いに離間させ得るようにテーパ状に形成しておくものである。
【0045】
鋳造装置の構成は、上述したとおりであるので、ここでは説明を省略する。中子1が鋳包まれた鋳造品を成形するに際しては、最初に、図1に示したように、上型2と下型3を離間させた型開きの状態とする。このとき、作動プレート54が上型2と下型3の背面にそれぞれ近付くように付勢されているため、リターンピン60が上型2と下型3の衝合面から突出し、また、作動ロッド53に接続された保持部材51がそれぞれ収容部50から突出して拡がるように互いに離間した状態となっている。この状態で、位置決め手段を構成する下型3の突起55上に中子1をセットする。
【0046】
続いて、図2に示したように、上型2と下型3を衝合させた型閉じの状態とする。これにより、リターンピン60,60が互いに当接し、作動プレート54が付勢に抗して上型2と下型3の背面からそれぞれ離れるように移動する。そのため、作動ロッド53に接続された保持部材51がそれぞれ、収容部50に収容されることとなる。収容部50の内周面と保持部材51の外周面がテーパ状に成形されていることにより、図3に示したように、保持部材51は、収容部50内で互いに集合するように径方向内側に向かってに移動される。したがって、各保持部材51の内側面が中子1の端部の外周面と密着してこれを保持することとなる。また、各保持部材51の大径側端面は、上型2および下型3のキャビティ面と連続するキャビティ面を構成する。
【0047】
この状態で、所定の温度に加熱された溶融金属を注湯してキャビティ内に充填する。各保持部材51が集合するように移動して互いに隣接する保持部材51の接合面が密着しており、かつ、中子1の端部に対して保持部材51の内側面が密着しているため、溶融金属が互いに隣接する保持部材51の接合面の間や中子1の端部と各保持部材51との間などに入り込むことがなく、したがって、鋳造品にバリが発生するのを防止することができる。キャビティ内で溶融金属が凝固すると、中子1が鋳包まれた所定形状の鋳造品が成形されることとなる。鋳造品は、保持部材51に保持された中子1の端部が突出した状態となっている。
【0048】
その後、上型2と下型3を離間させて型開きの状態とすると、リターンピン60、60が互いに離間して、作動プレート54が付勢力により上型2と下型3の背面にそれぞれ近付くよう移動する。そのため、図1に示したようにリターンピン60が上型2と下型3の衝合面から突出する。また、作動ロッド53に接続された保持部材51がそれぞれ収容部50から突出されて互いに離間するよう径方向に移動するのを許容されて、図4に示したように、中子1の端部から各保持部材51が離れるように拡がり、中子1の端部を解放する。そのため、上型2と下型3を大きく型開きしなくても、鋳包まれた中子1の端部が上型2や下型3に干渉することが無く、したがって鋳造品の姿勢を斜めにするなどして容易に取り出すことができる。鋳造品に鋳包まれた中子1は、必要に応じて、鋳造品から取り外し、または、そのまま鋳造品に残した状態で、後工程を行うことができる。
【0049】
次に、本発明の鋳造装置の第2の実施の形態を、図5および図6に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
【0050】
この実施の形態における鋳造装置は、中子1が内部に通路1aを形成されたパイプ状のものであり、中子保持手段5により保持された中子1の通路1aに冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段7がさらに設けられている。
【0051】
冷却媒体流通手段7は、型閉じして保持手段5により保持されたパイプ状の中子1の一端(この実施の形態では上端)から冷却媒体を供給するノズル70と、中子1の他端(この実施の形態では下端)から冷却媒体を排出するパイプ71とを備えている。ノズル70には、所定温度に調整された冷却媒体を送り出すポンプが接続される。
【0052】
上型2と下型3の、保持手段5に保持された中子1の軸方向に延長した位置と対応する部分は、収容部50から背面に貫通する孔21、31が形成されている。ノズル70は、上型2の孔21に摺動可能に配置され、下方に向かって付勢されている。ノズル70の先端は、先細のテーパ状に成形されており、型閉じしたときに中子1の先端に進入して、その中間部で中子1の先端開口を塞ぐことができる径に設定されている。パイプ71は、下型3の孔31と連続するよう下型3の背面に接続されている。
【0053】
次に、本発明の鋳造方法の第2の実施の形態を、上述したように構成された第2の実施の形態における鋳造装置を用いる場合により、その作動とともに説明する。なお、この実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
【0054】
本発明の鋳造方法は、第1の実施の形態に加えて、中子1の内部に通路1aを形成しておくとともに、中子保持手段5により保持された中子1の通路1aに冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段7を設けておき、キャビティ内に溶融金属を注湯した以後に、冷却媒体流通手段7により中子1の通路1aに冷却媒体を流通させるものである。
【0055】
鋳造装置の構成は、上述したとおりであるので、ここでは説明を省略する。鋳造品の成形に先立って、内部に通路1aが形成されたパイプ状の中子1を用意する。そして、中子1が鋳包まれた鋳造品を成形するに際しては、最初に、図5に示したように、上型2と下型3を離間させた型開きの状態として、下型3の突起55上にパイプ状の中子1をセットする。このとき、リターンピン60が上型2と下型3の衝合面からそれぞれ突出し、保持部材51がそれぞれ収容部50から突出して拡がるように互いに離間した状態となっていることは、上述した実施の形態と同様である。また、このとき、上型2の孔21に挿通されたノズル70は、下方に向かって付勢されており、型閉じしたときにテーパ状の先端がパイプ状の中子1に進入し得るように位置している。
【0056】
続いて、図6に示したように、上型2と下型3を衝合させた型閉じの状態とする。これにより、リターンピン60が互いに当接し、作動プレート54が付勢に抗して上型2と下型3の背面からそれぞれ離れるように移動し、作動ロッド53に接続された保持部材51がそれぞれ収容部50に収容されて、互いに集合するように径方向内側に向かって移動されて、各保持部材51の内側面が中子1の端部の外周面と密着してこれを保持し、各保持部材51の大径側端面がキャビティ面を構成することは、上述した実施の形態と同様である。また、このとき、上型2のノズル70の先端がパイプ状の中子1の上端から進入し、テーパ状の部分の中間部が中子1の上端開口に弾性的に当接して、下方への付勢に抗して上型2の孔21に対して相対的に上昇するように摺動する。そのため、中子1の上端開口がノズル70のテーパ状の部分の中間部により塞がれ、その結果、ノズル70から冷却媒体を中子1内の通路1aに供給するときに、冷却媒体がノズル70と中子1の間から漏出するのを確実に防止することができる。
【0057】
この状態で、所定の温度に加熱された溶融金属を注湯してキャビティ内に充填する。このとき、各保持部材51が収容部50に収容されて集合して互いに隣接する保持部材51の接合面が密着し、また、各保持部材51の内周面が中子1の端部の外周面に対して密着しているため、これらの間に溶融金属が入り込んでバリを発生させることがないことは、上述した実施の形態と同様である。
【0058】
キャビティ内に充填された溶融金属が凝固するのと前後して、所定温度に調整された冷却媒体が任意の所定のタイミングでポンプからノズル70に供給される。冷却媒体は、ノズル70から中子1内の通路1aを流通する間に溶融金属を所定の温度に冷却し、下型3の孔31を介してパイプ71に排出される。そのため、溶融金属の凝固を制御して品質が良好な鋳造品を成形することができる。この成形された鋳造品は、その表面から中子1の端部が突出した状態となっている。
【0059】
その後、上型2と下型3を離間させて型開きの状態とすると、リターンピン60
が互いに離間して、作動プレート54が付勢力により上型2と下型3の背面にそれぞれ近付くよう移動する。そのため、図5に示したようにリターンピン60が上型2と下型3の衝合面から突出し、作動ロッド53に接続された保持部材51がそれぞれ収容部50から突出されて互いに離間するよう径方向に移動するのを許容されて、中子1の端部から各保持部材51が離れるように拡がり、中子1の端部を解放することは上述した実施の形態と同様である。したがって、この実施の形態でも、上型2と下型3を大きく型開きしなくても、鋳包まれた中子1の端部が上型2や下型3に干渉することが無く、したがって鋳造品の姿勢を斜めにするなどして容易に取り出すことができる。鋳造品に鋳包まれたパイプ状の中子1は、必要に応じて、鋳造品から取り外し、または、そのまま鋳造品に残した状態で、後工程を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、重力鋳造や低圧鋳造など、比較的低い圧力でキャビティ内に溶融金属を充填する鋳造に適用することができる。本発明では鋳造型に砂型ではなく金型を用いているが、単に砂型から金型に転用しただけでは、鋳造品を取り出す際にその表面から突出している中子の端部が金型に干渉することに起因して各種問題が生じることとなる。しかしながら、本発明では、保持した中子の端部を解放できるように保持手段が構成されているため、中子の端部が金型に干渉することがなく、したがって、金型を大きく型開きすることなく、表面から中子の端部が突出している鋳造品を容易にかつ確実に取り出すことができる。そのため、鋳造装置を小型化し設備や工程数を低減させて、コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:中子、 1a:通路、 2:上型(金型)、 3:下型(金型)、 5:中子保持手段、 7:冷却媒体流通手段、 50:収容部、 51:保持部材、 52:駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中子を保持して鋳包む鋳造装置であって、
開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型と、
該金型に設けられて、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段とを備えていることを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
前記中子の内部には通路が形成されており、
前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳造装置。
【請求項3】
鋳造型内で中子を保持して鋳包む鋳造方法であって、
前記鋳造型を、開閉可能に設けられ型閉じすることにより所定形状のキャビティを形成する複数の金型により構成し、型閉じすることにより前記中子の端部を保持するとともにキャビティ面を構成し、型開きすることにより前記中子の端部を解放する中子保持手段を前記金型に設けておき、
前記金型を型閉じして前記中子保持手段により前記中子の端部を保持し、
キャビティ内に溶融金属を注湯して前記中子を鋳包むことを特徴とする鋳造方法。
【請求項4】
さらに、前記中子の内部に通路を形成しておくとともに、前記中子保持手段により保持された中子の通路に冷却媒体を流通させる冷却媒体流通手段を設けておき、
キャビティ内に溶融金属を注湯した以後に、前記冷却媒体流通手段により前記中子の通路に冷却媒体を流通させることを特徴とする請求項3に記載の鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13914(P2013−13914A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148191(P2011−148191)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】