鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置
【課題】周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することができる鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置を提供する。
【解決手段】鋳鉄の黒鉛評価方法は、黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体2の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部5に通電することにより入力交流磁場を被検査体2に作用させる操作と、入力交流磁場により被検査体2に発生する渦電流による出力交流磁場を検出部6で電圧信号として検出する操作と、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により被検査体2の黒鉛鋳鉄組織を判定する。
【解決手段】鋳鉄の黒鉛評価方法は、黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体2の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部5に通電することにより入力交流磁場を被検査体2に作用させる操作と、入力交流磁場により被検査体2に発生する渦電流による出力交流磁場を検出部6で電圧信号として検出する操作と、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により被検査体2の黒鉛鋳鉄組織を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳鉄のチル化組織の電磁的性質またはフェライト・パーライト相の電磁的性質の差異に基づいて、渦電流により鋳鉄のチル化組織の有無、フェライト基地もしくはパーライト基地の判定を行う鋳鉄の非破壊評価方法が知られている(特許文献1)。また、鋳鉄のチル化組織の磁気的性質またはフェライト・パーライト相の磁気的性質の差異に基づいて、鋳鉄のチル化組織の有無、フェライト基地もしくはパーライト基地の判定またはフェライト/パーライト率の同定を渦電流信号の磁気増幅で発生する歪信号を用いて行う鋳鉄の磁気的評価方法が知られている(特許文献2)。
【0003】
更に、球状黒鉛鋳鉄の表面に接触または近接して配置したコイル部に特定の周波数をもつ複数個の励磁電流を通電して表面に渦電流を生成させ、この渦電流によりコイル部に生じるインピーダンス変化を検出することにより、球状黒鉛鋳鉄の表面部のフェライト相の有無やフェライト相の厚さを検知する球状黒鉛鋳鉄部材の検知方法が知られている(特許文献3)。
【0004】
更に、超音波を利用して鋳鉄のチル化組織の有無等を評価する鋳鉄の非破壊評価方法および装置が知られている(特許文献4)。
【0005】
更に、渦電流により鋳鉄の基地を評価することにより鋳鉄の機械的特性を非破壊評価する渦電流による鋳鉄の機械的特性の非破壊評価が知られている(非特許文献1〜非特許文献4)。
【特許文献1】特開2003−262618号公報
【特許文献2】特開2004−219234号公報
【特許文献3】特開2002−156366号公報
【特許文献4】特開平6−94683号公報
【非特許文献1】内一哲哉,「渦電流を用いた鋳鉄の材料評価」 第14回「電磁力関連のダイナミックス」シンポジウム[2002.5.22〜24 岡山]
【非特許文献2】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄の機械的特性の非破壊評価」第15回「電磁力関連のダイナミックス」シンポジウム[2003.5.28〜30 金沢]
【非特許文献3】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄の機械特性の非破壊評価」日本機械学会 東北支部第38期総会 講演会講演論文集 184〜185頁
【非特許文献4】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄基地組織の判別」 日本機械学会 材料力学部門 講演会講演論文集 503〜504頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、産業界では、鋳鉄の信頼性を高めるべく、鋳鉄の基地組織を制御するだけでなく、黒鉛組織も制御することが要請されつつある。例えば、車両搭載部品のディスクブレーキのうち、重要保安部品であるディスクロータにおいては、その摩擦面(摺動面)の黒鉛組織を均一となるように制御することも要請されている。
【0007】
ところで上記した従来技術は、鋳鉄の基地を非破壊で評価するものの、鋳鉄に分散されている黒鉛の特性(単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さといった黒鉛特性)を非破壊で評価するものではない。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、周波数解析したときにおける基本波および高調波をパラメータとし、基本波および高調波に基づいて設定された判定値により、被検査体の鋳鉄組織において単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さ等といった黒鉛特性を判定することができる鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋳鉄の評価について長年にわたり鋭意開発を進めている。そして、複数の片状黒鉛等の黒鉛が基地に分散された片状黒鉛鋳鉄等の鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査するにあたり、交流電流を励磁部に通電することにより被検査体に渦電流を発生させる操作と、被検査体に発生する渦電流による交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、検出部で検出された電圧信号を周波数解析する解析操作とを実施し、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により鋳鉄における黒鉛特性(単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さ等)を判定できることを知見し、試験で確認し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明に係る鋳鉄の黒鉛評価方法は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部に通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる操作と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る鋳鉄の黒鉛評価装置は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する装置であって、交流電流を通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる励磁部と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は、周波数解析された基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする。
【0012】
被検査体は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする。黒鉛としては片状黒鉛や芋虫状黒鉛等の片状をなす黒鉛が挙げられる。芋虫状黒鉛は片状黒鉛の先端が丸みを帯びたものである。更に塊状黒鉛、球状黒鉛、共晶黒鉛が挙げられる。従って鋳鉄としては、片状黒鉛鋳鉄、芋虫状黒鉛鋳鉄が挙げられる。更に、塊状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、共晶黒鉛鋳鉄が挙げられる。黒鉛鋳鉄の基地としては、基地を100%とするとき、一つの相が体積比で70%以上、80%以上、90%以上、95%以上占有することが好ましい。複数の相が混在していると、複数の相の電気的特性および/または磁気的特性が相違するため、高い判定精度が得られにくいためである。従って、基地を100%とするとき、パーライト、フェライト、オーステナイトのうちの一つの相が体積比で70%以上、80%以上、90%以上、更には95%以上、98%以上占有することが好ましい。鋳鉄の組成は黒鉛が生成しているものであれば、特に限定されないが、質量%で、炭素は2.6〜4.5%、3.0〜4.0%が例示される。シリコンは1.0〜8.0%、1.5〜5.0%が例示される。マンガンは0.1〜1.5%、0.2〜1.0%が例示される。リンは1.0%以下、0.5%以下、0.2%以下が例示される。イオウは1.5%以下、1.2%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.2%以下が例示される。炭素当量としては2.8〜4.8の範囲内、3.0〜4.4の範囲内、3.2〜4.2の範囲内が例示される。ちなみに、鋳鉄の凝固速度が遅かったり、鋳鉄の肉厚が厚かったりすると、同一の組成、同一の炭素当量であっても、黒鉛の長さは成長し易い。
【0013】
交流電流を励磁部に通電することにより、被検査体に渦電流を発生させる。励磁部に通電する交流電流については、周波数は0.1kHz〜1000kHz、0.5kHz〜100kHz、殊に1kHz〜10kHzが好ましく、電圧値は実効値で5〜20ボルト、殊に10〜15ボルトが好ましい。渦電流により被検査体に交流磁場が発生する。交流磁場を検出部で電圧信号として検出する。解析部は、検出部で検出された電圧信号(検出信号)を周波数解析し、基本波および高調波を求める。
【0014】
ここで検出部で検出された電圧信号を周期波形f(t)とする。周期波形f(t)はフーリエ級数展開可能である。ここで、周期波形の中の最大周期(基本周期)をT0としたとき、周期T0、それに対応する基本角周波数(基本角振動数)ω0=1/T0の正弦波を考える。フーリエ級数は周期波形f(t)を次の式(1)のように表すことができる。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、ωは角周波数であり、tは時間であり、ω=2πf=2π/Tで示される。a0は直流(定数)成分である。n=1のとき、正弦波を基本波という。n=2,3,4,5……は高調波という。n=3のとき、第3高調波という。n=5のとき、第5高調波という。
【0017】
周波数解析(FFT:Fast Fourier Transform)において、検出部の電圧信号を周波数解析した基本波および高調波に基づいて設定された判定値に基づいて、被検査体の黒鉛鋳鉄組織(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を判定することができる。
【0018】
好ましくは、判定値は、基本波(電圧信号)の電圧値と第3高調波(電圧信号)の電圧値とに基づいて設定される。ここで、基本波(電圧信号)の電圧値をP1[ボルト]とし、第3高調波(電圧信号)の電圧値をP3[ボルト]とすると、判定値αおよび判定値βは、P3およびP1に基づいて設定される。下記の式2は、第3高調波比を表す判定値α[無次元]を示す。下記の式3は、第3高調波比を表す判定値β[dB]を示す。判定値αおよび判定値βにより、被検査体を構成する黒鉛鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)の黒鉛特性(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を評価することができる。
【0019】
【数2】
【0020】
また好ましくは、第3高調波および第5高調波を考慮するときには、判定値は、基本波(電圧信号)の電圧値と第3高調波(電圧信号)の電圧値と第5高調波(電圧信号)の電圧値とに基づいて設定される。ここで、基本波(電圧信号)の電圧値をP1とし、第3高調波(電圧信号)の電圧値をP3とし、第5高調波(電圧信号)の電圧値をP5とすると、判定値αおよび判定値βは、P1、P3およびP5に基づいて設定される。下記の式4は、第3・5高調波比を表す判定値α[無次元]を示す。下記の式5は、第3・5高調波比を表す判定値β[dB]を示す。判定値αおよび判定値βにより、被検査体を構成する黒鉛鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)の黒鉛特性(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を評価することができる。
【0021】
【数3】
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査するにあたり、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により、被検査体の黒鉛鋳鉄組織(一般的には黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照して説明する。本実施形態に係る鋳鉄の黒鉛特性を評価する黒鉛評価装置1は、図1に示すように、黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体2の表面における黒鉛鋳鉄組織を検査する装置である。黒鉛評価装置1は、プローブ3を有する。プローブ3は、高い透磁率をもつ磁性材料(鉄酸化物を基材とするフェライトコア)で形成された棒状をなす鉄芯4と、交流電流を通電することにより入力交流磁場を被検査体2の表面に作用させる励磁コイルで形成された励磁部5と、入力交流磁場により被検査体2の表面に発生する渦電流による出力交流磁場を電圧信号として検出する検出コイルで形成された検出部6とを有する。
【0024】
被検査体2は、多数の片状黒鉛が基地に分散された片状黒鉛鋳鉄(CE値:3.7〜4.7)で形成されている。検出部6は鉄芯4の他端側に設けられている。プローブ3の鉄芯4の直径は5ミリメートルである。発信機7は増幅器8を介して励磁部5に接続されている。発信機7は増幅器8を介して励磁部5に、正弦波からなる高周波の交流電流(周波数:5kHz,実効電圧:5ボルト)を通電する。すると、入力交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。その結果、電磁誘導作用により被検査体2の表層付近に渦電流が発生する。渦電流によって出力交流磁場が発生する。これを検出部6は電圧信号として検出する。鉄芯4が用いられているため、電圧信号は増強される。図2は励磁部5および検出部6の電圧波形を示す。横軸は時間(t)、縦軸は電圧値(V)を意味する。図2に示すように、励磁部5の電圧信号(励磁コイルの信号)の位相から所定の位相がずれた状態で、検出部6の電圧信号(検出コイルの信号)の波形が得られる。
【0025】
検出部6の電圧信号は、ADコンバータ9を経てコンピュータ10に入力される。コンピュータ10は、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析する解析部に相当する。コンピュータ10は周波数解析用のソフトウェアにより周波数解析を行う。この場合、サンプリングレートは、正弦波の1周期について100点サンプリングするように設定されている。サンプリングした検出部6による電圧信号と励磁部5による電圧信号とから直流成分を除去し、両者で形成されたリサージュ波形(ヒステリシス相当曲線)を図3として示す。図3は、時間を無視し、励磁部5の電圧値V1(励磁コイル電圧)と検出部6の電圧値V2(検出コイル電圧)を比較したものである。磁束密度(相当)と保磁力(相当)とループ面積が得られる。ここで、相当としたのは、交流磁化法では、鉄芯4の物性値も含まれたデータとなるためである。更に、サンプリングした検出部6の電圧信号から直流成分を除去した後、その信号をフーリエ変換することにより周波数解析(FFT)し、基本波の強度、第3高調波の強度、第5高調波の強度等を算出した。図4は周波数解析(FFT)した結果を示す。図4の横軸は周波数(Hz)を示し、図4の縦軸は強度(dB)を示す。
【0026】
図5(a)、図5(b)、図5(c)は被検査体2の黒鉛鋳鉄組織を示す。図5(a)に示す被検査体2のCE値は4.71(炭素:3.77質量%,シリコン2.78質量%、マンガン:0.78質量%,リン0.025質量%,硫黄0.015質量%)とした。図5(b)に示す被検査体2のCE値は4.08(炭素:3.36質量%,シリコン2.15質量%、マンガン:0.69質量%,リン0.018質量%,硫黄0.010質量%)とした。図5(c)に示す被検査体2のCE値は3.69(炭素:3.13質量%,シリコン1.66質量%、マンガン:0.72質量%,リン0.017質量%,硫黄0.002質量%)とした。なお、炭素当量(CE値)=C(質量%)+1/3×Si(質量%)と定義した。
【0027】
このように各被検査体2は、炭素当量(CE値)が異なると共に、黒鉛の長さおよび粒数が異なる鋳鉄組織(片状黒鉛鋳鉄の鋳鉄組織)とされている。ここで、図5(a)、図5(b)、図5(c)は、炭素当量(CE値)が異なると共に、黒鉛の長さおよび粒数が異なる鋳鉄組織(片状黒鉛鋳鉄の鋳鉄組織)を示す。図5(a)、図5(b)、図5(c)に示す各被検査体2の鋳鉄は、パーライト化促進を主目的とする熱処理が施されているため、基地は体積比で95%以上、98%以上のパーライトとされている。
【0028】
図6は、これら3種の鋳鉄の磁化曲線を示す。図6の横軸は磁界(Magnetic field)の強さ(H)を示し、図6の縦軸は磁束密度(Magnetic flux density)(B)を示す。磁化曲線aは、図5(a)に示す被検査体2(CE値4.71)の試験結果を示す。磁化曲線bは、図5(b)に示す被検査体2(CE値4.08)の試験結果を示す。磁化曲線cは、図5(c)に示す被検査体2(CE値3.69)の試験結果を示す。
【0029】
図5および図6から理解できるように、炭素当量(CE値)が増加して黒鉛(片状の黒鉛)の長さが成長して長くなるにつれて、また、黒鉛(片状の黒鉛)の粒数が少なくなるにつれて、磁化曲線は角形になる。更に、黒鉛の長さが短くなるにつれて、また、黒鉛の粒数が多くなるにつれて、磁化曲線は寝た形になることがわかる。
【0030】
以上の傾向を極端に示せば、図7(a)および図7(b)に示される。図7(a)は、磁化曲線が角形状化した状態を示す。図7(b)は、磁化曲線が最終的に線状化している。図7(a)によれば、角形部が高い磁化曲線のフーリエ変換を行うと、角形度の上昇に伴い、第3高調波、第5高調波、第7高調波といった奇数次の高調波の成分が高くなる。
【0031】
これに対して図7(b)に示すように、最終的に線状化した磁化曲線によれば、第3高調波、第5高調波、第7高調波といった奇数次の高調波の出現は低下しており、奇数次の高調波の電圧値は0となる。以上のメカニズムにより、第3高調波、第5高調波といった高調波成分の出現によって、鋳鉄における黒鉛の長さおよび/または黒鉛粒数といった黒鉛特性を評価できることがわかる。換言すれば、基本波と高調波とで設定される判定値α、判定値αを対数化した判定値βによれば、鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)における黒鉛の長さおよび/または黒鉛粒数といった黒鉛特性を評価できることがわかる。
【0032】
(試験例1)
被検査体2として、片状黒鉛鋳鉄で形成された車両搭載部品であるディスクロータを用い、実際に試験を実施した。図8に示すように、ディスクロータは、多数の片状黒鉛が基地(パーライト)に分散された片状黒鉛鋳鉄(FC150相当)で形成されている。黒鉛はディスクロータの摺動特性に影響を与える。基地を100%とするとき、体積比で90%以上、殊に95%以上がパーライトとされている。鋳鉄の組成としては、質量%で、炭素3.3〜3.8%、シリコン1.8〜2.2%、マンガンは0.4〜0.80%、リンは0.030%、イオウは0.1%とされている。炭素当量としては3.9〜4.6の範囲とされている。ディスクロータは車両における重要保安部品であるため、その摩擦面(摺動面)の黒鉛組織を均一となるように制御することが、近年、益々強く要請されている。殊に、被検査体2のうち冷却速度が速いため、黒鉛の成長が制約される外周縁2c付近においても、その円周上の黒鉛組織が均一であることが、益々強く要請されている。
【0033】
図8に示すように、ディスクロータは、中心軸線M1の周りに設けられた平面状をなす第1摺動面201をもつ第1部材202と、第1部材202に対面するように中心軸線M1の周りに設けられた平面状をなす第2摺動面203をもつ第2部材204と、第1部材202と第2部材204とを部分的に繋ぐように中心軸線M1の周りに設けられた複数個の連設部205と、周方向に連設された連設部205間に形成された空気通路となる通路206とをもつ。図1に示すように、励磁部5は鉄芯4の長さ方向の一端側に設けられており、検出部6は鉄芯4の長さ方向の他端側に設けられている。
【0034】
図9は、第3高調波比を判定値β[dB]とするとき、判定値β[dB]と黒鉛の個数との関係を示す。図9に示すように、判定値βが−39.5[dB]〜−37.5[dB]の範囲内において、判定値β[dB]と単位面積あたりの黒鉛の個数との間には、相関性が認められる。なお、図9の縦軸として示す黒鉛の個数は、単位面積(0.45mm2)あたりにおける個数を意味する。
【0035】
また図10は、判定値β[dB]と黒鉛長さ(マイクロメートル)との関係を示す。図10に示すように、判定値βが−39.5[dB]〜−37.5[dB]の範囲内において、判定値β[dB]と黒鉛長さ(マイクロメートル)との間には、相関性が認められる。
【0036】
なお、図9および図10において、◆印は、被検査体2の外周縁2cから半径方向において中心側に向けて6mmの部位(A1点)を示す。●は、被検査体2の外周縁2cから半径方向において中心側に向けて10ミリメートルの部位(A2点)を示す。A1点およびA2点については、図8に示されている。
【0037】
(試験例2)
片状黒鉛鋳鉄(CE値:4.25、FC150相当)で形成されているディスクロータを用い、試験例1と同様に試験例2を実施した。この場合、試験例1と同様に試験した。片状黒鉛鋳鉄を被検査体2とした場合において、判定値β[dB](第3高調波比)と黒鉛の長さ(マイクロメートル)との関係を求めた。試験結果を図11に示す。図11に示すように、判定値βが−39.6[dB]〜−37.6[dB]との間において、判定値β[dB](第3高調波比)と黒鉛の長さ(マイクロメートル)との間には、相関性が認められる。
【0038】
(試験例3)
片状黒鉛鋳鉄で形成されているディスクロータ(CE値:4.0)を用い、試験例1と同様に試験例3を実施した。片状黒鉛鋳鉄(FC200相当)を被検査体2とした場合において、判定値β[dB](第3・第5高調波比)と黒鉛の個数との関係を求めた。試験結果を図12に示す。図12に示すように、判定値βが−39.6[dB]〜−37.6[dB]との間において、判定値β(第3・5高調波比(dB))と黒鉛の個数との間には、相関性が認められる。なお、図12に示す黒鉛個数は、単位面積(0.45mm2)あたりにおける個数を意味する。
【0039】
(適用例)
上記したコンピュータ10(図1参照)の外付けメモリまたは内蔵メモリの所定のエリアには、判定値βと黒鉛特性(黒鉛長さ、単位面積あたりの黒鉛個数)との関係が格納されている。従って、被検査体2を構成する鋳鉄の未知の黒鉛特性を計測するにあたり、励磁部5から高周波の交流電流(周波数:5kHz)を通電する。すると、前述したように、交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。その結果、電磁誘導作用により被検査体2の表層付近に渦電流が発生する。渦電流によって交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。これを検出部6は電圧信号として検出する。鉄芯4(図1参照)が用いられているため、電圧信号は増強される。但し、鉄芯4は必ずしも必須構成ではなく、必要に応じて設ければ良い。検出部6で検出された電圧信号は、ADコンバータ9を経てコンピュータ10に入力される。コンピュータ10は、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析し、基本波および奇数次の高調波を求める。更に上記した判定値αを求め、更に判定値βを求める。この結果、被検査体2を構成する鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)における黒鉛特性(黒鉛長さ、単位面積あたりの黒鉛個数)を判定値βに基づいて非破壊で評価することができる。黒鉛特性が基準値に達していないときには、コンピュータ10はその旨を出力する。
【0040】
(その他)
上記した実施形態および試験例によれば、片状黒鉛鋳鉄に適用されているが、これに限られるものではない。例えば、芋虫状黒鉛鋳鉄、塊状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、共晶黒鉛鋳鉄に適用しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
【0041】
(付記項1)片状黒鉛または芋虫状の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とするブレーキ部品の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部に通電することにより入力交流磁場を前記ブレーキ部品に作用させる操作と、前記入力交流磁場により前記ブレーキ部品に発生する渦電流による出力交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作において基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記ブレーキ部品の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【0042】
(付記項2)片状黒鉛または芋虫状の黒鉛が分散された鋳鉄を母材とするブレーキ部品の鋳鉄組織を検査する装置であって、交流電流を通電することにより入力交流磁場を前記ブレーキ部品に作用させる励磁部と、前記入力交流磁場により前記ブレーキ部品に発生する渦電流による出力交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は基本波および高調波に基づいて設定された判定値により黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】鋳鉄の黒鉛評価装置の概念を示す構成図である。
【図2】励磁部に給電される電圧信号と検出部で検出される電圧信号との関係を示すグラフである。
【図3】励磁部に給電される電圧と検出部で検出される電圧との関係を示すグラフである。
【図4】周波数解析したときにおける検出部の結果と強度との関係を示すグラフである。
【図5】(a)(b)(c)はCE値が異なる場合における被検査体の顕微鏡鋳鉄組織を示す写真図である。
【図6】CE値が異なる場合(a,b,c)における磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフである。
【図7】(a)は磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフであり、(b)は磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフである。
【図8】被検査体の断面図である。
【図9】判定値と黒鉛の個数との関係を示すグラフである。
【図10】判定値と黒鉛の長さとの関係を示すグラフである。
【図11】判定値と黒鉛の長さとの関係を示すグラフである。
【図12】判定値と黒鉛の個数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1は黒鉛評価装置、2は被検査体、3はプローブ、5は励磁部、6は検出部、10はコンピュータを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳鉄のチル化組織の電磁的性質またはフェライト・パーライト相の電磁的性質の差異に基づいて、渦電流により鋳鉄のチル化組織の有無、フェライト基地もしくはパーライト基地の判定を行う鋳鉄の非破壊評価方法が知られている(特許文献1)。また、鋳鉄のチル化組織の磁気的性質またはフェライト・パーライト相の磁気的性質の差異に基づいて、鋳鉄のチル化組織の有無、フェライト基地もしくはパーライト基地の判定またはフェライト/パーライト率の同定を渦電流信号の磁気増幅で発生する歪信号を用いて行う鋳鉄の磁気的評価方法が知られている(特許文献2)。
【0003】
更に、球状黒鉛鋳鉄の表面に接触または近接して配置したコイル部に特定の周波数をもつ複数個の励磁電流を通電して表面に渦電流を生成させ、この渦電流によりコイル部に生じるインピーダンス変化を検出することにより、球状黒鉛鋳鉄の表面部のフェライト相の有無やフェライト相の厚さを検知する球状黒鉛鋳鉄部材の検知方法が知られている(特許文献3)。
【0004】
更に、超音波を利用して鋳鉄のチル化組織の有無等を評価する鋳鉄の非破壊評価方法および装置が知られている(特許文献4)。
【0005】
更に、渦電流により鋳鉄の基地を評価することにより鋳鉄の機械的特性を非破壊評価する渦電流による鋳鉄の機械的特性の非破壊評価が知られている(非特許文献1〜非特許文献4)。
【特許文献1】特開2003−262618号公報
【特許文献2】特開2004−219234号公報
【特許文献3】特開2002−156366号公報
【特許文献4】特開平6−94683号公報
【非特許文献1】内一哲哉,「渦電流を用いた鋳鉄の材料評価」 第14回「電磁力関連のダイナミックス」シンポジウム[2002.5.22〜24 岡山]
【非特許文献2】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄の機械的特性の非破壊評価」第15回「電磁力関連のダイナミックス」シンポジウム[2003.5.28〜30 金沢]
【非特許文献3】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄の機械特性の非破壊評価」日本機械学会 東北支部第38期総会 講演会講演論文集 184〜185頁
【非特許文献4】内一哲哉,「渦電流による鋳鉄基地組織の判別」 日本機械学会 材料力学部門 講演会講演論文集 503〜504頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、産業界では、鋳鉄の信頼性を高めるべく、鋳鉄の基地組織を制御するだけでなく、黒鉛組織も制御することが要請されつつある。例えば、車両搭載部品のディスクブレーキのうち、重要保安部品であるディスクロータにおいては、その摩擦面(摺動面)の黒鉛組織を均一となるように制御することも要請されている。
【0007】
ところで上記した従来技術は、鋳鉄の基地を非破壊で評価するものの、鋳鉄に分散されている黒鉛の特性(単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さといった黒鉛特性)を非破壊で評価するものではない。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、周波数解析したときにおける基本波および高調波をパラメータとし、基本波および高調波に基づいて設定された判定値により、被検査体の鋳鉄組織において単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さ等といった黒鉛特性を判定することができる鋳鉄の黒鉛評価方法および鋳鉄の黒鉛評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋳鉄の評価について長年にわたり鋭意開発を進めている。そして、複数の片状黒鉛等の黒鉛が基地に分散された片状黒鉛鋳鉄等の鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査するにあたり、交流電流を励磁部に通電することにより被検査体に渦電流を発生させる操作と、被検査体に発生する渦電流による交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、検出部で検出された電圧信号を周波数解析する解析操作とを実施し、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により鋳鉄における黒鉛特性(単位面積あたりの黒鉛の個数および/または黒鉛の長さ等)を判定できることを知見し、試験で確認し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明に係る鋳鉄の黒鉛評価方法は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部に通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる操作と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る鋳鉄の黒鉛評価装置は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する装置であって、交流電流を通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる励磁部と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は、周波数解析された基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする。
【0012】
被検査体は、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする。黒鉛としては片状黒鉛や芋虫状黒鉛等の片状をなす黒鉛が挙げられる。芋虫状黒鉛は片状黒鉛の先端が丸みを帯びたものである。更に塊状黒鉛、球状黒鉛、共晶黒鉛が挙げられる。従って鋳鉄としては、片状黒鉛鋳鉄、芋虫状黒鉛鋳鉄が挙げられる。更に、塊状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、共晶黒鉛鋳鉄が挙げられる。黒鉛鋳鉄の基地としては、基地を100%とするとき、一つの相が体積比で70%以上、80%以上、90%以上、95%以上占有することが好ましい。複数の相が混在していると、複数の相の電気的特性および/または磁気的特性が相違するため、高い判定精度が得られにくいためである。従って、基地を100%とするとき、パーライト、フェライト、オーステナイトのうちの一つの相が体積比で70%以上、80%以上、90%以上、更には95%以上、98%以上占有することが好ましい。鋳鉄の組成は黒鉛が生成しているものであれば、特に限定されないが、質量%で、炭素は2.6〜4.5%、3.0〜4.0%が例示される。シリコンは1.0〜8.0%、1.5〜5.0%が例示される。マンガンは0.1〜1.5%、0.2〜1.0%が例示される。リンは1.0%以下、0.5%以下、0.2%以下が例示される。イオウは1.5%以下、1.2%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.2%以下が例示される。炭素当量としては2.8〜4.8の範囲内、3.0〜4.4の範囲内、3.2〜4.2の範囲内が例示される。ちなみに、鋳鉄の凝固速度が遅かったり、鋳鉄の肉厚が厚かったりすると、同一の組成、同一の炭素当量であっても、黒鉛の長さは成長し易い。
【0013】
交流電流を励磁部に通電することにより、被検査体に渦電流を発生させる。励磁部に通電する交流電流については、周波数は0.1kHz〜1000kHz、0.5kHz〜100kHz、殊に1kHz〜10kHzが好ましく、電圧値は実効値で5〜20ボルト、殊に10〜15ボルトが好ましい。渦電流により被検査体に交流磁場が発生する。交流磁場を検出部で電圧信号として検出する。解析部は、検出部で検出された電圧信号(検出信号)を周波数解析し、基本波および高調波を求める。
【0014】
ここで検出部で検出された電圧信号を周期波形f(t)とする。周期波形f(t)はフーリエ級数展開可能である。ここで、周期波形の中の最大周期(基本周期)をT0としたとき、周期T0、それに対応する基本角周波数(基本角振動数)ω0=1/T0の正弦波を考える。フーリエ級数は周期波形f(t)を次の式(1)のように表すことができる。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、ωは角周波数であり、tは時間であり、ω=2πf=2π/Tで示される。a0は直流(定数)成分である。n=1のとき、正弦波を基本波という。n=2,3,4,5……は高調波という。n=3のとき、第3高調波という。n=5のとき、第5高調波という。
【0017】
周波数解析(FFT:Fast Fourier Transform)において、検出部の電圧信号を周波数解析した基本波および高調波に基づいて設定された判定値に基づいて、被検査体の黒鉛鋳鉄組織(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を判定することができる。
【0018】
好ましくは、判定値は、基本波(電圧信号)の電圧値と第3高調波(電圧信号)の電圧値とに基づいて設定される。ここで、基本波(電圧信号)の電圧値をP1[ボルト]とし、第3高調波(電圧信号)の電圧値をP3[ボルト]とすると、判定値αおよび判定値βは、P3およびP1に基づいて設定される。下記の式2は、第3高調波比を表す判定値α[無次元]を示す。下記の式3は、第3高調波比を表す判定値β[dB]を示す。判定値αおよび判定値βにより、被検査体を構成する黒鉛鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)の黒鉛特性(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を評価することができる。
【0019】
【数2】
【0020】
また好ましくは、第3高調波および第5高調波を考慮するときには、判定値は、基本波(電圧信号)の電圧値と第3高調波(電圧信号)の電圧値と第5高調波(電圧信号)の電圧値とに基づいて設定される。ここで、基本波(電圧信号)の電圧値をP1とし、第3高調波(電圧信号)の電圧値をP3とし、第5高調波(電圧信号)の電圧値をP5とすると、判定値αおよび判定値βは、P1、P3およびP5に基づいて設定される。下記の式4は、第3・5高調波比を表す判定値α[無次元]を示す。下記の式5は、第3・5高調波比を表す判定値β[dB]を示す。判定値αおよび判定値βにより、被検査体を構成する黒鉛鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)の黒鉛特性(黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を評価することができる。
【0021】
【数3】
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査するにあたり、周波数解析における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により、被検査体の黒鉛鋳鉄組織(一般的には黒鉛粒数および/または黒鉛長さ)を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図7を参照して説明する。本実施形態に係る鋳鉄の黒鉛特性を評価する黒鉛評価装置1は、図1に示すように、黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体2の表面における黒鉛鋳鉄組織を検査する装置である。黒鉛評価装置1は、プローブ3を有する。プローブ3は、高い透磁率をもつ磁性材料(鉄酸化物を基材とするフェライトコア)で形成された棒状をなす鉄芯4と、交流電流を通電することにより入力交流磁場を被検査体2の表面に作用させる励磁コイルで形成された励磁部5と、入力交流磁場により被検査体2の表面に発生する渦電流による出力交流磁場を電圧信号として検出する検出コイルで形成された検出部6とを有する。
【0024】
被検査体2は、多数の片状黒鉛が基地に分散された片状黒鉛鋳鉄(CE値:3.7〜4.7)で形成されている。検出部6は鉄芯4の他端側に設けられている。プローブ3の鉄芯4の直径は5ミリメートルである。発信機7は増幅器8を介して励磁部5に接続されている。発信機7は増幅器8を介して励磁部5に、正弦波からなる高周波の交流電流(周波数:5kHz,実効電圧:5ボルト)を通電する。すると、入力交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。その結果、電磁誘導作用により被検査体2の表層付近に渦電流が発生する。渦電流によって出力交流磁場が発生する。これを検出部6は電圧信号として検出する。鉄芯4が用いられているため、電圧信号は増強される。図2は励磁部5および検出部6の電圧波形を示す。横軸は時間(t)、縦軸は電圧値(V)を意味する。図2に示すように、励磁部5の電圧信号(励磁コイルの信号)の位相から所定の位相がずれた状態で、検出部6の電圧信号(検出コイルの信号)の波形が得られる。
【0025】
検出部6の電圧信号は、ADコンバータ9を経てコンピュータ10に入力される。コンピュータ10は、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析する解析部に相当する。コンピュータ10は周波数解析用のソフトウェアにより周波数解析を行う。この場合、サンプリングレートは、正弦波の1周期について100点サンプリングするように設定されている。サンプリングした検出部6による電圧信号と励磁部5による電圧信号とから直流成分を除去し、両者で形成されたリサージュ波形(ヒステリシス相当曲線)を図3として示す。図3は、時間を無視し、励磁部5の電圧値V1(励磁コイル電圧)と検出部6の電圧値V2(検出コイル電圧)を比較したものである。磁束密度(相当)と保磁力(相当)とループ面積が得られる。ここで、相当としたのは、交流磁化法では、鉄芯4の物性値も含まれたデータとなるためである。更に、サンプリングした検出部6の電圧信号から直流成分を除去した後、その信号をフーリエ変換することにより周波数解析(FFT)し、基本波の強度、第3高調波の強度、第5高調波の強度等を算出した。図4は周波数解析(FFT)した結果を示す。図4の横軸は周波数(Hz)を示し、図4の縦軸は強度(dB)を示す。
【0026】
図5(a)、図5(b)、図5(c)は被検査体2の黒鉛鋳鉄組織を示す。図5(a)に示す被検査体2のCE値は4.71(炭素:3.77質量%,シリコン2.78質量%、マンガン:0.78質量%,リン0.025質量%,硫黄0.015質量%)とした。図5(b)に示す被検査体2のCE値は4.08(炭素:3.36質量%,シリコン2.15質量%、マンガン:0.69質量%,リン0.018質量%,硫黄0.010質量%)とした。図5(c)に示す被検査体2のCE値は3.69(炭素:3.13質量%,シリコン1.66質量%、マンガン:0.72質量%,リン0.017質量%,硫黄0.002質量%)とした。なお、炭素当量(CE値)=C(質量%)+1/3×Si(質量%)と定義した。
【0027】
このように各被検査体2は、炭素当量(CE値)が異なると共に、黒鉛の長さおよび粒数が異なる鋳鉄組織(片状黒鉛鋳鉄の鋳鉄組織)とされている。ここで、図5(a)、図5(b)、図5(c)は、炭素当量(CE値)が異なると共に、黒鉛の長さおよび粒数が異なる鋳鉄組織(片状黒鉛鋳鉄の鋳鉄組織)を示す。図5(a)、図5(b)、図5(c)に示す各被検査体2の鋳鉄は、パーライト化促進を主目的とする熱処理が施されているため、基地は体積比で95%以上、98%以上のパーライトとされている。
【0028】
図6は、これら3種の鋳鉄の磁化曲線を示す。図6の横軸は磁界(Magnetic field)の強さ(H)を示し、図6の縦軸は磁束密度(Magnetic flux density)(B)を示す。磁化曲線aは、図5(a)に示す被検査体2(CE値4.71)の試験結果を示す。磁化曲線bは、図5(b)に示す被検査体2(CE値4.08)の試験結果を示す。磁化曲線cは、図5(c)に示す被検査体2(CE値3.69)の試験結果を示す。
【0029】
図5および図6から理解できるように、炭素当量(CE値)が増加して黒鉛(片状の黒鉛)の長さが成長して長くなるにつれて、また、黒鉛(片状の黒鉛)の粒数が少なくなるにつれて、磁化曲線は角形になる。更に、黒鉛の長さが短くなるにつれて、また、黒鉛の粒数が多くなるにつれて、磁化曲線は寝た形になることがわかる。
【0030】
以上の傾向を極端に示せば、図7(a)および図7(b)に示される。図7(a)は、磁化曲線が角形状化した状態を示す。図7(b)は、磁化曲線が最終的に線状化している。図7(a)によれば、角形部が高い磁化曲線のフーリエ変換を行うと、角形度の上昇に伴い、第3高調波、第5高調波、第7高調波といった奇数次の高調波の成分が高くなる。
【0031】
これに対して図7(b)に示すように、最終的に線状化した磁化曲線によれば、第3高調波、第5高調波、第7高調波といった奇数次の高調波の出現は低下しており、奇数次の高調波の電圧値は0となる。以上のメカニズムにより、第3高調波、第5高調波といった高調波成分の出現によって、鋳鉄における黒鉛の長さおよび/または黒鉛粒数といった黒鉛特性を評価できることがわかる。換言すれば、基本波と高調波とで設定される判定値α、判定値αを対数化した判定値βによれば、鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)における黒鉛の長さおよび/または黒鉛粒数といった黒鉛特性を評価できることがわかる。
【0032】
(試験例1)
被検査体2として、片状黒鉛鋳鉄で形成された車両搭載部品であるディスクロータを用い、実際に試験を実施した。図8に示すように、ディスクロータは、多数の片状黒鉛が基地(パーライト)に分散された片状黒鉛鋳鉄(FC150相当)で形成されている。黒鉛はディスクロータの摺動特性に影響を与える。基地を100%とするとき、体積比で90%以上、殊に95%以上がパーライトとされている。鋳鉄の組成としては、質量%で、炭素3.3〜3.8%、シリコン1.8〜2.2%、マンガンは0.4〜0.80%、リンは0.030%、イオウは0.1%とされている。炭素当量としては3.9〜4.6の範囲とされている。ディスクロータは車両における重要保安部品であるため、その摩擦面(摺動面)の黒鉛組織を均一となるように制御することが、近年、益々強く要請されている。殊に、被検査体2のうち冷却速度が速いため、黒鉛の成長が制約される外周縁2c付近においても、その円周上の黒鉛組織が均一であることが、益々強く要請されている。
【0033】
図8に示すように、ディスクロータは、中心軸線M1の周りに設けられた平面状をなす第1摺動面201をもつ第1部材202と、第1部材202に対面するように中心軸線M1の周りに設けられた平面状をなす第2摺動面203をもつ第2部材204と、第1部材202と第2部材204とを部分的に繋ぐように中心軸線M1の周りに設けられた複数個の連設部205と、周方向に連設された連設部205間に形成された空気通路となる通路206とをもつ。図1に示すように、励磁部5は鉄芯4の長さ方向の一端側に設けられており、検出部6は鉄芯4の長さ方向の他端側に設けられている。
【0034】
図9は、第3高調波比を判定値β[dB]とするとき、判定値β[dB]と黒鉛の個数との関係を示す。図9に示すように、判定値βが−39.5[dB]〜−37.5[dB]の範囲内において、判定値β[dB]と単位面積あたりの黒鉛の個数との間には、相関性が認められる。なお、図9の縦軸として示す黒鉛の個数は、単位面積(0.45mm2)あたりにおける個数を意味する。
【0035】
また図10は、判定値β[dB]と黒鉛長さ(マイクロメートル)との関係を示す。図10に示すように、判定値βが−39.5[dB]〜−37.5[dB]の範囲内において、判定値β[dB]と黒鉛長さ(マイクロメートル)との間には、相関性が認められる。
【0036】
なお、図9および図10において、◆印は、被検査体2の外周縁2cから半径方向において中心側に向けて6mmの部位(A1点)を示す。●は、被検査体2の外周縁2cから半径方向において中心側に向けて10ミリメートルの部位(A2点)を示す。A1点およびA2点については、図8に示されている。
【0037】
(試験例2)
片状黒鉛鋳鉄(CE値:4.25、FC150相当)で形成されているディスクロータを用い、試験例1と同様に試験例2を実施した。この場合、試験例1と同様に試験した。片状黒鉛鋳鉄を被検査体2とした場合において、判定値β[dB](第3高調波比)と黒鉛の長さ(マイクロメートル)との関係を求めた。試験結果を図11に示す。図11に示すように、判定値βが−39.6[dB]〜−37.6[dB]との間において、判定値β[dB](第3高調波比)と黒鉛の長さ(マイクロメートル)との間には、相関性が認められる。
【0038】
(試験例3)
片状黒鉛鋳鉄で形成されているディスクロータ(CE値:4.0)を用い、試験例1と同様に試験例3を実施した。片状黒鉛鋳鉄(FC200相当)を被検査体2とした場合において、判定値β[dB](第3・第5高調波比)と黒鉛の個数との関係を求めた。試験結果を図12に示す。図12に示すように、判定値βが−39.6[dB]〜−37.6[dB]との間において、判定値β(第3・5高調波比(dB))と黒鉛の個数との間には、相関性が認められる。なお、図12に示す黒鉛個数は、単位面積(0.45mm2)あたりにおける個数を意味する。
【0039】
(適用例)
上記したコンピュータ10(図1参照)の外付けメモリまたは内蔵メモリの所定のエリアには、判定値βと黒鉛特性(黒鉛長さ、単位面積あたりの黒鉛個数)との関係が格納されている。従って、被検査体2を構成する鋳鉄の未知の黒鉛特性を計測するにあたり、励磁部5から高周波の交流電流(周波数:5kHz)を通電する。すると、前述したように、交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。その結果、電磁誘導作用により被検査体2の表層付近に渦電流が発生する。渦電流によって交流磁場が被検査体2の表層付近に発生する。これを検出部6は電圧信号として検出する。鉄芯4(図1参照)が用いられているため、電圧信号は増強される。但し、鉄芯4は必ずしも必須構成ではなく、必要に応じて設ければ良い。検出部6で検出された電圧信号は、ADコンバータ9を経てコンピュータ10に入力される。コンピュータ10は、検出部6で検出された電圧信号を周波数解析し、基本波および奇数次の高調波を求める。更に上記した判定値αを求め、更に判定値βを求める。この結果、被検査体2を構成する鋳鉄(黒鉛鋳鉄組織)における黒鉛特性(黒鉛長さ、単位面積あたりの黒鉛個数)を判定値βに基づいて非破壊で評価することができる。黒鉛特性が基準値に達していないときには、コンピュータ10はその旨を出力する。
【0040】
(その他)
上記した実施形態および試験例によれば、片状黒鉛鋳鉄に適用されているが、これに限られるものではない。例えば、芋虫状黒鉛鋳鉄、塊状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、共晶黒鉛鋳鉄に適用しても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
【0041】
(付記項1)片状黒鉛または芋虫状の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とするブレーキ部品の鋳鉄組織を検査する方法であって、交流電流を励磁部に通電することにより入力交流磁場を前記ブレーキ部品に作用させる操作と、前記入力交流磁場により前記ブレーキ部品に発生する渦電流による出力交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作において基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記ブレーキ部品の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【0042】
(付記項2)片状黒鉛または芋虫状の黒鉛が分散された鋳鉄を母材とするブレーキ部品の鋳鉄組織を検査する装置であって、交流電流を通電することにより入力交流磁場を前記ブレーキ部品に作用させる励磁部と、前記入力交流磁場により前記ブレーキ部品に発生する渦電流による出力交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は基本波および高調波に基づいて設定された判定値により黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】鋳鉄の黒鉛評価装置の概念を示す構成図である。
【図2】励磁部に給電される電圧信号と検出部で検出される電圧信号との関係を示すグラフである。
【図3】励磁部に給電される電圧と検出部で検出される電圧との関係を示すグラフである。
【図4】周波数解析したときにおける検出部の結果と強度との関係を示すグラフである。
【図5】(a)(b)(c)はCE値が異なる場合における被検査体の顕微鏡鋳鉄組織を示す写真図である。
【図6】CE値が異なる場合(a,b,c)における磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフである。
【図7】(a)は磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフであり、(b)は磁界の強さ(H)と磁束密度(B)との間におけるヒステリシス特性を示すグラフである。
【図8】被検査体の断面図である。
【図9】判定値と黒鉛の個数との関係を示すグラフである。
【図10】判定値と黒鉛の長さとの関係を示すグラフである。
【図11】判定値と黒鉛の長さとの関係を示すグラフである。
【図12】判定値と黒鉛の個数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1は黒鉛評価装置、2は被検査体、3はプローブ、5は励磁部、6は検出部、10はコンピュータを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する方法であって、
交流電流を励磁部に通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる操作と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項2】
請求項1において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項3】
請求項1において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値と第5高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項4】
複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する装置であって、
交流電流を通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる励磁部と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は、周波数解析された基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【請求項5】
請求項4において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【請求項6】
請求項4において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値と第5高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【請求項1】
複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する方法であって、
交流電流を励磁部に通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる操作と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を検出部で電圧信号として検出する操作と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析操作とを含み、前記解析操作における基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項2】
請求項1において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項3】
請求項1において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値と第5高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価方法。
【請求項4】
複数の黒鉛が基地に分散された鋳鉄を母材とする被検査体の鋳鉄組織を検査する装置であって、
交流電流を通電することにより前記被検査体に渦電流を発生させる励磁部と、前記渦電流により前記被検査体に発生する交流磁場を電圧信号として検出する検出部と、前記検出部で検出された前記電圧信号を周波数解析する解析部とを含み、前記解析部は、周波数解析された基本波および高調波に基づいて設定された判定値により前記被検査体の黒鉛鋳鉄組織を判定することを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【請求項5】
請求項4において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【請求項6】
請求項4において、前記判定値は、前記周波数解析における基本波の電圧値と第3高調波の電圧値と第5高調波の電圧値とに基づいて設定されることを特徴とする鋳鉄の黒鉛評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図5】
【公開番号】特開2009−236670(P2009−236670A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82932(P2008−82932)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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