説明

鋼の連続鋳造方法及び鋼板の製造方法

【課題】凝固界面での介在物や気泡付着を防止し、清浄な鋼材を製造する。
【解決手段】スライディングノズル12と浸漬ノズル14により鋳型16内に供給される溶鋼6の鋳型内流動を制御する際に、前記スライディングノズル12の開閉方向を鋳型16の長辺16a方向とすると共に、前記浸漬ノズル14の吐出口14aに交流磁界を印加し、更に、鋳造後の鋳片8の表面を所定量削る。前記浸漬ノズル吐出口の吐出角度を、水平方向に対して下向きに0〜45°の範囲とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造方法及び鋼板の製造方法に係り、特に、スライディングノズルと浸漬ノズルにより鋳型内に供給される溶鋼の鋳型内流動を制御する際に用いるのに好適な、磁界印加による鋳型内溶鋼流動の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に例示された連続鋳造設備の概略を図1に示す。タンディッシュ10内に注入された溶鋼6は、タンディッシュ10の下部に設けられた溶鋼流量制御機構であるスライディングノズル12、及び浸漬ノズル14を経由して、上下両端部が開放された鋳型16の内部に供給される。鋳型16内に供給された溶鋼6は、冷却された鋳型内面近傍から凝固シェル8aを形成し、該凝固シェル8aは、溶鋼6の中心部に向かって、その厚さを増加していく。凝固シェル8aは、鋳型下部方向に引き抜かれ、鋳片8を形成する。
【0003】
前記スライディングノズル12の構造の一例を図2に示す。図2(A)は、上下固定盤21、22の中心軸を含む面で切断した縦断面の模式図、図2(B)は、B−B線で切断した矢示方向の水平断面の模式図をそれぞれ表わす。スライディングノズル12は、一般に、溶鋼供給孔24を有する上固定盤21、溶鋼供給孔25を有するスライド盤22及び溶鋼供給孔26を有する下固定盤23により構成されており、溶鋼供給量の調整が、スライド盤22を図中に矢印で示す摺動方向に移動させて、開孔面積Sを調整することにより行なう。
【0004】
又、特許文献2には、図3(A)及び(B)に示す如く、鋳型長辺16a背面の浸漬ノズル14の吐出口14a位置よりも上に交流磁界発生装置32を配置し、水平方向に回転する磁界を印加してメニスカスの溶鋼を回転(攪拌)させ、この溶鋼流により、凝固シェル8a界面の非金属介在物を洗浄する効果を高めることで鋳片表層部の非金属介在物を低減すると共に、鋳型長辺16a背面の浸漬ノズル吐出口14a位置より下に静磁界発生装置34を配置して静磁界を印加し、前記下降流を減速して鋳片内層部の非金属介在物を低減する方法が記載されている。
【0005】
又、特許文献3には、鋳片の表面を溶削により手入れする方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−82197号公報(図2、図3)
【特許文献2】特開平6−226409号公報
【特許文献3】特開平5−57430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1はスライディングノズルの構造を示すのみで、溶鋼流との関係は検討されていない。
【0008】
又、特許文献2に記載の方法では、メニスカスの溶鋼流速は必ずしも最適には制御されず、逆に、移動磁界による回転流でメニスカスの溶鋼流速が加速され、モールドフラックス18の巻き込みを助長することもあって、鋳片品質の安定性に欠ける。図4に、鋳型の厚み方向(短辺方向)と気泡個数の関係の例を示す。従来は、表層部を研削しても依然として気泡密度の高い面が出現し、スラブ手入れの効果が十分に出ない。理想的には、スラブの厚み方向の気泡の分布の差を大きくし、気泡の少ない面を出現させることが必要であることに気づいた。
【0009】
又、特許文献3は、鋳造後の鋳片の手入れ方法に関するもので、鋳造段階に関しては、検討されていなかった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、凝固界面での介在物や気泡付着を防止し、清浄な鋼材を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、スライディングノズルと浸漬ノズルにより鋳型内に供給される溶鋼の鋳型内流動を制御する鋼の連続鋳造方法であって、前記スライディングノズルの開閉方向を鋳型の長辺方向とすると共に、前記浸漬ノズルの吐出口に交流磁界を印加し、更に、鋳造後の鋳片の表面を所定量削るようにして、前記課題を解決したものである。
【0012】
前記浸漬ノズル吐出口の吐出角度は、水平方向に対して下向きに0〜45°の範囲とすることができる。
【0013】
又、前記所定量は、表面から1〜4mmとすることができる。
【0014】
本発明は、又、前記の方法で製造した鋳片を用いることを特徴とする鋼板の製造方法を提供するものである。
【0015】
ここで、スライディングノズルの開閉方向を鋳型の長辺方向とするのは、図3(B)に示す如く、スライディングノズル12の開閉方向を鋳型16の短辺16b方向とすると、溶鋼6の片流れが発生し、鋳片8の表と裏(図3(B)の上下)で品質が異なってしまうからである。図5(B)に示す如く、スライディングノズル12の開閉方向を鋳型16の長辺16a方向とした場合には、溶鋼6の片流れが発生しない。
【0016】
又、浸漬ノズル吐出口の吐出角度θを水平方向に対し0〜45°としたのは、吐出角度θが45°を超えると、電磁攪拌で制御できる領域を超えて溶鋼を下方へ吐出してしまうからである。
【0017】
又、鋳造後の鋳片の表面の切削量の下限を2mmとしたのは、図6に示す如く、2mm未満であると、アルゴン気泡の除去が不十分なためである。一方、上限を4mmとしたのは、4mmを超えると、鋼片のアルゴン気泡のない部分を除去してしまい、製品歩留りが悪くなるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メニスカスの溶鋼流速を最適に制御して、凝固界面での介在物や気泡の付着を防止し、更に、表面に気泡を集めることによって、所定量の切削で確実に気泡を除くことができ、清浄な鋼材を製造することが可能となる。
【0019】
本発明は、特に、鋳型厚みが150mm以上の鋼片製造に適用して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本実施形態は、図5(A)及び(B)に示す如く、スライディングノズル12と浸漬ノズル14により鋳型16内に供給される溶鋼6の鋳型内流動を制御する際に、前記スライディングノズル12の開閉方向を鋳型16の長辺16a方向とすると共に、上側磁極42と下側磁極44の間に中央磁極46を設けて、前記浸漬ノズル14の吐出口14aに交流磁界を印加し、更に、鋳造後の鋳片8の表面を所定量(2〜4mm)削るようにしたものである。
【実施例】
【0022】
本発明により、上側磁極42と下側磁極44に直流磁界を印加し、中央磁極46に交流磁界を印加して1500mm幅×250mm厚の鋳片8を製造した。鋳片8の表面を段削し、超音波探傷法によりアルゴン気泡分布を測定したところ、図6に示したような結果が得られた。
【0023】
ここで、アルゴン気泡分布の測定に際しては、鋳片8の表面を段削し、段削した位置での直径100μm以上の気泡個数を超音波探傷法により測定し、1m2当たりの気泡個数とした後、3mm段削した位置での測定値を1として指数化した。
【0024】
なお、鋳片の表面を所定量削る方法としては、グラインダ等で機械的に削る他、特許文献3に記載されたような溶削の手法を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】連続鋳造設備の概略を示す鉛直断面図
【図2】スライディングノズルの構造例を示す模式図
【図3】従来の交流移動磁界印加方法を説明するための(A)鉛直断面図及び(B)水平断面図
【図4】図3に示した従来例と実施例の鋳型厚み方向(短辺方向)位置と気泡個数の関係の例を示す模式図
【図5】本発明の実施形態の鋳型周辺の構成を示す(A)鉛直断面図及び(B)水平断面図
【図6】前記実施形態における鋳型厚み方向(短辺方向)位置と気泡個数の関係の例を示す図
【符号の説明】
【0026】
6…溶鋼
8…鋳片
8a…凝固シェル
10…タンディッシュ
12…スライディングノズル
14…浸漬ノズル
14a…吐出口
16…鋳型
16a…鋳型長辺
42…上側磁極
44…下側磁極
46…中央磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライディングノズルと浸漬ノズルにより鋳型内に供給される溶鋼の鋳型内流動を制御する鋼の連続鋳造方法であって、
前記スライディングノズルの開閉方向を鋳型の長辺方向とすると共に、
前記浸漬ノズルの吐出口に交流磁界を印加し、
更に、鋳造後の鋳片の表面を所定量削ることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
【請求項2】
前記浸漬ノズル吐出口の吐出角度を、水平方向に対して下向きに0〜45°の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項3】
前記所定量を、表面から1〜4mmとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼の連続鋳造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法で製造した鋳片を用いることを特徴とする鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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