説明

鋼の連続鋳造用発熱型モールドパウダー

【課題】本発明の目的は、還元材として比較的反応性が低く、安全な金属または合金を使用し、その添加量がなるべく少なくて良く、酸化材としては少量で酸化効果が高く、作業性を悪化させず、従来よりも発熱量が大きい連続鋳造用発熱型モールドパウダーを提供することにある。
【解決手段】本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーは、金属または合金を1〜20質量%、酸化マンガンを1〜40質量%、及びアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ金属硝酸塩からなる群から選択された発熱開始促進材の1種または2種以上を0.5〜13質量%含有してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱性を有する鋼の連続鋳造用発熱型モールドパウダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造用モールドパウダー(以下、単に「モールドパウダー」と記載する)は、合成珪酸カルシウム、セメント、ウォラストナイト、ダイカルシウムシリケート等を主原料とし、必要に応じて塩基度や嵩比重などの粉体特性を調整するためにシリカ原料を加え、更に炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、フッ化ナトリウム、蛍石などの溶融後のスラグ特性調整材としてのフラックス原料、溶融速度調整材としての炭素質原料から構成されている。
【0003】
モールドパウダーは、モールド内へ注入された溶鋼表面上へ投入され、溶鋼からの受熱により滓化溶融する。この時、上方から未溶融の現パウダー層、焼結層、溶融スラグ層からなる層状構造を形成し、溶融スラグはモールドと凝固シェル間に流入して消費される。その間の主な役割としては、(1)溶鋼の保温作用、(2)溶鋼の再酸化防止、(3)溶鋼から浮上する介在物の吸収除去、(4)モールドと凝固シェル間の潤滑作用、(5)凝固シェルからモールドへの抜熱制御などが挙げられる。
【0004】
鋼の連続鋳造において、モールド内の溶鋼表面温度が低下すると、メニスカス部において凝固シェル先端が倒れ込む爪状組織を形成し、溶鋼中から浮上した介在物、気泡がメニスカス爪状凝固シェルに捕捉され、製品欠陥の原因となる。更に、溶鋼表面温度の低下が大きいと、溶鋼表面にディッケルと呼ばれる鋼の凝固膜が発生し易くなる。ディッケルが発生するとモールドパウダーの溶融が遅れ、溶融スラグ不足によって潤滑不良を生じるなどの問題がある。特に、鋳造開始時においては、溶鋼は冷えた鋳型内に注入されるため、溶鋼温度の低下が大きく、ディッケルが発生し易い。
【0005】
これらの問題を解決するため、例えば特許文献1には、フライアッシュを35〜50重量%(質量%)、ポルトランドセメントを20乃至40重量%(質量%)、CaFを90%以上含有し、SiO、Alが3%以下である蛍石を8乃至16重量%(質量%)、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの1種以上を2乃至12重量%(質量%)、弗化ナトリウムまたは珪弗化ナトリウムの1種以上を5乃至15重量%(質量%)、発熱性物質の粉末を2乃至10重量%(質量%)含有し、遊離炭素含有量が2重量%(質量%)以下であることを特徴とする、鋼の連続鋳造用発熱性粉末添加剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、鋼の連続鋳造過程において、パウダー中の金属Caと金属Siが総量で10〜20%、且金属Siが13%以下となるように金属Ca−Si合金を配合し、更にCを0.5%以下に低減せしめた発熱性還元性パウダーを鋳造初期に添加することを特徴とする鋼の連続鋳造方法が開示されている。
【0007】
更に、特許文献3には、内側壁面が型面を形成する筒状の鋳型内に挿入した浸漬ノズルからステンレス溶鋼を注入しながらモールドパウダーを鋳型内上部に投入して鋳片を鋳型の下方から引き出す連続鋳造を最初に初期用モールドパウダーを使用して開始するに際し、初期用モールドパウダーとして、Al−SiO−CaO系の無機粉末に低融点調整剤としてNaO、F、MgO、Fe、B及びBaOの1種以上を、発熱剤としてC及びCa−Siの少なくともCa−Siを、該発熱剤を発熱させる酸化剤としてKMnO、Fe及びMnOの1種以上を添加して下記の特性
(イ)溶融点:900〜1,100℃
(ロ)発熱量:400kcal/kg以上
(ハ)塩基度(CaO/SiO):0.7〜1.1
を有するパウダーを調整し、この初期用モールドパウダーを鋳型内の溶鋼上部表面の表面積1cm当たり2〜4g投入することを特徴とするステンレス鋼の連続鋳造における初期鋳造方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、基材原料20〜90重量%(質量%)、SiO含有量50重量%(質量%)以上のシリカ質原料0〜10重量%(質量%)、フラックス原料0〜20重量%(質量%)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び硝酸ナトリウムよりなる群から選択された1種または2種以上の発熱材3〜30重量%(質量%)、炭素、シリコン及びシリコン合金よりなる群から選択された1種または2種以上の還元材3〜30重量%(質量%)、及び酸化鉄よりなる火炎抑制材0〜30重量%(質量%)を含有してなることを特徴とする連続鋳造用発熱型モールドパウダー(請求項1);基材原料20〜90重量%(質量%)、SiO含有量50重量%(質量%)以上のシリカ質原料0〜10重量%(質量%)、フラックス原料0〜20重量%(質量%)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び硝酸ナトリウムよりなる群から選択された1種または2種以上の発熱材3〜30重量%(質量%)、炭素、シリコン及びシリコン合金よりなる群から選択された1種または2種以上の還元材3〜30重量%(質量%)、及び酸化鉄よりなる火炎抑制材0〜30重量%(質量%)を含有してなり、不可避的遊離炭素が0.5重量%(質量%)以下であることを特徴とする連続鋳造用発熱型モールドパウダー(請求項2)が開示されている。
【0009】
更に、特許文献5には、スラグ基材と、融剤、粘度調整剤、カーボンなどを含有した連続鋳造用パウダに、フラックス分とCa−Al合金微粒子とを一体に焼結して粉状にしたCa−Al合金フラックス粉末、およびCa−Si合金粉末やAl−Mg合金粉末などの発熱性合金粉末を、それぞれ発熱剤として混合したことを特徴とする連続鋳造用フロントパウダが開示されている。
【0010】
また、特許文献6には、極低炭素鋼の連続鋳造に使用されるパウダーであって、Ca−Al合金、Al−Mg合金、金属AlおよびAl−Ca−Mg合金の群から選ばれる発熱剤の少なくとも1種を3〜20重量%(質量%)含有し、かつフラックスの成分比率が10〜80%であるCa−Al合金とフラックスとの混合組織を5〜40重量%(質量%)含有し、さらにトータルカーボン量が0.3%以下であることを特徴とする極低炭素鋼用発熱型スタートパウダーが開示されている。
【0011】
更に、特許文献7には、鋼の連続鋳造用モールドパウダーであって、全カーボン:0〜1.5質量%、炭酸塩:0〜5質量%ならびに金属粉末発熱剤としてCa−Si合金、金属SiおよびSi合金の1種もしくは2種以上:3質量%以上を含有することを特徴とする、鋳造の開始を円滑に行うための連続鋳造開始用モールドパウダーが開示されている。
【0012】
また、特許文献8には、鋳造開始時に用いる連続鋳造用初期モールドパウダーであって、CaO、SiO、Al、NaOおよびMgOを主成分とするプリメルト原料を60〜90質量%、金属発熱材としてCa−Si、Al−MgおよびCa−Al合金のうちの1種以上を5〜20質量%、および助燃材として酸化鉄を5〜20質量%含有することを特徴とする連続鋳造用初期モールドパウダーが開示されている。
【0013】
上述のように、特許文献1〜8に開示されている技術は、モールドパウダーにSi、Ca−Siなどの金属あるいは合金からなる還元材と、Feなどの各種酸化材を添加し、その反応(テルミット反応)による反応熱を利用して溶鋼に熱を供給し、溶鋼表面の温度低下を防止するものである。
【0014】
【特許文献1】特開昭48−97735号公報
【特許文献2】特開昭55−21568号公報
【特許文献3】特開平2−220749号公報
【特許文献4】特開平3−226341号公報
【特許文献5】特開平3−169467号公報
【特許文献6】特開平4−105757号公報
【特許文献7】特開平9−85403号公報
【特許文献8】特開平10−34301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の連続鋳造用発熱型モールドパウダーでは、鋼中介在物や気泡が凝固シェルに捕捉されたり、ディッケルが発生する場合があるなど、発熱量が充分とは言えない。発熱型モールドパウダーの発熱量を大きくするためには、金属を多量に添加するか、反応性に優れた金属(または合金)を使用すれば良いが、Al等の反応性に優れる金属は粉塵爆発の危険性が高いため、安全面から使用できない。そこで、金属SiやCa−Si合金等の反応性が比較的低い金属、合金が一般に使用されているが、添加した金属や合金を完全に酸化させるためには、理論反応量以上の酸化材が必要となる。金属や合金の添加量を多くすればする程、より多量の酸化材が必要となり、モールドパウダー中に占める金属や合金と酸化材の比率が高くなり、その他の成分の配合量が少なくなり、発熱溶融後のスラグ成分の調整が困難となる。また、酸化材の配合量が不足する場合には、発熱反応後まで未反応の金属や合金が残存し、期待した発熱量を得ることはできないと同時にスラグ中に残存する金属や合金がモールドと凝固シェル間に流れ込み、モールド鋼板温度変動を大きくし、ブレークアウト誤警報の原因となる。
【0016】
一方、発熱型モールドパウダーの酸化材としては、FeO、Fe、NaCO、NaNOが一般的に使用されているが、発熱量を高くするためには酸化材の配合量を増加する必要がある。NaNOを多量に添加すると、発熱反応時に有害なNOガスを大量に発生してしまう問題がある。NaCOを多量に配合すると、発熱反応に伴って火炎や白煙が大量発生し、モールド内が見辛く、作業性が悪化し、更に、溶融後のスラグの状態も粘ってスラグベアーを生成し易く、鋳片へのノロ噛みなどの原因となる問題がある。FeO、Feは反応中白煙の発生は少ないものの、反応速度が遅い(酸化能力が比較的小さい)ため、発熱量が小さい問題や、発熱後に還元されて金属となったFeが溶鋼を汚染する問題等がある。
【0017】
従って、本発明の目的は、還元材として比較的反応性が低く、安全な金属または合金を使用し、その添加量がなるべく少なくて良く、酸化材としては少量で酸化効果が高く、作業性を悪化させず、従来よりも発熱量が大きい連続鋳造用発熱型モールドパウダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーは、金属または合金を1〜20質量%、酸化マンガンを1〜40質量%、及びアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ金属硝酸塩からなる群から選択された発熱開始促進材の1種または2種以上を0.5〜13質量%含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な状態で発熱反応を生じ、火炎や白煙、有害ガスを大量に発生することがない連続鋳造用発熱型モールドパウダーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーは、テルミット反応の酸化材を適切に選定することによって、還元材(金属、合金)の酸化速度を制御し、発熱量が大きく、かつ発熱反応時に多量の白煙、火炎、有害ガスを発生させないものである。
【0021】
テルミット反応の酸化材となり、単位質量当たりの含有酸素量が多く、しかも反応性に優れた物質として、酸化マンガンに着目して検討を行った。その結果、酸化マンガンは酸化鉄と同様にアルカリ金属化合物のような発熱反応時の白煙、火炎、有害ガスを大量発生しない。その上、酸化マンガンは、酸化鉄よりも発熱量が大きくなる。これは、酸化マンガンが酸化鉄よりも反応性に優れているためと考えられる。更に、MnOはFeOやFeのような酸化鉄よりも単位質量当たりの含有酸素量が多いので、連続鋳造用発熱型モールドパウダーへの添加量が少なくてすむ利点がある。
【0022】
しかし、酸化材として酸化マンガンだけでは、連続鋳造用発熱型モールドパウダーの発熱開始温度が高すぎて発熱しにくい問題がある。そこで、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーにおいては、発熱開始温度を下げるために、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属硝酸塩からなる群から選択される1種または2種以上を少量添加するものである。
【0023】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーにおいて、還元材である金属または合金としては、Si、Al、Mg、Ca、Ca−Si合金、Ca−Si合金、Al−Mg合金、Al−Ca−Mg合金、Fe−Si合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。金属または合金の配合量は、1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%の範囲内である。金属または合金の配合量が1質量%より少ないと、発熱量が小さく、目的とする効果が得られないために好ましくない。また、20質量%を超えると、発熱量が大きくなりすぎ、危険なために好ましくなく、更に、酸化材の配合量も多くする必要があり、それに伴って残りの成分の配合量が少なくなり、発熱溶融後のスラグ組成を調整し難くなるために好ましくない。
【0024】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーにおいて、酸化材として使用される酸化マンガンには、価数の異なる数種類があるが、本発明で使用する酸化マンガンとしては、単位質量当たり最も多くの酸素を含有するMnOが好ましい。しかし、MnO、Mnあるいはそれらの混合物でも酸化鉄よりも反応性に優れるので、これらを使用することもできる。酸化マンガンの配合量は1〜40質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲内である。酸化マンガンの配合量が1質量%未満では、金属、合金との反応がスムーズに進まないために好ましくなく、また、40質量%を超えても、配合量の増加に伴う効果が見られないために好ましくない。
【0025】
また、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーには、酸化材として酸化鉄を併用することもできる。酸化鉄としては、例えばFeO、Fe、Feあるいはこれらの混合物を使用することができる。酸化鉄の配合量は、20質量%以下、好ましくは12質量%以下である。酸化鉄の配合量が20質量%を超えると、その他の成分が少なくなり、溶融後スラグ特性が悪化するために好ましくない。
【0026】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーにおいて、発熱開始促進材として、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ金属硝酸塩からなる群から選択される1種または2種以上を0.5〜13質量%、好ましくは2〜8質量%の範囲内で配合する。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムを使用することができ、アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムを使用することができ、アルカリ金属硝酸塩としては、例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウムを使用することができる。これらの成分の合計量が0.5質量%未満では、発熱開始促進材としての効果が小さいために好ましくなく、また、13質量%を超えると、白煙、火炎あるいは有害ガスの発生等の問題を生ずることがあるので好ましくない。
【0027】
なお、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーを構成する主原料としては、例えば合成珪酸カルシウム、セメント、ウォラストナイト、ダイカルシウムシリケート等を使用することができる。ここで、主原料の配合量は40〜95質量%、好ましくは50〜80質量%の範囲内である。
【0028】
また、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーには、シリカ原料を配合する。シリカ原料としては、例えば珪石、ガラス、珪藻土等を使用することができる。ここで、シリカ原料の配合量は0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%の範囲内である。
【0029】
更に、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーには、フラックスを配合する。フラックスとしては、例えばフッ化ソーダ、蛍石、炭酸リチウム等を使用することができる。ここで、フラックスの配合量は0〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内である。
【0030】
また、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーには、その他の成分として、アルミナ、マグネシア等を配合することができる。ここで、その他の成分の配合量は15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲内である。
【0031】
更に、本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーには、カーボンを7質量%以下、好ましくは4重量%以下の量で配合することができる。カーボンの配合量が7質量%を超えると、金属または合金の酸化を妨害し、カーボンが酸化材と先に反応するために好ましくない。なお、カーボンとしては、例えばカーボンブラック、コークス、黒鉛、膨張性黒鉛等を使用することができる。
【0032】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーの形状は、特に限定されるものではなく、粉末ないし顆粒形状のものを使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明品及び比較品を例示して本発明を更に説明する。
実施例1
以下の表1に、鋳造開始時に使用する本発明品及び比較品のモールドパウダーの配合割合並びに使用結果を記載する。なお、使用結果は、本発明品または比較品のモールドパウダー10kgを鋳造開始時に250×1150mmのモールド中の低炭素鋼(溶鋼温度:1555℃)に投入した時の結果であり、発熱状況、白煙、有害ガス、溶融後スラグ特性は使用状況を目視により観察したものである。発熱状況において、良は、発熱反応がしっかり認められるを、小は、発熱反応が小さい場合を、悪は、発熱反応が認められない場合をそれぞれ示す。また、白煙は、白煙の発生量によって無から大に分類した。更に、有害ガスは赤褐色ガス(二酸化窒素:NO)の発生量によって無から大に分類した。また、溶融後スラグ特性において、良は、スラグに粘りがないことを、不良は、スラグが粘った状態でベアーが発生したことをそれぞれ示す。また、ディッケル発生状況はオペレーターが溶鋼表面を鉄棒で突きながら発生状況の有無を確認したものである。更に、鋳片品質は得られた鋳片表面の介在物と気泡の数から評価したものであり、良は、少ない場合を、不良は、多い場合をそれぞれ示す。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明品1〜4は、大きな発熱反応が認められ、火炎や白煙、有害ガスが大量に発生することもなく、溶融後スラグ特性も良好であり、ディッケルが発生することもなく、鋳片にピンホール、介在物も認められず、良好なものであった。
一方、比較品5では、酸化マンガンが配合されていないため、発熱量が小さく、鋳片にブローホールが多数認められた。また、比較品6では、金属及び酸化マンガンの配合量が多いため、発熱反応が激し過ぎるものであった。更に、比較品7では、発熱反応中に火炎と白煙が大量に発生し、モールド内の状況を確認し難いものであった。また、溶融後スラグ中に気泡が多数含まれ、粘度が著しく高い粘った状態になったスラグベアーが発生した。また、比較品8では、発熱状況や鋳片品質などは良好であったが、赤褐色のNOが発生し、人体に有害であることから使用することができないものであった。
【0036】
実施例2
以下に、定常状態の連続鋳造に使用する本発明品及び比較品のモールドパウダーの配合割合並びに使用結果を記載する。なお、使用結果は、本発明品または比較品のモールドパウダーを250×1150mmのモールド中の極低炭素鋼(溶鋼温度:1560℃)に投入した時の結果である。
【0037】
【表2】

【0038】
比較品13は、金属無添加品であり、溶鋼表面温度が低く、鋳片にピンホールが認められた。また、比較品14は、発熱開始促進材として炭酸ナトリウム(NaCO)が含まれていないため、Ca−Siの酸化発熱が充分進まず、不良であった。更に、比較品15は、炭酸ナトリウム(NaCO)の配合量が多いため、発熱反応時に大量の白煙が発生し、溶融スラグも粘った状態で不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の連続鋳造用発熱型モールドパウダーは、鋳造開始時並びに定常状態で好適な使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または合金を1〜20質量%、酸化マンガンを1〜40質量%、及びアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩及びアルカリ金属硝酸塩からなる群から選択された発熱開始促進材の1種または2種以上を0.5〜13質量%%含有してなることを特徴とする鋼の連続鋳造用発熱型モールドパウダー。
【請求項2】
更に、酸化鉄を20質量%以下の量で含有してなる、請求項1記載の鋼の連続鋳造用発熱型モールドパウダー。
【請求項3】
更に、カーボンを7質量%以下の量で含有してなる、請求項1または2記載の鋼の連続鋳造用発熱型モールドパウダー。

【公開番号】特開2008−105052(P2008−105052A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289988(P2006−289988)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】