説明

鋼管セット

【課題】現場での溶接作業が不要で、天候に左右されることなく、容易かつ強固に接続することができる上、非常に安価に製造することが可能な2本以上の鋼管からなる鋼管セットを提供する。
【解決手段】鋼管セットS1は、鋼鉄製の管本体2の上端際に第一螺合部材3を溶接してなる第一鋼管P1と、鋼鉄製の管本体2の下端際に第二螺合部材8を溶接してなる第二鋼管P2とによって構成されている。第一螺合部材3は、鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており、内周面にネジ溝7が設けられている。一方、第二螺合部材8は、鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており、ネジ溝7と螺合するネジ山14が外周面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤の改良工事等に用いられる相互接続可能な2つ以上の鋼管からなる鋼管セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤を強固な地盤に改良するための方法として、セメントミルクを流し込んだ穴の中に筒状の鋼管(あるいは鋼管杭)を立て込む方法が開発されている。かかる鋼管の立て込みによる軟弱地盤の改良には、10mを超えるような長尺な鋼管が必要とされることもあるが、汎用の鋼管は、4〜6m程度の長さのものが多い。したがって、上記したような軟弱地盤の改良工事においては、鋼管を立て込んだ後に、その鋼管の上方に、同一径の別の鋼管を溶接によって接続した後にさらに深く立て込む方法が広く採用される。
【0003】
そのような鋼管の溶接による接続の際には、上下の鋼管の長手方向を精度良く合致させることが必要であるため、立て込んだ鋼管の内部に、鋼管の内径より若干小径で幅が40〜100mm程度の扁平な内接管を嵌入して仮止めし(部分的に溶接し)、その内接管の上側部分に、継ぎ足す別の鋼管を外嵌し、上下2つの鋼管を溶接するという方法が採用されている。さらに、上下の鋼管を溶接する場合には、上下の鋼管の間に数個のスペーサを挟んで、上下の鋼管の間に所定の間隙(3〜6mm程度)を設ける必要がある。
【0004】
それゆえ、上下の鋼管の間にスペーサを挟む作業の煩わしさを解消するために、特許文献1の如く、扁平な円筒状の支持体から複数のピンを放射方向へ突出させた鋼管接続用治具を、上下の鋼管の内部に嵌め込み、ピンを挟み込むことによって形成される上下の鋼管の隙間を利用して溶接を行う接続方法も提案されている。
【0005】
また、現場での溶接作業を要せず鋼管を接続する方法として、特許文献2の如く、円筒状体の略中央の外周に環状突起を設けた継手部材を利用し、その継手部材の上下のボス部(円筒状部分)を片方の鋼管の上端部と他方の鋼管の下端部とに嵌め込み、継手部材の両ボス部に装着された管固定用ネジの基部で、上下に位置した各鋼管の端部の内面を押圧することによって2つの鋼管を接続する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−68503号公報
【特許文献2】特開2005−97910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の如き鋼管の接続方法は、いずれも鋼管の立て込み作業現場での溶接作業が不可欠であるため、雨天時、強風時や寒冷時には特別な保護仮設なしに鋼管を接続することができない、という不具合がある。
【0008】
また、特許文献2の如き鋼管の接続方法は、作業現場での溶接作業は不要となるものの、現場における2つの鋼管の接続作業が容易ではない上、十分な接続強度を確保しにくい。さらに、継手部材の構造が複雑である上、2つの鋼管の端部の加工を必要とするため、継手部材や鋼管の加工に、多大なコストと手間がかかる。
【0009】
本発明の目的は、上記従来の鋼管の接続方法が有する問題点を解消し、鋼管の立て込み工事(杭打ち工事)等の現場での溶接作業が不要で、天候に左右されることなく、容易かつ強固に接続することができる上、非常に安価に製造することが可能な2本以上の鋼管からなる鋼管セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、回転圧入式の鋼管杭として互いに接続した状態で使用される同一径で円筒状の二つの鋼管からなる鋼管セットであって、鋼鉄または鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており内周面にネジ溝を設けてなる第一螺合部材を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体の上端縁際に嵌め込んで溶接してなる第一鋼管と、鋼鉄または鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており前記ネジ溝と螺合するネジ山を外周面に設けてなる第二螺合部材を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体の下端縁際に溶接してなる第二鋼管とからなることを特徴とするものである。なお、第一螺合部材または第二螺合部材の材料として利用可能な鋳鋼とは、炭素鋼を鋳物にしたもので、炭素成分が2%以下であり、鋳鉄よりも融点が高いもの(約1550℃以上)をいう。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記第一螺合部材が、前記第一鋼管の管本体の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部の下側に、第一鋼管の管本体の内径と同じ外径を有する円筒状の嵌入部を連設し、それらのフランジ部と嵌入部の内壁にネジ溝を設けてなるものであるとともに、前記第二螺合部材が、前記第二鋼管の管本体の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部の上側に、第二鋼管の管本体の内径と同じ外径を有する扁平な円筒状の嵌入部を連設し、フランジ部の下側に、前記ネジ山を外周面に設けた筒状の螺合部を連設してなるものであり、前記第一螺合部材の嵌入部と前記第二螺合部材の螺合部とを螺合させて前記第一鋼管と前記第二鋼管とを接続した場合に、2つの鋼管の外周よりも外側に突出する部分が実質的に形成されないことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、前記第一鋼管の肉厚に対する前記第一螺合部材の嵌入部の肉厚の割合(肉厚比)が1.15以上2.00以下に調整されているとともに、第二螺合部材の螺合部の肉厚が第一螺合部材の嵌入部の肉厚より厚くなっていることを特徴とするものである。すなわち、第一螺合部材の嵌入部の肉厚が第一鋼管の肉厚の1.15倍を下回ると、第一鋼管と第二鋼管との接続部分に大きなねじりや曲げ応力が加わったときに、第一螺合部材の嵌入部が損傷し易いので好ましくない。反対に、上記肉厚比が2.00を上回ると、第一螺合部材の嵌入部の肉厚に合わせて第二螺合部材の螺合部の肉厚を過大にする必要が生じるため不経済であり、好ましくない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る鋼管セットによれば、第一鋼管の上端際の第一螺合部材に設けられたネジ溝に、第二鋼管の下端際の第二螺合部材に設けられたネジ山を螺合させるだけで、現場での溶接作業を必要とすることなく、第一鋼管と第二鋼管とをきわめて容易に接続することができる。また、ネジを締める方向と、繋いだ鋼管を回転圧入させる場合の回転方向とを合致させることができるため、回転圧入時に接続部分が緩む事態を生じさせない。さらに、第一螺合部材、第二螺合部材が溶接可能な鋼鉄や鋳鋼によって形成されており、第一鋼管、第二鋼管の管本体との接続強度が高いので、鋼管を回転圧入する場合に発生するねじり応力や引張応力に対して高い耐力を発現するように強固に接続することができる。加えて、第一螺合部材、第二螺合部材を鋳鋼によって形成する場合には、安価に製造することが可能となる。
【0014】
請求項2に係る鋼管セットは、第一鋼管、第二鋼管の製造時に、第一螺合部材、第二螺合部材の嵌入部を管本体に嵌入した状態で各螺合部材と管本体とを管外周からの溶接で接続できるので、製造作業が非常に容易である。また、第一鋼管と第二鋼管との接続位置に、外向きの突出部分が形成されないので、接続された2つの鋼管を、地盤の内部に非常にスムーズに押し込んだり、回転圧入したり、立て込んだりすることが可能となる。
【0015】
請求項3に係る鋼管セットは、第一鋼管と第二鋼管との接続部分がフランジにより平面で接している上、第一鋼管の肉厚に対する第一螺合部材の嵌入部の肉厚の割合が所定の値に調整されているため、大きなねじり応力、曲げモーメントや圧縮力が加わっても、接続部材が損傷しにくい。その上、第二螺合部材の螺合部の肉厚が第一螺合部材の嵌入部の肉厚より厚くなるように設計されているため、無駄にコストをかけることなく非常に経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一鋼管と第二鋼管とからなる鋼管セットを示す斜視図である。
【図2】第一鋼管の形成材料である第一螺合部材および管本体を示す斜視図である。
【図3】第一螺合部材および管本体を示す正面図である。
【図4】第一螺合部材および管本体を示す鉛直断面図である。
【図5】第一鋼管の正面図(a)および平面図(b)である。
【図6】第二鋼管の形成材料である管本体および第二螺合部材を示す斜視図である。
【図7】管本体および第二螺合部材を示す正面図である。
【図8】管本体および第二螺合部材を示す鉛直断面図である。
【図9】第二鋼管の正面図(a)および平面図(b)である。
【図10】第一鋼管と第二鋼管とを接続した状態の正面図である。
【図11】第一螺合部材の変更例を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る鋼管セットの一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<鋼管セットの構成>
[実施例1]
図1は、鋼管セットを示したものである。鋼管セットS1は、管本体2の上端際に第一螺合部材3を溶接してなる第一鋼管P1と、管本体2の下端際に第二螺合部材8を溶接してなる第二鋼管P2とによって構成されている。
【0019】
図2〜図4は、管本体2と第一螺合部材3とを溶接する前の第一鋼管P1を示したものである。第一鋼管P1の管本体2は、鋼鉄(SS400)によって、外径約114.3mm(内径約105.3mm)、厚さ4.5mm、長さ6,000mmの長尺な円筒状に形成されている(なお、管本体2の厚みを、T1とする)。
【0020】
一方、第一螺合部材3は、管本体2と同様に、鋼鉄(SS400)によって形成されている。そして、高さ約31mmの扁平な円筒状の嵌入部4の上端際に、高さ約9mmのリング状のフランジ部5を連設した形状を有しており、全体の高さ(長さ)が約40mmになっている。
【0021】
第一螺合部材3の嵌入部4の外径は、約105.0mmであり、管本体2の内径と略同一になっている。一方、フランジ部5の外径は、約114.3mmであり、管本体2の外径と同一になっている。また、嵌入部4とフランジ部5との境界(フランジ部5の下側の部分)は、下側から上側にかけて次第に大径になるように、所定の角度だけ傾斜した(水平面に対して45°以上傾斜した)テーパ面6になっている。
【0022】
また、第一螺合部材3の内径(最も小さい部分の径)は、約84.0mmになっており、深さ3.5mmで幅(上下幅)4mmのネジ溝7が螺旋状(8mmピッチ)に刻設されている。それゆえ、嵌入部4の肉厚(T2)は、最も薄い部分で7mmとなっている。
【0023】
第一鋼管P1は、上記した第一螺合部材3の嵌入部4を管本体2の上端際に嵌入させ、嵌入部4の上端を管本体2の上端と合致させた状態で、第一螺合部材3のテーパ面6と管本体2の上端面とからなる開先部分を利用して、第一螺合部材3と管本体2とを溶接することによって一体的に形成されている。図5は、管本体2と第一螺合部材3とを溶接した後の第一鋼管P1を示したものであり、当該溶接後の第一鋼管P1においては、管本体2の外周面と、第一螺合部材3のフランジ部5の外周面とが面一になっている(なお、図1、図5において、Yは溶接部分を示している)。
【0024】
一方、図6〜図8は、管本体2と第二螺合部材8とを溶接する前の第二鋼管P2を示したものである。第二鋼管P2の管本体2は、第一鋼管P1の管本体2と同じものである。また、第二螺合部材8は、第一螺合部材3と同じ鋼鉄(SS400)によって形成されている。そして、高さ約7mmのリング状のフランジ部9の上側、下側に、それぞれ、高さ約2mmの扁平な円筒状の嵌入部10と、高さ約40mmの筒状の螺合部11を連設した形状を有しており、全体の高さ(長さ)が約49mmになっている。そして、直径59.0mmの貫通孔12が、嵌入部10、フランジ部9、螺合部11の中心(軸方向の中心)を貫通した状態になっている。
【0025】
また、第二螺合部材8の嵌入部10の外径は、約105.0mmであり、管本体2の内径と同一になっている。一方、フランジ部9の外径は、約114.3mmであり、管本体2の外径と同一になっている。さらに、嵌入部10とフランジ部9との境界(フランジ部9の上側の部分)は、上側から下側にかけて次第に大径になるように、所定の角度だけ傾斜した(水平面に対して45°以上傾斜した)テーパ面13になっている。
【0026】
また、第二螺合部材8の螺合部11の外径(最も大きい部分の径)は、約90.0mmになっている。そして、当該螺合部11の外周面は、深さ3.5mmで幅(上下幅)4mmのネジ溝を螺旋状(8mmピッチ)に刻設することによって、螺旋状のネジ山14が形成された状態になっている。それゆえ、螺合部11の肉厚(T3)は、最も薄い部分で約12mmとなっている。
【0027】
第二鋼管P2は、上記した第二螺合部材8の嵌入部10を管本体2の下端際に嵌入させ、嵌入部10の上端を管本体2の上端と合致させた状態で、第二螺合部材8のテーパ面13と管本体2の下端面とからなる開先部分を利用して、第二螺合部材8と管本体2とを溶接することによって一体的に形成されている。図9は、管本体2と第二螺合部材8とを溶接した後の第二鋼管P2を示したものであり、当該接合後の第二鋼管P2においては、管本体2の外周面と、第二螺合部材8のフランジ部9の外周面とが面一になっている(なお、図9において、Yは溶接部分を示している)。
【0028】
上記の如く構成された実施例1の鋼管セットS1においては、第一鋼管P1の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T1=4.5mm)に対する第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T2=7mm)の割合(肉厚比:T2/T1)が約1.56に調整されている。加えて、実施例1の鋼管セットS1においては、第二螺合部材8の螺合部11の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T3=12mm)が第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T2=7mm)より厚くなっている。
【0029】
<鋼管セットの接続方法>
上記した第一鋼管P1、第二鋼管P2からなる鋼管セットS1の接続は、地盤改良工事の現場において地盤に鉛直に立て込んだ第一鋼管P1の上部に第二鋼管P2を接続して継ぎ足す、というような態様等にて実施される。鋼管セットS1を接続する場合には、第一鋼管P1の上端際の第一螺合部材3の開口部に、第二鋼管P2の下端際の第二螺合部材8の螺合部11を押し当て、第二鋼管P2を所定の方向(時計回り)に回転させることによって、第二螺合部材8の螺合部11のネジ山14を第一螺合部材3の嵌入部4のネジ溝7に螺合させる。
【0030】
図10は、第一鋼管P1と第二鋼管P2を接続した状態を示したものであり、そのように接続(螺着)された第一鋼管P1と第二鋼管P2は、回転圧入時のねじりに対して高い耐力を発現させる。また、第一鋼管P1と第二鋼管P2との接続位置に外方への突出部分が形成されないので、きわめてスムーズに地盤中に押し込んだり、回転圧入したり、立て込んだりすることができる。
【0031】
<鋼管セットの耐屈曲性評価>
上記の如く接続した鋼管セットS1(第一鋼管P1および第二鋼管P2)の両端をそれぞれ把持し、接続部分にねじり応力を加えて、鋼管セットS1の座屈性を評価した。その結果、実施例1の鋼管セットS1は、鋼管元来のねじり強さ(ねじり耐力)である11,130kN・mの力を加えた場合でも、接続部分が屈曲することはなかった。
【0032】
[実施例2〜7]
第一鋼管P1の外径、管本体2の肉厚(T1)、第一鋼管P1の第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T2)、第二鋼管P2の第二螺合部材8の螺合部11の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T3)、第二鋼管P2の外径、管本体2の肉厚(T4)を、下記の表1の如く変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7の鋼管セットS2〜S7を得た。しかる後、実施例1と同様にして、実施例2〜7の鋼管セットS2〜S7の耐屈曲性を評価した。その結果、鋼管セットS2〜S7は、いずれも、実施例1の鋼管セットS1と同様に、約11,130kN・mの力を加えた場合でも、接続部分が屈曲することはなかった。
【0033】
[参考実施例1]
第一鋼管P1の外径、管本体2の肉厚(T1)、第一鋼管P1の第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T2)、第二鋼管P2の第二螺合部材8の螺合部11の肉厚(最も薄い部分の肉厚:T3)、第二鋼管P2の外径、管本体2の肉厚(T4)を、下記の表1の如く変更した以外は、実施例1と同様にして、参考実施例1の鋼管セットS’を得た。しかる後、実施例1と同様にして、参考実施例1の鋼管セットS’の耐屈曲性を評価した。その結果、鋼管セットS’は、約11,130kN・mの力を加えた場合には、第一螺合部材3と第二螺合部材8との接合部分にわずかに座屈現象が見られた。
【0034】
【表1】

【0035】
<鋼管セットの効果>
鋼管セットS1〜S8,S’は、上記の如く、扁平な円筒状に形成されており内周面にネジ溝7を設けてなる第一螺合部材3を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体2の上端縁際に嵌め込んで溶接してなる第一鋼管P1と、扁平な円筒状に形成されておりネジ溝7と螺合するネジ山14を外周面に設けてなる第二螺合部材8を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体2の下端縁際に溶接してなる第二鋼管P2とからなるものである。したがって、鋼管セットS1〜S8,S’によれば、第一鋼管P1の第一螺合部材3のネジ溝7に、第二鋼管P2の第二螺合部材8のネジ山14を螺合させるだけで、現場での溶接作業を必要とすることなく、第一鋼管P1と第二鋼管P2とをきわめて容易に接続することができる。また、ネジを締める方向と、繋いだ鋼管を回転圧入させる場合の回転方向とを合致させることができるため、回転圧入時に接合部が緩む事態を生じさせない。さらに、第一螺合部材3、第二螺合部材8が、溶接可能な鋼鉄によって第一鋼管P1、第二鋼管P2の外周部から容易に溶接できるように形成されており、第一鋼管P1、第二鋼管P2の管本体2との接続強度が高いので、鋼管を回転圧入する場合に発生するねじり応力や引張応力に対して高い耐力を発現するように強固に接続することができる。
【0036】
また、鋼管セットS1〜S8,S’は、第一螺合部材3が、第一鋼管P1の管本体2の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部5の下側に、第一鋼管P1の管本体2の内径と同じ外径を有する円筒状の嵌入部4を連設し、それらのフランジ部5と嵌入部4の内壁にネジ溝7を設けてなるものであるとともに、第二螺合部材8が、第二鋼管P2の管本体2の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部9の上側に、第二鋼管P2の管本体2の内径と同じ外径を有する扁平な円筒状の嵌入部10を連設し、フランジ部9の下側に、ネジ山14を外周面に設けた筒状の螺合部11を連設してなるものである。したがって、鋼管セットS1〜S8は、第一螺合部材3の嵌入部4、第二螺合部材8の嵌入部10を管本体2に嵌入した状態で第一螺合部材3、第二螺合部材8と管本体2とを溶接できるので、製造作業が非常に容易である。また、第一鋼管P1と第二鋼管P2との接続位置に、外向きの突出部分が形成されないので、接続された2つの鋼管P1,P2を、地盤の内部に非常にスムーズに押し込んだり、立て込んだりすることができる。
【0037】
さらに、実施例1〜7の鋼管セットS1〜S7は、第一鋼管P1の嵌入部4の肉厚に対する第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚の割合(T2/T1)が1.15以上2.00以下に調整されているため、第一鋼管P1と第二鋼管P2との接続部分に大きなねじり応力が加わっても、当該接続部材が損傷しにくい。その上、第二螺合部材8の螺合部11の肉厚(T3)が第一螺合部材3の嵌入部4の肉厚(T2)より厚くなるように設計されているため、無駄にコストをかけることなく非常に経済的に製造することができる。
【0038】
<鋼管セットの変更例>
なお、本発明に係る鋼管セットの構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、第一鋼管、第二鋼管の管本体、第一螺合部材、第二螺合部材等の形状・構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0039】
たとえば、第一螺合部材や第二螺合部材は、上記実施形態の如く、テーパ面を形成したものに限定されず、テーパ面を形成していないものでも良い。なお、上記実施形態の如く、第一螺合部材あるいは第二螺合部材にテーパ面を形成した場合には、テーパ面を形成した螺合部材と管本体との溶接が容易となる上、溶接強度が高いものとなる、というメリットがある。
【0040】
また、第一螺合部材は、上記実施形態の如く、内壁の上端から下端までネジ溝を螺刻したものに限定されず、図11の如く、上端際の部分にネジ溝を設けないものでも良い。かかる構成を採用することによって、溶接時の熱によるネジ溝の変形を防止することが可能となる。
【0041】
一方、第一鋼管は、上記実施形態の如く、単純な円筒形状のものに限定されず、円形フランジ状の螺旋翼を先端に設けたものや、掘削用のバイトを先端に付設したもの等に変更することも可能である。加えて、第二鋼管も、上記実施形態の如く、単純な円筒形状のものに限定されず、基端に回転押込み用プレートを設けたもの等に変更することも可能である。
【0042】
また、本発明に係る鋼管セットは、上記実施形態の如く、第一螺合部材および第二螺合部材を鋼鉄によって形成したものに限定されず、第一螺合部材、第二螺合部材の内の少なくとも一方を鋳鋼(たとえば、SC410:炭素成分0.3%以下)によって形成したものでも良い。かかる構成を採用した場合には、第一螺合部材、第二螺合部材を非常に安価に形成することができるため、結果的に鋼管セットを安価に製造することが可能となる。
【0043】
本発明に係る鋼管セットは、上記の如く、優れた効果を奏するものであるから、軟弱な地盤の改良工事等に用いる2つ以上の鋼管(鋼管群)として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
S1・・鋼管セット
2・・管本体
3・・第一螺合部材
4・・被覆部
5・・フランジ部
8・・第二螺合部材
9・・フランジ部
10・・嵌入部
11・・螺合部
P1・・第一鋼管
P2・・第二鋼管
Y・・溶接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転圧入式の鋼管杭として互いに接続した状態で使用される同一径で円筒状の二つの鋼管からなる鋼管セットであって、
鋼鉄または鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており内周面にネジ溝を設けてなる第一螺合部材を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体の上端縁際に嵌め込んで溶接してなる第一鋼管と、
鋼鉄または鋳鋼によって扁平な円筒状に形成されており前記ネジ溝と螺合するネジ山を外周面に設けてなる第二螺合部材を、鋼鉄によって長尺な円筒状に形成された管本体の下端縁際に溶接してなる第二鋼管とからなることを特徴とする鋼管セット。
【請求項2】
前記第一螺合部材が、前記第一鋼管の管本体の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部の下側に、第一鋼管の管本体の内径と同じ外径を有する円筒状の嵌入部を連設し、それらのフランジ部と嵌入部の内壁にネジ溝を設けてなるものであるとともに、
前記第二螺合部材が、前記第二鋼管の管本体の外径と同じ外径を有するリング状のフランジ部の上側に、第二鋼管の管本体の内径と同じ外径を有する扁平な円筒状の嵌入部を連設し、フランジ部の下側に、前記ネジ山を外周面に設けた筒状の螺合部を連設してなるものであり、
前記第一螺合部材の嵌入部と前記第二螺合部材の螺合部とを螺合させて前記第一鋼管と前記第二鋼管とを接続した場合に、2つの鋼管の外周よりも外側に突出する部分が実質的に形成されないことを特徴とする請求項1に記載の鋼管セット。
【請求項3】
前記第一鋼管の肉厚に対する前記第一螺合部材の嵌入部の肉厚の割合が1.15以上2.00以下に調整されているとともに、第二螺合部材の螺合部の肉厚が第一螺合部材の嵌入部の肉厚より厚くなっていることを特徴とする請求項1,または請求項2に記載の鋼管セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−53493(P2013−53493A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193881(P2011−193881)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(392012238)
【Fターム(参考)】