説明

鋼管柱地際部の欠陥評価方法及び該方法を用いた鋼管柱の推定破壊荷重導出方法

【課題】 腐食欠陥が実際と異なる軽い方に評価されることなく、簡単にして信頼性の高い鋼管柱地際部の欠陥評価方法を提供する。
【解決手段】 下部が地中に埋設された鋼管柱1の地上部に超音波探傷器の探触子2を取り付け、探触子2により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、探触子2が受信したエコーから、第1評価手段において、鋼管柱地際部Sからのエコー高さ総和と、鋼管柱端面部Tからのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、第2評価手段において、前記鋼管柱地際部Sからのエコー高さ総和と、鋼管柱地中部全体Uからのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、第3評価手段において、第1評価手段の複数段の評価と第2評価手段の複数段の評価から、鋼管柱地際部の欠陥を複数段に評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部が地中に埋設された鋼管柱地際部の腐食欠陥を、超音波探傷により評価するようにした鋼管柱地際部の欠陥評価方法及び該方法を用いて曲げ荷重に対する鋼管柱の推定破壊荷重を導出するようにした鋼管柱の推定破壊荷重導出方法に関し、さらに詳しくは、簡単にして信頼性の高い評価方法及び導出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部や狭所等で使用される肉厚2〜4mm程度の薄肉軽量組立鋼管柱は、地中に埋設された埋設部、とくに地際付近が長期間の使用により腐食し、劣化する。
【0003】
そこで、従来の鋼管柱埋設部の欠陥評価方法は、下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に探触子を取り付け、超音波を地中部に向けて発信し、エコーを受信し、エコーの波形データを正規化し、正規化された波形データの所定のレベルからピーク値への立ち上がり角度を検出し、検出された角度を基に欠陥の程度を評価する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−361321(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の前記方法の場合、エコーの正規化された波形データの所定のレベルからピーク値への立ち上がり角度を検出し、検出された角度を基に欠陥の程度を評価しているため、複雑であり、かつ、地中部全体が中程度の腐食欠陥であった時、腐食欠陥が実際と異なる軽い方に評価される可能性があり、信頼性が低いという問題点がある。
【0005】
本発明は、前記の点に留意し、腐食欠陥が実際と異なる軽い方に評価されることなく、簡単にして信頼性の高い鋼管柱地際部の欠陥評価方法を提供することを課題とし、かつ、簡単にして信頼性の高い鋼管柱の推定破壊荷重導出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の鋼管柱地際部の欠陥評価方法は、
下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を取り付け、前記探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、
前記探触子が受信したエコーから、
第1評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第3評価手段において、前記第1評価手段の複数段の評価と前記第2評価手段の複数段の評価から、前記鋼管柱地際部の欠陥を複数段に評価する
ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
また、前記第3評価手段において、複数段の評価が減肉又は残肉の程度を区分するものであることが望ましい(請求項2)。
【0008】
さらに、前記第1評価手段の複数段の評価及び前記第2評価手段の複数段の評価を、それぞれ点数化して構成し、
前記第3評価手段の複数段の評価を、点数を区分して構成し、
前記第1評価手段及び第2評価手段の点数化された点数の加算値を、前記区分に照合して最終評価することが好ましい(請求項3)。
【0009】
かつ、前記第1評価手段において、鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比Aが、A1未満,A1からA2未満、A2からA3未満、A3からA4未満、A4以上の場合、評価値aの点をそれぞれa1、a2、a3、a4、a5とし、
前記第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比Bが、B1未満、B1からB2未満、B2からB3未満、B3以上の場合、評価値bの点をそれぞれb1、b2、b3、b4とし、
前記第3評価手段において、前記評価値aの点と前記評価値bの点の加算値Cが、C1未満、C1からC2未満、C2以上の場合、最終評価をそれぞれ健全・微小腐食、軽度腐食、重度腐食とすることがより望ましい(請求項4)。
【0010】
また、前記鋼管柱地際部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱の地際から地上50mmと地中100mmの間の範囲であり、
鋼管柱端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱端面から上100mmと下200mmの間の範囲であることがより好ましい(請求項5)。
【0011】
そして、本発明の前記鋼管柱地際部の欠陥評価方法を用いた鋼管柱の推定破壊荷重導出方法は、
前記鋼管柱地際部の欠陥評価方法の鋼管柱の欠陥評価を、鋼管柱の周面の複数箇所において行い、
前記鋼管柱の外径と、前記複数箇所の最大残肉厚及び最小残肉厚から、それぞれ曲げ荷重に対するもっとも強度の弱い方向と、該方向における断面係数を導出し、
最大推定破壊荷重及び最小推定破壊荷重を導出するものである(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鋼管柱地際部の欠陥評価方法は、下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を取り付け、前記探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、前記探触子が受信したエコーから、第1評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、第3評価手段において、前記第1評価手段の複数段の評価と前記第2評価手段の複数段の評価から、前記鋼管柱地際部の欠陥を複数段に評価するため、鋼管柱地際部の欠陥評価を簡単に信頼性高く評価することができる(請求項1)。
【0013】
また、前記第3評価手段において、複数段の評価が減肉又は残肉の程度を区分することにより、鋼管柱地際部の欠陥を明確に評価することができる(請求項2)。
【0014】
さらに、前記第1評価手段の複数段の評価及び第2評価手段の複数段の評価を、それぞれ点数化して構成し、前記第3評価手段の複数段の評価を、点数を区分して構成し、前記第1評価手段及び第2評価手段の点数化された点数の加算値を、前記区分に照合して最終評価することにより、簡単明確に評価することができる(請求項3)。
【0015】
かつ、前記第1評価手段において、鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比Aが、A1未満,A1からA2未満、A2からA3未満、A3からA4未満、A4以上の場合、評価値aの点をそれぞれa1、a2、a3、a4、a5とし、前記第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比Bが、B1未満、B1からB2未満、B2からB3未満、B3以上の場合、評価値bの点をそれぞれb1、b2、b3、b4とし、前記第3評価手段において、前記評価値aの点と前記評価値bの点の加算値Cが、C1未満、C1からC2未満、C2以上の場合、最終評価をそれぞれ健全・微小腐食、軽度腐食、重度腐食とすることにより、より明確に評価することができる(請求項4)。
【0016】
また、前記鋼管柱地際部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱の地際から地上50mmと地中100mmの間の範囲であり、前記鋼管柱端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱端面から上100mmと下200mmの間の範囲であることが、実用的である(請求項5)。
【0017】
そして、本発明の前記鋼管柱地際部の欠陥評価方法を用いた鋼管柱の推定破壊荷重導出方法は、前記鋼管柱地際部の欠陥評価方法の鋼管柱の欠陥評価を、鋼管柱の周面の複数箇所において行い、前記鋼管柱の外径と、前記複数箇所の最大残肉厚及び最小残肉厚から、それぞれ曲げ荷重に対するもっとも強度の弱い方向と、該方向における断面係数を導出し、最大推定破壊荷重及び最小推定破壊荷重を導出するため、鋼管柱の推定破壊荷重を、簡単に信頼性高く導出することができる(請求項6)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の鋼管柱地際部の欠陥評価方法を実施するための最良の形態を、図1ないし図3を参照して説明する。
図1は、肉厚2〜4mm程度の薄肉鋼管柱1を複数本接続し、下端の鋼管柱1は全体が地中に埋設され、下から2番目の鋼管柱1は下部が地中に埋設されて建柱されたものであり、その下から2番目の鋼管柱1の地際付近、即ち地際部Sの腐食欠陥を超音波探傷器により超音波探傷を行う。
【0019】
同図において、2は鋼管柱1の地上部に取り付けられた超音波探傷器の探触子であり、その取付位置は、探触子2の近距離限界以上の距離を確保するため、地際3より上300mm程度が望ましく、本実施の形態では、地際3より上300mmに取り付けている。
【0020】
超音波探傷に際し、前記探触子2から地中部に向けてSH波を発信し、そのエコーを受信し、鋼管柱1の地際3付近の地際部Sからのエコー高さ総和、鋼管柱1の端面4付近の端面部Tからのエコー高さ総和及び鋼管柱1の地中部全体Uからのエコー高さ総和を得る。
【0021】
前記地際部Sは、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱1の地際3から地上数十mmと、地中50mmないし200mmとの間の範囲であり、望ましくは、地際3から地上50mmと、地中100mmの間の範囲であり、端面部Tは、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱1の端面4から上100mm前後と、下100mmないし300mmとの間の範囲であり、望ましくは、端面4から上100mmと下200mmとの間の範囲である。
【0022】
そして、地際部S及び端面部Tの範囲として、それぞれ前記範囲を越えて拡大し、或いは前記範囲に満たずに縮小すると、資料として不適切或いは不充分なものとなる。
【0023】
本実施の形態では、地際部Sは、地際3から地上50mmと地中100mmとの間の範囲とし、端面部Tは、端面4から上100mmと下200mmとの間の範囲としており、鋼管柱1の地中部全体Uは、地際部S、端面部T及び地際部Sと端面部Tの間の範囲であり、地際3から地上50mmと端面4から下200mmとの間の範囲である。
【0024】
図2は、腐食状態と超音波探傷器のモニター波形の例を示し、同図(A)は鋼管柱1の一部の断面図であり、地際3から鋼管柱1の端面4までの距離は500mm、地際3から探触子2までの距離は300mmであり、鋼管柱1の地中部分の腐食を示す。
【0025】
同図(B)、(C)及び(D)は、超音波探傷器のエコーの表示画面の例を示し、(B)は鋼管柱1の埋設部が健全な場合、(C)は地際部Sに腐食がある場合、(D)は地際部Sが軽度腐食に近い場合である。
【0026】
同図(B)、(C)、(D)の探触子からの距離の目盛において、0が探触子2の位置、300mmが鋼管柱1の地際3の位置、800mmが鋼管柱1の端面4の位置であり、同図(D)に示すように、地際部Sは、地際3;300mmから上50mmの250mmと、地際3;300mmから下100mmの400mmとの間の範囲、端面部Tは、端面4;800mmから上100mmの700mmと、端面4;800mmから下200mmの1000mmとの間の範囲、地中部全体Uは前記250mmと1000mmとの間の範囲である。
【0027】
そして、超音波探傷器のエコーに基づき、第1評価手段、第2評価手段及び第3評価手段を行うが、まず、第1評価手段において、腐食が深くなるにつれ、鋼管柱地際部Sからのエコーが強く、鋼管柱端面部Tからのエコーが小さくなる点に着目し、表1に示すように、
地際部Sからのエコー高さ総和と
端面部Tからのエコー高さ総和との比A
を複数段に評価し、各段の評価値aを点数化して評価点とする。
【0028】
【表1】

【0029】
即ち、前記比Aが、A1未満;0.25未満の場合、A1からA2未満;0.25から0.50未満の場合、A2からA3未満;0.50から0.75未満の場合、A3からA4未満;0.75から1.00未満の場合、A4以上;1.00以上の場合、評価値a及び評価点を、それぞれa1;0、a2;1、a3;2、a4;3、a5;4とする。
【0030】
つぎに、第2評価手段において、地際表面が荒れていたり、土との密着度合いにより超音波が地中部を伝搬する間に減衰し、端面部Tのエコーがきわめて小さく、現れないこともある点に着目し、表2に示すように、
地際部Sからのエコー高さ総和と
地中部全体Uからのエコー高さ総和との比B
を複数段に評価し、格段の評価値bを点数化して評価点とする。
【0031】
【表2】

【0032】
即ち、前記比Bが、B1未満;0.5未満の場合、B1からB2未満;0.5から0.6未満の場合、B2からB3未満;0.6から0.8未満の場合、B3以上;0.8以上の場合、評価点bを、それぞれb1;0、b2;1、b3;2、b4;3とする。
【0033】
つぎに、第3評価手段において、第1評価手段の評価値aの評価点と、第2評価手段の評価値bの評価点との加算値Cにより、表3に示すように、最終評価として、鋼管柱につき、健全・微小腐食、軽度腐食、重度腐食の3段評価とする。
【0034】
【表3】

【0035】
即ち、前記加算値Cが、C1未満;3以下、C1からC2未満;4、C2以上;5以上の場合、最終評価を、それぞれ、○印;健全・微小腐食、△印;軽度腐食、×印;重度腐食とし、かつ、減肉厚率を、25%未満、25%から50%未満、50%以上とし、さらに、残肉厚率を、75%以上、75%未満から50%、50%未満とし、鋼管柱地際部の欠陥を複数段にして評価する。
【0036】
つぎに、建柱状態の鋼管柱につき、超音波探傷を行い、本発明の欠陥評価の実例について説明する。
図3(A)に示す超音波探傷結果の超音波エコーの場合、第1評価手段において、
地際部S(地際から地上50mmと地際から地中100mmの間の範囲)か らのエコー高さ総和と
端面部(鋼管柱端面から上100mmと下200mmの間の範囲)からのエ コー高さ総和との比A
は、0.344であり、評価値aはa2で評価点は1となる。
【0037】
つぎに、第2評価手段において、
地際部からのエコー高さ総和と
地中部全体からのエコー高さ総和との比B
は、0.209であり、評価値bはb1で評価点は0となる。
【0038】
つぎに、第3評価手段において、第1評価手段の評価点1と、第2評価手段の評価点0との加算値は1となり、3以下の区分に該当し、最終評価は○印;健全・微小腐食、減肉厚率0%〜25%未満、残肉厚率100%〜75%に該当する。
【0039】
そして、掘削した実測結果は、鋼管柱の元肉厚2.1mmに対し、最大深さ0.3mmの孔食群があり、減肉厚率25%未満で微小腐食に該当し、本発明の欠陥評価方法による最終評価と実測結果が一致する。
【0040】
つぎに、図3(B)に示す超音波探傷結果の超音波エコーの場合、第1評価手段において、
地際部Sからのエコー高さ総和と
端面部Tからのエコー高さ総和との比A
は、2.111であり、評価値aはa5で評価点は4となる。
【0041】
つぎに、第2評価手段において、
地際部Sからのエコー高さ総和と
地中部全体Uからのエコー高さ総和との比B
は、0.467であり、評価値bはb1で評価点は0となる。
【0042】
つぎに、第3評価手段において、第1評価手段の評価点4と、第2評価手段の評価点0との加算値は4となり、4の区分に該当し、最終評価は△印;軽度腐食、減肉厚率25%〜50%未満、残肉厚率75%未満〜50%以上に該当する。
【0043】
そして、掘削した実測結果は、鋼管柱の元肉厚2.1mmに対し、最大深さ0.6mmの孔食群があり、減肉厚率25%〜50%未満で軽度腐食に該当し、本発明の欠陥評価方法による最終評価と実測結果が一致する。
【0044】
つぎに、図3(C)に示す超音波探傷結果の超音波エコーの場合、第1評価手段において、
地際部Sからのエコー高さ総和と
端面部Tからのエコー高さ総和との比A
は、5.467であり、評価値aはa5で評価点は4となる。
【0045】
つぎに、第2評価手段において、
地際部Sからのエコー高さ総和と
地中部全体Uからのエコー高さ総和との比B
は、0.750であり、評価値bはb3で評価点は2となる。
【0046】
つぎに、第3評価手段において、第1評価手段の評価点4と、第2評価手段の評価点2との加算値は6となり、5以上の区分に該当し、最終評価は×印;重度腐食、減肉厚率50%以上、残肉厚率50%未満に該当する。
【0047】
そして、掘削した実測結果は、鋼管柱の元肉厚2.1mmに対し、最大深さ1.5mmの孔食群があり、減肉厚率50%以上で重度腐食に該当し、本発明の欠陥評価方法による最終評価と実測結果が一致する。
【0048】
つぎに、甲地区における建柱が1976年〜1984年の10本の鋼管柱及び乙地区における建柱が1972年〜1984年の9本の鋼管柱につき、建柱状態でそれぞれ鋼管柱周面の等間隔16個所における探傷方向について、本発明の欠陥評価を行い、各鋼管柱の16の評価のうち、評価の良くない連続した3個所を、深さ20cm程度掘削して腐食状態を外観で確認した。
【0049】
表4に、甲地区の10本につき、表5に乙地区の9本につき、それぞれ本発明の3段階の最終探傷評価
○印:健全・微小腐食(減肉厚率25%未満)、
△印:軽度腐食(減肉厚率25%以上〜50%未満)、
×印:重度腐食(減肉厚率50%以上〜100%)
と、外観観察の結果を示す。
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
さらに、表6に、本発明の超音波探傷により評価した結果と、掘削確認による腐食の程度とを対応して示す。
【0053】
【表6】

【0054】
表6に示すように、つぎの2個所を除く55個所においては、本発明の評価と掘削確認とは一致しており、鋼管柱アの位置ア2において、本発明の評価は軽度腐食であるのに対し、掘削確認では健全・微小腐食であり、また、鋼管柱エの位置エ2において、本発明の評価では重度腐食であるのに対し、掘削確認では軽度腐食であり、本発明の評価の方が掘削確認より重い方に評価しているが、軽い方に評価するよりは良く、現実的には問題がない。
【0055】
なお、第1評価手段、第2評価手段、第3評価手段における評価の段の数、第1評価手段、第2評価手段の評価の点数化の点の付け方、第3評価手段の点数の区分の仕方などは、前記実施の形態に限定されるものではなく、増減、変更してもよいのは勿論である。
【0056】
つぎに、本発明の前記欠陥評価方法を用いた鋼管柱の推定破壊荷重導出方法を実施するための最良の形態を説明する。
鋼管柱の周面の複数個所において、前記欠陥評価方法により欠陥評価を行う。前記複数個所は、鋼管柱の周面の等間隔の位置で、8個所、16個所、できれば32個所等、多い方が望ましいが、現実的には16個所で充分である。
【0057】
鋼管柱の外径と、当初の肉厚に基づく複数個所の前記表3の残肉厚率による最大残肉厚及び最小残肉厚から、それぞれ曲げ荷重に対するもっとも強度の弱い方向と、該方向の断面係数を導出し、最大推定破壊荷重及び最小推定破壊荷重を導出する。
この最大、最小推定破壊荷重により、鋼管柱の立て替えの要否の検討資料とすることができる。
【0058】
つぎに、前記推定破壊荷重の導出の実例について、図4を参照して説明する。前記本発明の欠陥最終評価、即ち○印:健全・微小腐食(残肉厚率100%〜75%)、△印:軽度腐食(残肉厚率75%未満〜50%)、×印:重度腐食(残肉厚率50%未満〜0%)の3段階評価を、建柱状態の鋼管柱の16方向において行った結果と、その結果に基づく最大残肉厚及び最小残肉厚を、表7に示す。
【0059】
【表7】

【0060】
同表は、鋼管柱の元の肉厚が2.24mmの場合で、残肉厚を、ここでは例えば75%未満を75%の数値で表す。
○印;(100%〜75%) 最大 2.24 最小 1.68
△印;(75%未満〜50%) 最大 1.68 最小 1.12
×印;(50%未満〜0%) 最大 1.12 最小 0
【0061】
図4(A)は、表7の最大残肉厚時、同図(B)は表7の最小残肉厚時の鋼管柱の地際の横断面をそれぞれ示す。
【0062】
まず、図4(B)の最小残肉厚の横断面図から、最小の断面2次モーメントを与える弱軸を求める。
そして、その弱軸から、曲げ荷重に対する鋼管柱のもっとも強度の弱い方向を求める。
つぎに、弱軸に関する断面係数を求める。
【0063】
そして、材料の引張り又は圧縮強さと、前記最小残肉厚時の断面係数の積を、地上の鋼管柱に地面と平行に負荷されている荷重点から地際までの距離で除し、最小残肉厚の場合の最小推定破壊荷重を導出する。
【0064】
つぎに、図4(A)の最大残肉厚の横断面図から、同様に、曲げ荷重に対する鋼管柱のもっとも強度の弱い方向及び弱軸に関する断面係数を求める。
【0065】
そして、材料の引張り又は圧縮強さと、前記最大残肉厚時の断面係数の積を、地上の鋼管柱に地面と平行に負荷されている荷重点から地際までの距離で除し、最大残肉厚の場合の最大推定破壊荷重を導出する。
【0066】
本実施例の場合、曲げ荷重に対する鋼管柱のもっとも強度の弱い方向は、南南東である。
そして、最大推定破壊荷重の場合は、材料の引張り又は圧縮強さ540N/mmと、図4(A)の最大残肉厚と鋼管柱の外径405.8mmから導出された断面係数196cmと、地際から荷重点までの距離10.86mとにより、最大推定破壊荷重9.7kN(69%)が導出される。
つぎに、最小推定破壊荷重の場合は、図4(B)の最小残肉厚から導出された断面係数90cmにより、同様に、最小推定破壊荷重4.5kN(32%)が導出される。
【0067】
なお、同じ外径405.8mmの健全な鋼管柱の場合の断面係数は285cm、推定破壊荷重は14.1kNである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態の模式図である。
【図2】(A)は鋼管柱の一部断面図と探触子を示し、(B)、(C)及び(D)は、超音波探傷器のエコーの表示図である。
【図3】(A)、(B)及び(C)は、超音波探傷器のエコーの表示図である。
【図4】(A)及び(B)は最大残肉厚時及び最小残肉厚時の鋼管柱の地際の横断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 鋼管柱
2 探触子
3 地際
4 端面
S 地際部
T 端面部
U 地中部全体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が地中に埋設された鋼管柱の地上部に超音波探傷器の探触子を取り付け、前記探触子により超音波を地中部に向け発信してエコーを受信し、
前記探触子が受信したエコーから、
第1評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比を複数段に評価し、
第3評価手段において、前記第1評価手段の複数段の評価と前記第2評価手段の複数段の評価から、前記鋼管柱地際部の欠陥を複数段に評価する
ことを特徴とする鋼管柱地際部の欠陥評価方法。
【請求項2】
第3評価手段において、複数段の評価が減肉又は残肉の程度を区分するものである
ことを特徴とする請求項1記載の鋼管柱地際部の欠陥評価方法。
【請求項3】
第1評価手段の複数段の評価及び第2評価手段の複数段の評価を、それぞれ点数化して構成し、
第3評価手段の複数段の評価を、点数を区分して構成し、
前記第1評価手段及び第2評価手段の点数化された点数の加算値を、前記区分に照合して最終評価する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鋼管柱地際部の欠陥評価方法。
【請求項4】
第1評価手段において、鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱端面部からのエコー高さ総和との比Aが、A1未満,A1からA2未満、A2からA3未満、A3からA4未満、A4以上の場合、評価値aの点をそれぞれa1、a2、a3、a4、a5とし、
第2評価手段において、前記鋼管柱地際部からのエコー高さ総和と、前記鋼管柱地中部全体からのエコー高さ総和との比Bが、B1未満、B1からB2未満、B2からB3未満、B3以上の場合、評価値bの点をそれぞれb1、b2、b3、b4とし、
第3評価手段において、前記評価値aの点と前記評価値bの点の加算値Cが、C1未満、C1からC2未満、C2以上の場合、最終評価をそれぞれ健全・微小腐食、軽度腐食、重度腐食とする
ことを特徴とする請求項3記載の鋼管柱地際部の欠陥評価方法。
【請求項5】
鋼管柱地際部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱の地際から地上50mmと地中100mmの間の範囲であり、
鋼管柱端面部が、超音波探傷器の表示画面上での距離で、鋼管柱端面から上100mmと下200mmの間の範囲である
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の鋼管柱地際部の欠陥評価方法。
【請求項6】
請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5記載の鋼管柱地際部の欠陥評価方法の鋼管柱の欠陥評価を、鋼管柱の周面の複数箇所において行い、
前記鋼管柱の外径と、前記複数箇所の最大残肉厚及び最小残肉厚から、それぞれ曲げ荷重に対するもっとも強度の弱い方向と、該方向における断面係数を導出し、
最大推定破壊荷重及び最小推定破壊荷重を導出する
ことを特徴とする鋼管柱の推定破壊荷重導出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−36531(P2009−36531A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198701(P2007−198701)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000227722)株式会社日本ネットワークサポート (19)
【Fターム(参考)】