説明

鋼製の大引き及びそれを用いた床施工方法

【課題】レベル合わせ機能を備えた鋼製の大引きを提供する。
【解決手段】鋼製の大引き1であって、基礎Fに固着される下側部材2と、該下側部材2に上下方向にスライド可能に嵌合されかつ上面で床材を支持しうる上側部材3とを含み、前記下側部材2は、基礎Fに固定される底板部2aと、該底板部2aの両端から上に向かってのびる一対の立ち上げ片2bとを少なくとも含む。前記上側部材3は、前記上面を形成する上板部3aと、該上板部3aの両端から下方にのびかつ下側部材の前記一対の立ち上げ片2bにそれぞれ重なり代を有して重ねられた一対の垂下片3bとを含む。垂下片3bと立ち上げ片2bとは、側方からねじ込まれるビス4により固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル合わせを容易に行いうる鋼製の大引き及びそれを用いた床施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば工業化住宅等においては、鋼製の大引き上に、木製の根太に床板を張った床パネルを載置し、前記根太と大引とをネジにて固定したものが知られている(下記特許文献1ないし2参照)。
【0003】
ところで、大引きは、束材又は基礎に固定されて支持される。前記束材は、通常、ネジ軸などを用いて高さ調整機能を具えたものが一般に多用される。従って、束材で支持された大引きについては、束材の高さを変えることで比較的自由にレベル合わせを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−154459号
【特許文献2】特開2004−218260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基礎上に固定された大引きについては、上述のようなレベル合わせを自在に行うことができない。従来、床材と基礎上の大引きとの間に、スペーサ等を介在させてレベル合わせを行うことが提案されてはいるが、調整代が少なくかつ施工性が悪いため、さらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、基礎上に固着された場合でもそのレベル合わせを自在にかつ容易に行うことが可能な鋼製の大引き及びそれを用いた床施工方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、鋼製の大引きであって、基礎側に固着される下側部材と、該下側部材に上下方向にスライド可能に嵌合されかつ上面で床材を支持しうる上側部材とを含み、前記下側部材は、前記基礎に添着される底板部と、該底板部の両端から上に向かってのびる一対の立ち上げ片とを少なくとも含み、かつ前記上側部材は、前記上面を形成する上板部と、該上板部の両端から下方にのびかつ下側部材の前記一対の立ち上げ片にそれぞれ重ねられた一対の垂下片とを含むとともに、前記垂下片と前記立ち上げ片とは、その重なり部に側方からねじ込まれるビスにより固着されることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記下側部材は、溝部を上に向けた溝型鋼からなる請求項1記載の鋼製の大引きである。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記上側部材は、溝部を下に向けた溝型鋼からなり、前記垂下片が、前記立ち上げ片の各外面に外挿されるとともに、垂下片には、予めビスを通すための貫通孔が形成されている請求項1記載の鋼製の大引きである。
【0010】
また請求項4記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された鋼製の大引きを用いた床の施工方法であって、基礎の上面に前記下側部材を固定する工程と、前記基礎以外の位置に、前記下側部材と平行にのびる第1の大引きを束材を用いて水平に支持する工程と、前記基礎に固定された下側部材に前記上側部材を重ねるとともに、前記垂下片と前記立ち上げ片との重なり代を調整し、前記上側部材の上面を、前記第1の大引きの上面と同高さに合わせる調整工程と、該調整工程の後に前記垂下片と前記立ち上げ片とを、側方からビスをねじ込んで固着することにより第2の大引きを形成する固着工程と、床材を、前記第1の大引きと第2の大引きとに跨がらせて固定する床材施工工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の鋼製の大引きは、基礎に添着される下側部材と、該下側部材に上下方向にスライド可能に嵌合されかつ上面で床材を支持しうる上側部材とを含み、前記下側部材は、基礎に固定される底板部と、該底板部の両端から上に向かってのびる一対の立ち上げ片とを含む一方、上側部材は、前記上面を形成する上板部と、該上板部の両端から下方にのびかつ下側部材の前記一対の立ち上げ片にそれぞれ重ねられる一対の垂下片とを含む。
【0012】
そして、垂下片と立ち上げ片とは、側方からねじ込まれるビスにより固着されて大引きが形成される。このような大引きは、下側部材に対して上側部材の位置を変え、垂下片と立ち上げ片との重なり代を現場で調整することにより、上側部材の上面高さを無段階かつ簡単に調整できる。このような大引きは、1階の床材と基礎との間という非常に限られた狭いスペースにおいて、大引き自体でレベル合わせ機能を発揮させることができる。また、基礎の不陸等があっても、大引きのレベル合わせ機能でこれを吸収でき、施工性が大幅に向上するとともに、床の仕上がり精度を高めうる。さらに、ビスは、側方からねじ込まれるため、上側部材の上面高さからはみ出すことも無いので、床材との干渉が防止できる。
【0013】
また、請求項4記載の床の施工方法では、上側部材の垂下片と、下側部材の立ち上げ片との重なり代を調整し、前記上側部材の上面を、隣り合う他の大引きの上面と同高さに合わせる調整工程と、該調整工程の後に垂下片と立ち上げ片とを側方からビスをねじ込んで固着する固着工程とを含むことにより、レベル合わせを簡単に行うことができ、能率良く水平な床を施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す大引きの分解斜視図である。
【図2】図1の組立図である。
【図3】本実施形態の大引きの使用状態を示す断面図である。
【図4】本実施形態の大引きが用いられる床下地の伏せ図である。
【図5】そのA−A断面図である。
【図6】第1及び第2の大引きを含む床下地の斜視図である。
【図7】床の施工方法を説明する上記A−A相当位置の断面図である。
【図8】床パネルを敷設した後の伏せ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1〜図3に示されるように、本実施形態の鋼製の大引き1は、基礎Fに固着される下側部材2と、該下側部材2に固着されかつ上面で床材としての床パネルPを支持しうる上側部材3とを含んで構成される。
【0016】
前記下側部材2は、本実施形態では、溝部を上に向けた長尺な溝型鋼からなり、前記基礎Fに添着される底板部2aと、該底板部2aの幅方向の両端から上に向かって垂直にのびるフランジ状の一対の立ち上げ片2b、2bとから構成される。前記底板部2aには、例えば基礎Fの上面から突出するアンカーボルトBに対応する各位置に、ボルト孔2hが隔設されている。
【0017】
前記上側部材3は、本実施形態では、溝部を下に向けた溝型鋼からなり、床パネルPが載置される上面を形成する上板部3aと、該上板部3aの両端から下方に垂直にのびる一対の垂下片3b、3bとを有する。
【0018】
また、本実施形態において、上側部材3の溝幅W1は、下側部材2の立ち上げ片2b、2b間の幅W2よりも僅かに大きく形成される。これにより、図2に示されるように、上側部材3の各々の垂下片3bは、下側部材2の立ち上げ片2bに外側から嵌め込んで外挿できるともに、下側部材2に対して上下方向にスライド可能に嵌合される。つまり、垂下片3bと立ち上げ片2bとは、調整自在な高さ方向の重なり代Lを有して重ねられる。
【0019】
さらに、本実施形態において、上側部材3の垂下片3bには、その長さ方向に所定のピッチで貫通孔3hが形成されている。貫通孔3hは、例えば、垂下片3bの下縁3be側に寄せて形成されるのが望ましい。他方、下側部材2の立ち上げ片2bには、このような貫通孔が形成されてはいない。
【0020】
また、前記下側部材2と上側部材3とは、垂下片3bと立ち上げ片2bとが重なる重なり部5に、側方からビス4がねじ込まれることにより固着される。前記ビス4は、例えばドリルビスであって、前記垂下片3bの貫通孔3hから挿入されとともに、ねじ込みにより下側部材2の立ち上げ片2bに穿孔を生じさせて貫入する。これにより、下側部材2と上側部材3とが高さ方向に移動不能な状態で一体固着される。
【0021】
以上から明らかなように、下側部材2と上側部材3とは、ビス4で固着される前の状態において、上側部材3は、下側部材2に対して高さ方向に位置を変え、前記重なり代をL調節することにより、その上面高さを無段階にかつ簡単に現場で調整できる。従って、1階の床パネルPと基礎Fとの間という非常に限られた狭いスペースにおいて、簡単な構成により、大引き1自体でレベル合わせ機能を発揮させることができる。従って、基礎Fの不陸等があっても、大引き1のレベル合わせ機能でこれを吸収でき、施工性が大幅に向上するとともに、床の仕上がり精度を高めうる。
【0022】
次に、このような鋼製の大引き1を用いた床の施工方法の一実施形態について述べる。先ず、図4には、本実施形態の鋼製の大引き1が用いられる工業化住宅の1階の床下地の伏せ図を示し、図5にはそのA−A断面図が示される。
【0023】
前記床下地は、基礎Fと、基礎Fで囲まれた例えば土間コンクリートD上に所定のモジュールピッチでグリッド状に立てられた複数の束材7とを含む。
【0024】
前記基礎Fは、例えば住宅の外壁通りに配された外基礎Faと、一端が外基礎Faに連なりかつ家屋内部をのびる内基礎Fbとを含んで構成される。
【0025】
また、前記束材7は、図5に示されるように、土間コンクリートD上に固定されかつ上にのびる脚部7aと、該脚部7aに対して上下に高さ調整可能に螺合するネジ軸部7bと、該ネジ軸部7bの上端に固定されかつ本実施形態では断面略パイプ状の第1の大引き9を保持しうる断面コ字状の受け金物7cとを含んで構成される。
【0026】
本実施形態の施工方法では、先ず、内基礎Fbの上面から突設するアンカーボルトBに、下側部材2を固定する工程が行われる。即ち、図3、図5に示されるように、底板部2aの前記ボルト孔2hにアンカーボルトBが挿入されるとともに、底板部2aからはみ出すボルト軸にナットNが螺着される。これにより、下側部材2が内基礎Fb上に添着される。なお、下側部材2は、アンカーボルトB以外にも、例えば接着剤等を用いて基礎Fに固着されても良い。また、内基礎Fbと下側部材2との間に、例えば通気流路を形成するために、浮かせ部材(図示省略)などを介在させても良い。また、前記外基礎Fa上には、例えば外壁パネル(図示省略)との接合性などを考慮して木質の土台8が固定される。
【0027】
また、基礎F以外の位置に、前記下側部材2と平行にのびる第1の大引き9を前記束材7の受け金物7cにボルト等を用いて固定する工程が行われる。上述のように、本実施形態の束材7は、土間コンクリートDに対して受け金物7cの高さを調整可能なものが用いられる。従って、この束材7に支持される第1の大引き9は、上記実施形態の大引き1とは異なり、大引き自体にレベル合わせ機能を有しない標準的なものが使用される。なお、この大引き9は、木質材でも構わない。ただし、第1の大引き9に変えて、上記大引き1を用いても良いのは言うまでもない。
【0028】
次に、基礎2に固定された下側部材2に上側部材3を嵌め込むとともに、上側部材3を高さ方向にスライドさせて、垂下片3bと立ち上げ片2bとの重なり代Lを調整し、上側部材3の上面を、前記第1の大引き9の上面と同高さに合わせるレベル合わせが行われる(調整工程)。この工程では、図5に示されるように、例えば水糸HL等を用いて基準となるレベル出しが行われ、これに合わせて上側部材3の高さ位置が調節される。この際、例えば重ねられた下側部材2と上側部材3との間の溝空間の長さ方向の両端部から、例えば楔状部材を差し込み、かつ、それを出し入れしながら上側部材3の位置を仮保持しつつ微妙なレベル合わせを簡単に行うことができる。なお、束材7については、ネジ軸部7bを用いて第1の大引き9の上面高さを調節できる。
【0029】
該調整工程を終えると、下側部材2と上側部材3とは、垂下片3bと立ち上げ片2bとの重なり部5に側方からビスをねじ込むことで固着される(固着工程)。これにより、図6に示されるように、前記第1の大引き9と同高さでのびる第2の大引き10を形成することができる。
【0030】
しかる後、図7及び図8に示されるように、第1の大引き9と第2の大引き10とに跨がらせて床材である床パネルPが固定される。本実施形態の床パネルPは、根太12と、その上に固着された面材13と、これらの間に配された断熱材14とからなる略正方形状をなし、例えば、床パネルPは、根太12を貫通するドリルビス15を用いて大引き9、10に両端部が固定される。そして、面材13の外側に床仕上げ材などが敷設される。
【0031】
このように本実施形態の床の施工方法によれば、鋼製の大引き1の上側部材3の垂下片3bと、下側部材2の立ち上げ片2bとの重なり代Lを調整することにより、上側部材3の上面を、隣り合う他の大引きの上面と容易に同高さに合わせることができる。従って、レベル合わせを簡単に行うことができるので、能率良く床パネルを水平に保持しうるなど、施工性を大幅に向上しうる。
【0032】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の実施形態に変形できる。例えば、上記実施形態では、下側部材2及び上側部材3がいずれも溝型鋼で構成されているが、一方を角パイプ状としても良い。また、上側部材3を下側部材2の溝内に内挿し、下側部材2の立ち上げ片に設けた貫通孔から両部材を固定するビスをねじ込むこともできる。
【符号の説明】
【0033】
1 鋼製の大引き
2 下側部材
2a 底板部
2b 立ち上げ片
3 上側部材
3a 上板部
3b 垂下片
4 ビス
F 基礎
Fa 外基礎
Fb 内基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の大引きであって、
基礎側に固着される下側部材と、該下側部材に上下方向にスライド可能に嵌合されかつ上面で床材を支持しうる上側部材とを含み、
前記下側部材は、前記基礎に添着される底板部と、該底板部の両端から上に向かってのびる一対の立ち上げ片とを少なくとも含み、かつ
前記上側部材は、前記上面を形成する上板部と、該上板部の両端から下方にのびかつ下側部材の前記一対の立ち上げ片にそれぞれ重ねられた一対の垂下片とを含むとともに、
前記垂下片と前記立ち上げ片とは、その重なり部に側方からねじ込まれるビスにより固着されることを特徴とする鋼製の大引き。
【請求項2】
前記下側部材は、溝部を上に向けた溝型鋼からなる請求項1記載の鋼製の大引き。
【請求項3】
前記上側部材は、溝部を下に向けた溝型鋼からなり、前記垂下片が、前記立ち上げ片の各外面に外挿されるとともに、垂下片には、予めビスを通すための貫通孔が形成されている請求項1記載の鋼製の大引き。
【請求項4】
請求項1ないし4のいずれかに記載された鋼製の大引きを用いた床の施工方法であって、
基礎の上面に前記下側部材を固定する工程と、
前記基礎以外の位置に、前記下側部材と平行にのびる第1の大引きを束材を用いて水平に支持する工程と、
前記基礎に固定された下側部材に前記上側部材を重ねるとともに、前記垂下片と前記立ち上げ片との重なり代を調整し、前記上側部材の上面を、前記第1の大引きの上面と同高さに合わせる調整工程と、
該調整工程の後に前記垂下片と前記立ち上げ片とを、側方からビスをねじ込んで固着することにより第2の大引きを形成する固着工程と、
床材を、前記第1の大引きと第2の大引きとに跨がらせて固定する床材施工工程とを含むことを特徴とする床の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−242329(P2010−242329A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90342(P2009−90342)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】