説明

錠剤の製造方法

【課題】 被覆された粒体を含有する錠剤の製造において、打錠時に粒体の被覆膜の一部が破壊されることを防止する。
【解決手段】 生理活性物質を含有する室温を超える温度の被覆粒体を打錠することを特徴とする錠剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人口の高齢化・生活環境の変化に伴い、錠剤の特徴である取り扱いの便利さを保ちつつも、容易に服用することができ、また水なしで手軽に何時、何処でも随時服用することのできる口腔内崩壊型固形製剤の開発が要望されている。
一方、生理活性物質が苦味を呈する物質である場合は、服薬遵守性の観点から、これを被覆して苦味をマスキングすることが好ましい。また、生理活性物質が酸によって分解されやすい物質である場合は、これを被覆して、胃酸による分解を防止し、十分に腸に到達させる必要がある。このような課題に対しては通常コーティング錠剤やカプセル剤等が用いられている。
両者は相反する性質を有するものであるが、これらの要求を同時に満たすものとして、従来から被覆された細粒を含有する錠剤が開発されてきている。例えば、特表平6−502194号公報(USP5,464,632)には有効物質が被覆された微粒子等の形状で存在することを特徴とする急速崩壊性多粒子状錠剤が開示されている。また、特開2000−281564号公報には被覆された細粒を錠中に含有する口腔内崩壊錠が開示されている。
しかし、被覆された粒体を含有する錠剤の製造においては、打錠時に粒体の被覆膜の一部が破壊されることがあり、これにより上記の苦味のマスキングの効果が低減したり、耐酸性が低下するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平6−502194号公報
【特許文献2】特開2000−281564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、被覆された粒体を含有する錠剤の製造において、打錠時に粒体の被覆膜の一部が破壊されることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、室温を超える温度の被覆粒体を打錠することにより、粒体の被覆膜の打錠時の破壊を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)生理活性物質を含有する室温を超える温度の被覆粒体を打錠することを特徴とする錠剤の製造方法、
(2)生理活性物質が、酸に不安定な生理活性物質である上記(1)記載の製造方法、
(3)酸に不安定な生理活性物質がプロトンポンプインヒビター(PPI)である上記(2)記載の製造方法、
(4)PPIがベンズイミダゾール系化合物またはその塩である上記(1)記載の製造方法、
(5)ベンズイミダゾール系化合物がランソプラゾールまたはその光学活性体である上記(3)記載の製造方法、
(6)被覆粒体が腸溶性被覆された粒体である上記(1)記載の製造方法、
(7)腸溶性被覆層が水系腸溶性高分子基剤を含有する上記(5)記載の製造方法、
(8)水系腸溶性高分子基剤がメタアクリル酸共重合体である上記(6)記載の製造方法、
(9)室温を超える温度が約25℃以上である上記(1)記載の製造方法、
(10)室温を超える温度が約25℃〜約50℃の温度である上記(1)記載の製造方法、
(11)室温を超える温度が約25℃〜約40℃の温度である上記(1)記載の製造方法、
(12)錠剤が口腔内崩壊錠である上記(1)記載の製造方法、
(13)酸に不安定な生理活性物質を含有し、約25℃〜約50℃に加温した腸溶性被覆粒体を打錠することを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法、
(14)打錠機を加温する上記(13)記載の製造方法、
(15)打錠機がロータリー式打錠機であり、そのロータリーターンテーブルを加温後に打錠する上記(14)記載の製造方法、
(16)生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする当該被覆粒体の被覆膜の破壊を減じる方法、
(17)生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする当該被覆粒体を含有する錠剤の耐酸率を低下させる方法、
(18)生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする錠剤の硬度を向上させる方法、
(19)生理活性物質を含有する組成物を被覆層で被覆し、得られた被覆粒体に添加剤を添加し、被覆粒体と添加剤との混合物を、室温を超える温度に加温し、打錠して得られる錠剤、
(20)生理活性物質が、酸に不安定な生理活性物質である上記(19)記載の錠剤、
(21)酸に不安定な生理活性物質がベンズイミダゾール系化合物またはその塩のPPIである上記(20)記載の錠剤、
(22)ベンズイミダゾール系化合物がランソプラゾールまたはその光学活性体である上記(21)記載の錠剤、
(23)上記(1)記載の方法で得られる錠剤、
(24)加温打錠により耐酸率が改善された錠剤、
(25)加温打錠により硬度が高められた錠剤、
(26)加温打錠により含有する被覆粒体の被覆膜の破壊が減じられた錠剤、
(27)耐酸率が約10%以下であり、硬度が高められ、被覆粒体の被覆膜の破壊が減じられている、被覆粒体を含有する錠剤、
(28)ランソプラゾールまたはその光学活性体を含有する腸溶性被覆された、室温を超える温度に加温された粒体、
(29)腸溶性被覆層が水系腸溶性高分子基剤を含有する上記(28)記載の粒体、
(30)水系腸溶性高分子基剤がメタアクリル酸共重合体である上記(28)記載の粒体、
(31)室温を超える温度が約25℃以上である上記(28)記載の粒体、
(32)室温を超える温度が約25℃〜約50℃の温度である上記(28)記載の粒体、
(33)室温を超える温度が約25℃〜約40℃の温度である上記(30)記載の粒体、
(34)酸に不安定な生理活性物質を含有する腸溶性被覆された、室温を超える温度に加温された粒体の耐酸性が改善された錠剤製造のための使用、等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上から明らかなように、本発明の製造方法で得られる錠剤は、被覆粒体の被覆膜の破壊が減じられている。したがって、酸に不安定な生理活性物質を含有する腸溶性被覆粒体を含む錠剤にあっては、胃中のような酸の存在下での溶出が改善される。また、錠剤の硬度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明に係る錠剤打錠装置の一実施形態であるロータリ式打錠機の概略構成を示す図である。
【図2】図2は図1の装置の加温装置制御の概略構成を示す図である。
【図3】図3は図2の加温装置を動作させるプログラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において用いられる「被覆粒体」とは、被覆の対象となる粒体を被覆剤で被覆したものを意味する。ここで、「被覆」とは、被覆される対象(粒体)が完全に被覆されている場合に限らず、その一部が露出している場合も包含する。
該「粒体」が含有する「生理活性物質」は、例えば味・臭気のマスキング、腸溶化あるいは徐放化等の目的で被覆することが好ましいものであれば、特に限定されるものではない。被覆することが好ましいものとしては、例えば、苦味を呈する生理活性物質や、酸に不安定な生理活性物質等が挙げられる。
【0010】
該「生理活性物質」としては、固形状、粉状、結晶状、油状、溶液状など何れのものでもよく、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、抗アレルギー薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、アルツハイマー病治療薬などから選ばれた1種または2種以上の医薬成分が用いられる。これらの生理活性物質は、いずれもフリー体であっても塩であってもよい。また、ラセミ体であっても光学活性体であってもよい。またはプロドラッグであってもよい。
滋養強壮保健薬としては、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d−α−トコフェロールなど)、ビタミンB(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなど)のビタミン、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、生薬などが挙げられる。
解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。
向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。
抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが挙げられる。
抗うつ薬としては、例えばイミプラミン、塩酸マプロチリン、アンフェタミンなどが挙げられる。
催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペルラピン、フェノバルビタールナトリウムなどが挙げられる。
鎮痙薬には、例えば臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリンなどが挙げられる。
【0011】
中枢神経作用薬としては、例えばシチコリンなどが挙げられる。
脳代謝改善剤としては、例えば塩酸メクロフェニキセートなどが挙げられる。
脳循環改善剤としては、例えばビンポセチンなどが挙げられる。
抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。
交感神経興奮剤としては、例えば塩酸イソプロテレノールなどが挙げられる。
胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが挙げられる。
制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
抗潰瘍剤としては、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール等のベンズイミダゾール系化合物またはその塩(それぞれの光学活性体を含む)等のPPI、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジン等のヒスタミンH受容体拮抗薬などが挙げられる。
鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメトルファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、リン酸コデインなどが挙げられる。
鎮吐剤としては、例えば塩酸ジフェニドール、メトクロプラミドなどが挙げられる。
呼吸促進剤としては、例えば酒石酸レバロルファンなどが挙げられる。
気管支拡張剤としては、例えばテオフィリン、硫酸サルブタモールなどが挙げられる。
抗アレルギー薬としては、アンレキサノクス、セラトロダストなどが挙げられる。
歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカインなどが挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸イソチペンジル、dl-マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。
強心剤としては、例えばカフェイン、ジゴキシンなどが挙げられる。
不整脈用剤としては、例えば塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロールなどが挙げられる。
利尿薬としては、例えばイソソルピド、フロセミド、HCTZなどのチアシド剤などが挙げられる。
【0012】
血圧降下剤としては、例えば塩酸デラプリル、カプトプリル、臭化ヘキサメトニウム、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、塩酸マニジピン、カンデサルタン シレキセチル、メチルドパ、ロサルタン、バルサルタン、エポサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、テルミサルタンなどが挙げられる。
血管収縮剤としては、例えば塩酸フェニレフリンなどが挙げられる。
冠血管拡張剤としては、例えば塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ペラパミルなどが挙げられる。
末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジンなどが挙げられる。
高脂血症用剤としては、例えばセリバスタチンナトリウム、シンバスタチン、プラバスタチンナトリウムなどが挙げられる。
利胆剤としては、例えばデヒドロコール酸、トレピプトンなどが挙げられる。
抗生物質には、例えばセファレキシン、セファクロル、アモキシシリン、塩酸ピブメシリナム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セファドロキシル、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチル、塩酸セフォチアム、塩酸セファゾプラン、塩酸セフメノキシム、セフスロジンナトリウムなどのセフェム系、アンピシリン、シクラシリン、スルベニシリンナトリウム、ナリジクス酸、エノキサシンなどの合成抗菌剤、カルモナムナトリウムなどのモノバクタム系、ペネム系およびカルバペネム系抗生物質などが挙げられる。
化学療法剤としては、例えばスルファメチゾール、塩酸スルファメチゾール、チアゾスルホンなどが挙げられる。
糖尿病用剤としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、塩酸ピオグリタゾン、グリベンクラミド、トログリダゾン、マレイン酸ロジグリタゾン、アカルボース、ミグリトール、エミグリテートなどが挙げられる。
骨粗しょう症用剤としては、例えばイプリフラボンなどが挙げられる。
骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。
鎮けい剤としては、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナートなどが挙げられる。
抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミンなどが挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばリオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン、酢酸リュープロレリンなどが挙げられる。
アルカロイド系麻薬として、アヘン、塩酸モルヒネ、トコン、塩酸オキシコドン、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸コカインなどが挙げられる。
サルファ剤としては、例えばスフファミン、スルフィソミジン、スルファメチゾールなどが挙げられる。
痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチンなどが挙げられる。
血液凝固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。
抗悪性腫瘍剤としては、例えば5−フルオロウラシル、ウラシル、マイトマイシンなどが挙げられる。
アルツハイマー病治療薬としては、例えばイデベノン、ビンポセチンなどが挙げられる。
【0013】
上記した医薬成分の中でも、滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、中枢神経作用薬、胃腸薬、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、抗高脂血症剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬、鎮うん剤などが好適に用いられる。
本発明において、特に好適に用いられる医薬成分は、ランソプラゾールなどの抗潰瘍剤;ボグリボース、塩酸ピオグリタゾンなどの糖尿病用剤;塩酸マニジピン、カンデサルタン シレキセチルなどの血圧降下剤である。
また、これらの医薬成分は、本発明の速崩壊性固形製剤中に2種類以上配合されていてもよい。
医薬成分は、一般に医療、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。また医薬成分の苦味のマスキングを目的として処理したものを用いてもよい。
上記した医薬成分は、例えば固形製剤100重量部に対して0.01〜90重量部、好ましくは0.02〜50重量部、さらに好ましくは0.05〜30重量部用いられる。
【0014】
上記「酸に不安定な生理活性物質」としては、酸性領域で不安定および/または酸により不活性となる化合物(特に医薬成分)が挙げられ、具体的には例えば、PPIが挙げられる。PPIとしては、特に、抗潰瘍作用を有するベンズイミダゾール系化合物またはその塩(ラセミ化合物および光学活性体を含む)(例、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール、ペルプラゾール、レミノプラゾール、TU−199など)などが挙げられる。中でも好ましくはランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾール等、特に好ましくはランソプラゾールおよびその光学活性体である。ランプラゾールの光学活性体としては、R体が特に好ましい。PPIとしては、この他にテナトプラゾールが挙げられる。
【0015】
上記「粒体」は、生理活性物質の他に、下記の一般製剤の製造に用いられる結合剤、滑沢剤、賦形剤などを含有していてもよい。添加量は一般製剤の製造に用いられる量である。生理活性物質が「酸に不安定な生理活性物質」である場合、該生理活性物質を製剤中で安定化するために、塩基性無機塩を粒体中に配合することが好ましい。該「塩基性無機塩」としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなど)が挙げられる。
【0016】
上記「粒体」は、粒状の形態であれば特に限定されるものではなく、核を有さないものであっても、核を有するものでもあってもよい。また、粒体が核を有するものである場合、核が生理活性物質を含有していてもよく、含有していなくてもよい。粒体の粒径は所望する被覆粒体の粒径に応じて決定すればよい。粒径該粒体はその形態に応じて、自体公知の方法またはその類似の方法により製造すればよい。
粒体が核を有さない場合、自体公知の造粒法により製造できる。
「造粒法」としては、転動造粒法(例、遠心転動造粒法)、流動造粒法(例、転動流動層造粒、流動造粒等)、撹拌造粒法などが挙げられる。このうち、流動造粒法が好ましい。特に好ましくは転動流動層造粒法である。
該転動造粒法の具体例としては、例えばフロイント社製の「CF装置」などを用いる方法が挙げられる。該転動流動層造粒法の具体例としては、例えば「スパイラフロー」、パウレック社製の「マルチプレックス」、不二パウダル社製の「ニューマルメ」などを用いる方法が挙げられる。混合液の噴霧方法は造粒装置の種類に応じて適当に選択でき、例えば、トッププレー方式、ボトムスプレー方式、タンジェンシャルスプレー方式などのいずれであってもよい。このうち、タンジェンシャルスプレー方式が好ましい。
【0017】
一方、核を有する粒体は、自体公知の方法により核を生理活性物質などでコーティングすることにより製造できる。
例えば特開平5−092918号公報に記載の製造法(コーティング方法)に従い、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核に、酸に不安定な生理活性物質と、必要に応じ、塩基性無機塩、結合剤、滑沢剤、賦形剤、水溶性高分子など(以下、被覆層と略記することもある)とを被覆すること等により製造できる。
【0018】
該「核」の平均粒子径は、約40〜350μm、好ましくは約50〜250μm、より好ましくは約100〜250μm、特に好ましくは約100〜200μmである。このような平均粒子径を有する核としては、50号(300μm)の篩を全通し、60号(250μm)の篩に残留する粒子が全体の約5w/w%以下であり、かつ282号(53μm)の篩を通過する粒子が全体の約10w/w%以下であるような粒子が含まれる。「核」の比容は5ml/g以下、好ましくは4ml/g、より好ましくは3ml/g以下である。
該「核」としては、例えば、(1)結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品、(2)結晶セルロースの150〜250μmの球形造粒品(旭化成(株)製、アビセルSP)、(3)乳糖(9部)とαデンプン(1部)による50〜250μmの撹拌造粒品、(4)特開昭61−213201号公報に記載の微結晶セルロース球形顆粒を分級した250μm以下の微粒、(5)スプレーチリングや溶融造粒により球状に形成されたワックス類などの加工品、(6)オイル成分のゼラチンビーズ品などの加工品、(7)ケイ酸カルシウム、(8)デンプン、(9)キチン、セルロースおよびキトサンなどの多孔性粒子、(10)グラニュー糖、結晶乳糖、結晶セルロースまたは塩化ナトリウムなどのバルク品およびそれらの製剤加工品などが挙げられる。さらに、これらの核を、自体公知の粉砕方法あるいは造粒方法により製造し、篩過して所望の粒子径の粒子を調製してもよい。
【0019】
該「結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品」としては、例えば、(i)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる100〜200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)、(ii)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる150〜250μmの球形造粒品(例、ノンパレルNP−7:3、フロイント社製)、(iii)結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる100〜200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105T(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)など〕、(iv)結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)とによる150〜250μmの球形造粒品〔例、ノンパレルNP−5:5、フロイント社製)などが挙げられる。
適度の強度を保ちつつ溶解性にも優れた製剤を製造するためには、該「核」として、好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品、より好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品で乳糖を約50重量%以上含有するものものが挙げられる。結晶セルロースを約20〜50重量%、好ましくは約40〜50重量%および乳糖を約50〜80重量%、好ましくは約50〜60重量%含有するものが好ましい。
本発明に用いられる核としては、結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品が好ましく、さらに好ましくは、結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる100〜200μmの球形造粒品である。
該「核」は、上記の医薬成分などの生理活性物質を含んでいてもよいが、該生理活性物質を含む被覆層により、その生理活性物質の放出性をコントロールできるので、核は生理活性物質を含んでいなくてもよい。
該「核」は、細粒状であってもよく、被覆のバラツキを小さくするためには、できる限り均一な球状であることが好ましい。
【0020】
かくして得られた粒体を自体公知の方法により被覆剤で被覆することにより、「被覆粒体」が得られる。該被覆剤としては、例えば、腸溶性ポリマー(例、セルロースアセテートフタレート、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸(以下、メタアクリル酸と称する)コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名:レーム社製)、メタアクリル酸コポリマーS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、コリコートMAE30DP(商品名;BASF社製)、ポリキッドPA30(商品名:三洋化成社製)など〕、カルボキシメチルエチルセルロース、セラック、メタアクリル酸共重合体〔例えば、オイドラギットNE30D(商品名)、オイドラギットRL30D(商品名)、オイドラギットRS30D(商品名)など〕、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、アセチル化モノグリセリド、トリアセチン、ヒマシ油等)、胃溶性ポリマー(例、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー等)、水溶性ポリマー(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、難溶性ポリマー(例、エチルセルロース、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体等)、ワックス等が挙げられる。これらは一種または二種以上混合して使用してもよい。
腸溶性被覆用の被覆剤としては、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(以下、HP−55と記載する)、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸共重合体〔例えば、オイドラギットL30D−55、コリコートMAE30DP、ポリキッドPA30など〕、カルボキシメチルエチルセルロース、セラックなどの水系腸溶性高分子基剤を含有するものが好ましい。該水系腸溶性高分子基剤として好ましくは、メタアクリル酸共重合体である。
【0021】
被覆層は複数の層から形成されていてもよい。例えば、粒体に、メタアクリル酸共重合体、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆し、メタアクリル酸共重合体、クエン酸トリエチルを含有する腸溶性被覆層を被覆し、さらに、メタアクリル酸共重合体、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆する方法等が挙げられる。また、例えば、錠剤の強度を向上させる目的で腸溶性被覆層をマンニトール等の水溶性糖アルコールでオーバーコートしてもよい。
【0022】
腸溶性被覆層としては、該生理活性物質を含む組成物の表面全体を、10〜100μm、好ましくは20〜70μm、より好ましくは30〜50μmの厚みで覆う層であることが好ましい。従って、被覆粒体の粒径が小さければ小さいほど、腸溶性被覆層が被覆粒体全体に占める重量%が大きくなる。通常、腸溶性被覆層は被覆粒体全体の20〜90重量%、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは50〜70重量%である。
【0023】
被覆粒体の粒径は特に限定されないが、細粒または顆粒が好ましく、口腔内速崩壊錠の場合、口中でのザラツキ感や違和感を感じさせないためには、その平均粒径は約400μm以下である。好ましい平均粒径は200〜400μm、さらに好ましくは300〜400μmである。
【0024】
該「被覆粒体」としては、特開2000−281564号公報および特開2000−103731号公報に記載の細粒が、特に好ましい。
【0025】
本発明の錠剤の製造方法においては、被覆粒体を単独で打錠してもよいが、好ましくは被覆粒体と添加剤とを混合して打錠する。この時添加剤を予め造粒して混合してもよい。該添加剤としては、一般製剤の製造に用いられるものであればよく、その添加量は一般製剤の製造に用いられる量である。
該「添加剤」としては、例えば水溶性糖アルコール、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが用いられ、さらに結合剤、酸味料、発泡剤、人口甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、賦形剤、崩壊剤なども用いられる。
該「水溶性糖アルコール」は、糖アルコール1gを水に加え、20℃において5分ごとに強く30秒間振り混ぜて約30分以内に溶かす際に、必要な水の量が30ml未満である糖アルコールを意味する。
該「水溶性糖アルコール」としては、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられ、これらは、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
該「水溶性糖アルコール」は、好ましくはマンニトール、キシリトール、エリスリトール、さらに好ましくはマンニトール、エリスリトール、特に好ましくはマンニトールが挙げられる。エリスリトールとしては、通常ぶどう糖を原料として酵母等による発酵により生産され、粒度が50メッシュ以下のものが用いられる。該エリスリトールは、市販品〔日研化学(株)等〕として入手することができる。
該「水溶性糖アルコール」は、口腔内崩壊剤の場合、十分な製剤強度および十分な口腔内崩壊性を得るために、添加剤の合計100重量部に対して通常、約5〜97重量部、好ましくは約10〜90重量部、より好ましくは約20〜80重量部用いられる。
マンニトールまたはエリスリトールの場合、添加剤の合計100重量部に対して通常、約5〜90重量部、好ましくは約10〜80重量部、さらに好ましくは約20〜80重量部、最も好ましくは、約50〜80重量部程度含有させるとよい。
【0026】
該「結晶セルロース」としては、α−セルロースを部分的に解重合して精製したものであればよい。また、微結晶セルロースと呼ばれているものも含まれる。該結晶セルロースとして具体的には例えば、セオラスKG 801、アビセルPH 101、アビセルPH 102、アビセルPH 301、アビセルPH 302、アビセルRC−591(結晶セルロース・カルメロースナトリウム)等が挙げられる。好ましくは高成形アビセルと呼ばれているセオラスKG 801が挙げられる。これら結晶セルロースは単独に使用してもよいが、二種以上併用することもできる。これら結晶セルロースは市販品〔旭化成(株)製〕として入手することができる。
該結晶セルロースは、添加剤の合計100重量部に対して約3〜50重量部、好ましくは約5〜40重量部、最も好ましくは、約5〜20重量部程度配合すればよい。
【0027】
該「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」とは、ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシル基含量(以下、HPC基含量と略記することもある)が約5.0〜9.9重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、なかでも、約5.0〜7.0重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび約7.0〜9.9重量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を意味する。
HPC基含量が約7.0〜9.9%である該低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えばLH−22、LH−32およびこれらの混合物などが挙げられ、これらは市販品〔信越化学(株)〕として入手できる。また、自体公知の方法、例えば以下に述べる特公昭57−53100号公報に記載の方法あるいはこれに準ずる方法により製造することもできる。
HPC基含量が約5.0〜7.0%である該低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば後述の参考例に記載のLH−23、LH−33およびこれらの混合物などが挙げられ、これらは自体公知の方法、例えば特公昭57−53100号公報に記載の方法あるいはこれに準ずる方法により製造することができる。
該「ヒドロキシプロポキシル基含量が5.0〜7.0重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」の粒子径は、例えば平均粒子径として、約5〜60μm、好ましくは約7〜50μm、より好ましくは約10〜40μmである。
このような範囲のうち、粒子径の比較的大きいL−HPC(例えば平均粒子径が約26〜40μmのL−HPC)を用いれば、崩壊性の優れた製剤を製造することができる。一方、粒子径の比較的小さいL−HPC(例えば平均粒子径が約10〜25μmのL−HPC)を用いれば、製剤強度の優れた製剤を製造することができる。従って、L−HPCの粒子径は、目的とする製剤の特性に応じて適宜選択することができる。
HPC基含量が5.0〜7.0重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、HPC基含量が7.0〜9.9%の該低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、口腔内崩壊錠の場合、十分な口腔内崩壊性および十分な製剤強度を得るために、添加剤の合計100重量部に対して通常、約3〜50重量部、好ましくは約5〜40重量部、さらに好ましくは5〜20重量部用いられる。
【0028】
該「結合剤」としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、αデンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。該結合剤として結晶セルロースを用いる場合、優れた口腔内崩壊性を保持したままで、製剤強度のさらに大きい固形製剤を得ることができる。
該「酸味剤」としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
該「発泡剤」としては、例えば重曹などが挙げられる。
該「人口甘味料」としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
該「香料」としては、合成物および天然物のいずれでもよく、例えばレモン、ライム、オレンジ、メントール、ストロベリーなどが挙げられる。
該「滑沢剤」としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。
該「着色剤」としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素;食用レーキ色素、ベンガラなどが挙げられる。
該「安定化剤」としては、前述の塩基性無機塩などが挙げられる。
該「賦形剤」としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、酸化チタンなどが挙げられる。
【0029】
該「崩壊剤」としては、製剤分野で慣用される崩壊剤を用いることができ、例えば、(1)クロスポビドン、(2)クロスカルメロースナトリウム(FMC−旭化成)、カルメロースカルシウム(五徳薬品)などスーパー崩壊剤と称される崩壊剤、(3)カルボキシメチルスターチナトリウム(例、松谷化学(株)製)、(4)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(例、信越化学(株)製)、(5)コーンスターチ等が挙げられる。特に好ましい崩壊剤としては、例えばクロスポビドンである。
該「クロスポピドン」としては、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、1−ビニル−2−ピロリジノンホモポリマーと称されているものも含め、1−エテニル−2−ピロリジノンホモポリマーという化学名を有し架橋されている重合物のいずれであってもよく、具体例としては、コリドンCL(BASF社製)、ポリプラスドンXL(ISP社製)、ポリプラスドンXL−10(ISP社製)、ポリプラスドンINF−10(ISP社製)などである。通常分子量は1,000,000を超えている。
これら崩壊剤は、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。例えばクロスポビドン単独、あるいはクロスポビドンと他の崩壊剤との併用が挙げられる。
このような崩壊剤は、口腔内崩壊錠の添加剤の合計100重量部に対して、通常約1〜15重量部、好ましくは約1〜10重量部程度含有させて、より好ましくは約3〜7重量部程度となるよう含有させる。
【0030】
本発明の錠剤の製造方法は、室温を超える温度の被覆粒体を打錠することに特徴を有する。本明細書中、このように室温を超える温度に加熱した原料粉体や粒体を打錠することを単に「加温打錠」と称することがある。本明細書中、「室温」とは、通常の錠剤の製造において打錠を行う室内の温度をいい、その温度は通常約20℃〜約23℃をいう。すなわち、「室温を超える温度」とは、この温度を超える温度をいい、好ましくは下限が約25℃であればよい。該温度は使用する被覆剤、原料粉体や粒体等によって異なるが、通常、好ましくは約25℃〜約50℃、さらに好ましくは約25℃〜約40℃である。該温度は、所望する錠剤の品質に応じて変更することができる。例えば、本発明の製造方法で得られた錠剤の耐酸率が目的の数値を上回る場合は、被覆粒体の温度をより高くすればよい。
【0031】
被覆粒体の温度を、室温を超える温度にする方法は、特に限定されない。例えば、非接触式の赤外線ヒータや温風、或いは接触式の抵抗ヒータ等により、被覆粒体を直接的に加温してもよく、あるいは、打錠機全体ないし被覆粒体が接触する打錠機の部分(例、ロータリー式打錠機のターンテーブル(回転盤))を加温する、打錠機を小室に設置して小室を加温する、あるいは打錠用臼杵および粒体供給部を部分的に覆う小室を加温する等の方法で被覆粒体を間接的に加温してもよい。小室の加温は、例えば、温かい空気を送風して行うことができる。また、被覆粒体と打錠機またはその部分、あるいは被覆粒体と設置した小室の両方を加温してもよい。打錠に付す被覆粒体あるいは打錠機の一部または全体を加温する場合、被覆粒体が直接接する部分(例えば、回転盤、杵)は非接触的に加温するのが一般に好ましいが、直接接しない部分については、接触式の抵抗ヒータなどによる加温も効果的である。直接接しない部分とは、回転盤裏面、上杵ホルダーあるいは下杵ホルダー等を意味する。また、予め打錠機を空運転することによって、打錠機を加温してもよい。さらに、打錠機を連続運転することにより、打錠機の温度が上がるとともに外部温度の影響を受けるのであれば、打錠機あるいはそれらを設置する小室に適宜センサーを設け、上記温度に調整することが好ましい。
このような錠剤の製造装置としては、打錠時における被覆粒体の温度を所定の温度に維持する温度制御部を備えた錠剤の製造装置はいずれも用いられるが、例えば下記のような装置が好適である。
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明に係る錠剤打錠装置の一実施形態であるロータリ式打錠機1を概略構成を示す。ただし、本発明の錠剤打錠装置は、このロータリ式打錠機に限定されるものでない。打錠機1は、透明板材を組み合わせて構成された打錠室(ハウジング)2を有する。打錠室2には、モータ3に駆動連結された垂直回転軸4が配置されている。回転軸4は、ターンテーブル5を支持しており、モータ3の駆動に基づいて回転軸4とターンテーブル5が一定速度で所定の方向に回転するようにしてある。
【0032】
ターンテーブル5には、回転軸4を中心とする所定半径の円周上に一定の間隔をあけて、ターンテーブル5を貫通し且つ回転軸4と平行に伸びる複数の打錠セル(臼)6が形成されている。各打錠セル6の下方には、この打錠セル6の内径とほぼ同一の外径の上端部分を有する下部打錠ロッド(杵)7が配置されている。各下部打錠ロッド7は回転軸4の回転と共に回転する昇降機構(図示せず)に支持されており、ターンテーブル5が一回転する間、回転位置に応じて、またモータ3の駆動に基づいて、最も下降した位置(ロッド上端部分が打錠セル内で最も下降している位置)と最も上昇した位置(ロッド上端部分が打錠セルの上方に突出した位置)との間を移動するようにしてある。
【0033】
各打錠セル6の上方には、上部打錠ロッド(杵)8が配置されている。各上部打錠ロッド8は、回転軸4の回転と共に回転する昇降機構(図示せず)に支持されており、ターンテーブル5が一回転する間、回転位置に応じて、またモータ3の駆動に基づいて、最も下降した位置(ロッド下端部分が打錠セル内で最も下降している位置)と最も上昇した位置(ロッド下端部分が打錠セルの上方に退避した位置)との間を移動するようにしてある。また、各上部打錠ロッド8の下端部分は打錠セル6の内径とほぼ同一の外径を有し、打錠セル6の中で、下部打錠ロッド7の上端部分と協働して打錠用粉末を上下から加圧して錠剤を成形できるようにしてある。
【0034】
打錠機1はさらに、各打錠セル6に打錠用粉末を供給し充填するために、粉末供給装置9を備えている。この粉末供給装置9は、例えば、ターンテーブル5上に粉末を落下供給する粉末供給用ホッパ10と、このホッパ10からターンテーブル5に供給された打錠用粉末を各打錠セル6に案内するフィーダ11を備えている。
【0035】
以上の構成を供えた打錠機1によれば、打錠用粉末は、ホッパ11からターンテーブル5上に落下供給される。ターンテーブル5上の粉末は、このターンテーブル5の回転に基づき、フィーダ11によって各打錠セル6に導かれる。打錠セル6に粉末が充填される間、下部打錠ロッド7は最も下降した位置にあり、これにより所定量の粉末が各打錠セル6に充填される。次に、所定量の粉末が充填された打錠セル6に対し、その上方から上部打錠ロッド8の下端部分が挿入される。同時に、下部打錠ロッド7が上昇する。その結果、打錠セル6内の粉末は、下部打錠ロッド7と上部打錠ロッド8との間で圧縮されて錠剤に成形される。錠剤成形後、上部打錠ロッド8は打錠セル6からその上方に退避する。そして、成形された錠剤は、下部打錠ロッド7の上昇によって打錠セル6から押し出され、ターンテーブル5の外周に設けたトレイ(図示せず)に回収される。
【0036】
つぎに、打錠機1の加温装置について説明する。加温装置12は、打錠機1による錠剤の製造前または製造中、打錠用粉末(主薬細粒と賦形剤粉末の混合末)を所定温度または所定温度範囲に保つものである。そのために、本実施の形態において、加温装置12は、温風加熱器13と、放射加熱器(接触式および非接触式の加熱器)14とを備えている。温風加熱器13は、温風発生源15と、この温風発生源15で生成された温風を打錠室2に案内する断熱給気ダクト16と、打錠室2の空気を外部に導くための排気ダクト17を備えている。一方、放射加熱器14は、打錠室2の内部、特にターンテーブル5の近傍に該ターンテーブルと非接触に配置された一つまたは複数の非接触式ヒータ(例えば、赤外線ヒータ18a)と、ターンテーブル5の下面または外周面に接触して設けた接触式ヒータ(例えば、抵抗ヒータ18b)を有する。これら非接触式ヒータ18aおよび接触式ヒータ18bは着脱可能とし、不要時には打錠室2から取り出すことができるようにするのが好ましい。
【0037】
加温装置12を制御するために、打錠室2には複数の温度検出器19(19a〜19e)が配置されている。温度検出器19の配置位置としては、例えば、ターンテーブル5、ホッパ10、給気ダクト16、排気ダクト17の表面またはそれらの近傍の一ヵ所以上が好ましい。しかし、打錠用粉末の温度またはターンテーブル5の温度を直接的または間接的に検出し得る限り、温度検出器の配置場所は特定の場所に限定されるものでない。
【0038】
図2に示すように、加温装置12を制御する加温制御部20は、上記した温風発生源15、非接触式赤外線ヒータ18aまたは接触式抵抗ヒータ18bなどの加温装置12、複数の温度検出器19、打錠機駆動モータ制御部21、電源スイッチ22と電気的に接続されている。
【0039】
このように構成された加温制御部20は、図3に示すプログラムに基づいて動作する。なお、このプログラムは、打錠機1の全体を管理するメインプログラムのサブルーチンであって、メインプログラムでタイマ設定される一定時間ごとに繰返し実行される。具体的に、加温制御部20は、まず電源スイッチ22がオンされているか否かを判断する(ST1)。電源スイッチ22がオフされている場合、プログラムは待機する。電源スイッチ22がオンされると、温度検出器19の検出温度tが所定の基準温度αを超えているか否か判断する(ST2)。
【0040】
基準温度αは温度検出器19の検出部位(対象)に応じて異なり、各センサに応じて設定することができる。例えば、温度検出器19が打錠室2の雰囲気温度(室温)を検出する場合、基準温度αは例えば25℃に設定される。しかし、基準温度はその値に限定されるものでなく、例えば約25℃〜約50℃の範囲の適当な値に設定することができる。一方、温度検出器19がターンテーブル5の表面温度または打錠用粉末が接触する部位の温度を検出する場合、基準温度は約30℃〜約40℃の任意の値に設定する。
【0041】
検出温度tが基準温度以下の場合、加温装置12をオンし(ST3)、打錠機駆動モータ制御部21を介してモータ3の駆動を禁止する(ST4)。その結果、打錠前の打錠用粉末の温度が基準温度以上になるまで、打錠装置は待機することになる。一方、加温装置12によって打錠粉末が十分に加温されて検出温度tが基準温度を越えると、加温装置12はオフし(ST5)、打錠機駆動モータ制御部21を介してモータ3の駆動を許可する(ST6)。
なお、打錠中もセンサの出力をもとに温度制御してもよいが、打錠中は装置内で発生する熱によって打錠用粉末の温度が所定の基準温度以上に維持できる場合、打錠開始後の下限温度制御は不要である。
【0042】
室温を超える温度の被覆粒体を打錠する事を除けば、本発明の錠剤は、製剤分野における慣用の方法により製造される。例えば、被覆粒体、所望により添加剤および水と混合し、打錠し、さらに所望により乾燥する方法が挙げられる。
「混合」は、一般に用いられる混合方法、例えば混合、練合、造粒などにより行われる。該「混合」は、例えばバーチカルグラニュレーターVG10(パウレック社製)、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機LAB−1、FD−3S(パウレック社製)、V型混合機、タンブラー混合機などの装置を用いて行われる。
【0043】
「打錠」は、単発錠剤機(菊水製作所製)、ロータリー式打錠機(菊水製作所製)などを用い、1〜80kN/cm、5〜50kN/cm、好ましくは15〜40kN/cmの圧力で打錠することにより行われる。また、ロータリー式打錠機の場合、通常の回転数、例えば、3〜120min−1、好ましくは3〜80min−1、より好ましくは5〜60min−1で打錠すればよい。
「乾燥」は、例えば真空乾燥、流動層乾燥など製剤一般の乾燥に用いられる何れの方法によってもよい。
【0044】
かくして得られる本発明の錠剤は、被覆粒体の被覆膜の破壊が減じられている。例えば、酸に不安定な生理活性物質を被覆粒体に含む錠剤の場合、ロータリー式打錠機を用いて通常の圧力および回転数で製造された錠剤であっても、酸性溶液中での溶出率、すなわち耐酸率が低減される。用いる被覆剤にもよるが、通常約10%以下に、さらには約7%以下に低減できる。用いる成分にもよるが、さらに好適な耐酸率は約5%以下、より好ましくは約3%以下である。最も好ましくは、約1%以下にすることも可能である。ここで、耐酸率とは、日局溶出試験法第2法により0.1N HCl 500mL(75rpm)で、1時間溶出試験し、溶出液を採取し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後、吸光度を測定し、0.1N HClへの薬物の溶出率を算出することにより求められる。また、本発明の加温打錠した錠剤は、室温の粉体や粒体を打錠した錠剤と比べて硬度が向上している。このような錠剤としては、被覆粒体を原料として用いる場合のみならず、通常の粉体や粒体を用いた場合も、向上した硬度の錠剤が得られる。ここで、錠剤の硬度とは、錠剤の硬さを示す度合であるが、通常、錠剤の直径方向に圧縮して破壊するときの圧縮力をいう。硬度は、錠剤の大きさや打錠圧にもよるが、本発明によれば通常の打錠圧であっても約10〜300Nの硬度が達成できる。上記した被覆粒体を加温打錠に付した場合、耐酸率と硬度が共に改善された錠剤が得られる。例えば、通常約10〜200N、好ましくは約15〜80Nの硬度が達成できる。例えば、最も低硬度の錠剤に属する直径9mmの腸溶性被覆粒体を含有する口腔内崩壊錠の場合、本発明によれば、通常の打錠圧で約10〜50N、好ましくは約15〜40N、より好ましくは20〜35Nの硬度が得られる。したがって、所望の耐酸率、被覆膜の強度および硬度を維持するために、圧力を上げたり回転数を下げたりする必要がなく、生産効率を下げることなく所望の特性の錠剤を製造することができる。
【0045】
本発明の製造方法で得られる錠剤は、通常の錠剤と同様に服用することが出来る。例えば、口腔内崩壊錠の場合、水なしで咀嚼等して嚥下する事などにより服用すればよい。
また、該錠剤の投与量は、医薬成分、投与対象、疾患の種類等により異なるが、医薬成分としての投与量が有効量となる範囲から選択すればよい。例えば医薬成分がランソプラゾールである場合、本発明の速崩壊性固形製剤は、消化性潰瘍(例、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、ゾリンジャー・エリソン(Zollinger-Ellison)症候群等)、胃炎、逆流性食道炎、食道炎を伴わない胃食道逆流症(symptomatic Gastroesophageal Reflux Disease (symptomatic GERD))等の治療および予防;H.ピロリ除菌;消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍および出血性胃炎による上部消化管出血の抑制;侵襲ストレス(手術後に集中管理を必要とする大手術や集中治療を必要とする脳血管障害、頭部外傷、多臓器不全、広範囲熱傷から起こるストレス)による上部消化管出血の抑制;非ステロイド系抗炎症剤に起因する潰瘍の治療および予防;手術後ストレスによる胃酸過多および潰瘍の治療および予防;麻酔前投与等に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、ランソプラゾールとして0.5〜1500mg/日、好ましくは5〜500mg/日、より好ましくは5〜150mg/日である。なお、ランソプラゾールは他の薬剤(抗腫瘍剤、抗菌剤等)と併用してもよい。とりわけ、エリスロマイシン系抗生物質(例、クラリスロマイシン等)とペニシリン系抗生物質(例、アモキシシリン等)と併用することによりH.ピロリ除菌にすぐれた効果が達成できる。
【0046】
医薬成分がボグリボースである場合、本発明の錠剤は、肥満症、脂肪過多症、過脂肪血症、糖尿病等の治療および予防に有用であり、その投与量は、成人1人(60kg体重)あたり、ボグリボースとして0.01〜30mg/日、好ましくは0.01〜10mg/日、より好ましくは0.1〜3mg/日である。該錠剤は、1日1回または2〜3回に分けて投与してもよい。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例および参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例で得られた錠剤の物性は、下記試験法によって測定した。
[硬度試験]
錠剤硬度計(富山産業(株)製)を用いて測定した。試験は10回行い、その平均値を示す。
[耐酸率:0.1N HClでの溶出率]
日局溶出試験法第2法により0.1N HCl 500mL(75rpm)で、1時間溶出試験し、溶出液を採取し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後、吸光度を測定し、0.1N HClへの薬物の溶出率を算出した。
【0048】
実施例1
(1)有核散剤の製造
ノンパレル105(商品名)(粒子径100〜200μm)41.58kgを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−400型〕に入れ、定常状態の排気温度が約31℃になるよう送風温度をコントロールし、タンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.4kg/分となるように、予め調製した下記組成のバルク液を噴霧コーティングした。規定量257.6kgのバルク液を噴霧した時点で、引き続き(2)の下掛けフィルム有核散剤の製造に移行した。
[バルク液]
ランソプラゾール 39.6kg
炭酸マグネシウム 13.2kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSL) 13.2kg
精製水 185L
【0049】
(2)下掛フィルム有核散剤の製造
上記(1)の有核散剤の製造に引き続き、定常状態の排気温度が約41℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.2kg/分となるように噴霧した。規定量132.0kgのフィルム液を噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を約11分間行った後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩過し、下掛フィルム有核散剤132kgを得た。
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.24kg
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
酸化チタン(TiO) 3.96kg
滅菌タルク〔松村産業(株)製〕 3.96kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
マンニトール 9.24kg
精製水 99.0L
【0050】
(3)腸溶性有核散剤の製造
上記(2)の下掛フィルム有核散剤44.0kgを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−400型〕に入れ、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.05kg/分となるように、規定量54.6kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(A)]
オイドラギットL30D−55 32.05kg
オイドラギットNE30D 3.570kg
ポリエチレングリコール6000 1.071kg
モノステアリン酸グリセリン 0.629kg
ポリソルベート80 0.189kg
三二酸化鉄 0.006kg
黄色三二酸化鉄 0.006kg
無水クエン酸 0.013kg
精製水 44.3L
引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(B)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.00kg/分となるように、規定量201.6kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(B)]
オイドラギットL30D−55 117.6kg
オイドラギットNE30D 13.06kg
クエン酸トリエチル 7.854kg
モノステアリン酸グリセリン 2.521kg
ポリソルベート80 0.756kg
三二酸化鉄 0.025kg
黄色三二酸化鉄 0.025kg
無水クエン酸 0.021kg
精製水 59.7L
引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した上記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.05kg/分となるように、規定量27.3kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
【0051】
(4)マンニトールのオーバーコート腸溶性有核散剤の製造
上記(3)に引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度0.64kg/分となるように噴霧した。規定量29.4kgを噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を続け排気温度が65℃に達した後、冷却した。これを、35号の丸篩(420μm)と60号の丸篩(250μm)を用いて篩過し、106kgのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。
得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の平均粒径は、340μmであった。
[フィルム液]
マンニトール 4.2kg
精製水 25.2L
【0052】
(5)添加剤造粒末の製造
流動層造粒乾燥機〔パウレック社製、FD−WSG−15型〕に粉砕マンニトール9.45kg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH―33)1.5kg、結晶セルロース1.5kg、クロスポビドン0.75kg、アスパルテーム0.45kgをいれ、給気温度67℃、給気量4m/分で流動させ、マンニトール0.75kg、無水クエン酸0.15kgを精製水5.1kgに溶解させた液を供給速度87g/分で全量噴霧し、噴霧終了後に排気温度が45℃になるまで乾燥を行い乾燥末を得た。得られた乾燥末をスクリーンサイズ1.5mmφのパワーミル〔昭和化学機械工作所製〕で整粒し添加剤造粒末を得た。
【0053】
(6)混合末の製造
上記(4)のオーバーコート腸溶性有核散剤5.294kgと上記(5)の添加剤造粒末5.926kgおよびフレーバー(STRAWBERRY DURAROME、日本フィルメニッヒ(株))0.06kgをタンブラー混合機〔昭和化学機械工作所製、TM−60S型〕に入れ、回転数20min−1で5分間混合を行い、ステアリン酸マグネシウム0.12kgを加え更に回転数20min−1で1分間混合を行い混合末を得た。
【0054】
(7)口腔内崩壊錠の製造
上記の混合末1kgをロータリー式打錠機〔菊水製作所製、Correct 19K型〕を用いて、1錠285mg、9mmφ隅角平面の杵で打錠圧が約19kN/杵になるように打錠した。このとき、混合末は室温(21℃)の混合末と恒温機で50℃に加温した混合末の2水準を用い、打錠機は室温(21℃)の場合(通常の場合)と粉末供給部および臼杵が設置され安全カバーで囲われた空間(以降の実施例で打錠チャンバーと称する)を温風により40℃から50℃に加温した場合の2水準とした。加温した混合末の温度が下がらないよう速やかに打錠するとともに、打錠中も温風による打錠チャンバーの加温を継続した。以降の実施例において、室温の混合末を室温の打錠機で打錠した場合を従来条件、混合末と打錠機の両方またはそのいずれかを加温して打錠する方法を加温打錠と称する。
【0055】
(8)加温打錠による効果
得られた錠剤の硬度と酸性溶液中の溶出率(以降の実施例で耐酸率と称する。耐酸率が低いほど耐酸性が優れている。)は表1の通りであった。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示したように、混合末、打錠機の両者を加温することで、耐酸率は0.8%つまり従来条件での9.2%の約1/10まで耐酸性を改善できたが、この加温混合末を再び室温に冷却して従来条件で打錠すると耐酸率は5.8%になった。
言い換えれば、前処理として一旦混合末を加温してから従来条件で打錠することで耐酸率は9.2%から5.8%に改善できたが、打錠中に加温状態を維持することでさらに耐酸性が改善され耐酸率は0.8%となった。
また、同程度の打錠圧であっても、打錠機を加温することで硬度が上がった。
【0058】
実施例2
以下の(1)〜(5)については実施例1に同じ。
(1)有核散剤の製造
(2)下掛フィルム有核散剤の製造
(3)腸溶性有核散剤の製造
(4)マンニトールのオーバーコート腸溶性有核散剤の製造
(5)添加剤造粒末の製造
(6)混合末の製造
(7)口腔内崩壊錠の製造
上記(6)の混合末1kgをロータリー式打錠機〔菊水製作所製、Correct 19K型〕を用いて、大きさ、重量の異なる2種類の錠剤(以降で錠剤A、錠剤Bと略す)を打錠した。錠剤Aは1錠285mgで9mmφ隅角平面の杵で硬度が25N付近になるように打錠し、錠剤Bは1錠570mgで12mmφ隅角平面の杵で硬度が36N付近になるように打錠した。
このとき、混合末は恒温機で加温し混合末の温度が下がらないよう速やかに打錠するとともに、打錠機は打錠前および打錠中に打錠チャンバーを温風で加温することにより、混合末と打錠機の平均的な温度が室温〜40℃の加温水準となるようした。
【0059】
(8)加温打錠による効果
錠剤Aについて得られた錠剤の硬度と耐酸率は表2の通りであった。なお、表2中の※印は、実施例1で示した従来条件および混合末と打錠機の両者を加温した条件である。
【0060】
【表2】

表2に示したように、混合末と打錠機の加温水準が高い温度であるほど、耐酸率は低くなった。また、同程度の硬度でも加温水準が高い温度であるほど低い打錠圧にすることができた、すなわち同程度の打錠圧で硬度を高めることができた。
錠剤Bについて得られた錠剤の硬度と耐酸率は表3の通りであった。なお、表3中の※印が室温の混合末を室温の打錠機で打錠した場合である。
【0061】
【表3】

表3に示したように、混合末と打錠機の加温水準が高い温度であるほど、耐酸率は低くなった。また、同程度の硬度でも加温水準が高い温度であるほど低い打錠圧にすることができた、すなわち同程度の打錠圧で硬度を高めることができた。
また、錠剤A、錠剤Bについて加温水準が同程度であれば耐酸率は同程度であった。
【0062】
実施例3
(1)有核散剤の製造
ノンパレル105(商品名)(粒子径100〜200μm)41.58kgを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−400型〕に入れ、定常状態の排気温度が約31℃になるよう送風温度をコントロールし、タンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.4kg/分となるように、予め調製した下記組成のバルク液を噴霧コーティングした。規定量257.6kgのバルク液を噴霧した時点で、引き続き(2)の下掛けフィルム有核散剤の製造に移行した。
[バルク液]
ランソプラゾール 39.6kg
炭酸マグネシウム 13.2kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース LH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
ヒドロキシプロピルセルロース(タイプSL) 13.2kg
精製水 185L
【0063】
(2)下掛フィルム有核散剤の製造
上記(1)の有核散剤の製造に引き続き、定常状態の排気温度が約41℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の下掛フィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.2kg/分となるように噴霧した。規定量132.0kgのフィルム液を噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を約10分間行った後、42号の丸篩(350μm)と100号の丸篩(150μm)で篩過し、下掛フィルム有核散剤132kgを得た。
[下掛フィルム液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.24kg
(タイプ2910、粘度3センチストークス)
酸化チタン(TiO) 3.96kg
滅菌タルク〔松村産業(株)製〕 3.96kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースLH−32 6.6kg
(ヒドロキシプロポキシル基含量:8.8重量%)
マンニトール 9.24kg
精製水 99.0L
【0064】
(3)腸溶性有核散剤の製造
上記(2)の下掛フィルム有核散剤44.0kgを転動流動型コーティング造粒機〔パウレック社製、MP−400型〕に入れ、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.05kg/分となるように、規定量54.6kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(A)]
オイドラギットL30D−55 32.05kg
オイドラギットNE30D 3.570kg
ポリエチレングリコール6000 1.071kg
モノステアリン酸グリセリン 0.629kg
ポリソルベート80 0.189kg
三二酸化鉄 0.006kg
黄色三二酸化鉄 0.006kg
無水クエン酸 0.013kg
精製水 44.3L
引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成の腸溶性フィルム液(B)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.00kg/分となるように、規定量201.6kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
[腸溶性フィルム液(B)]
オイドラギットL30D−55 117.6kg
オイドラギットNE30D 13.06kg
クエン酸トリエチル 7.854kg
モノステアリン酸グリセリン 2.521kg
ポリソルベート80 0.756kg
三二酸化鉄 0.025kg
黄色三二酸化鉄 0.025kg
無水クエン酸 0.021kg
精製水 59.7L
引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した上記組成の腸溶性フィルム液(A)をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度1.05kg/分となるように、規定量27.3kgの腸溶性フィルム液を噴霧した。
【0065】
(4)マンニトールのオーバーコート腸溶性有核散剤の製造
上記(3)に引き続き、定常状態の排気温度が約42℃になるよう送風温度をコントロールし、予め調製した下記組成のフィルム液をタンジェンシャルスプレー方式で、供給速度0.90kg/分となるように噴霧した。規定量29.4kgを噴霧した時点で噴霧をとめ、そのまま乾燥を続け排気温度が65℃に達した後、冷却した。これを、35号の丸篩(420μm)と60号の丸篩(250μm)を用いて篩過し、106kgのオーバーコート腸溶性有核散剤を得た。
得られたオーバーコート腸溶性有核散剤の平均粒径は、357μmであった。
[フィルム液]
マンニトール 4.2kg
精製水 25.2L
【0066】
(5)添加剤造粒末の製造
流動層造粒乾燥機〔Glatt社製、WSG120〕に粉砕マンニトール75.6kg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH―33)12kg、結晶セルロース12kg、クロスポビドン6kg、アスパルテーム3.6kgをいれ、給気温度90℃、給気量1700m/hrで流動させ、マンニトール7.38kg、無水クエン酸1.476kgを精製水50.2Lに溶解させた液を噴霧した。液の供給速度は1200g/minから開始し途中で750g/minから650g/minに調節し、規定量48kgの液を噴霧した時点で噴霧をとめた。噴霧終了後、給気量を1700m/hrから1600m/hrに調節し、排気温度が58℃になるまで乾燥をおこない乾燥末を得た。得られた乾燥末をスクリーンサイズ1.5mmφのComil〔Quadro社製〕で整粒し添加剤造粒末を得た。
【0067】
(6)混合末の製造
上記(4)のオーバーコート腸溶性有核散剤108.88kgと上記(5)の添加剤造粒末115.55kgおよびフレーバー(STRAWBERRY DURAROME、日本フィルメニッヒ(株))1.2kgをV型混合機〔Pharmatech社製、800L〕に入れ、回転数10min−1で10分間混合を行い、ステアリン酸マグネシウム2.4kgを加え更に回転数5min−1で1分間混合を行い混合末を得た。
【0068】
(7)口腔内崩壊錠の製造
上記(6)の混合末7.4kgをロータリー式打錠機〔Fette社製、2090型〕を用いて、1錠285mg、9mmφ隅角平面の杵で打錠圧が約17kN/杵になるように打錠した。打錠機回転数は39min−1(10万錠/hr)と50min−1(12.9万錠/hr)の2水準とした。
このとき、混合末は恒温機で加温し、打錠機は打錠前にロータリーターンテーブルを主体に打錠チャンバーを温風で加温することにより、混合末と打錠機の平均的な温度が室温(20℃)〜40℃の加温水準となるようした。
【0069】
(8)加温打錠による効果
それぞれの打錠機回転数で得られた錠剤の耐酸率は表4、表5の通りであった。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
表4、表5に示したように、混合末と打錠機の加温水準が高い温度であるほど、耐酸率は低くなった。
また、従来条件(混合末と打錠機の温度はいずれも室温)では打錠機回転数を遅くして打錠中の圧縮速度を遅くすると耐酸性を向上できることがわかっており、例えば耐酸率を3〜5%に改善するには打錠機回転数を10min−1程度に遅くする必要があった。加温打錠により打錠機回転数を遅くせずに耐酸率を改善することができた。
【0073】
また、それぞれの打錠機回転数で得られた錠剤の硬度は表6,表7の通りであった。
【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
表6、表7に示したように、錠剤硬度は加温打錠により従来条件に比べて高くなった。
【0077】
実施例4
工業的生産用ロータリ式打錠機(菊水社製、杵数45本)のターンテーブル(直径 520mmφ)を、ターンテーブルにとりつけた接触式抵抗ヒータにより加温し、ターンテーブル温度が目的温度まで上昇することを確認した。接触式抵抗ヒータには、シート状のシリコンラバーヒータ(262.5W/450cm)を用い、電圧を調整することによりヒータ温度を45、50、55、60℃とし、検討を行った。
結果を表8に示した。接触式抵抗ヒータにより、ロータリ式打錠機ターンテーブルが目的とする温度(30−40℃)に加温されることを確認した。
【表8】

【0078】
実施例5
(1)打錠機の予熱加温
工業的生産用ロータリー式打錠機(Fette社製、2090型)のターンテーブル(直径535mmφ)、上杵フォルダーおよび下杵フォルダーを接触式抵抗ヒータにより加温し、ターンテーブル温度を45℃まで昇温させた。ッ接触式抵抗ヒータには、シート状のシリコンラバーヒータ(合計:975W)を用いた。
(2)口腔内崩壊錠の製造
実施例3の(6)項と同様の製法にて調製した混合末55kg(室温)を用い、(1)にて予熱実施済みのローターリー式打錠機(Fette社製、2090型)にて、1錠570mg、12mmφ隅角平面の杵で硬度が37N付近になるように打錠した。打錠機回転数は39min―1(10万錠/hr)と50mm−1(12.5万錠/hr)とし、ターンテーブル温度が28〜36℃の時点でサンプリングを行なった。
対照としてターンテーブル温度が室温(混合末も室温)のものを作製し、ターンテーブルを予熱したものと耐酸率を比較した。
(3)加温打錠による効果
それぞれの打錠機回転数で得られた錠剤の耐酸率を表9にまとめた。その結果、工業的生産用ローターリー式打錠機を接触式抵抗ヒーターにより加温打錠した場合、室温で打錠した場合に比べ、耐酸率が低くなり、耐酸性がより改善されることが示された。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする当該被覆粒体の被覆膜の破壊を減じる方法。
【請求項2】
生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする当該被覆粒体を含有する錠剤の耐酸率を低下させる方法。
【請求項3】
生理活性物質を含有する被覆粒体を、室温を超える温度に加温して打錠することを特徴とする錠剤の硬度を向上させる方法。
【請求項4】
生理活性物質が、酸に不安定な生理活性物質である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
酸に不安定な生理活性物質がベンズイミダゾール系化合物またはその塩のPPIである請求項4記載の方法。
【請求項6】
ベンズイミダゾール系化合物がランソプラゾールまたはその光学活性体である請求項5記載の方法。
【請求項7】
被覆粒体が腸溶性被覆された粒体である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
腸溶性被覆層が水系腸溶性高分子基剤を含有する請求項7記載の方法。
【請求項9】
水系腸溶性高分子基剤がメタアクリル酸共重合体である請求項7記載の方法。
【請求項10】
室温を超える温度が25℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
室温を超える温度が25℃〜50℃の温度である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
室温を超える温度が25℃〜40℃の温度である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−270160(P2010−270160A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200866(P2010−200866)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【分割の表示】特願2002−178053(P2002−178053)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】