説明

錠装置

【課題】操作部のロックを解除したのち、一度の動作で把手を操作しうるようにして、操作性を向上させるとともに、把手が露出しないようにして、セキュリティを高めることができるようにした錠装置を提供する。
【解決手段】扉3における把手取付部の前面に装着される本体基部7と、本体基部7に前方に操作可能として設けられ、少なくとも把手6を前方より覆いうる大きさの操作部8と、把手6と操作部8とに連係され、操作部8を前方に操作することにより、把手6を前方に移動させうるようにした連係部材17と、操作部8を操作不能に施錠できるとともに、操作部8を操作可能に解錠できる施解錠手段19,21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット等の収納体の把手取付部に後付けして使用することにより、把手を操作可能及び操作不能とする錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような従来の錠装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、キャビネットの扉における把手(取っ手部)の取付部の前面に装着される装置本体部と、この装置本体部に設けられ、把手を操作不能とする位置と操作可能とする位置とに移動可能な可動部材と、施錠操作により、可動部材の移動をロックして把手を操作不能とし、解錠操作により、可動部材のロックを解除し、把手を露出させてこれを操作可能とする施解錠ロック部とを備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されている錠装置においては、扉を開く際には、キャビネットの把手の前方を覆っている可動部材のロックを解除したのち、この可動部材を、把手が露出するまで、すなわち把手に手が掛けられる位置まで手で移動させてから、把手を操作しなければならず、また、扉を閉じた際には、再度可動部材を、把手を覆う位置まで、すなわち把手を操作不能な位置まで移動させてロックしなければならないので、操作性が悪い。また、万一、可動部材を把手が操作不能な位置まで移動させるのを忘れると、第3者により把手が操作されて、扉が開かれる恐れがあり、セキュリティ上問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、操作部のロックを解除したのち、一度の動作で把手を操作しうるようにして、操作性を向上させるとともに、把手が露出しないようにして、セキュリティを高めることができるようにした錠装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の錠装置は、
収納体の扉における把手が取り付けられた把手取付部に後付けして使用される錠装置であって、
前記扉における前記把手取付部の前面に装着される本体基部と、前記本体基部に前方に操作可能として設けられ、少なくとも前記把手を前方より覆いうる大きさの操作部と、前記把手と操作部とに連係され、前記操作部を前方に操作することにより、前記把手を前方に移動させうるようにした連係部材と、前記操作部を操作不能に施錠できるとともに、該操作部を操作可能に解錠できる施解錠手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、操作部のロックを施解錠手段により解除したのち、操作部を前方に移動操作するだけの一度の動作で、扉の把手を前方に移動させて、そのまま扉を開くことができるので、従来の錠装置に比して操作性が格段に向上する。また、扉の把手は、常に操作部により覆われ、操作部のロックを解除しない限り、把手を操作することができないので、従来の錠装置のように、把手が露出して不正に操作される恐れはなく、優れたセキュリティを有する。
【0007】
本発明の錠装置は、
前記施解錠手段は、ソレノイドにより進退移動させられ、前記本体基部または前記操作部の一部と係合可能な施解錠レバーを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、操作部の施解錠を、電気的に迅速に行うことができる。
【0008】
本発明の錠装置は、
前記施解錠手段は、認証情報に基づいて作動するとともに、該認証情報により前記操作部を施解錠する電子認証錠を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、認証カード等の認証情報に基づいて、操作部を施解錠しうるので、特定の者しか扉を開くことができず、セキュリティが向上する。また、構造の複雑な機械的な施解錠手段を用いる必要がないので、錠装置を小型化することができる。
【0009】
本発明の錠装置は、
前記電子認証錠は、前記認証情報を外部に送信可能な通信手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、収納体の施解錠や使用履歴等を外部のコンピュータに送信して管理することができる。特に、複数の収納体に錠装置を装着すると、複数の収納体の施解錠や使用履歴等を一元的に集中して管理することができる。
【0010】
本発明の錠装置は、
前記電子認証錠は、予め記憶された前記認証情報に基づいて、前記操作部を施解錠しうる記憶手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、電子認証錠の記憶手段に記憶された認証情報と、認証カード等に記憶された認証情報とが合致しない限り、操作部のロックを解除することができないので、セキュリティが格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における錠装置をキャビネットに取り付ける前の斜視図である。
【図2】同じく、錠装置取り付け後の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大横断平面図である。
【図4】同じく、操作部を前方に回動操作したときの拡大横断平面図である。
【図5】錠装置の拡大正面図である。
【図6】同じく平面図である。
【図7】同じく左側面面図である。
【図8】同じく後面図である。
【図9】錠装置の変形例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る錠装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る錠装置につき、図1から図8を参照して説明する。図1は、本発明の錠装置1と、この錠装置1が取り付けられる収納体、すなわちキャビネット2との、錠装置1取り付け前の斜視図、図2は、同じく錠装置1取付後の斜視図である。
【0014】
キャビネット2は、両開き式の扉3、3を備え、その右方の扉3における内側端部の前面に取り付けられた把手取付部材4の凹入部5内には、常時後ろ向きに付勢された把手6が設けられ、この把手6の後面に手を掛けて前方に操作する(引く)ことにより、それに連係されたラッチ機構(図示略)がキャビネット本体の係合部より離脱して、左右の扉3、3を前方に開くことができるようになっている。
【0015】
錠装置1は、図3〜図8にも示すように、扉3の凹入部5及び把手6の前面を余裕をもって覆いうる大きさの横長長方形の本体基部7と、この本体基部7の前面を覆いうる大きさのカバー状の操作部8とを備えている。
【0016】
本体基部7は、合成樹脂により平板状に形成され、後面に貼着した両面接着テープ9をもって、扉3の前面に接着されている。なお、両面接着テープ9に代えて、接着剤や板状のマグネット、あるいはねじ等により取り付けてもよい。本体基部7における凹入部5と対向する部分の右側部には、後述する連係部材17を挿通させるための開口部10が形成されている。
【0017】
操作部8は、合成樹脂により、後面が開放されたケース状に形成され、その左側端部の前面には、側面視前向きコ字状の把持部11が一体的に連設されている。
【0018】
操作部8の右端部に突設した上下1対の後向片12、12を、本体基部7の上縁と下縁に連設された前向片7a、7aの右端部に、上下方向の軸13をもって枢着することにより、操作部8は、本体基部7の前面に、軸13を中心として前方に回動操作しうるように取り付けられている。本体基部7の前面を操作部8により覆った際、それらの対向面間には、周囲が閉塞された空間Sが形成されるようになっている(図3参照)。
【0019】
図3に示すように、本体基部7の左端部の前面には、前面が開口する乾電池の収納ボックス14が設けられ、この収納ボックス14と対向する操作部8の左側部は、収納ボックス14への乾電池の挿脱を容易とするために、左側方にずらして開閉可能なカバー部15となっている。
【0020】
図3及び図4に示すように、操作部8における把手6のやや右方と対向する後面には、平面視外向き倒立L字状断面の取付片16が連設され、この取付片16には、把手6と操作部8とを連係する連係部材17の前端の外向片17aが、ねじ18により固定されている。
【0021】
連係部材17の後端に連設された左側方を向く作動片17bは、把手6の後面に当接または近接し、図4に示すように、把持部11を持って操作部8を前方に回動操作したとき、連係部材17の作動片17bにより把手6が前方に回動させられて、扉3を開くことができるようになっている。
【0022】
操作部8の内部空間には、前記収納ボックス14内の乾電池の電源により作動する電子認証錠19が収容されている。この電子認証錠19と対向する操作部8の前面の中央部には、キャビネット使用者の個人認証情報等を記憶してなる図示しない認証カード等を接触または近づけた際に、電子認証錠19との間で通信を行うカード認証部20が形成されている(図5参照)。なお、この電子認証錠19と、後述する施解錠機構21とにより、操作部8を施解錠する施解錠手段を構成している。
【0023】
電子認証錠19は、CPU、ROM、及びRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータよりなり、前記認証カード等の認証情報を記憶した記憶手段と、認証カード等の認証情報を外部のコンピュータに無線または有線で送信可能な送信手段(いずれも図示略)とを備えている。
【0024】
また、電子認証錠19は、認証カード等の認証情報に基づいて操作部8をロックしたり、ロックを解除したりする施解錠機構21を備えている。この施解錠機構21は、図3、図4の2点鎖線及び図8の後面図に示すように、操作部8側に設けられたソレノイド22と、このソレノイド22により左右方向に進退移動される施解錠レバー23とからなっている。
【0025】
施解錠レバー23の先端部は、ソレノイド22への非通電時において、本体基部7の開口部9に突設された係止片24の後面に当接して係合するか、または近接するようになっている。なお、この例では、ソレノイド22を操作部8側に設けているが、本体基部7側に設けることもできる。この際には、施解錠レバー23を、操作部8の内面に突設した係止片等と係合しうるようにすればよい。
【0026】
次に、前記実施例の錠装置1の動作について説明する。キャビネット2の扉3が閉じられ、錠装置1を操作しないときには、電子認証錠19は作動せず、従ってソレノイド22にも通電されないので、図3及び図8に示すように、施解錠レバー23は突出した状態となり、その先端部が、本体基部7の係止片24の後面に当接して係合するか、または近接する。これにより、操作部8がロックされ、操作部8及びそれに連係部材17を介して連係された把手6が前方に操作されるのが阻止される。
【0027】
この状態で、キャビネット2の使用者が、認証カード等を操作部8の前面のカード認証部20に接触または接近させると、認証カード等に予め記憶された認証情報が電子認証錠19により読み取られ、この電子認証錠19の記憶手段に予め記憶された認証情報と認証カード等の認証情報とが合致したときのみ、ソレノイド22に通電される。これにより、図4及び図8の2点鎖線のように、施解錠レバー23が縮退して、先端部が係止片24より離間することにより、操作部8のロックが解除されて前方に操作可能となる。操作部8を、把持部11に手を掛けて前方に回動操作すると、図4に示すように、連係部材17の作動片17bが前方に移動することにより、把手6が前方に回動させられ、扉3を開くことができる。
【0028】
この際、電子認証錠19は、認証カード等の認証情報を外部のコンピュータに送信可能な送信手段を備えているので、キャビネット2の施解錠や使用履歴等を外部のコンピュータにより管理することができる。特に、複数のキャビネット2に錠装置1を装着すると、複数のキャビネット2の施解錠や使用履歴等を一元的に集中して管理することができる。
【0029】
操作部8を後方に回動させて扉3を閉じたのち、認証カード等を再度カード認証部19に接触または接近させると、ソレノイド22への通電が遮断されて、施解錠レバー23が原位置まで突出することにより、操作部8は自動的にロックされる。なお、操作部8を後方に回動させて扉3を閉じたときから一定時間経過したのち、ソレノイド21への通電を遮断するタイマーを設ければ、万一、認証カード等によるロックを忘れたとしても、操作部8を自動的にロックすることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施例における錠装置1においては、操作部8のロックを解除したのち、操作部8を、把持部11を持って前方に回動操作するだけの一度の動作で、扉3の把手6を回動させて、そのまま扉3を開くことができるので、従来の錠装置に比して操作性が格段に向上する。
【0031】
また、扉3の把手6は、常に操作部8により覆われ、操作部8のロックを解除しない限り、把手6を操作することができないので、従来の錠装置のように、把手が露出して不正に操作される恐れはなく、優れたセキュリティを有する。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
前記実施例の錠装置1は、操作部8を本体基部7とほぼ同じ大きさとして、操作部8全体を前方に回動操作しうるようにしているが、例えば、図9の変形例に示すように、扉3の凹入部5及び把手6の前面を余裕をもって覆いうる大きさの縦長の本体基部25の前面を、周端部を除いて方形に開口し、この開口部26に、前面上部に把持部27を有する操作部28を、右端部の上下1対の軸29、29を中心として、前方に回動操作しうるように嵌合するとともに、操作部28の後面に、把手6の後面に当接する上述と同様の連係部材29を設けた構成とすることもできる。なお、30は、乾電池の収納ボックスを覆うカバー部、31は、カード認証部である。
【0034】
また、前記実施例では、操作部8の施解錠手段を、電子認証錠19と、これの認証情報により作動する、ソレノイド22及び施解錠レバー23よりなる施解錠機構21とからなるものとしたが、鍵錠やダイヤル錠等の機械的な施解錠手段を用いて操作部8を施解錠するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 錠装置
2 キャビネット
3 扉
4 把手取付部材
5 凹入部
6 把手
7 本体基部
7a 前向片
8 操作部
9 両面接着テープ
10 開口部
11 把持部
12 後向片
13 軸
14 収納ボックス
15 カバー部
16 取付片
17 連係部材
17a 外向片
17b 作動片
18 ねじ
19 電子認証錠
20 カード認証部
21 施解錠機構
22 ソレノイド
23 施解錠レバー
24 係止片
25 本体基部
26 開口部
27 把持部
28 操作部
29 軸
30 カバー部
31 カード認証部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納体の扉における把手が取り付けられた把手取付部に後付けして使用される錠装置であって、
前記扉における前記把手取付部の前面に装着される本体基部と、前記本体基部に前方に操作可能として設けられ、少なくとも前記把手を前方より覆いうる大きさの操作部と、前記把手と操作部とに連係され、前記操作部を前方に操作することにより、前記把手を前方に移動させうるようにした連係部材と、前記操作部を操作不能に施錠できるとともに、該操作部を操作可能に解錠できる施解錠手段と、を備えることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記施解錠手段は、ソレノイドにより進退移動させられ、前記本体基部または前記操作部の一部と係合可能な施解錠レバーを備えることを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記施解錠手段は、認証情報に基づいて作動するとともに、該認証情報により前記操作部を施解錠する電子認証錠を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記電子認証錠は、前記認証情報を外部に送信可能な通信手段を有することを特徴とする請求項3に記載の錠装置。
【請求項5】
前記電子認証錠は、予め記憶された前記認証情報に基づいて、前記操作部を施解錠しうる記憶手段を有することを特徴とする請求項3または4に記載の錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96135(P2013−96135A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239692(P2011−239692)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】