説明

録音再生装置

【課題】会議の参加者の着席位置に基づいて直観的に再生チャンネルを選択することができる録音再生装置を提供する。
【解決手段】全周の音声を収音するために3つのマイク12a,12b,12cを120度間隔で設ける。各マイクが収音した音声を3チャンネルで並列に記録する。再生時、通常モードでは3チャンネルの音声を並行して読み出して再生する。方向指定モードでは指定された方向のチャンネルのみを読み出して再生する。このとき方向指定ボタン15−1〜15−6がマイクの周囲に配置されているため、再生チャンネルの選択は、録音時(会議時)の会議参加者の着席位置に基づいて方向指定ボタンを押せばよく直観的な選択が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、会議等の発言等、複数の方向から到来する音声を収音して録音・再生する録音再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
会議の発言を録音し、その後この録音を再生して確認することが一般的に行われている。会議は複数の会議参加者がそれぞれの着席位置から発言するものであるため、特許文献1の装置のようなマルチトラック(マルチチャンネル)レコーダを用いて、複数のマイクで収音した音声をそれぞれ異なるトラック(チャンネル)に記録することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−050161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような録音装置で録音した会議の録音を会議終了後再生するが、再生するとき、全員の発言を通して聴くのではなく特定の会議参加者の発言を確認したい場合がある。しかし、上記構成のマルチトラックレコーダでは、所望の会議参加者の発言がどのトラックに録音されているかが不明であり、これを直観的に知ることができないため、各トラックを再生してみて、所望の会議参加者の発言が録音されているトラックを探さねばならないという問題点があった。
【0005】
この発明は、会議の参加者の着席位置に基づいて直観的に再生トラック(チャンネル)を選択することができる録音再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の録音再生装置は、それぞれ異なる方向に指向特性を有する複数の収音部と、前記複数の収音部が収音した複数の音声信号を並列に記録する記録部と、それぞれ異なる方向を指示する位置に設けられた複数の方向指定操作子と、前記記録部に記憶された音声信号を読み出す再生部であって、前記方向指定操作子の操作によって方向が指定されないときは前記複数の音声信号を並行して読み出し、前記方向指定操作子の操作によって方向が指定されたときは該指定された方向に指向特性を有する収音部が収音した音声信号のみを読み出して再生する再生部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明の録音再生装置が会議の録音に使用される場合、この録音再生装置が会議卓の中央に設置され、会議卓を囲んで会議参加者が着席すると考えられる。録音時、録音再生装置は、それぞれ異なる方向に指向特性を有する複数の収音部が収音した音声を並列に記録する。すなわち、会議参加者の全員の音声をマルチチャンネルで録音する。
【0008】
再生時、録音再生装置は、方向が指定されていないとき(通常モード)は、全チャンネルの音声を読み出し会議全体の音声を再生する。一方、方向が指定されているとき(方向指定モード)は、その指定された方向に指向特性を有する収音部が収音した音声のみを読み出して再生する。これにより、その方向に着席していた参加者の発言のみを確認することができる。
【0009】
この場合において、その方向を指定する方向指定操作子を装置の周囲のその収音方向を指示する位置に設けたことにより、参加者の選択を直感的に行うことが可能になる。すなわち、その参加者が、この装置に対してどの向きに着席していたかを思い出して、その方向を指示する方向指定操作子を操作することで、その参加者の発言を再生することができ、録音チャンネルの選択というような電子機器的なオペレーションが不要になる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記再生部は、前記方向指定操作子によって指定された方向に指向特性を有する収音部がないとき、該指定された方向を挟む複数の方向に指向特性を有する複数の収音部が収音した音声信号を読み出して合成することを特徴とする。
これにより、少ない数の収音部で多くの細かい角度の収音音声の再生が可能になる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1、2の発明において、前記複数の収音部は、所定の円周上に一定の中間角度で法線方向に配列された複数の単一指向性マイクを含み、該複数の単一指向性マイクの周囲に、前記複数の方向指定操作子が配置されていることを特徴とする。
【0012】
このように収音部の周囲に方向指定操作子を配列したことにより、各方向指定操作子がどの方向を指示しているかを直観的に知らせることが可能になる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1、2の発明において、装置本体に対して回動可能なアームをさらに備え、前記複数の収音部の一部、および、前記複数の方向指定操作子の一部が、前記アームに設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明において、前記装置本体と前記アームとの角度を検出する角度センサをさらに備え、前記記録部は、音声信号の記録時の前記角度センサの検出値を記録時角度として記憶し、前記再生部による再生時に、前記角度センサの検出値と前記記録時角度とを比較し、比較結果が不一致であった場合には警告を発する警告手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、それぞれ異なる方向を指示する方向指定操作子を複数設けたことにより、発言を再生したい参加者の選択を直感的に行うことが可能になる。すなわち、その参加者が、この装置に対してどの向きに着席していたかを思い出して、その方向を指定する方向指定操作子を操作することで、その参加者の発言を再生することができ、録音チャンネルの選択というような電子機器的なオペレーションが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施形態である録音再生装置の外観図
【図2】同録音再生装置のブロック図
【図3】同録音再生装置の使用形態の一例および録音形態の一例を示す図
【図4】同録音再生装置の動作を示すフローチャート
【図5】この発明の第2の実施形態である録音再生装置の外観図
【図6】同録音再生装置のブロック図
【図7】同録音再生装置の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照してこの発明の実施形態である録音再生装置について説明する。
図1(A)は、この発明の実施形態である録音再生装置の外観斜視図である。また、同図(B)は、同録音再生装置に設置されているマイク12a,12b,12cの指向特性を示す図である。
【0018】
録音再生装置1は、高さの低い直方体形状の筐体10を有し、この筐体10の上面中央に円筒形の収音塔11を有している。筐体10の1つの側面10aには、スピーカ14が設けられている。以下の説明では、このスピーカ14が設けられている側面10aの方向を正面方向とする。
【0019】
収音塔11の側面には、3つのマイク12a,12b,12cが120度の間隔で設けられている。マイク12aは収音塔11の正面方向に設けられている。マイク12bは収音塔11の正面方向から右120度の方向に設けられている。また、マイク12cは収音塔11の正面方向から左120度の方向に設けられている。各マイク12a,12b,12cは、それぞれ単一指向性マイクであり、収音塔11の中心軸に垂直な方向(法線方向)に向けて設置され、同図(B)の実線円120a,120b,120cで示したような指向特性を有している。円120aはマイク12aの指向特性、円120bはマイク12bの指向特性、円120cはマイク12cの指向特性をそれぞれ表している。各マイク12は、この図に示すように、マイクの正面方向に最大の感度をもち、正面からの角度が深くなるにつれて感度が低下し、真横(正面からの角度が90度)で感度が0になる。
【0020】
3つのマイク12a,12b,12cが収音した音声信号のうち、マイク12aの収音信号とマイク12bの収音信号を加算合成することにより、同図(B)の点線円120dで示したような指向特性で音声を再生することができる。同様に、マイク12bの収音出力とマイク12cの収音出力を加算合成することにより点線円120eに示すような指向特性で音声を再生することができ、マイク12cの収音出力とマイク12aの収音出力を加算合成することにより同図の点線円120fに示すような指向特性で音声を再生することができる。このように単一指向性マイクを120度間隔で3つ設けて収音することにより、ほぼ全周の音声を再生することができる。
【0021】
以下の説明では、指向特性120aの方向を方向1、指向特性120dの方向を方向2、指向特性120bの方向を方向3、指向特性120eの方向を方向4、指向特性120cの方向を方向5、指向特性120fの方向を方向6と呼ぶ。
【0022】
図1(A)において、筐体10の上面には収音塔11の周囲に上に述べた指向性の方向(方向1〜方向6)に合わせて方向指定ボタン15−1〜15−6が設けられている。方向指定ボタン15−1は方向1を指定するボタンスイッチである。同様に、方向指定ボタン15−2は方向2、方向指定ボタン15−3は方向3、方向指定ボタン15−4は方向4、方向指定ボタン15−5は方向5、方向指定ボタン15−6は方向6をそれぞれ指定するボタンスイッチである。録音された音声を再生するとき、ユーザが、方向指定ボタン15で方向を指定すると、この録音再生装置は、その方向から到来した音声のみを選択して再生する。
【0023】
なお、図示しないが、この方向指定ボタン15のほかに録音開始ボタン、録音終了ボタン、録音一時停止ボタン等の録音関係操作子、および、再生ボタン、一時停止ボタン、停止ボタン、巻き戻し/早送りボタン等の再生関係操作子も設けられている。なお、装置にリモコン装置を設け、これら録音関係操作子、再生関係操作子をリモコンに設けるようにしてもよい。
【0024】
図2は同録音再生装置1のブロック図である。マイク12a、12b、12cにはそれぞれアンプ30a、30b、30cおよびA/Dコンバータ31a、31b、31cが接続されている。アンプ30a、30b、30cは、マイク12a、12b、12cが収音した音声信号を増幅する。A/Dコンバータ31a、31b、31cはアンプ30a、30b、30cによって増幅されたマイク12a、12b、12cの収音信号をデジタル音声信号に変換して制御部20に入力する。
【0025】
制御部20はマイコンで構成されており、プログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。制御部20には、機能的に書込部21、チャンネル選択部22、読出部23、ミキシング部24が実現される。これらの詳細は後述する。
【0026】
制御部20には、方向指定ボタン15や録音関係操作子、再生関係操作子等を含む操作部35、ハードディスクまたはフラッシュメモリからなる大容量記憶装置であるストレージ40、および、D/Aコンバータ32が接続されている。ストレージ40には、マイク12a,12b,12cによって収音された音声信号が記録される。D/Aコンバータ32にはアナログのオーディオアンプ33が接続されている。このオーディオアンプ33には、装置の正面側側面10aに設けられているスピーカ14が接続されている。このように、マイク12a、12b、12cを含む録音系統は3系統であるが、スピーカ14を含む再生系統は1系統である。
【0027】
書込部21は、装置が録音状態のときA/Dコンバータ31a、31b、31cから入力された3系統のデジタル音声信号を3チャンネル録音でストレージ40に記録する。
【0028】
なお、以下の説明では、マイク12aが収音した音声信号が記録されるチャンネルをチャンネル1、マイク12bが収音した音声信号が記録されるチャンネルをチャンネル2、マイク12cが収音した音声信号が記録されるチャンネルをチャンネル3と呼ぶ。
【0029】
チャンネル選択部22は、ストレージ40から読み出すチャンネルを選択して読出部23に読み出しの指示をする機能部である。チャンネル選択部22は、方向指定ボタン15で方向が指定されない通常モードの再生時は、チャンネル1、2、3の全チャンネルを選択する。また、方向指定ボタン15で再生方向が指定された方向指定再生モード時には、その指定された方向の音声が記録されているチャンネルを選択する。たとえば、方向指定ボタン15−1の操作によって方向1が指定されると、マイク12aが収音した音声信号が記録されているチャンネル1を選択する。また、方向指定ボタン15−2の操作によって方向2が指定されると、マイク12a、12bが収音した音声信号が記録されているチャンネル1およびチャンネル2を選択する。
【0030】
読出部23は、チャンネル選択部22から指示されたチャンネルのデジタル音声信号をストレージ40から読み出してミキシング部24に入力する。ミキシング部24は、読出部23から入力されたデジタル音声信号が1チャンネル分である場合には、そのデジタル音声信号をそのままD/Aコンバータ32に出力する。また、読出部23から入力されたデジタル音声信号が2チャンネル分または3チャンネル分である場合には、それらのデジタル音声信号をミキシングし、ミキシングされた音声信号をD/Aコンバータ32に入力する。D/Aコンバータ32は、制御部20のミキシング部24から入力されたデジタル音声信号をアナログ信号に変換しアンプ33に入力する。アンプ33は音声信号を増幅してスピーカ14から出力する。
【0031】
この録音再生装置1を会議の録音に使用する場合、複数の参加者の中央に録音再生装置1を設置し、録音ボタンを操作すると、録音再生装置1は、参加者の発言を3チャンネルでストレージ40に記録する。
【0032】
ストレージ40に記録された音声を再生する場合、再生ボタンを操作すると、録音再生装置1は、3チャンネルの音声信号を並行して読み出し、これをミキシングして再生する(通常モード)。このように再生方向を指定しない場合には3チャンネルが並行して読み出され、全周方向から収音した音声をほぼ同じレベルで再生する。一方、利用者が、方向指定ボタン15のいずれか1つを操作すると、録音再生装置1は、指定された方向のチャンネルの音声のみをストレージ40から読み出して再生する。これにより、会議参加者のうち、その方向指定ボタンの方向に着席していた人の発言のみを抽出して再生することができる。
【0033】
ここで、利用者は、録音再生装置1が会議の録音に使用されていたときの配置を思い浮かべて方向指定ボタン15−1〜6を操作することにより、すなわち、録音時の出席者の方向の方向指定ボタン15−1〜6を操作することにより、会議時に出席者がいた方向を指定するという直観的な操作で再生するチャンネルを選択することができる。
【0034】
図3(A)は同録音再生装置1が会議において使用された場合の使用形態を示す図である。また、同図(B)は、会議においてストレージ40に記録された3トラックの録音状態を示す図である。
【0035】
同図(A)において、会議の出席者A、出席者B、出席者C、出席者Dが着席している会議卓の上に録音再生装置が設置されている。録音再生装置は出席者B方向に正面方向を向けて設置されている。したがって、録音再生装置に対して、出席者Aが方向5、出席者Bが方向1、出席者Cが方向3、出席者Dが方向4に位置することになり、出席者Aの発言音声はチャンネル3、出席者Bの発言音声はチャンネル1、出席者Cの発言音声はチャンネル2にそれぞれ録音され、出席者Dの発言音声はチャンネル2とチャンネル3にまたがって録音される。
【0036】
議長である出席者Aが「この件はいかがですか?」と質問したのに対して、出席者Bが「A案の方がよいのでは」と発言し、出席者Cが「いやいやB案のほうがいいですよ〜」と発言し、さらに、出席者Dが「私は練り直しが必要だと思う!」と発言している。それぞれの発言は、前の発言が終了するのを待たずに発せられ、同図(B)に示すように、各発言は重なっている。
【0037】
このように記録された音声信号を通常モードで再生すると、全チャンネルすなわち全出席者の発言が同じ条件で再生され、会議場全体の雰囲気はわかるものの各出席者の発言が重なって聞こえる。同図(B)において、t1の箇所の再生中に、利用者が、方向1を指定する方向指定ボタン15−1をオンすると、再生チャンネルがチャンネル1すなわち方向1のみに切り換わり、方向1に着席している出席者Bのみの音声が再生される。そしてこのとき、再生位置がこの発言の先頭であるT1まで巻き戻される。これにより、確認したい発言を先頭から聞き直すことができる。発言の先頭位置は音量等に基づいて検出すればよい。
【0038】
また、t2で方向4を指定する方向指定ボタン15−4がオンされた場合も同様である。すなわち、再生チャンネルがチャンネル2、3すなわち方向4に切り換わり、方向4に着席している出席者Dのみの音声が再生される。そしてこのとき、再生位置がこの発言の先頭であるT2まで巻き戻される。
【0039】
図4は、同録音再生装置の制御部の動作を示すフローチャートである。同図(A)は再生ボタンがオンされたときの動作を示し、同図(B)は方向指定ボタンのいずれかがオンされたときの動作を示している。まず、図4(A)において、再生ボタンがオンされると、現在再生動作中であるか否かを判断する(S1)。再生動作中でなければ(S1でNO)、通常モードである全周方向の再生動作を開始する(S2)。すなわち、読出部23が、3チャンネルに記録されているデジタル音声信号を並行して読み出し、ミキシング部24に入力する。ミキシング部24はこれらのデジタル音声信号を合成してD/Aコンバータ32に出力する。D/Aコンバータ32は、入力されたデジタル音声信号をアナログの音声信号に変換してオーディオアンプ33に入力する。オーディオアンプ33は、入力されたアナログの音声信号を増幅してスピーカ14に入力する。スピーカ14は、入力されたアナログの音声信号を音響として放音する。
【0040】
再生ボタンがオンされたとき再生動作中であった場合には(S1でYES)、その再生動作が通常モードの全周方向の再生であるか、指定方向のチャンネルのみの再生であるかを判断し(S3)、指定方向のチャンネルのみの再生である場合には(S3でNO)、全周方向の再生動作に動作を切り換える(S4)。全周方向再生中の場合には(S3でYES)何もしないで動作を終了する。
【0041】
図4(B)において、方向指定ボタン15−1〜6のいずれかがオンされると、現在再生動作中であるか否かを判断する(S5)。再生動作中でなければ(S5でNO)、オンされた方向指定ボタンで指定される方向(指定方向)のチャンネルのみの再生を開始する(S6)。方向指定ボタンがオンされたとき再生動作中であった場合には(S5でYES)、その指定方向の直前の発言の先頭をサーチして巻き戻し(S7)、巻き戻した位置から、その指定方向のチャンネルのみの再生を開始する(S8)。
【0042】
なお、ユーザによって、一時停止ボタンがオンされた場合には、そのときの位置・そのときの状態で動作を停止する。停止ボタンがオンされた場合または録音が終了した場合には、このルーチンから抜けて動作を終了する。
【0043】
図5(A)、(B)は、この発明の第2実施形態である録音再生装置の外観構成を示す図である。同図(A)は、同録音再生装置のアーム51,52を開いた状態を示す外観図であり、同図(B)は、同録音再生装置のアーム51,52を閉じた状態を示す外観図である。
【0044】
同図(A)において、この録音再生装置は、三角柱状の筐体50に2本のアーム51,52を備えた構成になっている。筐体50の正面側の側面50aに単一指向性のマイク55−1が設けられ、筐体50の上面にはこのマイク55−1の指向方向を指定する方向指定ボタン56−1およびスピーカ53が設けられている。
【0045】
また、正面側側面50aの両端部にヒンジ(不図示)を介してアーム51,52が回動自在に取り付けられている。アーム51の側面には単一指向性のマイク55−2が設けられ、アーム51の上面にはこのマイク55−2の指向方向を指定する方向指定ボタン56−2が設けられている。アーム52の側面には単一指向性のマイク55−3が設けられ、アーム52の上面にはこのマイク55−3の指向方向を指定する方向指定ボタン56−3が設けられている。
【0046】
設置時にアーム51、52を回動させることにより、3つのマイク55−1〜3をそれぞれ所望の方向に向けることができる。アーム51,52を支持するヒンジには角度センサ41,42(図6参照)が設けられており、録音時には、マイク55−1〜3が収音した音声信号がストレージ40に記録されるとともに、そのときの角度センサ41,42の検出値すなわちアーム51,52の角度も記録される。
【0047】
図6は、同録音再生装置のブロック図である。この図において、図2に示したブロック図と同一構成の部分は同一番号を付して説明を省略する。この録音再生装置において、図1〜4に示した第1の実施形態の録音再生装置と異なる点は、上記の角度センサ41,42およびこの角度センサ41,4 2の検出値をデジタルデータ化するA/Dコンバータ43を設け、角度センサ41,42の検出値 (デジタルデータ)を制御部20に入力している点、および、制御部20に角度比較部25を設けた点、および、制御部20からの出力先としてアラーム部45を備えた点である。
【0048】
角度比較部25は、操作部35の再生ボタンがオンされるとストレージ40に記録されている角度センサ41,42の角度検出値(録音時角度)と現在角度センサ41,42から入力されている角度検出値(現在角度)とを比較する。録音時角度と現在角度とが一致した場合には、再生をスタートさせる。一方、両者が不一致だった場合には、アラーム部45を駆動して、アーム51,52の角度を変更するように利用者に促す。アラームは、アーム51の現在角度が狭すぎるとき/広すぎるとき、および、アーム52の現在角度が狭すぎるとき/広すぎるときに発せられる。
【0049】
図7は、同録音再生装置の再生時の動作を示すフローチャートである。同図(A)は再生ボタンがオンされたときの動作を示し、同図(B)は方向指定ボタンのいずれかがオンされたときの動作を示している。まず、図7(A)において、再生ボタンがオンされると、現在再生動作中であるか否かを判断する(S11)。再生動作中でなければ(S11でNO)、角度センサ41,42の現在の検出値(現在角度)を読み取り、この現在角度とストレージ40に記録されている記録時角度とを比較し(S12)、一致しているか否かを判定する(S13)。比較結果が一致した場合(S13でYES)には、通常モードである全周方向の再生動作を開始する(S15)。一方、比較結果が不一致であった場合には(S13でNO)、アーム51,52の角度変更を促すアラームを出力して(S14)、再生を開始せずに動作を終了する。
【0050】
再生ボタンがオンされたとき再生動作中であった場合には(S11でYES)、その再生動作が通常モードの全周方向の再生であるか、指定方向のチャンネルのみの再生であるかを判断する(S16)。指定方向のチャンネルのみの再生である場合には(S16でNO)、全周方向の再生動作に動作を切り換える(S17)。全周方向再生中の場合には(S16でYES)何もしないで動作を終了する。
【0051】
図7(B)において、方向指定ボタン15−1〜6のいずれかがオンされると、現在再生動作中であるか否かを判断する(S21)。再生動作中でない場合には(S21でNO)、角度センサ41,42の現在の検出値(現在角度)を読み取り、この現在角度とストレージ40に記録されている記録時角度とを比較し(S22)、一致しているか否かを判定する(S23)。比較結果が一致した場合(S23でYES)には、オンされた方向指定ボタンで指定される方向(指定方向)のチャンネルのみの再生を開始する(S25)。一方、比較結果が不一致であった場合には(S23でNO)、アーム51,52の角度変更を促すアラームを出力して(S24)、再生を開始せずに動作を終了する。
【0052】
方向指定ボタンがオンされたとき再生動作中であった場合には(S21でYES)、その指定方向の直前の発言の先頭をサーチして巻き戻し(S26)、巻き戻した位置から、その指定方向のチャンネルのみの再生を開始する(S27)。
【0053】
また、図4のフローチャートと同様に、ユーザによって、一時停止ボタンがオンされた場合には、そのときの位置・そのときの状態で動作を停止する。停止ボタンがオンされた場合または録音が終了した場合には、このルーチンから抜けて動作を終了する。
【0054】
録音時と同じ設置形態で再生することにより、録音時の参加者の配置に基づいて再生方向を選択することができ、録音チャンネルと会議の参加者との対応づけ等が必要でなく、録音チャンネル(参加者)の選択が容易である。
【0055】
なお、この実施形態では、録音再生装置を会議における発言の録音・再生に用いる例について説明したが、この録音再生装置の用途は会議に限定されない。
【0056】
また、この実施形態では本発明の収音部を単一指向性マイクで実現しているが、収音部はこれに限定されない。たとえば、特開2007−256498号公報に示すようなマイクアレイを用い、複数の収音ビームで複数の収音部を実現してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 録音再生装置
10 筐体
10a 正面側の側面
11 収音塔
12a〜c マイク
14 スピーカ
15−1〜6 方向指定ボタン
50 筐体
51、52 アーム
55−1〜3 マイク
56−1〜3 方向指定ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる方向に指向特性を有する複数の収音部と、
前記複数の収音部が収音した複数の音声信号を並列に記録する記録部と、
それぞれ異なる方向を指示する位置に設けられた複数の方向指定操作子と、
前記記録部に記憶された音声信号を読み出す再生部であって、前記方向指定操作子の操作によって方向が指定されないときは、前記複数の音声信号を並行して読み出し、前記方向指定操作子の操作によって方向が指定されたときは、該指定された方向に指向特性を有する収音部が収音した音声信号のみを読み出して再生する再生部と、
を備えた録音再生装置。
【請求項2】
前記再生部は、前記方向指定操作子によって指定された方向に指向特性を有する収音部がないとき、該指定された方向を挟む複数の方向に指向特性を有する複数の収音部が収音した音声信号を読み出して合成する請求項1に記載の録音再生装置。
【請求項3】
前記複数の収音部は、所定の円周上に一定の中間角度で法線方向に配列された複数の単一指向性マイクを含み、
該複数の単一指向性マイクの周囲に、前記複数の方向指定操作子が配置されている
請求項1または請求項2に記載の録音再生装置。
【請求項4】
装置本体に対して回動可能なアームをさらに備え、
前記複数の収音部の一部、および、前記複数の方向指定操作子の一部が、前記アームに設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の録音再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−74827(P2010−74827A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191242(P2009−191242)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】