鍵盤装置
【課題】 発光素子の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ると共に、電子回路の簡素化を図り、装置全体の低コスト化を図ることができる鍵盤装置を提供する。
【解決手段】 鍵盤シャーシ6上に光透過性を有する複数の鍵7を配列させてそれぞれ上下方向に回転可能に設け、この複数の鍵7にその下側から複数の発光素子31、41によって光をそれぞれ照射すると共に、各鍵7の押鍵操作に応じて各発光素子31、41を複数のガイド部32、42によって各鍵7の前後方向にそれぞれ変位させる。従って、鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて発光素子31、41を鍵7の前後方向に変位させることができるので、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つに鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。
【解決手段】 鍵盤シャーシ6上に光透過性を有する複数の鍵7を配列させてそれぞれ上下方向に回転可能に設け、この複数の鍵7にその下側から複数の発光素子31、41によって光をそれぞれ照射すると共に、各鍵7の押鍵操作に応じて各発光素子31、41を複数のガイド部32、42によって各鍵7の前後方向にそれぞれ変位させる。従って、鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて発光素子31、41を鍵7の前後方向に変位させることができるので、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つに鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、更に詳しくは演奏に応じて各鍵が順次発光する鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵をそれぞれ上下方向に回転可能に設けると共に、この鍵盤シャーシ上に複数の発光素子を各鍵に対応させて配置し、この複数の発光素子によって各鍵にその下側から光をそれぞれ照射することにより、押鍵操作すべき鍵を光らせて指示するナビケーション機能を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−122350号公報
【0004】
このような鍵盤装置では、押鍵操作すべき鍵を1つの発光素子で照明する構成であると、押鍵操作すべき鍵が押鍵された際に、演奏者の指によって鍵の照明箇所が隠れてしまうため、従来の鍵盤装置では、1つの鍵に対して2つの発光素子を鍵の前後方向に離して配置し、鍵が押鍵された際に2つの発光素子を切り替えて発光させることにより、鍵が押鍵されても、鍵の照明箇所が演奏者の指によって隠れないように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置では、鍵盤シャーシ上に1つの鍵に対して2つの発光素子をそれぞれ設けなければならないため、発光素子の個数が増大し、部品点数が多くなり、組立作業が煩雑になるばかりか、押鍵操作に応じて2つの発光素子を切り替えて発光させるための切り替え手段が必要となるため、電子回路全般の制御が煩雑になると共に、電子回路が複雑になり、装置全体のコストが高くなるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、発光素子の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ると共に、電子回路の簡素化を図り、装置全体の低コスト化を図ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に配列されてそれぞれ上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する複数の光源と、前記鍵の押鍵操作に応じて前記光源を前記鍵の前後方向にそれぞれ変位させる複数の変位部とを備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲可能に設けられ、且つ前記複数の光源をそれぞれ支持する複数の可動支持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記可動支持部材が、前記鍵盤シャーシ上に起立して設けられた固定基板と、前記光源が設けられた可動基板と、この可動基板を前記固定基板に対して前記鍵の前後方向に傾き可能に連結する連結部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記可動支持部材が、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲するフレキシブルな配線基板であることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記複数の変位部が、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記鍵の押鍵操作に応じて前記複数の可動支持部材をそれぞれガイドしながら前記鍵の前後方向に傾ける複数のガイド部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、鍵が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて光源を鍵の前後方向に変位させることができるので、1つに鍵に対して複数の発光素子を配置する必要がなく、1つの鍵に対して1つの発光素子を配置するだけで、演奏者の指によって鍵の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵の照明箇所を視認することができる。このため、発光素子の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図り、装置全体の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態を示した平面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図3】図2に示された白鍵を示し、(a)はその白鍵の拡大断面図、(b)はその白鍵の拡大底面図である。
【図4】図2に示された黒鍵を示し、(a)はその黒鍵の拡大断面図、(b)はその黒鍵の拡大底面図である。
【図5】図2に示された鍵盤シャーシにおける白鍵用の発光素子および黒鍵用の発光素子の各要部を示した拡大平面図である。
【図6】図2に示された電子鍵盤楽器における白鍵用の発光素子を支持する可動支持部材である第1基板を示し、(a)はその第1基板の拡大側面図、(b)はその第1基板を右側から見た拡大背面図である。
【図7】図2に示された電子鍵盤楽器における黒鍵用の発光素子を支持する可動支持部材である第2基板を示し、(a)はその第2基板の拡大側面図、(b)はその第2基板を右側から見た拡大背面図である。
【図8】図2に示された電子鍵盤楽器における要部を示した拡大断面図である。
【図9】図8に示された電子鍵盤楽器において、各発光素子によって鍵が照明されて光っている箇所を示した要部の拡大平面図である。
【図10】図8に示された電子鍵盤楽器において、白鍵が押鍵された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図11】図10に示された電子鍵盤楽器において、発光素子によって白鍵が照明されて光っている箇所がずれた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図12】図8に示された電子鍵盤楽器において、黒鍵が押鍵された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図13】図12に示された電子鍵盤楽器において、発光素子によって黒鍵が照明されて光っている箇所がずれた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図14】この発明を適用した電子鍵盤楽器において、発光素子を支持する可動支持部材の変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図13を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1の手前側(図1では下部側)には、鍵盤部2が設けられており、この楽器本体1における鍵盤部2の後部側(図1では上部側)には、スピーカ部3、表示部4、およびスイッチ部5が設けられている。
【0015】
スピーカ部3は、楽音を発音するためのものであり、図1に示すように、鍵盤部2の後部側(図1では上部側)に位置する楽器本体1の両側に設けられている。表示部4は、楽音情報を表示するものであり、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1の中間部に設けられている。スイッチ部5は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1における両側のスピーカ部3の間に表示部4を除いて分散して設けられている。
【0016】
鍵盤部2は、図1および図2に示すように、下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる多数の鍵7が配列された構成になっている。鍵盤シャーシ6は、図2に示すように、その前部側(図2では左側部)に白鍵7aの前端部における下部側を覆う前カバー部8が形成されている。この前カバー部8の後側下部(図2では右側下部)には、白鍵7aの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる白鍵ストッパ部9が設けられている。
【0017】
この白鍵ストッパ部9の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、白鍵7aの内部に挿入して白鍵7aの横振れを防ぐための白鍵ガイド部10が上方に突出して設けられている。この白鍵ガイド部10の後部には、後述する白鍵用の第1基板搭載部11が設けられている。この第1基板搭載部11の後方には、黒鍵7bの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる黒鍵ストッパ部12が設けられている。
【0018】
この黒鍵ストッパ部12の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、後述する黒鍵用の第2基板搭載部13が上方に位置して設けられている。この黒鍵用の第2基板搭載部13における前側(図2では左側)の上部下面には、白鍵7aおよび黒鍵7bの各上限位置を規制するためのフェルトなどからなる上限ストッパ部14が設けられている。また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の下端部および黒鍵ストッパ部12の下端部には、その両者に亘って底蓋13aがビス13bによって開閉可能に取り付けられている。
【0019】
また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、黒鍵7bの内部に挿入して黒鍵7bの横振れを防ぐための黒鍵ガイド部15が上方に突出して設けられている。この黒鍵ガイド部15の後端下部には、スイッチ基板16が設けられている。さらに、鍵盤シャーシ6の後端部には、各鍵7の後端部(図2では右端部)を支持する鍵支持部17が上方に位置して設けられている。
【0020】
一方、複数の鍵7のうち、複数の白鍵7aは、それぞれ光透過性を有する白色の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、その内部が中空状に形成されている。この白鍵7aは、その後端部(図3(a)では右端部)に複数の白鍵7aの配列方向(図3(b)では上下方向)に沿って各白鍵7aを順次連結する共通連結部18が形成されていると共に、この共通連結部18に各白鍵7aをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部19が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0021】
また、複数の黒鍵7bも、白鍵7aと同様、それぞれ光透過性を有する黒色の合成樹脂からなり、図2および図4に示すように、その内部が中空状に形成されている。この黒鍵7bも、その後端部(図4(a)では右端部)に複数の黒鍵7bの配列方向(図4(b)では上下方向)に沿って各黒鍵7bを順次連結する共通連結部20が形成されていると共に、この共通連結部20に各黒鍵7bをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部21が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0022】
これにより、複数の鍵7は、図2に示すように、白鍵7aの共通連結部18を黒鍵7bの共通連結部20上に重ね合わせ、この状態で両者の共通連結部18、20を鍵盤シャーシ6の後端部に設けられた鍵支持部17上に取り付けることにより、図1および図2に示すように、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bが鍵盤シャーシ6上に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0023】
このため、複数の鍵7は、図2に示すように、複数の白鍵7aがそれぞれ押鍵された際に、複数の白鍵7aが各屈曲部19の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位すると共に、複数の黒鍵7bがそれぞれ押鍵された際に、複数の黒鍵7bが各屈曲部21の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位するように構成されている。
【0024】
また、これら白鍵7aおよび黒鍵7bには、図2に示すように、それぞれスイッチ押圧部22がスイッチ基板16上の各ゴムスイッチ23に対応して設けられている。このスイッチ押圧部22は、白鍵7aおよび黒鍵7bが押鍵された際に、スイッチ基板16上に設けられた各ゴムスイッチ23を押圧するように構成されている。
【0025】
この場合、ゴムスイッチ23は、図2に示すように、白鍵7aおよび黒鍵7bの各スイッチ押圧部22に対応してそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ23は、ゴムシートにドーム状の膨出部を形成してスイッチ基板16上に配置され、この状態で膨出部が押圧されると、ドーム状の膨出部が弾性変形し、その内部に設けられた可動接点がスイッチ基板16上に設けられた固定接点に接触することにより、押鍵操作に応じてスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0026】
ところで、鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11には、図2、図5および図8に示すように、基板取付部材24が取り付けられている。この基板取付部材24は、アルミニウムなどの金属または硬質の合成樹脂によって形成されている。この基板取付部材24には、図8に示すように、白鍵用の第1基板25が白鍵7aの後側(図8では右側)に向けて少し傾いた状態で起立して取り付けられている。
【0027】
この基板取付部材24は、図2および図8に示すように、鍵盤シャーシ6上にビス24aによって取り付けられる固定部26と、白鍵7aに向けて傾斜した状態で起立する取付部27とを備え、これらがほぼL字形状に折り曲げられた状態で一体に形成されている。この場合、固定部26および取付部27は、図5に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されている。
【0028】
また、取付部27は、図5および図8に示すように、固定部26に対して所定角度(例えば、約80度)だけ、白鍵7aの後方(図8では右側)に向けて傾いた状態で固定されている。この傾いた状態の取付部27の前面(図4では左側面)には、第1基板25がビス27aによって取り付けられている。このビス27aは、固定部27を固定するビス24aに対して白鍵7aの配列方向に位置がずれた状態で取り付けられるように構成されている。
【0029】
また、この第1基板25は、図6および図8に示すように、固定基板28と複数の可動基板29とを備え、この固定基板28と複数の可動基板29とをそれぞれ屈曲可能に連結する連結部材である複数のフレキシブルな配線基板30によって白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)に向けてそれぞれ傾くように構成されている。固定基板28は、図6(a)および図6(b)に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って連続する帯板状に形成され、図示しない接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。
【0030】
複数の可動基板29は、図6および図8に示すように、各白鍵7aの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する板状のものであり、固定基板28の上端部にフレキシブルな配線基板30によって白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾き可能に取り付けられている。この複数の可動基板29の各上部前面(図8では左側面)には、各白鍵7aの前側内部に光を照射する白鍵用の発光素子31がそれぞれ設けられている。
【0031】
複数の配線基板30は、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。これにより、複数の配線基板30は、図6および図8に示すように、それぞれ固定基板28と複数の可動基板29とを電気的に接続するように構成されている。また、この複数の配線基板30は、固定基板28と複数の可動基板29との間に対応する部分が屈曲することにより、固定基板28に対して各可動基板29を白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾けるように構成されている。
【0032】
この場合、白鍵7aには、図3(b)および図8に示すように、白鍵7aの押鍵操作に応じて白鍵用の発光素子31を白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)に変位させるための変位部であるガイド部32が設けられている。この白鍵用のガイド部32は、図2および図8に示すように、可動基板29を白鍵7aの後方(図8では右側)に傾けるための前側ガイドリブ33と、可動基板29を初期状態に戻すための後側ガイドリブ34とを備えている。
【0033】
すなわち、この白鍵用のガイド部32は、図3(b)に示すように、白鍵7aの前部側に位置する両側部に、その白鍵7aの内部に向けてそれぞれ突出して設けられている。これにより、白鍵用のガイド部32は、図8に示すように、前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34との間に、第1基板25の可動基板29における上部の両端を上下方向に移動可能に挟み込むように構成されている。
【0034】
この場合、前側ガイドリブ33は、図8に示すように、第1基板25の可動基板29における上部の前面側(図8では左面側)に位置する白鍵7a内の箇所に垂下され、白鍵7aが押鍵された際に、図10に示すように、前側ガイドリブ33の下端部が発光素子31を避けて可動基板29の前側面(図8では左側面)に当接することにより、フレキシブルな配線基板30を屈曲させて可動基板29を白鍵7aの後方(図8では右側)に傾けるように構成されている。
【0035】
また、後側ガイドリブ34は、図8に示すように、第1基板25の可動基板29における上部の後面(図8では右側面)に位置する白鍵7a内の下部に設けられ、常に可動基板29の後面(図8では右側面)が摺動可能に当接することにより、可動基板29が白鍵7aの後側への傾きを規制するように構成されている。すなわち、この後側ガイドリブ34は、白鍵7aが押鍵されて前側ガイドリブ33によって可動基板29が後側に傾く際に、図10に示すように、後側ガイドリブ34の上端部が可動基板29を支持して可動基板29の後方への傾きを規制するように構成されている。
【0036】
この場合、後側ガイドリブ34は、図8に示すように、その上端部が前側ガイドリブ33の下端部とほぼ同じ高さに位置し、押鍵操作に応じて下側に移動する際に、可動基板29の上端部を白鍵7aの上部後方に向けて移動させるために、後側ガイドリブ34の上端部と白鍵7aの内部上部との間に隙間が形成された構成になっている。このため、白鍵7aを成形する成形用金型(図示せず)は、スライドコアを用いることにより、後側ガイドリブ34の上端部と白鍵7aの内部上部との間の隙間を形成するように構成されている。
【0037】
これにより、白鍵用のガイド部32は、図8に示すように、白鍵7aが押鍵操作されていない初期状態のときに、前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34との間に第1基板25の可動基板29における上部の両端を保持して、可動基板29を白鍵7aの後方に少し傾けた状態で起立させることにより、図9に示すように、発光素子31の光を白鍵7aの前部側に照射させて白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。
【0038】
また、このガイド部32は、図10に示すように、白鍵7aが押鍵操作された際に、可動基板29における上部の両端を後側ガイドリブ34に沿ってガイドしながら相対的に上方に移動させると共に、前側ガイドリブ33の下端部が可動基板29の前側面に当接して可動基板29を押し下げることにより、フレキシブルな配線基板30を屈曲させて可動基板29を白鍵7aの後方に向けて傾け、発光素子31を白鍵7aの後方に移動させるように構成されている。これにより、発光素子31は、図11に示すように、白鍵7aに光を照射する照射領域E1が白鍵7aの前部から少し後方に移動するように構成されている。
【0039】
さらに、このガイド部32は、図10に示す状態で、押鍵された白鍵7aが屈曲部19を中心に回転して初期位置に戻る際に、白鍵7aと共に後側ガイドリブ34が上方に移動しながら可動基板29の後面を押し上げることにより、屈曲した配線基板30を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板29を白鍵7aの前方に向けて起立するように傾け、発光素子31を白鍵7aの前方に移動させるように構成されている。
【0040】
この場合、ガイド部32の前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34とには、第1基板25の可動基板29を円滑にガイドするために、グリスなどの潤滑剤が塗布されていることが望ましい。また、第1基板25の固定基板28が取り付けられる基板取付部材24の取付部27には、図2および図8に示すように、第1基板25の可動基板29が白鍵7aの前側への傾きを規制するストッパ片27bが設けられている。
【0041】
一方、鍵盤シャーシ6の第2基板搭載部13には、図2および図8に示すように、黒鍵用の第2基板35が起立するように取り付けられている。この場合、第2基板搭載部13は、第2基板35が挿入する凹溝形状に形成され、この凹溝形状内における前側(図8では左側)の内面が後下り(図8では右下り)に傾斜し、その後側(図8では右側)の内面にリブ部36が設けられた構成になっている。このリブ部36には、ワッシャなどの押え板37がビス37aによって取り付けられている。
【0042】
これにより、第2基板搭載部13は、図8に示すように、黒鍵用の第2基板35が前側内面とリブ部36との間に上方から挿入された状態で、リブ部36に押え板37がビス37aによって取り付けられると、この押え板37の端部によって第2基板35が前側内面に押し付けられることにより、この前側内面によって第2基板35を前側に傾けた状態で、第2基板35が固定されるように構成されている。
【0043】
この第2基板35も、第1基板25と同様、固定基板38と複数の可動基板39とを備え、図7および図8に示すように、固定基板38と複数の可動基板39とをそれぞれ屈曲可能に連結する連結部材である複数のフレキシブルな配線基板40によって黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)に向けてそれぞれ傾くように構成されている。
【0044】
固定基板38は、図7(b)に示すように、黒鍵7bの配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。この固定基板38は、図2および図8に示すように、第2基板搭載部13の押え板35によって第2基板35が前側内面に押し付けられることにより、この前側内面によって前側に傾いた状態で固定されている。この固定基板38も、図示しない接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。
【0045】
複数の可動基板39は、図7および図8に示すように、各黒鍵7bの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する板状のものであり、固定基板38の上端部にフレキシブルな配線基板40によって黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾き可能に取り付けられている。この複数の可動基板39における各上部前面(図8では左側面)には、各黒鍵7bの前側内部に光を照射する黒鍵用の発光素子41がそれぞれ設けられている。
【0046】
複数の配線基板40も、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。これにより、複数の配線基板40は、図7および図8に示すように、それぞれ固定基板38と複数の可動基板39とを電気的に接続するように構成されている。また、この複数の配線基板40は、固定基板38と複数の可動基板39との間に対応する部分が屈曲することにより、固定基板38に対して各可動基板39を黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾けるように構成されている。
【0047】
この場合、黒鍵7bには、図4(b)および図8に示すように、黒鍵7bの押鍵操作に応じて黒鍵用の発光素子41を黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)に変位させるための変位部であるガイド部42が設けられている。この黒鍵用のガイド部42は、図2および図8に示すように、可動基板39を黒鍵7bの後方(図8では右側)に傾けるための前側ガイドリブ43と、可動基板39を初期状態に戻すための後側ガイドリブ44とを備えている。
【0048】
すなわち、この黒鍵用のガイド部42は、図4(b)に示すように、黒鍵7bの前部側に位置する両側部に、その黒鍵7bの内部に向けてそれぞれ突出して設けられている。これにより、黒鍵用のガイド部42は、図8に示すように、前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44との間に、第2基板35の可動基板39における上部の両端を上下方向に移動可能に挟み込むように構成されている。
【0049】
この場合、前側ガイドリブ43は、図8に示すように、第2基板35の可動基板39における上部の前面側(図8では左面側)に位置する黒鍵7b内の箇所に垂下され、黒鍵7bが押鍵された際に、図12に示すように、前側ガイドリブ43の下端部が発光素子41を避けて可動基板39の前側面(図12では左側面)に当接することにより、フレキシブルな配線基板40を屈曲させて可動基板39を黒鍵7bの後方(図12では右側)に傾けるように構成されている。
【0050】
また、後側ガイドリブ44は、図8に示すように、第2基板35の可動基板39における上部の後面(図8では右側面)に位置する黒鍵7b内の下部に設けられ、常に可動基板39の後面(図8では右側面)が摺動可能に当接することにより、可動基板39が黒鍵7bの後側への傾きを規制するように構成されている。すなわち、この後側ガイドリブ44は、黒鍵7bが押鍵されて前側ガイドリブ43によって可動基板39が後側に傾く際に、図12に示すように、後側ガイドリブ44の上端部が可動基板39を支持して可動基板39の後方への傾きを規制するように構成されている。
【0051】
この場合にも、後側ガイドリブ44は、図8に示すように、その上端部が前側ガイドリブ43の下端部とほぼ同じ高さに位置し、押鍵操作に応じて下側に移動する際に、可動基板39の上端部を黒鍵7bの上部後方に向けて移動させるために、後側ガイドリブ44の上端部と黒鍵7bの内部上部との間に隙間が形成された構成になっている。
【0052】
また、前側ガイドリブ43も、図8に示すように、その上端部と黒鍵7bの内部上部との間に隙間が形成されている。このため、黒鍵7bを成形する成形用金型(図示せず)も、スライドコアを用いることにより、前後の各ガイドリブ43、44の各上端部と黒鍵7bの各内部上部との間の各隙間をそれぞれ形成するように構成されている。
【0053】
これにより、黒鍵用のガイド部42は、図8に示すように、黒鍵7bが押鍵操作されていない初期状態のときに、前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44との間に第2基板35の可動基板39における上部の両端を保持して、可動基板39を黒鍵7bの後方に少し傾けた状態で起立させることにより、図9に示すように、発光素子41の光を黒鍵7bの前部側に照射させて黒鍵盤7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0054】
また、このガイド部42は、図12に示すように、黒鍵7bが押鍵操作された際に、可動基板39における上部の両端を後側ガイドリブ44に沿ってガイドしながら相対的に上方に移動させると共に、前側ガイドリブ43の下端部が可動基板39の前側面に当接して可動基板39を押し下げることにより、フレキシブルな配線基板40を屈曲させて可動基板39を黒鍵7bの後方に向けて傾け、発光素子41を黒鍵7bの後方に移動させるように構成されている。これにより、発光素子41は、図13に示すように、黒鍵7bに光を照射する照射領域E2が黒鍵7bの前部から少し後方に移動するように構成されている。
【0055】
さらに、このガイド部42は、図12に示す状態で、押鍵された黒鍵7bが屈曲部21を中心に回転して初期位置に戻る際に、黒鍵7bと共に後側ガイドリブ44が上方に移動しながら可動基板39の後面を押し上げることにより、屈曲した配線基板40を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板39を黒鍵7bの前方に向けて起立するように傾け、発光素子41を黒鍵7bの前方に移動させるように構成されている。
【0056】
この場合にも、黒鍵用のガイド部42の前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44とには、第2基板35の可動基板39を円滑にガイドするために、グリスなどの潤滑剤が塗布されていることが望ましい。また、第2基板35の固定基板38が取り付けられる第2基板搭載部13の前側上部には、図2および図8に示すように、第2基板35の可動基板39が黒鍵7bの前側への傾きを規制する複数のストッパリブ13cがそれぞれ起立した状態で設けられている。
【0057】
ところで、白鍵用の発光素子31および黒鍵用の発光素子41は、それぞれほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面のみから光を発光する側面発光ダイオードである。この発光素子31、41は、ほぼ直方体のチップ形状に形成されていることにより、図2および図8に示すように、その後面(図2では右側面)が第1、第2の各基板25、35における各可動基板29、39の各上部前面(図2では左側面)に密着して半田などで電気的に接続された状態で平面実装されている。
【0058】
これにより、白鍵用の発光素子31は、その一側面である上面から光を発すると、図8に示すように、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、図9に示すように、白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。また、黒鍵用の発光素子41は、白鍵用の発光素子31と同様、その一側面である上面から光を発すると、図8に示すように、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、図9に示すように、黒鍵7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0059】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、その演奏に応じて各鍵7を押鍵する際に、その押鍵すべき鍵7に対応する発光素子31、41を順次発光させて、押鍵すべき鍵7を順次光らせる。例えば、押鍵すべき鍵7が複数の白鍵7aのいずれかである場合には、その白鍵7aに対応する発光素子31を発光させる。すると、その発光素子31の光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせる。
【0060】
また、押鍵すべき鍵7が複数の黒鍵7bのいずれかである場合には、その黒鍵7bに対応する発光素子41を発光させる。すると、その発光素子41の光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせる。これにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵7を順次光らせることができるので、演奏者が初心者であっても、良好に演奏することができる。
【0061】
このように、押鍵すべき鍵7が光っている状態で、各鍵7を演奏者が指で押鍵する際には、その押鍵操作に応じて各発光素子31、41による光の照射領域E1、E2がずれ、各鍵7の光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。例えば、複数の鍵7のうち、白鍵7aを押鍵操作すると、図10に示すように、押鍵された白鍵7aと共にガイド部33の後側ガイドリブ34に沿って可動基板29の上端部がガイドされながら相対的に上方に移動する。
【0062】
このときには、白鍵7aに設けられたガイド部33の前側ガイドリブ33の下端部が可動基板29の前側面に上方から当接して可動基板29を押し下げる。これにより、フレキシブルな配線基板30が屈曲して、図10に示すように、可動基板29を白鍵7aの後方に向けて傾ける。このため、発光素子31が白鍵7aの後方に移動し、図11に示すように、発光素子31による光の照射領域E1が白鍵7aの後方にずれ、このずれた照射領域E1の箇所を光らせる。これにより、光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0063】
また、図10に示す状態で、押鍵された白鍵7aが屈曲部19を中心に回転して初期位置に戻る際には、白鍵7aと共にガイド部33の後側ガイドリブ34が上方に移動しながら可動基板29の後面を押し上げる。これにより、屈曲されたフレキシブルな配線基板30が元の状態に戻るように屈曲しながら、可動基板29を白鍵7aの前方に向けて起立するように傾ける。このため、発光素子31が白鍵7aの前方に移動し、図9に示すように、発光素子31による光の照射領域E1が白鍵7aの前方にずれ、このずれた箇所を光らせる。
【0064】
同様に、黒鍵7bを押鍵操作すると、図12に示すように、押鍵された黒鍵7bと共にガイド部42の後側ガイドリブ44に沿って可動基板39の上端部がガイドされながら相対的に上方に移動する。このときには、黒鍵7bに設けられたガイド部42の前側ガイドリブ43の下端部が可動基板39の前側面に上方から当接して可動基板39を押し下げる。
【0065】
これにより、フレキシブルな配線基板40が屈曲して、図12に示すように、可動基板39を黒鍵7bの後方に向けて傾ける。このため、発光素子41が黒鍵7bの後方に移動し、図13に示すように、発光素子41による光の照射領域E2が黒鍵7bの後方にずれ、このずれた照射領域E2の箇所を光らせる。これにより、光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0066】
また、図12に示す状態で、押鍵された黒鍵7bが屈曲部21を中心に回転して初期位置に戻る際には、黒鍵7bと共にガイド部42の後側ガイドリブ44が上方に移動しながら可動基板39の後面を押し上げる。これにより、屈曲したフレキシブルな配線基板40が元の状態に戻るように屈曲しながら、可動基板39を黒鍵7bの前方に向けて起立するように傾ける。このため、発光素子41が黒鍵7bの前方に移動し、図9に示すように、発光素子41による光の照射領域E2が黒鍵7bの前方にずれ、このずれた箇所を光らせる。
【0067】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる光透過性を有する複数の鍵7を配列させてそれぞれ上下方向に回転可能に設けると共に、この複数の鍵7にその下側から複数の発光素子31、41によって光をそれぞれ照射する構成であるから、演奏者が複数の鍵7を押鍵操作して演奏をする際に、その演奏に応じて押鍵すべき鍵7をこれに対応する発光素子31、41によって光らせることにより、演奏者が押鍵すべき鍵7を視認することができ、このため演奏者が初心者であっても良好に演奏することができる。
【0068】
また、この電子鍵盤楽器によれば、複数の鍵7の押鍵操作に応じて発光素子31、41を各鍵7の前後方向にそれぞれ変位させるための複数のガイド部32、42を備えているので、各鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて各発光素子31、41を各鍵7の前後方向に変位させることができる。
【0069】
このため、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つの鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。これにより、発光素子31、41の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図り、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0070】
この場合、複数の発光素子31、41をそれぞれ支持する複数の可動支持部材である第1、第2の各基板25、35が、鍵盤シャーシ6上にそれぞれ起立した状態で鍵7の前後方向に屈曲可能に設けられているので、鍵7の押鍵操作に応じて第1、第2の各基板25、35をそれぞれ屈曲させることにより、各発光素子31、41を鍵7の前後方向に変位させることができ、これにより発光素子31、41による光の照射領域E1、E2を鍵7の前後方向に確実に且つ良好にずらすことができる。
【0071】
すなわち、複数の発光素子31、41をそれぞれ支持する第1、第2の各基板25、35は、鍵盤シャーシ6上に固定された固定基板28、38と、発光素子31,41を支持する可動基板29、39と、この可動基板29、39を各鍵7の前後方向に向けてそれぞれ傾き可能に連結する複数のフレキシブルな配線基板30、40とを備えた構成であることにより、鍵7が押鍵操作された際に、フレキシブルな配線基板30、40が屈曲して、可動基板29、39を鍵7の前後方向に確実に且つ良好に傾けることができる。
【0072】
これにより、可動基板29、39に支持された発光素子31、41を鍵7の前後方向に移動させることができるので、この発光素子31、41によって各鍵7に照射された光の照射領域E1、E2を鍵7の押鍵操作に応じて確実に且つ良好に鍵7の前後方向にずらすことができ、これにより各鍵7の光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0073】
また、この電子鍵盤楽器では、複数のガイド部32、42が、複数の鍵7にそれぞれ設けられ、各鍵7の押鍵操作に応じて第1、第2の各基板25、35をそれぞれガイドしながら鍵7の前後方向に傾けるので、各鍵7の押鍵操作に応じて各発光素子31、41を鍵7の前後方向に移動させることができ、これにより光の照射位置を確実に且つ良好に鍵7の前後方向にずらすことができる。
【0074】
この場合、ガイド部32、42は、可動基板29、39を鍵7の後方に傾けるための前側ガイドリブ33、43と、可動基板29、39を初期状態に戻すための後側ガイドリブ34、44とを備えているので、鍵7の押鍵操作に連動させて可動基板29、39を鍵7の前後方向に確実に且つ良好に傾けることができる。
【0075】
すなわち、このガイド部32、42は、鍵7が押鍵操作されると、鍵7と共に後側ガイドリブ34、44に沿って可動基板29、39の各上端部をガイドしながら相対的に上方に移動すると共に、前側ガイドリブ33、43の各下端部が可動基板29、39の各前側面に上方から当接して可動基板29、39を押し下げるので、フレキシブルな配線基板30、40を屈曲させて可動基板29、39を鍵7の後方に向けて確実に且つ良好に傾けることができ、これにより発光素子31、41による各光の照射領域E1、E2を鍵7の後方にずらすことができる。
【0076】
また、このガイド部32、42は、押鍵された鍵7が屈曲部19、21を中心に回転して初期位置に戻る際に、鍵7と共に後側ガイドリブ34、44が上方に移動しながら可動基板29、39の各後面を押し上げるので、フレキシブルな配線基板30、40を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板29、39を鍵7の前方に向けて起立するように確実に且つ良好に傾けることができ、これにより発光素子31、41が鍵7の前方に移動させて、発光素子31、41による各光の照射領域E1、E2を鍵7の前方にずらすことができる。
【0077】
なお、前述した実施形態では、発光素子31、41を支持するための第1、第2の各基板25、35が、それぞれ固定基板28、38と可動基板29、39とを備え、この固定基板28、38と可動基板29、39とをフレキシブルな配線基板30、40によって屈曲可能に連結した構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば図14に示す変形例のように、鍵盤シャーシ6の第1、第2の各基板搭載部11、13上にフレキシブルな配線基板51、52を各鍵7に対応させた状態で起立させて取り付けた構成であっても良い。
【0078】
すなわち、このフレキシブルな配線基板51、52は、前述した実施形態と同様、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。この場合、白鍵用の配線基板51は、図14に示すように、ほぼL字形状に折り曲げられ、この折り曲げられた下部が鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11上にビス24aによって取り付けられ、折り曲げられた上部が少し後方に傾いて起立した状態で各白鍵7a内に挿入するように構成されている。
【0079】
この場合、白鍵用の配線基板51は、図14に示すように、その上部前面に発光素子31が配置され、この状態で配線基板51の上部が、白鍵7aに設けられたガイド部32である前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34とによって、挟み込んだ状態でガイドされることにより、白鍵7aの押鍵操作に応じて白鍵7aの前後方向に屈曲して傾くように構成されている。
【0080】
また、黒鍵用の配線基板52は、図14に示すように、その下部が鍵盤シャーシ6の第2基板搭載部13に形成された凹溝内の前側内面にワッシャなどの押え板37によって固定され、その上部が後方に向けて少し傾いて起立した状態で各黒鍵7b内に挿入するように構成されている。
【0081】
この場合にも、黒鍵用の配線基板52は、その上部前面に発光素子41が配置され、この状態で配線基板52の上部が、黒鍵7bに設けられたガイド部42である前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44とによって、挟み込んだ状態でガイドされることにより、黒鍵7bの押鍵操作に応じて黒鍵7bの前後方向に屈曲して傾くように構成されている。
【0082】
このような電子鍵盤楽器においても、前述した実施形態と同様、複数の鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じてフレキシブルな配線基板51、52を各鍵7の前後方向に屈曲させて傾けることができ、これにより各発光素子31、41を各鍵7の前後方向に変位させることができる。このため、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つの鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。
【0083】
このため、発光素子31、41の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図るほか、前述した実施形態のように第1、第2の基板25、35を用いずに、フレキシブルな配線基板51、52のみを鍵盤シャーシ6に組み付けるだけで良いので、構造も簡単で、より一層、組立作業が容易になると共に、楽器全体の更なる低コスト化を図ることができる。
【0084】
また、前述した実施形態およびその変形例では、光源として側面発光型の発光素子31、41を用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば素子基板上に上面発光タイプの発光素子を搭載し、この素子基板の下面に2本の接続リード線を下側に延ばして設け、この2本の接続リード線を鍵盤シャーシ上に起立させた状態で取り付けると共に、2本の接続リード線を回路基板に接続させた構成であっても良い。
【0085】
この場合には、鍵に設けられたガイド部によって発光素子を直接ガイドすることにより、2本の接続リード線を鍵の前後方向に撓ませて、発光素子を鍵の前後方向に傾けるように移動させる構成にすれば良い。すなわち、鍵に設けられたガイド部は、前側ガイドリブと後側ガイドリブとを備え、この前側ガイドリブと後側ガイドリブとの間に発光素子が挿入し、この状態で鍵の押鍵操作に応じて前側ガイドリブと後側ガイドリブとが発光素子をガイドしながら2本の接続リード線を屈曲させて鍵の前後方向に傾けるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0086】
6 鍵盤シャーシ
7 鍵
7a 白鍵
7b 黒鍵
11 第1基板搭載部
13 第2基板搭載部
25、35 第1、第2の各基板
28、38 固定基板
29、39 可動基板
30、40、51、52 フレキシブルな配線基板
31、41 発光素子
32、42 ガイド部
33、43 前側ガイドリブ
34、44 後側ガイドリブ
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関し、更に詳しくは演奏に応じて各鍵が順次発光する鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤装置においては、特許文献1に記載されているように、鍵盤シャーシ上に複数の鍵をそれぞれ上下方向に回転可能に設けると共に、この鍵盤シャーシ上に複数の発光素子を各鍵に対応させて配置し、この複数の発光素子によって各鍵にその下側から光をそれぞれ照射することにより、押鍵操作すべき鍵を光らせて指示するナビケーション機能を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−122350号公報
【0004】
このような鍵盤装置では、押鍵操作すべき鍵を1つの発光素子で照明する構成であると、押鍵操作すべき鍵が押鍵された際に、演奏者の指によって鍵の照明箇所が隠れてしまうため、従来の鍵盤装置では、1つの鍵に対して2つの発光素子を鍵の前後方向に離して配置し、鍵が押鍵された際に2つの発光素子を切り替えて発光させることにより、鍵が押鍵されても、鍵の照明箇所が演奏者の指によって隠れないように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の鍵盤装置では、鍵盤シャーシ上に1つの鍵に対して2つの発光素子をそれぞれ設けなければならないため、発光素子の個数が増大し、部品点数が多くなり、組立作業が煩雑になるばかりか、押鍵操作に応じて2つの発光素子を切り替えて発光させるための切り替え手段が必要となるため、電子回路全般の制御が煩雑になると共に、電子回路が複雑になり、装置全体のコストが高くなるという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、発光素子の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ると共に、電子回路の簡素化を図り、装置全体の低コスト化を図ることができる鍵盤装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤シャーシと、この鍵盤シャーシ上に配列されてそれぞれ上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する複数の光源と、前記鍵の押鍵操作に応じて前記光源を前記鍵の前後方向にそれぞれ変位させる複数の変位部とを備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲可能に設けられ、且つ前記複数の光源をそれぞれ支持する複数の可動支持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記可動支持部材が、前記鍵盤シャーシ上に起立して設けられた固定基板と、前記光源が設けられた可動基板と、この可動基板を前記固定基板に対して前記鍵の前後方向に傾き可能に連結する連結部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記可動支持部材が、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲するフレキシブルな配線基板であることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記複数の変位部が、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記鍵の押鍵操作に応じて前記複数の可動支持部材をそれぞれガイドしながら前記鍵の前後方向に傾ける複数のガイド部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、鍵が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて光源を鍵の前後方向に変位させることができるので、1つに鍵に対して複数の発光素子を配置する必要がなく、1つの鍵に対して1つの発光素子を配置するだけで、演奏者の指によって鍵の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵の照明箇所を視認することができる。このため、発光素子の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図り、装置全体の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態を示した平面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器のA−A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【図3】図2に示された白鍵を示し、(a)はその白鍵の拡大断面図、(b)はその白鍵の拡大底面図である。
【図4】図2に示された黒鍵を示し、(a)はその黒鍵の拡大断面図、(b)はその黒鍵の拡大底面図である。
【図5】図2に示された鍵盤シャーシにおける白鍵用の発光素子および黒鍵用の発光素子の各要部を示した拡大平面図である。
【図6】図2に示された電子鍵盤楽器における白鍵用の発光素子を支持する可動支持部材である第1基板を示し、(a)はその第1基板の拡大側面図、(b)はその第1基板を右側から見た拡大背面図である。
【図7】図2に示された電子鍵盤楽器における黒鍵用の発光素子を支持する可動支持部材である第2基板を示し、(a)はその第2基板の拡大側面図、(b)はその第2基板を右側から見た拡大背面図である。
【図8】図2に示された電子鍵盤楽器における要部を示した拡大断面図である。
【図9】図8に示された電子鍵盤楽器において、各発光素子によって鍵が照明されて光っている箇所を示した要部の拡大平面図である。
【図10】図8に示された電子鍵盤楽器において、白鍵が押鍵された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図11】図10に示された電子鍵盤楽器において、発光素子によって白鍵が照明されて光っている箇所がずれた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図12】図8に示された電子鍵盤楽器において、黒鍵が押鍵された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図13】図12に示された電子鍵盤楽器において、発光素子によって黒鍵が照明されて光っている箇所がずれた状態を示した要部の拡大平面図である。
【図14】この発明を適用した電子鍵盤楽器において、発光素子を支持する可動支持部材の変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図13を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1に示すように、楽器本体1を備えている。この楽器本体1の手前側(図1では下部側)には、鍵盤部2が設けられており、この楽器本体1における鍵盤部2の後部側(図1では上部側)には、スピーカ部3、表示部4、およびスイッチ部5が設けられている。
【0015】
スピーカ部3は、楽音を発音するためのものであり、図1に示すように、鍵盤部2の後部側(図1では上部側)に位置する楽器本体1の両側に設けられている。表示部4は、楽音情報を表示するものであり、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1の中間部に設けられている。スイッチ部5は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、鍵盤部2の後部側に位置する楽器本体1における両側のスピーカ部3の間に表示部4を除いて分散して設けられている。
【0016】
鍵盤部2は、図1および図2に示すように、下部ケースを兼ねる鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる多数の鍵7が配列された構成になっている。鍵盤シャーシ6は、図2に示すように、その前部側(図2では左側部)に白鍵7aの前端部における下部側を覆う前カバー部8が形成されている。この前カバー部8の後側下部(図2では右側下部)には、白鍵7aの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる白鍵ストッパ部9が設けられている。
【0017】
この白鍵ストッパ部9の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、白鍵7aの内部に挿入して白鍵7aの横振れを防ぐための白鍵ガイド部10が上方に突出して設けられている。この白鍵ガイド部10の後部には、後述する白鍵用の第1基板搭載部11が設けられている。この第1基板搭載部11の後方には、黒鍵7bの下限位置を規制するためのフェルトなどからなる黒鍵ストッパ部12が設けられている。
【0018】
この黒鍵ストッパ部12の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、後述する黒鍵用の第2基板搭載部13が上方に位置して設けられている。この黒鍵用の第2基板搭載部13における前側(図2では左側)の上部下面には、白鍵7aおよび黒鍵7bの各上限位置を規制するためのフェルトなどからなる上限ストッパ部14が設けられている。また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の下端部および黒鍵ストッパ部12の下端部には、その両者に亘って底蓋13aがビス13bによって開閉可能に取り付けられている。
【0019】
また、この黒鍵用の第2基板搭載部13の後部(図2では右側部)には、図2に示すように、黒鍵7bの内部に挿入して黒鍵7bの横振れを防ぐための黒鍵ガイド部15が上方に突出して設けられている。この黒鍵ガイド部15の後端下部には、スイッチ基板16が設けられている。さらに、鍵盤シャーシ6の後端部には、各鍵7の後端部(図2では右端部)を支持する鍵支持部17が上方に位置して設けられている。
【0020】
一方、複数の鍵7のうち、複数の白鍵7aは、それぞれ光透過性を有する白色の合成樹脂からなり、図2および図3に示すように、その内部が中空状に形成されている。この白鍵7aは、その後端部(図3(a)では右端部)に複数の白鍵7aの配列方向(図3(b)では上下方向)に沿って各白鍵7aを順次連結する共通連結部18が形成されていると共に、この共通連結部18に各白鍵7aをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部19が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0021】
また、複数の黒鍵7bも、白鍵7aと同様、それぞれ光透過性を有する黒色の合成樹脂からなり、図2および図4に示すように、その内部が中空状に形成されている。この黒鍵7bも、その後端部(図4(a)では右端部)に複数の黒鍵7bの配列方向(図4(b)では上下方向)に沿って各黒鍵7bを順次連結する共通連結部20が形成されていると共に、この共通連結部20に各黒鍵7bをそれぞれ上下方向に回転変位させるための薄肉形状の屈曲部21が撓み変形可能に形成された構成になっている。
【0022】
これにより、複数の鍵7は、図2に示すように、白鍵7aの共通連結部18を黒鍵7bの共通連結部20上に重ね合わせ、この状態で両者の共通連結部18、20を鍵盤シャーシ6の後端部に設けられた鍵支持部17上に取り付けることにより、図1および図2に示すように、複数の白鍵7aおよび複数の黒鍵7bが鍵盤シャーシ6上に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられている。
【0023】
このため、複数の鍵7は、図2に示すように、複数の白鍵7aがそれぞれ押鍵された際に、複数の白鍵7aが各屈曲部19の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位すると共に、複数の黒鍵7bがそれぞれ押鍵された際に、複数の黒鍵7bが各屈曲部21の撓み変形によってそれぞれ上下方向に回転変位するように構成されている。
【0024】
また、これら白鍵7aおよび黒鍵7bには、図2に示すように、それぞれスイッチ押圧部22がスイッチ基板16上の各ゴムスイッチ23に対応して設けられている。このスイッチ押圧部22は、白鍵7aおよび黒鍵7bが押鍵された際に、スイッチ基板16上に設けられた各ゴムスイッチ23を押圧するように構成されている。
【0025】
この場合、ゴムスイッチ23は、図2に示すように、白鍵7aおよび黒鍵7bの各スイッチ押圧部22に対応してそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ23は、ゴムシートにドーム状の膨出部を形成してスイッチ基板16上に配置され、この状態で膨出部が押圧されると、ドーム状の膨出部が弾性変形し、その内部に設けられた可動接点がスイッチ基板16上に設けられた固定接点に接触することにより、押鍵操作に応じてスイッチ信号を出力するように構成されている。
【0026】
ところで、鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11には、図2、図5および図8に示すように、基板取付部材24が取り付けられている。この基板取付部材24は、アルミニウムなどの金属または硬質の合成樹脂によって形成されている。この基板取付部材24には、図8に示すように、白鍵用の第1基板25が白鍵7aの後側(図8では右側)に向けて少し傾いた状態で起立して取り付けられている。
【0027】
この基板取付部材24は、図2および図8に示すように、鍵盤シャーシ6上にビス24aによって取り付けられる固定部26と、白鍵7aに向けて傾斜した状態で起立する取付部27とを備え、これらがほぼL字形状に折り曲げられた状態で一体に形成されている。この場合、固定部26および取付部27は、図5に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って細長く形成されている。
【0028】
また、取付部27は、図5および図8に示すように、固定部26に対して所定角度(例えば、約80度)だけ、白鍵7aの後方(図8では右側)に向けて傾いた状態で固定されている。この傾いた状態の取付部27の前面(図4では左側面)には、第1基板25がビス27aによって取り付けられている。このビス27aは、固定部27を固定するビス24aに対して白鍵7aの配列方向に位置がずれた状態で取り付けられるように構成されている。
【0029】
また、この第1基板25は、図6および図8に示すように、固定基板28と複数の可動基板29とを備え、この固定基板28と複数の可動基板29とをそれぞれ屈曲可能に連結する連結部材である複数のフレキシブルな配線基板30によって白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)に向けてそれぞれ傾くように構成されている。固定基板28は、図6(a)および図6(b)に示すように、白鍵7aの配列方向に沿って連続する帯板状に形成され、図示しない接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。
【0030】
複数の可動基板29は、図6および図8に示すように、各白鍵7aの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する板状のものであり、固定基板28の上端部にフレキシブルな配線基板30によって白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾き可能に取り付けられている。この複数の可動基板29の各上部前面(図8では左側面)には、各白鍵7aの前側内部に光を照射する白鍵用の発光素子31がそれぞれ設けられている。
【0031】
複数の配線基板30は、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。これにより、複数の配線基板30は、図6および図8に示すように、それぞれ固定基板28と複数の可動基板29とを電気的に接続するように構成されている。また、この複数の配線基板30は、固定基板28と複数の可動基板29との間に対応する部分が屈曲することにより、固定基板28に対して各可動基板29を白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾けるように構成されている。
【0032】
この場合、白鍵7aには、図3(b)および図8に示すように、白鍵7aの押鍵操作に応じて白鍵用の発光素子31を白鍵7aの前後方向(図8では左右方向)に変位させるための変位部であるガイド部32が設けられている。この白鍵用のガイド部32は、図2および図8に示すように、可動基板29を白鍵7aの後方(図8では右側)に傾けるための前側ガイドリブ33と、可動基板29を初期状態に戻すための後側ガイドリブ34とを備えている。
【0033】
すなわち、この白鍵用のガイド部32は、図3(b)に示すように、白鍵7aの前部側に位置する両側部に、その白鍵7aの内部に向けてそれぞれ突出して設けられている。これにより、白鍵用のガイド部32は、図8に示すように、前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34との間に、第1基板25の可動基板29における上部の両端を上下方向に移動可能に挟み込むように構成されている。
【0034】
この場合、前側ガイドリブ33は、図8に示すように、第1基板25の可動基板29における上部の前面側(図8では左面側)に位置する白鍵7a内の箇所に垂下され、白鍵7aが押鍵された際に、図10に示すように、前側ガイドリブ33の下端部が発光素子31を避けて可動基板29の前側面(図8では左側面)に当接することにより、フレキシブルな配線基板30を屈曲させて可動基板29を白鍵7aの後方(図8では右側)に傾けるように構成されている。
【0035】
また、後側ガイドリブ34は、図8に示すように、第1基板25の可動基板29における上部の後面(図8では右側面)に位置する白鍵7a内の下部に設けられ、常に可動基板29の後面(図8では右側面)が摺動可能に当接することにより、可動基板29が白鍵7aの後側への傾きを規制するように構成されている。すなわち、この後側ガイドリブ34は、白鍵7aが押鍵されて前側ガイドリブ33によって可動基板29が後側に傾く際に、図10に示すように、後側ガイドリブ34の上端部が可動基板29を支持して可動基板29の後方への傾きを規制するように構成されている。
【0036】
この場合、後側ガイドリブ34は、図8に示すように、その上端部が前側ガイドリブ33の下端部とほぼ同じ高さに位置し、押鍵操作に応じて下側に移動する際に、可動基板29の上端部を白鍵7aの上部後方に向けて移動させるために、後側ガイドリブ34の上端部と白鍵7aの内部上部との間に隙間が形成された構成になっている。このため、白鍵7aを成形する成形用金型(図示せず)は、スライドコアを用いることにより、後側ガイドリブ34の上端部と白鍵7aの内部上部との間の隙間を形成するように構成されている。
【0037】
これにより、白鍵用のガイド部32は、図8に示すように、白鍵7aが押鍵操作されていない初期状態のときに、前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34との間に第1基板25の可動基板29における上部の両端を保持して、可動基板29を白鍵7aの後方に少し傾けた状態で起立させることにより、図9に示すように、発光素子31の光を白鍵7aの前部側に照射させて白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。
【0038】
また、このガイド部32は、図10に示すように、白鍵7aが押鍵操作された際に、可動基板29における上部の両端を後側ガイドリブ34に沿ってガイドしながら相対的に上方に移動させると共に、前側ガイドリブ33の下端部が可動基板29の前側面に当接して可動基板29を押し下げることにより、フレキシブルな配線基板30を屈曲させて可動基板29を白鍵7aの後方に向けて傾け、発光素子31を白鍵7aの後方に移動させるように構成されている。これにより、発光素子31は、図11に示すように、白鍵7aに光を照射する照射領域E1が白鍵7aの前部から少し後方に移動するように構成されている。
【0039】
さらに、このガイド部32は、図10に示す状態で、押鍵された白鍵7aが屈曲部19を中心に回転して初期位置に戻る際に、白鍵7aと共に後側ガイドリブ34が上方に移動しながら可動基板29の後面を押し上げることにより、屈曲した配線基板30を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板29を白鍵7aの前方に向けて起立するように傾け、発光素子31を白鍵7aの前方に移動させるように構成されている。
【0040】
この場合、ガイド部32の前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34とには、第1基板25の可動基板29を円滑にガイドするために、グリスなどの潤滑剤が塗布されていることが望ましい。また、第1基板25の固定基板28が取り付けられる基板取付部材24の取付部27には、図2および図8に示すように、第1基板25の可動基板29が白鍵7aの前側への傾きを規制するストッパ片27bが設けられている。
【0041】
一方、鍵盤シャーシ6の第2基板搭載部13には、図2および図8に示すように、黒鍵用の第2基板35が起立するように取り付けられている。この場合、第2基板搭載部13は、第2基板35が挿入する凹溝形状に形成され、この凹溝形状内における前側(図8では左側)の内面が後下り(図8では右下り)に傾斜し、その後側(図8では右側)の内面にリブ部36が設けられた構成になっている。このリブ部36には、ワッシャなどの押え板37がビス37aによって取り付けられている。
【0042】
これにより、第2基板搭載部13は、図8に示すように、黒鍵用の第2基板35が前側内面とリブ部36との間に上方から挿入された状態で、リブ部36に押え板37がビス37aによって取り付けられると、この押え板37の端部によって第2基板35が前側内面に押し付けられることにより、この前側内面によって第2基板35を前側に傾けた状態で、第2基板35が固定されるように構成されている。
【0043】
この第2基板35も、第1基板25と同様、固定基板38と複数の可動基板39とを備え、図7および図8に示すように、固定基板38と複数の可動基板39とをそれぞれ屈曲可能に連結する連結部材である複数のフレキシブルな配線基板40によって黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)に向けてそれぞれ傾くように構成されている。
【0044】
固定基板38は、図7(b)に示すように、黒鍵7bの配列方向に沿って連続する帯板状に形成されている。この固定基板38は、図2および図8に示すように、第2基板搭載部13の押え板35によって第2基板35が前側内面に押し付けられることにより、この前側内面によって前側に傾いた状態で固定されている。この固定基板38も、図示しない接続部材によって楽器全体を制御するための回路基板と電気的に接続されている。
【0045】
複数の可動基板39は、図7および図8に示すように、各黒鍵7bの内部にそれぞれ非接触状態で挿入する板状のものであり、固定基板38の上端部にフレキシブルな配線基板40によって黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾き可能に取り付けられている。この複数の可動基板39における各上部前面(図8では左側面)には、各黒鍵7bの前側内部に光を照射する黒鍵用の発光素子41がそれぞれ設けられている。
【0046】
複数の配線基板40も、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。これにより、複数の配線基板40は、図7および図8に示すように、それぞれ固定基板38と複数の可動基板39とを電気的に接続するように構成されている。また、この複数の配線基板40は、固定基板38と複数の可動基板39との間に対応する部分が屈曲することにより、固定基板38に対して各可動基板39を黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)にそれぞれ傾けるように構成されている。
【0047】
この場合、黒鍵7bには、図4(b)および図8に示すように、黒鍵7bの押鍵操作に応じて黒鍵用の発光素子41を黒鍵7bの前後方向(図8では左右方向)に変位させるための変位部であるガイド部42が設けられている。この黒鍵用のガイド部42は、図2および図8に示すように、可動基板39を黒鍵7bの後方(図8では右側)に傾けるための前側ガイドリブ43と、可動基板39を初期状態に戻すための後側ガイドリブ44とを備えている。
【0048】
すなわち、この黒鍵用のガイド部42は、図4(b)に示すように、黒鍵7bの前部側に位置する両側部に、その黒鍵7bの内部に向けてそれぞれ突出して設けられている。これにより、黒鍵用のガイド部42は、図8に示すように、前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44との間に、第2基板35の可動基板39における上部の両端を上下方向に移動可能に挟み込むように構成されている。
【0049】
この場合、前側ガイドリブ43は、図8に示すように、第2基板35の可動基板39における上部の前面側(図8では左面側)に位置する黒鍵7b内の箇所に垂下され、黒鍵7bが押鍵された際に、図12に示すように、前側ガイドリブ43の下端部が発光素子41を避けて可動基板39の前側面(図12では左側面)に当接することにより、フレキシブルな配線基板40を屈曲させて可動基板39を黒鍵7bの後方(図12では右側)に傾けるように構成されている。
【0050】
また、後側ガイドリブ44は、図8に示すように、第2基板35の可動基板39における上部の後面(図8では右側面)に位置する黒鍵7b内の下部に設けられ、常に可動基板39の後面(図8では右側面)が摺動可能に当接することにより、可動基板39が黒鍵7bの後側への傾きを規制するように構成されている。すなわち、この後側ガイドリブ44は、黒鍵7bが押鍵されて前側ガイドリブ43によって可動基板39が後側に傾く際に、図12に示すように、後側ガイドリブ44の上端部が可動基板39を支持して可動基板39の後方への傾きを規制するように構成されている。
【0051】
この場合にも、後側ガイドリブ44は、図8に示すように、その上端部が前側ガイドリブ43の下端部とほぼ同じ高さに位置し、押鍵操作に応じて下側に移動する際に、可動基板39の上端部を黒鍵7bの上部後方に向けて移動させるために、後側ガイドリブ44の上端部と黒鍵7bの内部上部との間に隙間が形成された構成になっている。
【0052】
また、前側ガイドリブ43も、図8に示すように、その上端部と黒鍵7bの内部上部との間に隙間が形成されている。このため、黒鍵7bを成形する成形用金型(図示せず)も、スライドコアを用いることにより、前後の各ガイドリブ43、44の各上端部と黒鍵7bの各内部上部との間の各隙間をそれぞれ形成するように構成されている。
【0053】
これにより、黒鍵用のガイド部42は、図8に示すように、黒鍵7bが押鍵操作されていない初期状態のときに、前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44との間に第2基板35の可動基板39における上部の両端を保持して、可動基板39を黒鍵7bの後方に少し傾けた状態で起立させることにより、図9に示すように、発光素子41の光を黒鍵7bの前部側に照射させて黒鍵盤7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0054】
また、このガイド部42は、図12に示すように、黒鍵7bが押鍵操作された際に、可動基板39における上部の両端を後側ガイドリブ44に沿ってガイドしながら相対的に上方に移動させると共に、前側ガイドリブ43の下端部が可動基板39の前側面に当接して可動基板39を押し下げることにより、フレキシブルな配線基板40を屈曲させて可動基板39を黒鍵7bの後方に向けて傾け、発光素子41を黒鍵7bの後方に移動させるように構成されている。これにより、発光素子41は、図13に示すように、黒鍵7bに光を照射する照射領域E2が黒鍵7bの前部から少し後方に移動するように構成されている。
【0055】
さらに、このガイド部42は、図12に示す状態で、押鍵された黒鍵7bが屈曲部21を中心に回転して初期位置に戻る際に、黒鍵7bと共に後側ガイドリブ44が上方に移動しながら可動基板39の後面を押し上げることにより、屈曲した配線基板40を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板39を黒鍵7bの前方に向けて起立するように傾け、発光素子41を黒鍵7bの前方に移動させるように構成されている。
【0056】
この場合にも、黒鍵用のガイド部42の前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44とには、第2基板35の可動基板39を円滑にガイドするために、グリスなどの潤滑剤が塗布されていることが望ましい。また、第2基板35の固定基板38が取り付けられる第2基板搭載部13の前側上部には、図2および図8に示すように、第2基板35の可動基板39が黒鍵7bの前側への傾きを規制する複数のストッパリブ13cがそれぞれ起立した状態で設けられている。
【0057】
ところで、白鍵用の発光素子31および黒鍵用の発光素子41は、それぞれほぼ直方体のチップ形状に形成され、その一側面である上面のみから光を発光する側面発光ダイオードである。この発光素子31、41は、ほぼ直方体のチップ形状に形成されていることにより、図2および図8に示すように、その後面(図2では右側面)が第1、第2の各基板25、35における各可動基板29、39の各上部前面(図2では左側面)に密着して半田などで電気的に接続された状態で平面実装されている。
【0058】
これにより、白鍵用の発光素子31は、その一側面である上面から光を発すると、図8に示すように、その光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、図9に示すように、白鍵7aの前部側を光らせるように構成されている。また、黒鍵用の発光素子41は、白鍵用の発光素子31と同様、その一側面である上面から光を発すると、図8に示すように、その光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、図9に示すように、黒鍵7bの前部側を光らせるように構成されている。
【0059】
次に、このような鍵盤楽器の作用について説明する。
この鍵盤楽器で演奏する場合には、その演奏に応じて各鍵7を押鍵する際に、その押鍵すべき鍵7に対応する発光素子31、41を順次発光させて、押鍵すべき鍵7を順次光らせる。例えば、押鍵すべき鍵7が複数の白鍵7aのいずれかである場合には、その白鍵7aに対応する発光素子31を発光させる。すると、その発光素子31の光が白鍵7aの前側内部に照射され、この照射された光の一部が白鍵7aを透過することにより、白鍵7aの前部側を光らせる。
【0060】
また、押鍵すべき鍵7が複数の黒鍵7bのいずれかである場合には、その黒鍵7bに対応する発光素子41を発光させる。すると、その発光素子41の光が黒鍵7bの前側内部に照射され、この照射された光の一部が黒鍵7bを透過することにより、黒鍵7bの前部側を光らせる。これにより、演奏に応じて押鍵すべき鍵7を順次光らせることができるので、演奏者が初心者であっても、良好に演奏することができる。
【0061】
このように、押鍵すべき鍵7が光っている状態で、各鍵7を演奏者が指で押鍵する際には、その押鍵操作に応じて各発光素子31、41による光の照射領域E1、E2がずれ、各鍵7の光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。例えば、複数の鍵7のうち、白鍵7aを押鍵操作すると、図10に示すように、押鍵された白鍵7aと共にガイド部33の後側ガイドリブ34に沿って可動基板29の上端部がガイドされながら相対的に上方に移動する。
【0062】
このときには、白鍵7aに設けられたガイド部33の前側ガイドリブ33の下端部が可動基板29の前側面に上方から当接して可動基板29を押し下げる。これにより、フレキシブルな配線基板30が屈曲して、図10に示すように、可動基板29を白鍵7aの後方に向けて傾ける。このため、発光素子31が白鍵7aの後方に移動し、図11に示すように、発光素子31による光の照射領域E1が白鍵7aの後方にずれ、このずれた照射領域E1の箇所を光らせる。これにより、光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0063】
また、図10に示す状態で、押鍵された白鍵7aが屈曲部19を中心に回転して初期位置に戻る際には、白鍵7aと共にガイド部33の後側ガイドリブ34が上方に移動しながら可動基板29の後面を押し上げる。これにより、屈曲されたフレキシブルな配線基板30が元の状態に戻るように屈曲しながら、可動基板29を白鍵7aの前方に向けて起立するように傾ける。このため、発光素子31が白鍵7aの前方に移動し、図9に示すように、発光素子31による光の照射領域E1が白鍵7aの前方にずれ、このずれた箇所を光らせる。
【0064】
同様に、黒鍵7bを押鍵操作すると、図12に示すように、押鍵された黒鍵7bと共にガイド部42の後側ガイドリブ44に沿って可動基板39の上端部がガイドされながら相対的に上方に移動する。このときには、黒鍵7bに設けられたガイド部42の前側ガイドリブ43の下端部が可動基板39の前側面に上方から当接して可動基板39を押し下げる。
【0065】
これにより、フレキシブルな配線基板40が屈曲して、図12に示すように、可動基板39を黒鍵7bの後方に向けて傾ける。このため、発光素子41が黒鍵7bの後方に移動し、図13に示すように、発光素子41による光の照射領域E2が黒鍵7bの後方にずれ、このずれた照射領域E2の箇所を光らせる。これにより、光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0066】
また、図12に示す状態で、押鍵された黒鍵7bが屈曲部21を中心に回転して初期位置に戻る際には、黒鍵7bと共にガイド部42の後側ガイドリブ44が上方に移動しながら可動基板39の後面を押し上げる。これにより、屈曲したフレキシブルな配線基板40が元の状態に戻るように屈曲しながら、可動基板39を黒鍵7bの前方に向けて起立するように傾ける。このため、発光素子41が黒鍵7bの前方に移動し、図9に示すように、発光素子41による光の照射領域E2が黒鍵7bの前方にずれ、このずれた箇所を光らせる。
【0067】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、鍵盤シャーシ6上に白鍵7aおよび黒鍵7bからなる光透過性を有する複数の鍵7を配列させてそれぞれ上下方向に回転可能に設けると共に、この複数の鍵7にその下側から複数の発光素子31、41によって光をそれぞれ照射する構成であるから、演奏者が複数の鍵7を押鍵操作して演奏をする際に、その演奏に応じて押鍵すべき鍵7をこれに対応する発光素子31、41によって光らせることにより、演奏者が押鍵すべき鍵7を視認することができ、このため演奏者が初心者であっても良好に演奏することができる。
【0068】
また、この電子鍵盤楽器によれば、複数の鍵7の押鍵操作に応じて発光素子31、41を各鍵7の前後方向にそれぞれ変位させるための複数のガイド部32、42を備えているので、各鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じて各発光素子31、41を各鍵7の前後方向に変位させることができる。
【0069】
このため、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つの鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。これにより、発光素子31、41の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図り、楽器全体の低コスト化を図ることができる。
【0070】
この場合、複数の発光素子31、41をそれぞれ支持する複数の可動支持部材である第1、第2の各基板25、35が、鍵盤シャーシ6上にそれぞれ起立した状態で鍵7の前後方向に屈曲可能に設けられているので、鍵7の押鍵操作に応じて第1、第2の各基板25、35をそれぞれ屈曲させることにより、各発光素子31、41を鍵7の前後方向に変位させることができ、これにより発光素子31、41による光の照射領域E1、E2を鍵7の前後方向に確実に且つ良好にずらすことができる。
【0071】
すなわち、複数の発光素子31、41をそれぞれ支持する第1、第2の各基板25、35は、鍵盤シャーシ6上に固定された固定基板28、38と、発光素子31,41を支持する可動基板29、39と、この可動基板29、39を各鍵7の前後方向に向けてそれぞれ傾き可能に連結する複数のフレキシブルな配線基板30、40とを備えた構成であることにより、鍵7が押鍵操作された際に、フレキシブルな配線基板30、40が屈曲して、可動基板29、39を鍵7の前後方向に確実に且つ良好に傾けることができる。
【0072】
これにより、可動基板29、39に支持された発光素子31、41を鍵7の前後方向に移動させることができるので、この発光素子31、41によって各鍵7に照射された光の照射領域E1、E2を鍵7の押鍵操作に応じて確実に且つ良好に鍵7の前後方向にずらすことができ、これにより各鍵7の光っている箇所が演奏者の指によって隠れないようにすることができる。
【0073】
また、この電子鍵盤楽器では、複数のガイド部32、42が、複数の鍵7にそれぞれ設けられ、各鍵7の押鍵操作に応じて第1、第2の各基板25、35をそれぞれガイドしながら鍵7の前後方向に傾けるので、各鍵7の押鍵操作に応じて各発光素子31、41を鍵7の前後方向に移動させることができ、これにより光の照射位置を確実に且つ良好に鍵7の前後方向にずらすことができる。
【0074】
この場合、ガイド部32、42は、可動基板29、39を鍵7の後方に傾けるための前側ガイドリブ33、43と、可動基板29、39を初期状態に戻すための後側ガイドリブ34、44とを備えているので、鍵7の押鍵操作に連動させて可動基板29、39を鍵7の前後方向に確実に且つ良好に傾けることができる。
【0075】
すなわち、このガイド部32、42は、鍵7が押鍵操作されると、鍵7と共に後側ガイドリブ34、44に沿って可動基板29、39の各上端部をガイドしながら相対的に上方に移動すると共に、前側ガイドリブ33、43の各下端部が可動基板29、39の各前側面に上方から当接して可動基板29、39を押し下げるので、フレキシブルな配線基板30、40を屈曲させて可動基板29、39を鍵7の後方に向けて確実に且つ良好に傾けることができ、これにより発光素子31、41による各光の照射領域E1、E2を鍵7の後方にずらすことができる。
【0076】
また、このガイド部32、42は、押鍵された鍵7が屈曲部19、21を中心に回転して初期位置に戻る際に、鍵7と共に後側ガイドリブ34、44が上方に移動しながら可動基板29、39の各後面を押し上げるので、フレキシブルな配線基板30、40を元の状態に戻すように屈曲させながら、可動基板29、39を鍵7の前方に向けて起立するように確実に且つ良好に傾けることができ、これにより発光素子31、41が鍵7の前方に移動させて、発光素子31、41による各光の照射領域E1、E2を鍵7の前方にずらすことができる。
【0077】
なお、前述した実施形態では、発光素子31、41を支持するための第1、第2の各基板25、35が、それぞれ固定基板28、38と可動基板29、39とを備え、この固定基板28、38と可動基板29、39とをフレキシブルな配線基板30、40によって屈曲可能に連結した構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば図14に示す変形例のように、鍵盤シャーシ6の第1、第2の各基板搭載部11、13上にフレキシブルな配線基板51、52を各鍵7に対応させた状態で起立させて取り付けた構成であっても良い。
【0078】
すなわち、このフレキシブルな配線基板51、52は、前述した実施形態と同様、フィルムなどの屈曲性を有する樹脂シートからなり、その一面に接続配線(図示せず)が形成された構成になっている。この場合、白鍵用の配線基板51は、図14に示すように、ほぼL字形状に折り曲げられ、この折り曲げられた下部が鍵盤シャーシ6の第1基板搭載部11上にビス24aによって取り付けられ、折り曲げられた上部が少し後方に傾いて起立した状態で各白鍵7a内に挿入するように構成されている。
【0079】
この場合、白鍵用の配線基板51は、図14に示すように、その上部前面に発光素子31が配置され、この状態で配線基板51の上部が、白鍵7aに設けられたガイド部32である前側ガイドリブ33と後側ガイドリブ34とによって、挟み込んだ状態でガイドされることにより、白鍵7aの押鍵操作に応じて白鍵7aの前後方向に屈曲して傾くように構成されている。
【0080】
また、黒鍵用の配線基板52は、図14に示すように、その下部が鍵盤シャーシ6の第2基板搭載部13に形成された凹溝内の前側内面にワッシャなどの押え板37によって固定され、その上部が後方に向けて少し傾いて起立した状態で各黒鍵7b内に挿入するように構成されている。
【0081】
この場合にも、黒鍵用の配線基板52は、その上部前面に発光素子41が配置され、この状態で配線基板52の上部が、黒鍵7bに設けられたガイド部42である前側ガイドリブ43と後側ガイドリブ44とによって、挟み込んだ状態でガイドされることにより、黒鍵7bの押鍵操作に応じて黒鍵7bの前後方向に屈曲して傾くように構成されている。
【0082】
このような電子鍵盤楽器においても、前述した実施形態と同様、複数の鍵7が押鍵操作されると、その押鍵操作に応じてフレキシブルな配線基板51、52を各鍵7の前後方向に屈曲させて傾けることができ、これにより各発光素子31、41を各鍵7の前後方向に変位させることができる。このため、1つに鍵7に対して複数の発光素子31、41を配置する必要がなく、1つの鍵7に対して1つの発光素子31、41を配置するだけで、演奏者の指によって鍵7の照明箇所が隠れてしまうことがなく、良好に鍵7の照明箇所を視認することができる。
【0083】
このため、発光素子31、41の個数を最小限に抑えて、組立作業の向上を図ることができると共に、電子回路の簡素化を図るほか、前述した実施形態のように第1、第2の基板25、35を用いずに、フレキシブルな配線基板51、52のみを鍵盤シャーシ6に組み付けるだけで良いので、構造も簡単で、より一層、組立作業が容易になると共に、楽器全体の更なる低コスト化を図ることができる。
【0084】
また、前述した実施形態およびその変形例では、光源として側面発光型の発光素子31、41を用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば素子基板上に上面発光タイプの発光素子を搭載し、この素子基板の下面に2本の接続リード線を下側に延ばして設け、この2本の接続リード線を鍵盤シャーシ上に起立させた状態で取り付けると共に、2本の接続リード線を回路基板に接続させた構成であっても良い。
【0085】
この場合には、鍵に設けられたガイド部によって発光素子を直接ガイドすることにより、2本の接続リード線を鍵の前後方向に撓ませて、発光素子を鍵の前後方向に傾けるように移動させる構成にすれば良い。すなわち、鍵に設けられたガイド部は、前側ガイドリブと後側ガイドリブとを備え、この前側ガイドリブと後側ガイドリブとの間に発光素子が挿入し、この状態で鍵の押鍵操作に応じて前側ガイドリブと後側ガイドリブとが発光素子をガイドしながら2本の接続リード線を屈曲させて鍵の前後方向に傾けるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0086】
6 鍵盤シャーシ
7 鍵
7a 白鍵
7b 黒鍵
11 第1基板搭載部
13 第2基板搭載部
25、35 第1、第2の各基板
28、38 固定基板
29、39 可動基板
30、40、51、52 フレキシブルな配線基板
31、41 発光素子
32、42 ガイド部
33、43 前側ガイドリブ
34、44 後側ガイドリブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤シャーシと、
この鍵盤シャーシ上に配列されてそれぞれ上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、
この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する複数の光源と、
前記鍵の押鍵操作に応じて前記光源を前記鍵の前後方向にそれぞれ変位させる複数の変位部と
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲可能に設けられ、且つ前記複数の光源をそれぞれ支持する複数の可動支持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記可動支持部材は、前記鍵盤シャーシ上に起立して設けられた固定基板と、前記光源が設けられた可動基板と、この可動基板を前記固定基板に対して前記鍵の前後方向に傾き可能に連結する連結部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記可動支持部材は、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲するフレキシブルな配線基板であることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記複数の変位部は、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記鍵の押鍵操作に応じて前記複数の可動支持部材をそれぞれガイドしながら前記鍵の前後方向に傾ける複数のガイド部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項1】
鍵盤シャーシと、
この鍵盤シャーシ上に配列されてそれぞれ上下方向に回転可能に設けられた光透過性を有する複数の鍵と、
この複数の鍵にその下側から光をそれぞれ照射する複数の光源と、
前記鍵の押鍵操作に応じて前記光源を前記鍵の前後方向にそれぞれ変位させる複数の変位部と
を備えていることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲可能に設けられ、且つ前記複数の光源をそれぞれ支持する複数の可動支持部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記可動支持部材は、前記鍵盤シャーシ上に起立して設けられた固定基板と、前記光源が設けられた可動基板と、この可動基板を前記固定基板に対して前記鍵の前後方向に傾き可能に連結する連結部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記可動支持部材は、前記鍵盤シャーシ上にそれぞれ起立した状態で前記鍵の前後方向に屈曲するフレキシブルな配線基板であることを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記複数の変位部は、前記複数の鍵にそれぞれ設けられ、前記鍵の押鍵操作に応じて前記複数の可動支持部材をそれぞれガイドしながら前記鍵の前後方向に傾ける複数のガイド部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−253075(P2011−253075A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127447(P2010−127447)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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