説明

鍵盤装置

【課題】高さを抑制するとともに、基板の組み付け性が良好な鍵盤装置を提供する。
【解決手段】基板26を保持するための固定保持部28及び可動保持部29をそれぞれフレーム12に一体的に設ける。可動保持部29は基板26を固定保持部28側に付勢する。固定保持部28には基板26が当接する。基板26は固定保持部28と可動保持部29の間に保持される。可動保持部29は、横方向に延設された変形部29bを有する。変形部29bは、一端を上下方向に沿って固定された固定端とし、他端を自由端として前後方向に変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子オルガン、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器に用いられる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、板ばねのばね力を利用して、鍵の押離鍵状態を検出するためのスイッチが配置された基板(以下、単に基板という。)を保持するようにした鍵盤装置は知られている。この鍵盤装置においては、基板の前端をフックに当接させ、板ばねのばね力によって基板をフックに押し付けて保持している。板ばねは、下方向に延設されている。また、板ばねは、横方向に延設された固定端を有し、基板取り付け時には、板ばねが後方へ変形する。なお、フック及び板ばねはフレームに一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01−51997号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の鍵盤装置においては、板ばねが下方に大きく張り出しているため、鍵盤装置の高さが大きくなっていた。特に、アコースティックピアノの鍵タッチ(押離鍵時の鍵の反力)を模擬するために、鍵の揺動に伴って揺動する揺動部材(例えばハンマー)を備えた鍵盤装置にあっては、揺動部材と板ばねの干渉防止のため、大きな高さを必要としていた。そこで、鍵盤装置の高さを抑制するために、板ばねの長さを短くすることが考えられるが、このように構成すると、板ばねが固くなり、基板のフレームへの組み付け時に大きな力を必要とするため、基板のフレームへの組み付け性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、高さを抑制するとともに、基板のフレームへの組み付け性が良好な鍵盤装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、演奏者によって押離鍵操作される複数の鍵(11)と、複数の鍵を上下方向に揺動可能に支持するフレーム(12,35)と、複数の鍵の押離鍵状態を検出するための複数のスイッチ(27)が配置された基板(26,38)と、フレームに一体的に設けられ、基板の前部を保持する第1の保持部(28,37)と、フレームに一体的に設けられ、基板の後部を保持する第2の保持部(29,36)とを備えた鍵盤装置において、第1及び第2の保持部のうちの少なくとも一方の保持部は、複数の鍵の並び方向に延設された変形部(29b)であって、一端を上下方向に沿って固定された固定端とし、他端を自由端として前後方向に変形可能な変形部を有することを特徴とすることにある。この場合、変形部は、基板側に突出した突起(29c)を有するようにするとよい。また、この場合、フレームに段差を設け、段差の立ち上がり部の前後にて複数の鍵の並び方向に貫通孔(31,32)を延設するとともに、前記貫通孔の間の段差の立ち上がり部の一部を切り取って、前記貫通孔の一部を連結することにより、段差の立ち上がり部に変形部を形成するとよい。これによれば、変形部を横方向(鍵の並び方向)に延設したので、鍵盤装置の高さを抑制することができる。また、変形部はその一端を固定端としたので、変形部の両端を固定端として、その中央部を前後に変形させる場合に比べて、小さな力で変形部を変形させることができる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、突起は、鍵の左右の側壁の間に位置し、少なくとも押鍵時に、突起の上端が鍵の側壁の下端より上方に位置するようにしたことにある。これによれば、前記少なくとも一方の保持部の突起が、少なくとも押鍵時に鍵の内側に入り込むので、離鍵時における、鍵と前記少なくとも一方の保持部との上下方向の間隔をさらに小さくすることができる。したがって、鍵盤装置の高さをさらに抑制することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、さらに、フレームに支持され、鍵の押離鍵操作に伴って揺動する揺動部材(17)と、段差の前段部(12a)又は後段部(35b)に設けられた、揺動部材の揺動を規制するためのストッパ(22)と、段差の立ち上がり部から基板側へ突出した、基板を載置するためのベース部(29a)とを備えたことにある。これによれば、アコースティックピアノの鍵タッチを模擬するための揺動部材(例えばハンマー)を有する鍵盤装置であっても、前記少なくとも一方の保持部の高さが小さいので、揺動部材と前記少なくとも一方の保持部との干渉を避けるための大きな高さを必要としない。したがって、揺動部材を有する鍵盤装置であっても、高さを抑えた鍵盤装置を実現できる。また、揺動部材に当接して、揺動部材の揺動を規制するためのストッパを前記段差の前段部又は後段部に設けた場合でも、前記段差の立ち上がり部は、前記段差の前段部及び後段部に比べて上下方向に変形し難いので、揺動部材がストッパに当接して生じる衝撃によるベース部の上下方向の振動を小さくすることができる。すなわち、前記衝撃は、ストッパだけでなく、前記段差の前段部又は後段部によっても伝達されるが、ベース部の振動は小さく、ベース部に載置された基板の上下方向の振動が抑制されるので、スイッチの検出精度を良好に保つことができる。
【0009】
なお、前記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態との対応関係を示すものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る鍵盤装置の右側面図である。
【図2】図1の鍵盤装置のフレームの平面図である。
【図3】図2の固定保持部及び可動保持部の拡大図である。
【図4A】図3のA−A線に沿って見た断面図である。
【図4B】図3のB−B線に沿って見た断面図である。
【図4C】図3のC−C線に沿って見た断面図である。
【図4D】図3のD−D線に沿って見た断面図である。
【図5】図1の鍵盤装置の基板の組み付け手順を示す図である。
【図6】本発明の変形例に係る鍵盤装置の右側面図である。
【図7】本発明の他の変形例に係る鍵盤装置の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る鍵盤装置を高音部側(演奏者から見て右側)から見た図である。鍵11は合成樹脂によって長尺状に一体成型されている。鍵11は、前後に延設された薄肉の上壁及び上壁の左右端からそれぞれ下方へ延設された薄肉の側壁を有し、下方に開放した中空状に形成されている。そして、鍵11は、下方に設けられたフレーム12の鍵支持部13により支持されており、後端部の回転中心14を中心として、前端部が上下方向に揺動可能となっている。
【0012】
フレーム12は、樹脂の一体成型により横方向(鍵の並び方向)に延設されている。フレーム12は、図1及び図2に示すように、それぞれ横方向に延設された前板12a及び後板12bを有する。後板12bは前板12aよりも高い位置にあり、前板12aの後端と後板12bの前端は横方向に延設された垂直板12cによって接続されている。すなわち、フレーム12の上部には、前板12a及び後板12bにより段差が形成されている。
【0013】
鍵11の中間部には、フレーム12の前部に設けられた鍵ガイド15が下方から侵入しており、鍵11の前端部は、押鍵時に鍵ガイド15に案内されて上下方向に揺動する。鍵11の前部から下方に向かって駆動部16が延設されている。駆動部16は、上下に延設された薄肉の前壁及び前壁の左右端からそれぞれ後方へ延設された薄肉の側壁を有し、後方に開放した中空状に形成されている。駆動部16の下端は下端壁により閉じている。
【0014】
鍵11の下方には、鍵11に慣性力を付与してアコースティックピアノの鍵タッチ感を模擬するため、鍵11の押離鍵操作に伴って揺動する揺動部材としての揺動レバー17が設けられている。揺動レバー17は、合成樹脂製のレバー基部17a及び金属製の質量体17bからなる。レバー基部17aは、板状の部材であって、その下部に設けたフック部17a1にて、フレーム12の下部に設けたレバー支持部18に、ピン18aの軸線周りに回動可能に支持されている。また、レバー基部17aは、前端部に上下一対の脚部17a2,17a3を備え、上方に位置する脚部17a2は下方に位置する脚部17a3より短く形成されている。脚部17a2,17a3の間には、鍵11の駆動部16の下端壁が侵入している。駆動部16の下端壁には、ゴム、ウレタン、フエルトなどの衝撃吸収材19が嵌め込まれて固着され、駆動部16の下端壁と脚部17a3の上面との衝突、及び駆動部16の下端壁と脚部17a2の下面との衝突による衝撃を緩和している。鍵11の離鍵時には、揺動レバー17の自重により、揺動レバー17の前端部が上方へ変位する。このとき、脚部17a3により駆動部16が上方へ付勢され、鍵11の前端部は上方へ変位する。一方、鍵11の押鍵時には、駆動部16の下端面が脚部17a3の上面を押圧し、揺動レバー17の前端部は下方へ変位する。
【0015】
質量体17bは、板状に形成され、レバー基部17aの後端に組み付けられている。質量体17bは、全ての鍵11に対して共通としてもよいし、アコースティックピアノの鍵タッチ感をより忠実に模擬するために、低音側から高音側に向かうに従って、鍵11ごと又は鍵域ごとに軽くしてもよい。
【0016】
また、フレーム12の前端部の下面には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の上限ストッパ21が、横方向に延設されて固着されている。この上限ストッパ21は、揺動レバー17の前端部の上方への変位を規制することにより、離鍵時における鍵11の前端部の上方への変位を規制する。また、フレーム12の前板12aの下面には、フエルトなどの衝撃吸収材によって構成した長尺状の下限ストッパ22が、横方向に延設されて固着されている。この下限ストッパ22は、揺動レバー17の後部の上方への変位を規制することにより、押鍵時における鍵11の前端部の下方への変位を規制する。
【0017】
また、鍵11の中間部の下面には、スイッチ駆動部25が設けられている。スイッチ駆動部25は、基板26上に配置されたスイッチ27の上面に当接している。スイッチ27は、各鍵11ごとに設けられ、各鍵11の揺動に伴って押圧されて、押離鍵状態を検出する。なお、スイッチ27は、各揺動レバー17の揺動に伴って揺動レバー17によって押圧されて、各鍵11の押離鍵状態を検出するようにしてもよい。基板26は、フレーム12に設けられた固定保持部28及び可動保持部29によって保持されている。固定保持部28及び可動保持部29は、樹脂によりフレーム12に一体的に形成される。固定保持部28及び可動保持部29は、それぞれ横方向に間隔をおいて複数箇所に設けられている。ただし、必ずしも等間隔に配置する必要はなく、それぞれの間隔が異なっていてもよい。
【0018】
固定保持部28は、図3及び図4Aに示すように、基板26の前端部を載置する左右一対のベース部28a,28a、基板26の前端に当接して基板26の前方向の位置を規定する壁部28b及び基板26の上方向の位置を規定する突起部28cからなる。なお、これらのベース部28a,28a、壁部28b及び突起部28cにより囲まれる前板12aの部分にはほぼ方形状の貫通孔28dが設けられている。
【0019】
ベース部28a,28aは、それぞれ左右方向よりも前後方向を長くして平面視方形状に形成され、前板12aの前部上面から上方に突出しており、それらの上面28a1,28a1が前板12aの上面に平行な平面状に形成されている。壁部28bは、平面視方形状に形成されるとともに左右方向中央部に前方に突出する凸部を有するように形成され、ベース部28a,28aの左右方向の中間位置にて、前板12aの上面から上方へほぼ垂直に突出している。より詳細には、壁部28bは、前板12aの上面に対して、上方に向かうに従って僅かに後方へ傾いて立設している。この壁部28bの上端は、ベース部28a,28aの上面より十分高く位置している。壁部28bの左右両端は、左右一対の連結部28e,28eにより、ベース部28a,28aに一体的に連結されている。連結部28e,28eは、ベース部28a,28aの前側部分を左右方向に延設したものである。そして、連結部28e,28eの上面は、ベース部28a,28aの上面28a1,28a1と同一平面を形成している。
【0020】
また、壁部28bの上端部から後方へ向かって突起部28cが突出している。突起部28cの下面28c1はベース部28a,28aの上面28a1,28a1と平行、すなわち前板12aの上面と平行となっている。また、基板26の組み付け時に基板26を固定保持部28内へ侵入させ易くするため、突起部28cの後側の下端が大きく面取りされている。
【0021】
また、図2に示すように、前板12aの上面側の前部には、基板26の横方向の位置を規定する垂直壁28fが設けられている。垂直壁28fは、前後方向に延設された、横方向に薄肉の壁体である。基板26には、基板前端から基板の内側に向かって切り欠きが設けられており、この切り欠きに垂直壁28fが侵入して、基板26の横方向の位置を規定する。
【0022】
また、可動保持部29は、図3、図4B、図4C及び図4Dに示すように、基板26の後部を載置するベース部29a、基板26を固定保持部側へ付勢する変形部29b及び基板26の上方向の位置を規定する突起部29cを有する。
【0023】
前板12aの後部には、前板12aと後板12bの段差の立ち上がり部に沿った横長の貫通孔31が設けられている。また、後板12bの前部には、前記段差の立ち上がり部に沿って、前後方向の幅が狭い横長の貫通孔32(スリット)が設けられている。貫通孔31,32の左端の位置は同じであるが、貫通孔31の右端は、貫通孔32の右端よりも右方に位置する。ベース部29aは、左右方向よりも前後方向を長くした平面視方形状で、前後に段差を有するように形成され、貫通孔31の右端に沿って垂直板12cの前面から前方へ突出している。ベース部29aの前段の上面29a1は、前板12aの上面と平行であり、固定保持部28のベース部28a,28aの上面28a1,28a1と同一平面を形成する。ベース部29aの後段の上面29a2は、後板12bの上面と同一平面を形成する。上面29a1の後端と上面29a2の前端を連結する垂直壁29a3は、垂直板12cの前面と平行となっている。
【0024】
また、貫通孔31,32の間の前記段差の立ち上がり部の右端部が切り取られて、貫通孔31の中間部と貫通孔32の右端部が連結されており、貫通孔31,32によって前記段差の立ち上がり部の前後に亘る1つの貫通孔が形成されている。これにより、貫通孔31,32の間の前記段差の立ち上がり部には、変形部29bが形成される。すなわち、左端のみが上下方向に沿って固定された片持ち梁状の変形部29bが形成される。変形部29bは、前述した垂直板12cの一部を構成するもので、横方向(鍵の並び方向)に延設された、前後方向に薄肉の板状になっている。したがって、変形部29bは、前後方向の押圧力が付与されると、左端を固定端とし、右端を自由端として、前後方向に変形する。
【0025】
変形部29bの右端部には突起部29cが設けられている。突起部29cは、上端から下方に向かうに従って前方への張り出しが大きくなる急傾斜の傾斜面29c1を有する。傾斜面29c1の下端の上下方向の位置は、後板12bの上面とほぼ同じ位置である。そして、傾斜面29c1の下端から後方に向かう平面状の係止面29c2には、傾斜面29c1の下端から若干量だけ後方位置を前端として垂直に下方へ向かう円柱状の基板押圧部29c3が変形部29bと一体連結されて設けられている。基板26がフレーム12に組み付けられていない状態において、基板押圧部29c3の前端は、ベース部29aの垂直壁29a3よりも前方に位置する。基板押圧部29c3の直径は、変形部29bの板厚よりも大きい。基板押圧部29c3の前面は、変形部29bの前面よりも前方へ大きく突出しており、基板押圧部29c3の後面は、変形部29bの後面よりも後方へ若干突出している。変形部29bが後方へ変形したときに、基板押圧部29c3の後面と後板12bが干渉しないようにするため、基板押圧部29c3の後方に位置する後板12bの前端部には、基板押圧部29c3の後面に対応した凹部が設けられている。突起部29cは、この突起部29cが設けられた位置の上方に位置する鍵11の左右の側壁の中間に位置する。また、前記鍵11の左右側壁の部分であって、突起部29cと前後方向の位置が同一の部分の下端は、突起部29cの上端よりも下方に位置する。すなわち、突起部29cの上部は、前記鍵11の内側に入り込んでいる。なお、変形部29bは、左端を固定端としたが、右端を固定端としてもよい。すなわち、貫通孔31,32の右端の位置を同じにしておき、貫通孔31の左端を貫通孔32の左端よりも左方に位置させておく。そして、貫通孔31,32の間の立ち上がり部の左端部を切り取って、貫通孔31の中間部と貫通孔32の左端部を連結することにより、変形部を形成するようにしてもよい。この場合、変形部の左端部に突起部29cを設ければよい。
【0026】
次に、基板26のフレーム12への組み付ける手順を説明する。まず、図5に示すように、固定保持部28の突起部28cの面取り部に、基板26の前端部の上面を沿わせるようにして、基板26を固定保持部28に斜めに侵入させる。このとき、基板26の前端に設けた切り欠きに垂直壁28fが侵入するように基板26の横方向の位置を調整する。次に、基板26を倒すようにして、基板26の後端を可動保持部29の突起部29cに近づける。すると、基板26の後端が傾斜面29c1に当接する。さらに基板26を倒すと、傾斜面29c1は前方に張り出しているから、基板26の後端が変形部29bを後方へ押圧して変形させる。基板26の後端が傾斜面29c1を乗り越えると、変形部29bは、元の位置に復帰しようとするため、基板押圧部29c3の前端が基板26の後端に当接して、基板26を前方へ押し返す。すなわち、可動保持部29は、基板26を固定保持部28側へ付勢する。このとき、基板押圧部29c3は円柱状に形成されているので、基板26の後端にひっかかることなく滑らかに基板26を押し返すことができる。この状態では、基板26の前部下面は、固定保持部28のベース部28a,28aの上面28a1,28a1に当接している。そして、基板26は、固定保持部28のベース部28a,28aの上面28a1,28a1及び可動保持部29のベース部29aの上面29a1上を前方へ変位して、基板26の前端面が壁部28bの後面に当接した時点で停止する。
【0027】
基板26が組み付けられていない状態において、固定保持部28の壁部28bと可動保持部29の基板押圧部29c3の前端の間隔は、基板26の前後方向の幅よりも若干小さく設定される。したがって、基板26を取り付けた状態では、変形部29bは僅かに後方へ変形しており、基板26を壁部28bに押し付けている。これにより、基板26の前後方向の位置が規定される。すなわち、基板26は固定保持部28に当接している。なお、この状態では、基板26の後端とベース部29aの垂直壁29a3の間には若干の隙間がある。また、固定保持部28のベース部28a,28aの上面28a1,28a1と突起部28cの下面28c1との上下方向の間隔は基板26の厚さとほぼ同じに設定されているので、基板26の前端部が上面28a1,28a1と下面28c1に挟まれることにより、基板26の前端部の上下方向の位置が規定される。一方、可動保持部29のベース部29aの上面29a1と突起部29cの係止面29c2との上下方向の間隔も基板の厚さとほぼ同じに設定されているので、基板26の後端部は、上面29a1と係止面29c2に挟まれることにより、上下方向の位置も規定される。すなわち、基板26は固定保持部28と可動保持部29によって保持される。
【0028】
上記実施形態においては、フレーム12に段差を設け、その段差の立ち上がり部に変形部29bを構成した。すなわち、変形部29bを横方向に延設した。そのため、上記従来の鍵盤装置に比べて可動保持部29の高さを抑制することができる。また、押鍵に伴って揺動レバー17が揺動しても、揺動レバー17は、可動保持部29と干渉することが無い。さらに、突起部29cを同突起部29cが位置する位置の鍵11の左右の側壁の中間に配置したので、離鍵時及び押鍵時において、鍵11の内側に突起部29cが入り込む。そのため、離鍵時における鍵11と可動保持部29との間隔をさらに小さくすることができるので、鍵盤装置の高さをさらに抑制することができる。
【0029】
また、変形部29bは、左端を上下方向に沿って固定された固定端とし、右端を自由端として前後方向に変形するようにした。そのため、変形部の両端を固定して、その中央部を前後に変形させる場合に比べて、小さな力で変形部29bを変形させることができる。したがって、基板26のフレーム12への組み付け性を良好にできる。
【0030】
また、押鍵時に揺動レバー17が下限ストッパ22に当接して生じる衝撃は下限ストッパ22により吸収される。しかし、前記衝撃は下限ストッパ22によって完全には吸収されず、その衝撃によって前板12aが上下に振動することがある。しかし、垂直板12cは、前板12aに比べて上下方向に変形し難いので、ベース部29aの上下方向の振動は小さい。すなわち、前記衝撃は下限ストッパ22及び前板12aによって吸収され、ベース部29aに載置された基板26の上下方向の振動が抑制されるので、スイッチ27の検出精度を良好に保つことができる。
【0031】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0032】
上記実施形態においては、フレーム12の前板12aが後板12bよりも低くなるように段差を設けた。しかし、フレーム12に代えて、図6に示すように、前板が後板よりも高くなるようにしたフレーム35としてもよい。すなわち、フレーム35は、それぞれ横方向に延設された前板35a及び後板35bを有する。前板35aは後板35bよりも高い位置にあり、前板35aの後端と後板35bの前端は横方向に延設された垂直板35cによって接続されている。そして、後板35bの後部に、固定保持部28と同様の形状で、固定保持部28とは前後の向きを逆(すなわち前向き)にした固定保持部36を設ける。一方、前板35aと後板35bにより形成される段差部に、可動保持部29と同様の形状で、前後の向きを逆(すなわち後向き)にした可動保持部37を設ける。ここで、鍵11は揺動角度が同一であれば、鍵11の前端に近いほど上下方向の変位量が大きい。したがって、押鍵時に鍵11と前板35aが干渉するのを避けるため、上記実施形態よりも、離鍵時における鍵11と前板35aの間隔を大きくしておく必要がある。そのため、本変形例においては、鍵11の側壁の一部であって、前板35aの上方に位置する部分の高さ方向の幅を上記実施形態よりも小さくしている。その他の構成は上記実施形態と同様である。基板26をフレーム35に取り付けるためには、基板26を斜めにして、後端部を固定保持部36内に侵入させておき、前端側を倒して可動保持部37内に侵入させるようにすればよい。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0033】
また、上記実施形態及びその変形例においては、基板26の前端又は後端のいずれか一方を可動保持部29,37により保持するようにした。しかし、基板26の前端及び後端の両方が可動保持部によって保持されるようにしてもよい。この場合、フレーム12の段差とフレーム35の段差の両方を有するフレームとすればよい。すなわち、フレームの縦断断面の形状は、基板26を保持する部分が凹状となっている。そして、段差部に可動保持部29,37と同様の可動支持部を設ければよい。このように構成した場合、基板26を取り付けるにあたっては、基板26の前端部及び後端部を可動保持部の突起上に載置した後、基板26全体を下方に押圧して、基板26の前端部及び後端部を可動保持部内に侵入させればよい。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0034】
また、図7に示すように、基板26よりも前後方向の幅が大きい基板38を保持するようにしてもよい。この場合、基板38の前部の固定保持部28に対応した位置に、上面から下面に貫通した方形状の貫通孔38aを設けておいて、貫通孔38aに固定保持部28の突起部28cを通して、貫通孔38aの周縁部をベース部28a、壁部28b及び突起部28cにより保持するようにすればよい。基板38の後端部は、上記実施形態と同様に保持する。この場合、基板38の組み付ける際、固定保持部28に基板38を侵入させ易くするため、ベース部28a,28aの上面28a1,28a1の中間部から前方の部分を、前方に向かうに従って低くなるように傾斜させるとともに、連結部28e,28eの上面もベース部28aの傾斜面と同一平面を形成するように傾斜させるとよい。また、図7に示す変形例と同様に、図6に示す変形例においても、基板26よりも前後方向の幅が大きい基板を保持するようにしてもよい。すなわち、基板の後部の固定保持部37に対応した位置に、貫通孔を設けておいて、この貫通孔の周縁部を固定保持部37により保持するようにすればよい。
【0035】
また、上記実施形態及びその変形例においては、鍵11を、下方に開放した中空状にし、突起部29cが鍵11の内側に入り込むようにした。しかし、鍵11を下方に開放した中空状にできない場合(例えば木製鍵)は、鍵11と突起部29cが干渉するのを避けるために、鍵11の下面に凹部を設ければよい。そして、少なくとも押鍵時に突起部29cが凹部内に侵入するようにすればよい。このように構成すれば、鍵盤装置の高さを抑制することができる。鍵11の下部に凹部を設けることもできない場合は、離鍵時において、突起部29cの上端と鍵11の下面との間に、鍵11と突起部29cが干渉するのを避けるために十分な間隔を設けておく必要がある。この場合、突起部29cは鍵11の左右の側壁の中間にある必要はない。このように構成すると、上記実施形態に比べて、鍵盤装置の高さは若干大きくなるが、上記従来の鍵盤装置に比べれば、高さを抑制することができる。
【0036】
また、上記実施形態及びその変形例においては、アコースティックピアノの鍵タッチ感を模擬するために、揺動レバー17を有するようにした。しかし、アコースティックピアノの鍵タッチ感を模擬する必要のない電子楽器用の鍵盤装置であっても上記実施形態及びその変形例と同様に構成できる。すなわち、上記実施形態及びその変形例において、揺動レバー17を削除し、鍵11の前端を上方へ付勢する付勢手段(例えばバネ)をさらに設ければよい。このように構成しても、鍵盤装置の高さを抑制することができる。
【符号の説明】
【0037】
11・・・鍵、12,35・・・フレーム、12a・・・前板、17・・・揺動レバー、22・・・ストッパ、26,38・・・基板、28,36・・・固定保持部、29,37・・・可動保持部、29a・・・ベース部、29b・・・変形部、29c・・・突起部、31,32・・・貫通孔、35b・・・後板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者によって押離鍵操作される複数の鍵と、
前記複数の鍵を上下方向に揺動可能に支持するフレームと、
前記複数の鍵の押離鍵状態を検出するための複数のスイッチが配置された基板と、
前記フレームに一体的に設けられ、前記基板の前部を保持する第1の保持部と、
前記フレームに一体的に設けられ、前記基板の後部を保持する第2の保持部とを備えた鍵盤装置において、
前記第1及び第2の保持部のうちの少なくとも一方の保持部は、前記複数の鍵の並び方向に延設された変形部であって、一端を上下方向に沿って固定された固定端とし、他端を自由端として前後方向に変形可能な変形部を有することを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記変形部は、前記基板側へ突出した突起を有することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記突起は、前記鍵の左右の側壁の間に位置し、少なくとも押鍵時に、前記突起の上端が前記鍵の側壁の下端より上方に位置するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記フレームに段差を設け、前記段差の立ち上がり部の前後にて前記複数の鍵の並び方向に貫通孔を延設するとともに、前記貫通孔の間の前記段差の立ち上がり部の一部を切り取って、前記貫通孔の一部を連結することにより、前記段差の立ち上がり部に前記変形部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1つに記載の鍵盤装置。
【請求項5】
請求項4に記載の鍵盤装置において、さらに、
前記フレームに支持され、前記鍵の押離鍵操作に伴って揺動する揺動部材と、
前記段差の前段部又は後段部に設けられた、前記揺動部材の揺動を規制するためのストッパと、
前記段差の立ち上がり部から前記基板側へ突出した、前記基板を載置するためのベース部とを備えたことを特徴とする鍵盤装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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