説明

【課題】 像を反転する鏡でありながら、薄くて持ち運びに便利でコンパクトな鏡を提供する。
【解決手段】 第1の方向の断面では物体面と反対側に凸面を向けた非球面であり、前記第1の方向に直交する第2の方向の断面では平面である透過光学素子と、前記透過光学素子に対して物体面と反対側に配置した反射光学素子と、を有し、前記物体面から出射した光束は、前記透過光学素子を経て、前記反射光学素子で反射され、前記反射光学素子側から前記透過光学素子を通過し、瞳で結像することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡に関し、特に、像を反転させる鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、像を反転させる鏡として特許文献1及び特許文献2のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−211977号公報
【特許文献2】特開2003−210292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2において知られている技術は、どちらも2枚の鏡を直角に配置した構造であり、1枚の鏡と比較して奥行きが必要となり、コンパクト性に欠けていた。
【0005】
本発明は、従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、像を反転する鏡でありながら、薄くて持ち運びに便利でコンパクトな鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の鏡は、第1の方向の断面では物体面と反対側に凸面を向けた非球面であり、前記第1の方向に直交する第2の方向の断面では平面である透過光学素子と、前記透過光学素子に対して物体面と反対側に配置した反射光学素子と、を有し、前記物体面から出射した光束は、前記透過光学素子を経て、前記反射光学素子で反射され、前記反射光学素子側から前記透過光学素子を通過し、瞳で結像することを特徴とする。
【0007】
また、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の鏡。
fx/3<d<2fx ・・・(1)
ただし、dは反射光学素子と透過光学素子の間隔、
fxは透過光学素子の第1の方向の断面の焦点距離、
である。
【0008】
また、前記透過光学素子を支持する第1支持部材と、前記反射光学素子を支持する第2支持部材と、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを連結する移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記第1支持部材に支持された前記透過光学素子を、前記第2支持部材に支持された前記反射光学素子に対して近接・離間可能に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明の鏡においては、像を反転する鏡でありながら、薄くて持ち運びに便利でコンパクトな鏡を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる鏡の光学系の第1の方向の断面図である。
【図2】本発明にかかる鏡の光学系の第1の方向に直交する第2の方向の断面図である。
【図3】本発明にかかる鏡を示す図である。
【図4】本発明にかかる格納した状態の鏡を示す図である。
【図5】本発明にかかる折り畳んだ状態の鏡を示す図である。
【図6】他の実施形態の鏡を示す図である。
【図7】本発明にかかる格納した状態の鏡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の鏡は、第1の方向の断面では物体面と反対側に凸面を向けた非球面であり、第1の方向に直交する第2の方向の断面では平面である透過光学素子13と、透過光学素子13に対して物体面と反対側に配置した反射光学素子14と、を有し、物体面から出射した光束は、透過光学素子13を経て、反射光学素子14で反射され、反射光学素子14側から透過光学素子13を通過し、瞳Eで結像する。
【0012】
このような構成とすることにより、薄くて持ち運びに便利でコンパクトな鏡を提供することが可能となる。
【0013】
また、本実施形態の鏡は、以下の条件式(1)を満足する。
fx/3<d<2fx ・・・(1)
ただし、dは反射光学素子と透過光学素子の間隔、
fxは透過光学素子の第1の方向の断面の焦点距離、
である。
【0014】
条件式(1)の下限を下回ると、観察虚像の位置が観察者側になりすぎ、目のピント(視度)をあわすことが難しくなり、明瞭な観察を行うことができない。また、条件式(1)の上限を上回ると、観察虚像の位置が無限遠を超えて収束光束になってしまい、肉眼で観察することができなくなってしまう。
【0015】
以下、実施例に基づいて本発明にかかる鏡について説明する。
【0016】
実施例1の鏡1の光学系11の光軸12に沿ってとった第1の方向の断面図を図1に、第1の方向に直交する第2の方向の断面図を図2に示す。
【0017】
本実施例1は、物体面と反対側にシリンドリカル面を有する透過光学素子13と、透過光学素子13の物体面と反対側に反射光学素子14を備えるものである。
【0018】
透過光学素子13は、物体面側に平面、物体面と反対側にシリンドリカル面を有する。したがって、図1に示すように、第1の方向としての水平方向断面では、非球面であり、図2に示すように、第2の方向としての鉛直方向断面では、平面である。
【0019】
反射光学素子14は、平面からなる。
【0020】
物体面から出射した光束は、透過光学素子13を経て、反射光学素子14で反射され、反射光学素子14側から透過光学素子13を通過し、瞳Eで結像する。
【0021】
実施例1の仕様は、
追跡像高 φ40
瞳径 φ20
である。
【0022】
以下に、上記実施例の構成パラメータを示す。
【0023】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0024】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない係数項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。
【0025】
なお、非球面は、以下の定義式で与えられる回転対称非球面である。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 1 /2
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
ただし、Zを軸とし、Yを軸と垂直な方向にとる。ここで、Rは近軸曲率半径、kはコーニック定数、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。この定義式のZ軸が回転対称非球面の軸となる。
【0026】
実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ 300.00
1 Yトーリック面 15.00 1.5163 64.1
2 ∞ 200.00
3 Yトーリック面 -200.00 1.5163 64.1
4 ∞ -15.00
5 ∞ -300.00
6 ∞(絞り) 1019.00
像 面 ∞

Yトーリック面
RX=-100.00
k=-1.00
RY=∞
【0027】
次に、上記各実施例における各種データの値を示す。
【0028】
各種データ 実施例1
Fx 193.7
【0029】
このように、鏡1の光学系11を構成することにより、像を反転する鏡でありながら、薄くて持ち運びに便利でコンパクトであると共に、コントラストに優れ、再現性の高い鏡とすることが可能となる。
【0030】
また、透過光学素子13として、Yトーリック面の代わりにフレネル面を用いてもよい。フレネル面を用いることにより、さらに薄型化することが可能となる。
【0031】
次に、光学系11を支持部材で支持した鏡1の実施形態について説明する。
【0032】
図3〜図5は、第1の実施形態を示す図である。図3は本発明にかかる鏡を示す図、図4は鏡の透過光学素子を格納した状態を示す図、図5は鏡を折り畳んだ状態を示す図である。図中、21は台部、22はヒンジ等で形成される折り畳み部、23は第1支持部材、24は第2支持部材、25は移動機構である。
【0033】
第1支持部材23は、光学系11の反射光学素子14を支持するものであり、台部21と折り畳み部22を介して、折り畳み可能に連結されている。また、第1支持部材23には透過光学素子13を移動させる移動機構25が設けられている。
【0034】
第2支持部材24は、光学系11の透過光学素子13を支持するものであり、移動機構25により、第1支持部材23と連結されている。
【0035】
移動機構25は、透過光学素子13を反射光学素子14に対して近接・離間可能に移動させるものである。本実施形態では、移動機構25は、交差して配置する連結部材25aを有し、連結部材25aの一端を第1支持部材23又は第2支持部材24のどちらか一方に回動可能に支持され、連結部材25aの他端を他方にスライド支持することで移動可能とする。
【0036】
図3に示すように、鏡を使用する場合、図5に示す鏡を折り畳んだ状態から第1支持部材23を開き、図4に示すような透過光学素子13が格納された状態から移動機構24を作動させて透過光学素子13を前に移動させる。移動機構24の作動は、ボタン等により作動させてもよいし、第1支持部材23が開くことに連動して作動させてもよい。また、第1支持部材23が開く動作は、図5に示すような折り畳まれた状態からボタン等により作動させればよい。さらに、第1支持部材23が開き、移動機構24により透過光学素子13及び第2支持部材24を前に移動させる一連の動作をボタン等により作動させてもよい。
【0037】
なお、第1支持部材23及び第2支持部材24が図3に示す所定の位置で停止するように連結部材25aのスライドを規制する図示しない規制部材を有することが好ましい。この位置によって鏡の光学性能・機能が決定される。
【0038】
図6及び図7は、第2の実施形態を示す図である。図6は本発明にかかる鏡を示す図、図7は鏡を格納した状態を示す図である。図中、31は第1支持部材、32は第2支持部材、33は移動機構である。
【0039】
第1支持部材31は、光学系11の反射光学素子14を支持するものであり、第2支持部材32は、透過光学素子13を支持するものである。移動機構33は、第1支持部材31及び第2支持部材32にそれぞれ回動可能な連結部材33aを有し、透過光学素子13を反射光学素子14に対して近接・離間可能に移動させるものである。
【0040】
図6に示す鏡として使用する状態から、図7に示す格納した状態に変換するには、移動機構33を作動させ、連結部材33aを回動させればよい。その際、第1支持部材31及び第2支持部材32が図6に示す所定の位置で停止するように連結部材33aの回動を規制する図示しない規制部材を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1…鏡
11…光学系
12…光軸
13…透過光学素子
14…反射光学素子
21…台部
22…折り畳み部
23…第1支持部材
24…第2支持部材
25…移動機構
31…第1支持部材
32…第2支持部材
33…移動機構
E…瞳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の断面では物体面と反対側に凸面を向けた非球面であり、前記第1の方向に直交する第2の方向の断面では平面である透過光学素子と、
前記透過光学素子に対して物体面と反対側に配置した反射光学素子と、
を有し、
前記物体面から出射した光束は、前記透過光学素子を経て、前記反射光学素子で反射され、前記反射光学素子側から前記透過光学素子を通過し、瞳で結像する
ことを特徴とする鏡。
【請求項2】
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の鏡。
fx/3<d<2fx ・・・(1)
ただし、dは反射光学素子と透過光学素子の間隔、
fxは透過光学素子の第1の方向の断面の焦点距離、
である。
【請求項3】
前記透過光学素子を支持する第1支持部材と、
前記反射光学素子を支持する第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを連結する移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、前記第1支持部材に支持された前記透過光学素子を、前記第2支持部材に支持された前記反射光学素子に対して近接・離間可能に移動させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−224104(P2010−224104A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69759(P2009−69759)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】