説明

長尺体積ホログラム層転写箔、および、これを用いた体積ホログラム積層体の製造方法

【課題】全面を転写に用いることができる体積ホログラム層を被転写体に転写することにより、簡易な工程で、体積ホログラム積層体の製造が可能な、長尺体積ホログラム層転写箔の提供。
【解決手段】長尺状の基材1と、その上に形成された剥離性保護層2と、剥離保護層上に形成された体積ホログラム層3と、体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層4とを有し、更に基材のヒートシール層が形成された面とは反対面上のヒートシール層が形成された領域と重なる位置に体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるマーク層5と、少なくとも上記マーク層上に形成され、表面に離型性を有する背面層6と、を有することを特徴とする、長尺体積ホログラム層転写箔10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続的に体積ホログラム層を転写することにより、連続的に体積ホログラム層を有する積層体(体積ホログラム積層体)を製造するために用いられる長尺体積ホログラム層転写箔、および、これを用いた体積ホログラム積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、波長の等しい二つの光(物体光と参照光)を干渉させることによって、物体光の波面が干渉縞として感光材料に記録されたものであり、干渉縞記録時の参照光と同一波長の光が当てられると干渉縞によって回折現象が生じ、元の物体光と同一の波面が再生できるものである。このようなホログラムは、外観が美しく、複製が困難である等の利点を有することから、セキュリティ用途等に多く使用されている。なかでもクレジットカードや、キャッシュカード等に代表されるプラスチックカードにおいては、主として複製防止および意匠性付与の観点からホログラム付カードが広く用いられるに至っている。
【0003】
ホログラムは、干渉縞の記録形態によっていくつかの種類に分類することができるが、表面レリーフ型ホログラムと体積型ホログラムとが代表的である。ここで、表面レリーフ型ホログラムは、ホログラム層の表面に微細な凹凸パターンが賦型されることによりホログラム像が記録されたものである。一方、上記体積型ホログラムは光の干渉によって生じる干渉縞が、屈折率の異なる縞として厚み方向に三次元的に描画されることによってホログラム像が記録されたものである。このうち、上記体積型ホログラムは材料の屈折率差によってホログラム像が記録されたものであるため、上記レリーフ型ホログラムに比べて複製することが困難であるという利点を有することから、有価証券やカード類の偽造防止手段としての用途が期待されている。
【0004】
上記体積ホログラム層を偽造防止手段や意匠性向上手段としても用いる場合、通常ホログラム像が記録された体積ホログラム層を、所望の被着体に貼り合わせることによってホログラム積層体を構成する方法が用いられる。なかでも、より簡便な方法として、任意の基材上にホログラム像が記録された体積ホログラム層が形成された体積ホログラム層転写箔から、体積ホログラム層を被転写体に転写することによって、体積ホログラム層を被転写体の所定の位置に貼付する方法が広く用いられるに至っている。より具体的には、図16に例示するように、長尺の基材101上に剥離性保護層102、体積ホログラム層103、およびヒートシール層104がこの順で形成された構成を有する体積ホログラム層転写箔100を用い(図16(a))、当該体積ホログラム層転写箔100を搬送しながら、適宜、体積ホログラム層103を被転写体200へ連続的に転写させる方法(図16(b))が用いられている。
【0005】
また、図16に例示したような長尺の体積ホログラム層転写箔を用いる方法においては、体積ホログラム層に記録された体積ホログラム像の位置関係に基づいて配置され、前記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるマーク層が形成されることが一般的である。このようなマーク層は、上記基材のヒートシール層が形成された側に形成されるのが通常であった(例えば、特許文献1)。これは、ヒートシール層上にマーク層を形成すると、上記剥離性保護層、体積ホログラム層、およびヒートシール層が形成された基材の表面と、同一表面側にマーク層が形成されることになるため、上記マーク層を形成することが容易化され、体積ホログラム層転写箔の製造方法を簡易化することができるということが主たる理由とされていた。
【0006】
【特許文献1】特開平05−155159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記基材のヒートシール層が形成された側にマーク層を形成することについては、次のような問題点ある。
すなわち、例えば、ヒートシール層上にマーク層を形成する場合、体積ホログラム層を被転写体に転写する際に、マーク層も一緒に転写されてしまうことを防止するため、マーク層が形成された領域は転写領域として使用しないことが必要になる。このため、体積ホログラム層の全面を転写に使用することができず、体積ホログラム層の使用効率が悪いという問題点がある。そして、このようにマーク層が形成された領域を転写領域として使用しないためには、体積ホログラム層を転写する工程において、上記マーク層が形成されている領域が加熱されないようにしなければならないことから、体積ホログラム層の転写工程が複雑になってしまうという問題点ある。
【0008】
これらの問題点を解決するために、本発明者らは、従来の体積ホログラム層転写箔の構成を一新し、上記マーク層を用いる場合は、基材のヒートシール層が形成されている側ではなく、それとは反対側にマーク層を形成することを着想し、これを具体化した。これにより、体積ホログラム層の全面を転写に用いることを可能とし、転写有効面積を向上させることができるようすることに加えて、体積ホログラム層を転写する工程において、マーク層が転写されることを回避するような技術的手段を採用することが不要になるため、体積ホログラム層の転写工程を簡易化することも同時に達成した。
しかしながら、このようにマーク層を基材のヒートシール層が形成されている側とは反対側に形成したことにより、新しい技術的課題が見出された。すなわち、マーク層は、通常、体積ホログラム層転写箔の一部にのみ形成されるものであるため、長尺に形成された体積ホログラム層転写箔をロール状に巻き取ると、当該マーク層が形成された部位のみの厚みが累積的に増加し、これに起因してその部分のみの面圧が増加してしまい、重畳的に重なり合ったヒートシール層と基材とが密着してしまうという問題点(ブロッキング)が生じることが判明した。そして、このようなブロッキングの問題が生じると、長尺の体積ホログラム層転写箔をロールから巻き出す際に、円滑に巻き出すことが困難になり、さらに密着の程度によっては、体積ホログラム層やヒートシール層が上記基材から剥離してしまう「箔ハガレ」が発生してしまうという問題点が明らかとなった。
【0009】
本発明は、このように従来に例のない体積ホログラム層転写箔の構成を採用したことに伴って生じた新規の課題を解決するためになされたものであり、簡易な転写工程で、体積ホログラム層の全面を転写に用いることが可能であり、かつ、ブロッキングや箔ハガレ等が少なく、体積ホログラム層を被転写体に転写することにより、円滑に体積ホログラム積層体を製造することが可能な、長尺体積ホログラム層転写箔を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、長尺の基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有する長尺体積ホログラム層転写箔であって、上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対面上であり、かつ上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成され、上記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるマーク層と、少なくとも上記マーク層上に形成され、表面に離型性を有する背面層とを有することを特徴とする長尺体積ホログラム層転写箔を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記マーク層が上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対側の表面上であり、かつ基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写して体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層の全面を転写の対象にできるため、転写の有効面積を向上させることができる。また、これに加えて、体積ホログラム層を転写する工程において、マーク層が被転写体に転写されることを回避するような技術的手段を採用することが不要になるため、本発明の長尺体積ホログラム層積層体を用いる体積ホログラム積層体の製造方法において、体積ホログラム層の転写工程を簡易化することができる。
さらに、本発明においては、少なくとも上記マーク層上に上記背面層が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔がロール状に巻き取られ、重畳的に重なり合った状態で相当程度の面圧が加わった場合であっても、特に面圧が高くなる上記マーク層が形成されている位置において、マーク層と上記ヒートシール層とが密着してしまうことを防止することができる。このため、本発明によれば、ブロッキングや箔ハガレ等の不良の発生を低減することができ、円滑に体積ホログラム積層体を製造することができる。
このようなことから、簡易な転写工程で、体積ホログラム層の全面を転写に用いることが可能であり、かつ、ブロッキングや箔ハガレ等が少なく、体積ホログラム層を被転写体に転写することにより、円滑に体積ホログラム積層体を製造することが可能な、長尺体積ホログラム層転写箔を得ることができる。
【0012】
本発明においては、上記基材の長手方向に対して垂直方向の少なくとも一部に、上記ヒートシール層を貫通し、かつ、上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有することが好ましい。このような切れ込み部が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記切れ込み部が形成された位置を始点として、上記基材を体積ホログラム層から剥離することにより、上記体積ホログラム層を容易に転写させることができるからである。また、同じく体積ホログラム積層体を製造する際に、上記切れ込み部をきっかけとして、上記体積ホログラム層を破断することができるため、例えば、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を部分的に転写させる場合であっても、体積ホログラム層の箔切れ不良が生じることを防止できるからである。
ここで、上記切れ込み部が形成されている部位は、いわゆる「箔持ち性」が低く、体積ホログラム層やヒートシール層が上記基材から剥離されやすくなっている場合がある。このため、例えば、ロール状等の面圧が高くなる形態とした場合に箔ハガレが生じやすくなる場合があるが、本発明においては上記背面層が形成されていることにより、上記のような切れ込み部が形成されている場合であっても、箔ハガレが生じることを防止することができる。
【0013】
また、本発明においては、上記マーク層が上記基材の長手方向に対して平行な直線上に所定の間隔で複数形成されており、かつ、上記背面層が、複数のマーク層を覆うように、上記基材の長手方向に対して平行な帯状に形成されていることが好ましい。これにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、ブロッキングや箔ハガレが生じることをさらに防止することができるからである。
【0014】
また本発明においては、上記背面層に、バインダー樹脂として、ガラス転移温度が150℃以上であるポリアミド系樹脂が含有されていることが好ましい。このようなポリアミド系樹脂が背面層に含有されていることにより、上記背面層の表面の離型性を向上させることができる結果、上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを、より一層防止することができるからである。
【0015】
また本発明においては、上記背面層に、バインダー樹脂として、ガラス転移温度が150℃以上であるポリアミドイミドシリコーン樹脂が含有されていることが好ましい。このようなポリアミドイミドシリコーン樹脂が背面層に含有されていることにより、上記背面層の表面の離型性を向上させることができる結果、上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを、より一層防止することができるからである。
【0016】
さらに本発明においては、上記背面層が、上記基材の上記マーク層が形成された側の全面に形成されていることが好ましい。これにより、本発明の長尺体積ホログラム層積層体の全面において上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを防止できることに加えて、本発明の長尺体積ホログラム積層体を製造することが容易になるからである。
【0017】
また、本発明においては、上記背面層に、数平均分子量が1万〜100万のシリコーンオイルが、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、1質量部〜20質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。上記範囲内の数平均分子量を有するシリコーンオイルを、上記範囲内の含有量で添加することで、さらに離型性が優れた背面層とすることができるからである。
【0018】
また、本発明においては、上記背面層に、有機材料からなる有機フィラーが、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、30質量部〜150質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。背面層の滑り性を向上させることができるからである。
【0019】
また、本発明においては、上記有機フィラーが、シリコーン樹脂フィラーであることが好ましい。背面層の滑り性をさらに向上させることができるからである。
【0020】
本発明は、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔を用い、上記マーク層を基準として、上記長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層に接するように被転写体を配置する被転写体配置工程と、上記長尺体積ホログラム層転写箔を加熱し、上記長尺体積ホログラム層転写箔の加熱された領域と上記被転写体とを接着する加熱接着工程と、上記被転写体と接着された領域上に配置されている上記長尺体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法を提供する。
【0021】
本発明によれば、上記本発明に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔が用いられることにより、体積ホログラム層の全面を転写の対象にすることを可能にできるため、転写の有効面積を向上させることができる。また、これに加えて、マーク層が被転写体に転写されることを回避するような技術的手段を採用することが不要になるため、上記加熱接着工程等を簡略化することができる。
さらに、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔が用いられていることにより、上記被転写体配置工程等においてロール状に巻き取られた長尺体積ホログラム層転写箔を巻き出す際に、ブロッキングや箔ハガレ等の不良の発生を低減することができるため、円滑に体積ホログラム積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、簡易な転写工程で、体積ホログラム層の全面を転写に用いることが可能であり、かつ、ブロッキングや箔ハガレ等が少なく、体積ホログラム層を被転写体に転写することにより、円滑に体積ホログラム積層体を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は長尺体積ホログラム層転写箔と、これを用いた体積ホログラム積層体の製造方法とに関するものである。
以下、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔、および体積ホログラム積層体の製造方法について順に説明する。
【0024】
A.長尺体積ホログラム層転写箔
まず、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔について説明する。上述したように本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、長尺の基材と、上記基材上に形成された剥離性保護層と、上記剥離保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、上記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層とを有するものであって、上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対面上であり、かつ上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成され、上記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるマーク層と、少なくとも上記マーク層上に形成され、表面に離型性を有する背面層と、を有することを特徴とするものである。
【0025】
このような本発明の長尺体積ホログラム層転写箔について図を参照しながら説明する。図1は本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10は、長尺の基材1と、上記基材1上に形成された剥離性保護層2と、上記剥離保護層2上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層3と、上記体積ホログラム層3上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層4と、を有するものであり、さらに、上記基材1の上記ヒートシール層4が形成された面とは反対面上に形成されたマーク層5と、少なくとも上記マーク層5上に形成され、表面に離型性を有する背面層6と、を有することを特徴とするものである。
ここで、上記マーク層5は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記体積ホログラム層3を被転写体に転写する位置を決定する基準となるものであり、上記基材1を介して、上記ヒートシール層4が形成された領域と重なる位置に形成されているものである。
【0026】
本発明によれば、上記マーク層が上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対側の表面上であり、かつ基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写して体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層の全面を転写の対象にできるため、転写の有効面積を向上させることができる。また、これに加えて、体積ホログラム層を転写する工程において、マーク層が被転写体に転写されることを回避するような技術的手段を採用することが不要になるため、本発明の長尺体積ホログラム層積層体を用いる体積ホログラム積層体の製造方法において、体積ホログラム層の転写工程を簡易化することができる。
さらに、本発明においては、少なくとも上記マーク層上に上記背面層が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔がロール状に巻き取られ、重畳的に重なり合った状態で相当程度の面圧が加わった場合であっても、特に面圧が高くなる上記マーク層が形成されている位置において、マーク層と上記ヒートシール層とが密着してしまうことを防止することができる。このため、本発明によれば、ブロッキングや箔ハガレ等の不良の発生を低減することができ、円滑に体積ホログラム積層体を製造することができる。
このようなことから、簡易な転写工程で、体積ホログラム層の全面を転写に用いることが可能であり、かつ、ブロッキングや箔ハガレ等が少なく、体積ホログラム層を被転写体に転写することにより、円滑に体積ホログラム積層体を製造することが可能な、長尺体積ホログラム層転写箔を得ることができる。
【0027】
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、少なくとも基材、剥離性保護層、体積ホログラム層、ヒートシール層、マーク層、および背面層を有するものであり、必要に応じて他の任意の構成が用いられてもよいものである。
以下、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に用いられる各構成について順に説明する。
【0028】
1.基材
まず最初に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、長尺に形成されたものであり、後述する剥離性保護層、体積ホログラム層、ヒートシール層、マーク層、および背面層等を支持するものである。
【0029】
本発明に用いられる基材は長尺に形成されたものであるところ、本発明において「長尺」とは、長手方向の距離と、長手方向に垂直な方向(幅方向)の距離との比(長手方向の距離/長手方向に垂直な方向(幅方向)の距離)が、5以上であることを意味するものとする。
【0030】
本発明に用いられる基材としては、後述する各構成を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基材の具体例としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0031】
また、本発明に用いられる基材の厚みは、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する方法等に応じて適宜選択されるものであるが、通常2μm〜200μmの範囲内、好ましくは10μm〜50μmの範囲内とされる。
【0032】
2.剥離性保護層
次に、本発明に用いられる剥離性保護層について説明する。本発明に用いられる剥離性保護層は、上述した基材と、後述する体積ホログラム層との間に形成されるものであり、次のような機能を有するものである。
まず第1に、基材と体積ホログラム層とを接着力を任意の範囲に調整し、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写させる際に、体積ホログラム層の基材からの剥離性を向上させる機能を有するものである(剥離機能)。
第2に、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて被転写体に体積ホログラム層を転写した際に、体積ホログラム層の表面を覆い、転写された体積ホログラム層を保護する機能を有するものである(保護機能)。
以下、このような剥離性保護層について説明する。
【0033】
本発明に用いられる剥離性保護層としては、上述した剥離機能および保護機能を有するものであれば特に限定されるものではない。このような剥離性保護層に用いられる材料としては、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系およびメタアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等の1種または2種以上混合したもの等を挙げることができる。
【0034】
本発明に用いられる剥離性保護層の厚みとしては、上述した剥離機能および保護機能を両立させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる剥離性保護層の厚みは、0.1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0035】
3.体積ホログラム層
次に本発明に用いられる体積ホログラム層について説明する。本発明に用いられる体積ホログラム層は、体積ホログラムが記録されたものであり、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、被転写体へ転写されるものである。また、本発明に用いられる体積ホログラム層は、上述した剥離性保護層と、後述するヒートシール層との間に形成されるものである。
以下、このような体積ホログラム層について詳細に説明する。
【0036】
(1)構成材料
本発明に用いられる体積ホログラム層を構成する材料としては、体積ホログラムを記録することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に体積ホログラムに用いられる材料を任意に用いることができる。このような材料としては、例えば、銀塩材料、重クロム酸ゼラチン乳剤、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知の体積ホログラム記録材料が挙げることできる。なかでも本発明においては、(i)バインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤および増感色素を含有する第1の感光材料、または、(ii)カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系および光カチオン重合開始剤系を含有する第2の感光材料を好適に用いることができる。
以下、このような第1の感光材料および第2の感光材料について順に説明する。
【0037】
(i)第1の感光材料
まず、上記第1の感光材料について説明する。上述したように第1の感光材料はバインダー樹脂、光重合可能な化合物、光重合開始剤、および増感色素を含有するものである。
【0038】
(バインダー樹脂)
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはその部分加水分解物、ポリ酢酸ビニルまたはその加水分解物、アクリル酸、アクリル酸エステル等の共重合可能なモノマー群の少なくとも1つを重合成分とする共重合体、またはそれらの混合物や、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリビニルアルコールの部分アセタール化物であるポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等、またはそれらの混合物等を挙げることができる。ここで、体積ホログラム層を形成する際には、記録された体積ホログラムを安定化するために、加熱してモノマーを移動させる工程が実施される場合がある。このため、本発明に用いられるバインダー樹脂はガラス転移温度が比較的低く、モノマー移動が容易に移動できるものであることが好ましい。
【0039】
(光重合可能な化合物)
上記光重合可能な化合物としては、後述するような1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマーおよびそれらの混合物を用いることができる。具体例としては、不飽和カルボン酸およびその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド化合物等を挙げることができる。
【0040】
ここで、上記不飽和カルボン酸のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等を挙げることができる。また上記脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート等を挙げることができる。
【0041】
上記メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等を挙げることができる。また、上記イタコン酸エステルとしてはエチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート等を挙げることができる。また、上記クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラクロトネート等を挙げることができる。さらに上記イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等を挙げることができる。さらにまた、上記マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレエート、トリエチレングリコールジマレエート、ペンタエリスリトールジマレエート、ソルビトールテトラマレエート等を挙げることができる。
【0042】
上記ハロゲン化不飽和カルボン酸としては、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
また、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
(光重合開始剤)
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば、1,3−ジ(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、N−フェニルグリシン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、また、イミダゾール二量体類等を挙げることができる。なかでも本発明に用いられる光重合開始剤は、記録された体積ホログラムの安定化の観点から、ホログラム記録後に分解処理されるものが好ましい。このような観点からすると、紫外線照射することにより容易に分解される点において、有機過酸化物系の光重合開始剤が用いられることが好ましい。
【0044】
(増感色素)
本発明に用いられる増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を挙げることができる。
【0045】
(ii)第2の感光材料
次に、本発明に用いられる第2の感光材料について説明する。上述したように第2の感光材料は、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、光ラジカル重合開始剤系、および、カチオン重合開始剤系を含有するものである。
【0046】
ここで、このような第2感光材料が用いられる場合、体積ホログラム層に体積ホログラムが記録する方法としては、光ラジカル重合開始剤系が感光するレーザー光等の光を照射し、次いで、光カチオン重合開始剤系が感光する上記レーザー光とは別の波長の光を照射する方法が用いられることになる。
【0047】
(カチオン重合性化合物)
上記カチオン重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物の重合が比較的低粘度の組成物中で行われることが好ましいという点から、室温で液状のものが好適に用いられる。このようなカチオン重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールジエーテル、ペンタエリスリトールポリジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0048】
(ラジカル重合性化合物)
上記ラジカル重合性化合物としては、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有するものが好ましい。また、本発明に用いられるラジカル重合性化合物の平均屈折率は、上記カチオン重合性化合物の平均屈折率より大きいことが好ましく、なかでも0.02以上大きいことが好ましい。これは、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との屈折率の差によって、体積ホログラムが形成されることによるものである。したがって、平均屈折率の差が上記値以下である場合には、屈折率変調が不十分となるからである。本発明に用いられるラジカル重合性化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、2−ブロモスチレン、フェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2,3−ナフタレンジカルボン酸(アクリロキシエチル)モノエステル、メチルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、β−アクリロキシエチルハイドロゲンフタレート等を挙げることができる。
【0049】
(光ラジカル重合開始剤系)
本発明に用いられる光ラジカル重合開始剤系としては、体積ホログラムを記録する際に、第1露光によって活性ラジカルを生成し、該活性ラジカルがラジカル重合性化合物を重合させることができるものであれば特に限定されるものではない。また、一般に光を吸収する成分である増感剤と活性ラジカル発生化合物や酸発生化合物を組み合わせて用いてもよい。このような光ラジカル重合開始剤系における増感剤は可視レーザー光を吸収するために色素のような有色化合物が用いられる場合が多いが、無色透明ホログラムとする場合には、シアニン系色素の使用が好ましい。シアニン系色素は一般に光によって分解しやすいため、本発明における後露光、または室内光や太陽光の下に数時間から数日放置することでホログラム中の色素が分解されて可視域に吸収を持たなくなり、無色透明な体積ホログラムを得ることができるからである。
【0050】
上記シアニン系色素の具体例としては、アンヒドロ−3,3´−ジカルボキシメチル−9−エチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、アンヒドロ−3−カルボキシメチル−3´,9´−ジエチル−2,2´チアカルボシアニンベタイン、3,3´,9−トリエチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,9−ジエチル−3´−カルボキシメチル−2,2´−チアカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´,9−トリエチル−2,2´−(4,5,4´,5´−ジベンゾ)チアカルボシアニン・ヨウ素塩、2−[3−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)−1−プロペニル]−6−[2−(3−エチル−2−ベンゾチアゾリデン)エチリデンイミノ]−3−エチル−1,3,5−チアジアゾリウム・ヨウ素塩、2−[[3−アリル−4−オキソ−5−(3−n−プロピル−5,6−ジメチル−2−ベンゾチアゾリリデン)−エチリデン−2−チアゾリニリデン]メチル]3−エチル−4,5−ジフェニルチアゾリニウム・ヨウ素塩、1,1´,3,3,3´,3´−ヘキサメチル−2,2´−インドトリカルボシアニン・ヨウ素塩、3,3´−ジエチル−2,2´−チアトリカルボシアニン・過塩素酸塩、アンヒドロ−1−エチル−4−メトキシ−3´−カルボキシメチル−5´−クロロ−2,2´−キノチアシアニンベタイン、アンヒドロ−5,5´−ジフェニル−9−エチル−3,3´−ジスルホプロピルオキサカルボシアニンヒドロキシド・トリエチルアミン塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記活性ラジカル発生化合物としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、あるいは2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類が挙げられる。高い感光性が必要なときは、ジアリールヨードニウム塩類の使用が特に好ましい。上記ジアリールヨードニウム塩類の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4´−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4´−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4´−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3´−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホン酸塩、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸塩などが例示される。又2,4,6−置換−1,3,5−トリアジン類の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)‐1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4´−メトキシ−1´−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0052】
(光カチオン重合開始剤系)
本発明に用いられる光カチオン重合開始剤系としは、体積ホログラムが記録される際の第1露光に対しては低感光性で、第1露光と異なる波長の光を照射する後露光に感光してブレンステッド酸あるいはルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物を重合させるような開始剤系であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては第1露光の間はカチオン重合性化合物を重合させないものが用いられることが特に好ましい。このような光カチオン重合開始剤系としては、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、鉄アレン錯体類等が挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類で好ましいものとしては上述した光ラジカル重合開始剤系で示したヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類で好ましいものとしては、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0053】
(その他)
第2の感光材料には、必要に応じてバインダー樹脂、熱重合防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、着色料等を併用してもよい。バインダー樹脂は、ホログラム層記録前の組成物の成膜性、膜厚の均一性を改善する場合や、レーザー光等の光の照射による重合で形成された干渉縞を後露光までの間、安定に存在させるために使用される。バインダー樹脂は、カチオン重合性化合物やラジカル重合性化合物と相溶性のよいものであればよく、例えば塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルの共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。バインダー樹脂は、その側鎖又は主鎖にカチオン重合性基等の反応性を有していてもよい。
【0054】
(2)体積ホログラム層
本発明に用いられる体積ホログラム層の厚みは、所定の体積ホログラム像を記録することができる範囲内であれば特に限定されるものではなく、上述した構成材料の種類に応じて適宜調整することができる。なかでも本発明に用いられる体積ホログラム層の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に3μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
なお、体積ホログラム層の厚みが大きくなると、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層の箔切れ不良が生じやすくなる場合があるが、本発明において、後述する切れ込み部が形成されている場合は、体積ホログラム層の厚みに関わらず転写特性の良好な体積ホログラム層を得ることができる。
【0055】
4.ヒートシール層
次に、本発明に用いられるヒートシール層について説明する。本発明に用いられるヒートシール層は熱可塑性樹脂を含有するものであり、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層と被転写体とを接着させる機能を有するものである。また、本発明に用いられるヒートシール層は、上述した体積ホログラム層上に形成されるものである。
以下、本発明に用いられるヒートシール層について詳細に説明する。
【0056】
本発明におけるヒートシール層に用いられる熱可塑性樹脂としては、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層が転写される被転写体の種類に応じて、体積ホログラム層と被転写体とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル系樹脂、マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの熱可塑性樹脂であっても好適に用いることができる。
【0057】
なお、本発明に用いられる熱可塑性樹脂は1種類のみであってもよく、あるいは、2種類以上であってもよい。
【0058】
本発明に用いられるヒートシール層には、上記熱可塑性樹脂以外に他の添加剤が含まれていてもよい。本発明に用いられる添加剤としては、例えば、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0059】
本発明に用いられるヒートシール層の厚みは特に限定されるものではなく、上述した体積ホログラム層の構成材料や、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム層が転写される被転写体の種類等によって適宜選択されるものである。中でも本発明におけるヒートシール層の厚みは、1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。厚みが上記範囲よりも薄いと被転写体との接着性が不十分になってしまう可能性があるからである。また上記範囲よりも厚いと、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写する際に、ヒートシール層を加熱する温度が高くなりすぎてしまい、基材等に損傷が生じてしまう可能性があるからである。
【0060】
5.マーク層
次に、本発明に用いられるマーク層について説明する。本発明に用いられるマーク層は、上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対面上であり、かつ上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成されるものである。そして、本発明に用いられるマーク層は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるものである(なお、本発明におけるマーク層は、本発明が属する技術分野において「タイミングマーク」と称される場合がある。)
以下、このようなマークについて詳細に説明する。
【0061】
上述したように、本発明に用いられるマーク層は、上記基材の上記ヒートシール層が形成された面とは反対面上であり、かつ上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成されたものである。そして、このような位置にマーク層が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を転写して体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層の全面を転写の対象にできるため、転写の有効面積を向上させることができるのである。
ここで、本発明において「上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置」にマーク層が形成されていることは、換言すると、マーク層が形成された位置には、基材を介して反対側に必ずヒートシール層が形成されていることを意味することになる。
【0062】
図2は、本発明においてマーク層が形成された態様を説明する概略図である。本発明に用いられるマーク層5は、基材1を介して上記ヒートシール層4が形成された領域と重なる位置に形成されたものであるため、図2(a)に例示するように、本発明において基材1の全面にヒートシール層4が形成されている場合は、基材1の上記ヒートシール層4が形成された面とは反対側のいずれの位置にマーク層5が形成されても、上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置になる。
一方、図2(b)に例示するように基材1上にパターン状にヒートシール層4が形成されている場合は、マーク層5は基材1を介して、上記ヒートシール層4と重なる位置のみに形成されることになる。
【0063】
本発明においてマーク層が形成されている位置としては、上記基材を介して上記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置であって、かつ本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、転写する体積ホログラム層の位置を決定する基準にすることができる位置であれば特に限定されるものではない。ここで、本発明に用いられるマーク層は、上記基材の上記ヒートシール層が形成されている面とは反対側の面上に形成されていることから、体積ホログラム層を転写する際にマーク層が転写されることはない。このため、本発明においてはマーク層を形成する位置について上記以外の制約はなく、自由な位置にマーク層を形成することができる。なかでも本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は長尺に形成されたものであり、体積ホログラム層を連続的に転写することによって体積ホログラム積層体を製造することができるものであることから、本発明においては、複数のマーク層が上記基材の長手方向に対して平行な直線上に所定の間隔で形成されていることが好ましい。このような態様でマーク層が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、連続的に体積ホログラム層の転写位置を決定することが容易になるからである。
【0064】
本発明におけるマーク層がこのような態様で形成されている場合について図を参照しながら説明する。図3は、本発明においてマーク層が形成されている態様の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明におけるマーク層5は、基材1の長手方向yに対して平行な直線L上に所定の間隔で複数形成されていることが好ましい。
ここで、図3は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10を、上記基材1のマーク層5が形成された面側から正視した場合の概略図を例示するものである。また図3においては、説明の便宜のため背面層の図示を省略している。
【0065】
本発明に用いられるマーク層としては、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準にできるものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられるマーク層は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記マーク層を検出して体積ホログラム層の転写位置を決定する方法等に応じて、適宜選択することができる。このようなマーク層としては、例えば、所定の波長の光あるいは全光を吸収させる機能を有するもの、所定の波長の光あるいは全光を透過させる機能を有するもの、所定の波長の光あるいは全光を反射させる機能を有するもの等を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれのマーク層であっても好適に用いることができる。
【0066】
本発明に用いられるマーク層を構成するマーク層構成材料としては、マーク層に体積ホログラム層の転写位置の検出を可能とする所定の機能を付与することができるものであれば特に限定されるものではない。このようなマーク層構成材料としては、例えば、バインダー樹脂に顔料や染料を任意の含有量で含有させたものを挙げることができる。
【0067】
上記バインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの樹脂の混合物等を挙げることができる。
また、上記顔料としては、例えば、カーボンブラック等の黒色顔料やTiO,ZnO等の白色顔料、また、パール顔料、金属粒子含有顔料等、任意の顔料を使用することができる。
さらに上記染料としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン染料、ローダミン染料、チオピリリウム塩系色素、ピリリウムイオン系色素、ジフェニルヨードニウムイオン系色素等を使用することができる。ただし、染料は他層への染着可能性があるため、顔料を使用することが好ましい。また、バインダー樹脂に対して任意の硬化剤を添加し、樹脂強度を上げてもよい。
【0068】
本発明に用いられるマーク層の厚みは、上記マーク層材料の種類等に応じて、マーク層に体積ホログラム層の転写位置の検出を可能にできる範囲内であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられるマーク層の厚みは、0.01μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜5μmの範囲内であることがより好ましい。厚みが上記範囲よりも大きいと、マーク層が形成されている部位の厚みが局所的に厚くなりすぎてしまい、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔をロール状に巻き取った際に、巻きズレが生じたり、巻き姿が歪んでしまう場合があるからである。また厚みが上記範囲よりも小さいと、上記マーク層構成材料の種類によっては、マーク層に体積ホログラム層の転写位置の検出を可能とする所定の機能を付与することが困難になる場合があるからである。
【0069】
6.背面層
次に、本発明に用いられる背面層について説明する。本発明に用いられる背面層は表面に離型性を有するものであり、例えば、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔をロール状に巻き取った際に、ヒートシール層とマーク層とが密着することに起因して、ブロッキングや箔ハガレが生じてしまうことを防止する機能を有するものである。また、本発明に用いられる背面層は、少なくとも上述したマーク層上に形成されるものである。
以下、このような背面層について詳細に説明する。
【0070】
本発明に用いられる背面層は、少なくとも上述したマーク層上に形成されるものである。本発明において背面層が形成されている態様としては、少なくとも上記マーク層上に形成されている態様であれば特に限定されるものではない。したがって、本発明におけるマーク層は、上記マーク層上のみに形成されていてもよく、あるいは、上記マーク層上および上記マーク層上以外の部位に形成されていてもよい。
なお、本発明において複数のマーク層が形成されている場合は、すべてのマーク層上に背面層が形成されることになる。
【0071】
本発明において背面層が形成されている態様は、上記マーク層が形成されている態様に応じて適宜決定されるものであるところ、上述したように本発明に用いられるマーク層は、上記基材の長手方向に対して平行な直線上に所定の間隔で複数形成されていることが好ましいものである。そこで、上記マーク層がこのような態様で形成されている場合、本発明における背面層は、複数のマーク層を覆うように、上記基材の長手方向に対して平行な帯状に形成されていることが好ましい。マーク層がこのような態様で形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、ブロッキングや箔ハガレが生じることをさらに防止することができるからである。
【0072】
本発明における背面層がこのような態様で形成されている場合について、図を参照しながら具体的に説明する。図4は本発明において背面層が形成されている態様の一例を示す概略図である。ここで、図4(b)は、図4(a)におけるX−X’線矢視断面図である。
図4に例示するように、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10は、上記マーク層5が、上記基材1の長手方向yに対して平行な直線上に所定の間隔で複数形成されている場合において、上記背面層6が、複数のマーク層5を覆うように、上記基材1の長手方向yに対して平行な帯状に形成されていることが好ましい。
【0073】
本発明における背面層が上述したような帯状に形成されている場合、当該背面層の幅としては、上記マーク層の表面を覆うことができる程度の幅であれば特に限定されるものではない。したがって、例えば、図5(a)に例示するように、背面層6の幅は上記マーク層5の幅と同一であってもよく、あるいは、例えば図5(b)に例示するように、背面層6の幅は上記マーク層5の幅より大きくてもよい。
【0074】
また、背面層が上述したような帯状に形成されている場合、上記背面層は、例えば、図6(a)に例示するように、1本の連続した背面層6によって、すべてのマーク層5を覆うように形成されていてもよく、あるいは、図6(b)に例示するように複数の帯状の背面層6によって、すべてのマーク層5を覆うように形成されていてもよい。
【0075】
また、本発明に用いられる背面層は、例えば図7に例示するように、上記基材の上記マーク層が形成された側の全面に形成されていてもよい。このような態様で上記背面層が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層積層体の全面において上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを防止することが可能になると共に、本発明の長尺体積ホログラム積層体を製造することが容易になるという顕著な利点がある。
【0076】
本発明に用いられる背面層は表面に離型性を有するものであり、少なくとも上記マーク層上に形成されることにより、例えば、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔がロール状に巻き取られた場合等において、重畳的に重ね合わせられた場合に、マーク層とヒートシール層とが密着してしまうことを防止する機能を有するものである。したがって、本発明に用いられる背面層としては、このような機能を発揮し得る程度の離型性を表面に有するものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる背面層は、バインダー樹脂としてポリアミド系樹脂を含有するものであることが好ましい。ポリアミド系樹脂が背面層に含有されることにより、上記背面層の表面の離型性を向上させることができる結果、上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを、より一層防止することができるからである。
【0077】
本発明における背面層にポリアミド系樹脂が含有される態様としては、上記ポリアミド系樹脂が単体で含有される態様であってもよく、あるいはポリアミド系樹脂と、ポリアミドイミドシリコーン樹脂との混合物として含有される態様であってもよい。ポリアミド系樹脂とポリアミドイミドシリコーン樹脂との混合物として含有される場合、その含有比としては背面層に所望の離型性を付与できる程度であれば特に限定されるものではないが、なかでもポリアミド系樹脂(A):ポリアミドイミドシリコーン樹脂(B)=1:5〜5:1(質量比)の範囲内であることが好ましく、1:2〜2:1(質量比)の範囲内であることがより好ましい。また、本発明に用いられる背面層は、バインダー樹脂としてポリアミドイミドシリコーン樹脂を含有するものであることが好ましい。ポリアミドイミドシリコーン樹脂が背面層に含有されることにより、上記背面層の表面の離型性を向上させることができる結果、上記ブロッキングや箔ハガレが生じることを、より一層防止することができるからである。
【0078】
本発明に用いられる上記ポリアミド系樹脂および上記ポリアミドイミドシリコーン樹脂は、例えば、特開平8−244369号公報等に記載されているものを用いることができるが、なかでも示差熱分析によるガラス転移温度が150℃以上のものが用いられることが好ましい。ポリアミド系樹脂およびポリアミドイミドシリコーン樹脂のガラス転移温度が150℃未満では、耐熱性が不足してしまう場合があるからである。またガラス転移温度の上限は耐熱性の観点からは特に制限はないが、一般溶剤への溶解性の観点から300℃程度になる。
【0079】
本発明で用いるポリアミドイミドシリコーン樹脂については、多官能シリコーン化合物として分子量1,000から6,000のものを用い、ポリアミドイミドと共重合するか、ポリアミドイミドをシリコーン変性して得られる。多官能シリコーン化合物は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、酸無水物基のいずれかを有するシリコーン化合物が好ましく用いられる。シリコーンの量は、質量比にてポリアミド系樹脂1に対し0.01〜0.3のものが好ましい。シリコーンによる共重合量または変性量が少なすぎると上記混合範囲で充分な滑性を有する背面層が得ることが困難になる場合があるからである。また、シリコーンによる共重合量または変性量が多すぎると、形成される背面層の耐熱性や皮膜強度が不十分になる場合があるからである。
【0080】
本発明に用いられる背面層には、上記バインダー樹脂とは別に、離型性を向上させること目的として離型剤が含有されていてもよい。本発明に用いられる離型剤としては、背面層に所望の離型性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に離型剤として用いられる化合物の中から適宜選択して用いることができるものである。なかでも本発明においては離型材として、シリコーンオイルが用いられることが好ましい。
【0081】
本発明に用いられるシリコーンオイルとしては、所定量を含有させることにより本発明における背面層に所望の離型性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明に用いられるシリコーンオイルとしては、例えば、変性シリコーンオイル、未変性シリコーンオイルおよびそれらの混合物等を挙げることができる。
【0082】
上記変性シリコーンオイルの具体例としては、例えば、エポキシ、カルビノール、フェノール、メタクリルまたはポリエーテル変性シリコーンオイル、未変性シリコーンオイルに関してはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、およびそれらの混合物を挙げることができる。ここで、2種類以上のシリコーンオイルを混ぜることにより離型性が向上させることができる場合がある。また、2種類以上のシリコーンオイルを混ぜる時には、変性シリコーンオイルと未変性シリコーンオイルを組み合わせて使用することが好ましく、耐熱性、シワ、離型性等の向上に効果がある。
【0083】
また、本発明に用いられるシリコーンオイルの数平均分子量は、例えば1万〜100万の範囲内であることが好ましく、1万〜50万の範囲内であることがより好ましく、2万〜20万の範囲内であることがさらに好ましい。本発明においては、シリコーンオイルの分子量が高ければ高い程、転写箔をロール状に巻き取った際に接触面(背面層に対するヒートシール面)にシリコーンオイルが移行せず、背面層の離型性を向上できるので好ましい。しかし、数平均分子量が100万を超えるシリコーンオイルは、加工性が悪くなる可能性があるため、数平均分子量は100万以下であることが好ましい。なお、本発明におけるシリコーンオイルの数平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算の値である。
【0084】
なお、本発明における背面層に上記離型剤を含有させる場合、その含有量は背面層に所望の離型性を付与できる範囲で適宜調整される。中でも、上記離型剤としてシリコーンオイルを用いる場合は、シリコーンオイルを、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、1質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0085】
特に、本発明においては、上記背面層に、数平均分子量が1万〜100万のシリコーンオイルが、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、1質量部〜20質量部の範囲内で含有されていることが好ましい。上記範囲内の数平均分子量を有するシリコーンオイルを、上記範囲内の含有量で添加することで、さらに離型性が優れた背面層とすることができるからである。なお、シリコーンオイルの数平均分子量の好ましい範囲については、上述した通りである。
【0086】
本発明に用いられる背面層には、滑り性を向上させることを目的としてフィラーを含有させてもよい。本発明に用いられるフィラーとしては、背面層の表面に所望の滑り性を付与できるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも無機材料からなる無機フィラーが用いられることが好ましく、さらにはモース硬度3以下の無機フィラーが用いられることが好ましい。
【0087】
本発明に用いられる無機フィラーの具体例としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、セキボク、硝石、石膏、ブルース石、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブテンからなるものを挙げることができるが、なかでも耐熱性と滑性のバランスから特にタルク、マイカおよび炭酸カルシウムが好ましい。
【0088】
本発明に用いられる無機フィラーの平均粒径は、背面層の厚み等に依存するものであり、特に限定されるものではないが、通常0.05μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
また、本発明における背面層に無機フィラーを含有させる場合、その含有量としては、使用される無機フィラーの種類等に応じて適宜決定すればよいものであり、特に限定されるものではないが、なかでも、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部当たり2質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましく、5質量部〜15質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
一方、本発明においては、上記フィラーとして、有機材料からなる有機フィラーを用いてもよい。有機フィラーの具体例としては、ナイロンフィラー、アクリル樹脂フィラー、スチレン樹脂フィラー、シリコーン樹脂フィラー、フッ素樹脂フィラー等を挙げることができ、中でもシリコーン樹脂フィラーが好ましい。背面層の滑り性をさらに向上させることができるからである。
【0091】
本発明に用いられる有機フィラーの平均粒径は、背面層の厚み等に依存するものであり、特に限定されるものではないが、例えば0.05μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、背面層中への分散性の観点から0.1μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
【0092】
また、本発明における背面層に有機フィラーを含有させる場合、その含有量としては、使用される有機フィラーの種類等に応じて適宜決定すればよいものであり、特に限定されるものではないが、なかでも、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、30質量部〜150質量部の範囲内であることが好ましい。30質量部未満では有機フィラーの添加効果が少なくなる可能性があり、150質量部を超えると背面層が脆くなり、層としての強度が低下する可能性があるからである。
【0093】
本発明における背面層の厚みは特に限定されるものではないが、通常、0.01μm〜2μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.05μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。
【0094】
7.任意の構成
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、少なくとも上記基材、剥離性保護層、体積ホログラム層、ヒートシール層、マーク層、および背面層を有するものであるが、これら以外の任意の構成を有するものであってもよい。本発明に用いられる任意の構成としては、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔、あるいは本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて製造される体積ホログラム積層体に所望の機能を付与することができるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に好適に用いられる任意の構成としては、後述する切れ込み部、画像形成層等を挙げることができる。
以下、本発明に用いられる任意の構成について順に説明する。
【0095】
(1)切れ込み部
まず、本発明に用いられる切れ込み部について説明する。本発明における任意の構成として用いられる切れ込み部は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の長手方向に対して垂直方向に、上記ヒートシール層を貫通し、かつ、上記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成されたものである。
【0096】
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に、このような切れ込み部が形成されている場合について図を参照しながら説明する。図8は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に、上記切れ込み部が形成されている場合の一例を示す概略図である。ここで、図8(b)は、図8(a)におけるzの方向から正視した図である。
図8(a)、(b)に例示するように、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10の長手方向yに対して垂直方向xに、上記ヒートシール層4を貫通し、かつ、少なくとも上記体積ホログラム層3の一部が切断されるように切れ込み部7が形成されていることが好ましい。
【0097】
このような切れ込み部が形成されていることにより、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、上記切れ込み部が形成された位置を始点として、上記基材を体積ホログラム層から剥離することにより、上記体積ホログラム層を容易に転写させることができるという効果を得ることができる。また、同じく体積ホログラム積層体を製造する際に、上記切れ込み部をきっかけとして、上記体積ホログラム層を破断することができるため、例えば、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔から体積ホログラム層を部分的に転写させる場合であっても、体積ホログラム層の箔切れ不良が生じることを防止できるという効果を得ることができる。
ここで、上記切れ込み部が形成されている部位は、いわゆる「箔持ち性」が低く、体積ホログラム層やヒートシール層が上記基材から剥離されやすくなっている場合がある。このため、例えば、ロール状等の面圧が高くなる形態とした場合に箔ハガレが生じやすいが、本発明においては上記背面層が形成されていることにより、上記のような切れ込み部が形成されている場合であっても、箔ハガレが生じることを防止することができる。
【0098】
本発明において切れ込み部が厚み方向に形成されている態様としては、上記ヒートシール層を貫通し、かつ、少なくとも体積ホログラム層の一部が切断されるように形成されている態様であれば特に限定されるものではない。
また、本発明において切れ込み部が面内方向に形成されている態様としては、長手方向に対して垂直方向の少なくも一部に形成された態様であれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる切れ込み部は、長手方向に対して垂直方向(幅方向)の全幅に渡って形成されたものであってもよく、あるいは幅方向に対して部分的に形成されたものであってもよい。ここで、上記「長手方向における垂直方向」とは、厳密に垂直である場合の他、切れ込み部の機能を奏し得る範囲内で略垂直である場合も含むものとする。
【0099】
(2)画像形成層
次に、本発明において任意の構成として用いられる画像形成層について説明する。本発明に用いられる画像形成層は、上記体積ホログラム層と上記ヒートシール層との間に形成されるものであり、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する際に、体積ホログラム層と共に被転写体に転写され、製造される体積ホログラム積層体に意匠性や偽造防止機能等の諸機能を付与することができるものである。
【0100】
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に画像形成層が形成されている場合について、図を参照しながら説明する。図9は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に画像形成層が形成されている場合の一例を示す概略図である。図9に例示するように、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔10には、上記体積ホログラム層3と上記ヒートシール層4との間に画像形成層8が形成されていてもよい。
【0101】
本発明に用いられる画像形成層としては、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて製造される体積ホログラム積層体に画像を付与することにより、意匠性や偽造防止機能等を付与することできるものであれば特に限定されるものではない。このような画像形成層としては、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて製造される体積ホログラム積層体の用途に応じて、所望の画像を付与することができるものであれば特に限定されるものではなく、任意の材料によって画像が形成されたものを用いることができる。
なお、本発明に用いられる画像形成層は、画像形成層自体がパターン状に形成されることによって画像を構成するものであり、画像形成層に画像が描画されるものではない。
【0102】
ここで、本発明に用いられる画像形成層に形成される画像は、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて製造する体積ホログラム積層体の用途に応じて、所望の画像とすることができる。なお、本発明における「画像」とは、パターン、線画、文字、図形、記号等のみならず、単に全面が着色された態様も含むものである。
【0103】
本発明に用いられる画像形成層は厚みが0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、0.5μm〜20μmの範囲内であることがより好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて製造された体積ホログラム積層体の表面に、画像形成層が形成されていることに起因する凹凸形状が形成されてしまう可能性があるからである。また、上記範囲よりも薄いと、画像形成層に形成された画像の保存安定性等が損なわれるおそれがあるからである。
なお、本発明における画像形成層は、上記ヒートシール層内に埋め込まれるように形成される。
【0104】
本発明に用いられる画像形成層の例としては、例えば、紫外線を吸収することにより蛍光を発する蛍光材料によって形成された蛍光画像形成層、視認する角度によって色が変化する光学可変材料によって形成された光学可変画像形成層を挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの画像形成層であっても好適に用いることができる。ここで、上記蛍光画像形成層が用いられることにより、上記画像形成層の存在を外部から容易に視認できないようにすることができるため、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて、より偽造防止機能に優れた体積ホログラム積層体を製造することができるという利点がある。上記光学可変材料で作製された画像は、通常のインキでは複製することが不可能であるため、上記光学可変画像形成層が用いられていることにより、さらに偽造防止機能に優れた体積ホログラム積層体を製造することができるようになる。
以下、本発明に用いられる光学可変画像形成層および蛍光画像形成層について詳細に説明する。
【0105】
(光学可変画像形成層)
まず、本発明に用いられる光学可変画像形成層について説明する。本発明に用いられる光学可変画像形成層は、光学可変材料によって形成されたものである。本発明に用いられる光学可変材料としては、所望の色を発現できるものであれば特に限定されるものではない。このような光学可変材料の例としては、例えば、所定の角度から観た際に、上記体積ホログラム層に記録された体積ホログラムの像と同一色の色を発現できるものを挙げることができる。このような光学可変材料が用いられることにより、所定の角度から視認した際に、画像形成層の画像と、体積ホログラム層の体積ホログラム像とを同一色の画像にすることができるため、上記体積ホログラム層における体積ホログラム像と、光学可変画像形成層における画像とが重なるように形成することにより、特定の角度において体積ホログラムが視認されないようにすることが可能になり、さらにセキュリティ性を向上させることができることになる。
【0106】
本発明に用いられる光学可変材料としては、例えば、パール顔料、偏光インキ、液晶インキ、および再帰反射性インキ等を挙げることができる。本発明においてはこれらの光学可変材料を1種類のみ用いてもよく、あるいは、2種類以上を用いてもよい。
【0107】
上記パール顔料としては、魚介類から抽出したパールエッセンス、塩基性炭酸鉛、酸性ヒ酸鉛、酸塩化ビスマス、雲母を金属酸化物で被覆したもの等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれパール顔料であっても好適に用いることができるが、なかでも安全性の見地から雲母を金属酸化物で被覆したものが好ましい。ここで、金属酸化物としては、その光沢性および屈折率から酸化チタン、酸化鉄が好ましくは利用される。
また、本発明に用いられるパール顔料は、それをさらに顔料、染料等で着色したものであってもよい。
【0108】
上記偏光インキおよび液晶インキとは、偏光コレステリック高分子液晶顔料とバインダーおよび分散剤等を混合したインキを意味するものである。上記偏光コレステリック高分子液晶顔料は、支持体に架橋性液晶ポリオルガノシロキサンと重合開始剤の混合溶液を剪断力などにより配向させながら塗布し、その後紫外線照射や加熱により架橋させ、架橋した液晶層を支持体から剥離し、ミル等で粉砕することによって得ることができる。
【0109】
上記再帰反射性インキとは、ガラスビーズなど反射鏡となる粒子をバインダーに分散させたインキである。このようなインキとしては、雲母やアルミニウム粉体、着色パール顔料などその他の顔料素材と混ぜて使用してもよい。
【0110】
(蛍光画像形成層)
次に、本発明に用いられる蛍光画像形成層について説明する。本発明に用いられる蛍光画像形成層は、紫外線を吸収することにより、蛍光を発する蛍光材料によって形成されたものである。本発明に用いられる蛍光材料としては、紫外線を吸収することにより所望の波長の蛍光を発することができるものであれば特に限定されるものではない。
【0111】
本発明に用いられる蛍光材料は少なくとも1種類が用いられるものであるが、本工程においては発光する蛍光の波長が異なる複数の蛍光材料が用いられることが好ましく、特に赤、緑、青の各色を発色する蛍光材料が用いられることが好ましい。これにより本発明に用いられる画像形成層に蛍光でフルカラーの画像を形成することが可能になるからである。
【0112】
本発明に用いられる蛍光材料としては、例えば、有機蛍光色素および無機蛍光色素を挙げることができる。
上記有機蛍光色素としては、例えば、有機蛍光色素としては、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロン等の誘導体、フルオレセイン、エオシン等の色素、アントラセン等のベンゼン環を持つ化合物などが挙げられる。具体的には可視光で無色の蛍光染料としては、EB−501(三井化学(株)製、発光色:青色)、EG−302(三井化学(株)製、発光色:黄緑色)、EG−307(三井化学(株)製、発光色:緑色)、ER−120(三井化学(株)製、発光色:赤色)、ER−122(三井化学(株)製、発光色:赤色)、蛍光増白剤と呼ばれるユビテックスOB(チバスペシャルティケミカルズ社製、発光色:青色)、ユーロピウム−テノイルトリフルオロアセトンキレート(シンロイヒ(株)、赤橙色)等を挙げることができる。
また、上記無機蛍光色素としては、無機蛍光色素としては、Ca、Ba、Mg、Sr、などの酸化物、硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩のなどの結晶を主成分とし、Eu、Mn、Pb、Fe、Mn、Zn、Ag、Cuなどの金属元素または希土類元素をドープ剤として添加した顔料を用いることができる。具体的には可視光下では無色から白色のG−300シリーズ(SrAl:Eu,Dy 根本特殊化学製 発光色:緑)やV−300シリーズ(CaAl4:Eu,Nd 根本特殊化学製 発光色:紫)等を挙げることができる。
【0113】
また、本発明に用いられる蛍光材料としては、たとえば、チオフェン系蛍光色素、β−キノフタロン系蛍光色素、クマリン系蛍光色素、ビススチリルベンゼン系蛍光色素、オキサゾール系蛍光色素、およびユーロピウム錯体系蛍光色素等を挙げることができる。これらの蛍光色素の具体例としては、例えば特開2004−122690号公報に記載されたものを例示することができる。
【0114】
なお、本発明に用いられる蛍光画像形成層には上記蛍光材料以外に、通常、バインダー樹脂が含まれることが好ましい。本発明に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。本発明においてはこれらのいずれの樹脂であっても好適に用いることができる。
【0115】
(3)その他の任意の構成
上記画像形成層および切れ込み部層以外に、本発明に用いられる任意の構成としては、例えば、体積ホログラム層とヒートシール層との接着性、あるいは、体積ホログラム層と、上記剥離性保護層との接着性を向上させるために用いられるプライマー層を挙げることができる。このようなプライマー層としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルあるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等が用いられたものを挙げることができる。
【0116】
また本発明においては上記任意の構成として、上記体積ホログラム層とヒートシール層との間にバリア層が形成されてもよい。体積ホログラム層に用いられる感光材料やヒートシール層に用いられる熱可塑樹脂の組み合わせによっては、経時的に体積ホログラム層から他の層への低分子量成分の移行が起こり、これに起因して体積ホログラム層に記録された体積ホログラムの再生波長が青側(短波長側)に移行してしまう場合があるが、バリア層を設けることによって、このような問題を解消することができるからである。
【0117】
バリア層に用いられる材料としては、所望のバリア性を発現できる材料であれば特に限定されるものではないが、通常、透明性有機樹脂材料が用いられる。本発明に用いられる透明性有機樹脂材料としては、例えば、無溶剤系の3官能以上、好ましくは6官能以上の、紫外線や電子線等の電離放射線に反応する電離放射線硬化性エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0118】
8.長尺体積ホログラム層転写箔
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は長尺に形成されたものであるが、本発明における「長尺」とは、長手方向の距離と、長手方向に垂直な方向の距離との比(長手方向の距離/長手方向に垂直な方向の距離)が、5以上であることを意味するものとする。
【0119】
9.長尺体積ホログラム層転写箔の製造方法
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、長尺の基材の片面上に剥離性保護層、体積ホログラム層、ヒートシール層を順次積層し、さらに反対面上にマーク層、および背面層を順次形成することにより製造することができる。
【0120】
10.長尺体積ホログラム層転写箔の用途
本発明の長尺体積ホログラム層転写箔は、上記体積ホログラム層を連続的に被転写体に転写することによって、被転写体に体積ホログラム層が貼り合わされた構成を有する体積ホログラム積層体を製造するために用いられる。ここで、本発明の長尺体積ホログラム層転写箔を用いて体積ホログラム積層体を製造する方法としては、例えば、後述する「B.体積ホログラム積層体の製造方法」の項において説明する方法を例示することができる。
【0121】
B.体積ホログラム積層体の製造方法
次に本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について説明する。上述したように本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔を用い、上記マーク層を基準として、上記長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層に接するように被転写体を配置する被転写体配置工程と、上記長尺体積ホログラム層転写箔を加熱し、上記長尺体積ホログラム層転写箔の加熱された領域と上記被転写体とを接着する加熱接着工程と、上記被転写体と接着された領域上に配置されている上記長尺体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とするものである。
【0122】
このような本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について図を参照しながら説明する。図10は、本発明の体積ホログラム積層体の製造方法について、その一例を示す概略図である。
図10に例示するように本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔10を用い(図10(a))、上記マーク層5を基準として、上記長尺体積ホログラム層転写箔10のヒートシール層4に接するように被転写体20を配置する被転写体配置工程(図10(b))と、上記長尺体積ホログラム層転写箔10を加熱し、上記長尺体積ホログラム層転写箔10の加熱された領域と上記被転写体20とを接着する加熱接着工程(図10(c))と、上記被転写体20と接着された領域上に配置されている上記長尺体積ホログラム層転写箔10の基材1を剥離する基材剥離工程と(図10(d))、を有することにより、被転写体20上に、ヒートシール層4と体積ホログラム層3と、剥離性保護層2とがこの順で積層された体積ホログラム積層体30を製造するものである(図10(e))。
【0123】
本発明によれば、上記本発明に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔が用いられることにより、体積ホログラム層の全面を転写の対象とすることを可能にできるため、転写の有効面積を向上させることができる。また、これに加えて、マーク層が被転写体に転写されることを回避するような技術的手段を採用することが不要になるため、上記加熱接着工程等を簡略化することができる。
さらに、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔が用いられていることにより、上記被転写体配置工程等においてロール状に巻き取られた長尺体積ホログラム層転写箔を巻き出す際に、ブロッキングや箔ハガレ等の不良の発生を低減することができるため、円滑に体積ホログラム積層体を製造することができる。
【0124】
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、少なくとも上記被転写体配置工程と、加熱接着工程と、基材剥離工程とを有するものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0125】
1.被転写体配置工程
まず、本発明に用いられる被転写体配置工程について説明する。上述したように本工程は、上記本発明に係る長尺体積ホログラム層転写箔を用い、上記マーク層を基準として、当該長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層上に接するように、被転写体を配置する工程である。
【0126】
ここで、本工程に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔については上記「A.長尺体積ホログラム層転写箔」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0127】
本工程に用いられる被転写体としては、上記長尺体積ホログラム層転写箔が備えるヒートシール層を介して上記長尺体積ホログラム層転写箔と接着させることが可能なものであれば特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途等に応じて任意に選択して用いることができる。本工程に用いられる被転写体としては、例えば、冊子や商品券などに使われる紙や各種カード、フィルム、布等を挙げることができる。
【0128】
本工程において被転写体が配置される位置としては、上記長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層上であれば特に限定されるものではない。ここで、本工程に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔においては、マーク層がヒートシール層が形成された基材表面の反対面上に形成されていることから、マーク層が形成されている位置に関わらず、ヒートシール層上の任意の位置に被転写体を配置することができる。
また、本工程においては、上記長尺体積ホログラム層転写箔に形成されたマーク層を基準として、被転写体を配置する位置が決定されることになる。
【0129】
本工程に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔として、上記切れ込み部が形成されたものが用いられる場合、本工程において被転写体が配置される位置は、上記ヒートシール層上あって、かつ、上記切れ込み部と重なるような位置であることが好ましい。ここで、本工程においては、上記切れ込み部が被転写体の端部と重なる場合も、本工程における「重なる」に含まれるものとする。例えば、本工程に用いられる長尺体積ホログラム層転写箔に複数の切れ込み部が形成されている場合、被転写体が配置される態様としては、例えば、図11(a)に例示するように少なくとも1本の切れ込み部と重なるような態様であってもよく、あるいは、図11(b)に例示するように2本の切れ込み部と重なるような態様であってもよい。
【0130】
また、本工程において被転写体が2本の切れ込み部と重なるように配置される態様としては、図12(a)に例示するような2本の切れ込み部が共に被転写体の端部に重ならないように配置される態様と、図12(b)に例示するような1本の切れ込み部が被転写体の端部に重なるように配置される態様と、図12(c)に例示するような2本の切れ込み部が被転写体の端部に重なるように配置される態様とを挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの態様であっても好適に用いることができる。
【0131】
2.加熱接着工程
次に、本発明に用いられる加熱接着工程について説明する。本工程は、上記ヒートシール層を加熱し、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着する工程である。
【0132】
本工程においてヒートシール層を加熱する方法としては、長尺体積ホログラム層転写箔の所望の領域のみを所定の温度に加熱できる方法であれば特に限定されるものではない。このようは方法としては、加熱ローラーを用いる方法や、熱プレス、ホットスタンプ等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの加熱手段であっても好適に用いることができる。
【0133】
また、本工程において長尺体積ホログラム層転写箔を加熱する態様としては、上記基材側から加熱する態様であってもよく、あるいは被転写体側から加熱する態様であってもよい。本工程においては、これらのいずれの態様であっても好適に用いることができるが、なかでも基材側から加熱することが好ましい。
【0134】
上記被転写体配置工程において、切れ込み部が形成された長尺体積ホログラム層が用いられ、被転写体が、上記ヒートシール層上あって、かつ、上記切れ込み部と重なるような位置に配置されている場合、本工程においてヒートシール層が加熱される態様としては、少なくとも1辺が上記長尺体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部と重なるような形状に、上記ヒートシール層を加熱される態様であることが好ましい。図13はこのような態様の一例を示す概略図であり、図13(a)は、図13(b)におけるz方向の正視図である。図13(a)に例示するように本工程においては、上記加熱接着工程において加熱される領域Aの形状が、少なくとも1辺が切れ込み部7と重なるような形状であることが好ましい。
【0135】
本工程においてヒートシール層がこのような態様で加熱される場合、具体的な態様としては、少なくとも1辺が上記長尺体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部と重なるような形状に加熱される態様であれば特に限定されるものではない。このような形状としては特に限定されるものではなく、本発明によって製造される体積ホログラム積層体の用途等に応じて、任意に決定することができる。このような形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形や楕円形等を挙げることができる。
【0136】
本工程においてヒートシール層が加熱される形状について図を参照しながら説明する。図14および図15は、本工程においてヒートシール層が加熱される態様の一例を示す概略図である。図14は1辺が切れ込み部と重なるような形状に加熱される態様の一例を示す概略図である。また、図15は2辺が切れ込み部と重なるような形状に加熱される態様の一例を示す概略図である。これらの図に例示するように、本工程においてヒートシール層4が加熱される形状(図14および図15においてAで示す領域の形状)としては、少なくとも1辺が切れ込み部7と重なるような形状であれば特に限定されるものではない。
【0137】
なお、本発明においては上記図15(c)に示すような角丸の多角形も上記「多角形」に含まれるものとする。
【0138】
本工程においてはこれらのいずれの形状であっても好適に用いることができるが、なかでも被転写体が2本の切れ込み部と重なるように配置されている場合においては、本工程において2辺が切れ込み部と重なるような形状に、上記ヒートシール層が加熱されることが好ましい。
【0139】
3.基材剥離工程
次に、本発明に用いられる基材剥離工程について説明する。本工程は、上記長尺体積ホログラム層転写箔の上記被転写体と接着された領域上に配置されている上記長尺体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する工程である。
【0140】
本工程において基材を剥離する方法としては、上記被転写体と接着された領域のみの基材を剥離することができる方法であれば特に限定されるものではない。通常は、長尺体積ホログラム層転写箔を被転写体から物理的に引き離すことによって剥離する方法が用いられる。
なお、上記被転写体配置工程において切れ込み部が形成された長尺体積ホログラム積層体が用いられ、上記加熱接着工程において、少なくとも1辺が上記長尺体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部と重なるような形状に、上記ヒートシール層が加熱されている場合は、被転写体と接着された領域の端部と切れ込み部が形成された位置とが一致していることから、上記切れ込み部を起点として基材を剥離することが可能であり、体積ホログラム層の破断不良が生じることなく、良好な転写を実施することができる。
【0141】
4.体積ホログラム積層体の製造方法
本発明の体積ホログラム積層体の製造方法は、上記被転写体配置工程が、切れ込み部が形成された長尺体積ホログラム層転写箔を用い、上記長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層上に、上記長尺体積ホログラム層転写箔に形成された切れ込み部と重なるように被転写体を配置するものであり、上記加熱接着工程が、少なくとも1辺が上記切れ込み部と重なるような形状に、上記ヒートシール層を加熱することによって、上記ヒートシール層の加熱された領域と上記被転写体とを接着するものであり、上記基材剥離工程が、上記長尺体積ホログラム層転写箔の上記切れ込み部が形成された位置を始点として、上記被転写体と接着された領域上に配置されている上記長尺体積ホログラム層転写箔の基材を剥離するものであることが、好ましい。このような態様で、上記被転写体配置工程、上記加熱接着工程、および上記基材剥離工程が実施されることにより、転写に伴う体積ホログラム層の破断不良が生じることを防止することができため、被転写体の所定の位置に体積ホログラムを連続的に転写することによって、安定的に体積ホログラム積層体を製造することができるからである。
【0142】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様は以下の実施例に限定されるものではない。
【0144】
[実施例1]
(第1積層体)
第1のフィルムとしてPETフィルム(ルミラーT60(厚み50μm):東レ株式会社製)を準備し、以下の組成からなる体積ホログラム記録材料を、乾燥膜厚5μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、塗工面に表面離型処理PETフィルム(SP−PET(厚み50μm)、トーセロ株式会社製)をラミネートし、第1積層体を作製した。
【0145】
・バインダー樹脂{ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000)}
…50質量部
・3,9−ジエチル−3‘−カルボキシルメチル−2,2’−チアカルボシアニン沃素塩 …0.5質量部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート
…6質量部
・2,2−ビス〔4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン
…80質量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
…80質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(質量比)
…200質量部
【0146】
(基材/剥離性保護層の第2積層体)
第2のフィルム(基材)としてPETフィルム(ルミラーT60(厚み50μm):東レ(株)製)を準備し、剥離性保護層として、以下の組成からなる材料を、乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。
【0147】
・ポリメチルメタクリレート樹脂(分子量;35000) …97質量部
・ポリエチレンワックス(分子量;10000、平均粒径;5μm)
…3質量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比))
…400質量部
【0148】
第1のフィルム/体積ホログラム記録用材料の層/表面離型処理PETフィルムの積層体に波長;532nmのレーザー光を用いてリップマンホログラムを撮影し記録した。記録後、この積層体を100℃の雰囲気中で10分間加熱し、加熱後表面離型処理済PETフィルムを剥離して露出させた体積ホログラム記録用材料の層に、第2のフィルム(基材)/剥離性保護層の積層体の剥離性保護層側が接するようにして重ね、ニップした80℃の熱ローラ対の間を通過させて、第1のフィルム/体積ホログラム層/剥離性保護層/第2のフィルム(基材)の積層体を得た後、高圧水銀灯を用いて、全面に照射線量;2500mJ/cmの紫外線を照射して、体積ホログラム記録用材料の層の定着を行った。
【0149】
(マーク層の形成)
上記第2のフィルム(基材)の剥離性保護層が形成された面とは反対面上に以下の組成からなる材料を10mm角の四角状に等間隔でロールシルク印刷機にて連続印刷した。乾燥温度は85℃とした。
【0150】
・ポリエステル系黒顔料含有樹脂(JET−E1 710ブラック:セイコーアドバンス社製) …100質量部
・イソシアネート硬化剤(D硬化剤:セイコーアドバンス社製)
…5質量部
・溶剤(T977:セイコーアドバンス社製) …30質量部
【0151】
(背面層の塗工)
上記第2フィルム(基材)のマーク層上に重なるよう以下の組成を有する材料を20mm角の四角状に、乾燥後0.5g/mの塗工量になるようにグラビア印刷機にて連続印刷した。乾燥温度は100℃とした。
【0152】
・ポリアミドイミド樹脂(HR−15ET:東洋紡績社製 Tg260℃)
…50質量部
・ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃) …50質量部
・シリコーンオイル(X−22−173DX:信越化学工業社製)
…2.5質量部
・シリコーンオイル(KF965−100:信越化学工業社製)
…2.5質量部
・ステアリル燐酸亜鉛(LBT−1830精製:堺化学工業社製)
…10質量部
・ステアリン酸亜鉛(SZ−PF:堺化学工業社製)
…10質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製) …3質量部
・無機フィラー(タルク、モース硬度参) …10質量部
【0153】
(ヒートシール層の塗工)
上記で得た第1のフィルム/体積ホログラム記録用材料の層/剥離性保護層/第2のフィルム/マーク層/背面層から第1のフィルムを剥離し、そのホログラム面上に下記組成からなる材料を、乾燥膜厚4μmとなるようにグラビアコートにて塗工した。乾燥温度は80℃とした。
【0154】
・ポリエステル樹脂(バイロン550 TOYOBO社製 Tg:-15℃ 分子量28000) …30質量部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比)) …70質量部
【0155】
[実施例2]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0156】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−1000:信越化学工業社製 分子量;約20000 固形分100%)<バインダー樹脂固形分に対し4.5質量%添加>
…1.13質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0157】
[実施例3]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0158】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−1000:信越化学工業社製 分子量;約20000 固形分100%)<バインダー樹脂固形分に対し15質量%添加>
…3.75質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0159】
[実施例4]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0160】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−10M:信越化学工業社製 分子量;約150000 固形分100%)<バインダー樹脂固形分に対し4.5質量%添加>
…1.13質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0161】
[実施例5]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0162】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−10M:信越化学工業社製 分子量;約150000 固形分100%)<バインダー樹脂固形分に対し15質量%添加>
…3.75質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0163】
[実施例6]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0164】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−10M:信越化学工業社製 分子量;約150000 固形分100%) …3質量部
・シリコーン樹脂フィラー(トスパール120:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 粒径2.0μm)<バインダー樹脂固形分に対し30質量%添加> …7.5質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0165】
[実施例7]
背面層を形成する材料の組成を下記のように変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0166】
・バインダー樹脂:ポリアミドイミドシリコーン樹脂(HR−14ET:東洋紡績社製 Tg250℃ 固形分25%) …100質量部
・シリコーンオイル(TSF451−10M:信越化学工業社製 分子量;約150000 固形分100%) …3質量部
・シリコーン樹脂フィラー(トスパール120:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 粒径2.0μm)<バインダー樹脂固形分に対し150質量%添加> …37.5質量部
・ポリエステル樹脂(バイロン220:東洋紡績社製 固形分40%)
…3質量部
・溶剤(トルエン/エタノール) …100質量部
【0167】
[実施例8−1〜実施例8−7]
(切れ込み部の作製)
実施例1〜実施例7によって作製した体積ホログラム層転写箔のヒートシール面から抜き加工機(OPM−HL300−S 恩田製作所製)を用い体積ホログラム層転写箔の長尺方向に対して垂直方向全体に垂直切れ込みを入れた。垂直切れ込みの形態として、フィルムの長尺方向に対して垂直方向全体に0.7mm間隔で20本の切れ込みを入れたものを作製した。なお、実施例8−1〜実施例8−7は、それぞれ実施例1〜実施例7に対応するものである。
【0168】
[実施例9−1〜実施例9−7]
背面層の塗工範囲をマーク層を覆うように基材の長手方向に対して20mm幅の帯状に形成するように変更した以外は実施例8−1〜実施例8−7と同様に作製した。
【0169】
[実施例10−1〜実施例10−7]
背面層の塗工範囲をマーク層を形成した側の全面に変更した以外は実施例8−1〜実施例8−7と同様に作製した
【0170】
[比較例1]
背面層塗工を行わない以外は、実施例8−1と同様に作製した。
【0171】
[保存評価]
実施例1〜実施例7、実施例8−1〜実施例8−7、実施例9−1〜実施例9−7、実施例10−1〜実施例10−7、および比較例1で得られたホログラム転写箔を幅90mmにカットし1インチ管に50m巻きつけ、40℃48h、50℃48h、40℃90%96hの環境下で保存試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
表1に示すように比較例1はマーク層と切れ込み部が重なる部分での箔剥がれが顕著であったが、実施例ではその部分の箔剥がれは確認されず良好であった。
なお、表1における「○」はマーク層とヒートシール層とが貼り付かなかった場合、「×」はマーク層とヒートシール層とが貼り付いた場合を示す。
【0174】
[転写評価]
実施例1〜実施例7の転写箔について、市販の熱ラミネーターを用い150℃、転写スピード1m/minでPVCカードへ転写を行った。転写後、基材を手で剥離することで、カードへ全面転写することができた。実施例8−1〜実施例8−7、実施例9−1〜実施例9−7、実施例10−1〜実施例10−7の転写箔について、カード製造用の市販の熱ラミネーターを用い、転写温度150℃、転写スピード1m/minで転写評価を行った。切れ込みのある区間にカード端を重ねることで転写箔が破断し、カードへ全面転写することができた。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔にマーク層が形成されている態様の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に背面層が形成されている態様の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に背面層が形成されている態様の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に背面層が形成されている態様の他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔に背面層が形成されている態様の他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の他の例を示す概略図である。
【図9】本発明の長尺体積ホログラム層転写箔の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【図11】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法における被転写体配置工程の一例を示す概略図である。
【図12】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法における被転写体配置工程の他の例を示す概略図である。
【図13】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法における加熱接着工程の一例を示す概略図である。
【図14】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法における加熱接着工程の一例を示す概略図である。
【図15】本発明の体積ホログラム積層体の製造方法における加熱接着工程の他の例を示す概略図である。
【図16】体積ホログラム層転写箔を用いた体積ホログラム積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0176】
1 … 基材
2 … 剥離性保護層
3 … 体積ホログラム層
4 … ヒートシール層
5 … マーク層
6 … 背面層
7 … 切れ込み部
8 … 画像形成層
10 … 長尺体積ホログラム層転写箔
20 … 被転写体
30 … 体積ホログラム積層体
100 … 体積ホログラム層転写箔
101 … 基材
102 … 剥離性保護層
103 … 体積ホログラム層
104 … ヒートシール層
200 … 被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材と、前記基材上に形成された剥離性保護層と、前記剥離保護層上に形成され、体積ホログラムが記録された体積ホログラム層と、前記体積ホログラム層上に形成され、熱可塑性樹脂を含有するヒートシール層と、を有する長尺体積ホログラム層転写箔であって、
前記基材の前記ヒートシール層が形成された面とは反対面上であり、かつ前記基材を介して前記ヒートシール層が形成された領域と重なる位置に形成され、前記体積ホログラム層を被転写体に転写する位置を決定する基準となるマーク層と、少なくとも前記マーク層上に形成され、表面に離型性を有する背面層と、を有することを特徴とする、長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項2】
前記基材の長手方向に対して垂直方向の少なくとも一部に、前記ヒートシール層を貫通し、かつ、前記体積ホログラム層の少なくとも一部が切断されるように形成された切れ込み部を有することを特徴とする、請求項1に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項3】
前記マーク層が、前記基材の長手方向に対して平行な直線上に所定の間隔で複数形成されており、かつ、前記背面層が複数の前記マーク層を覆うように、前記基材の長手方向に対して平行な帯状に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項4】
前記背面層に、バインダー樹脂として、ガラス転移温度が150℃以上であるポリアミド系樹脂が含有されていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項5】
前記背面層に、バインダー樹脂として、ガラス転移温度が150℃以上であるポリアミドイミドシリコーン樹脂が含有されていることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項6】
前記背面層が、前記基材の前記マーク層が形成された側の全面に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項7】
前記背面層に、数平均分子量が1万〜100万のシリコーンオイルが、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、1質量部〜20質量部の範囲内で含有されていることを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項8】
前記背面層に、有機材料からなる有機フィラーが、固形分換算でのバインダー樹脂100質量部に対し、30質量部〜150質量部の範囲内で含有されていることを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項9】
前記有機フィラーが、シリコーン樹脂フィラーであることを特徴とする、請求項8に記載の長尺体積ホログラム層転写箔。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の長尺体積ホログラム層転写箔を用い、前記マーク層を基準として、前記長尺体積ホログラム層転写箔のヒートシール層に接するように被転写体を配置する被転写体配置工程と、
前記長尺体積ホログラム層転写箔を加熱し、前記長尺体積ホログラム層転写箔の加熱された領域と前記被転写体とを接着する加熱接着工程と、
前記被転写体と接着された領域上に配置されている前記長尺体積ホログラム層転写箔の基材を剥離する基材剥離工程と、を有することを特徴とする、体積ホログラム積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−274428(P2009−274428A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170766(P2008−170766)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】