説明

長尺金属箔ヒータおよび製造方法

【課題】 加温の電力消費効率の向上。植物の形状に合わせた巻きつけの容易化。作業性,安全性,経済性の向上。
【解決手段】 長手方向で加温が必要な部分の断面積を小さくして電気抵抗を大きくした長尺金属箔ヒータ。植物体を加温する加温部は、断面積の小さい帯状金属箔を用いて加温を促進し、加温部間の導電部は断面積の大きい帯状金属箔を用いて底での発熱を抑制する。断面積を小さくする形態には、加温部の薄い金属箔テープを導電部の厚い金属箔テープに溶接等で連結する異肉厚形態と、同肉厚の金属箔テープを打ち抜き等で幅を小さくして加温部とする異幅形態がある。所定ピッチで肉厚又は幅を小さくした長尺金属箔を、可撓性を有する電気絶縁体で被覆して長尺金属箔ヒータとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低抵抗低発熱の導電部と高抵抗高発熱の加温部が交互に分布する長尺金属箔ヒータに関する。本発明の長尺金属箔ヒータは、これに限定する意図ではないが例えば、等間隔に植栽されたいちご,ばら等の植物の周囲に直接巻きつけるか、または近傍に設置することにより、植物を加温して植物の生育を促進させる農業,園芸用長尺ヒータに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来のいちご,バラ等植物の冬季栽培においては、収量と品質を確保するため、ビニールハウス内を所定の温度(例:いちごは8℃以上)に保ち、周辺の土の温度を所定の温度範囲(例:いちごは14℃以上)にしている。しかし、最近の研究によれば、いちご、バラにおいては植物の茎基(クラウン)付近のみを所定の温度(例:いちごは16〜20℃)にすればハウス内の温度を3℃程度下げられることが分かった。これにより冬季の暖房費が50%以上も低減できる(非特許文献1)。
【0003】
このような加温に用いられるヒータは、図13に示すような機材構成で使用される。すなわち、100Vまたは200Vの電源から電気コード30で供給される電流を、温度調節機31で制御してヒータ32の温度を調整して植物34を所定の温度に加温維持する。植物34の温度は、熱電対33で測定し、温度調節機31にフィードバックする。現状の農業用ヒータは、コードヒータを使用している。コードヒータは、図14に示すようにガラスウール芯35の外側にニクロム等のヒータ線36を巻き、外側をフッ素樹脂等の電気絶縁材37で被覆した構造になっているため、小さな半径に曲げるとニクロム線が断線しやすい。そのため、図15に示すようにコードヒータ38は植物の、クラウンとも呼ばれる茎基40脇の培土43上を通すだけであり、外径が約3mmの断面が円形なので植物への接触面積が小さい。そのため、植物への伝熱が非常に悪い。なお、いちごの場合は葉41といちごの実42は茎基40から芽が出て成長する。いちごの場合は約20cm間隔で植えられている。
【0004】
本出願人は、農業,園芸に限らず多くの用途がある長尺帯状金属箔ヒータを提供した(特許文献1)。このヒータは帯の折返し曲げにより面状ヒータとして、また、植木鉢を包む立体形状にして使用することができる。しかし、畝に等間隔に植栽された多数のいちご,バラなどの個別加温には、上述のコードヒータと同様に、全長に渡って抵抗分布が均一であるので、電力消費効率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】全農福岡県本部2009年7月発行「福岡の野菜Vege」No.135 P64〜P66
【特許文献1】特開2010−3487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コードヒータの場合は全体がヒータであるため、植物以外の部分も加温する等の理由により、ハウス暖房費が下がった分と同等レベルの電力費を、コードヒータによる植物加温に要する欠点がある。
【0007】
本出願人は、農業,園芸に限らず多くの用途がある長尺帯状金属箔ヒータを提供した(特許文献1)。このヒータは帯の折返し曲げにより面状ヒータとして、また、植木鉢を包む立体形状にして使用することができる。しかし、畝に等間隔に植栽された多数のいちご,バラなどの個別加温には、上述のコードヒータと同様に、全長に渡って抵抗分布が均一であるので、電力消費効率が低い。
【0008】
本発明は、加温の電力消費効率を高くすることを第1の目的とする。例えば農業,園芸に使用する場合は、植物の形状に合わせて容易に巻きつけるように曲げられ、曲げても断線の発生がなく均一な温度が得られ、任意の大きさに製作でき、使用後は簡単に巻き取れ、作業性,安全性,経済性に優れる長尺金属箔ヒータを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属箔テープの長手方向で加温が必要な部分の断面積を小さくして電気抵抗を大きくする。断面積を小さくする形態には、加温部とする肉厚の薄い金属箔を導電部とする厚い金属箔に溶接等で連結する異厚形態と、同肉厚の金属箔を打ち抜き等で幅を小さくして加温部する異幅形態がある。所定ピッチで肉厚または幅を小さくした長尺金属箔を可撓性を有する電気絶縁体で被覆して長尺金属箔ヒータとする。特に、加温部例えば植物体を加温する部位は、断面積の小さい帯状金属箔を用いて加温を促進し、加温部間の導電部は断面積の大きい帯状金属箔を用いて底での発熱を抑制する。本発明は具体的には、次の通りである。
【0010】
(1)低抵抗の導電部と高抵抗の加温部とが長手方向に交互に分布する長尺金属箔、および、該長尺金属箔を被覆した可撓性を有する電気絶縁体、でなる長尺金属箔ヒータ。
【0011】
(2)前記長尺金属箔の前記導電部は断面積が大きく前記高抵抗の加温部は断面積が小さい、上記(1)に記載の長尺金属箔ヒータ。
【0012】
(3)前記長尺金属箔は、厚肉金属箔の導電部とそれに溶接された薄肉金属箔の加温部でなる、上記(1)又は(2)に記載の長尺金属箔ヒータ。
【0013】
(4)前記長尺金属箔は、広幅金属箔の導電部とそれに連続する狭幅金属箔の加温部でなる、上記(1)又は(2)に記載の長尺金属箔ヒータ。
【0014】
(5)前記長尺金属箔を、塗装により、可撓性を有する電気絶縁体で被覆した、上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータ。
【0015】
(6)前記長尺金属箔を、テーピングにより、可撓性を有する電気絶縁体で被覆した、上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータ。
【0016】
(7)アンコイラーに巻かれた金属箔テープをフィーダーでプレスに送り、該プレスで金属箔テープを打ち抜いて高抵抗の加温部を形成しリールに巻き取る、上記(4)に記載の長尺金属箔の製造方法。
【0017】
(8)アンコイラーに巻かれた前記長尺金属箔を巻き戻し、洗浄乾燥装置で洗浄,乾燥し、塗装機で前記可撓性を有する電気絶縁体を塗装,乾燥して前記長尺金属箔を被覆しリールに巻き取る、上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータの製造方法。
【0018】
(9)アンコイラーに巻かれた前記長尺金属箔を巻き戻し、該長尺金属箔の上側は、テープ巻きした前記可撓性を有する電気絶縁体のテープを巻き戻してガイドロールで案内して圧着ロールで該テープで被覆し、同様に下側もテープ巻きした前記可撓性を有する電気絶縁体のテープを巻き戻してガイドロールで案内して圧着ロールで該テープで被覆し、上側,下側両面を前記テープで被覆した長尺金属箔ヒータをリコイラーで巻き取る、上記(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
長尺金属箔は、その長手方向任意の位置で断面積を変更することができるので、加温対象の大きさ,位置に応じて必要な部分のみを暖める加温部を簡易に構成できる。また長尺金属箔は平面を有しており、小さな曲げ半径に曲げられるので、加温対象たとえば植物体に巻きつけることにより効率の良い加温ができる。また使用前,使用後はリールに容易に巻けることができるので作業性,保管性に優れている。電気絶縁体は電気絶縁性だけでなく、耐熱性,耐薬品性,耐摩耗性にも優れており、長期使用しても安全である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の長尺金属箔ヒータの一形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す長尺金属箔ヒータの低抵抗導電部2と、給電線である被覆銅線4との接続部を示す拡大平面図である。
【図3】図2に示す導電部2の接続端部の形状を示す平面図である。
【図4】図1に示す長尺金属箔ヒータの、第1形態の長尺金属箔(低抵抗導電部2,高抵抗加温部1)を示す拡大斜視図である。
【図5】図1に示す長尺金属箔ヒータの、第2形態の長尺金属箔(低抵抗導電部2,高抵抗加温部1)を示す拡大斜視図である。
【図6】図1に示す長尺金属箔ヒータの、第3形態の長尺金属箔(低抵抗導電部2,高抵抗加温部1)を示す拡大斜視図である。
【図7】第2および第3形態の長尺金属箔の製造ラインの概要を示すブロック図である。
【図8】長尺金属箔を可撓性を有する電気絶縁体で被覆した長尺金属箔ヒータの拡大横断面図である。
【図9】長尺金属箔に可撓性を有する電気絶縁体を塗装により被覆する塗装ラインの概要を示すブロック図である。
【図10】長尺金属箔に可撓性を有する電気絶縁体をテーピングにより被覆する塗装ラインの概要を示すブロック図である。
【図11】厚肉の低抵抗導電部2と薄肉高抵抗加温部1をスポット溶接で接続した長尺金属箔を可撓性を有する電気絶縁体テープにより被覆した長尺金属箔ヒータの拡大横断面図である。
【図12】本発明の一形態の長尺金属箔ヒータの一使用態様を示す斜視図である。
【図13】従来のコードヒータを用いた植物加温のための機材を示すブロック図である。
【図14】従来のコードヒータの、一部を破断して示す平面図である。
【図15】図14に示す従来のコードヒータの植物加温のための配設形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明の長尺金属箔ヒータの一形態を示す。給電線である被覆銅線4から流される電流は、給電線接続部3を介して長尺金属箔ヒータの導電部2に流れる。接続部3は、図2に示すような構造になっている。すなわち被覆銅線4と導電部2の接続側の幅を狭くした、金属箔むき出しの先端部5を市販の給電線圧着管6で圧着して接続する。導電部2の接続側の幅を狭くするのは、圧着時に圧着管6に挿入しやすくし、金属箔が折れるのを防ぐためである。図3には、圧着管6に挿入する前の先端部5を示す。図3において先端部5の幅Aは3〜5mmが挿入し易い。先端部5の長さは3mm以上、角度θは30°以上が、接続部3の電気抵抗発熱を抑制するために望ましい。接続後は、圧着管6およびその前後を、図示しない市販の熱収縮チューブで電気絶縁する。
【0022】
導電部2は断面積を大きくして電気抵抗を小さくし、極力発熱しないようにしている。電流は導電部2から断面積を小さくして電気抵抗を大きくした加温部1に流れる。加温部1で発熱量が多く、いちごその他の植物を必要な温度に加温するに適する。加温部2の形態は、導電部2よりも電気抵抗が高く加温部2に発熱が集中するように、断面積が導電部2よりも小さい。断面積を小さくする形態には2種ある。一つは、可撓性の電気絶縁体で被覆される長尺金属箔の肉厚を薄く変更する形態と、もう一つは、幅を狭く変更する形態である。肉厚を変更する形態では、例えば図4に示すように肉厚(低抵抗)の導電部2と薄肉(高抵抗)の加温部1を長手方向に交互に並べてそれらの間をスポット溶接する。溶接部7は使用時の万一の破断を考慮して2点以上を実施する。溶接の際に重要なのは、導電部2と加温部1の重ねの長さDである。重ねの長さDは、あまり小さいと溶接の位置合わせが難しく、大きくなると曲げられた時に電気絶縁体が剥がれやすくなるため、2〜3mmが望ましい。金属箔テープを用いた導電部2および加温部1には、適当な電気抵抗を有するアルミ,アルミ銅合金,ステンレス,ニクロム等の材質で厚みは20〜300μmの金属箔を用いるが、耐食性,強度,経済性を考慮するとステンレスが望ましい。厚みは20μm未満になると強度不足になり、製造コストが大幅に高くなる。また300μm以上になると簡単に曲げられない。
【0023】
金属箔の幅を狭く変更する場合は、例えば図5および図6に示す方法がある。図5は金属箔テープ2の内部8をポンチで打ち抜いて加温部1を作成する。この場合は、長手方向で打ち抜いていない部分が導電部2になる。また図6は金属箔テープ2の両側を打ち抜いた場合であり、幅方向で残された部分1が加温部となる。
【0024】
図7に、打ち抜く場合の工程を示す。アンコイラー9に巻かれた金属箔テープ26をフィーダー10で所定の長さ送った後で停止し、ダイとポンチを有するプレス11で打ち抜いて所定の形状(例えば図5,図6)を作り、これを繰り返す。打ち抜かれた異幅金属箔テープ12は巻き取りリール13に巻かれる。これらのフィーダー10,ダイ,ポンチ,プレス11は、市販のものを利用できる。また、金属箔の幅を狭く変更する技術として市販のレーザー切断機,エッチング設備も使用できる。
【0025】
図8に示すように加温部1は可撓性がある電気絶縁体14により被覆されている。導電部2も同様に可撓性がある電気絶縁体により被覆されている。電気絶縁体14の被覆方法には、塗装と電気絶縁テープをテーピングする方法がある。
【0026】
図9に異肉厚または異幅により断面積が異なる長尺金属箔に、可撓性がある電気絶縁体を塗装する装置の側面図を示す。アンコイラー9から異断面積長尺金属箔15を巻き戻し、洗浄乾燥装置16で洗浄,乾燥し、塗装機17で可撓性がある電気絶縁体14を塗装する。これにより製造された長尺金属箔ヒータ18はリコイラー19で巻き取る。洗浄は、市販のイオン水あるいは炭化水素系洗浄液を用いて行えば十分である。塗装は、市販の電着塗装,静電塗装又は樹脂コーティングが使用できる。可撓性がある電気絶縁体14には、使用温度に応じて可撓性を有するポリイミド,テフロン(登録商標),シリコン,ポリエステル,合成ゴム,ウレタンゴム,エポキシ樹脂等を使用する。可撓性がある電気絶縁体14の厚みは、安定した電気絶縁を確保するため、10μm以上が望ましく、良好な曲げ可撓性をかくほするために100μm以下が望ましい。
【0027】
長尺金属箔15を可撓性がある電気絶縁体でテーピングして長尺金属箔ヒータとする絶縁体被覆は、図10に示す装置により行われる。アンコイラー9から巻き戻された断面積の異なる長尺金属箔15は、上下面を同時に、可撓性がある電気絶縁体テープで被覆される。長尺金属箔15の上側は電気絶縁体テープ巻20aから巻戻された電気絶縁体テープ23aを、鍔を有するガイドロール21aで幅ズレを生じないように案内して圧着ロール22aで長尺金属箔15に被覆する。同様に下側は電気絶縁体テープ巻20bから巻戻された電気絶縁体テープ23bをガイドロール21bで案内して圧着ロール22bで被覆する。両面を電気絶縁体テープで被覆された長尺金属箔ヒータ27は、リコイラー19で巻き取られる。電気絶縁体テープは市販されているものを使用する。電気絶縁体テープの支持体フィルムは材質がポリエステル,エポキシ,ガラスクロス等であり、肉厚は0.05〜0.2mmが望ましい。0.05mm未満では使用強度に問題があり、0.2mm超では簡単に曲げられなくなる。粘着剤はゴム系,アクリル系が用いられる。
【0028】
図11に、異肉厚長尺金属箔を用いた長尺金属箔ヒータの異肉厚接続部を示す。異肉厚金属箔は幅方向に3点をスポット溶接したものである。導電部2と加温部1は、スポット溶接によってできた溶鋼部7で繋がっている。異肉厚長尺金属箔はスポット溶接した部分の肉厚が一番厚いので、上側の電気絶縁体テープ23a,下側の電気絶縁体テープ23bおよび金属箔側面で囲まれる隙間24が大きい。この隙間24は、長尺金属箔ヒータが曲げられた場合に少し拡がる。拡がり量はスポット溶接の長手方向,幅方向の位置および精度により多少異なる。また実際には、導電部2と加温部1の幅方向ずれ、電気絶縁体テープ23aと23bの幅方向ずれ等により、電気絶縁体テープ23aと23b間の接着面25の幅は変化する。これらのばらつきを考慮してヒータ幅を決める必要がある。図中の寸法Cは、長尺金属箔の側面と電気絶縁体テープの側面との距離であり、長尺金属箔のスポット溶接部の総肉厚0.2mm以内なら2mm以上、0.3mm以内では3mm以上、0.4mm以内なら4mm以上が望ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を示す。図1に示す本発明の長尺金属箔ヒータにおいて、長尺金属箔の導電部2と加温部1には、JIS規格のSUS304ステンレス鋼を使用した。異肉厚形態と異幅形態について、表1に示す幅,肉厚,長さ,個数を用いた。異肉厚形態の導電部2と被覆銅線4との連結は、図3に示す寸法Aは4mm、Bは5mm、θは90°にした。市販の圧着管6に被覆銅線4の被覆を剥がして銅線と導電部2の先端部5部を一緒に入れて圧着した後で、圧着管6およびその前後を市販の熱収縮チューブで被覆した。異幅形態は市販のポンチとダイを用いて打ち抜きを行った。従来法のコードヒータも同じ長さを使用した。
【0030】
長尺金属箔を被覆する可撓性がある電気絶縁体14は、市販の耐熱性130℃保証で肉厚60μm、幅は金属箔テープ幅よりも6mm広いポリエステルテープとして、長尺金属箔の両面から図10に示す装置で貼着した。このように製造した長尺金属箔ヒータを20cm間隔で植えられたいちごに適用した。この長尺金属箔ヒータは、図12に示すように、加温部1をいちごの茎基40に直接ピン44で約半周巻き付けた。従来例のコードヒータ38は、図15に示すように茎基40に添わせた。10月から3月までの冬季間でハウス温度を慣行の8℃から5℃に下げて茎基(クラウン)直下の地温を15℃〜17℃にした結果、本発明の長尺金属箔ヒータおよび従来のコードヒータ38のいずれでも、慣行の8℃と同じように成長していちご収量も差が認められなかった。なお、ヒータの使用期間中は慣行と同じくかん水,肥料,散薬を行った。使用電力比を表1に示す。従来例のコードヒータ38を用いた場合に比較して、本発明の長尺金属箔ヒータの使用電力は、ほぼ半分以下になっている。また、本発明の長尺金属箔ヒータは使用前および使用後に外径96mmのコアに巻き取っても問題なかった。また、使用後に本発明の長尺金属箔ヒータの電気絶縁性を調査した結果問題なかった。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の長尺金属箔ヒータは、任意の間隔(導電部長さ)で任意の長さの加温部を任意数有する任意の幅および長さのものを経済的に提供でき、例えば、所定間隔で植栽された植物(例えばいちご,ばら,なす等)の生長点を効率よく加温できる。可撓性があり、複雑な形状や外径の異なる植物に容易に巻きつけることができて加温効率が良い。また、コアに巻き取って使用できるため、作業性に優れている。
【符号の説明】
【0033】
1:加温部
2:導電部
3:導電部の接続部
4:被覆銅線
5:導電部の先端
6:圧着管
7:スポット溶接部
8:長尺金属箔ヒータの内部空洞
9:アンコイラー
10:フィーダー
11:プレス
12:異幅長尺金属箔
13:巻き取りリール
14:可撓性がある電気絶縁体
15:異断面積長尺金属箔
16:洗浄乾燥装置
17:塗装機
18:長尺金属箔ヒータ
19:リコイラー
20a,20b:電気絶縁テープ巻
21a,21b:ガイドロール
22a,22b:圧着ロール
23a,23b:電気絶縁テープ
24:隙間
25:テープ間の接着部
26:金属箔テープ
27:長尺金属箔ヒータ
30:電気コード
31:温度調節器
32:ヒータ
33:熱電対
34:植物
35:ガラスウール芯
36:ヒータ線
37:電気絶縁材
38:コードヒータ
39:植物の根
40:茎基
41:植物の葉
42:いちごの実
43:培土
44:ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低抵抗の導電部と高抵抗の加温部とが長手方向に交互に分布する長尺金属箔、および、該長尺金属箔を被覆した可撓性を有する電気絶縁体、でなる長尺金属箔ヒータ。
【請求項2】
前記長尺金属箔の前記導電部は断面積が大きく前記高抵抗の加温部は断面積が小さい、請求項1に記載の長尺金属箔ヒータ。
【請求項3】
前記長尺金属箔は、厚肉金属箔の導電部とそれに溶接された薄肉金属箔の加温部でなる、請求項1又は2に記載の長尺金属箔ヒータ。
【請求項4】
前記長尺金属箔は、広幅金属箔の導電部とそれに連続する狭幅金属箔の加温部でなる、請求項1又は2に記載の長尺金属箔ヒータ。
【請求項5】
前記長尺金属箔を、塗装により、可撓性を有する電気絶縁体で被覆した、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータ。
【請求項6】
前記長尺金属箔を、テーピングにより、可撓性を有する電気絶縁体で被覆した、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータ。
【請求項7】
アンコイラーに巻かれた金属箔テープをフィーダーでプレスに送り、該プレスで金属箔テープを打ち抜いて高抵抗の加温部を形成しリールに巻き取る、請求項4に記載の長尺金属箔の製造方法。
【請求項8】
アンコイラーに巻かれた前記長尺金属箔を巻き戻し、洗浄乾燥装置で洗浄,乾燥し、塗装機で前記可撓性を有する電気絶縁体を塗装,乾燥して前記長尺金属箔を被覆しリールに巻き取る、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータの製造方法。
【請求項9】
アンコイラーに巻かれた前記長尺金属箔を巻き戻し、該長尺金属箔の上側は、テープ巻きした前記可撓性を有する電気絶縁体のテープを巻き戻してガイドロールで案内して圧着ロールで該テープで被覆し、同様に下側もテープ巻きした前記可撓性を有する電気絶縁体のテープを巻き戻してガイドロールで案内して圧着ロールで該テープで被覆し、上側,下側両面を前記テープで被覆した長尺金属箔ヒータをリコイラーで巻き取る、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の長尺金属箔ヒータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−192566(P2011−192566A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58912(P2010−58912)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(508096415)中國工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】