長繊維・固化材・土の混合体の施工法
【課題】 固化材の量を植生可能な範囲で増やし、締固めを行うことにより、大きなピーク強度を有する長繊維・固化材・土の混合体の施工法を提供する。
【解決手段】 長繊維・セメント・土の混合体の施工法において、長繊維・セメント・土の混合体に含まれるセメント量を植生可能な範囲とし、のり面1や壁面への前記長繊維・セメント・土の混合体3の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・セメント・土の混合体3の締固めを行う。
【解決手段】 長繊維・セメント・土の混合体の施工法において、長繊維・セメント・土の混合体に含まれるセメント量を植生可能な範囲とし、のり面1や壁面への前記長繊維・セメント・土の混合体3の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・セメント・土の混合体3の締固めを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のり面や壁面の強度・変形性能の向上を図るための長尺繊維・固化材・土の混合体の施工法に関するものである。ここで、固化材としては、セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材を含む。
【背景技術】
【0002】
現在、環境保全や資源の有効活用が求められており、建設分野においては建設副産物の有効利用が望まれている。現地発生土の有効利用を視野に入れた長繊維(糸状で長尺状の繊維)混入補強土一体型緑化工法(ロービングウォール工法)は、砂・セメント・長繊維(ポリプロピレン)を混合した土をのり面や壁面にモルタル吹付機で吹付ける工法であり、のり面や壁面の強度・変形性能が高まるとともに、緑化が可能であり景観にも優れた工法である(下記非特許文献1参照)。
【0003】
図6は長繊維・セメント・土の混合体の施工を行う吹き付けフローを示す図、図7は従来の長繊維混合補強土一体型緑化工法の施工状態を示す図面代用写真、図8はそののり面へ施工された長繊維・セメント・土の混合体を示す図面代用写真、図9はその長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け状態を示す図面代用写真である。
【0004】
図6に示すように、砂101は骨材ホッパー102に供給され、骨材計量器103で計量された後、セメント104が加えられてモルタルが作られる。このモルタルは、モルタル吹付機105によって、給糸装置106から供給される長繊維と共にノズル107からのり面108に吹き付けられる。109は空気圧縮機であり、発電機110を備えており、圧縮空気がモルタル吹付機105と給糸装置106へと供給される。
【0005】
図6〜図9に示されるように、モルタル吹付機105でセメント・土が混合されたモルタルは、給糸装置106により長繊維が加えられ、この長繊維・セメント・土の混合体111がのり面108に吹き付けられる。
【非特許文献1】「ロービングウォール工法」,長繊維緑化協会,2004年11月,5811.02TKo
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示すように、長繊維混合補強土の最大強度(ピーク強度)はセメント添加量に応じて増加する。そのため必要とする強度に応じてセメント添加量が決まる。しかしながら、施工後に植生を行うことを考慮すると、植生可能な添加を上回るようなセメント添加(概ね土の単位体積1m3 あたり30kgを上回るような量)を行うことは難しい。従って、植生を行う場合においては、ピーク強度の上限が存在することになる。
【0007】
一方、図10及び図11に示すように、残留強度はセメント添加量に関わらず、繊維の混入量によって定まる。従って、繊維の混入量を増やすことで残留強度を増加させることができる。
【0008】
しかしながら、従来長繊維として用いられているポリプロピレンは、耐アルカリ性に優れた材料であるが、セメントとの付着は困難な材料である。そこで、混入する長繊維として耐アルカリ性に優れたビニロンを用いれば、セメントとの付着が取れるという特徴が生かされるだけでなく、ポリプロピレンと比較して剛で繊度が大きいため、より強度や変形性能に優れた長繊維・セメント・土の混合体をつくることが期待できる。
【0009】
ところが、ビニロンのような剛で繊度の大きな繊維を用いる場合には、繊維を添加しない供試体に比べて、ピーク強度が低下することがある(図11参照)。これは、剛な繊維を混入する場合は繊維の分散性が悪く(図12参照)、表1に示すように、供試体内の繊維の粗密によって全体の密度が低下するためである。
【0010】
【表1】
一方、従来の長繊維混合補強土一体型緑化工法で用いられているポリプロピレンのように柔で繊度の小さい繊維は、分散性が良く、全体の密度が低下することはない。
【0011】
特に、混合体をのり面工や壁面工へ適用することを考えると、ビニロンのような剛で繊度が大きな繊維の場合は、重さで下方に送られることが懸念され、なおさら分散性が悪くなることが懸念される。
【0012】
そこで、長繊維混入補強土の長繊維として剛で繊度が大きなビニロンを用いた場合、吹き付け時の分散性を確保するために、のり面や壁面に金網、鉄筋金網や合成樹脂製スリット材などを一種類または二種類以上組合わせた補強材を設置し、長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラを解消し、また、その混合体を締固めることで強度や変形性能を向上させるようにした。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みて、固化材の量を植生可能な範囲で増やしながら、大きなピーク強度を有する長繊維・固化材・土の混合体の施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成することを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔2〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記張出し部には補強材を用いることを特徴とする。
【0017】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記長繊維は剛で繊度の大きい繊維であるビニロンであることを特徴とする。
【0018】
〔5〕上記〔3〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記補強材は、金網、鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0020】
(1)ピーク強度を増加させるためには、従来はセメント添加量を増加させることで対応していたが、固化材の量を増やすことなく、十分な締固めを行うことで同等の強度を得ることができる。さらに、固化材の量を植生可能な範囲で増やし、締固めを行えば、従前よりも大きなピーク強度を有する混合体をつくることが可能となる。
【0021】
(2)吹付けを行う際にのり面や壁面に張出し部を設けることで、長繊維が分散し、長繊維・固化材・土の混合体の混合ムラの低減を図ることができる。また、張出し部が混合体と一体となり剛性を有する構造体となるため、圧縮性や曲げ変形性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の長繊維・固化材・土の混合体の施工法は、長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする。
【0023】
また、のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成し、長繊維を分散させ、前記長繊維・固化材・土の混合体の混合ムラを解消する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明にかかる長繊維・セメント・土の混合体の施工が行われた植生可能なのり面の模式図、図2は土へのセメント添加と締固めによる強度変化を示す図である。
【0026】
図1において、1はのり面、2はそののり面に施される排水材、3はその排水材2上に吹き付けられる長繊維・セメント・土の混合体からなる補強土、4はアンカーバー、5は植生が生育できる環境を提供する生育基盤、6は植生した草本類主体である。
【0027】
また、図2において、●はセメントなし(粒土調整砕石)、□はセメント改良礫土の締固め(密度)と強度の関係をそれぞれ示している。
【0028】
図2に示されるように、土のピーク強度は、その密度によっても変化し、十分な締固め(密度を増大させること)を行うことでその強度が増大する。特に、セメントを添加した土は、締固めによる強度の増加がセメントを添加しない場合と比べて著しい。
【0029】
一方、前述した表1に示すようにモルタル吹付機を用いて施工された長繊維・セメント・土の混合体(図9参照)は、その密度が1.6〜1.7g/cm3 程度であるが、例えば、盛土の密度(一般に1.8〜2.0g/cm3 )と比較するとかなり小さな値である。従って、吹付けを行った長繊維・セメント・土の混合体を締固めることで密度増加を図ることができ、ピーク強度の増加につながる。
【0030】
この締固めは、例えば、図3に示すような振動コンパクタのような持ち運び可能な締固め機7を用いて、吹付けを行った長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け厚さごとに行う。なお、締固め機7には転圧機を含む。
【0031】
図4は本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面の模式図であり、図4(a)は水平方向に階段状に張出し部を配置した例を、図4(b)は垂直方向に斜面に沿って張出し部を配置した例を示している。図5は張出し部を設けたのり面や壁面に長繊維・セメント・土の混合体を吹き付けた状態を示す模式図である。
【0032】
ここで、張出し部としては、例えばのり面や壁面11の水平方向に階段状に張出し部としての金網12や、垂直方向に斜面に沿って張出し部としての金網13を配置するようにしている。
【0033】
このように構成することにより、図5(a)に示すように、長繊維・セメント・土の混合体14を吹き付けた際、その長繊維は金網12に絡まり分散する。その結果、長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラがなくなり、繊維混合の粗密が改善される。図5(b)においても同様に、長繊維・セメント・土の混合体15の長繊維は金網13に絡まり、その分散性が改善される。それにより長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラがなくなり、繊維混合の粗密が改善される。
【0034】
なお、ここでは、張出し部として金網12,13を示したが、長繊維の分散を図ることができるものであれば、金網に代わる鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であってもよい。
【0035】
このように長繊維の分散性が改善されれば、その長繊維を含む混合体全体の混合ムラも低減されるものと考えられる。その方法として、のり面や壁面に対して、あらかじめ金網等の張出し部を設置すれば、モルタル吹付けの際に長繊維が張出し部に絡まり、長繊維の分散が促進され、混合体における長繊維混合の粗密が改善される。
【0036】
なお、上記実施例では、固化材として、セメント系の固化材について説明したが、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材であってもよい。
【0037】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の長繊維・固化材・土の混合体の施工法は、植生が可能なのり面や壁面への定着度の高い長繊維・固化材・土の混合体の施工法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる長繊維・セメント・土の混合体の施工が行われた植生可能なのり面の模式図である。
【図2】土へのセメント添加と締固めによる強度変化を示す図である。
【図3】本発明で用いる振動コンパクタのような持ち運び可能な締固め機を示す図である。
【図4】本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面の模式図である。
【図5】本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面に長繊維・セメント・土の混合体を吹き付けた状態を示す模式図である。
【図6】長繊維・セメント・土の混合体の施工を行う吹き付けフローを示す図である。
【図7】長繊維混入補強土一体型緑化工法の施工状態を示す図面代用写真である。
【図8】のり面へ施工された長繊維・セメント・土の混合体を示す図面代用写真である。
【図9】長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け状態を示す図面代用写真である。
【図10】セメント添加量を変えた長繊維・セメント・土の混合体の応力−ひずみ関係を示す図である。
【図11】長繊維の混入量とピーク強度・残留強度の関係を示す図である。
【図12】混合ムラの発生している施工された長繊維・セメント・土の混合体の例を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0040】
1 のり面
2 排水材
3 長繊維・セメント・土の混合体からなる補強土
4 アンカーバー
5 有機質系生育基盤
6 植生した草本類主体
7 持ち運び可能な締固め機
11 のり面や壁面
12,13 金網
14,15 長繊維・セメント・土の混合体
【技術分野】
【0001】
本発明は、のり面や壁面の強度・変形性能の向上を図るための長尺繊維・固化材・土の混合体の施工法に関するものである。ここで、固化材としては、セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材を含む。
【背景技術】
【0002】
現在、環境保全や資源の有効活用が求められており、建設分野においては建設副産物の有効利用が望まれている。現地発生土の有効利用を視野に入れた長繊維(糸状で長尺状の繊維)混入補強土一体型緑化工法(ロービングウォール工法)は、砂・セメント・長繊維(ポリプロピレン)を混合した土をのり面や壁面にモルタル吹付機で吹付ける工法であり、のり面や壁面の強度・変形性能が高まるとともに、緑化が可能であり景観にも優れた工法である(下記非特許文献1参照)。
【0003】
図6は長繊維・セメント・土の混合体の施工を行う吹き付けフローを示す図、図7は従来の長繊維混合補強土一体型緑化工法の施工状態を示す図面代用写真、図8はそののり面へ施工された長繊維・セメント・土の混合体を示す図面代用写真、図9はその長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け状態を示す図面代用写真である。
【0004】
図6に示すように、砂101は骨材ホッパー102に供給され、骨材計量器103で計量された後、セメント104が加えられてモルタルが作られる。このモルタルは、モルタル吹付機105によって、給糸装置106から供給される長繊維と共にノズル107からのり面108に吹き付けられる。109は空気圧縮機であり、発電機110を備えており、圧縮空気がモルタル吹付機105と給糸装置106へと供給される。
【0005】
図6〜図9に示されるように、モルタル吹付機105でセメント・土が混合されたモルタルは、給糸装置106により長繊維が加えられ、この長繊維・セメント・土の混合体111がのり面108に吹き付けられる。
【非特許文献1】「ロービングウォール工法」,長繊維緑化協会,2004年11月,5811.02TKo
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示すように、長繊維混合補強土の最大強度(ピーク強度)はセメント添加量に応じて増加する。そのため必要とする強度に応じてセメント添加量が決まる。しかしながら、施工後に植生を行うことを考慮すると、植生可能な添加を上回るようなセメント添加(概ね土の単位体積1m3 あたり30kgを上回るような量)を行うことは難しい。従って、植生を行う場合においては、ピーク強度の上限が存在することになる。
【0007】
一方、図10及び図11に示すように、残留強度はセメント添加量に関わらず、繊維の混入量によって定まる。従って、繊維の混入量を増やすことで残留強度を増加させることができる。
【0008】
しかしながら、従来長繊維として用いられているポリプロピレンは、耐アルカリ性に優れた材料であるが、セメントとの付着は困難な材料である。そこで、混入する長繊維として耐アルカリ性に優れたビニロンを用いれば、セメントとの付着が取れるという特徴が生かされるだけでなく、ポリプロピレンと比較して剛で繊度が大きいため、より強度や変形性能に優れた長繊維・セメント・土の混合体をつくることが期待できる。
【0009】
ところが、ビニロンのような剛で繊度の大きな繊維を用いる場合には、繊維を添加しない供試体に比べて、ピーク強度が低下することがある(図11参照)。これは、剛な繊維を混入する場合は繊維の分散性が悪く(図12参照)、表1に示すように、供試体内の繊維の粗密によって全体の密度が低下するためである。
【0010】
【表1】
一方、従来の長繊維混合補強土一体型緑化工法で用いられているポリプロピレンのように柔で繊度の小さい繊維は、分散性が良く、全体の密度が低下することはない。
【0011】
特に、混合体をのり面工や壁面工へ適用することを考えると、ビニロンのような剛で繊度が大きな繊維の場合は、重さで下方に送られることが懸念され、なおさら分散性が悪くなることが懸念される。
【0012】
そこで、長繊維混入補強土の長繊維として剛で繊度が大きなビニロンを用いた場合、吹き付け時の分散性を確保するために、のり面や壁面に金網、鉄筋金網や合成樹脂製スリット材などを一種類または二種類以上組合わせた補強材を設置し、長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラを解消し、また、その混合体を締固めることで強度や変形性能を向上させるようにした。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みて、固化材の量を植生可能な範囲で増やしながら、大きなピーク強度を有する長繊維・固化材・土の混合体の施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成することを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔2〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記張出し部には補強材を用いることを特徴とする。
【0017】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記長繊維は剛で繊度の大きい繊維であるビニロンであることを特徴とする。
【0018】
〔5〕上記〔3〕記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記補強材は、金網、鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0020】
(1)ピーク強度を増加させるためには、従来はセメント添加量を増加させることで対応していたが、固化材の量を増やすことなく、十分な締固めを行うことで同等の強度を得ることができる。さらに、固化材の量を植生可能な範囲で増やし、締固めを行えば、従前よりも大きなピーク強度を有する混合体をつくることが可能となる。
【0021】
(2)吹付けを行う際にのり面や壁面に張出し部を設けることで、長繊維が分散し、長繊維・固化材・土の混合体の混合ムラの低減を図ることができる。また、張出し部が混合体と一体となり剛性を有する構造体となるため、圧縮性や曲げ変形性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の長繊維・固化材・土の混合体の施工法は、長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする。
【0023】
また、のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成し、長繊維を分散させ、前記長繊維・固化材・土の混合体の混合ムラを解消する。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明にかかる長繊維・セメント・土の混合体の施工が行われた植生可能なのり面の模式図、図2は土へのセメント添加と締固めによる強度変化を示す図である。
【0026】
図1において、1はのり面、2はそののり面に施される排水材、3はその排水材2上に吹き付けられる長繊維・セメント・土の混合体からなる補強土、4はアンカーバー、5は植生が生育できる環境を提供する生育基盤、6は植生した草本類主体である。
【0027】
また、図2において、●はセメントなし(粒土調整砕石)、□はセメント改良礫土の締固め(密度)と強度の関係をそれぞれ示している。
【0028】
図2に示されるように、土のピーク強度は、その密度によっても変化し、十分な締固め(密度を増大させること)を行うことでその強度が増大する。特に、セメントを添加した土は、締固めによる強度の増加がセメントを添加しない場合と比べて著しい。
【0029】
一方、前述した表1に示すようにモルタル吹付機を用いて施工された長繊維・セメント・土の混合体(図9参照)は、その密度が1.6〜1.7g/cm3 程度であるが、例えば、盛土の密度(一般に1.8〜2.0g/cm3 )と比較するとかなり小さな値である。従って、吹付けを行った長繊維・セメント・土の混合体を締固めることで密度増加を図ることができ、ピーク強度の増加につながる。
【0030】
この締固めは、例えば、図3に示すような振動コンパクタのような持ち運び可能な締固め機7を用いて、吹付けを行った長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け厚さごとに行う。なお、締固め機7には転圧機を含む。
【0031】
図4は本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面の模式図であり、図4(a)は水平方向に階段状に張出し部を配置した例を、図4(b)は垂直方向に斜面に沿って張出し部を配置した例を示している。図5は張出し部を設けたのり面や壁面に長繊維・セメント・土の混合体を吹き付けた状態を示す模式図である。
【0032】
ここで、張出し部としては、例えばのり面や壁面11の水平方向に階段状に張出し部としての金網12や、垂直方向に斜面に沿って張出し部としての金網13を配置するようにしている。
【0033】
このように構成することにより、図5(a)に示すように、長繊維・セメント・土の混合体14を吹き付けた際、その長繊維は金網12に絡まり分散する。その結果、長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラがなくなり、繊維混合の粗密が改善される。図5(b)においても同様に、長繊維・セメント・土の混合体15の長繊維は金網13に絡まり、その分散性が改善される。それにより長繊維・セメント・土の混合体の混合ムラがなくなり、繊維混合の粗密が改善される。
【0034】
なお、ここでは、張出し部として金網12,13を示したが、長繊維の分散を図ることができるものであれば、金網に代わる鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であってもよい。
【0035】
このように長繊維の分散性が改善されれば、その長繊維を含む混合体全体の混合ムラも低減されるものと考えられる。その方法として、のり面や壁面に対して、あらかじめ金網等の張出し部を設置すれば、モルタル吹付けの際に長繊維が張出し部に絡まり、長繊維の分散が促進され、混合体における長繊維混合の粗密が改善される。
【0036】
なお、上記実施例では、固化材として、セメント系の固化材について説明したが、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材であってもよい。
【0037】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の長繊維・固化材・土の混合体の施工法は、植生が可能なのり面や壁面への定着度の高い長繊維・固化材・土の混合体の施工法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる長繊維・セメント・土の混合体の施工が行われた植生可能なのり面の模式図である。
【図2】土へのセメント添加と締固めによる強度変化を示す図である。
【図3】本発明で用いる振動コンパクタのような持ち運び可能な締固め機を示す図である。
【図4】本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面の模式図である。
【図5】本発明にかかる張出し部を設けたのり面や壁面に長繊維・セメント・土の混合体を吹き付けた状態を示す模式図である。
【図6】長繊維・セメント・土の混合体の施工を行う吹き付けフローを示す図である。
【図7】長繊維混入補強土一体型緑化工法の施工状態を示す図面代用写真である。
【図8】のり面へ施工された長繊維・セメント・土の混合体を示す図面代用写真である。
【図9】長繊維・セメント・土の混合体の吹き付け状態を示す図面代用写真である。
【図10】セメント添加量を変えた長繊維・セメント・土の混合体の応力−ひずみ関係を示す図である。
【図11】長繊維の混入量とピーク強度・残留強度の関係を示す図である。
【図12】混合ムラの発生している施工された長繊維・セメント・土の混合体の例を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
【0040】
1 のり面
2 排水材
3 長繊維・セメント・土の混合体からなる補強土
4 アンカーバー
5 有機質系生育基盤
6 植生した草本類主体
7 持ち運び可能な締固め機
11 のり面や壁面
12,13 金網
14,15 長繊維・セメント・土の混合体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項2】
請求項1記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成することを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項3】
請求項2記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記張出し部には補強材を用いることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記長繊維は剛で繊度の大きい繊維であるビニロンであることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項5】
請求項3記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記補強材は、金網、鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項1】
長繊維・セメント系、石灰系、セメント石灰系、石膏系の固化材・土の混合体に含まれる固化材の量を植生可能な範囲とし、のり面や壁面への前記長繊維・固化材・土の混合体の吹き付け厚さごとに、持ち運び可能な締固め機により、前記長繊維・固化材・土の混合体の締固めを行うことを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項2】
請求項1記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記のり面や壁面に長繊維を絡める張出し部を形成することを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項3】
請求項2記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記張出し部には補強材を用いることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記長繊維は剛で繊度の大きい繊維であるビニロンであることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【請求項5】
請求項3記載の長繊維・固化材・土の混合体の施工法において、前記補強材は、金網、鉄筋金網、エキスパンドメタルあるいは合成樹脂製スリット材を1種類又は2種類以上組み合わせた補強材であることを特徴とする長繊維・固化材・土の混合体の施工法。
【図2】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2009−243225(P2009−243225A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93371(P2008−93371)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(501232528)株式会社複合技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【出願人】(501232528)株式会社複合技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】
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