説明

門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及びプレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材

【課題】施工作業性が良好で、効率的に沈殿物を回収、排出出来る門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材を提供する。
【解決手段】門型部材13の左,右両脚部材16,16の各外側面部から外側に向けて、一対の段部16d,16dを各々上面側に有するアーム部16c,16cが、各々一体に突設されている。
この段部16dの上面の高さ方向位置は、門型部材13の上面部14から、舗装プレキャストコンクリート板材15の厚さ分、下方に位置する。
段部16dの下側で、左,右両脚部16,16の内側面部16e,16eには、通水路空間18に面して、樹脂製強化板材としてのFRP板材20…が、貼設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、空港の駐機場等、大きな偏荷重が加わる地表面に設けられて、所望の排水効率が得られる門型プレキャストコンクリート排水構造、この門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び門型部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図16に示すようなプレキャストコンクリート排水構造及びこのプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、この従来のプレキャストコンクリート排水構造では、プレキャストされた複数のU型側溝部材1…が、予め施工された基礎2の上に、排水勾配が与えられながら、敷設されている。
【0004】
このU型側溝部材1には、底面部1bの左,右側縁から略鉛直上方に向けて一体に、左,右両側壁部1a,1aが立設されている。
【0005】
この左,右両側壁部1a,1aの外側面には、段部を構成するステップ3,3が、一定寸法突設されて、一体に設けられている。
【0006】
また、これらの各ステップ3,3の上面には、調整コンクリートが打設されて、小段4,4が形成されている。
【0007】
そして、側溝内部空間8を覆う掛蓋部材5の左,右両脚部5a,5aが載置されることにより、この掛蓋部材5の上面部5b…の高さ方向のレベルが調整されるように構成されている。
【0008】
次に、この従来のプレキャストコンクリート排水構造の作用について説明する。
【0009】
このように構成された従来のプレキャストコンクリート排水構造では、掛蓋部材5の上面部5bに、隣接される道路の舗装面6の上面から、雨水が流れ込むと、この上面部5bの一部に形成されたグレーチング開口部7から、前記側溝内部空間8内へこれらの雨水が、流下される。
【0010】
この溝内部空間8内へ流下した雨水は、前記U型側溝部材1…の底面部1b…に設けられた排水勾配によって、これらのU型側溝部材1…によって、形成される排水溝の延設方向に沿って一定方向へ流されて排水される。
【特許文献1】特開2001−123519号公報(0005段落乃至0012段落、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように構成された従来のプレキャストコンクリート製のU型側溝部材1では、空港の駐機場で用いる場合等、図17に示すように、両側壁部1a,1aのステップ3,3の上面に、耐力プレキャストコンクリートで構成された舗装プレキャストコンクリート板材9,9の端部9a,9aが、各々係止されて支持される場合がある。
【0012】
このような場合、例えば、航空機の車輪Tが、左,右何れか一方の舗装プレキャストコンクリート板材9の上面に位置すると、大きな偏荷重Fが、前記U型側溝部材1の一方の側壁部1aに加わる。
【0013】
このため、側壁部1aの厚みWを、この大きな偏荷重Fが加わっても、圧壊若しくは、座屈しないように、所定以上の厚さに設定しなければ、この大きな偏荷重を支持出来ず、使用されるプレキャストコンクリートの材料量が増大して、製造コストが上昇してしまう虞があると共に、重量も増大してしまうといった問題があった。
【0014】
また、空港等の駐機場等では、前記舗装プレキャストコンクリート板材9の上面に、所定の水平度が要求される。
【0015】
このため、排水勾配が与えられた基礎2の上に、敷設された前記U型側溝部材1では、各ステップ3,3の上面に、調整コンクリートを打設して、高さが長手方向で異なる傾斜した小段4,4を形成することにより、前記舗装プレキャストコンクリート板材9の水平度を保たなければならない。
【0016】
また、前記従来のU型側溝部材1では、ステップ3の上面から底面部1bの下面1cまでの高さ方向寸法hが、一定の規格によって決定されている。
【0017】
このため、高さの方向寸法hが各々異なる規格のU型側溝部材1,1を複数の用意しても、空港や埠頭等の長い直線距離を有する敷設場所では、所望の勾配を与えにくいといった問題もあった。
【0018】
そこで、この発明は、軽量で施工作業性が良好で、効率的に排水が出来る門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、左,右両脚部の上側縁同士を、一体となるように連結する橋状部を有する上面部を設けて、該左,右両脚部間に通水路空間を形成するプレキャストコンクリート製の門型部材を、複数連設することにより、地表下に排水路を形成するプレキャストコンクリート排水構造であって、前記左,右両脚部材の各側面部から外側に向けて、一対の段部を各々一体に突設して、該段部の上面に、該門型部材の上面部と略面一となる舗装プレキャストコンクリート板材を各々係止させるプレキャストコンクリート排水構造を特徴としている。
【0020】
また、請求項2に記載されたものは、前記門型部材は、前記左,右両脚部材間に形成される通水路空間に面して、該脚部材の内側面に、樹脂製強化板材が貼設されている請求項1記載のプレキャストコンクリート排水構造を特徴としている。
【0021】
更に、請求項3に記載されたものは、前記門型部材は、前記上面部に、グレーチング部材を装着するグレーチング開口部が、前記通水路空間と外部空間とを連通するように開口形成されている請求項1又は2記載のプレキャストコンクリート排水構造を特徴としている。
【0022】
また、請求項4に記載されたものは、前記門型部材は、前記橋状部を有する上面部から、前記段部の上面までの寸法を、予め一定の厚さを有する舗装プレキャストコンクリート板材に合わせて設定されている請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のプレキャストコンクリート排水構造を特徴としている。
【0023】
そして、請求項5に記載されたものは、地表面から凹設形成される凹状溝部の底面に、高さ方向の寸法を異ならせて、階段状に形成される階段状基礎が、設けられると共に、該階段状基礎の各段部の上面部の高さ方向の寸法に合わせて、前記各門型部材の上面部が、面一となるように、異なる高さ方向の寸法で形成された左,右両脚部を有する複数の該門型部材を、該各段部の上面に設置することにより、該門型部材の上面部の高さ方向位置を、前記地表面の高さ方向位置に合わせると共に、前記段部に係止される舗装プレキャストコンクリート板材の上面部を、該門型部材の上面部と共に、地表面に略水平に設ける請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムを特徴としている。
【0024】
更に、請求項6に記載されたものは、前記左,右両脚部材間に位置する前記基礎上面部には、所定の勾配を有して、通水路の一方方向へ向けて、水を流下させる流水傾斜面を形成する請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムを特徴としている。
【0025】
また、請求項7に記載されたものは、前記流水傾斜面は、前記基礎上面部に、インバート調整コンクリートを打設することにより形成される請求項6記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムを特徴としている。
【0026】
そして、請求項8に記載されたものは、予めプレキャストコンクリート形成されて、基礎の上面部に隣接配置されることにより、地表面よりも下方に、前記各通水路空間を連通させた排水路を形成する請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材を特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
このように構成された請求項1記載のものでは、上側縁同士が橋状部によって一体となるように連結された前記左,右両脚部材の各側面部から、外側に向けて一体に突設形成された一対の段部に、各々舗装プレキャストコンクリート板材が、係止されて、下方から支持される。
【0028】
このため、一方の段部に、前記舗装プレキャストコンクリート板材から、大きな偏荷重が入力しても、該橋状部を介して、反対側の段部が形成される脚部材に該荷重が分散されて、左,右両脚部によって、この荷重が支持される。
【0029】
従って、該左,右両脚部の厚さ方向寸法を小さく設定できるので、使用されるプレキャストコンクリートの材料量を減少させて、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0030】
また、重量の増大も抑制出来るので、施工性を良好なものとすることが出来る。
【0031】
しかも、前記舗装プレキャストコンクリート板材の上面は、前記門型部材の上面部と略面一となる。
【0032】
このため、前記門型部材を水平な基礎の上面に載置するだけで、容易に、前記舗装プレキャストコンクリート板材を水平配置できる。
【0033】
従って、更に、施工性が良好である。
【0034】
また、請求項2に記載されたものは、前記門型部材の左,右両脚部の内側面部に貼設された前記樹脂製強化板材によって、水に接触する通水路空間側の表面が、平滑な樹脂材料で覆われて、通水抵抗が減少されている。
【0035】
例えば、コンクリートの粗度係数は、0.013〜0.014であるのに対して、樹脂製強化板材としてのFRP樹脂材料の粗度係数は、0.01程度であることが知られている。
【0036】
このため、所望の流水量を得るために必要とされる左,右両脚部材間の幅方向寸法を、減少させることが出来、左,右両脚部材間に打設されるインバート調整コンクリート等の材料の分量を減少させることが出来るため、施工コストの上昇を抑制出来る。
【0037】
また、前記樹脂製強化板材は、劣化率が低く、長期化に渡り、通水が行われる通水路空間に面する部分に用いることで、良好な耐摩耗性を発揮できる。
【0038】
例えば、コンクリート材料が、水に接触する通水路空間側の表面に露出している場合のように、摩耗により、表面に凹凸が発生して、ザラ付くことで、通水抵抗が増大してしまう虞も無い。
【0039】
このため、通水路空間側の表面が、前記樹脂製強化板材の平滑な樹脂材料で覆われることにより、長期間に渡り円滑な状態を維持出来、通水抵抗を変化させることなく、所望の流量を維持できる。
【0040】
従って、メンテナンス間隔を長くすることが出来る為、空港や港湾設備等の耐候性及び継続性が求められる施設の排水構造として用いて好適である。
【0041】
更に、請求項3に記載されたものは、前記門型部材の前記上面部に形成されて、前記通水路空間と外部空間とを連通するグレーチング開口部を介して、雨水が、通水路空間内に流下される。
【0042】
該グレーチング開口部によって、前記上面部では、使用されるプレキャストコンクリートの材料量を減少させて、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0043】
また、軽量化を図ることが出来るので、更に、施工性が良好である。
【0044】
そして、請求項4に記載されたものは、前記門型部材の前記橋状部を有する上面部から、前記段部の上面までの寸法が、予め一定の厚さを有する舗装プレキャストコンクリート板材に合わせて設定されている。
【0045】
このため、該舗装プレキャストコンクリート板材の端部を、該段部の上面に、係止させて、下方から支持させることにより、前記舗装プレキャストコンクリート板材の上面と、前記門型部材の上面部とを略面一とすることができる。
【0046】
従って、従来のような調整コンクリートが不要となる。
【0047】
また、請求項5に記載されたものでは、前記段部に舗装プレキャストコンクリート板材の上面部を、係止させることにより、舗装プレキャストコンクリート板材の上面部が、該門型部材の上面部と共に、地表面に略水平に設けられる。
【0048】
このため、前記舗装プレキャストコンクリート板材の上面と、前記門型部材の上面部とを水平配置できる。
【0049】
従って、従来のような調整コンクリートや水平だしが不要となり、更に施工性が良好である。
【0050】
更に、請求項6に記載されたものでは、前記左,右両脚部材間に位置する前記基礎上面部に形成された流水傾斜面が、所定の勾配を有している。
【0051】
このため、通水路の一方方向へ向けて、水を流下させることができる。
【0052】
該流水傾斜面は、前記プレキャストコンクリート板材の水平度に影響を与えること無く、前記基礎上面部に容易に形成できるので、更に施工性が良好である。
【0053】
また、請求項7に記載されたものは、前記流水傾斜面が、前記基礎上面部に、インバート調整コンクリートを打設することにより形成される。
【0054】
このため、更に施工が容易である。
【0055】
そして、請求項8に記載されたものは、予めプレキャストコンクリート形成された門型部材が、基礎の上面部に隣接配置されることにより、地表面よりも下方に、前記各通水路空間を連通させた排水路が形成される。
【0056】
この門型部材は、軽量で、しかも、施工作業性が良好で、効率的に排水が出来、メンテナンス間隔を長くすることが出来る為、空港や港湾設備等の耐候性及び継続性が求められる施設の排水構造及び排水システムとして用いて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材について説明する。
【0058】
図1乃至図9は、この発明の最良の実施の形態の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材を示すものである。
【0059】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムでは、図2に示すような空港10の駐機場11に設けられて、地表面Gから、下方に向けて凹設形成される凹状溝部12に設けられる門型プレキャストコンクリート製の門型部材13…と、この門型部材13の上面部14と、略面一の上面を有する複数の舗装プレキャストコンクリート板材15…とを有して、主に構成されている。
【0060】
このうち、前記門型部材13は、図4に示すように、左,右一対の両脚部16,16の上側縁16a,16a同士が、一体となるように、前記上面部14に略水平に設けられた橋状部14a,14aによって連結されている。
【0061】
この左,右両脚部16,16間には、通水路空間18が形成されていて、このプレキャストコンクリート製の門型部材13を、図3に示すように、複数連設することにより、地表面G下に排水路19が形成される。
【0062】
この上面部14の前記橋状部14a,14a間には、金属製グレーチング部材17を装着するグレーチング開口部14bが、前記通水路空間18と上方の外部空間とを連通するように開口形成されている。
【0063】
そして、このグレーチング開口部14bの内周縁に形成されたグレーチング係止段部14c,14cに、前記金属製グレーチング部材17の周縁部を係止させることにより、前記金属製グレーチング部材17の上面部が、前記橋状部14a,14aの上面部と略面一となるように構成されている。
【0064】
また、前記舗装プレキャストコンクリート板材15は、上面視で略長方形形状を呈して構成されていて、各側縁部には、図1に示すように、連結部15a,15a…が、所定の間隔を置いて複数設けられて、隣接配置される他の舗装プレキャストコンクリート板材15の連結部15a,15a…と各々連結されることにより、一体となるように構成されている。
【実施例1】
【0065】
図1乃至図9は、この実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャスト排水コンクリート構造に用いる門型部材を示すものである。
【0066】
まず、構成から説明すると、この実施例1では、図6に示すように、前記門型部材13の左,右両脚部16,16の各外側面部から外側に向けて、アーム部16c,16cが、各々一体に突設されている。このアーム部16c,16cの上面部には、一対の段部16d,16dが各々形成されている。
【0067】
この段部16dの上面の高さ方向位置は、前記上面部14から、舗装プレキャストコンクリート板材15の厚さ分、下方に位置するように設定されている。
【0068】
すなわち、図1又は図6に示すように、この門型部材13は、前記橋状部14a,14aを有する上面部14から、前記段部16d,16dの上面までの寸法が、予め一定の厚さを有するようにプレキャストされた前記舗装プレキャストコンクリート板材15の板厚に合わせて設定されている。
【0069】
このため、この段部16dの上面に、舗装プレキャストコンクリート板材15,15の端部15b,15bが各々係止されると、この門型部材13の上面部14と、上面が略面一となるように、設定されている。
【0070】
また、この実施例1では、この段部16dの上,下側に位置する各左,右両脚部16,16の厚さ方向寸法が、略同一となるように構成されている。
【0071】
このうち、前記段部16dの下側に位置する左,右両脚部16,16の内側面部16e,16eには、この左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面して、樹脂製強化板材としてのFRP板材20…が、複数、貼設されている。
【0072】
この実施例1のFRP板材20…は、図7に示すように、正面視縦長の略長方形板形状を呈している。
【0073】
また、この実施例1の各FRP板材20は、図8及び図9に示すように、裏面側に複数のアンカー突起部21,21が、一体に突設されていて、門型部材13をプレキャスト成型する際に埋設されることにより、このFRP板材20が、剥離しにくいように形成されている。
【0074】
更に、この実施例1の各FRP板材20の左,右両側縁部には、連結フランジ部22,22が、断面略L字状に裏面側から略垂直に形成されていて、隣接配置される他のFRP板材20の連結フランジ部22との間で、ボルト部材23及びナット部材24が用いられて締結されて、通水路空間18に並設された状態で面して固定されるように構成されている。
【0075】
この左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面するFRP板材20…は、通水路空間18にコンクリート製の内側面部16e,16eが露出している場合に比して、通水抵抗を減少させることができるように、表面が、水に対する抵抗が低い樹脂で、平滑に覆われるように構成されている。
【0076】
次に、この実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材の作用効果について説明する。
【0077】
まず、この門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムの施工順序に沿って説明すると、この実施例1では、図1若しくは図3に示すように、地表面Gから凹状溝部12を、凹設形成すると共に、この凹状溝部12の底面に、高さ方向の寸法を異ならせて、階段状に基礎100を施工する。
【0078】
この実施例1の階段状の基礎100は、砂利等によって構成される下基礎101及び、複数の鉄筋103…が埋設されたコンクリート基礎102とによって、主に構成されている。
【0079】
そして、この実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムでは、図3に示すように、前記コンクリート基礎102が、複数の門型部材13…を載置する水平段部を複数段、連続して設けられて構成されている。
【0080】
なお、前記図3では、理解の容易の為、一つの水平段部に載置される門型部材13の数量を少なくして、排水路19の勾配が大きくなるように表しているが、実際の勾配は、0.1〜3%、好ましくは、0.5〜1%の勾配量となるように設定されている。
【0081】
次に、予め、左,右両脚部16,16の内側面部16e,16eに、前記FRP板材20…が、貼設されて、プレキャスト成型された門型部材13…を、図6中、二点鎖線に示すように、左,右両脚部16,16の長さ方向寸法を異ならせて数種類用意する。
【0082】
そして、前記階段状を呈するコンクリート基礎102の各水平段部の上面部の高さ方向の寸法に対応させて、前記各門型部材13の上面部14が、面一となるように、これらの門型部材13…を、各水平段部の上面に設置する。
【0083】
このように、異なる高さ方向寸法で形成された左,右両脚部16,16を有する複数の門型部材13…を、各水平段部に設置することにより、図3に示すように、各門型部材13の上面部14の高さ方向位置を、前記地表面Gの高さ方向位置に合わせることができる。
【0084】
次に、図1に示すように、これらの門型部材13の左,右両脚部16,16の外側面部16b,16bから、一体に突設されている前記アーム部16c,16c上面の一対の段部16d,16dに、予めプレキャスト成型された舗装プレキャストコンクリート板材15の端部15b,15bを各々係止させる。
【0085】
この係止によって、前記舗装プレキャストコンクリート板材15…の上面部は、門型部材13…の上面部14…と共に、地表面Gに、排水勾配程度の僅かな勾配を残して略水平に設けられて、前記舗装プレキャストコンクリート板材15…の上面が、前記門型部材13…の上面部14…と略面一となる。
【0086】
従って、前記コンクリート基礎102の各水平段部の打設が完了すれば、前記門型部材13…及び舗装プレキャストコンクリート板材15…をこれらの水平段部上面に載置するだけで、従来のような調整コンクリートや、水平出しを行う必要が無くなり、容易に、前記舗装プレキャストコンクリート板材15を水平配置できる。
【0087】
そして、前記門型部材13では、上側縁同士が、橋状部14a,14aによって一体となるように連結された前記左,右両脚部16,16の各外側面部16b,16bから、外側に向けて一体に突設形成された一対のアーム部16c,16cの段部16d,16dに、各々舗装プレキャストコンクリート板材15の端部15bが、係止されて、下方から支持される。
【0088】
このため、門型部材13の左,右両脚部16,16のうち、一方の脚部材16から突設された段部16dに、前記舗装プレキャストコンクリート板材15から、大きな偏荷重が入力しても、前記橋状部14a,14aを介して、反対側の段部16dが形成される脚部16にも、この荷重が分散されて、左,右両脚部16,16によって、良好なバランスで、この荷重が支持される。
【0089】
従って、一方の側壁部に荷重が集中する場合に比して、これらの左,右両脚部16,16の厚さ方向寸法を小さく設定できるので、使用されるプレキャストコンクリートの材料量を減少させて、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0090】
また、重量の増大も抑制出来るので、施工性を良好なものとすることが出来る。
【0091】
更に、この実施例1では、左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面して貼設された前記FRP板材20…が、左,右両脚部16,16と一体となって、一定の強度を得ることが出来る。このため、更に、これらの左,右両脚部16,16の厚さ方向寸法を小さく設定できる。
【0092】
例えば、プレキャスト成型された門型部材13…を、図6中、二点鎖線に示すように、左,右両脚部16,16の長さ方向寸法を異ならせて数種類用意する場合、左,右両脚部16,16の長さ方向寸法の増大に伴う、重量の増大を抑制出来る。
【0093】
更に、この実施例1では、前記左,右両脚部材16,16間に位置する前記コンクリート基礎102上面部には、インバート調整コンクリート31が打設されて、所定の勾配を有して、通水路の一方方向へ向けて、水を流下させる流水傾斜面30が形成される。
【0094】
この実施例1では、流水傾斜面30の勾配量が、略全域で0.5〜1%の勾配量となるように設定されている。
【0095】
また、前記門型部材13の左,右両脚部16,16の内側面部16d,16dに貼設された前記FRP板材20…によって、水に接触する通水路空間18側の表面が、平滑な樹脂材料で覆われて、通水抵抗が減少されている。
【0096】
例えば、コンクリートの粗度係数は、0.013〜0.014であるのに対して、FRP樹脂材料の粗度係数は、0.01程度であることが知られている。
【0097】
このため、所望の流水量を得るために必要とされる左,右両脚部材16,16間の幅方向寸法を、減少させることが出来る。
【0098】
このように、左,右両脚部材16,16間の幅方向寸法を減少させると、前記インバート調整コンクリート31を打設する際に必要とされるコンクリート材料の分量を減少させることが出来、施工コストの上昇を抑制出来る。
【0099】
また、前記FRP板材20は、劣化率が低く、長期化に渡り、通水が行われる通水路空間18に面する部分に用いることで、良好な耐摩耗性を発揮できる。
【0100】
例えば、コンクリート材料が、水に接触する通水路空間18側の表面に露出している場合のように、摩耗により、表面に凹凸が発生して、ザラ付くことで、通水抵抗が増大してしまう虞も無い。
【0101】
このように、通水路空間18側の表面が、前記FRP板材20…の平滑な樹脂材料で覆われルことにより、長期間に渡り円滑な状態を維持出来、通水抵抗を変化させることなく、所望の流量を維持できる。
【0102】
従って、メンテナンス間隔を長くすることが出来る為、空港や港湾設備等の耐候性及び継続性が求められる施設の排水構造として用いて好適である。
【0103】
更に、この実施例1では、各FRP板材20が、図8及び図9に示すように、裏面側に複数のアンカー突起部21,21によって、門型部材13がプレキャスト成型される際に、埋設されて一体化される。
【0104】
このため、通水により、これらの各FRP板材20に剥離方向の力が作用しても、コンクリート内で、このアンカー突起部21,21が、挿抜不能に埋設されているこことにより、これらのFRP板材20…が、剥離しにくい。
【0105】
更に、この実施例1の各FRP板材20の左,右両側縁部には、連結フランジ部22,22が、断面略L字状に裏面側から略垂直に形成されていて、隣接配置される他のFRP板材20の連結フランジ部22との間で、ボルト部材23及びナット部材24が用いられて締結されている。
【0106】
これらの連結フランジ部22,22間の前記ボルト部材23及びナット部材24による締結は、門型部材13がプレキャスト成型される前に行われてから、プレキャスト成型時に、埋設されて一体化される。
【0107】
このため、通水路空間18に面して並設された前記各FRP板材20,20の各表面間に段差が発生しないように高い組み付け精度が与えられて、予め前記門型部材13を構成出来、施工現場での施工による面精度のバラツキを減少させることができる。
【0108】
次に、この実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造の排水順序に沿って、作用効果を説明する。
【0109】
この実施例1では、前記駐機場11の舗装プレキャストコンクリート板材15…上面の雨水が、前記各門型部材13の上面部14に形成されて、前記通水路空間18と、上方の外部空間とを連通するグレーチング開口部14bから、通水路空間18内に、雨水が流れ込む。
【0110】
このグレーチング開口部14bによって、前記上面部14では、使用されるプレキャストコンクリートの材料量を減少させて、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0111】
また、軽量化を図ることが出来るので、更に、施工性が良好である。
【0112】
この通水路空間18内へ流下した雨水は、前記排水路19の底部に形成された流水傾斜面30に設けられた排水勾配によって、これらの排水路19の下流側(図3中紙面左側)の一定方向へ、凹状溝部12の延設方向に沿って流されて排水される。
【0113】
この流水傾斜面30は、インバート調整コンクリートを施工現場で打設することにより、前記プレキャストコンクリート板材15の水平度に影響を与えること無く、前記階段状に形成されたコンクリート基礎102の上面部に容易に形成できるので、更に施工性が良好である。
【0114】
このように、この実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造及び、門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システムでは、軽量で、しかも、施工作業性が良好で、効率的に排水が出来メンテナンス間隔を長くすることが出来る為、空港や港湾設備等の耐候性及び継続性が求められる施設の排水構造として用いて好適である。
【実施例2】
【0115】
図10乃至図15は、この発明の実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャスト排水コンクリート配水構造に用いる門型部材を示すものである。
【0116】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0117】
まず、構成から説明すると、この実施例2の門型部材113では、前記段部16dの下側に位置する左,右両脚部16,16の内側面部16e,16eには、この左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面して、樹脂製強化板材としてのFRP板材120…が、複数、貼設されている。
【0118】
この実施例2のFRP板材120…は、図12に示すように、正面視横長の略長方形板形状を呈している。
【0119】
また、この実施例2の各FRP板材120は、図14及び図15に示すように、裏面側に複数のアンカー突起部121,121が、一体に突設されていて、門型部材113をプレキャスト成型する際に埋設されることにより、このFRP板材120が、剥離しにくいように形成されている。
【0120】
更に、この実施例2の各FRP板材120の上,下右両側縁部には、連結フランジ部122,122が、断面略L字状に裏面側から略垂直に形成されていて、隣接配置される他のFRP板材120の連結フランジ部122との間で、前記ボルト部材23及びナット部材24が用いられて締結されて、通水路空間18に並設された状態で固定されるように構成されている。
【0121】
次に、この実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び、門型部材の作用効果について説明する。
【0122】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、前記各FRP板材120…が、水平方向に長手方向を沿わせて、前記左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面している。
【0123】
このため、更に、通水抵抗を良好なものとすることができる。
【0124】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0125】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0126】
即ち、前記実施の形態では、樹脂製強化板材として、FRP板材20,120を用いて説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、CFRP板材、GFRP板材、KFRP板材等、左,右両脚部16,16間に形成される通水路空間18に面して、貼設されているものであるならば、どのような形状、数量及び材質であってもよいことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】この発明の最良の実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造、該門型プレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム及び該門型プレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材を並べた様子を示し、全体の構成を説明する一部断面斜視図である。
【図2】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造が適用される空港の駐機場の構成を説明する俯瞰図である。
【図3】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造で、通水路空間に沿った位置での縦断面図である。
【図4】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造に用いられる門型部材の斜視図である。
【図5】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造に用いられる門型部材の一部断面斜視図である。
【図6】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材が、舗装プレキャストコンクリート板材を両側で支持している様子を示す側面図である。
【図7】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材の縦断面図である。
【図8】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材の構成を説明する図6中B−B線に沿った位置での水平断面図である。
【図9】実施の形態の実施例1の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材の構成を説明する図8中C部の拡大断面図である。
【図10】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造に用いられる門型部材の一部断面斜視図である。
【図11】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材が、舗装プレキャストコンクリート板材を両側で支持している様子を示す側面図である。
【図12】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材の縦断面図である。
【図13】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材の構成を説明する図6中B−B線に沿った位置に相当する位置での水平断面図である。
【図14】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材に貼設されるFRP板材の側面図である。
【図15】実施の形態の実施例2の門型プレキャストコンクリート排水構造で、門型部材に貼設されるFRP板材の裏面図である。
【図16】従来例の排水構造の構成を説明する要部の一部断面斜視図である。
【図17】従来例の排水構造で、偏荷重のかかり方を説明するU型側溝部材の縦断面図である。
【符号の説明】
【0128】
12 凹状溝部
13,113 門型部材
14 上面部
14a 橋状部
14b グレーチング開口部
15 舗装プレキャストコンクリート板材
16,16 両脚部
16a,16a 上側縁
16b,16b 外側面部(側面部)
16c,16c アーム部
16d,16d 段部
16e,16e 内側面部
18 通水路空間
19 排水路
20,120 FRP板材(樹脂製強化板材)
30 流水傾斜面
31 インバート調整コンクリート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左,右両脚部の上側縁同士を、一体となるように連結する橋状部を有する上面部を設けて、該左,右両脚部間に通水路空間を形成するプレキャストコンクリート製の門型部材を、複数連設することにより、地表下に排水路を形成するプレキャストコンクリート排水構造であって、
前記左,右両脚部材の各側面部から外側に向けて、一対の段部を各々一体に突設して、該段部の上面に、該門型部材の上面部と略面一となる舗装プレキャストコンクリート板材を各々係止させることを特徴とするプレキャストコンクリート排水構造。
【請求項2】
前記門型部材は、前記左,右両脚部材間に形成される通水路空間に面して、該脚部材の内側面に、樹脂製強化板材が貼設されていることを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリート排水構造。
【請求項3】
前記門型部材は、前記上面部に、グレーチング部材を装着するグレーチング開口部が、前記通水路空間と外部空間とを連通するように開口形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプレキャストコンクリート排水構造。
【請求項4】
前記門型部材は、前記橋状部を有する上面部から、前記段部の上面までの寸法を、予め一定の厚さを有する舗装プレキャストコンクリート板材に合わせて設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のプレキャストコンクリート排水構造。
【請求項5】
地表面から凹設形成される凹状溝部の底面に、高さ方向の寸法を異ならせて、階段状に形成される階段状基礎が、設けられると共に、該階段状基礎の各段部の上面部の高さ方向の寸法に合わせて、前記各門型部材の上面部が、面一となるように、異なる高さ方向の寸法で形成された左,右両脚部を有する複数の該門型部材を、該各段部の上面に設置することにより、該門型部材の上面部の高さ方向位置を、前記地表面の高さ方向位置に合わせると共に、前記段部に係止される舗装プレキャストコンクリート板材の上面部を、該門型部材の上面部と共に、地表面に略水平に設けることを特徴とする請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム。
【請求項6】
前記左,右両脚部材間に位置する前記基礎上面部には、所定の勾配を有して、通水路の一方方向へ向けて、水を流下させる流水傾斜面を形成することを特徴とする請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム。
【請求項7】
前記流水傾斜面は、前記基礎上面部に、インバート調整コンクリートを打設することにより形成されることを特徴とする請求項6記載のプレキャストコンクリート排水構造を用いた排水システム。
【請求項8】
予めプレキャストコンクリート形成されて、基礎の上面部に隣接配置されることにより、地表面よりも下方に、前記各通水路空間を連通させた排水路を形成することを特徴とする請求項1乃至4記載のプレキャストコンクリート排水構造に用いる門型部材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−177433(P2007−177433A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374916(P2005−374916)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【出願人】(592086880)丸栄コンクリート工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】