説明

閃光放電ランプ点灯装置及びそれに用いるイグナイタ回路

【課題】ランプ点灯開始指令が発せられる前に、ランプに高電圧が印加されて放電が開始されてしまうことを防止するイグナイタ回路及びそれを備えた閃光放電ランプ点灯装置を供給する。
【解決手段】本発明の閃光放電ランプ点灯装置はスナバー回路を有するイグナイタ回路を備える。スナバー回路は第1のスイッチ素子、低抵抗素子及びコンデンサの直列回路からなる。制御回路が、点灯回路から閃光放電ランプに電圧を印加させるための点灯回路起動信号を点灯回路に対して出力し、点灯回路起動信号を出力した後に、イグナイタ回路から閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加させるためのイグナイタ回路起動信号をイグナイタ回路に出力するように構成される。点灯回路起動信号の出力前に第1のスイッチ素子が導通状態となり、点灯回路起動信号の出力後であってイグナイタ回路起動信号の出力前に第1のスイッチ素子が非導通状態となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略として、閃光放電ランプ点灯装置及びそれに用いるイグナイタ回路に関し、具体的には、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置に用いるキセノンランプ点灯装置及びそれに用いるイグナイタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の光電変換特性などの各種太陽エネルギー利用機器の性能測定のために、自然太陽光のスペクトル分布を再現する擬似太陽光を被照射体に照射する擬似太陽光照射装置が知られている。この種の擬似太陽光照射装置においては、照射ボックスの内部にキセノンランプからなる光源が設置され、多層蒸着膜が形成されたスペクトル調整用の透過型の光学フィルタが設けられ、この光源からの光が光学フィルタを通過することで放射面から擬似太陽光が放射される。
【0003】
同装置では、例えば、発光長が1000mm以上のキセノンランプ(以下、「ランプ」という)が用いられ、直流のランプ電流が通電され、そのランプ電流値を点灯装置によって調整することにより照射面の照度が制御される。一般的には、点灯時のランプ電流は数十アンペア(例えば70A)、ランプ電圧は数百ボルト(例えば500V)程度であり、このランプ電流/電圧が、1回の点灯あたり数十mSecから数百mSecにわたって通電/印加される。この出力状態が定電流又は定電力で制御され、点灯期間中に被照射体の性能が測定される。
【0004】
上記の場合、ランプ電力が35kWとなり、瞬時(例えば100mSec)とはいえ、この電力を商用電源から直接供給すると、同じ商用電源の系統の周辺機器に障害を及ぼすことや、商用電源と照射装置の間に容量の大きい接点及び配線が必要となることが問題なる。そこで一般には、点灯装置において電力を蓄積し、点灯指令に応じてその蓄積された電力をランプに供給する構成が採用される(例えば、特許文献1)。
【0005】
図5に従来の点灯装置を示す。整流器2及び平滑コンデンサ3で構成される直流電源回路100で交流電源1が直流電圧に変換され、その直流電圧が充電回路200に供給される。充電回路200はトランジスタ4、5、6及び7からなるインバータを含む。制御回路25からの充電指令に応じて、PWM制御回路8によってトランジスタ4、7及びトランジスタ5、6の導通時間が制御され、高周波で交互に導通される。これによりトランス9の一次巻線に交流電圧が発生するとともに、トランス9の二次巻線に昇圧比に応じた電圧が発生する。トランス9の二次巻線に発生した電圧は整流器10で整流され、コイル11で平滑されて大容量の電解コンデンサ(充電コンデンサ)13に充電される。充電コンデンサ13がランプ電圧よりも充分に高い電圧(例えば、900V)に充電されると、PWM制御回路8はインバータの動作を一旦停止(又は充電電圧を保持)し、スタンバイ状態となる。
【0006】
次に、ランプを点灯させる時の動作を、図6を参照して説明する。時間t0において制御回路25からランプ点灯指令−1(点灯回路起動信号)がPWM制御回路21に発せられると、電流制御回路300が動作を開始する。電流制御回路300は降圧チョッパ回路からなり、降圧チョッパ回路は、IGBT等の半導体スイッチ16、ダイオード17、コイル18、コンデンサ19、電流検出抵抗20、半導体スイッチ16の導通時間を制御するPWM制御回路21、誤差増幅器22、基準電圧23及び帰還素子24で構成される。この時点で、イグナイタ回路410及びランプ39の両端に充電コンデンサ13の電圧とほぼ等しい直流電圧(900V)が直ちに印加される。
【0007】
イグナイタ回路410は抵抗41、パルス用コンデンサ42、パルストランス26、サイリスタ等の半導体スイッチ29等から構成される。イグナイタ回路410において、電流制御回路300からの出力電圧を受けると、パルス用コンデンサ42は抵抗41を介して所定の時定数をもって電流制御回路300の出力電圧とほぼ等しい電圧に充電される。一般に、抵抗41の抵抗値は高い抵抗値、例えば、数十kΩから数百kΩに設定される。その後、時間t1において制御回路25からイグナイタ回路410に対してランプ点灯指令−2(イグナイタ回路起動信号)が発せられ、サイリスタ29が導通状態となる。これにより、パルス用コンデンサ42の電圧がパルストランス26の一次巻線に印加され、巻数比に応じたパルス電圧が二次巻線に発生する。そのパルス電圧が上記直流電圧に重畳されてランプ39端に印加されることにより、ランプ39の絶縁破壊が起こる。
【0008】
ランプ39が絶縁破壊を起こすと、コンデンサ13の充電電圧を電源として電流制御回路300からの制限された電流がランプ39に投入される。電流制御回路300において、電流検知抵抗20に流れる電流に比例する電圧信号(検出電圧)と基準電圧23からの電圧信号(基準電圧)が誤差増幅器22に入力され、両者が等しくなるように、PWM制御回路21によって半導体スイッチ16の導通時間がPWM制御される。これにより、コンデンサ13を電源とするランプ39の直流点灯が設定時間t2まで定電流制御で行われる。
【0009】
なお、ランプ39が放電を開始すると充電コンデンサ13の充電電圧は急激に低下する。ランプの定電流点灯に必要な電圧を下回るとランプ電流は低下してしまうため、コンデンサ13には、点灯時間内(時間t1−t2の間)にわたって設定電流を供給することができるように十分な容量のものが選択される。
【0010】
ところで、一般的には、このような擬似太陽光照射装置は点灯装置が大型となるため、点灯装置は、ランプが設置されている照射装置内に内蔵されず、ランプとは離れた場所に設置されることが多い。そのため、点灯装置の出力部から配線されるランプ配線38a、38bは数mから数十mの長さになる。ここで、イグナイタ回路が点灯装置側に設置された場合、パルストランス26の電圧がランプ電線38a、38b間の浮遊容量によって低下してランプ39が不点灯となる可能性が高い。そこで、イグナイタ回路は通常、ランプ配線38a、38bの点灯装置側ではなくランプ39の近傍に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−73556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図5の回路において、図6に示すように時間t0においてランプ点灯指令−1(点灯回路起動信号)が制御回路25からPWM制御回路21に発せられると、充電コンデンサ13とほぼ等しい直流電圧(900V)がコンデンサ19端に出力され、この電圧が数mから数十mのランプ配線38a、38bを介してイグナイタ回路410およびランプ39に印加される。しかし、ランプ39に印加される直流出力電圧の立ち上りは、ランプ配線38a、38b間の浮遊容量やインダクタンスの影響を受け、図6(t0付近)に示すように振動を起こす。この過渡的なパルス状の高電圧(以下、スパイク電圧という)がランプ39に印加されると、図7に示すように、時間t1でイグナイタ回路410がランプ点灯指令−2(イグナイタ回路起動信号)を受けてランプ始動パルスを発生する前に(時間t0において)、この意図しないスパイク電圧によってランプ39が絶縁破壊を起こして点灯を開始してしまうことがある。
【0013】
上記のタイミングでランプ39が点灯を開始すると、その時点(t0付近)から充電コンデンサ13が放電を開始してしまうため、測定用の点灯時間t1−t2の途中で充電電圧が必要電圧を下回ってしまう。従って、測定終了時t2の前に、設定電流による定電流点灯を維持できなくなり、正しい測定ができなくなってしまう場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、イグナイタ回路の大型化やコストアップを抑えつつも、点灯指令(イグナイタ回路起動信号)が発せられる前にランプが放電を開始してしまうことを防止するイグナイタ回路及びそれを備えた閃光放電ランプ点灯装置を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面による閃光放電ランプ点灯装置は、閃光放電ランプに電力を供給する点灯回路、点灯回路に配線を介して接続され、閃光放電ランプにパルス電圧を印加するイグナイタ回路、並びに点灯回路及びイグナイタ回路を制御する制御回路を備え、制御回路は、点灯回路から閃光放電ランプに電圧を印加させるための点灯回路起動信号を点灯回路に対して出力し、点灯回路起動信号を出力した後に、イグナイタ回路から閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加させるためのイグナイタ回路起動信号をイグナイタ回路に出力するように構成され、イグナイタ回路が点灯回路からの入力端にスナバー回路を備える。スナバー回路は第1のスイッチ素子(32)、低抵抗素子(27)及びコンデンサ(28)の直列回路からなり、点灯回路起動信号の出力前に第1のスイッチ素子が導通状態となり、点灯回路起動信号の出力後であってイグナイタ回路起動信号の出力前に第1のスイッチ素子が非導通状態となるように構成される。
【0016】
本発明の第2の側面は、閃光放電ランプ点灯装置の点灯回路に接続され、閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加するイグナイタ回路である。イグナイタ回路は点灯回路からの入力端子間に接続されたスナバー回路を備え、スナバー回路は第1のスイッチ素子(32)、低抵抗素子(27)及びコンデンサ(28)の直列回路からなる。第1のスイッチ素子が、点灯回路からの電圧印加が開始される時に導通状態となり、閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加する時に非導通状態となるように構成される。
【0017】
上記第1及び第2の側面において、イグナイタ回路は、閃光放電ランプに二次巻線が直列接続されるパルストランス(26)、及び第2のスイッチ素子(29)であって導通したときに前記パルストランスの一次巻線とコンデンサ(28)が閉回路を構成するように動作する第2のスイッチ素子を備える。なお、低抵抗素子(27)は1Ω以上100Ω以下の抵抗値とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例による閃光放電ランプ点灯装置の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施例による閃光放電ランプ点灯装置の回路図である。
【図4】本発明の第2の実施例の動作を説明する図である。
【図5】従来の閃光放電ランプ点灯装置の回路図である。
【図6】従来の閃光放電ランプ点灯装置の動作を説明する図である。
【図7】従来の閃光放電ランプ点灯装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の閃光放電ランプ点灯装置は、点灯回路からの入力電圧の急峻な上昇に対するスナバー回路を持つイグナイタ回路を備える。当業者には分かるように、スナバー回路とは、電子回路における急激な電圧の上昇を抑えるための回路を意味し、一般に(本実施例でも)低抵抗素子とコンデンサの直列回路を含む。後述するように、実施例におけるスナバー回路は、サイリスタ29の導通時及びランプ39の点灯時に主回路(パルストランス26の二次側及びランプ39を含む電流経路)の動作に影響を与えない構成となっていることを特徴とする。
【0020】
なお、以降の説明において、ランプ配線38a及び38bより前段側のパワー回路部(即ち、直流電源回路100、充電回路200、電流制御回路300)をまとめて点灯回路というものとする。また、以降の実施例では、閃光放電ランプであるランプ39としてキセノンランプを用いているが、閃光放電ランプであれば他の成分が封入されたランプを用いてもよい。
【0021】
実施例1.
図1は本発明における第1の実施例の閃光放電ランプ点灯装置である。点灯回路の構成及び動作は従来例のものと同様であるのでその詳細な説明を省略する。
本実施例では、イグナイタ回路の構成が従来例と異なる。本実施例におけるイグナイタ回路401は、パルストランス26の前段(入力端子)に、スイッチ素子32、低抵抗素子27及びスナバー兼パルス用コンデンサ28(以下、「コンデンサ28」という)の直列回路からなるスナバー回路を備える。スイッチ素子32は制御回路25からの信号により導通/非導通が制御される。ここでスイッチ素子32はトランジスタ等の半導体素子でもリレー等の接点素子でもかまわない。低抵抗素子27は、従来例における抵抗41とは異なり、例えば、100Ω以下、好ましくは1Ω以上100Ω以下程度の抵抗値を有する。
【0022】
コンデンサ28のパルス用コンデンサの機能として、コンデンサ28はパルストランス26の一次巻線の一方に接続される。パルストランス26、サイリスタ等の半導体スイッチ素子29、ダイオード30及びトリガ回路31の構成及び動作は従来のイグナイタ回路410と同様である。
【0023】
図2を参照して、本実施例の動作を説明する。
まず、時間taの前に、従来例と同様に充電回路200の充電コンデンサ13がランプ電圧よりも充分に高い電圧(例えば、900V)に充電され、PWM制御回路8はインバータの動作を一旦停止(又は充電電圧を保持)させ、スタンバイ状態となっているものとする。
【0024】
ランプを点灯させる際、時間t0より前のタイミングの時間taで、スイッチ素子32を導通状態にする指令−Aが制御回路25から出力される。これにより、低抵抗素子27及びコンデンサ28がランプ配線38a、38b間に接続される。
【0025】
時間t0において、従来例と同様に、制御回路25からランプ点灯指令−1(点灯回路起動信号)がPWM制御回路21に対して発せられる。電流制御回路300が動作を開始すると、充電コンデンサ13の充電電圧とほぼ等しい直流電圧(900V)がコンデンサ19端に出力される。この電圧が数mから数十mのランプ配線38a、38bを介してイグナイタ回路400およびランプ39に印加される。
【0026】
上記のように低抵抗素子27の抵抗値を数Ωから数十Ωとし、かつコンデンサ28の容量を適正な値に設定することにより、ランプ端に印加される直流出力電圧の立ち上りに対して低抵抗素子27及びコンデンサ28はスナバー機能として動作することができる。即ち、従来ではt0においてランプ39にスパイク電圧が印加されていたが(図6、7参照)、本実施例ではコンデンサ28がスナバーコンデンサをして機能するので、t0におけるスパイク電圧を十分に低減することが可能となる。これにより、時間t1にイグナイタ回路401がランプ始動のためのパルス電圧を発生する前に、高電圧がランプ39に印加されて点灯開始してしまうことを防止できる。また、このスナバー機能により、コンデンサ28には、充電コンデンサ13の充電電圧とほぼ等しい直流電圧(900V)が充電される。
【0027】
時間t0より後の時間tbにおいて、スイッチ素子32を非導通状態にする指令−Bが制御回路25から出力される。これにより、低抵抗素子27及びコンデンサ28はランプ配線38aから切り離される。スイッチ素子32を非導通状態にすることにより、後にサイリスタ29が導通するときにランプ配線38a側(充電電圧900V)から低抵抗素子27を介して電流が流れないようにするとともに、サイリスタ29が導通してパルス電圧を発生した後、コンデンサ28の充電電圧を次のランプ点灯に備えてリセットすることができる。
【0028】
時間t1において、従来例と同様に、制御回路25からランプ点灯指令−2(イグナイタ回路起動信号)がトリガ回路31に対して発せられる。トリガ回路31からのトリガ信号によりサイリスタ29が導通状態となると、コンデンサ28の電圧がパルストランス26の一次巻線に印加され、二次巻線にはその巻数比に応じたパルス電圧が発生する。このパルス電圧が上記直流電圧に重畳され、ランプ39端に印加されることによりランプ39の絶縁破壊が起こる。この時点から充電コンデンサ13の放電が開始され、その後設定時間t2までランプを定電流点灯することができる。また、パルストランス26にてパルス電圧を発生することにより、コンデンサ28の充電電圧がリセットされる。
【0029】
以上、本実施例の構成によると、簡素な構成でイグナイタ回路を構成し、かつ、イグナイタ回路起動信号が発せられる前にランプが放電を開始してしまうことを防止することができる。
特に、コンデンサ28がスナバー用コンデンサとパルス用コンデンサを兼ねるので、部品点数が少なくて済み有利である。
【0030】
実施例2.
図3は発明における第2の実施例の閃光放電ランプ点灯装置の回路図である。
本実施例では、イグナイタ回路が第1の実施例と異なる。本実施例におけるイグナイタ回路402は、パルストランス26の前段(入力端子)に、コンデンサ40、コンデンサ40からパルストランス26側への放電を防止するダイオード33及び低抵抗素子27の直列接続からなるスナバー回路を備える。
【0031】
コンデンサ40には高抵抗素子34及び35が接続され、高抵抗素子35にはパルス用コンデンサ36が直列接続される。パルス用コンデンサ36には定電圧ダイオード37が並列接続される。パルス用コンデンサ36、パルストランス26の一次巻線、及びサイリスタ(スイッチ素子)29が閉回路を構成するように接続される。パルストランス26、サイリスタ29、ダイオード30及びトリガ回路31の構成及び動作は第1の実施例のイグナイタ回路401と同様である。なお、第1の実施例と同様に、低抵抗素子27は、例えば、100Ω以下、好ましくは1Ω以上100Ω以下程度の抵抗値を有する。一方、高抵抗素子34及び35は従来回路の抵抗41と同様に数十kΩから数百kΩの抵抗値を有する。好ましくは、高抵抗素子34、35は低抵抗素子27の100倍以上の抵抗値を有し、より好ましくは1000倍以上10000倍以下の抵抗値を有する。
【0032】
図4を参照して、本実施例の動作を説明する。
第1の実施例と同様に、時間t0以前に充電回路200の充電コンデンサ13がランプ電圧よりも充分に高い電圧(例えば、900V)に充電され、PWM制御回路8はインバータの動作を一旦停止(又は充電電圧を保持)させ、スタンバイ状態となっているものとする。
【0033】
時間t0において、第1の実施例と同様に、制御回路25からランプ点灯指令−1(点灯回路起動信号)がPWM制御回路21に対して発せられる。電流制御回路300が動作を開始すると、充電コンデンサ13の充電電圧とほぼ等しい直流電圧(900V)がコンデンサ19端に出力される。この電圧が数mから数十mのランプ配線38a、38bを介してイグナイタ回路400およびランプ39に印加される。
【0034】
上記のように低抵抗素子27の抵抗値を数Ωから数十Ωとし、かつコンデンサ40の容量を適正な値に設定することにより、ランプ端に印加される直流出力電圧の立ち上りに対して低抵抗素子27及びコンデンサ40はスナバー機能として動作することができる。即ち、従来ではt0においてランプ39にスパイク電圧が印加されていたが(図6、7参照)、本実施例ではコンデンサ40がスナバーコンデンサをして機能するので、t0におけるスパイク電圧を十分に低減することが可能となる。これにより、時間t1にイグナイタ回路402がランプ始動のためのパルス電圧を発生する前に、高電圧がランプ39に印加されて点灯開始してしまうことを防止できる。
【0035】
また、コンデンサ40が充電されると、パルス用コンデンサ36は高抵抗素子35を介して一定の時定数をもって充電されていく。なお、本実施例においては、必要とされるパルス電圧の高さを定電圧ダイオード37で決まるパルス用コンデンサ36の充電電圧によって設定できるとともに、パルス電圧の幅をパルス用コンデンサ36の容量で設定することが可能となる。従って、第1の実施例に比べて若干部品数は増えるものの、第1の実施例よりも設計に柔軟性のある回路方式となる。
【0036】
時間t1において、第1の実施例と同様に、制御回路25からランプ点灯指令−2(イグナイタ回路起動信号)がトリガ回路31に対して発せられる。トリガ回路31からのトリガ信号によりサイリスタ29が導通状態となると、パルス用コンデンサ36の電圧がパルストランス26の一次巻線に印加され、二次巻線にはその巻数比に応じたパルス電圧が発生する。このパルス電圧が上記直流電圧に重畳され、ランプ39端に印加されることによりランプ39の絶縁破壊が起こる。この時点から充電コンデンサ13の放電が始まり、その後設定時間t2までランプを定電流点灯することができる。また、パルストランス26にてパルス電圧を発生することにより、パルス源コンデンサ36の充電電圧がリセットされる。
【0037】
以上、本実施例の構成によると、簡素な構成でイグナイタを構成し、かつ、イグナイタ回路起動信号が発せられる前にランプが放電を開始してしまうことを防止することができる。
特に、本実施例では、上述したようにパルストランス26の一次巻線に印加するパルスの高さ及び幅をスナバー機能とは別に設定できるので設計の自由度が高まり有利である。
【0038】
また、制御回路25からイグナイタ回路402へのスナバー制御信号(指令−A、B)を送る必要がないので、制御回路25の構成を簡素化することができる。
さらに、本実施例では、イグナイタ回路と点灯回路及び制御回路との配線が従来構成と同様であるので、従来の閃光放電ランプ点灯装置においてイグナイタ回路のみを本実施例のものと交換するだけで本発明の効果を得ることができる。従って、本実施例は汎用性が高い点で有利である。
【0039】
変形例.
上記に最も好適な実施例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で、例えば以下のように変形可能である。
(1)実施例1ではスイッチ素子32を制御回路25からの信号によって制御する構成としたが、イグナイタ回路401にその入力端子間電圧を検出する電圧検出回路を設け、その電圧検出結果に基づいてスイッチ素子32を制御してもよい。具体的には、入力端子間電圧が所定の閾値よりも低いときにスイッチ素子32を導通状態にしておき、入力端子間電圧が所定の閾値を超えてから所定時間経過後にスイッチ素子32が非導通状態となるようにすればよい。
【0040】
(2)実施例1において指令−Bと指令−1を個別の指令としたが、指令−Bと指令−1を一連の指令としてもよい。具体的には、制御回路25からイグナイタ回路401への信号線を制御回路25とトリガ回路31間の信号線のみとして、トリガ回路31からスイッチ素子32を制御するようにする。そして、制御回路25からの指令によってスイッチ素子32を非導通とした直後にサイリスタ29を導通させるようにしてもよいし、言い換えると、サイリスタ29を導通させる直前にスイッチ素子32を非導通とするようにしてもよい。但し、この場合には、ランプ照射による測定開始タイミングをサイリスタ29が導通状態となるタイミングに合わせる工夫が必要となる。
【0041】
(3)上記第1及び第2の実施例では、低抵抗素子27を数Ω〜数十Ωとしているが、コンデンサ28、スイッチ素子32、コンデンサ40、ダイオード33の特性(電流定格等)によっては低抵抗素子27を1Ω以下とすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
25.制御回路
26.パルストランス
27.低抵抗素子
28.コンデンサ
29.サイリスタ(スイッチ素子)
30.ダイオード
31.トリガ回路
32.スイッチ素子
33.ダイオード
34、35.高抵抗素子
36.パルス用コンデンサ
37.定電圧ダイオード
38a、b.ランプ配線
40.コンデンサ
100.直流電源回路
200.充電回路
300.電流制御回路
401、402.イグナイタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光放電ランプ点灯装置であって、
閃光放電ランプに電力を供給する点灯回路、
前記点灯回路に配線を介して接続され、前記閃光放電ランプにパルス電圧を印加するイグナイタ回路、及び
前記点灯回路及び前記イグナイタ回路を制御する制御回路
を備え、
前記制御回路が、前記点灯回路から前記閃光放電ランプに電圧を印加させるための点灯回路起動信号を該点灯回路に対して出力し、前記点灯回路起動信号を出力した後に、前記イグナイタ回路から前記閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加させるためのイグナイタ回路起動信号を該イグナイタ回路に出力するように構成され、
前記イグナイタ回路が前記点灯回路からの入力端にスナバー回路を備え、
前記スナバー回路が、第1のスイッチ素子(32)、低抵抗素子(27)及びコンデンサ(28)の直列回路からなり、前記点灯回路起動信号の出力前に前記第1のスイッチ素子が導通状態となり、前記点灯回路起動信号の出力後であって前記イグナイタ回路起動信号の出力前に前記第1のスイッチ素子が非導通状態となるように構成された閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
請求項1の閃光放電ランプ点灯装置において、
前記イグナイタ回路が、前記閃光放電ランプに二次巻線が直列接続されるパルストランス(26)、及び前記イグナイタ回路起動信号に応じて前記パルストランスの一次巻線と前記コンデンサ(28)が閉回路を構成するように動作する第2のスイッチ素子(29)を備えた閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項3】
請求項1の閃光放電ランプ点灯装置において、前記低抵抗素子(27)が1Ω以上100Ω以下の抵抗値を有する閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
閃光放電ランプ点灯装置の点灯回路に接続され、閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加するイグナイタ回路であって、
前記点灯回路からの入力端子間に接続されたスナバー回路を備え、
前記スナバー回路が第1のスイッチ素子(32)、低抵抗素子(27)及びコンデンサ(28)の直列回路からなり、前記第1のスイッチ素子が、前記点灯回路からの電圧印加が開始される時点では導通状態であり、前記閃光放電ランプに始動パルス電圧を印加する時点では非導通状態となるように構成されたイグナイタ回路。
【請求項5】
請求項4のイグナイタ回路であって、さらに、前記閃光放電ランプに二次巻線が直列接続されるパルストランス(26)、及び前記始動パルス電圧を発生させるために前記パルストランスの一次巻線と前記コンデンサ(28)が閉回路を構成するように動作する第2のスイッチ素子(29)を備えたイグナイタ回路。
【請求項6】
請求項4のイグナイタ回路において、前記低抵抗素子(27)が1Ω以上100Ω以下の抵抗値を有するイグナイタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−114025(P2012−114025A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263579(P2010−263579)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】