説明

閉ループ制御方法、および多チャンネルフィードバックを有する閉ループ制御装置

閉ループ制御方法、および多チャンネルフィードバックを有する閉ループ制御装置
多チャンネルフィードバックを有する閉ループ制御方法を説明する。該方法では、サンプリングレートfで閉ループ制御変数xをサンプリングすることにより決定されるフィードバック変数r、および、期間Tにわたる閉ループ制御変数xを平均化することにより決定される、さらなるフィードバック変数rを、ガイド変数wとそれぞれ別々に比較する。処理において決定される制御エラーe,eのそれぞれを、個別閉ループ制御出力変数m,mをそれぞれ生成する分離されたコントローラ31,32に入力する。最後に、個別閉ループ制御出力変数m,mから生成される閉ループ制御出力変数mを、閉ループ制御変数xがガイド変数wを追従するように、閉ループ制御変数xを調節するために用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、閉ループ制御方法、特に、サーボモータなどの誘導負荷の閉ループ電流制御方法に関する。閉ループ制御方法は、2チャンネル、または、多チャンネル評価の制御変数を特徴としている。上記制御変数によって、迅速かつ正確な閉ループ制御が実行される。パルス幅変調によって行われることが好ましい閉ループ制御は、高寄生信号抑制と、同時に高帯域幅とを含む。また、本発明は、2チャンネルフィードバック、または多チャンネルフィードバックを有する、対応する閉ループ制御装置に関する。
【0002】
多くの技術的処理において、制御変数は、コマンド変数によって規定される設定値に維持される必要がある。このため、制御変数が連続的に計測されるとともに、コマンド変数と比較され、この比較によって、制御変数が、コマンド変数との均等化の観点において操作された変数を対応して設定することにより適応される、閉ループ制御システムが用いられる。この結果生ずる一連の動作は、閉ループ制御システムにおいて行われる。特定の用途によっては、圧力、温度、エンジン速度、速度、電圧、電流の強さなど、様々な物理的変数を考慮に入れる。ここで、閉ループ制御システムに特徴的であり、測定装置、比較装置、制御装置、または作動ユニットなど、一連の動作に必要な構成要素は、用途によって非常に異なることが分かる。わずかの例外を除いて、現代の閉ループ制御システムは、回路技術によってそのほとんどが実現されている。これは、かなり複雑な閉ループ制御システムについての特別なケースである。これらの閉ループ制御システムのスペクトルは、基本アナログ制御回路からデジタルコントローラに至る。また、回路技術による解決は別として、デジタル閉ループ制御アルゴリズムは、マイクロプロセッサ、または、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)上で展開するプログラムの形式で実現される。デジタル信号処理およびそれに関する更新性のため、デジタルコントローラは、正確に再現可能である極めて高い精度およびパラメータが不可欠である、かなり複雑な閉ループ制御要件に、部分的に応用できる。
【0003】
とりわけ、連続コントローラとサンプリングコントローラとは区別される。アナログコントローラは典型的な連続コントローラである。アナログ制御アルゴリズムは、ほとんどタイムラグなしに入力変数の変化に反応し、また、その出力に対応する出力変数を与えることができるので、このタイプのコントローラの入出力変数は、典型的には連続信号からなる。これに対して、デジタルコントローラはサンプリングコントローラである。この転送機能は、連続して行われる一連の算術演算によって実現され得る。デジタル制御アルゴリズムにおいて必要とされる演算時間のため、入力変数の測定と出力変数の出力との間でタイムラグが発生する。制御アルゴリズムの実行の間、典型的には入力変数は計測されず、新たに演算されるので、制御変数は連続的に測定されず、一定のサンプリング時間においてのみ測定される。したがって、デジタルサンプリングは、不連続の時間離散信号を供給し、信号変数は、時間における不連続な点においてのみ供給される。2つの連続するサンプリング時間(周期時間T)の間の時間は、サンプリングレート、またはむしろサンプリング周波数fを決定する。制御変数の高周波信号部分を計測可能とするためには、高いサンプリングレートが必要である。デジタルコントローラに特徴的であるサンプリングレートの上限は、アルゴリズムの演算に必要とされる演算時間により大部分が決定される。したがって、それは、使用するマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはFPGAなどの演算速度に依存している。
【0004】
制御システムを実行するためには、対応するアプリケーションに特有の制御作用を備えるコントローラが必要とされている。よって、単純制御素子の範囲が存在し、その特徴的な制御特性は、それぞれの基本的転送機能によって描かれる。いくつかのそれら制御素子を組み合わせることによって、より複雑なコントローラが構成され、その制御作用は、対応するアプリケーションの要件に良く適応される。
【0005】
例えば、PI−コントローラは、典型的なコントローラの組み合わせである。このタイプのコントローラは、比例コントローラと、比例コントローラに並行して切り替えられる積分コントローラとを備える。比例素子は固定係数により入力値を乗じる一方、積分素子は、パラメータ化が可能である制御偏差の時間積分を行う。ここにおける比較的速い比例コントローラは、より長期にわたる制御偏差に特に反応する積分コントローラへの好ましい完成形である。PI−コントローラは、その2つの構成要素の制御特性を組み合わせているので、かなり迅速に制御変数またはコマンド変数における変化に反応し得え、また、ゼロに向かって比較的安定して小さい定位の制御偏差を導き得る。この種の制御作用は、多くの技術的アプリケーションにおいて望まれるもので、この制御タイプが広く普及している理由の1つでもある。
【0006】
電気駆動の電流制御は、PI−コントローラのアプリケーションにおいて非常に重要な分野である。このような駆動は、中央構成要素としての電気モータ、エネルギー変換器としての電気モータ、そこに供給される電気エネルギーを機械的エネルギーへ変換することを含む。回転モータは、モータシャフトにおける回転動作の形式で機械エネルギーを供給する一方、リニアモータは、可動台車として機能することにより機械エネルギーを供給する。ここで、供給された電気エネルギーによって、一定のトルクまたは一定の力が、モータシャフトまたはモータ台車において発生し、効果的な対抗力に応じた動きを実行する。この動きを制御するため、電気駆動は、駆動制御における中央閉ループ制御システムを形成する電流制御装置を備える。好ましくはPI−コントローラに基づく電流制御装置によって、モータの螺旋部を流れる電流、および、電気モータによって起こされる機械エネルギーは、直接的に影響を受ける。電気モータに供給される電気エネルギーを分けるために、作動ユニットが使用される。この作動ユニットによって、PI−コントローラの要件に応じて、モータシャフトまたはモータ台車に及ぼされる力を設定することが可能となる。現代の電気駆動における作動ユニットは、モータに対する電気エネルギーの供給がオンおよびオフに切り替え可能であるパワートランジスタなどのパワー半導体を使用する。
【0007】
工業生産において用いられる位置制御駆動、および特にサーボ駆動は、トルクまたは力と、その結果のサーボモータの動きとを正確に制御するために、非常に正確な電流制御を必要とする。迅速かつ正確な電流制御は、駆動における高い剛度と、重畳回転速度制御ループの高い閉ループゲインとに関してさらに必要とされている。また、正確な電流制御によって、フィードフォワードシステムは効果的に使用し得る。潜在的に発生する電流またはトルクエラーは、より遅い回転速度コントローラによって補償される必要はない。
【0008】
閉ループ制御システムが制御変数における変化に対して行う迅速な反応について、効果的な実効値の正確な知識が必要であるので、実効値の迅速かつ正確な測定は、閉ループ制御システムの非常に重要な特性である。制御変数の実効値は、原則として異なる測定方法で測定される一方、個々の測定方法は、正確性および迅速性の点で部分的に著しく異なる。アナログコントローラについて特に特徴的である制御変数の連続的測定は別として、制御変数は、サンプリング方法によって不連続に測定される。特にデジタルコントローラについては、コントローラの作業サイクルによって予め決定されるサンプリング周波数にて制御変数を採取することは一般的な方法である。
【0009】
しかしながら、制御変数のサンプリングでは、測定信号のより高い周波数部分によって起こる潜在的な測定エラーを避けるために、サンプリング定理を考慮に入れておかねばならない。これについてはいくつかの可能性がある。制御変数は、例えば、アンチエイリアシングローパスフィルタによって帯域制限され得る。ここで、測定信号の高周波部分はノイズ除去が行われる。しかしながら、それに関連する位相シフトのため、この方法は全てのアプリケーションに対して適切なわけではない。さらに、より高い周波数部分は、測定値を平均化することによる適切な期間にわたって抑制される。特に、パルス幅変調(PWM)などのパルス変調によって操作する制御方法では、パルス変調の切替期間は適切な期間であり得る。しかしながら、平均値の生成に付随する追加の中断時間は、好ましくない位相シフトをもたらす。結局、制御変数を設定するためのパルス変調を用いる閉ループ制御方法における制御変数は、パルス変調と同期的に採取され得る。しかし、この測定方法は、外乱に左右される原因となる制御変数の時間において、高周波のない点があるか、また、それを認識しているかに依存している。
【0010】
上記技術におけるこの状態に基づいて、本発明の目的は、これら個々の方法の不利な点を含むことなく、いくつかの測定方法の有利な点を組み合わせる電流制御を提供することである。この目的は、請求項1に係る閉ループ制御方法と、請求項26に係る閉ループ制御システムと同様に請求項12に係る閉ループ制御装置とによって解決される。また、本発明の有利な実施形態は、従属項にて与えられる。
【0011】
本発明によると、閉ループ制御方法では、第1フィードバック変数が、特定のサンプリング周波数にて制御変数をサンプリングすることによって決定される。制御変数の実効値が、サンプリング周波数によって予め決定される時間における点においてそれぞれ登録されるとともに、第1フィードバック変数として与えられる。続いて、第1制御偏差が、第1フィードバック変数とコマンド変数とを比較することによって決定される。そして、第1個別コントローラ出力変数が、第1コントローラによって第1制御偏差から生成される。さらに、第2フィードバック変数が、ある期間にわたる制御変数を平均化することによって決定される。制御変数の実効値が、例えば、全サンプリング周期にわたって測定され、この期間に測定された実効値の平均値が生成され、上記平均値が第2フィードバック変数として与えられる。続いて、第2制御偏差が、第2フィードバック変数とコマンド変数とを比較することにより決定される。第2個別コントローラ出力変数が、上記生成された第2制御偏差から生成される。最後に、コントローラ出力変数が、2つの個別コントローラ出力変数の合計から生成される。コントローラ出力変数は、制御変数がコマンド変数を追従するように制御変数を設定するために用いられる。ここで、2つの測定方法を組み合わせることによって、制御変数の実効値における2つの異なる測定値が、正確性および迅速性の特性の観点から互いに著しく異なって与えられることは、有利な点である。サンプリングによって非常に新しい測定値が得られ、これによって追加の中断時間なしに迅速な制御が可能である一方、高周波外乱の抑制、およびこれによる正確な測定値が、平均値を生成することによって可能となる。分離されたフィードバック変数として両方の測定値を有する、2つの異なる制御素子を設けることによって、各個別制御素子の制御作用、およびこれによる全てのコントローラの制御作用が最適化され得る。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、第1個別コントローラ出力変数は、比例コントローラによって生成される。さらに、第2個別コントローラ出力変数は、積分コントローラによって第2制御偏差から生成される。比例コントローラは第1コントローラとして用いられるので、このようなクイックコントローラタイプには、サンプリングによって得られる最新の第1制御偏差が供給される。一方、第2コントローラには、制御偏差における非常に正確な値が供給される。積分コントローラを用いることによって、このコントローラタイプの正確さはより一層向上される。2つのコントローラの有利な点は、2つの個別コントローラを最適化することによって実現し得る。このように組み合わされたコントローラは、測定方法/コントローラタイプにおける2つの有利な点を含み、測定方法/個別コントローラにおける2つの不利な点は基本的に補償される。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、第2フィードバック変数は、PWM−スイッチング期間などの期間にわたる制御変数の実効値を積分することによって決定される。上記積分によって、比較的簡単な方法でさらに実行され得る平均値の特に迅速な生成が可能となる。
【0014】
本発明の他の有利な実施形態では、制御変数は、スイッチング周波数で計測される、操作された変数によって設定される。ここで、制御変数のサンプリングは、スイッチング周波数の2倍にて行われる。さらに、制御変数の平均値は、上記操作された変数のスイッチング周波数によって予め決定されるスイッチング期間に対応する期間にわたって生成される。どちらの方法も、制御変数範囲における上記操作される変数の計測に起因する高周波のため発生する、このような測定エラーを最小化するのに相応しい。制御変数のサンプリングが、上記操作される変数が計測されることを手助けにしてクロック信号と同期して行われる場合は、有利である。これにより、時間における高周波のない点において特に簡単にサンプリングを行うことができる。よって、順次、より正確な測定が可能となる。
【0015】
本発明の他の有利な実施形態では、上記操作される変数の計測は、パルス幅変調によって行われる。パルス幅変調は、モータ電圧など、上記操作される変数の設定に特に適している。パルス幅変調に典型的に用いられる固定スイッチング周波数によって、上述した工程を用いる制御変数を特に正確に測定することができる。パルス幅変調は、常に、限られた数のスイッチング状態を伴うので、作動ユニットおよび個別制御システムは、パルス幅変調器を用いることによって、特に簡単でコスト効果のある状態で実行される。
【0016】
本発明の他の有利な実施形態では、制御変数がデジタルコントローラによって制御される。このタイプのコントローラによって、非常に正確な制御が可能となり、該コントローラは、その更新性によって、個別アプリケーションに適切に適応され得る。アナログ信号がデルタ−シグマ変調器によってデジタル化される場合、サンプリング用のアルゴリズム、または、制御変数を積分するためのアルゴリズムは、コスト効果のある方法である、市場で入手可能なプログラマブルロジックモジュールにおいて実行され得る。
【0017】
本発明の他の有利な実施形態では、負荷の電流は、制御変数として制御される。多くの電流制御アプリケーションにおいて制御の正確さは不可欠な特性であるので、適切な電流制御装置は、本発明によって特に簡単な方法で実行され得る。これは、例えば電気駆動のための電流コントローラについてのケースである。特にサーボモータは極めて正確な電流制御を必要とするので、特に迅速かつ正確なサーボ制御が、本発明の閉ループ制御装置によって、特にコスト効果のある状態で実行され得る。
【0018】
本発明の他の有利な実施形態によると、制御装置は測定装置を備えている。測定装置は、制御変数の実効値が、サンプリング周波数によって予め決定される時間における点において決定されるとき、また、上記実効値が第1フィードバック変数として与えられるときに、制御変数をサンプリングすることによって第1フィードバック変数を決定する。さらに、測定装置は、制御変数の実効値が決定され、ある期間にわたって平均化されるとき、また、上記平均化された実効値が第2フィードバック変数として与えられるときに、制御変数を平均化することによって第2フィードバック変数を決定する。さらにまた、制御装置は、第1および第2比較素子を有する比較装置を備える。2つの比較素子のそれぞれは、個別のチャンネルを介して各フィードバック変数を受信し、フィードバック変数とコマンド変数とを比較することによって各個別制御偏差をそこから生成する。制御装置は、第1および第2コントローラを有する制御ユニットをさらに備え、第1コントローラは、第1制御偏差から第1個別コントローラ出力変数を生成し、第2コントローラは、第2制御偏差から第2個別コントローラ出力変数を生成する。制御装置の加算装置は、2つの個別コントローラ出力変数から共通コントローラ出力変数を生成する。共通コントローラ出力変数は、制御変数を設定する作動ユニットを用いる。
【0019】
最後に、本発明の他の有利な実施形態では、測定装置は、ある期間にわたる制御変数を積分することにより平均化された実効値を生成する積分装置を備える。平均値の生成は、積分素子によって特に簡便な状態で実行され得る。
【0020】
以下では、図面を用いて本発明をさらに詳細に説明する。図面は以下の通りである。
図1は、PI−コントローラおよびパルス幅変調によって負荷の電流制御を行う制御ループのブロック図を示す。
図2は、パルス幅変調によって実行された電流制御における時間的な電圧−/電流曲線を示す。
図3は、アンチエイリアシングローパスフィルタによる電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す。
図4は、スイッチング周波数の期間の積分による電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す。
図5は、時間における特定の高周波のない点にて、電流の進行を同期的にサンプリングすることによる電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す。
図6Aは、2チャンネル電流フィードバックを有する、新しい電流コントローラのブロック図を示す。
図6Bは、3チャンネル電流フィードバックを有する、新しい電流コントローラのブロック図を示す。
図7は、サーボモータ用の新しい電流制御装置のブロック図を示す。
図8は、2つの異なる電流成分が互いに独立して決定され制御される、3相モータ用の電流コントローラのブロック図を示す。
図9は、上記電流制御装置により重畳される回転速度制御装置を有する、閉ループ制御システムのブロック図を示す。
【0021】
以下では、電気モータを用いて本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は他のコントローラについても適用可能である。
【0022】
図1は、典型的な電流制御装置における閉じた一連の動作を示す。ここで、負荷、特に電気モータなどの誘導性負荷の電流iは、制御変数xとして制御される。閉ループ制御システム1は、閉じた制御ループを形成する、互いに相互作用を行ういくつかの構成要素を備える。例えば上位の回転速度制御ループ2によって与えられる電流xsollの設定値は、電流制御装置1のコマンド変数wとして機能する。閉ループ制御システム1の入力領域を形成する比較素子20は、電流xsollの設定値と、モータ螺旋部を流れる電流xにおける電流xistの実効値とを比較する。電流xistの実効値は、測定装置10によって決定され、その後、フィードバックチャンネルを介してフィードバック変数rとして比較素子20において利用可能とされる。比較素子20によって生成された制御偏差eは、閉ループ制御装置30において利用可能とされる。閉ループ制御装置30は、その転送機能によって、制御偏差eからコントローラ出力変数mを生成する。コントローラ出力変数mは、作動ユニット50を制御するように機能する。原則として、PI−コントローラは電流コントローラ30として用いられ、PI−コントローラの制御作用は、それぞれのアプリケーションに適応される。PI−コントローラは、比例コントローラ(比例動作係数Kを有する比例素子)と、比例コントローラと並列に動作する積分コントローラ(比例動作係数K=K/T(リセット時間T)を有する積分(I−)素子)とを備える。ここで、2つの個別コントローラは、その入力に印加される入力変数から、識別可能な個別コントローラ出力変数をそれぞれ生成する。そして、上記2つの個別コントローラ出力変数は、合計され、作動ユニット50に入力される共通コントローラ出力変数mを形成する。この場合の作動ユニット50は、コントローラ出力変数mにより予め決定されるモータ電圧の値を、パルス幅変調作動信号に変換するために、パルス幅変調器を備えている。上記作動信号は、作動装置のパワースイッチを制御し、これによってモータ螺旋部に印加される電圧が達成されることを成し遂げるように機能する。これに起因するモータ電流xは、モータ螺旋部Lの積分効果によって平滑化される。図1のブロック図にて示されるように、異なる外乱変数zは制御パスに作用し、これにより、制御変数電流xにマイナスの影響を及ぼし得る。
【0023】
図2は、パルス幅変調(PWM)中の電気モータにおける、主要な電圧および電流曲線を示す。ここではモータ電圧またはコイル電圧は、パルス幅変調によって時間離散形態でそれぞれ予め決定されている。この制御方法において特徴的なことは、個別PWMパルスの幅が、パルス幅変調器の入力値の時間展開に直接相関していること、および、パルス幅変調のスイッチング周波数fによって予め決定される時間間隔Tのパターンにおいて電圧変化が起こることである。このように生成された制御電圧は、2つの電圧レベルしか有しないほぼ矩形の曲線を有する。パルス幅変調電圧は、典型的には、潜在的なスイッチング損失を最小限にするために、非常に急峻なエッジを有する。制御電圧における所望の基本波は、2つの電圧段階の間を急速に切り替えることで発生する。一般的にパルス幅変調は、4kHz、8kHz,または16kHzなどの一定の周波数を用いる。この場合、三角形の電圧は、PWMキャリア信号として機能する。モータ螺旋部Lの平滑化効果のため、コイル電流xは、非常にゆっくりとしかコイル電圧を追従できない。のこ歯状の電流曲線はこれに起因しており、コイル電流は、パルス幅変調のスイッチング周波数Tにおける平均値の周辺で前後に振動する。コイル電流xの高周波として動作するコイル電流の振動動作は、潜在的なエイリアシング効果のため、サンプリング測定における著しい歪曲に帰結し得る。誤った測定は、特に正確さの面で、電流制御回路1における制御作用を最終的に悪化させ、これによって、上位の回転速度制御ループ2における制御作用も悪化させる。
【0024】
これらのサンプリングエラーを避けるため、また、制御ループの制御作用を最適化するためには、サンプリング法則を考えなくてはならない。これは、様々な測定方法によって達成される。
【0025】
コイル電流におけるより高い周波数部分は、適切なアンチエイリアシングローパスフィルタを用いることによって除去されてもよい。これによって、図3に示すように、フィルタをかけたコイル電流x’を示す曲線ができあがる。この曲線は基本的に、フィルタをかけていないコイル電流xの平均値に対応する。しかしながら、一次アンチエイリアシングローパスフィルタを使用すると、90°にまで達する位相シフトを引き起こし、制御ループの位相マージンを著しく減少させる。また最大可能閉ループゲインも減少させる。このため、この測定方法は、特に工業的使用にとってあまり適切なものではない傾向にある。
【0026】
平均値の生成は、制御変数電流xの実効値xistを正確に測定する他の測定方法である。例えばデジタルマルチメータにおいても使用されるこの方法では、測定値xが適切な期間にわたって登録され、登録された測定値から平均値が生成される。測定値の登録は、急速サンプリングによって行うのと同様に連続的に行われてもよい。パルス幅変調を用いるとき、PWMスイッチング期間Tは、特に適切な期間として考慮に入れられる。スイッチング期間Tにわたる平均値のこのような生成は、図4に示されている。サーボモータにおける電流強度xの時間的な展開は、連続機能によって示されるので、電流xistの実効値の平均値の決定は、PWM期間Tにわたる積分によって行われ得る。
【0027】
【数1】

【0028】
図4に示すように、積分により電流曲線の真下に形成される領域は、PWM期間Tにおける電流xintの平均実効値に比例する。時間間隔Tにおける電流xintの正の平均実効値を得るために、領域積分は積分時間Tで割られている。
【0029】
パルス幅変調のクロック信号によって予め決定されるPWM期間Tに適合する時間間隔にわたって積分を生成することは、有利な点である。しかしながら、積分は、クロック信号によって予め決定された時間t,t,t,tにおける点の間で、必ずしも正確に行われる必要はなく、時間シフトで行われてもよい。図4に示すように、理想的なケースの完全なPWM期間にわたる積分によって、電流信号の上下の偏差は互いに打ち消しあう。ここで決定される積分は、電流の各平均実効値を非常に良い概算で表す。しかしながら、平均値の生成が完全なPWM期間にわたって行われるということは、必ずしも必要ではない。例えば、長期間(PWM期間の倍数など)が積分期間として選択されてもよい。また、PWM期間よりも短い期間も一般的に適用可能である。しかしこの場合、高周波によって誘発される電流信号の偏差は、完全に互いに打ち消しあうわけではないので、正の平均値から決定された平均値からのずれが起こり得る。しかしながら、必要に応じて対応する補正を行うことによって、実効平均値からの潜在的なずれは考慮に入れることができる。
【0030】
より高い周波数部分によって誘発される測定信号の変化は、典型的には、平均値の生成の間互いに打ち消しあうので、この測定方法は、例えばスイッチング工程またはEMC(電磁適合性)によって引き起こされる外乱について特に影響されない。よって、全てのパルス変調方法に基本的に適用可能な積分測定は、特に正確な制御が要求される場合に、工業的使用におけるアプリケーションに非常に適している。
【0031】
しかしながら、追加の中断時間T=T/2=Tは、平均値を生成する際に考慮に入れる必要がある。追加の中断時間Tによって引き起こされる位相シフトφ=ω・Tも同様に、制御ループの位相マージンを減少させ、これにより最大可能閉ループゲインを低下させるので、これは制御ループにおける実効値の測定に対して不利である。
【0032】
一方、時間t,t,t,tの特定の点における制御変数xのサンプリングは、電流xistの実効値の測定に特に直結し得る。制御変数xのより高い周波数部分によって測定が著しく乱されることを防ぐために、制御変数が基本的に平均値と対応する時間t,t,t,tにおける点が、サンプリングに選択されることが好ましい。このため、時間t,t,t,tにおける高周波のない点が実際に存在することが要求される。それ以上に、それらが認識されている必要もある。これは、例えば、電流制御用の計測された電圧(例えばパルス変調によって)を用いる電流制御方法についてのケースである。図5に示すように、時間t,t,t,tにおける正確に2つの高周波のない点は、原則として、制御電圧を計測することにより引き起こされるモータ電流xの振動のため、PWMスイッチング期間Tにおいて発生する。時間内にこれらの点が存在するPWMスイッチング期間Tにより予め決定される時間フレームの範囲内の位置は、制御電圧が計測されるそれぞれの方法に依存している。全てのサンプリングの瞬間がPWMクロック信号と、固定された時間関係にあるとき、サンプリングは、PWMクロック信号と相関するサンプリング周波数f=1/Tにおいて行われてもよい。モータ電流xを制御するパルス幅変調を用いるとき、時間における高周波のない点は、基本的に、PWMクロック信号によって予め決定される時間t,t,t,tにおける点と適合している。したがって、このような場合、例えば、三角形のPWMキャリア信号が静止ポイントを含む時間におけるそれぞれの点において、制御変数xは、PWMクロック信号と同期的に採取される。ここでは、サンプリング周波数は、スイッチング周波数fの2倍であることが好ましい。
【0033】
=2・f
より高いサンプリングレートは、一般的に意味を成さない。ここでは、パルス幅変調はより速く切り替わるべきではあるが、技術的に好ましくない、または不可能である。また、より低いサンプリングレートも意味を成さない。これは、閉ループ制御が不必要に遅く行われるためである。
【0034】
制御変数xのサンプリング測定は、基本的に非常に速い測定方法である。それゆえ、制御ループの帯域を制限する追加の中断時間が特にないので、急速な閉ループ制御に特に適している。この理由から、この測定方法は、工業的使用に度々適用される。しかしながら、高周波外乱または不正確なサンプリングは、測定結果に著しい影響を及ぼし得る。さらに、この方法は、時間における高周波のない点が認識されている、または、少なくとも推定されているモータ電流のための、適切なPAM方法、または、他の適切なパルス幅変調方法を必要とする。
【0035】
以下に、ここで生成されたフィードバック変数における2チャンネルまたは多チャンネルフィードバックの手段と同様に、様々な測定方法を組み合わせる手段によって、閉ループ制御が、不利な点を有すことなく、使用された測定方法における有利な点を組み合わせてどのように実行されるかを示す。それゆえ、組み合わされた閉ループコントローラは、個別コントローラに分けられる。個別コントローラは、自らの制御偏差を入力変数としてそれぞれ取得するが、共通コントローラ出力変数を生成する。
【0036】
図6Aは、2つの比較素子21,22を備える比較装置20と、好ましくはPI−コントローラを備える制御装置30と、加算装置40とを有する、本発明の電流制御ループ1の部分的領域のブロック図を示す。これによれば、PI−コントローラは、P−制御素子31と、並行して切り替えられるI−制御素子32とに分けられ、第1比較素子21はP−制御素子31に割り当てられ、第2比較素子22はI−制御素子32に割り当てられる。2つの比較素子21,22のそれぞれは、自らのフィードバックチャンネルを備えており、対応する比較素子21,22は、上記自らのフィードバックチャンネルを介して、測定装置10からフィードバック変数r,rを受信する。様々な測定方法によって決定された電流における2つの異なる実効値は、フィードバック変数r,rとして機能する。原則として、それぞれの適切な測定方法は、電流の実効値を決定するために用いられ得る。また、制御電流を直接測定することは別として、その代わりに特定のパラメータから推論することもできる。2つの測定方法は、それらによって決定される実効値が、対応するタイプのコントローラについて最適化されるように選択されることが好ましい。2つの比較素子21,22のそれぞれは、割り当てられたフィードバック変数r,rを、コマンド入力に適用されたコマンド変数wと比較し、この比較結果として、制御偏差e,eを、それぞれ割り当てられた制御素子31,32に出力する。2つの制御素子31,32は、対応する転送機能によって、入力される制御偏差e,eから個別コントローラ出力変数m,mをそれぞれ生成する。続いて、個別コントローラ出力変数m,mは、それらからコントローラ出力変数mを生成する共通加算装置40に転送される。一般的には、コントローラ出力変数mは、ここでは、2つの個別コントローラ出力変数m,mの単純な加算によって生成される。しかしながら、2つの個別コントローラ出力変数m,mから、組み合わされたコントローラ出力変数mを生成するためには、個別コントローラ出力変数m,mに様々な係数を重み付けするなどして、他の操作が行われてもよい。そして、制御装置30における上記組み合わされたコントローラ出力変数mは、制御変数xを設定する作動ユニット50の入力変数として機能する。
【0037】
また、図6Aで示す制御装置30は、原則として他の制御素子を備えている。例えば、第3制御素子33(微分動作係数Kまたは微分時間Tを有する差動(D−)素子など)が、2つの制御素子31,32と並行して備えられている。ここで、追加制御素子33は、入力変数として、すでに存在する制御偏差e,eのうちの1つを用いてもよい。さらに、追加制御素子33に、その自らの入力変数を与えることも可能である。これは、例えば、第3フィードバック変数rとコマンド変数wとを比較する追加比較素子23によって行われる。ここで、第3測定方法によって決定される電流の実効値は、さらなるフィードバック変数rとして機能し得る。第3制御素子33の出力変数は、第3個別コントローラ出力変数mとして共通加算装置40に入力される。加算装置は、全ての3つの個別コントローラ出力変数m,m,mから、コントローラ出力変数mを生成する。この種類の制御装置30は、図6Bに示される。
【0038】
また、第3フィードバック変数rは、ゼロと等しくなるように選択されてもよい。この場合、コマンド変数wのみが制御素子33によって差別化される。これにより、図6Bに示す実施形態における有利で特別なケースとなる。ここで、閉制御ループ1は、特に急速にコマンド変数wにおける変化に応答し得る。
【0039】
図7は、2チャンネルフィードバックを有する図6Aの制御装置30を備える、本発明の閉ループ制御装置1のブロック図を示す。電気モータの電流を制御するように好ましくは構成される閉ループ制御装置1は、制御変数モータ電流の実効値を決定する測定装置10をさらに備えている。
【0040】
このため、測定装置10は、制御パスにおける適切な点にて、電気モータ60の電流xを採取する。そこでは、測定装置10は、2つの異なる測定方法によって電流xistの実効値を決定し、2つの分離されたフィードバックチャンネルを介して比較装置20に、上記2つの測定の測定結果をフィードバック変数r,rとして転送するように構成されている。それゆえ、測定装置10は、サンプリング装置11および積分装置12としてここでは概略的に構成される2つのサブユニットを備えている。サンプリング装置11は、所定のサンプリング周波数fにて制御変数xをサンプリングすることによって、第1フィードバック変数rを決定する。ここで、サンプリングは、モータ電流xのためのパワー出力ステージ52の制御電圧の生成に用いるパルス幅変調と同期して行われることが好ましい。そこでは、PWMスイッチング周波数fの2倍が、サンプリング周波数fとして選択されることが好ましい。積分ユニット12は、制御変数xの平均値を生成することによって第2フィードバック変数rを決定する。これは、PWM周期Tを介して制御変数を積分することによって行われることが好ましい。
【0041】
制御変数xをサンプリングし、積分するためのアルゴリズムは、構造的に互いに分離された2つの装置11,12として、また、測定装置10の共通装置として実行されてもよい。デジタルコントローラ1では、制御変数xなどの全ての利用可能なアナログ信号は、それらがさらに処理される前に、さらにデジタル化されなければならない。このため、測定装置10は適切なデジタイザ13を備えている。アナログ信号のデジタル化は、シグマ−デルタ(ΣΔ)変調器により行われることが好ましい。この場合、測定変数xのサンプリングまたは積分のためのアルゴリズムは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などの市販のプログラマブル半導体装置において、コスト面で効率が良い方法で実行されてもよい。
【0042】
既に上述したように、比較装置20は、2つのフィードバック変数r,rから、相互に独立している2つの制御偏差e,eを生成し、制御装置30における2つの制御素子31,32は、制御偏差e,eから個別コントローラ出力変数m,mを生成する。加算装置40により個別コントローラ出力変数m,mを組み合わせることによって、コントローラ出力変数mが、作動ユニット50の入力において与えられる。作動ユニット50は、作動素子51および作動装置52を備えている。作動素子51は、コントローラ出力変数mにより予め決定された値を、作動装置52のための作動変数yへ変換する。この場合、デジタル的に利用可能なコントローラ出力変数mは、パルス幅変調器51によって、パルス幅変調された電圧信号yに変換され、作動装置52は、パルス幅変調された電圧信号yによって制御される。典型的な作動装置52は、2つの特徴点(ロッキング(locking)、または、スイッチドスルー(switched-through))において唯一操作されるパワースイッチを備えている。作動装置52は、パルス幅変調された作動変数yに基づいてモータ電流xを計測する。
【0043】
図7に示す制御装置は、接続された電気モータ60の螺旋部を流れる電流を直接制御する。多相装置では、モータ電流はいくつかの電流成分からなり、モータのさまざまな螺旋部をそれぞれ流れる。三相モータの場合、回転電流または三相交流電流が用いられ、3つの電流成分i,i,iは所定の位相にあり、相互の増幅関係はそれぞれ独立して設定される。3つの三相交流電流成分i,i,iは、全て加算するとゼロになるため、各電流成分は、他の2つの電流成分によって決定されてもよい。したがって、3つの電流成分i,i,iのうち2つの電流成分i,iのみを、測定し制御することで充分である。これによって、互いに独立した2つの制御ループのみを有する促進三相電流制御が可能となる。
【0044】
さらに、閉ループ制御は、適切な制御システムを用いることによって最適化されてもよい。アプリケーション(同期モータ、非同期モータなど)によると、ステイター固定フレーム、フィールド指向座標システム、またはローター制御システムが考慮される。本来静止のステイター固定フレームに存在する電流成分i,i,iは、例えば、直交α/β−座標システムにおける対応する電流成分iαおよびiβとして、簡単な変換によって示され得る。また、座標回転装置によって、フィールド指向d/q−座標システムにおける制御が可能となる。フィールド指向d/q−座標システムでは、2つの電流成分i,iが、制御しやすい2つの直接電流として構成されている。流れて生成する電流成分iはトルクの発生に寄与しないので、対応する制御ループにおける入力変数は、ロスに対して最適な状態で装置を操作するために、ゼロに等しくなるように予め決定される。この場合、重畳速度コントローラwの制御値は、トルク生成電流成分iの原因となる制御ループの入力においてはじめて適用される。
【0045】
図8は、三相モータ60のための、対応する電流制御装置1を示す。本例の制御装置1は、矩形ステイター固定フレームにおける2つの電流成分iα,iβのための、互いに独立する2つの制御ループを有する。個別測定装置10’,10’’、並びに、個別制御装置30’,30’’は、そこで各電流成分iα,iβに割り当てられる。2つの測定装置10’,10’’のそれぞれは、好ましくはサンプリング測定および平均値測定などの様々な測定方法によって、割り当てられる電流成分i,iを決定する。そこで決定される電流iistの実効値は、各比較装置20’,20’’に入力される。図8では、2つのフィードバックチャンネルが、例えば、各測定装置10’,10’’に設けられている。関連する制御装置30’,30’’では、いくつかの個別コントローラが、比較装置20’,20’’の出力変数に基づいて、対応する数の個別コントローラ出力変数を生成する。個別コントローラ出力変数は、加算装置40’,40’’によって、対応する制御ループのコントローラ出力変数に順次組み合わされる。最後に、2つの制御ループのコントローラ出力変数によって、作動ユニット50が、個別の三相電圧成分u,u,uを設定して制御される。これにより、この例では、作動ユニット50が3つの三相電圧成分u,u,uを設定するように、矩形α/β−座標システムにおいて使用可能なコントローラ出力変数は、変換されなければならない。閉ループ制御の正確さを高めるために、三相電流における3つの電流成分i,i,iの全ては、同様に直接測定し得る。この場合、閉ループ制御装置1は、各相にそれぞれ対応する3つの測定装置(ここでは図示せず)を備えることが好ましい。この場合、制御は、同様に2軸座標システムにおいて行われてもよい。
【0046】
回転する装置では、制御は、回転速度が所定の値で維持される手段によって行われることが必要とされる。このような回転速度の制御は、例えば、電流制御ループが回転速度制御ループの下位にあるカスケード制御として知られた制御方法によって実行される。これによって、補助可変モータ電流は、まず、急速な内部制御ループによって制御され、そのコマンド変数は、外部にある速度の遅い制御ループ(回転速度制御ループ)の制御値により生成される。制御パス全体は、上記2つの制御ループをこのように組み合わせることによって、より小さい部分制御パスに分割され、より小さい部分制御パスは、制御パス全体に比べて、より明確に示され、より良く制御される。これにより、制御の正確さがより向上し得る。
【0047】
図9は、図7に示すような本発明の電流制御装置1と、重畳回転速度制御装置2とを有するサーボモータのための、回転速度制御システム3のブロック図を示す。内部電流制御ループ1が、その測定装置10によりモータ電流を制御変数xとして測定する一方、重畳回転速度制御ループ2は、対応する測定装置70により駆動チェーンにおける電気モータ60の回転速度を採取する。回転速度コントローラ2の比較装置80は、コマンド変数uにより予め決定された回転速度の設定値を用いて、測定装置70によって決定された回転速度の実効値の比較から、回転速度制御偏差を生成する。この制御偏差に基づいて、回転速度制御ループのPI−コントローラ90は、電流制御ループ1にコマンド変数wとして与えられる、対応するコントローラ出力制御を生成する。また、フィードフォワードシステムを追加で設けた場合、電流制御ループ1のコマンド変数wは、回転速度制御ループ2のコントローラ出力変数と、フィードフォワード変数とを組み合わせることによって生成されてもよい。
【0048】
また、図9に示す回転速度制御ループ2は、上位の制御装置における内部制御ループとして構成されてもよい。特に、サーボ駆動などの位置制御駆動は、回転速度コントローラ3に対して上位の他の位置制御ループ(図示せず)を備えており、位置コントローラの出力変数が、回転速度コントローラ3のコマンド変数uを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】PI−コントローラおよびパルス幅変調によって負荷の電流制御を行う制御ループを示すブロック図である。
【図2】パルス幅変調によって実行された電流制御における時間的な電圧−/電流曲線を示す図である。
【図3】アンチエイリアシングローパスフィルタによる電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す図である。
【図4】スイッチング周波数の期間の積分による電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す図である。
【図5】時間における特定の高周波のない点にて、電流の進行を同期的にサンプリングすることによる電流測定における時間的な電圧−/電流曲線を示す図である。
【図6A】2チャンネル電流フィードバックを有する、新しい電流コントローラを示すブロック図である。
【図6B】3チャンネル電流フィードバックを有する、新しい電流コントローラを示すブロック図である。
【図7】サーボモータ用の新しい電流制御装置を示すブロック図である。
【図8】2つの異なる電流成分が互いに独立して決定され制御される、3相モータ用の電流コントローラを示すブロック図である。
【図9】上記電流制御装置により重畳される回転速度制御装置を有する、閉ループ制御システムを示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉ループ制御方法であって、
サンプリングレート(f)にて制御変数(x)をサンプリングすることにより第1フィードバック変数(r)を決定するステップであって、上記制御変数(x)の実効値(xist)が上記サンプリングレート(f)により決定される時間(t,t,t,t)の点においてそれぞれ登録され、上記実効値(xist)が第1フィードバック変数(r)として与えられるステップと、
上記第1フィードバック変数(r)をコマンド変数(w)と比較することにより第1制御偏差(e)を決定するステップと、
第1コントローラ(31)によって、上記第1制御偏差(e)から第1個別コントローラ出力変数(m)を生成するステップと、
上記制御変数(x)を平均化することにより第2フィードバック変数(r)を決定するステップであって、上記制御変数(x)の実効値(xist)が期間(T)にわたって登録され、当該実効値から平均値が生成され、上記平均化された実効値(xint)が第2フィードバック変数(r)として与えられるステップと、
上記第2フィードバック変数(r)を上記コマンド変数(w)と比較することにより第2制御偏差(e)を決定するステップと、
第2コントローラ(32)によって、上記第2制御偏差(e)から第2個別コントローラ出力変数(m)を生成するステップと、
上記2つの個別コントローラ出力変数(m,m)からコントローラ出力変数(m)を生成するステップとを含み、
上記制御変数(x)が上記コマンド変数(w)を追従するように、上記制御変数(x)を設定するための上記コントローラ出力変数(m)を用いる、閉ループ制御方法。
【請求項2】
上記第1個別コントローラ出力変数(m)は、比例コントローラ(31)によって、上記第1制御偏差(e)から生成され、かつ/または、
上記第2個別コントローラ出力変数(m)は、積分コントローラ(32)によって、上記第2制御偏差(e)から生成される、請求項1に記載の閉ループ制御方法。
【請求項3】
上記コントローラ出力変数(m)は、上記2つの個別コントローラ出力変数(m,m)を合計することにより生成される、請求項1または2に記載の閉ループ制御方法。
【請求項4】
上記第2フィードバック変数(r)は、上記期間(T)にわたる上記制御変数(x)の実効値(xist)の積分により決定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項5】
スイッチング周波数(f)で計測された作動変数(y)が、上記制御変数(x)を設定するための上記コントローラ出力変数(m)から生成され、
上記制御変数(x)のサンプリングは、上記スイッチング周波数(f)の2倍にて行われ、かつ/または、
上記制御変数(x)の平均値(xint)は、上記作動変数(y)のスイッチング周波数(f)により予め決定されるスイッチング期間(T)、または、当該スイッチング期間(T)の整数倍、に対応する期間にわたって生成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項6】
上記制御変数(x)のサンプリングは、上記作動変数(y)の計測に用いられるクロック信号と同期して行われる、請求項5に記載の閉ループ制御方法。
【請求項7】
各ケースにおいて、上記サンプリングは、上記制御変数(x)の時間における高周波のない点にて行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項8】
上記作動変数(y)の計測は、パルス幅変調によって行われる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項9】
上記制御変数(x)は、デジタルコントローラによって制御され、
アナログ信号は、デルタ−シグマ変調器によってデジタル化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項10】
制御変数(x)として、負荷(60)の電流が制御される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の閉ループ制御方法。
【請求項11】
電気モータ(60)の電流が、制御変数(x)として制御され、かつ、
上記コマンド変数(w)は、上位の回転速度制御ループ(2)によって与えられる、または、上位の回転速度制御ループ(2)およびフィードフォワードシステムによって与えられる、請求項10に記載の閉ループ制御方法。
【請求項12】
閉ループ制御装置であって、
測定装置(10)と、
第1および第2比較素子(21,22)を有する比較装置(20)と、
第1および第2コントローラ(31,32)を有する閉ループ制御装置(30)と、
加算装置(40)と、
作動ユニット(50)とを備え、
上記測定装置(10)は、制御変数(x)をサンプリングすることにより第1フィードバック変数(r)を決定するように構成され、上記制御変数(x)の実効値(xist)は、サンプリング周波数(f)により決定される時間(t,t,t,t)の点ごとに登録され、上記制御変数(x)の実効値(xist)は第1フィードバック変数(r)として与えられ、
上記測定装置(10)は、上記制御変数(x)を平均化することにより第2フィードバック変数(r)を決定するようにさらに構成され、上記制御変数(x)の実効値(xist)は期間(T)にわたって決定および平均化され、上記平均化された実効値(xint)は第2フィードバック変数(r)として与えられ、
上記第1比較素子(21)は、上記第1フィードバック変数(r)とコマンド変数(w)との比較によって、第1制御偏差(e)を生成するように構成され、
上記第2比較素子(22)は、上記第2フィードバック変数(r)とコマンド変数(w)との比較によって、第2制御偏差(e)を生成するように構成され、
上記第1コントローラ(31)は、上記第1制御偏差(e)から第1個別コントローラ出力変数(m)を生成するように構成され、
上記第2コントローラ(32)は、上記第2制御偏差(e)から第2個別コントローラ出力変数(m)を生成するように構成され、
上記加算装置(40)は、上記2つの個別コントローラ出力変数(m,m)からコントローラ出力変数(m)を生成するように構成され、
上記作動ユニット(50)は、上記制御変数(x)が上記コマンド変数(w)を追従するように、上記コントローラ出力変数(m)によって上記制御変数(x)を設定する、閉ループ制御装置。
【請求項13】
上記第1コントローラ(31)は比例コントローラであり、かつ/または、上記第2コントローラ(32)は積分コントローラである、請求項12に記載の閉ループ制御装置。
【請求項14】
上記測定装置(10)は、上記期間(T)にわたる上記制御変数(x)の積分によって上記平均化された実効値(xist)を生成するために、積分装置(12)を備えている、請求項12または13に記載の閉ループ制御装置。
【請求項15】
上記作動ユニット(50)は、上記制御変数(x)を設定するために、上記コントローラ出力変数(m)から、スイッチング周波数(f)で計測される作動変数(y)を生成するように構成され、
上記測定装置(10)は、上記スイッチング周波数(f)の2倍にて上記制御変数(x)を採取するように構成され、かつ/または、
上記測定装置(10)は、上記作動変数(y)のスイッチング周波数(f)により予め決定されるスイッチング期間(T)、または、当該スイッチング期間(T)の整数倍、に対応する期間にわたって、上記制御変数(x)の平均値(xint)を生成するように構成されている、請求項12〜14のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項16】
上記測定装置(10)は、上記作動ユニット(50)が上記作動変数(y)の計測に用いるクロック信号と同期して上記制御変数(x)を採取するように構成されている、請求項15に記載の閉ループ制御装置。
【請求項17】
上記測定装置(10)は、高周波のない上記制御変数(x)の時間の点ごとに上記サンプリングを行うように構成されている、請求項16に記載の閉ループ制御装置。
【請求項18】
上記作動ユニット(50)は、上記作動変数(y)を計測するために、パルス幅変調器(51)を備えている、請求項15〜17のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項19】
上記制御装置(30)は、デジタルコントローラとして構成されている、請求項12〜18のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項20】
上記測定装置(10)は、アナログ信号をデジタル化するデルタ−シグマ変調器(13)を備え、かつ、
上記測定装置(10)における上記積分装置(12)および/またはサンプリング装置(11)は、プログラマブル半導体装置におけるアルゴリズムとして実行される、請求項19に記載の閉ループ制御装置。
【請求項21】
上記閉ループ制御装置(1)は、負荷(60)の電流コントローラとして構成されている、請求項12〜20のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項22】
上記電流制御装置(1)は、上位の回転速度制御ループ(2)の一部であり、上記作動変数は、上記電流コントローラ(1)のコマンド変数(w)を、単独で、または、フィードフォワードシステムとともに生成する、請求項21に記載の閉ループ制御装置。
【請求項23】
上記閉ループ制御装置(1)は、サーボモータ(60)のための電流制御装置として構成されている、請求項21または22に記載の閉ループ制御装置。
【請求項24】
上記閉ループ制御装置(1)は、ステイター固定フレームにおける三相モータ(60)の電流を制御するように構成され、かつ、
上記適用されたステイター固定フレームに応じて、2つまたは3つの測定装置(10’,10’’)、並びに、2つまたは3つの制御装置(20’,20’’)が、相互に独立して、上記各ステイター固定フレームにおける個別電流成分(i,i,i,iα,iβ)を登録および制御するために設けられている、請求項21〜23のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項25】
上記閉ループ制御装置(1)は、フィールド指向座標システムにおける三相モータ(60)の電流を制御するように構成され、かつ、
上記フィールド指向座標システムにおける各電流成分(i,i)のための、各制御装置(20’,20’’)が設けられ、かつ、
2つまたは3つの測定装置(10’,10’’)が、相互に独立して、上記フィールド指向座標システムにおける2つの電流成分(i,i)、または、上記三相モータ(60)における3つの電流成分(i,i,i)の全て、を登録するために設けられている、請求項21〜23のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置。
【請求項26】
閉ループ制御システム(3)であって、
電気モータ(60)と回転速度制御ループ(2)とを備え、
上記回転速度制御ループ(2)は、請求項12〜25のいずれか1項に記載の閉ループ制御装置(1)を備え、上記回転速度制御ループ(2)は、上記電気モータ(60)のための電流制御装置として機能する、閉ループ制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−528385(P2010−528385A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509849(P2010−509849)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058948
【国際公開番号】WO2009/007407
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(505344063)ベックホフ オートメーション ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】