説明

閉ループ式電気浸透流ポンプ用電気浸透材及び該ポンプ用陽極電極材

【課題】閉ループ式電気浸透流ポンプの駆動水の循環量を多くする事、硬度成分の多い水が使える等が課題であった。
【解決手段】円筒濾紙型土器にシリカゲルを充填した構造の電気浸透材を作った。これは土器に接しているシリカゲルに土器が本来有する電気浸透材の能力が移動し飛躍、増幅し硬度成分による流動障害となる原因を吸収し、殆どの鉱水、水道水や河川水に支障なく使用できるものであった。また、この駆動水はシリカを溶かしているために金属アルミニウムが陽極電極として不導体を作らず溶解することが判明した。これは硬度成分による流動障害をなくすための代償という形になった。水道水が使用できるようになったため装置の洗浄、廃水処理、水の補給や交換等が容易になった。さらに装置の大型化も可能となり地下水の汲み上げ、河川水、雨水の移動等に使用できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は閉ループ式電気浸透流ポンプ用電気浸透材及び、該ポンプ用陽極電極材に関する。詳しくは円筒濾紙型土器の内部にシリカゲルを充填した構造である事を特徴とする閉ループ式電気浸透流ポンプ用電気浸透材及び、該ポンプの陽極電極材が金属アルミニウムである事を特徴とする閉ループ式電気浸透流ポンプ用陽極電極材に関するものである。
両者の関連事項としては前者の電気浸透材を長期間安定に稼働させる代償として後者の陽極電極材を溶解することにある。
【背景技術】
【0002】
駆動水を循環させる閉ループ式電気浸透流ポンプで期待する事は循環量を長期間維持する事、高硬度の水を使用する事等である。
これらを期待して市販の粘土で種々の形の素焼きの土器を作って検討した。シリカ系の粘土で作った土器であれば大なり小なり電気浸透の能力はありいずれも同等なので購入し易いものを選んだ。形状は平板型、椀型、円筒濾紙型等において粘土の使用量を比較し効率が良く使い勝手の良さそうな円筒濾紙型にした。印加電圧に付いては高い程流量は得られる事になっているが家庭用100V電源を整流して得られる約136V前後の直流で充分であり、これを上限とした。
以上の装置や条件で行った検討結果は閉ループ式電気浸透流ポンプに適した駆動水は特許文献1にみられるように水の硬度をかなり限定したものであった。この事はとりもなおさず装置の改良に期待が持てるものであるとした。
【0003】
【特許文献1】特願2008−220453
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一定の形を有する電気浸透材について流量を増す事等の改善方法は円筒濾紙型土器に有効物質を添加する方法を課題にした。また、家庭用電源を直接整流したものは高電圧ではあるが消費部門では一般に低電流になることに期待した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気浸透材はシリカゲルを添加する事により得られた。図1は本発明の電気浸透材の断面図である。円筒濾紙型土器にシリカゲルを充填したものである。このものは特許文献1に示したような硬度成分の少ない水から市販の鉱水、水道水や河川水の高硬度な水にも使えるものであった。図2は本発明の電気浸透材、陽極アルミニウム電極、他に必要な周辺機器を用いて組み立てた閉ループ式電気浸透流ポンプの模式図である。
【0006】
図2において本発明の電気浸透材は水頭ガイドが取り付けられ、シリカゲル充填層の中央に陰極電極が挿入されて外部電源に繋がれる。陰極電極の材質はアルミニウム、鉄、ステンレス類、ニッケル、銅、炭素等幅広い材質が可能で一種類に限定しない。この陰極の先端は土器に接していても離れていても良いがシリカゲル層から抜けきると僅かに駆動水の流量が落ちる。シリカゲル層から離れても液中にあれば有効である。シリカゲルの粒度は細粒がよいが固定する必要は無く土器に入っていればよい。土器自体も本来電気浸透流の能力を少しは持っているがこの能力がシリカゲルに接触する事により移動し、いわば飛躍、増幅されるのがみられる。詳細な原理は不明であるが、この現象が現れるのは印加電圧が約40V以上であった。
【0007】
本発明の陽極アルミニウム電極は金属アルミニウムが駆動水中に挿入された状態で設置される。形状は限定しないが材質は金属アルミニウムと限定している。
電気浸透材に挿入された陰極と駆動水に挿入された陽極間に電流が印加されると水頭ガイド内で水頭が生じノズルから水が滴下される。この水は電気浸透材のシリカ充填層のシリカを溶解している。本発明の陽極アルミニウム電極はシリカを溶解している駆動水中のみで有効である。即ち、アルミニウム電極がスムーズに溶解して水酸化アルミニウムになりそれがシリカと緩い付加物を形成し陽極下に沈殿する。他金属を陽極電極とした場合とは異なり金属イオンが土器および、土器を通過して陰極辺りに障害をもたらさない唯一の金属であった。また、アルミニウム陽極が支障なく順調に溶解している時のみ本発明の電気浸透材が順調に稼働するものであった。
【発明の効果】
【0008】
上述したように本発明の閉ループ式電気浸透流ポンプ用電気浸透材は高硬度の水を使用する事が可能となった。陽極アルミニウム電極の溶解が課題となったが前述のようにアルミニウム以外の金属では障害が出てポンプ自体の寿命が短い。アルミニウムの溶解でその代償を支払う形となった。硬度成分の違う水でポンプを動かしてみると次のようになる。
【0009】
特許文献1に基づいて製造した硬度2mg/Lの駆動水と市販の鉱水「アルカリイオンの水、キリンビバレッジ(株)、59mg/L」そのものを駆動水に用いて図2の装置で比較試験を行った結果は前者の流量は初日7ml/min:電流8.5mA、3日目4ml/min:電流6mA。後者の流量は初日9ml/min:電流35mA、7日目9ml/min:電流14mA。後者の方が電流が多くアルミニウム溶解量が2倍くらい多いことが示される。しかし、前述のように駆動水の補充、交換等の作業量を考えると高硬度の水を使った方が容易であり流量が安定している。特に水道水を使った場合であれば廉価となりかなりの実用性が出てくる。また後者の場合、電気分解や蒸発などによる減量分の補充はおなじ鉱水を用いたので硬度は72mg/Lと濃縮された計算になったが順調に稼働する事も判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施例で比較する場合同一の装置を使うのが良いため図2の装置を1Lビーカー内に組み立てた。円筒濾紙型土器は市販の粘土(品名「白信楽」、製造者(株)「精土」)を用い、土器の寸法は34mmφx50mmL、t=1.6mmにした。水道管部材で水頭ガイドを取り付けノズル先端から駆動水容器内水面まで100mmの余裕をとった。実施例の流量はすべてこの水頭での測定値である。シリカゲルは「富士シリカゲルIDタイプ、80mesh,(株)富士シリシア製」を15g充填し、その中央に陰極電極として12mmφ、18−8ステンレスパイプを挿入した。陽極電極は10mmφのアルミニウムパイプを陰極電極から約6cm離して設置した。印加電圧は常に前記の直流136V前後とした。
但し以上の装置は模型であって形状、使用材料等、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0011】
閉ループ式電気浸透流ポンプを使用するにあたり、上述のように高硬度の駆動水の方が長期間安定に稼働するし維持が容易であり廉価であるようなので水道水による試験を行った。使用水は東京都日野市水道水(井戸水、河川水各半々、軟水、塩素10ppm)を用いた。まず土器のみの測定を行った。
図2の装置を土器のみで、水道水は900mL入れて稼働した。流量は8mL/min:電流80mA,2分後10mL/min:電流60mA、1時間後流量2mL/min:電流80mAと殆ど閉塞した。次に土器をよく洗浄してシリカゲル15gを入れ稼働させた。流量は7mL/min:電流18mA,5時間後7mL/min:電流19mA、3日後8ml/min:電流20mAであった。水道水も使えるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の閉ループ式電気浸透流ポンプはCPU冷却等のために開発を始めたが今やそればかりではなく雨水、地下水、水道水、および河川水等の汲み上げ、移送に使用できる事になった。これに先立ってポンプの大型化、大流量化、高圧化装置の製造を目指すところとなる。更に、陽極アルミニウム電極技術によるアルミ金属業界の活性化に結びつくものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の電気浸透材の断面図である。
【図2】図2は本発明の電気浸透材、陽極アルミニウム電極、他に必要な周辺機器を用いて組み立てた閉ループ式電気浸透流ポンプの模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1 円筒濾紙型土器
2 シリカゲル充填層
3 陰極電極
4 駆動水水頭
5 水頭ガイド(不導体)
6 駆動水容器内水面
7 ノズル
8 駆動水
9 容器(不導体)
10 陽極アルミニウム電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒濾紙型土器の内側にシリカゲルを充填した構造である事を特徴とする閉ループ式電気浸透流ポンプ用電気浸透材。
【請求項2】
陽極が金属アルミニウムである事を特徴とする閉ループ式電気浸透流ポンプ用陽極電極材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106822(P2010−106822A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301678(P2008−301678)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(598173395)
【Fターム(参考)】