説明

開栓トルク検査測定装置

【課題】素手で開栓する場合のトルク曲線を再現して素手での開栓に近い状態で1stトルクを測定できるようにした開栓トルク検査測定装置を得る。
【解決手段】キャップチャックを駆動するモーターにサーボモーターを採用し、キャップ開栓に際して初動トルク発生区間を、第1段階と第2段階に分け、第1段階の単位時間当たりのモーター出力トルク制限増加値tq1と、第2段階でのモーター出力トルク増加値tq2をtq1>tq2の関係で予め設定し、予め設定した所定トルク値Cg1に達するまでを第1段階とし、第2段階では出力トルク制限増加値tq2でトルク制御しながら計測したトルク値を更新して更新トルク値が一定値(Cg2)以上低下した場合は、その直前のピークトルク値を1stトルク値とし、以後サーボモーターを予め設定した制限速度に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジキャップを巻締した飲料ボトル等の開栓トルクの検査測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトル飲料は、PETボトル等の合成樹脂製ボトル、ガラス製ボトル、金属製ボトル等種々のボトル容器が採用されているが、これらのボトルは通常タンパーエビデントバンド付キャップ(以下、TEキャップという。)を採用しており、流通段階での不正開封の有無が直ぐに判別できるようになっている。そのようなキャップ付きボトル詰飲料は、製造ラインにおいてキャッピング後において、キャップがボトルに適正に巻締められているか厳重な検査の基で品質管理を行っている。検査項目は多岐にわたるが、そのなかで重要な検査項目のひとつとして開栓トルクの検査がある。開栓トルクは、キャップ、ボトルの寸法公差のばらつきや、キャッピング条件、充填条件、保存環境条件等によって変化するため、開封しやすい適正範囲内に収めることが重要である。従来、開栓トルクの検査は、トルク計に固定された容器固定具に容器を固定して手でキャップを開栓方向に回して、トルク計のピークを各段階ごとに読み取ってチェックしている。その場合、検査員の個人差によるバラツキがあり、正確なトルクピークを測定するのが困難であること、また測定数が多い場合、測定時間が非常に長くかかるという問題点があった。
【0003】
一方、上記問題点を解決するものとして、特許文献1に示す開栓トルク検査測定装置が提案されている。提案されている開栓トルク検査測定装置は、モーターで回転するスピンドルにトルク検出器とエアーチャック及び回転検出器を取付けた本体ヘッドを、容器クランプ治具によって固定台上に固定されたネジキャップが装着されたボトル容器に対して上下移動可能に取り付け、キャップを把持した状態でエアーチャックをモーターにより回転させ、回転検出部からの信号により所定角度毎の開栓トルク値をトルク検出器により測定してディスプレイにトルク曲線を表示して分析する測定・解析手段と、演算処理装置とより成るものであった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−134076公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記提案の装置は測定を全て機械により行なうので、測定者の個人差によるバラツキをなくすることができる点で従来の問題点を解決できたものである。ところで、素手でのTEキャップの開栓は、一般に図9に示すように親指と対向する指で2方向から挟んで反時計方向に力を付加して行うが、開栓トルクはキャップが開栓するまでに次の2区間でのトルクピーク値をとることがある。第1区間は力を付加してからキャップが回り始めるまでの区間で、この区間はキャップとボトル口との巻締めシールの開放であり、この区間ではキャップはまだ回転しない。この区間でのピークトルク値が高過ぎると一般消費者がキャップを開けることが出来なかったり、開け難いと感じる虞があり、好ましくない。また逆に低過ぎるとそれだけシールブレイクが起き易くシール性が低いことを意味し、キャップの基本性能を判定する検査として重要な要素である。第2区間はキャップのTEバンドのブリッジが切れ始めるまでの区間であり、その区間のトルクピーク値はブリッジの切れ具合をチェックし、バージン性を保証するのに重要な要素である。
【0006】
その2つのピーク値のうち、第1区間のトルクピーク値(以下、初動トルク又は1stトルクと称する)がキャップの開栓のし易さ・密封性に大きく影響するので、1stトルクを人間が手で開栓する状態を再現して正確に検出することは開栓トルク検査にとって重要である。その1stトルクの検査は、TEキャップに限らず、通常のネジキャップ全てに共通する課題である。そこで素手で開栓する場合の第1区間でのトルクの変化を前記検査方法により分析すると、図11のa曲線に示すような経過を辿っている。即ち、素手での開栓は開栓時期を予測して初期は早めにトルクを上げて作業時間を短縮し、トルクが約100N・cmに達すると無意識に加えるトルクを20〜30N・cm/sec程度に仕事量を調整して最大ピーク値T1aに達し、キャップが回転を開始し始めると急激にトルクが低下して第2区間に移行することがわかった。
【0007】
しかしながら、従来の機械での開栓トルクの自動測定での第1区間でのトルク曲線は、図11のb曲線に示すような曲線となっている。即ち、1stトルクT1bが素手での開栓の場合と比べて早い時間に且つ高い値を示している。従って、従来の開栓トルク測定装置では、人間が開栓する場合の1stトルクを機械での測定では再現できず、素手で開栓する場合と同じ条件での測定となってなく、測定値にずれが生じているという問題点がある。
装置による開栓トルクの測定は、素手の開栓と同様なトルク曲線を再現してそれぞれのトルク値を測定することができてはじめて、人間が素手で開栓する場合の実際のトルク値を測定できることになり理想的であるが、上記のように従来そのような自動開栓トルク測定装置は実現していない。
【0008】
そこで、本発明は従来の開栓トルク測定装置における1stトルクの測定における上記問題点を解決しようとするものであり、素手で開栓する場合のトルク曲線を再現して素手での開栓に近い状態で1stトルクを測定できるようにした開栓トルク検査測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点を解決するため、従来の測定装置において素手での1stトルクに至る開栓トルク曲線を再現できない原因を分析した結果、以下の4点が推測される。
(1)1stトルクは、キャップとボトルの静摩擦抵抗をうち破る回転力であり、その静摩擦抵抗を上回る回転力を測定装置がキャップに与えることが必要である。この回転力は、回転トルク上昇率に比例して増加する。つまり、キャップを急に回そうと最初から静摩擦抵抗を過度に上回る大きな回転力を加えると、静摩擦抵抗を上回るために要する瞬間的なトルクは大きくなる。これは、速度制御・トルク制御の機能を持たないモーターでは制御できない。従来装置に用いられている小型モーターのトルク上昇率は、測定に必要な電流をかけると人間の動作に比べて急激なトルク上昇を示すため、大きなトルク測定値を示しているものと推測される。
(2)キャップの1stトルクは、キャップがボトルに対して回転移動を開始する直前に最大値を示す。また、このトルク値は回転を開始すると急激に低下する傾向があるが、このとき、モーターの回転余力が過剰にキャップの回転速度を上昇させる。ここで、装置の回転機構には若干の遊びがあるため、速度上昇した回転軸は高速回転し、遊びの終点で大きな衝撃を受ける。この衝撃をトルクとして検出するため、実際より高い値を示すと推測される。
(3)前記(1)(2)について対策を打っても吸収しきれない要因として、キャップを把持するチャックの質量・形状による慣性力の影響があり、特に樹脂製のキャップの場合、弾性の影響を受けて前記(2)に似た挙動により高い値を示すものと推測される。
(4)さらに、キャップとそれを把持する器具の滑りによる誤作動を防止するため、所定の把持力が必要となるが、従来の把持部材質ではキャップを固定するために比較的大きな把持力を要したため、特に樹脂製キャップの場合、剛性が低いため変形が生じて、逆にキャップとボトルの密着力が高くなり抵抗の増加による高トルク値が認められたものと推測される。
以上の知見に基づき、上記問題点を解決するには理想的には以上の(1)〜(4)を解決する技術が必要であることがわかり、さらに研究した結果、本発明に到達したものである。
【0010】
即ち、上記問題を解決する請求項1に記載の発明に係る開栓トルク検査測定装置は、ネジキャップが装着された容器を固定するクランプ手段と、前記ネジキャップを把持するキャップチャックと、該キャップチャックを回転駆動するモーターと、キャップ開栓時のトルクを検出するトルク検出器を有する開栓トルク検査装置であって、前記モーターがサーボモーターであり、キャップ開栓に際してキャップとボトルの摩擦抵抗を上回る回転力が発生するまでの初動トルク発生区間を、予め設定した単位時間当たりのモーター出力トルク制限増加値に従ってトルク増加値を制御することによって、モーター作動開始直後のモーター出力トルクの急激な増加を抑制するように、前記サーボモーターを制御する本体制御部を有することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記初動トルク発生区間を2段階に分け、第1段階での前記モーター出力トルク制限増加値をtq1とし、第2段階での前記モーター出力トルク制限増加値をtq2とするとtq1>tq2の関係にあるようにしたことを特徴とするものである。請求項1、2の発明によって、上記(1)の原因を効果的に解決することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の開栓トルク検査測定装置において、前記初動トルク発生区間の終了と同時に前記サーボモーターの回転を予め設定した一定速度に制御するようにしてなることを特徴とするものであり、該構成によって、上記(2)の原因を解決することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3何れかに記載の開栓トルク検査測定装置において、前記キャップチャックが、キャップ外周壁と軸方向に線接触又は周方向角度50゜以内の接触幅を有する2以上の把持子を有してなることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の開栓トルク検査測定装置において、前記把持子が低弾性ゴムで構成されていることを特徴とする。
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の開栓トルク検査装置において、前記把持子は、立方体又は円柱体に形成されていることを特徴とするものである。請求項4〜6の構成によって、上記(3)(4)の原因を効果的に解決することができる。
【発明の効果】
【0012】
従来の開栓トルク検査測定装置では素手で開栓する場合の開栓トルクと一致しないが、請求項1〜6の発明によれば、機械での開栓トルクの自動測定でも、素手での開栓の場合と略同様な開栓トルク曲線を得ることができ、より実際的な開栓トルクを計測でき正確に検査することができる。特に、請求項2の発明によれば、初動トルク発生区間を2段階に分けてモーター出力トルク制限増加値を変更しているので、計測に影響のない初期段階のモーター出力トルク制限増加値を大きくすることによって、検査速度を向上させることができると共により素手による開栓トルク挙動に近づけることができる。さらに、請求項3の発明によれば、速度制限制御を行なっているので、初動トルクのピークトルク直後からキャップとボトルの摩擦抵抗が急激な減少によるモーターの回転速度の急激な増大を抑え、衝撃トルクの発生がなく正確なトルク値を測定することができる。
【0013】
請求項4によれば、キャップ外周を把持する把持子のキャップとの接触部位を狭い面積にすることによって、開栓時の人間によるキャップ把持を再現でき、1stトルク値を素手での開栓の場合に近づけることができた。請求項5、6によれば、把持子を低弾性ゴムで構成することによって、歪み量に対する復元の力とスピードの変化が小さいため、人間の肌の挙動に類似した働きを示し、突発的な高トルクが発生しにくく、値のバラツキが小さくなる効果が得られた。また、低弾性ゴムはキャップに対して摩擦抵抗が非常に大きいため、把持力を小さくでき、特に合成樹脂製キャップ・ボトルの場合におけるキャップ・ボトルの異常な変形を防止することができ、それによるトルク値のバラツキを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の開栓トルク検査測定装置における開栓トルク測定原理を説明するためのモーター出力トルク曲線図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる開栓トルク検査測定装置のシステム構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる開栓トルク検査測定装置の本体機械部の正面図である。
【図4】その側面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる開栓トルク検査測定装置の測定処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態にかかる開栓トルク検査測定装置で開栓トルクを計測した際の初動トルク発生区間におけるトルク曲線である。
【図7】本発明の開栓トルク検査測定装置の実施形態に係るキャップチャックの底面写真である。
【図8】本発明の開栓トルク検査測定装置の他の実施形態に係るキャップチャックの底面写真である。
【図9】素手による開栓時のキャップ把持状態を示す写真である。
【図10】従来の開栓トルク検査測定装置のキャップチャックの底面写真である。
【図11】素手による開栓時のトルク曲線と従来の装置による開栓時のトルク曲線を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、従来の自動開栓トルク測定装置において、1stトルク値を人間が素手で行うのと挙動が異なるため、素手よりも1stトルク値が高く検出され、正確な開栓トルクができないという問題点を解決するため、本発明では自動測定装置において、素手での開栓時と同様なトルクカーブを再現させる手段として、従来の開栓トルク検査測定装置におけるモーターに代えて、サーボモーターを採用し、次のようにして、トルク制御・速度制御を実施した。その原理を図1によって説明する。
図1は、横軸に時間(sec)を縦軸にサーボモーターによる出力トルク実測値を表し、キャップが回り始めるまでの区間(以後、初動トルク区間又は第1区間という)における出力トルク曲線を表している。本発明ではサーボモーターの出力トルク曲線を素手開栓時の場合に近づけるため、予めトルク上昇率と速度を制限することによって、トルク曲線を制御していることを特徴としている。
【0016】
そのため、まずサーボモーターのトルク値が0からある一定のトルク値Cg1に達するまでを第1段階として、その間の単位時間当たりの出力トルク制限増加値tq1を設定し、トルク値Cg1に達した以降を第2段階としてその段階の出力トルク制限増加値tq2を第1段階の出力トルク制限増加値tq1より低く設定する。
従って、第1段階では設定された定数に従ってタイマーが発するクロックパルスによるタイミングで出力トルク値を増加することによって、図1に示す第1段階のトルク曲線イが得られ、設定トルク値Cg1に達したら、出力トルク制限増加値tq2に従って増加制限値の範囲内で出力トルク値を増加するが、この段階は実測値が1stトルクに達するまで続けられる。このようにしてトルク曲線ロが得られる。トルクセンサで検出される実測トルク値が1stトルクに達したか否かの判断は、実測値を単位時間ごとに更新していく過程で、現在の実測値Qと前回のピークトルク値Q0との差が所定値Cg2以上となった場合は前回ピーク値Q0を1stトルク値と判断し、第3段階(第2区間)に移行するようにする。前述したように1stトルク発生後にキャップが回り始めると急激に開栓トルクは低下し、それが装置の回転機構の遊びにより衝撃を受けることにより、トルクセンサがこの衝撃をトルクとして検出することを防ぐために、本発明では1stトルク後のモーターの高速回転を阻止するために、予め1stトルク後(即ち、第3段階以降)の第2回転速度V2を第1回転速度V1より低く設定して、速度制御を行なうようになっている。
【0017】
以上のように、本発明では、設定値として、第1区間終了までの第1回転速度V1、第2区間以降の第2回転速度V2、第1段階出力トルク制限増加値tq1、第2段階出力トルク制限増加値tq2、第1→第2段階切替トルク値Cg1、第2→第3段階切替トルク変化値Cg2を予め、本体制御部に入力し、これら設定値に基づいて図5に示すトルク曲線を描くプログラムにしたがって、サーボモーターのトルク制御及び速度制御を行うことにより、素手による開栓とほぼ同様な開栓を再現することができ、正確な1stトルクを測定することができるようにしたものである。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る開栓トルク検査測定装置を図面を基に詳細に説明する。
図2は、この発明のトルク測定装置のシステム構成図である。本実施形態の開栓トルク検査測定装置は、本体機械部1、本体制御部2、信号解析部3から構成されている。本体機械部1は、図3及び図4に全体構成が示されているように、ベース11に立設した一対の支柱12に本体ヘッド13がスライドユニット14を介して上下動可能に設けられている。スライドユニット14は、支柱12にスライド自在に嵌合しているスライドユニット本体部15と、該ユニット本体部を容器の高さに応じて所定高さに位置決め駆動する本体昇降ハンドル16と、ユニット本体部に設けられた計測時に本体ヘッドを昇降させる本体ヘッド昇降エアーシリンダ17からなり、該本体ヘッド昇降エアーシリンダ17に本体ヘッド13が連結されている。また、スライドユニット本体部には、後述するキャップチャックの作動用エアーを供給制御するエアー制御ユニット20が固定されている。なお、図中23は、エアー制御ユニット20へのエアー配管を収納して案内する配管ガイドであり、24はスライドユニット14を支柱に対して固定するための固定ノブである。
【0019】
本体ヘッド13は、昇降エアーシリンダ17に連結されたドライバブラケット30に支持され、エンコーダ28付きのサーボモーター31の出力軸に減速機32を介して連結されたスピンドル33が前記ドライバブラケット30に支持されている軸受34によって回転自在に支持されて、その端部にキャップチャックユニット40が装着されている。そして、スピンドル33にはトルクセンサ35が設けられ、スピンドルの回転トルクを常時検出できるようになっている。
【0020】
一方、ベ−ス11には、ボトルをクランプする容器クランパ37が載置されて、開栓トルク測定時にボトルを把持して回転しないように保持するようになっている。該容器クランパ37は、本実施形態ではエアー圧で保持するように本体制御部によってエアーバルブの開閉が制御される。
【0021】
次に、以上の本体機械部を制御するための本体制御部2及び信号解析部3の構成について説明する。
本体制御部2は、I/Oインターフェースユニット50、AD変換ユニット51、プログラマブルコントローラCPUユニット52、モーションコントロールユニット53、サーボモータードライバ54及びエアーバルブ55とから構成されている。
【0022】
プログラマブルコントローラCPUユニット52は、装置の動作部全体をコントロールするものであり、容器の把持用のエアーシリンダを駆動するエアーバルブ55のON/OFF、本体ヘッド昇降用エアーシリンダ17のON/OFF、キャップチャックユニット40用のエアーシリンダのON/OFF、後述するトルクデータの取得タイミングの制御等を行うものである。プログラマブルコントローラCPUユニット52は、開栓トルク検査を素手開栓の状態に近づけるための開栓トルク曲線を創出するための制御プログラム格納するメモリとデータを格納するデータメモリ、及び中央演算処理装置CPUを備え、データメモリには後述するように、パソコンやメモリカードユニット等によりI/Oインターフェースユニット50を介して、開栓トルク検査において素手開栓の状態に近づけるための出力トルク曲線を創出するための制御設定値としての、第1回転速度V1、第2回転速度V2、第1段階出力トルク制限増加値tq1、第2段階出力制限増加値tq2、第1→第2段階切替トルク値Cg1、第2→第3段階切替トルク値Cg2、制限トルク変更クロックパルス間隔Tm1が予め設定できるようになっている。
【0023】
モーションコントロールユニット53は、プログラマブルコントローラCPUユニット52からの制御信号に基づきサーボモーターを制御するための速度制御/トルク制限信号をサーボモータードライバに送るものである。本発明において、特にサーボモータードライバへの指令をモーションコントロールユニット53を通すことによって、サーボモーターのON/OFF制御だけでなく、位置決めモード・速度制御モード等の動作モードの切替を容易に行えたり、動作途中で速度制御中のトルク制限値をCPU内に設定しているメモリの数値を変更するだけで、モーションコントローラがドライバに指令を送り、サーボモーターに流す電流値を変更することによって、後述するようにトルク曲線の設定が可能となる。
【0024】
信号機解析部3は、トルクセンサ等からの入力や本体制御部から入出力を演算処理する中央演算処理装置CPU60、演算結果等を表示するディスプレイ61、プリンタユニット62、メモリカードユニット63を有している。これら機器との信号がインターフェース64及び本体制御部3のI/Oインターフェースユニット50を介して本体制御部に入出力される。同時にトルクセンサ35からのアナログ信号をアンプ56で増幅してインターフェース64を介して取り込み、本体制御部のAD変換ユニット51に増幅後トルクアナログ信号を送る機能を有する。
【0025】
以上のように構成された開栓トルク検査測定装置において、トルク計測における1stトルク区間における出力トルク測定波形制御方法を図5に示すフローチャートにより詳細に説明する。
スタートスイッチをONする(ステップS0、以下各ステップを単にSと数字で表示する。)と本体制御部2から本体メカ制御信号によりキャップチャック40が下降してキャップを予め設定してあるエアー圧でキャップを把握すると共に、サーボモーターの現在位置をゼロにリセットする(S1)。そして、サーボモーターにサーボモータードライバ54から第1回転速度V1を与える電流値が印加されて第1段階が開始される。開始時の出力トルク制限値Tq=0が与えられる(S2)。クロックパルスTm1信号により単位時間ごとに出力トルク制限値Tqに第1段階出力トルク制限値tq1が計算式Tq=Tq’+tq1により、TqがTm1信号ごとにtq1が逐次加算されて更新される(S3〜S4)。なお、Tq’は更新直前における出力トルク制限値である。それは、出力トルク制限値Tqが第1段階から第2段階切替トルク値Cg1に達するまで繰り返され、Tq≧Cg1になると第1段階終了と判断し第2段階に移る(S5)。
【0026】
第2段階では出力トルク制限増加値をtq1からtq2に変更される(S6)。図5に示す実施形態ではtq1=80N・cm/secで、tq2=20N・cm/secに設定されており、tq2はtq1の約1/4である。その結果、出力トルク曲線は第1段階に達するまでは大きな傾きで変化し、第1段階に達した後は緩やかな勾配となり、素手で開栓する場合と同様に、初期は制限値の範囲内でトルクを上げて作業時間を短縮し、第2段階に移るとトルク増加量を第1段階よりも減らしている。また、プログラマブルコントローラCPUユニットにデータとして逐次格納されるトルクセンサからの発生トルクを読み出し、そのときのトルクデータQ(即ち、第1段階終了時のトルク値)をピークトルク値Q0として記憶する(以上S6)。そして、クロックパルスTm1毎に出力トルク制限値をTq=Tq’+tq2に変更する(S7)。次いで、トルクセンサからの発生トルクデータQを読み込み、発生トルクデータQと記憶しているピークトルク値Q0と比較してQ≧Q0ならば、Q0=Qとしてピークトルク値を更新し(S9〜S10)、ステップS7に戻ってQ<Q0になるまで(即ち、発生トルクが上昇している間)繰り返す。Q<Q0になると、トルク変化分[Q0−Q]を予め設定してある第2段から第3段階切替トルク変化値Cg2と比較して(S11)、Q0−Q<Cg2ならば再びステップS7に戻って、Q0−Q≧Cg2になるまで繰り返す。Q0−Q≧Cg2となると第2段階から第3段階に移り、回転速度が第2回転速度V2に切替制御されると共に、出力トルク制限値Tqを固定して第3段階の測定を行う(S12)。このとき、第2回転速度V2は、第1回転速度V1よりも低い値であること(V1>V2)が好ましい。従って、キャップが回り初めのときの速度上昇がV2の範囲に押さえられ、急激なトルク低下によるモーターの回転余力で回転軸が高速回転して遊びの終点で大きな衝撃を受けて1stトルクを実際よりも高く検出されるということをなくすことができる。
【0027】
図6は、以上のような1stトルク領域波形領域プログラムに従って、1stトルク領域を測定したときの実際の1stトルク領域のトルク波形を示している。該波形は、V1=0.5rpm、V2=0.4rpm、tq1=80N・cm/sec、tq2=20N・cm/sec、Cg1=80N・cm、Cg2=20N・cmに設定した場合の測定波形を示している。該図6に示すように本発明の装置によれば、トルク測定波形は素手による開栓と略同様な波形曲線となっていることがわかる。従って、本装置によれば、実際素手で開栓する場合と同様な状態で開栓トルクが測定できることがわかる。
【0028】
図7は、前述した1stトルクの、機械での測定において素手での開栓と異なる挙動(早い段階で高い値を示す)を示す前述した(3)(4)の要因を解決するために創案されたキャップチャックの実施形態を示している。
素手開栓では、図9に示すようにキャップを指で2方向から把持しているが、従来の自動測定装置におけるキャップチャック70は、図10に示すように、3分割した金属製の把持子71で略全周を把持して開栓している。その把持の相違が、1stトルクの開栓挙動に影響していると推測して、従来のキャップチャックの3ピースのうち1個を除去して2ピースの把持子を対向配置して2方向から把持して、両者の1stトルク値を比較した。その結果、3方向把持が139N・cmであったのに対し、2方向把持は147N・cmでその値は殆ど変わらなかった。そのため、単純な2方向把持では解決できない要因をさらに分析した。
表1は、各々の把持方法における1stトルク値、その標準偏差及びリーク角度の平均値を示す。なお、平均値は測定本数24本の平均である。
【0029】
指での把持は、指の関節や骨の硬い部位が強く押し当てられるため、キャップ側面に加わる圧力は均一ではなく、比較的狭い範囲に強い力が加わっていると考えられる。そこで、接触部位が狭くなるように、図7に示す円柱状のゴムからなる線接触の把持子61を3箇所に配置したキャップチャック60を創作して、24本について1stトルク値を測定した。その結果、表1に示す結果が得られた。このことから、把持子をゴム製の狭面にすることによって、1stトルク値は大幅に低下し、素手に近づいた。従って、狭い面積で把持する効果があることが確認できた。
【0030】
【表1】

【0031】
しかしながら、まだ素手の平均値より若干高く、バラツキが大きい。また、摩擦抵抗の減少により、スリップ防止のため強い把持力が必要となり、容器が変形し、リーク(シールブレイク)の角度が通常より小さく異常な値を示した。そこで、その問題を解決するため、上記ゴムを通常の弾性ゴムに代えて低弾性ゴムを採用することを着想して実験を行った。その結果、表1の下段に示すように1stトルク値が低下し、バラツキも少なく、リーク角度も素手の場合と略同様な結果が得られた。即ち、低弾性ゴムに変更することによって、突発的な高トルクが発生しにくく、値のバラツキが小さくなる効果が得られた。その原因は、低弾性ゴムは歪量に対する復元の力とスピードの変化が小さいため、人間の肌の挙動に類似した働きを示すものと考えられる。また、低弾性ゴムは、キャップに対して摩擦抵抗が非常に大きいため把持力を小さくすることができる。このため、キャップとボトルの把持力を適正値にコントロールできるので、キャップとボトルが異常変形によるトルク値のバラツキを防止できると考えられる。
【0032】
図8は、他の実施形態にかかるキャップチャック65を示し、この実施形態では片側の接触子は前記実施形態と同様に低弾性ゴムローラ66を採用し、対向する側の接触子67は低弾性ゴムで製作されているが面接触の接触子67を採用している。この場合も同様な効果が認められた。しかしながら、両側とも広い接触面積を持つ把持子を採用した場合は、材質が低弾性ゴムを採用しても約20N・cm程度高めのトルクが得られた。従って、以上の結果から、素手の場合と同様な挙動による開栓トルクを得るには、キャップチャックは少なくとも片側の把持子は低接触面積を有するものとし、低弾性ゴムの材質を採用することで解決できることが分かった。
【0033】
低弾性ゴムとは、物性・耐久性は一般の弾性ゴムと同等であっても、外力を受けても殆ど反発せずにエネルギーを吸収し、衝撃・振動吸収性に優れた特性を有するゴムをいい、たとえば市販品としてハネナイト(登録商標)等が知られている。上記実験ではハネナイト(登録商標)でキャップチャックを構成して行ったが、必ずしもそれに限るものでなく、制振材に採用されるエチレンプロピレン・ジエンゴム等の低弾性ゴムも採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の開栓トルク検査測定装置は、素手で開栓する場合のトルク曲線を再現して素手での開栓に近い状態で1stトルクを自動測定できるので、ネジキャップの開栓トルク検査測定装置として利用可能性が高く、容器及びキャップの材質を問わないが、特に合成樹脂製キャップの開栓トルクの測定に有効である。
【符号の説明】
【0035】
1 本体機械部 2 本体制御部
3 信号解析部 11 ベース
12 支柱 13 本体ヘッド
14 スライドユニット 15 スライドユニット本体部
16 本体昇降ハンドル 17 本体ヘッド昇降エアーシリンダ
20 エアー制御ユニット 23 配管ユニット
24 固定ノブ 28 エンコーダ
30 ドライバブラケット 31 サーボモーター
32 減速機 33 スピンドル
34 軸受 35 トルクセンサ
37 容器クランパ 40 キャップチャックユニット
50 I/Oインターフェースユニット 51 AD変換ユニット
52 プログラマブルコントローラCPUユニット
53 モーションコントロールユニット
54 サーボモータードライバ 55 エアーバルブ
56 アンプ 60、65 キャップチャック
61、66 線接触の把持子 67 広接触の把持子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジキャップが装着された容器を固定するクランプ手段と、前記ネジキャップを把持するキャップチャックと、該キャップチャックを回転駆動するモーターと、キャップ開栓時のトルクを検出するトルク検出器を有する開栓トルク検査装置であって、前記モーターがサーボモーターであり、キャップ開栓に際してネジキャップとボトルの摩擦抵抗を上回る回転力が発生するまでの初動トルク発生区間を、予め設定した単位時間当たりのモーター出力トルク制限増加値に従ってトルク増加値を制御することによって、モーター作動開始直後のモーター出力トルクの急激な増加を抑制するように、前記サーボモーターを制御する本体制御部を有することを特徴とする巻締容器の開栓トルク検査測定装置。
【請求項2】
前記初動トルク発生区間を2段階に分け、第1段階での前記モーター出力トルク制限増加値をtq1とし、第2段階での前記モーター出力トルク制限増加値をtq2とするとtq1>tq2の関係にあるようにした請求項1に記載の開栓トルク検査測定装置。
【請求項3】
前記初動トルク発生区間の終了と同時に前記サーボモーターの回転を予め設定した一定速度に制御するようにしてなる請求項1又は2に記載の開栓トルク検査測定装置。
【請求項4】
前記キャップチャックが、キャップ外周壁と軸方向に線接触又は周方向角度50゜以内の接触幅を有する2以上の把持子を有してなる請求項1又は2に記載の開栓トルク検査装置。
【請求項5】
前記把持子が低弾性ゴムで構成されている請求項4に記載の開栓トルク検査装置。
【請求項6】
前記把持子は、立方体又は円柱体に形成されている請求項4又は5に記載の開栓トルク検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−249623(P2010−249623A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98616(P2009−98616)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【出願人】(391026597)京都技研工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】