開閉部材のヒンジ構造
【課題】別部品等を設けることなく、簡単な構造で開閉部材の閉状態のロック(維持)が可能な開閉部材のヒンジ構造を提供する。
【解決手段】蓋部材2に固定されるヒンジ片11と開口部5側に固定されるヒンジ片12を薄肉部13で連結して、一体成形したインテグラルヒンジ10において、ヒンジ片12の開閉内側の面に設けられた係合凹部15aと、蓋部材2が閉時に係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cに係合される係合突起部14aと、蓋部材2の開閉時に係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cを乗り越えるように、係合突起部14a側を変位させる弾性変形部とを有し、当該弾性変形部を、一方の端部がヒンジ片11に固定され、他方の端部側が変位可能なU字形状をなすU字部材14とし、係合突起部14aをU字部材14の他方の端部側に設けた。
【解決手段】蓋部材2に固定されるヒンジ片11と開口部5側に固定されるヒンジ片12を薄肉部13で連結して、一体成形したインテグラルヒンジ10において、ヒンジ片12の開閉内側の面に設けられた係合凹部15aと、蓋部材2が閉時に係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cに係合される係合突起部14aと、蓋部材2の開閉時に係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cを乗り越えるように、係合突起部14a側を変位させる弾性変形部とを有し、当該弾性変形部を、一方の端部がヒンジ片11に固定され、他方の端部側が変位可能なU字形状をなすU字部材14とし、係合突起部14aをU字部材14の他方の端部側に設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のコンソールボックス等の開閉部材に用いるヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコンソールボックス等に設けられる蓋部材(開閉部材)では、2つのヒンジ片間を薄肉部で連結して一体成形し、薄肉部を折り曲げて使用することで蓋部材を開閉可能とした樹脂製(例えば、ポリプロピレン等)のヒンジ部材(インテグラルヒンジ)を採用したものが知られている。このようなインテグラルヒンジは、樹脂による一体成形であるため、従来の金属性の蝶番タイプのものに比べて部品点数やコストを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−084643号公報
【特許文献2】特開平07−305557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インテグラルヒンジは、製造上の理由により、成形時に開状態(薄肉部が折り曲げられていない状態)で成形されている。そのため、インテグラルヒンジをコンソールボックス等の蓋部材(開閉部材)のヒンジとして使用する場合、インテグラルヒンジを薄肉部で曲げて閉状態にしようとすると、開状態へ戻ろうとする反力が生じて、閉状態を維持することができなかった。従って、閉状態を維持するためのロック機構が必要となる。ロック機構としては、ロックレバー、ラッチ機構、マグネット等の別部品を、例えば、コンソールボックスの蓋部材の先端に設ける構成としている。
【0005】
又、別部品となるロック機構を設けないで、例えば、コンソールボックスの蓋部材の自重で閉状態を維持する場合、インテグラルヒンジの反力を抑えるため、その薄肉部分の肉厚を減少させて対応している。その場合、薄肉部分の耐久性能が落ちるため、インテグラルヒンジが折損(破損)する可能性が高まる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、別部品等を設けたりすることなく、簡単な構造で開閉部材の閉状態でのロック(維持)が可能な開閉部材のヒンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
開口部を開閉する開閉部材に固定される第1のヒンジ片と、前記開口部側に固定される第2のヒンジ片と、前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片との間で薄肉に形成されて前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片とを連結する薄肉部とが樹脂により一体成形された開閉部材のヒンジ構造であって、
前記第2のヒンジ片の開閉内側の面に設けられた係合凹部と、
前記開閉部材の開閉内側に設けられ、前記開閉部材が閉じられたときに前記係合凹部の前記薄肉部側の縁部に係合される係合突起部と、
前記係合突起部側及び前記係合凹部側の少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の開閉時に前記係合突起部の先端が前記係合凹部の前記薄肉部側の前記縁部を乗り越えるように、前記係合突起部及び前記係合凹部の前記縁部の少なくとも一方を変位させる弾性変形部とを備え、
前記開閉部材が閉じられたときに、前記係合凹部と前記係合突起部とを係合することで、前記開閉部材が閉状態に維持されることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、一方の端部が前記第1のヒンジ片に固定され、他方の端部側が変位可能とされたU字形状を成し、前記第1のヒンジ片の開閉内側の面から一体で突設されたU字部材とし、
前記係合突起部を、前記U字部材の前記他方の端部側に設けたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、前記係合凹部の前記縁部と前記薄肉部との間に形成したたわみ溝としたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第3の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記開閉部材は、前記第1のヒンジ片の開閉外側に配置されるアウタ部材と開閉内側に配置されるインナ部材とから構成されており、
前記係合突起部を、前記インナ部材の端部に設けたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記第1のヒンジ片の開閉外側において前記開閉部材の端部から延設され、前記開閉部材の全開時に前記第2のヒンジ片に当接して開方向への移動を規制する当接部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、別部品を設けたりすることなく、簡単な構造で開閉部材の閉状態でのロックが可能な開閉部材のヒンジ構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の一例(実施例1)を示す斜視図である。
【図2】図1に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図3】図2に示したコンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、開状態における図である。
【図4】図2に示したコンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【図5】(a)は、図3に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の更なる拡大図である。
【図6】図4に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図7】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の他の一例(実施例2)を示す斜視図である。
【図8】図7に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図9】(a)は、図8に示したコンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、開状態における図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図10】図8に示したコンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【図11】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の他の一例(実施例3)を示す斜視図である。
【図12】図11に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図13】(a)は、図12に示したコンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、開状態における図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図14】図12に示したコンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態を図1〜図14を参照して説明する。なお、ここでは、本発明に係る開閉部材のヒンジ構造を車両のコンソールボックスに適用し、当該コンソールボックスを例にとって説明を行うが、本発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、ヒンジを使用し、かつ、ロック機能が必要なものであれば、他のもの、例えば、インテリアコンパートメントドア等にも適用可能である。
【0015】
(実施例1)
図1は、本発明における実施例1の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図2は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図3、図4は、当該コンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、図3は、開状態における図、図4は、閉状態における図である。又、図5(a)、図6は、各々、図3、図4に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図であり、図5(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の更なる拡大図である。なお、参考のため、図2におけるA−A線を、図1にも図示している。
【0016】
本実施例のインテグラルヒンジ10(開閉部材のヒンジ構造)は、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片11(第1のヒンジ片)とヒンジ片12(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部13で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部13の柔軟性を利用し、薄肉部13を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片11、12を相対的に回動(開閉)可能としている。
【0017】
そして、本実施例のインテグラルヒンジ10においては、ヒンジ片11、12を閉じた状態に維持するためのロック機構を設けている。
【0018】
ロック機構は、爪嵌合構造からなり、具体的には、ヒンジ片11の開閉(回動)内側の面に、爪部分となる係合突起部14aを有するU字形状のU字部材14(弾性変形部)を設け、ヒンジ片12の開閉(回動)内側の面に、係合突起部14aを係合する係合凹部15aを有する嵌合部15を設けている。
【0019】
U字部材14は、ヒンジ片11の開閉内側の面から一体で突設されており、一方の端部がヒンジ片11に立設された状態で固定され、他方の端部側(端部14b側)は、U字部材14自体の弾性変形により変位可能な構成となっている。この端部14b側であって、薄肉部13側の方に三角形断面の係合突起部14aが設けられている。
【0020】
嵌合部15は、薄肉部13に対し、U字部材14とは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部15aは、ヒンジ片11、12を閉じたときに係合突起部14aと係合する位置に配置されている。このとき、係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cは、係合突起部14aの先端14cの開閉時の軌跡T(円弧状)より外側であって、係合突起部14aの先端14cが変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部15aは、ヒンジ片12に貫通孔を設けることで形成しているが、後述する実施例2の係合凹部25aのように、溝形状であってもよい。
【0021】
従って、ヒンジ片11、12の開閉時には、係合突起部14aの先端14cは、基本的には、軌跡T上を移動することになるが、係合凹部15aの縁部15cの部分では、U字部材14の弾性変形により、つまり、係合突起部14aの先端14cの変位により、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて移動する。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部15a(縁部15c)と係合突起部14a(先端14c)が係合されて、蓋部材2が閉状態に維持されることになる。
【0022】
例えば、閉時には、U字部材14のU字形状を閉じるように弾性変形させ、係合突起部14aの先端14cの位置を変位させることにより、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて、係合突起部14aが係合凹部15aに嵌合することになる。そして、係合突起部14aが係合凹部15aに係合した状態では、係合突起部14aが係合凹部15aから外れようとすると、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えるための力、つまり、U字部材14を弾性変形させる力が必要となるので、係止部15bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。なお、U字部材14の端部14bは、係合突起部14aが係合凹部15aの奥に入り込み過ぎないようにするストッパの機能を果たしている。
【0023】
一方、開時には、U字部材14を弾性変形させる力を加えて、U字部材14のU字形状を開くように弾性変形させ、係合突起部14aの先端14cの位置を変位させることにより、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて、係合突起部14aが係合凹部15aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、U字部材14側をたわむようにしているので、係合突起部14aの座面14d、係合凹部15aの座面15dの損傷を抑えることができる。
【0024】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるU字部材14を係合突起部14a側に設けているが、後述する実施例2におけるたわみ溝25bのように、係合凹部15aの縁部15cと薄肉部13との間にたわみ溝を設け、係合凹部15a側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0025】
又、本実施例においては、U字部材14、嵌合部15の組を、ヒンジ片11、12の回動(開閉)方向に垂直な方向(以降、幅方向と呼ぶ。)の中央の位置に1組設けているが、後述する実施例2のインテグラルヒンジ20のように、幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよい。又、薄肉部13の反力が強い場合には、組数を増やすだけでなく、薄肉部13からできるだけ離れた位置にU字部材14、嵌合部15を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0026】
ここで、上述したインテグラルヒンジ10の適用例を説明する。インテグラルヒンジ10には、ヒンジ片11、12各々を取り付けるための貫通孔16、17が設けられている。そして、インテグラルヒンジ10は、図2に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2に取り付けられる。
【0027】
蓋部材2は、インナ部材4とアウタ部材3からなり、図3、図4に示すように、ヒンジ片11は、貫通孔16を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片11の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片11の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片12は、貫通孔17を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0028】
このアウタ部材3の薄肉部13側の端部には、図5に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3a(当接部)が設けられている。具体的には、蓋部材2の全開状態において、アウタ部材3の端部を延設してインテグラルヒンジ10のヒンジ片12側に当接する形状とすることで、蓋部材2の過開きを防止している。過開きの防止は、インテグラルヒンジ10の薄肉部13への負荷も低減し、薄肉部13の耐久性の維持、向上に寄与する。
【0029】
又、インナ部材4には、アウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだヒンジ片11からU字部材14を露出するため、切欠部4aが設けられている(図2参照)。なお、ヒンジ片11をアウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだ構造とせず、インナ部材4の外面上に取り付ける場合には、このような切欠部4aを設ける必要は無い。
【0030】
ここで、図5、図6を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ10の開閉を説明する。
【0031】
図5に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ10のヒンジ片12側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0032】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部14aの先端14cは、図5中に示す軌跡T上を移動するが、U字部材14のU字形状が閉じるようにたわんで、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越え、図6に示すように、係合突起部14aが係合凹部15aに係合し、係合突起部14aが係止部15bに係止される。
【0033】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部14aが係止部15bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、U字部材14のU字形状が開くようにたわむので、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越え、係合突起部14aを係合凹部15aから開放可能となる。
【0034】
上述したように、本実施例では、爪嵌合構造のロック機構とし、U字部材14にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。又、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロークが無くても、そのかかりが良いため、閉まり不良はない。
【0035】
(実施例2)
図7は、本発明における実施例2の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図8は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図9(a)、(b)、図10は、当該コンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、図9(a)は、開状態における図、(b)は、閉状態直前における拡大図、図10は、閉状態における図である。なお、参考のため、図8におけるB−B線を、図7にも図示している。又、図8に示すコンソールボックスは、一部を除き、実施例1(図2)で示したコンソールボックスと同等の構成であるので、以降の説明では、同じ符号を付して説明を行う。
【0036】
本実施例のインテグラルヒンジ20(開閉部材のヒンジ構造)も、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片21(第1のヒンジ片)とヒンジ片22(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部23で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部23の柔軟性を利用し、薄肉部23を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片21、22を相対的に回動(開閉)可能としている。
【0037】
そして、本実施例においても、実施例1と同様、ヒンジ片21、22を閉じた状態に維持するため、爪嵌合構造からなるロック機構を設けている。
【0038】
具体的には、ヒンジ片21の開閉内側の面に、爪部分となる係合突起部24aを有して突出形成された台形断面形状の差込部24を設け、ヒンジ片22の開閉内側の面に、係合突起部24aが係合する係合凹部25aを有する嵌合部25を設けている。
【0039】
差込部24は、その端部の薄肉部13側の方に三角形断面となる係合突起部24aが設けられている。なお、差込部24は、実施例1で示したU字部材14とは異なり、積極的に弾性変形可能な構造とはしていない。
【0040】
嵌合部25は、薄肉部23に対し、差込部24とは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部25aは、ヒンジ片21、22を閉じたときに係合突起部24aと係合する位置に配置されている。そして、嵌合部25の係止部25bであって、係合凹部25aの薄肉部23側の縁部25cと薄肉部23との間に、たわみ溝28(弾性変形部)が設けられている。このたわみ溝28により、係合凹部25aの縁部25cが、たわみ溝28が開く方向と閉じる方向(薄肉部23側)とで変位可能とされている。又、係合凹部25aの縁部25cは、係合突起部24aの先端24bの開閉時の軌跡Tより外側であって、係合凹部25aの縁部25cが軌跡Tの外側から内側へ変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部25aは、ヒンジ片22に略三角状の溝を設けることで形成しているが、実施例1で示した係合凹部15aのように、貫通孔であってもよい。
【0041】
従って、ヒンジ片21、22の開閉時には、係合突起部24aの先端24bは、軌跡T上を移動することになるが、たわみ溝28の弾性変形により、つまり、係合凹部25aの縁部25cの変位により、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えることができる。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部25a(縁部25c)と係合突起部24a(先端24b)が係合されて、蓋部材2が閉状態に維持される。
【0042】
例えば、閉時には、たわみ溝28を開くように弾性変形させ、係合凹部25aの縁部25cの位置を変位させることにより、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えて、係合突起部24aが係合凹部25aに係合することになる。そして、係合突起部24aが係合凹部25aに係合した状態では、係合突起部24aが係合凹部25aから外れようとすると、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えるための力、つまり、たわみ溝28を弾性変形させる力が必要となるので、係止部25bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。
【0043】
一方、開時には、係合凹部25aの縁部25cに薄肉部23側への力を加えて、たわみ溝28を閉じるように弾性変形させ、係合凹部25aの縁部25cの位置を変位させることにより、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えて、係合突起部24aが係合凹部25aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、たわみ溝28をたわむようにしているので、係合突起部24aの座面24c、係合凹部25aの座面25dの損傷を抑えることができる。
【0044】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるたわみ溝28を嵌合部25側に設けているが、実施例1に示したU字部材14のように、差込部24側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0045】
又、本実施例においては、差込部24、嵌合部25の組を、インテグラルヒンジ20の幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けているが、前述した実施例1のインテグラルヒンジ10のように、幅方向の中央の位置に1組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよいし、又、後述する実施例3のインテグラルヒンジ30のように、幅方向の全長に渡って1組設けてもよい。又、薄肉部23の反力が強い場合には、組数や幅を増やすだけでなく、薄肉部23からできるだけ離れた位置に差込部24、嵌合部25を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0046】
ここで、上述したインテグラルヒンジ20の適用例を説明する。インテグラルヒンジ20にも、ヒンジ片21、22各々を取り付けるための貫通孔26、27が設けられている。そして、インテグラルヒンジ20は、図8に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2を開閉可能に取り付けられる。
【0047】
具体的には、図9、図10に示すように、ヒンジ片21は、貫通孔26を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片21の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片21の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片22は、貫通孔27を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0048】
又、本実施例においても、図9に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3aがアウタ部材3の端部を延設して設けられている。加えて、インナ部材4にも、アウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだヒンジ片21から差込部24を露出するため、切欠部4bが設けられている(図8参照)。
【0049】
ここで、図9、図10を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ20の開閉を説明する。
【0050】
図9に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ20のヒンジ片22側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0051】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部24aの先端24bは、図9中に示す軌跡T上を移動するが、たわみ溝28が開くようにたわんで、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越え、図10に示すように、係合突起部24aが係合凹部25aに係合し、係合突起部24aが係止部25bに係止される。
【0052】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部24aが係止部25bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、たわみ溝28が閉じるようにたわむので、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越え、係合突起部24aを係合凹部25aから開放可能となる。
【0053】
上述したように、本実施例では、実施例1同様、爪嵌合構造のロック機構とし、たわみ溝28にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。又、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロ−クがあると、閉まり不良がより抑えられる。
【0054】
(実施例3)
図11は、本発明における実施例3の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図12は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図13(a)、(b)、図14は、当該コンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、図13(a)は、開状態における図、図13(b)は、閉状態直前における拡大図、図14は、閉状態における図である。なお、参考のため、図12におけるC−C線を、図11にも図示している。又、図12に示すコンソールボックスは、一部を除き、実施例1(図2)で示したコンソールボックスと同等の構成であるので、以降の説明では、同じ符号を付して説明を行う。
【0055】
本実施例のインテグラルヒンジ30(開閉部材のヒンジ構造)も、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片31(第1のヒンジ片)とヒンジ片32(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部33で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部33の柔軟性を利用し、薄肉部33を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片31、32を回動(開閉)可能としている。
【0056】
そして、本実施例においても、実施例1、2と同様、ヒンジ片31、32を閉じた状態に維持するため、爪嵌合構造からなるロック機構を設けている。
【0057】
具体的には、ヒンジ片31の開閉内側の面に取り付けたインナ部材4の端部に、爪部分となる係合突起部4cを形成し、ヒンジ片32の開閉内側の面に、係合突起部4cを係合する係合凹部35aを有する嵌合部35を設けている。
【0058】
インナ部材4は、その端部の薄肉部13側の方に三角形断面となる係合突起部4cが設けられている。なお、インナ部材4の端部は、実施例1で示したU字部材14とは異なり、積極的に弾性変形可能な構造とはしていない。つまり、本実施例では、実施例2でインテグラルヒンジ20側に設けていた差込部24に替わり、インナ部材4を利用し、その端部に係合突起部4cを設けた構成である。
【0059】
嵌合部35は、薄肉部33に対し、インナ部材4の係合突起部4cとは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部35aは、ヒンジ片31、32を閉じたときに係合突起部4cと係合する位置に配置されている。そして、実施例2同様、嵌合部35の係止部35bであって、係合凹部35aの薄肉部33側の縁部35cと薄肉部33との間に、たわみ溝38(弾性変形部)が設けられている。このたわみ溝38により、係合凹部35aの縁部35cが、たわみ溝38が開く方向と閉じる方向(薄肉部33側)とで変位可能とされている。又、係合凹部35aの縁部35cは、係合突起部4cの先端4dの開閉時の軌跡Tより外側であって、係合凹部35aの縁部35cが軌跡Tの外側から内側へ変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部35aは、ヒンジ片32に三角状の溝を設けることで形成しているが、実施例1で示した係合凹部15aのように、貫通孔であってもよい。
【0060】
従って、ヒンジ片31、32の開閉時には、係合突起部4cの先端4dは、軌跡T上を移動することになるが、たわみ溝38の弾性変形により、つまり、係合凹部35aの縁部35cの変位により、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えることができる。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部35a(縁部35c)と係合突起部4cが係合されて、蓋部材2が閉状態に維持される。
【0061】
例えば、閉時には、たわみ溝38を開くように弾性変形させ、係合凹部35aの縁部35cの位置を変位させることにより、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えて、係合突起部4cが係合凹部35aに係合することになる。そして、係合突起部4cが係合凹部35aに係合した状態では、係合突起部4cが係合凹部35aから外れようとすると、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えるための力、つまり、たわみ溝38を弾性変形させる力が必要となるので、係止部35bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。
【0062】
一方、開時には、係合凹部35aの縁部35cに薄肉部33側への力を加えて、たわみ溝38を閉じるように弾性変形させ、係合凹部35aの縁部35cの位置を変位させることにより、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えて、係合突起部4cが係合凹部35aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、たわみ溝38をたわむようにしているので、係合突起部4cの座面4e、係合凹部35aの座面35dの損傷を抑えることができる。
【0063】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるたわみ溝38を嵌合部35(係止部35b)側に設けているが、実施例1に示したU字部材14のように、インナ部材4の端部側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0064】
又、本実施例においては、係合突起部4c、嵌合部35の組を、インテグラルヒンジ30の幅方向の全長に渡って1組設けているが、前述した実施例1のインテグラルヒンジ10のように、幅方向の中央の位置に1組設けてもよいし、前述した実施例2のインテグラルヒンジ20のように、幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよい。又、薄肉部33の反力が強い場合には、組数や幅を増やすだけでなく、薄肉部33からできるだけ離れた位置に係合突起部4c、嵌合部35を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0065】
ここで、上述したインテグラルヒンジ30の適用例を説明する。インテグラルヒンジ30にも、ヒンジ片31、32各々を取り付けるための貫通孔36、37が設けられている。そして、インテグラルヒンジ30は、図12に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2を開閉可能に取り付けられる。
【0066】
具体的には、図13、図14に示すように、ヒンジ片31は、貫通孔36を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片31の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片31の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片32は、貫通孔37を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0067】
又、本実施例においても、図13に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3aがアウタ部材3の端部を延設して設けられている。なお、インナ部材4は、その端部自身が係合突起部4cに形成されているので、実施例1、2のように、切欠部を形成する必要は無い。
【0068】
ここで、図13、図14を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ30の開閉を説明する。
【0069】
図13に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ30のヒンジ片32側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0070】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部4cの先端4dは、図13中に示す軌跡T上を移動するが、たわみ溝38が開くようにたわんで、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越え、図14に示すように、係合突起部4cが係合凹部35aに係合し、係合突起部4cが係止部35bに係止される。
【0071】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部4cが係止部35bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、たわみ溝38が閉じるようにたわむので、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越え、係合突起部4cを係合凹部35aから開放可能となる。
【0072】
上述したように、本実施例では、爪嵌合構造のロック機構とし、たわみ溝38にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。加えて、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロ−クがあると、閉まり不良がより抑えられる。又、実施例1、2と比較して、見栄えが良いという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、車両のコンソールボックス等に好適なものであるが、ヒンジを使用し、かつ、ロック機能が必要なものであれば、他のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 コンソールボックス
2 蓋部材(開閉部材)
3 アウタ部材
4 インナ部材
5 開口部
10、20、30 インテグラルヒンジ
11、12、21、22、31、32 ヒンジ片
13、23、33 薄肉部
14 U字部材(弾性変形部)
14a、24a、4c 係合突起部
15、25、35 嵌合部
15a、25a、35a 係合凹部
24 差込部
28、38 たわみ溝(弾性変形部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のコンソールボックス等の開閉部材に用いるヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコンソールボックス等に設けられる蓋部材(開閉部材)では、2つのヒンジ片間を薄肉部で連結して一体成形し、薄肉部を折り曲げて使用することで蓋部材を開閉可能とした樹脂製(例えば、ポリプロピレン等)のヒンジ部材(インテグラルヒンジ)を採用したものが知られている。このようなインテグラルヒンジは、樹脂による一体成形であるため、従来の金属性の蝶番タイプのものに比べて部品点数やコストを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−084643号公報
【特許文献2】特開平07−305557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インテグラルヒンジは、製造上の理由により、成形時に開状態(薄肉部が折り曲げられていない状態)で成形されている。そのため、インテグラルヒンジをコンソールボックス等の蓋部材(開閉部材)のヒンジとして使用する場合、インテグラルヒンジを薄肉部で曲げて閉状態にしようとすると、開状態へ戻ろうとする反力が生じて、閉状態を維持することができなかった。従って、閉状態を維持するためのロック機構が必要となる。ロック機構としては、ロックレバー、ラッチ機構、マグネット等の別部品を、例えば、コンソールボックスの蓋部材の先端に設ける構成としている。
【0005】
又、別部品となるロック機構を設けないで、例えば、コンソールボックスの蓋部材の自重で閉状態を維持する場合、インテグラルヒンジの反力を抑えるため、その薄肉部分の肉厚を減少させて対応している。その場合、薄肉部分の耐久性能が落ちるため、インテグラルヒンジが折損(破損)する可能性が高まる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、別部品等を設けたりすることなく、簡単な構造で開閉部材の閉状態でのロック(維持)が可能な開閉部材のヒンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
開口部を開閉する開閉部材に固定される第1のヒンジ片と、前記開口部側に固定される第2のヒンジ片と、前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片との間で薄肉に形成されて前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片とを連結する薄肉部とが樹脂により一体成形された開閉部材のヒンジ構造であって、
前記第2のヒンジ片の開閉内側の面に設けられた係合凹部と、
前記開閉部材の開閉内側に設けられ、前記開閉部材が閉じられたときに前記係合凹部の前記薄肉部側の縁部に係合される係合突起部と、
前記係合突起部側及び前記係合凹部側の少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の開閉時に前記係合突起部の先端が前記係合凹部の前記薄肉部側の前記縁部を乗り越えるように、前記係合突起部及び前記係合凹部の前記縁部の少なくとも一方を変位させる弾性変形部とを備え、
前記開閉部材が閉じられたときに、前記係合凹部と前記係合突起部とを係合することで、前記開閉部材が閉状態に維持されることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、一方の端部が前記第1のヒンジ片に固定され、他方の端部側が変位可能とされたU字形状を成し、前記第1のヒンジ片の開閉内側の面から一体で突設されたU字部材とし、
前記係合突起部を、前記U字部材の前記他方の端部側に設けたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、前記係合凹部の前記縁部と前記薄肉部との間に形成したたわみ溝としたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第3の発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記開閉部材は、前記第1のヒンジ片の開閉外側に配置されるアウタ部材と開閉内側に配置されるインナ部材とから構成されており、
前記係合突起部を、前記インナ部材の端部に設けたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記第1のヒンジ片の開閉外側において前記開閉部材の端部から延設され、前記開閉部材の全開時に前記第2のヒンジ片に当接して開方向への移動を規制する当接部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、別部品を設けたりすることなく、簡単な構造で開閉部材の閉状態でのロックが可能な開閉部材のヒンジ構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の一例(実施例1)を示す斜視図である。
【図2】図1に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図3】図2に示したコンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、開状態における図である。
【図4】図2に示したコンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【図5】(a)は、図3に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の更なる拡大図である。
【図6】図4に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図7】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の他の一例(実施例2)を示す斜視図である。
【図8】図7に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図9】(a)は、図8に示したコンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、開状態における図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図10】図8に示したコンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【図11】本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態の他の一例(実施例3)を示す斜視図である。
【図12】図11に示した開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。
【図13】(a)は、図12に示したコンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、開状態における図であり、(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図である。
【図14】図12に示したコンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、閉状態における図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る開閉部材のヒンジ構造の実施形態を図1〜図14を参照して説明する。なお、ここでは、本発明に係る開閉部材のヒンジ構造を車両のコンソールボックスに適用し、当該コンソールボックスを例にとって説明を行うが、本発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、ヒンジを使用し、かつ、ロック機能が必要なものであれば、他のもの、例えば、インテリアコンパートメントドア等にも適用可能である。
【0015】
(実施例1)
図1は、本発明における実施例1の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図2は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図3、図4は、当該コンソールボックスのA−A線矢視断面図であり、図3は、開状態における図、図4は、閉状態における図である。又、図5(a)、図6は、各々、図3、図4に示した断面図における開閉部材のヒンジ構造部分の拡大図であり、図5(b)は、閉状態直前における開閉部材のヒンジ構造部分の更なる拡大図である。なお、参考のため、図2におけるA−A線を、図1にも図示している。
【0016】
本実施例のインテグラルヒンジ10(開閉部材のヒンジ構造)は、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片11(第1のヒンジ片)とヒンジ片12(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部13で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部13の柔軟性を利用し、薄肉部13を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片11、12を相対的に回動(開閉)可能としている。
【0017】
そして、本実施例のインテグラルヒンジ10においては、ヒンジ片11、12を閉じた状態に維持するためのロック機構を設けている。
【0018】
ロック機構は、爪嵌合構造からなり、具体的には、ヒンジ片11の開閉(回動)内側の面に、爪部分となる係合突起部14aを有するU字形状のU字部材14(弾性変形部)を設け、ヒンジ片12の開閉(回動)内側の面に、係合突起部14aを係合する係合凹部15aを有する嵌合部15を設けている。
【0019】
U字部材14は、ヒンジ片11の開閉内側の面から一体で突設されており、一方の端部がヒンジ片11に立設された状態で固定され、他方の端部側(端部14b側)は、U字部材14自体の弾性変形により変位可能な構成となっている。この端部14b側であって、薄肉部13側の方に三角形断面の係合突起部14aが設けられている。
【0020】
嵌合部15は、薄肉部13に対し、U字部材14とは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部15aは、ヒンジ片11、12を閉じたときに係合突起部14aと係合する位置に配置されている。このとき、係合凹部15aの薄肉部13側の縁部15cは、係合突起部14aの先端14cの開閉時の軌跡T(円弧状)より外側であって、係合突起部14aの先端14cが変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部15aは、ヒンジ片12に貫通孔を設けることで形成しているが、後述する実施例2の係合凹部25aのように、溝形状であってもよい。
【0021】
従って、ヒンジ片11、12の開閉時には、係合突起部14aの先端14cは、基本的には、軌跡T上を移動することになるが、係合凹部15aの縁部15cの部分では、U字部材14の弾性変形により、つまり、係合突起部14aの先端14cの変位により、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて移動する。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部15a(縁部15c)と係合突起部14a(先端14c)が係合されて、蓋部材2が閉状態に維持されることになる。
【0022】
例えば、閉時には、U字部材14のU字形状を閉じるように弾性変形させ、係合突起部14aの先端14cの位置を変位させることにより、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて、係合突起部14aが係合凹部15aに嵌合することになる。そして、係合突起部14aが係合凹部15aに係合した状態では、係合突起部14aが係合凹部15aから外れようとすると、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えるための力、つまり、U字部材14を弾性変形させる力が必要となるので、係止部15bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。なお、U字部材14の端部14bは、係合突起部14aが係合凹部15aの奥に入り込み過ぎないようにするストッパの機能を果たしている。
【0023】
一方、開時には、U字部材14を弾性変形させる力を加えて、U字部材14のU字形状を開くように弾性変形させ、係合突起部14aの先端14cの位置を変位させることにより、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越えて、係合突起部14aが係合凹部15aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、U字部材14側をたわむようにしているので、係合突起部14aの座面14d、係合凹部15aの座面15dの損傷を抑えることができる。
【0024】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるU字部材14を係合突起部14a側に設けているが、後述する実施例2におけるたわみ溝25bのように、係合凹部15aの縁部15cと薄肉部13との間にたわみ溝を設け、係合凹部15a側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0025】
又、本実施例においては、U字部材14、嵌合部15の組を、ヒンジ片11、12の回動(開閉)方向に垂直な方向(以降、幅方向と呼ぶ。)の中央の位置に1組設けているが、後述する実施例2のインテグラルヒンジ20のように、幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよい。又、薄肉部13の反力が強い場合には、組数を増やすだけでなく、薄肉部13からできるだけ離れた位置にU字部材14、嵌合部15を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0026】
ここで、上述したインテグラルヒンジ10の適用例を説明する。インテグラルヒンジ10には、ヒンジ片11、12各々を取り付けるための貫通孔16、17が設けられている。そして、インテグラルヒンジ10は、図2に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2に取り付けられる。
【0027】
蓋部材2は、インナ部材4とアウタ部材3からなり、図3、図4に示すように、ヒンジ片11は、貫通孔16を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片11の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片11の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片12は、貫通孔17を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0028】
このアウタ部材3の薄肉部13側の端部には、図5に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3a(当接部)が設けられている。具体的には、蓋部材2の全開状態において、アウタ部材3の端部を延設してインテグラルヒンジ10のヒンジ片12側に当接する形状とすることで、蓋部材2の過開きを防止している。過開きの防止は、インテグラルヒンジ10の薄肉部13への負荷も低減し、薄肉部13の耐久性の維持、向上に寄与する。
【0029】
又、インナ部材4には、アウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだヒンジ片11からU字部材14を露出するため、切欠部4aが設けられている(図2参照)。なお、ヒンジ片11をアウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだ構造とせず、インナ部材4の外面上に取り付ける場合には、このような切欠部4aを設ける必要は無い。
【0030】
ここで、図5、図6を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ10の開閉を説明する。
【0031】
図5に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ10のヒンジ片12側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0032】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部14aの先端14cは、図5中に示す軌跡T上を移動するが、U字部材14のU字形状が閉じるようにたわんで、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越え、図6に示すように、係合突起部14aが係合凹部15aに係合し、係合突起部14aが係止部15bに係止される。
【0033】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部14aが係止部15bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、U字部材14のU字形状が開くようにたわむので、係合突起部14aの先端14cが係合凹部15aの縁部15cを乗り越え、係合突起部14aを係合凹部15aから開放可能となる。
【0034】
上述したように、本実施例では、爪嵌合構造のロック機構とし、U字部材14にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。又、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロークが無くても、そのかかりが良いため、閉まり不良はない。
【0035】
(実施例2)
図7は、本発明における実施例2の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図8は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図9(a)、(b)、図10は、当該コンソールボックスのB−B線矢視断面図であり、図9(a)は、開状態における図、(b)は、閉状態直前における拡大図、図10は、閉状態における図である。なお、参考のため、図8におけるB−B線を、図7にも図示している。又、図8に示すコンソールボックスは、一部を除き、実施例1(図2)で示したコンソールボックスと同等の構成であるので、以降の説明では、同じ符号を付して説明を行う。
【0036】
本実施例のインテグラルヒンジ20(開閉部材のヒンジ構造)も、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片21(第1のヒンジ片)とヒンジ片22(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部23で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部23の柔軟性を利用し、薄肉部23を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片21、22を相対的に回動(開閉)可能としている。
【0037】
そして、本実施例においても、実施例1と同様、ヒンジ片21、22を閉じた状態に維持するため、爪嵌合構造からなるロック機構を設けている。
【0038】
具体的には、ヒンジ片21の開閉内側の面に、爪部分となる係合突起部24aを有して突出形成された台形断面形状の差込部24を設け、ヒンジ片22の開閉内側の面に、係合突起部24aが係合する係合凹部25aを有する嵌合部25を設けている。
【0039】
差込部24は、その端部の薄肉部13側の方に三角形断面となる係合突起部24aが設けられている。なお、差込部24は、実施例1で示したU字部材14とは異なり、積極的に弾性変形可能な構造とはしていない。
【0040】
嵌合部25は、薄肉部23に対し、差込部24とは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部25aは、ヒンジ片21、22を閉じたときに係合突起部24aと係合する位置に配置されている。そして、嵌合部25の係止部25bであって、係合凹部25aの薄肉部23側の縁部25cと薄肉部23との間に、たわみ溝28(弾性変形部)が設けられている。このたわみ溝28により、係合凹部25aの縁部25cが、たわみ溝28が開く方向と閉じる方向(薄肉部23側)とで変位可能とされている。又、係合凹部25aの縁部25cは、係合突起部24aの先端24bの開閉時の軌跡Tより外側であって、係合凹部25aの縁部25cが軌跡Tの外側から内側へ変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部25aは、ヒンジ片22に略三角状の溝を設けることで形成しているが、実施例1で示した係合凹部15aのように、貫通孔であってもよい。
【0041】
従って、ヒンジ片21、22の開閉時には、係合突起部24aの先端24bは、軌跡T上を移動することになるが、たわみ溝28の弾性変形により、つまり、係合凹部25aの縁部25cの変位により、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えることができる。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部25a(縁部25c)と係合突起部24a(先端24b)が係合されて、蓋部材2が閉状態に維持される。
【0042】
例えば、閉時には、たわみ溝28を開くように弾性変形させ、係合凹部25aの縁部25cの位置を変位させることにより、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えて、係合突起部24aが係合凹部25aに係合することになる。そして、係合突起部24aが係合凹部25aに係合した状態では、係合突起部24aが係合凹部25aから外れようとすると、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えるための力、つまり、たわみ溝28を弾性変形させる力が必要となるので、係止部25bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。
【0043】
一方、開時には、係合凹部25aの縁部25cに薄肉部23側への力を加えて、たわみ溝28を閉じるように弾性変形させ、係合凹部25aの縁部25cの位置を変位させることにより、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越えて、係合突起部24aが係合凹部25aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、たわみ溝28をたわむようにしているので、係合突起部24aの座面24c、係合凹部25aの座面25dの損傷を抑えることができる。
【0044】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるたわみ溝28を嵌合部25側に設けているが、実施例1に示したU字部材14のように、差込部24側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0045】
又、本実施例においては、差込部24、嵌合部25の組を、インテグラルヒンジ20の幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けているが、前述した実施例1のインテグラルヒンジ10のように、幅方向の中央の位置に1組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよいし、又、後述する実施例3のインテグラルヒンジ30のように、幅方向の全長に渡って1組設けてもよい。又、薄肉部23の反力が強い場合には、組数や幅を増やすだけでなく、薄肉部23からできるだけ離れた位置に差込部24、嵌合部25を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0046】
ここで、上述したインテグラルヒンジ20の適用例を説明する。インテグラルヒンジ20にも、ヒンジ片21、22各々を取り付けるための貫通孔26、27が設けられている。そして、インテグラルヒンジ20は、図8に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2を開閉可能に取り付けられる。
【0047】
具体的には、図9、図10に示すように、ヒンジ片21は、貫通孔26を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片21の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片21の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片22は、貫通孔27を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0048】
又、本実施例においても、図9に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3aがアウタ部材3の端部を延設して設けられている。加えて、インナ部材4にも、アウタ部材3とインナ部材4との間に挟み込んだヒンジ片21から差込部24を露出するため、切欠部4bが設けられている(図8参照)。
【0049】
ここで、図9、図10を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ20の開閉を説明する。
【0050】
図9に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ20のヒンジ片22側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0051】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部24aの先端24bは、図9中に示す軌跡T上を移動するが、たわみ溝28が開くようにたわんで、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越え、図10に示すように、係合突起部24aが係合凹部25aに係合し、係合突起部24aが係止部25bに係止される。
【0052】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部24aが係止部25bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、たわみ溝28が閉じるようにたわむので、係合突起部24aの先端24bが係合凹部25aの縁部25cを乗り越え、係合突起部24aを係合凹部25aから開放可能となる。
【0053】
上述したように、本実施例では、実施例1同様、爪嵌合構造のロック機構とし、たわみ溝28にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。又、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロ−クがあると、閉まり不良がより抑えられる。
【0054】
(実施例3)
図11は、本発明における実施例3の開閉部材のヒンジ構造を示す斜視図であり、図12は、当該開閉部材のヒンジ構造を用いたコンソールボックスの斜視図である。又、図13(a)、(b)、図14は、当該コンソールボックスのC−C線矢視断面図であり、図13(a)は、開状態における図、図13(b)は、閉状態直前における拡大図、図14は、閉状態における図である。なお、参考のため、図12におけるC−C線を、図11にも図示している。又、図12に示すコンソールボックスは、一部を除き、実施例1(図2)で示したコンソールボックスと同等の構成であるので、以降の説明では、同じ符号を付して説明を行う。
【0055】
本実施例のインテグラルヒンジ30(開閉部材のヒンジ構造)も、PP(ポリプロピレン)等の樹脂で一体成形されたものであり、1対のヒンジ片31(第1のヒンジ片)とヒンジ片32(第2のヒンジ片)との間を、薄肉に形成された薄肉部33で連結して、一体成形している。そして、この薄肉部33の柔軟性を利用し、薄肉部33を回動中心として折り曲げることで、ヒンジ片31、32を回動(開閉)可能としている。
【0056】
そして、本実施例においても、実施例1、2と同様、ヒンジ片31、32を閉じた状態に維持するため、爪嵌合構造からなるロック機構を設けている。
【0057】
具体的には、ヒンジ片31の開閉内側の面に取り付けたインナ部材4の端部に、爪部分となる係合突起部4cを形成し、ヒンジ片32の開閉内側の面に、係合突起部4cを係合する係合凹部35aを有する嵌合部35を設けている。
【0058】
インナ部材4は、その端部の薄肉部13側の方に三角形断面となる係合突起部4cが設けられている。なお、インナ部材4の端部は、実施例1で示したU字部材14とは異なり、積極的に弾性変形可能な構造とはしていない。つまり、本実施例では、実施例2でインテグラルヒンジ20側に設けていた差込部24に替わり、インナ部材4を利用し、その端部に係合突起部4cを設けた構成である。
【0059】
嵌合部35は、薄肉部33に対し、インナ部材4の係合突起部4cとは線対称の位置に配置されており、更に、係合凹部35aは、ヒンジ片31、32を閉じたときに係合突起部4cと係合する位置に配置されている。そして、実施例2同様、嵌合部35の係止部35bであって、係合凹部35aの薄肉部33側の縁部35cと薄肉部33との間に、たわみ溝38(弾性変形部)が設けられている。このたわみ溝38により、係合凹部35aの縁部35cが、たわみ溝38が開く方向と閉じる方向(薄肉部33側)とで変位可能とされている。又、係合凹部35aの縁部35cは、係合突起部4cの先端4dの開閉時の軌跡Tより外側であって、係合凹部35aの縁部35cが軌跡Tの外側から内側へ変位可能な範囲内に配置されている。なお、係合凹部35aは、ヒンジ片32に三角状の溝を設けることで形成しているが、実施例1で示した係合凹部15aのように、貫通孔であってもよい。
【0060】
従って、ヒンジ片31、32の開閉時には、係合突起部4cの先端4dは、軌跡T上を移動することになるが、たわみ溝38の弾性変形により、つまり、係合凹部35aの縁部35cの変位により、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えることができる。その結果、蓋部材2が閉じられたとき、係合凹部35a(縁部35c)と係合突起部4cが係合されて、蓋部材2が閉状態に維持される。
【0061】
例えば、閉時には、たわみ溝38を開くように弾性変形させ、係合凹部35aの縁部35cの位置を変位させることにより、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えて、係合突起部4cが係合凹部35aに係合することになる。そして、係合突起部4cが係合凹部35aに係合した状態では、係合突起部4cが係合凹部35aから外れようとすると、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えるための力、つまり、たわみ溝38を弾性変形させる力が必要となるので、係止部35bに確実に係止されることとなる(ロック状態)。
【0062】
一方、開時には、係合凹部35aの縁部35cに薄肉部33側への力を加えて、たわみ溝38を閉じるように弾性変形させ、係合凹部35aの縁部35cの位置を変位させることにより、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越えて、係合突起部4cが係合凹部35aから外れ、ロック状態から開放されることとなる。この開閉の際、たわみ溝38をたわむようにしているので、係合突起部4cの座面4e、係合凹部35aの座面35dの損傷を抑えることができる。
【0063】
なお、本実施例においては、弾性変形部となるたわみ溝38を嵌合部35(係止部35b)側に設けているが、実施例1に示したU字部材14のように、インナ部材4の端部側も弾性変形可能な構成としてもよい。
【0064】
又、本実施例においては、係合突起部4c、嵌合部35の組を、インテグラルヒンジ30の幅方向の全長に渡って1組設けているが、前述した実施例1のインテグラルヒンジ10のように、幅方向の中央の位置に1組設けてもよいし、前述した実施例2のインテグラルヒンジ20のように、幅方向の両端部に各々1組、合計2組設けてもよいし、更に多くの組を設けてもよい。又、薄肉部33の反力が強い場合には、組数や幅を増やすだけでなく、薄肉部33からできるだけ離れた位置に係合突起部4c、嵌合部35を設ければ、より確実に係止可能となる。
【0065】
ここで、上述したインテグラルヒンジ30の適用例を説明する。インテグラルヒンジ30にも、ヒンジ片31、32各々を取り付けるための貫通孔36、37が設けられている。そして、インテグラルヒンジ30は、図12に示すように、コンソールボックス1に適用され、その開口部5側と開口部5を開閉する蓋部材2を開閉可能に取り付けられる。
【0066】
具体的には、図13、図14に示すように、ヒンジ片31は、貫通孔36を貫通するボルト等により、アウタ部材3とインナ部材4の間に挟み込むように固定される。つまり、ヒンジ片31の開閉外側の面にアウタ部材3が配置され、ヒンジ片31の開閉内側の面にインナ部材4が配置される。一方、ヒンジ片32は、貫通孔37を貫通するボルト等により、コンソールボックス1の開口部5の上端部の内面に取り付けられる。
【0067】
又、本実施例においても、図13に示すように、蓋部材2の開方向への移動を規制し、過開きを防止するストッパ3aがアウタ部材3の端部を延設して設けられている。なお、インナ部材4は、その端部自身が係合突起部4cに形成されているので、実施例1、2のように、切欠部を形成する必要は無い。
【0068】
ここで、図13、図14を参照して、改めて、蓋部材2の開閉、即ち、インテグラルヒンジ30の開閉を説明する。
【0069】
図13に示すように、蓋部材2が全開状態の時には、アウタ部材3の端部に設けられたストッパ3aが、インテグラルヒンジ30のヒンジ片32側に当接し、蓋部材2の過開きを防止すると共に、蓋部材2の開状態を維持可能となっている
【0070】
そして、蓋部材2を開状態から閉状態とするときには、係合突起部4cの先端4dは、図13中に示す軌跡T上を移動するが、たわみ溝38が開くようにたわんで、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越え、図14に示すように、係合突起部4cが係合凹部35aに係合し、係合突起部4cが係止部35bに係止される。
【0071】
一方、蓋部材2を閉状態から開状態とするときには、係合突起部4cが係止部35bに係止されているが、蓋部材2を所定以上の力で持ち上げることで、たわみ溝38が閉じるようにたわむので、係合突起部4cの先端4dが係合凹部35aの縁部35cを乗り越え、係合突起部4cを係合凹部35aから開放可能となる。
【0072】
上述したように、本実施例では、爪嵌合構造のロック機構とし、たわみ溝38にたわみを持たせているので、信頼性が高く、耐久性の高い構造とすることができる。加えて、樹脂による一体成形とすることで、一般的な板金のヒンジと比較して、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例の場合、蓋部材2の閉時にオーバーストロ−クがあると、閉まり不良がより抑えられる。又、実施例1、2と比較して、見栄えが良いという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る開閉部材のヒンジ構造は、車両のコンソールボックス等に好適なものであるが、ヒンジを使用し、かつ、ロック機能が必要なものであれば、他のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 コンソールボックス
2 蓋部材(開閉部材)
3 アウタ部材
4 インナ部材
5 開口部
10、20、30 インテグラルヒンジ
11、12、21、22、31、32 ヒンジ片
13、23、33 薄肉部
14 U字部材(弾性変形部)
14a、24a、4c 係合突起部
15、25、35 嵌合部
15a、25a、35a 係合凹部
24 差込部
28、38 たわみ溝(弾性変形部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉する開閉部材に固定される第1のヒンジ片と、前記開口部側に固定される第2のヒンジ片と、前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片との間で薄肉に形成されて前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片とを連結する薄肉部とが樹脂により一体成形された開閉部材のヒンジ構造であって、
前記第2のヒンジ片の開閉内側の面に設けられた係合凹部と、
前記開閉部材の開閉内側に設けられ、前記開閉部材が閉じられたときに前記係合凹部の前記薄肉部側の縁部に係合される係合突起部と、
前記係合突起部側及び前記係合凹部側の少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の開閉時に前記係合突起部の先端が前記係合凹部の前記薄肉部側の前記縁部を乗り越えるように、前記係合突起部及び前記係合凹部の前記縁部の少なくとも一方を変位させる弾性変形部とを備え、
前記開閉部材が閉じられたときに、前記係合凹部と前記係合突起部とを係合することで、前記開閉部材が閉状態に維持される
ことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、一方の端部が前記第1のヒンジ片に固定され、他方の端部側が変位可能とされたU字形状を成し、前記第1のヒンジ片の開閉内側の面から一体で突設されたU字部材とし、
前記係合突起部を、前記U字部材の前記他方の端部側に設けたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、前記係合凹部の前記縁部と前記薄肉部との間に形成したたわみ溝としたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記開閉部材は、前記第1のヒンジ片の開閉外側に配置されるアウタ部材と開閉内側に配置されるインナ部材とから構成されており、
前記係合突起部を、前記インナ部材の端部に設けたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記第1のヒンジ片の開閉外側において前記開閉部材の端部から延設され、前記開閉部材の全開時に前記第2のヒンジ片に当接して開方向への移動を規制する当接部を備えることを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項1】
開口部を開閉する開閉部材に固定される第1のヒンジ片と、前記開口部側に固定される第2のヒンジ片と、前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片との間で薄肉に形成されて前記第1のヒンジ片と前記第2のヒンジ片とを連結する薄肉部とが樹脂により一体成形された開閉部材のヒンジ構造であって、
前記第2のヒンジ片の開閉内側の面に設けられた係合凹部と、
前記開閉部材の開閉内側に設けられ、前記開閉部材が閉じられたときに前記係合凹部の前記薄肉部側の縁部に係合される係合突起部と、
前記係合突起部側及び前記係合凹部側の少なくとも一方に設けられ、前記開閉部材の開閉時に前記係合突起部の先端が前記係合凹部の前記薄肉部側の前記縁部を乗り越えるように、前記係合突起部及び前記係合凹部の前記縁部の少なくとも一方を変位させる弾性変形部とを備え、
前記開閉部材が閉じられたときに、前記係合凹部と前記係合突起部とを係合することで、前記開閉部材が閉状態に維持される
ことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、一方の端部が前記第1のヒンジ片に固定され、他方の端部側が変位可能とされたU字形状を成し、前記第1のヒンジ片の開閉内側の面から一体で突設されたU字部材とし、
前記係合突起部を、前記U字部材の前記他方の端部側に設けたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記弾性変形部を、前記係合凹部の前記縁部と前記薄肉部との間に形成したたわみ溝としたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項4】
請求項3に記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記開閉部材は、前記第1のヒンジ片の開閉外側に配置されるアウタ部材と開閉内側に配置されるインナ部材とから構成されており、
前記係合突起部を、前記インナ部材の端部に設けたことを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の開閉部材のヒンジ構造において、
前記第1のヒンジ片の開閉外側において前記開閉部材の端部から延設され、前記開閉部材の全開時に前記第2のヒンジ片に当接して開方向への移動を規制する当接部を備えることを特徴とする開閉部材のヒンジ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−202154(P2012−202154A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69287(P2011−69287)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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