説明

開閉部材のロック装置、媒体搬送装置、記録装置

【課題】リンクする部材間の距離が長くなった場合であってもリンク機構の機能を得ながらリンク部材が破損してしまうことを考慮した開閉部材のロック装置を提供すること。
【解決手段】開閉部材(15)のロック装置(17)のリンク機構26は、第1ロック部材18が退避する方向(X軸の矢印方向)へ該第1ロック部材18が移動する際、第1係合部(28)が第2ロック部材22と係合し該第2ロック部材22が退避する方向(X軸の矢印と逆方向)へ該第2ロック部材22を引き込んで移動させ、前記第1ロック部材18が突出した状態において、前記第2ロック部材22が退避する方向(X軸の矢印と逆方向)へ該第2ロック部材22が移動する際、遊びB1によって前記第1係合部(28)が前記第2ロック部材22と係合せず、前記第2ロック部材22の動きを前記第1ロック部材18へ伝達させない構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体部に対して開閉する開閉部材の閉まった状態をロックするロック装置および該ロック装置を備えた媒体搬送装置および記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、装置本体に対して開閉するルーフを有していた。該ルーフは、プリンターの内部で用紙が詰まったときに開けて詰まった用紙を取り除くために設けられていた。そして、前記ルーフの自由端側には、プラスチックで形成された弾性を有する爪が幅方向両側に一対設けられていた。前記ルーフが閉まった状態では、前記爪が前記装置本体側の部材と係わり合うことで、閉まった状態が保持されるように構成されていた。また、前記ルーフを開く際、前記爪を退避する方向へ弾性変形させて、前記装置本体側の部材を乗り越えさせることにより前記係わり合いを解除して、開くことができた。一方、前記ルーフを閉める際、前記爪を退避する方向へ弾性変形させて、前記装置本体側の部材を乗り越えさせることにより前記係わり合うようにし、閉めることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3724310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記一対の爪は、それぞれ独立して退避する方向へ弾性変形する構成であったため、一方の爪のみが前記装置本体側の部材と係わり合う場合がある。
そこで、一対の爪の動きを、互いにリンクさせるようにリンク部材を設けることが考えられる。
具体的には、一方の爪が退避移動した場合、リンク部材が前記一方の爪に押されることにより、他方の爪へ押す方向の力を伝達するように構成することが考えられる。
【0005】
そして、前記リンク部材から受ける前記他方の爪を押す方向の力を揺動する部材によって引く方向への力に変えて、前記他方の爪を退避させることができる。
反対に、前記他方の爪が退避移動した場合、前記揺動する部材が前記他方の爪に押される力を、前記一方の爪を引っ張る方向の力に変えて、前記リンク部材を引っ張る。そして、前記リンク部材が、前記一方の爪を引っ張って退避移動させることができる。
【0006】
しかしながら、例えば、比較的大きなサイズの用紙にも対応可能なプリンターになると、前記ルーフの幅がその分広くなる。従って、前記一方(手前側)の爪と前記他方(奥側)の爪との間の距離が長くなる。そして、前記リンク部材の強度が必要となってくる。強度が不足すると、押す方向の力が作用した場合、座屈する虞がある。また、十分な強度を得るように前記リンク部材を太くするとその分スペースが取られるため、装置が大型化する虞がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、リンクする部材間の距離が長くなった場合であってもリンク機構の機能を得ながら、リンク部材が破損してしまうことを考慮した開閉部材のロック装置および該ロック装置を備えた媒体搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の開閉部材のロック装置は、基体部に対して開閉する開閉部材と、該開閉部材の自由端側における幅方向両側の一方に設けられ、前記開閉部材から前記基体部へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記基体部と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材と、前記開閉部材の自由端側における幅方向両側の他方に設けられ、前記開閉部材から前記基体部へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記基体部と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材と、該第2ロック部材と係合可能な第1係合部を有しており、前記第1ロック部材が退避する方向への該第1ロック部材の動きを前記第2ロック部材へ伝達するリンク機構と、を備え、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が突出して前記基体部と係合する方向がロック方向であり、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が退避する方向がロックを解除する方向であり、前記リンク機構は、前記第1ロック部材が退避する方向へ該第1ロック部材が移動する際、前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合し該第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材を引き込んで移動させ、前記第1ロック部材が突出した状態において、前記第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材が移動する際、前記第1係合部において前記第2ロック部材との間に設けられた遊びによって前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合せず、前記第2ロック部材の動きを前記第1ロック部材へ伝達させない構成であることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記開閉部材を閉めてロックする際、ユーザーが前記開閉部材の幅方向中心に対して前記第1ロック部材側を閉める方向に押せば、前記リンク機構は、前記遊びを有していない構成のリンク機構と同様の動きをする。従って、前記開閉部材を閉めてロック状態にすることができる。尚、ユーザーが前記開閉部材の幅方向中心に対して前記第1ロック部材側を閉める方向へ押すように、ユーザーが操作する位置を考慮して前記第1ロック部材および前記第2ロック部材の位置を決めればよい。つまり、ユーザーが操作する位置に近い側に前記第1ロック部材を配置すればよい。通常、ユーザーは自身に近い側である、前記開閉部材の幅方向中心に対して前記第1ロック部材側を押すからである。
【0010】
また、前記リンク機構は前記第2ロック部材を引っ張るときのみに負荷がかかるので、座屈する虞がない。その結果、糸のような細い部材で構成することができる。つまり、強度を必要としない。これにより、前記リンク機構を設けるスペースを小さくすることができ、設計の自由度が増す。
またさらに、前記第2ロック部材が退避する方向へ移動する際、前記リンク機構および前記第1ロック部材の重さ分の仕事をしなくてよい。従って、その分、小さい力で前記第2ロック部材が独立して動くことができる。
【0011】
前記開閉部材が閉まる際、該開閉部材が撓むことにより、該開閉部材における前記第1ロック部材側(手前側)が該第1ロック部材によって先にロック状態となる場合がある。係る場合で、前記開閉部材における前記第2ロック部材側(奥側)が該第2ロック部材によってロック状態に未だなっていないときであっても、自重や撓みが戻ろうとする力等の小さい力で容易に奥側をロック状態にすることができる。これにより、片側のみがきちんと閉まってロック状態となる所謂、片閉まりとなることを、結果的に防止することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記リンク機構に力を伝達するレバーと、前記リンク機構の動力伝達経路上に設けられた第2係合部と、をさらに備えており、前記リンク機構は、前記レバーが一の方向へ揺動する際、前記第2係合部が動力伝達下流側の被係合部材と係合し、該レバーの動きを前記第1ロック部材および前記第2ロック部材へ伝達し、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材をそれぞれ前記退避する方向へ移動させ、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材がそれぞれ前記退避する方向へ移動する際、前記第2係合部において前記被係合部との間に設けられた遊びによって前記第2係合部が前記被係合部材と係合せず、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材の動きを前記レバーへ伝達させない構成であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーが前記レバーを操作せずに前記開閉部材を押してロック状態にした際、前記レバーが勝手に動かない。これにより、ユーザーが怪我をする虞がない。また、前記レバーが勝手に動くことによる騒音が生じない。またさらに、前記レバーの上に何か物が置かれている場合であっても、ロック状態にすることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記レバーは、前記開閉部材の幅方向の中心に対して前記第1ロック部材側に偏倚した位置に配設されていることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは、前記中心に対して前記第1ロック部材側で、前記開閉部材の開閉を行うことができる。つまり、ロック装置の前記第1ロック部材側の位置で、ユーザーは、前記開閉部材における手前側を押して該開閉部材を閉じてロック状態とすることができる。さらに、手前側に設けられた前記レバーを操作してロックを解除し、前記開閉部材を開けることができる。言い換えると、ユーザーは、前記第2ロック部材側である奥側へ手を伸ばす必要がない。また、奥側へ回り込む必要もない。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記第1ロック部材、および前記開閉部材が閉じる際に前記基体部における前記第1ロック部材が係わり合う第1の部位の少なくとも一方は、前記開閉部材が閉まる方向へ揺動するに従って前記第1ロック部材を退避させる第1傾斜部を有しており、前記第2ロック部材、および前記開閉部材が閉じる際に前記基体部における前記第2ロック部材が係わり合う第2の部位の少なくとも一方は、前記開閉部材が閉まる方向へ揺動するに従って第2ロック部材を退避させる第2傾斜部を有している構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記第1傾斜部および前記第2傾斜部を有している。従って、前記開閉部材を完全に閉じるだけで容易にロック状態とすることができる。
【0016】
本発明の第5の態様の開閉部材のロック装置は、基体部に対して開閉する開閉部材と、前記基体部における前記開閉部材の自由端側の幅方向両側の一方に対応する箇所に設けられ、前記基体部から前記開閉部材へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記開閉部材と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材と、前記基体部における前記開閉部材の自由端側の幅方向両側の他方に対応する箇所に設けられ、前記基体部から前記開閉部材へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記開閉部材と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材と、該第2ロック部材と係合可能な第1係合部を有しており、前記第1ロック部材が退避する方向への該第1ロック部材の動きを前記第2ロック部材へ伝達するリンク機構と、を備え、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が突出して前記基体部と係合する方向がロック方向であり、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が退避する方向がロックを解除する方向であり、前記リンク機構は、前記第1ロック部材が退避する方向へ該第1ロック部材が移動する際、前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合し該第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材を引き込んで移動させ、前記第1ロック部材が突出した状態において、前記第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材が移動する際、前記第1係合部において前記第2ロック部材との間に設けられた遊びによって前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合せず、前記第2ロック部材の動きを前記第1ロック部材へ伝達させない構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
本発明の第6の態様の媒体搬送装置は、媒体を載置する載置部と、載置された媒体を送り方向下流側へ送る送り手段と、媒体が送られる経路の少なくとも一部を構成し、基体部に対して開閉可能なカバー部材と、該カバー部材が閉じた状態をロックするロック手段と、を備えた媒体搬送装置であって、前記ロック手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記開閉部材のロック装置を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記ロック手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記開閉部材のロック装置を備えている。従って、前記媒体搬送装置において、上記第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
本発明の第7の態様の記録装置は、被記録媒体を送り方向下流側へ送る送り手段と、被記録媒体が送られる経路の少なくとも一部を構成し、基体部に対して開閉可能なカバー部材と、該カバー部材が閉じた状態をロックするロック手段と、送られた被記録媒体に対して記録する記録部と、を備えた記録装置であって、前記ロック手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記開閉部材のロック装置を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記ロック手段は、上記第1から第5のいずれか一の態様の前記開閉部材のロック装置を備えている。従って、前記記録装置において、上記第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例のカバー部材が閉じた状態のプリンターを示す斜視図。
【図2】本実施例のカバー部材が開いた状態のプリンターを示す斜視図。
【図3】(A)(B)は本実施例の第1ロック部材および第1穴部を示す斜視図。
【図4】本実施例のロック状態におけるリンク機構を示す平面透視図。
【図5】(A)(B)は図4の要部を示す平面透視図。
【図6】(A)(B)はロック解除状態におけるリンク機構の要部を示す平面透視図。
【図7】(A)(B)はロック状態となる際のリンク機構の要部を示す平面透視図。
【図8】(A)(B)は第2ロック部材が遅れてロック状態となる様子を示す平面透視図。
【図9】(A)(B)は第2ロック部材が遅れてロック状態となる様子を示す平面透視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例のカバー部材15が閉じた状態のプリンター1を示す斜視図である。また、図2に示すのは、本実施例のカバー部材15が開いた状態のプリンター1を示す斜視図である。
図1および図2に示す如く、本実施例のプリンター1は、プリンター本体2と、媒体搬送装置7とを備えている。
【0021】
このうち、プリンター本体2は、詳しい図示を省略するが、スキャナー部5と、記録部6と、操作部3とを有している。スキャナー部5は、プリンター本体2における上面側に設けられ、媒体搬送装置7によって送られた媒体の一例である用紙Pに記録された情報を読み取ることができるように構成されている。また、スキャナー部5は、媒体搬送装置7を上方へ開くことにより現れるプリンター本体2の上面にセットされた用紙Pに記録された情報をも読み取ることができるように構成されている。
【0022】
またさらに、記録部6は、プリンター本体2において用紙に対して記録を実行することができるように構成されている。
また、操作部3は、プリンター本体2の外側に設けられ、ボタン4を有している。そして、ユーザーがプリンター1の条件設定や動作指示についてボタン4を押すことで操作することができるように構成されている。
【0023】
一方、媒体搬送装置7は、プリンター本体2の上方に設けられ、記録された用紙Pを一枚ずつ順次、プリンター本体2の上面の所定位置を経由して送ることができるように設けられている。
尚、所定位置においてスキャナー部5によって用紙Pに記録された情報が読み取られる構成である。
【0024】
具体的に、媒体搬送装置7は、載置部8と、送り手段9(図2参照)と、送り経路10(図2参照)と、排出部11と、基体部12と、カバー部材15と、ロック手段17(図2参照)とを有している。このうち、載置部8は、用紙Pを載置することができるように設けられている。また、送り手段9は、載置部8に載置された用紙Pを順次送り方向下流側(矢印Aの方向)へ送ることができるように構成されている。送り手段9として、例えば、モーターの動力によって駆動するローラーを設けることができる。
【0025】
またさらに、送り経路10は、用紙Pが送られる経路である。本実施例の送り経路10は、基体部12およびカバー部材15によって構成されている。また、排出部11は、送り経路10の下流端において排出された用紙Pを載置することができるように設けられている。またさらに、基体部12は、媒体搬送装置7の基体である。また、カバー部材15は、送り経路10の一部を構成すると共に、基体部12に対して開閉可能に設けられている。具体的には、開閉軸16(図2参照)を中心に揺動する構成である。
【0026】
またさらに、ロック手段17は、カバー部材15が閉じた状態をロックすることができるように構成されている。具体的には、ロック手段17は、一例としてカバー部材15側に第1ロック部材18および第2ロック部材22を有し、基体部12側に第1ロック穴部13および第2ロック穴部14を有している。第1ロック部材18および第2ロック部材22は、カバー部材15における用紙Pの幅方向外側に向かって進退可能に設けられている。
【0027】
そして、閉じた状態では、第1ロック部材18が第1ロック穴部13に入り、第2ロック部材22が第2ロック穴部14に入るように構成されている。従って、カバー部材15が閉じた状態でカバー部材15が開かないようにロックすることができる。
尚、進退可能な第1ロック部材18および第2ロック部材22をカバー部材15側に設け、第1ロック穴部13および第2ロック穴部14を基体部12側に設けたが、逆の構成でもよい。また、第1ロック部材18および第2ロック部材22の進退可能な方向を幅方向Xとしたが、これに限らない。カバー部材15が開閉する方向と交差する方向であればよい。
【0028】
また、カバー部材15には、ロック状態を解除するためのカバー開レバー38が設けられている。例えば、送り経路10内で用紙Pが詰まった場合、ユーザーはカバー開レバー38を操作して、ロックを解除し、カバー部材15を開いて詰まった用紙Pを取り除くことができる。その後、ユーザーがカバー部材15を完全に閉じると、ロック手段17によってロック状態となる。
【0029】
尚、カバー部材15におけるカバー開レバー38の位置は、カバー部材15の幅方向Xの中心N(図1参照)を基準とした操作部3が設けられている側に偏倚した位置である。これは、ユーザーがプリンター1を操作する際のユーザーの位置が、幅方向Xにおいて操作部3側だからである。つまり、ユーザーの位置を基準とした手前側にカバー開レバー38を設けることにより、奥側に設けられている構成と比較して、ユーザーはカバー開レバー38を操作しやすい。
【0030】
ここで、比較的大きいサイズの用紙Pに対応可能なプリンター1は幅方向Xに長尺となる。係る場合に、カバー開レバー38が前記偏倚した位置にある構成は特に有効である。
また、カバー部材15を開いた後に閉じる際、通常、ユーザーは、カバー部材15における幅方向Xの中心Nを基準とした操作部3が設けられている側を押してカバー部材15を完全に閉める。つまり、ユーザーは、通常、カバー部材15における、奥側ではなく、手前側を押してカバー部材15を完全に閉める。
【0031】
続いて、ロック手段17の詳細について説明する。
図3(A)に示すのは、本実施例のカバー部材15側の第1ロック部材18を示す斜視図である。また、図3(B)に示すのは、本実施例の基体部12側の第1ロック穴部13を示す斜視図である。
図3(A)に示す如く、第1ロック部材18におけるカバー部材15から突出した先端部分には第1傾斜部19が設けられている。第1傾斜部19は、カバー部材15の開閉方向に対して傾斜している。さらに、閉める際に基体部12と当接しカバー部材15が閉まる方向への力により、第1ロック部材18を退避させる方向へのベクトル成分の力を生じさせるように形成されている。
【0032】
一方、図3(B)に示す如く、基体部12におけるカバー部材15が完全に閉じた状態のカバー部材15の第1ロック部材18と対向する箇所には、第1ロック部材18が入ることができる第1ロック穴部13が形成されている。従って、カバー部材15を閉じる際、基体部12と接触することにより一度退避した第1ロック部材18は、カバー部材15が完全に閉じた状態となったとき、後述する第1圧縮ばね21(図4〜図9参照)の付勢力によって突出する方向へ移動する。そして第1ロック部材18の先端は、第1ロック穴部13に入ることができる。
【0033】
尚、幅方向Xにおける一方の第1ロック部材18および第1ロック穴部13について説明したが、他方の第2ロック部材22および第2ロック穴部14についても同様である。その説明は省略する。
また、本実施例では、第1ロック部材18に第1傾斜部19を設けたが、カバー部材15を閉じる際に基体部12側における第1ロック部材18と対向する箇所である第1の部位12aに傾斜部(19)を設けてもよい。またさらに、傾斜部(19)を、第1ロック部材18側および基体部12側の両方に設けてもよい。技術的思想としては、カバー部材15を閉じる際に第1ロック部材18を一度退避させることができればよく、第1ロック部材18側および基体部12側の少なくとも一方に傾斜部(19)が設けられていればよい。
【0034】
続いて、第1ロック部材18と第2ロック部材22との関係、およびこれらとカバー開レバー38との関係について説明する。
図4に示すのは、本実施例のロック状態におけるリンク機構26を示す平面透視図である。また、図5(A)(B)に示すのは、図4の要部を示す平面透視図である。このうち、図5(A)は第1ロック部材18が設けられている側である。一方、図5(B)は図5(A)の反対側である第2ロック部材22が設けられている側である。
【0035】
図4および図5(A)(B)に示す如く、本実施例において、第1ロック部材18および第2ロック部材22が設けられているカバー部材15側には、リンク機構26が設けられている。リンク機構26は、第1ロック部材18の動きを第2ロック部材22へ伝達するが、第2ロック部材22の動きを第1ロック部材18へは伝達しないように構成されている。また、リンク機構26は、カバー開レバー38の動きを第1ロック部材18および第2ロック部材22へ伝達するが、第1ロック部材18および第2ロック部材22の動きをカバー開レバー38へは伝達しないように構成されている。
【0036】
リンク機構26は、具体的には、揺動部材33と、第1リンクバー27と、第2リンクバー30とを有している。
このうち、揺動部材33は、第1ロック部材18の動きを第1リンクバー27へ伝達することができるように設けられている。また、第2リンクバー30の動きを第1ロック部材18へ伝達することができるように設けられている。具体的に、揺動部材33は、第1揺動軸34と、第1穴部35と、当接部36と、第3突起部37とを有している。
【0037】
また、第1リンクバー27は、引っ張ることによって第2ロック部材22に対して力を伝達することができるように構成されている。具体的に、第1リンクバー27は、フック部28と、第2穴部29とを有している。
またさらに、第2リンクバー30は、カバー開レバー38の動きを揺動部材33へ伝達することができるように構成されている。具体的に、第2リンクバー30は、第4突起部32と、凹部31とを有している。
【0038】
ここで、第1ロック部材18には、第1突起部20が形成されている。また、第1ロック部材18は、図示しないガイド部材によって、一例として幅方向Xに摺動可能にガイドされている。さらに、第1ロック部材18は、付勢手段の一例である第1圧縮ばね21によってカバー部材15から突出する方向(図5における左方向)へ付勢されている。
第2ロック部材22についても、第1ロック部材18と同様である。第2ロック部材22には、第2突起部24が形成されている。また、第2ロック部材22は、幅方向Xに摺動可能にガイドされている。さらに、第2ロック部材22は、第2圧縮ばね25によってカバー部材15から突出する方向(図5における右方向)へ付勢されている。
【0039】
また、カバー開レバー38は、第2揺動軸39と、第5突起部40とを有している。カバー開レバー38は、第2揺動軸39を中心に揺動可能に設けられている。また、第5突起部40は、第2揺動軸39を基準としたユーザーが操作する箇所と反対側に形成されている。またさらに、第5突起部40は、第2リンクバー30の凹部31に入るように構成されている。
【0040】
また、第2リンクバー30は、図示しないガイド部材によって、一例として幅方向Xと直交するY軸方向に摺動可能にガイドされている。またさらに、第2リンクバー30の第4突起部32は、揺動部材33の当接部36と当接可能に構成されている。
そして、揺動部材33は、第1揺動軸34を中心として揺動可能に設けられている。また、第1穴部35には、第1ロック部材18に設けられた第1突起部20が入るように構成されている。
【0041】
尚、第1穴部35の形状は正円ではなく、第1揺動軸34を中心とした放射方向に第1突起部20との間で隙間ができる形状である。この理由は、第1ロック部材18が直線移動するのに対して、揺動部材33が揺動するからである。つまり、第1突起部20の軌跡と第1穴部35の軌跡とが異なるからである。そして、前記隙間が両者の軌跡の差を吸収することができるように構成されている。
【0042】
また、揺動部材33の第3突起部37は、第1リンクバー27の第2穴部29に回動自在に嵌っている。
またさらに、第1リンクバー27のフック部28は、第2ロック部材22の第2突起部24と当接し、第2ロック部材22が退避する方向へ引っ張ることができるように構成されている。
【0043】
図4および図5(A)(B)に示す如く、カバー部材15が完全に閉じた状態、かつ、カバー開レバー38が操作されていない状態では、第1ロック部材18の先端は、第1ロック穴部13に入っている。同様に、第2ロック部材22の先端は、第2ロック穴部14に入っている。従って、ロック手段17によって、カバー部材15が閉じた状態で基体部12に対するカバー部材15の姿勢をロックすることができる。
【0044】
図6(A)(B)に示すのは、はロック解除状態におけるリンク機構26の要部を示す平面透視図である。このうち、図6(A)は第1ロック部材18が設けられている側である。一方、図6(B)は図6(A)の反対側である第2ロック部材22が設けられている側である。
図6(A)(B)に示す如く、カバー部材15が閉まっており、ロックされた状態で、前述したように送り経路10内で用紙Pが詰まった場合、ユーザーは、カバー開レバー38を操作して、カバー部材15を開く。この際、ユーザーは、カバー開レバー38の一端側を鉛直方向であるZ軸の矢印方向である上方へ引き上げると、他端側に設けられた第5突起部40がX軸およびZ軸と直交するY軸の矢印方向へ揺動する。
【0045】
すると、凹部31に入っている第5突起部40の揺動によって、第2リンクバー30は引っ張られてY軸の矢印方向へ摺動する。このとき、第2リンクバー30の第4突起部32が、揺動部材33の当接部36と当接し、揺動部材33を図中における時計方向へ揺動させる。これに伴って、揺動部材33の第1穴部35が、第1ロック部材18の第1突起部20を介して、第1圧縮ばね21の付勢力に抗して第1ロック部材18が退避する方向であるX軸の矢印方向へ第1ロック部材18を移動させるように作用する。
【0046】
また、同様に、揺動部材33の第3突起部37が、第1リンクバー27の第2穴部29を介して、第1リンクバー27をX軸の矢印と逆方向へ移動させるように作用する。このとき、第1リンクバー27のフック部28が、第2ロック部材22の第2突起部24を介して、第2圧縮ばね25の付勢力に抗して第2ロック部材22が退避する方向であるX軸の矢印と逆方向へ第2ロック部材22を移動させる。
【0047】
その結果、第1ロック部材18の先端は、基体部12の第1ロック穴部13から抜けることができる。同様に、第2ロック部材22の先端は、基体部12の第2ロック穴部14から抜けることができる。つまり、ロックが解除された状態である。
そして、ユーザーは、カバー部材15を開いて、送り経路10内で詰まった用紙Pを取り出すことができる。
【0048】
図7(A)(B)に示すのは、ロック状態となる際のリンク機構26の要部を示す平面透視図である。このうち、図7(A)は第1ロック部材18が設けられている側である。一方、図7(B)は図7(A)の反対側である第2ロック部材22が設けられている側である。
図7(A)(B)に示す如く、ユーザーがカバー部材15を閉じる際、第1ロック部材18の前述した第1傾斜部19が基体部12と当接する。
【0049】
そして、カバー部材15が閉まる方向への力が作用することにより、第1ロック部材18が退避する方向であるX軸の矢印方向へのベクトル成分の力が発生する。該力により、第1ロック部材18がX軸の矢印方向へ押し込まれる。これに伴って、第1ロック部材18の第1突起部20が、揺動部材33を図中における時計方向へ揺動させる。そして、揺動部材33の第3突起部37が、第1リンクバー27の第2穴部29を介して、第1リンクバー27をX軸の矢印と逆方向へ摺動させるように作用する。
【0050】
さらに、第1リンクバー27のフック部28が、第2ロック部材22の第2突起部24を介して、第2ロック部材22が退避する方向であるX軸の矢印と逆方向へ第2ロック部材22を摺動させる。
この際、第2ロック部材22の前述した第2傾斜部23が基体部12と当接し、カバー部材15が閉まる方向への力により、第1ロック部材18が退避する方向であるX軸の矢印と逆方向へのベクトル成分の力が発生する。これによっても、第2ロック部材22は退避する方向であるX軸の矢印と逆方向へ移動する。
【0051】
ここで、ユーザーは、カバー部材15における幅方向Xの中心Nを基準とした操作部3が設けられている側である第1ロック部材18が設けられている側を、カバー部材15が閉まる方向へ押してカバー部材15を閉めようとする。つまり、第1傾斜部19が基体部12と当接し閉まる方向へカバー部材15が押されることにより、X軸の矢印の方向への前記ベクトル成分の力は確実に生じる。
【0052】
これにより、第1ロック部材18は、確実に押し込まれる。そして、前述したように、第1ロック部材18の退避移動に伴って、第2ロック部材22も退避移動する。
つまり、少なくとも、カバー部材15における前記中心Nを基準とした第1ロック部材18が設けられている側を閉まる方向へ押すことにより、第1ロック部材18および第2ロック部材22の両方を退避させることができる。
【0053】
そして、完全に閉まったとき、第1圧縮ばね21の付勢力によって、第1ロック部材18の先端は、カバー部材15から突出する方向へ移動し、基体部12の第1ロック穴部13に入り込む。同様に、第2圧縮ばね25の付勢力によって、第2ロック部材22の先端は、カバー部材15から突出する方向へ移動し、基体部12の第2ロック穴部14に入り込む。その結果、前述した図5(A)(B)に示すロックされた状態となる。
【0054】
ここで、リンク機構26の第1リンクバー27は、第2ロック部材22を引っ張るように作用するが、押し込むようには作用しない。つまり、押し込む際に屈曲してしまうことを考慮する必要がない。従って、第1リンクバー27を糸のように細く構成することができる。これにより、リンク機構26のスペースを小さくすることができ、カバー部材15を薄くすることができ有効である。また、その分、媒体搬送装置7、プリンター1全体をコンパクトにすることもできる。第1リンクバー27は、例えば、糸でもよい。尚、引っ張る前の状態では、弛んでいてもよい。
【0055】
また、第1ロック部材18および第2ロック部材22が移動した際、揺動部材33は、第2リンクバー30に対して何ら作用を及ぼさない構成である。具体的には、揺動部材33の当接部36が、第2リンクバー30の第4突起部32から離間する方向へ揺動する。言い換えると、第1ロック部材18および第2ロック部材22が退避移動する際の揺動部材33の揺動方向への揺動を、第2リンクバー30が許容する「遊びB2」が設けられている。
【0056】
従って、カバー部材15を完全に閉めてロック状態にした際、カバー開レバー38は揺動しない。その結果、カバー開レバー38によってユーザーが怪我をする虞がない。また、カバー開レバー38が揺動した際の騒音が生じる虞がない。またさらに、カバー開レバー38の上に物が置かれていた場合であっても、該物が破損する虞がない。さらに、該物が置かれていた場合であっても、確実にカバー部材15を完全に閉めてロック状態にすることができる。
【0057】
図8(A)(B)に示すのは、第2ロック部材22が遅れてロック状態となる様子を示す平面透視図である。このうち、図8(A)は第1ロック部材18が設けられている側である。一方、図8(B)は図8(A)の反対側である第2ロック部材22が設けられている側である。
また、図9(A)(B)に示すのは、図8(A)(B)に示す状態からカバー部材15における第2ロック部材22が設けられた側がカバー部材15の閉まる方向へ移動した様子を示す平面透視図である。このうち、図9(A)は第1ロック部材18が設けられている側である。一方、図9(B)は図9(A)の反対側である第2ロック部材22が設けられている側である。
【0058】
前述したように、カバー部材15における第1ロック部材18が設けられている側を、ユーザーが、カバー部材15の閉まる方向へ押してカバー部材15を閉めようとすると、通常は、カバー部材15は完全に閉まる。
ところが、比較的大きいサイズの用紙Pに対応するプリンター1となると、カバー部材15は、その分、幅方向Xに長尺になる。
【0059】
そのため、カバー部材15が、幅方向Xにねじれるように撓む虞がある。係る場合に、ユーザーが、カバー部材15における第1ロック部材18が設けられている側を、カバー部材15の閉まる方向へ押してカバー部材15を閉めようとする。すると、カバー部材15における第1ロック部材18が設けられている側が、第2ロック部材22が設けられている側より先行するように、カバー部材15がねじれるように撓む。
【0060】
係る場合、図8(A)(B)に示す如く、第1ロック部材18の先端は、前述したように、第1傾斜部19の作用により、一度退避してから基体部12の第1ロック穴部13に入り込む。
一方、第2ロック部材22については、第1ロック部材18より遅れたタイミングで、第2傾斜部23が基体部12に当接する。
【0061】
ここで、第1ロック部材18の先端が第1ロック穴部13に入り込んだため、ユーザーは、完全に閉まった状態であると思いこみ、カバー部材15から手を離すことが考えられる。係る場合、前述したカバー部材15が閉まる方向への力として、カバー部材15における前記中心Nより第2ロック部材22が設けられている側の自重が第2傾斜部23と基体部12との間で作用する。該自重は、比較的小さい力で作用する。
【0062】
そこで、前述したように、第2ロック部材22が退避する方向へ移動した際、第2ロック部材22は、第1リンクバー27に対して何ら作用を及ぼさないように構成されている。具体的には、第2ロック部材22の第2突起部24が、第1リンクバー27のフック部28から離間する方向へ移動する。言い換えると、第2ロック部材22が退避移動する際の第2ロック部材22の退避方向への移動を、第1リンクバー27が許容する「遊びB1」が設けられている。
【0063】
従って、第2ロック部材22が退避する方向であるX軸の矢印と逆方向へ第2ロック部材22を移動させるために、第1リンクバー27、揺動部材33および第1ロック部材18を移動させるための仕事をしなくてもよい。その結果、前記自重の大きさを、第2ロック部材22のみを第2圧縮ばね25に抗して押し込むには十分な大きさとすることができる。
【0064】
これにより、図9(A)(B)に示す如く、カバー部材15における第2ロック部材22が設けられている側の自重によって、第2ロック部材22をX軸の矢印と逆方向へ退避移動させることができる。そして、自重によってカバー部材15における第2ロック部材22が設けられている側がカバー部材15の閉まる方向へさらに揺動する。その結果、第2ロック部材22の先端は、基体部12の第2ロック穴部14と対向したとき、第2圧縮ばね25の付勢力によって、第2ロック穴部14に入り込むことができる。そして、前述した図4および図5(A)(B)に示すロック状態となる。
【0065】
つまり、第1ロック部材18が設けられている側が先にロックされた所謂、片側ロック状態になろうとする場合であっても、僅かに遅れたタイミングで第2ロック部材22が設けられている側もロックすることができる。そして、結果的に、カバー部材15が完全に閉まっておりロックされた状態にすることができる。
尚、仮に、前記片側ロック状態となった場合であっても、カバー部材15における第2ロック部材22が設けられている側を、カバー部材15が閉まる方向へ軽く押すだけでよい。それだけで、カバー部材15が完全に閉まりロックされた状態にすることができる。
【0066】
また、プリンター本体2より上方に設けられた媒体搬送装置7におけるカバー部材15が完全に閉じた状態をロックするロック手段17のリンク機構26について説明したが、媒体搬送装置7に限らない。プリンター本体2にも、媒体搬送装置7と同様に、用紙(P)を送る送り手段(9)と、送り経路(10)とが設けられている。従って、プリンター本体2に送り経路(10)の一部を構成するカバー部材(15)を設けて、さらに、前述したリンク機構26を適用してもよい。
【0067】
本実施例の開閉部材であるカバー部材15のロック装置としてのロック手段17は、基体部12に対して開閉するカバー部材15と、カバー部材15の自由端側における幅方向X両側の一方に設けられ、カバー部材15から基体部12へ突出する方向へ付勢されており、カバー部材15が閉じた状態において、基体部12と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材18と、カバー部材15の自由端側における幅方向X両側の他方に設けられ、カバー部材15から基体部12へ突出する方向へ付勢されており、カバー部材15が閉じた状態において、基体部12と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材22と、第2ロック部材22と係合可能な第1係合部の一例であるフック部28を有しており、第1ロック部材18が退避する方向への第1ロック部材18の動きを第2ロック部材22へ伝達するリンク機構26と、を備え、第1ロック部材18および第2ロック部材22が突出して基体部12と係合する方向がロック方向であり、第1ロック部材18および第2ロック部材22が退避する方向がロックを解除する方向であり、リンク機構26は、第1ロック部材18が退避する方向へ第1ロック部材18が移動する際、フック部28が第2ロック部材22と係合し第2ロック部材22が退避する方向へ第2ロック部材22を引き込んで移動させ、第1ロック部材18が突出した状態において、第2ロック部材22が退避する方向へ第2ロック部材22が移動する際、フック部28において第2ロック部材22との間に設けられた遊びB1によってフック部28が第2ロック部材22と係合せず、第2ロック部材22の動きを第1ロック部材18へ伝達させない構成であることを特徴とする。
【0068】
また、本実施例において、リンク機構26に力を伝達するレバーであるカバー開レバー38と、リンク機構26の動力伝達経路上に設けられた第2係合部の一例である第4突起部32と、をさらに備えており、リンク機構26は、カバー開レバー38が一の方向へ揺動する際、第4突起部32が動力伝達下流側の被係合部材の一例である揺動部材33と係合し、カバー開レバー38の動きを第1ロック部材18および第2ロック部材22へ伝達し、第1ロック部材18および第2ロック部材22をそれぞれ前記退避する方向へ移動させ、第1ロック部材18および第2ロック部材22がそれぞれ前記退避する方向へ移動する際、第4突起部32において揺動部材33との間に設けられた遊びB2によって第4突起部32が揺動部材33と係合せず、第1ロック部材18および第2ロック部材22の動きをカバー開レバー38へ伝達させない構成であることを特徴とする。
【0069】
またさらに、本実施例において、カバー開レバー38は、カバー部材15の幅方向Xの中心Nに対して第1ロック部材18側に偏倚した位置に配設されていることを特徴とする。
また、本実施例において、第1ロック部材18、およびカバー部材15が閉じる際に基体部12における第1ロック部材18が係わり合う第1の部位12aの少なくとも一方は、カバー部材15が閉まる方向へ揺動するに従って第1ロック部材18を退避させる第1傾斜部19を有しており、第2ロック部材22、およびカバー部材15が閉じる際に基体部12における第2ロック部材22が係わり合う第2の部位(図示せず)の少なくとも一方は、カバー部材15が閉まる方向へ揺動するに従って第2ロック部材22を退避させる第2傾斜部23を有している構成であることを特徴とする。
尚、本実施例では、第1ロック部材18の先端に第1傾斜部19が設けられている。同様に、第2ロック部材22の先端に第2傾斜部23が設けられている。
【0070】
また、本実施例では、第1ロック部材18、第2ロック部材22およびリンク機構26をカバー部材15側に設けたが、前述したように、これらを基体部12側に設けてもよい。
係る場合、カバー部材(15)のロック手段(17)は、基体部(12)に対して開閉するカバー部材(15)と、基体部(12)におけるカバー部材(15)の自由端側の幅方向X両側の一方に対応する箇所(上記実施例において第1ロック穴部13が設けられていた箇所)に設けられ、基体部(12)からカバー部材(15)へ突出する方向へ付勢されており、カバー部材(15)が閉じた状態において、カバー部材(15)と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材(18)と、基体部(12)におけるカバー部材(15)の自由端側の幅方向両側の他方に対応する箇所(上記実施例において第2ロック穴部14が設けられていた箇所)に設けられ、基体部(12)からカバー部材(15)へ突出する方向へ付勢されており、カバー部材(15)が閉じた状態において、カバー部材(15)と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材(22)と、第2ロック部材(22)と係合可能なフック部(28)を有しており、第1ロック部材(18)が退避する方向への第1ロック部材(18)の動きを第2ロック部材(22)へ伝達するリンク機構(26)と、を備え、第1ロック部材(18)および第2ロック部材(22)が突出して基体部(12)と係合する方向がロック方向であり、第1ロック部材(18)および第2ロック部材(22)が退避する方向がロックを解除する方向であり、リンク機構(26)は、第1ロック部材(18)が退避する方向へ第1ロック部材(18)が移動する際、フック部(28)が第2ロック部材(22)と係合し第2ロック部材(22)が退避する方向へ第2ロック部材(22)を引き込んで移動させ、第1ロック部材(18)が突出した状態において、第2ロック部材(22)が退避する方向へ第2ロック部材(22)が移動する際、フック部(28)において第2ロック部材(22)との間に設けられた遊び(B1)によってフック部(28)が第2ロック部材(22)と係合せず、第2ロック部材(22)の動きを第1ロック部材(18)へ伝達させない構成となる。
【0071】
本実施例の媒体搬送装置7は、媒体としての一例である用紙Pを載置する載置部8と、載置された用紙Pを送り方向下流側へ送る送り手段9と、用紙Pが送られる経路である送り経路10の少なくとも一部を構成し、基体部12に対して開閉可能なカバー部材15と、カバー部材15が閉じた状態をロックするロック手段17と、を備えていることを特徴とする。
【0072】
尚、本実施例では、媒体搬送装置7におけるロック手段17について説明したが、前述したように、プリンター本体2におけるロック手段(17)でもよい。
係る場合、記録装置としてのプリンター本体2は、被記録媒体としての一例である用紙(P)を送り方向下流側へ送る送り手段(9)と、用紙(P)が送られる経路である送り経路(10)の少なくとも一部を構成し、基体部(12)に対して開閉可能なカバー部材(15)と、カバー部材(15)が閉じた状態をロックするロック手段(17)と、送られた用紙(P)に対して記録する記録部6と、を備えている。
【0073】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 プリンター、2 プリンター本体、3 操作部、4 ボタン、5 スキャナー部、
6 記録部、7 媒体搬送装置、8 載置部、9 送り手段、10 送り経路、
11 排出部、12 基体部、12a 第1の部位、13 第1ロック穴部、
14 第2ロック穴部、15 カバー部材(開閉部材)、16 開閉軸、
17 ロック手段(ロック装置)、18 第1ロック部材、19 第1傾斜部、
20 第1突起部、21 第1圧縮ばね、22 第2ロック部材、23 第2傾斜部、
24 第2突起部、25 第2圧縮ばね、26 リンク機構、27 第1リンクバー、
28 フック部(第1係合部)、29 第2穴部、30 第2リンクバー、31 凹部、
32 第4突起部(第2係合部)、33 揺動部材(被係合部材)、34 第1揺動軸、
35 第1穴部、36 当接部、37 第3突起部、38 カバー開レバー、
39 第2揺動軸、40 第5突起部、A 送り方向、B1 遊び、B2 遊び、
P 用紙、N 幅方向の中心、X 幅方向、Y 幅方向と直交する方向、Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部に対して開閉する開閉部材と、
該開閉部材の自由端側における幅方向両側の一方に設けられ、前記開閉部材から前記基体部へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記基体部と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材と、
前記開閉部材の自由端側における幅方向両側の他方に設けられ、前記開閉部材から前記基体部へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記基体部と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材と、
該第2ロック部材と係合可能な第1係合部を有しており、前記第1ロック部材が退避する方向への該第1ロック部材の動きを前記第2ロック部材へ伝達するリンク機構と、を備え、
前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が突出して前記基体部と係合する方向がロック方向であり、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が退避する方向がロックを解除する方向であり、
前記リンク機構は、
前記第1ロック部材が退避する方向へ該第1ロック部材が移動する際、前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合し該第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材を引き込んで移動させ、
前記第1ロック部材が突出した状態において、前記第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材が移動する際、前記第1係合部において前記第2ロック部材との間に設けられた遊びによって前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合せず、前記第2ロック部材の動きを前記第1ロック部材へ伝達させない構成である開閉部材のロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉部材のロック装置において、前記リンク機構に力を伝達するレバーと、
前記リンク機構の動力伝達経路上に設けられた第2係合部と、をさらに備えており、
前記リンク機構は、
前記レバーが一の方向へ揺動する際、前記第2係合部が動力伝達下流側の被係合部材と係合し、該レバーの動きを前記第1ロック部材および前記第2ロック部材へ伝達し、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材をそれぞれ前記退避する方向へ移動させ、
前記第1ロック部材および前記第2ロック部材がそれぞれ前記退避する方向へ移動する際、前記第2係合部において前記被係合部との間に設けられた遊びによって前記第2係合部が前記被係合部材と係合せず、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材の動きを前記レバーへ伝達させない構成である開閉部材のロック装置。
【請求項3】
請求項2に記載の開閉部材のロック装置において、前記レバーは、前記開閉部材の幅方向の中心に対して前記第1ロック部材側に偏倚した位置に配設されていることを特徴とする開閉部材のロック装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の開閉部材のロック装置において、前記第1ロック部材、および前記開閉部材が閉じる際に前記基体部における前記第1ロック部材が係わり合う第1の部位の少なくとも一方は、前記開閉部材が閉まる方向へ揺動するに従って前記第1ロック部材を退避させる第1傾斜部を有しており、
前記第2ロック部材、および前記開閉部材が閉じる際に前記基体部における前記第2ロック部材が係わり合う第2の部位の少なくとも一方は、前記開閉部材が閉まる方向へ揺動するに従って第2ロック部材を退避させる第2傾斜部を有している構成である開閉部材のロック装置。
【請求項5】
基体部に対して開閉する開閉部材と、
前記基体部における前記開閉部材の自由端側の幅方向両側の一方に対応する箇所に設けられ、前記基体部から前記開閉部材へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記開閉部材と係合して前記閉じた状態を保持する第1ロック部材と、
前記基体部における前記開閉部材の自由端側の幅方向両側の他方に対応する箇所に設けられ、前記基体部から前記開閉部材へ突出する方向へ付勢されており、前記開閉部材が閉じた状態において、前記開閉部材と係合して前記閉じた状態を保持する第2ロック部材と、
該第2ロック部材と係合可能な第1係合部を有しており、前記第1ロック部材が退避する方向への該第1ロック部材の動きを前記第2ロック部材へ伝達するリンク機構と、を備え、
前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が突出して前記基体部と係合する方向がロック方向であり、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材が退避する方向がロックを解除する方向であり、
前記リンク機構は、
前記第1ロック部材が退避する方向へ該第1ロック部材が移動する際、前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合し該第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材を引き込んで移動させ、
前記第1ロック部材が突出した状態において、前記第2ロック部材が退避する方向へ該第2ロック部材が移動する際、前記第1係合部において前記第2ロック部材との間に設けられた遊びによって前記第1係合部が前記第2ロック部材と係合せず、前記第2ロック部材の動きを前記第1ロック部材へ伝達させない構成である開閉部材のロック装置。
【請求項6】
媒体を載置する載置部と、
載置された媒体を送り方向下流側へ送る送り手段と、
媒体が送られる経路の少なくとも一部を構成し、基体部に対して開閉可能なカバー部材と、
該カバー部材が閉じた状態をロックするロック手段と、を備えた媒体搬送装置であって、
前記ロック手段は、請求項1から5のいずれか1項に記載された開閉部材のロック装置を備えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項7】
被記録媒体を送り方向下流側へ送る送り手段と、
被記録媒体が送られる経路の少なくとも一部を構成し、基体部に対して開閉可能なカバー部材と、
該カバー部材が閉じた状態をロックするロック手段と、
送られた被記録媒体に対して記録する記録部と、を備えた記録装置であって、
前記ロック手段は、請求項1から5のいずれか1項に記載された開閉部材のロック装置を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−175059(P2012−175059A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38538(P2011−38538)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】