説明

間接活線工具

【課題】電柱上等の高所で間接活線工事を行う際、実際に作業を行う作業員が工事部位を詳細に確認しつつ、間接活線工事を行うことができるようにする。
【解決手段】間接活線工具10は、構造物の高所で間接活線工事を行う際に用いられ、間接活線工事の際に作業員によって把持される把持棒部11と、把持棒部に回動可能に連結された絶縁性の操作棒部13とを有し、操作棒部の先端に選択的に工具が装着され、間接活線工事の際操作棒部を回動操作する。操作棒部の先端側には工具の近辺を撮像する撮像部19が配設され、把持棒部の周面には撮像部で撮像された画像を表示するモニター部20が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間に架設される送配電線等を活線の状態で工事(所謂間接活線工事)を行う際に用いられる間接活線工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、構造物等の高所、例えば、電柱間に架設される配電線等を活線状態で工事する間接活線工事においては、作業員が配電線(活線)に触れて感電しないようにしつつ、工事を行う必要があるため、間接活線工具が使用される。
【0003】
間接活線工事の際には、作業内容に応じて間接活線工具の先端に種々の先端工具を選択的に取り付け(先端工具の付け替えを行い)、電柱上の配電線又は支持碍子等を目視しつつ活線作業を行うことになる。
【0004】
ところで、間接活線工具を用いて活線作業を行う際には、作業員と工事部位とが離間している関係上、工事部位の細かい箇所までは目視することが難しく、高所作業においては、別の作業員が地上から双眼鏡を用いて工事部位を観察する等して、作業指示を与えるようにしている。
【0005】
一方、電線の異常を容易に点検するため、電線を全周にわたってカメラで撮影する装置が知られており、この検査装置では、絶縁操作棒の上端部に固定される枠体に電線上を転動可能なローラ3を設け、揺動板の両端部に電線を両側から撮影する一対のCCDカメラが固定されたアームバーを設けている。そして、揺動板を所定の回転角度往復動をさせつつ、CCDカメラで電線外周を撮影するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さらに、配電線における碍子の割れ等を点検するための活線点検器具が知られており、この活線点検器具はカメラを備え、活線点検器具を絶縁棒の先端に装着し、カメラで点検個所を撮影する。そして、得られた画像を無線にて地上の受信機に電送し、受信した画像を地上のモニターに表示して点検するようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−94935号公報
【特許文献2】特開2003−9326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したように、間接活線工具を用いて間接活線工事を行う際においては、実際に作業する作業員にとっては、作業員と工事部位とが離間している関係上、工事部位の細かい箇所までは目視することが難しく、たとえ地上から指示を受けるとしても、実際に作業を行う作業員にとっては自分自身で確認した訳ではないので、作業に手間取ってしまう。さらに、電柱上で見上げる格好で作業を行うとなると、天候によって極めて眩しく、工事部位を確認しつつ、間接活線工具を用いて作業を行うことが極めて困難となってしまう。
【0008】
一方、特許文献1に記載の装置は、電線の異常を検知するためのものであって、間接活線工具を用いた高所活線作業において、工事部位を確認しつつ、間接活線工事を行うことは困難である。
【0009】
また、特許文献2においては、活線の点検を行う際に、活線点検器具の備えられたカメラで点検個所を撮影し、その画像を地上でモニターしているものの、電柱上等の高所で間接活線工事を行うに際して、実際に作業を行う作業員が工事部位を自分自身で確認しつつ、間接活線工具を用いて間接活線工事を行うことができず、地上にいる別の作業員が双眼鏡等で工事部位を確認して指示を与える場合と何等変わらない。
【0010】
従って、本発明は、電柱上等の高所で間接活線工事を行う際、実際に作業を行う作業員が工事部位を詳細に確認しつつ、間接活線工事を行うことのできる間接活線工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明は、構造物の高所で間接活線工事を行う際に用いられ、前記間接活線工事の際に作業員によって把持される把持棒部と、前記把持棒部に回動可能に連結された絶縁性の操作棒部とを有し、前記操作棒部の先端に選択的に工具が装着され、前記間接活線工事の際前記操作棒部を回動操作するようにした間接活線工具であって、前記操作棒部の先端側に配設され前記工具の近辺を撮像する撮像部と、前記把持棒部の周面に配設され前記撮像部で撮像された画像を表示するモニター部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
(1)に記載の間接活線工具では、操作棒部の先端側に工具の近辺を撮像する撮像部を配設し、間接活線工事を行う際に作業員が把持する把持棒部にモニター部を配設して、このモニター部に撮像部で撮像された画像を表示するようにしたので、間接活線工事の際に、作業員はモニター部によって手元で工具の周辺を詳細に確認することができ、間接活線工事を容易に行うことができる。
【0013】
(2) 本発明は(1)に記載の間接活線工具において、前記撮像部と前記モニター部とは無線によって接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
(2)に記載の間接活線工具では、撮像部とモニター部とは無線によって接続されているので、間接活線工具に配線等を行う必要がなく、間接活線工事の際に配線が邪魔になって工事に支障を来たすことがない。
【0015】
(3) 本発明は(2)に記載の間接活線工具において、前記モニター部は前記把持棒部の周面に着脱可能に配設されていることを特徴とするものである。
【0016】
(3)に記載の間接活線工具では、モニター部が把持棒部に着脱可能であるから、撮像部さえ設けておけば、複数の間接活線工具に共通にモニター部を使用することができる。さらに、既存の間接活線工具の改良を最小限に留めることができる。
【0017】
(4) 本発明は(1)〜(3)のいずれかに記載の間接活線工具において、作業員によって操作され前記操作棒部を回動操作するための操作体が前記把持棒部に設けられ、前記操作体は前記操作棒部の延在方向において前記モニター部よりも下側に配設されていることを特徴とするものである。
【0018】
(4)に記載の間接活線工具では、操作棒部を回動操作するための操作体が操作棒部の延在方向においてモニター部よりも下側に配設されているので、作業員はモニター部の画面を視認しつつ、容易に操作体を操作することができる。
【0019】
(5) 本発明は(1)に記載の間接活線工具において、前記撮像部として光ファイバースコープを用いるようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
(5)に記載の間接活線工具では、撮像部として光ファイバースコープを用いるようにしたので、撮像対象となる工事部位等に光を照射して、鮮明な画像を得ることができ、暗がりにおいても工事を実行できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、操作棒部の先端側に工具の近辺を撮像する撮像部を配設するとともに、間接活線工事を行う際に作業員が把持する把持棒部にモニター部を配設して、モニター部に撮像部で撮像された画像を表示するようにしたから、間接活線工事の際に、作業員はモニター部によって手元で工具の周辺を詳細に確認することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態による間接活線工具の一例を示す側面図である。図2は図1に示す間接活線工具の先端金具を示す図である。図3は図1に示すモニター部を側方から示す外観図である。図4は図1に示す間接活線工具を用いた高所作業の一例を示す図である。
【0023】
図1において、間接活線工具10は、丸棒状の把持棒部11を有しており、この把持棒部11の先端には第1の連結部12が取り付けられている。この第1の連結部12には所定の間隔をおいて、絶縁性の第1及び第2の操作棒部13及び14が配設され(これら操作棒部は丸棒状であり、例えば、FRPパイプである)、第1の操作棒部13は第1の連結部12に対して回動可能に配設されている。一方、第2の操作棒部14は第1の連結部12に固定されている。従って、第1の操作棒部13は可動側絶縁棒と呼ばれ、第2の操作棒部14は固定側絶縁棒と呼ばれることがある。
【0024】
第1及び第2の操作棒部13及び14の先端は第2の連結部15に連結されている。そして、第1の操作棒部13は第2の連結部15に回動可能に支持され、第2の操作棒部14は第2の連結部15に固定されている。第1の操作棒部13に対応付けて、第2の連結部15には先端金具16(例えば、アルミニウム合金製)が配置され、第1の操作棒部13が回動すると、先端金具16が回動する。つまり、先端金具16は第1の操作棒部13に連結されていることになる。
【0025】
図2に示すように、先端金具16には、各種工具(例えば、電線皮剥ぎ器、テープ巻き器、広角クランプ、又は電線把持器等)を装着するための穴部16aが形成されており、この穴部16aに各種工具の端部(取り付け部)を挿入し、ボルト部17を回動させて、ボルト部17によって各種工具を穴部16a、つまり、先端金具16に保持する。
【0026】
第2の連結部15の側面には、第1の操作棒部13側において外方向に突出する腕部18が設けられており、この腕部18の表面(上面)には、撮像部19が保持されている。なお、この撮像部19は、例えば、CCDカメラと送信機(画像処理部を含む)とを有している。
【0027】
また、把持棒部11にはモニター部20が着脱可能に取り付けられており、このモニター部20は、例えば、液晶表示装置及び受信機(画像処理部を含む)を有している。図3に示すように、モニター筐体20aの裏面には、一対の円弧状取り付け体20bが備えられており、これら一対の取り付け体20bで規定される円の直径は、把持棒部11の径よりも僅かに小さく、取り付け体20bを弾性体で形成すれば、これら取り付け体20bで把持棒部11を挟持したとき、モニター部20を把持棒部11の任意の位置に装着することができる。
【0028】
モニター部20が装着された位置よりも下側において、把持棒部11には操作盤21が取り付けられている。この操作盤21は把持棒部11内に内蔵されたモータ(図示せず)を駆動操作するためのものであり、操作盤21には電源ボタン21a、正転ボタン(L)21b、逆転ボタン(R)21cが備えられている。
【0029】
図1において、第1及び第2の操作棒部13及び14には円錐台状の雨防具22及び23が取り付けられており、図示のように雨防具22及び23の上面は、それぞれ第1の操作棒部13及び14の径よりも大きい。また、雨防具22及び23の長さは、雨防具22及び23の下側において、第1及び第2の操作棒部13及び14に雨が伝わらないだけの十分な長さを有している。
【0030】
同様にして、第1の連結部12の直下において、把持棒部11には、雨防具24が取り付けられており、この雨防具24は、前述の雨防具22及び23とその形状は相似であるが、その大きさは雨防具22及び23よりも大きく、この雨防具24によって把持棒部11に雨水が伝わることを防止している。なお、雨防具24は安全限界を示す安全限界鍔としても機能し、例えば、赤色の合成ゴム製である。
【0031】
把持棒部11内には、操作盤21付近において、モータ(図示せず)が内蔵されるとともに、このモータに電源を供給するバッテリー(図示せず)が内蔵されている。そして、操作盤21の操作によって、モータが選択的に正転又は逆転し、これによって、第1の操作棒部13、つまり、先端金具16が回動する。
【0032】
また、撮像部19にも電池(図示せず)が内蔵され、モニター部20にも電池が内蔵されている。図示はしないが、撮像部19及びモニター部20にはそれぞれ電源スイッチが備えられており、撮像部19で撮像された画像は、無線によってモニター部20に送られて、モニター部20で見ることができる。
【0033】
図4を参照すると、間接活線工具10を使用する際には、先端金具16に当該間接活線工事に適した工具(例えば、電線皮剥ぎ器)30を装着する。予め撮像部19の電源をオンした後、作業員は電柱31に上って、操作盤21上の電源ボタン21aをオンする。
【0034】
また、必要に応じてモニター部20の電源をオンする。続いて、作業員は操作盤21上の正転ボタン21b又は逆転ボタン21cを押して、モータを正転又は逆転駆動し、第1の操作棒部13を介して先端金具16を回転させる。そして、工具30を電線32に対して所望の位置に位置付ける。
【0035】
この際、工具30付近が撮像部19で撮像され、作業員の手元に位置するモニター部20にその画像が映し出される。そして、作業員はモニター部20の画面を見つつ、操作盤21を操作して、モータを駆動し、工具30の位置を微調整することになる。つまり、作業員から工具30までの距離は遠いが、作業員の手元に位置するモニター部20の画面には、工具30付近の画像が映し出されているから、この画像を見れば、作業員は容易に工具30付近の状況を把握することができる。
【0036】
さらに、作業員は、操作盤21上の正転ボタン21b又は逆転ボタン21cによってモータを回転駆動させて、これによって、工具30を所望の位置に位置付けることができるから、作業員の負担を軽減することができる。
【0037】
特に、高所における作業においては、間接活線工具10自体の位置を変えることなく、モータによって工具30の位置を変えることができるから、作業員の安全が確保でき、しかも作業負担を軽減することができる。
【0038】
さらに、間接活線工具10には雨防具22、23、及び24が備えられているから、雨天においても、把持棒部11に雨水が伝わることがほとんどなく、この結果、把持棒部11を把持する作業員が感電する等の自体を確実に防止することができる。
【0039】
ところで、前述の撮像部19の代わりに、光ファイバースコープを用いるようにしてもよい。図5は、光ファイバースコープを用いた間接活線工具10を示す側面図である。図5において、図1に示す間接活線工具と同一の構成要素については同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0040】
ファイバースコープ40は、柔軟性のある光ファイバーを束にして、その一端(先端)にレンズ41を取り付け、他端にアイピース又はカメラ(例えば、CCD:図示せず)を取り付けたものである。光ファイバー42は第2の連結部15に支持され、第2の操作棒部14、第1の連結部12、及び把持棒部11を通ってモニター部20に接続されている(図5においては、モニター部20は受信機を有していない)。
【0041】
レンズ41(先端)から取り入れた画像は光ファイバー42を介して他端から出力される。そして、この画像は、例えば、CCDで電気信号に変換されて、モニター部20に与えられ、モニター画面に表示される。
【0042】
レンズ41には、例えば、広角レンズを用いることが好ましく、広角レンズを用いれば先端金具16に装着された工具付近を広視野に亘って確認することができる。また、把持棒部11内に光源(図示せず)を備えて、光ファイバー42を介して導光して目標物を照明するようにしてもよい。
【0043】
なお、上述の実施の形態では、把持棒部11内にバッテリーを備える例について説明したが、電柱に架設された電線から変圧器を介して電源を取るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態による間接活線工具の一例を示す側面図である。
【図2】図1に示す間接活線工具の先端金具を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】図1に示すモニター部を側方から示す外観図である。
【図4】図1に示す間接活線工具を用いた高所作業の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態による間接活線工具の他の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 間接活線工具
11 把持棒部
12,15 連結部
13,14 操作棒部
16 先端金具
17 ボルト部
18 腕部
19 撮像部
20 モニター部
21 操作盤
22,23,24 雨防具
30 工具
31 電柱
32 電線
40 ファイバースコープ
41 レンズ
42 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の高所で間接活線工事を行う際に用いられ、前記間接活線工事の際に作業員によって把持される把持棒部と、前記把持棒部に回動可能に連結された絶縁性の操作棒部とを有し、前記操作棒部の先端に選択的に工具が装着され、前記間接活線工事の際前記操作棒部を回動操作するようにした間接活線工具であって、
前記操作棒部の先端側に配設され前記工具の近辺を撮像する撮像部と、
前記把持棒部の周面に配設され前記撮像部で撮像された画像を表示するモニター部とを有することを特徴とする間接活線工具。
【請求項2】
前記撮像部と前記モニター部とは無線によって接続されていることを特徴とする請求項1記載の間接活線工具。
【請求項3】
前記モニター部は前記把持棒部の周面に着脱可能に配設されていることを特徴とする請求項2記載の間接活線工具。
【請求項4】
作業員によって操作され前記操作棒部を回動操作するための操作体が前記把持棒部に設けられ、前記操作体は前記操作棒部の延在方向において前記モニター部よりも下側に配設されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の間接活線工具。
【請求項5】
前記撮像部として光ファイバースコープを用いるようにしたことを特徴とする請求項1記載の間接活線工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−219253(P2009−219253A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60559(P2008−60559)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】