間葉系幹細胞の最適化増殖および移植のための方法および組成物
本発明は概して、幹細胞の単離、増殖、およびそれを要する宿主への移植の組成物と方法に関する。より詳細には、本発明は最適成長条件下で増殖した自己間葉系幹細胞(MSC)を用いた標的組織の置換および修復に関する。組成物および方法は、間葉系幹細胞の最適化増殖とそれを要する患者への移植のために提供される。間葉系幹細胞(MSC)を要する患者から自己間葉系幹細胞を採取し、患者の血小板にある自己成長因子の影響下、新規成長パラメータ内で増殖させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、幹細胞の単離、増殖、およびそれを要する宿主への移植の組成物と方法に関する。より詳細には、本発明は最適成長条件下で増殖した自己間葉系幹細胞(MSC)を用いた標的組織の置換および修復に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は血液、骨髄、真皮、および骨膜に存在する多能性の芽球または胚様細胞である。一般的にこの細胞は長期間にわたり自己再生が可能であり、さらに、様々な環境条件下で軟骨、骨、およびその他の結合組織に分化することができる。最近では、多くの研究者が例えば骨や軟骨等の標的組織の修復または再生においてのこの細胞の利用の可能性を研究している。このように、間葉系幹細胞は多数の動物モデルにおいて再生能力があるということが報告されている。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5。さらに、これらの結果はヒトの臨床試験に拡大されているが、ほとんどの試験は高濃度の組み換えサイトカインおよび成長因子を用いて、単離された非自己間葉系幹細胞をインビトロ増殖することが必要とされている。例えば、ほとんどの臨床試験では、骨髄(または末梢血)から単離された間葉系幹細胞を用い、続いてその細胞を実験室環境で、多様な組み換え成長因子を含むウシ胎仔血清(FBS)を基にした培地でエキソビボ増殖している。このような強化されたウシ胎仔血清を基にした培地は、間葉系幹細胞の増殖をサポートする能力を示しているが、伝染性ベクターの二次汚染、米国食品医薬品局(FDA)に認可されていない医薬品/因子、例えば組み換えTGF−bやFGFの使用、異種間反応、および癌性前駆細胞の形成のリスク増加の可能性のリスクもある。
【0003】
さらに、間葉系幹細胞を基にした臨床試験のほとんどは、単離された間葉系幹細胞の増殖を行うために、訓練を受けた研究スタッフと実験機器が必要である。これらの技術は、医師および/または病院職員が実施するには適さず、特に医師の場合は、米国食品医薬品局により認可されていない医薬品に関して米国食品医薬品局のプロトコルや手続に法的に拘束されているため適さない。従って、間葉系幹細胞を用いた治療を実利的に実施する、つまり病院環境で病院職員が実施することは難しい。これら多くの懸念を鑑み、ほとんどの間葉系幹細胞に基づく研究は、単離され永久細胞株に培養された非自己間葉系幹細胞について行われている。
【0004】
Doucetは最近、5%血小板溶解物添加培地を用いて健康で若齢のドナーの間葉系幹細胞を増殖する方法を説明している(非特許文献6)。ただし、Doucetの研究はこれらの措置が高齢患者、変形性関節疾患(例えば変形性関節症)を持つ患者、または患者特有の特徴に対して有効であるかは確認していない。また、この研究は5%血小板溶解物添加培地以外の増殖条件は用いていない。この観点から、変形性関節症の有無、年齢、性別、および特定の遺伝的表現型によって間葉系幹細胞の成長は多様であるということが明らかになっている。そのためDoucetの研究は、間葉系幹細胞を用いた治療を要する患者のほとんどが一般的に高齢であるか、変形性関節、または臓器や脊椎脊髄疾患を持っているという現実では適用性が極めて限られている。また、Doucetのデータは、虚血壊死や骨壊死等の骨代謝の他の病状にも適用されない。さらに、Doucetの総括的な知見は性別や年齢に特異的ではなく、性別によってどのように治療すれば良いかや、高齢患者からの間葉系幹細胞の増殖についての助言がほとんどない。
【0005】
間葉系幹細胞は、サイトカイン曝露、環境条件(圧力、付着機会、継代処理等)またはその他の化学物質曝露によって培養液中で容易に分化する。例えば、様々なレベルのTGF−β、FGF、および/またはPDGFの曝露はすべて、培養液で生じる最終的な細胞表現型に影響し得る。また、細胞を培養液中により長時間放置することは分化能に影響する。細胞は特定の視覚的形態、密集度、または密度に培養することができ、いずれも最終的に生成される細胞産物およびその特定の組織修復の潜在能力に影響する。その結果、本発明は特定の修復能力を持った均質な細胞産物を生成するために、因子/パラメータの制御に焦点を合わせる。
【0006】
間葉系幹細胞で組織を置換または修復することにおいて1つ懸念されるのが、非自己細胞の使用である。間葉系幹細胞は従来、免疫特権を持つとされてきたが、最近の研究では、異種宿主内でナチュラルキラー細胞系を活性化させることを示している。(非特許文献7)これにより、宿主の免疫系がこれらの異物細胞を攻撃して移植された間葉系幹細胞の集団を破壊する可能性があり、修復能力が非常に制限されることが予想されるため、非自己細胞の使用は難しい。さらに、最近Uedaが発表した研究によると、非自己細胞の使用は他の広範囲にわたる影響の可能性があるとされている。(非特許文献8)この研究は、骨粗しょう症を持った老年マウスの骨髄ベクターが、その病気を正常なマウスに移したことを示した。これは、一度正常なマウスに移植された骨粗しょう症を持った老年マウスの間葉系幹細胞は、その病状を正常なマウスに移し得たということを示している。どのドナー間葉系幹細胞も理論的には、ドナーが移し得るすべての既知の遺伝的感受性および病気の検査を受ける必要があり、この病気伝播遺伝的ベクターは懸念を呼ぶものである。
【0007】
当技術分野では、米国食品医薬品局に認可されていない医薬品や成長因子を使わず、細胞置換を要する患者に効果的に用いることができる間葉系幹細胞増殖技術を必要としている。この置換は、患者の病状、年齢、性別、およびその他の関連の置換状態に基づいて最適増殖された自己細胞を用いて行われるべきである。さらに、公知の再生能力を持ち、厳格に品質管理された均質な細胞株を得るための自己移植技術が必要とされている。
本発明は上記の少なくとも1つの課題を解決するために行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Acostaら(2005年)「Neurosurg Focus」、第19(3)巻、E4
【非特許文献2】Barry(2003年)「Novartis Found Symp」、第249巻、p86〜102、170〜4、239〜41
【非特許文献3】Brisbyら(2004年)「Orthop Clin. North Am.」、第35(1)巻、p85〜89
【非特許文献4】BuckwalterおよびMankin(1998年)「Instr Course Lect.」、第47巻、p487〜504
【非特許文献5】Caplan(1991年)「J Orthop Res.」第9(5)巻、p641〜650参照
【非特許文献6】Doucet、Enrouら、2005年、「J. Cell Physiol」、第205(2)巻、p288〜36
【非特許文献7】Spaggiari、Capobiancoら、2006年、「Blood」第107(4)巻、p1484〜90
【非特許文献8】Ueda、Inabaら、2007年、「Stem Cells」、第25(6)巻、p1356〜63
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、ヒト自己間葉系幹細胞(MSC)のエキソビボ増殖およびそれを要する患者へのその後の移植の組成および方法を提供する。これらの間葉系幹細胞は、移植および標的組織を置換/再生する能力が最適化されており、例えば膝関節の軟骨を再生する。上述のように、これらの間葉系幹細胞はCD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD166、およびCD105の少なくとも1つの細胞表面抗原を発現する厳格に品質管理された均質細胞株を作るためにも最適化されており、一部の実施形態では上記細胞表面抗原を2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ発現するものもある。また、本明細書で述べられる最適化細胞の一部は、CD14、CD31、CD45、および/またはCD106の細胞表面抗原の少なくとも1つを発現しない。
【0010】
本発明の態様は、精製されたまたは組み換え型の成長因子、サイトカイン、または非自然発生的なヒューマンファクターを必要としない新規の増殖組成を含む。具体的には、増殖組成は細胞成長を最適化するために、様々な量(さらに、様々なタイミング)の血小板溶解物導入を含み、特に、標的患者に移植する際に細胞の成長を最適化するように考案されている。最適化とは、ある場合には細胞を要する患者に首尾よく移植するための細胞の能力を促進するために制御的に細胞を増殖することを含み、ある場合には、細胞を所定の「成長チャンネル」以内に保つために細胞成長および細胞成長条件を監視し修正する、つまり限られた細胞継代数以前の必要な数に細胞を増殖することを含む。これらの血小板溶解物に基づいた成長条件は、この成長チャンネル内でエキソビボ間葉系幹細胞増殖を促進するために必要な因子の一貫した自己放出を提供する。さらに、均質性と厳格な品質管理を確保するために、「成長チャンネル」は細胞密度、形態、および培養パターン等のその他複数の実施形態がある。なお、細胞成長のためのこの処方は少しでも変化すると、異なる分化および修復特性を持った全く異なる細胞産物ができるため、これらの組成は既知の細胞修復特性を持った均質な細胞を増殖するように考案されている。
【0011】
本発明の態様は、特定量の血小板または血小板溶解物を含む細胞を移植して、最適化培養された間葉系幹細胞の受け入れのための患者の準備を含む。細胞および血小板の移植は同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。典型的な実施形態では、間葉系幹細胞、血小板、および血小板溶解物は、それらを移植する患者から採取された間葉系幹細胞、血小板/血小板溶解物である。
【0012】
本発明の態様は、間葉系幹細胞を用いた修復治療を要する患者から間葉系幹細胞を単離し、標的が要する適切で均質な成長(すなわち、成長チャンネル内の成長)を確保するために必要な細胞特性(例えば、密集度、形態、培養パターン等)に基づいた様々な量の血小板溶解物および培養の決定を用いて得た細胞特異の増殖データを用いて単離された間葉系幹細胞を最適化増殖し、コンテキスト依存の間葉系幹細胞成長促進物質の有無にかかわらず増殖細胞を移植する方法を含む。
【0013】
本発明の態様は、変形性関節症またはその他の軟骨もしくは骨代謝の病気(虚血壊死または骨粗しょう症など)を持った患者から細胞を採取し、置換する際に特に有用である。それはこれらの患者から採取された細胞は従来的に置換治療に使用できる見込みはほとんどないためである。なお、上述は本発明の範囲または使用を1つの用途に制限することを意図しない。
【0014】
本発明の態様はさらに、患者に細胞を戻すための移植が容易に出来るよう、採取された間葉系幹細胞を自然な状態で維持できることを確保するための成長チャンネルを提供する。これらの細胞は自己由来で、細胞が採取された同じ宿主の自然因子のみを用いて、標的内での潜在的成長のために最適化されており、つまり、細胞成長を促進するための合成または組み合わせ因子は使用されない。典型的な成長チャンネルの実施形態では、細胞は増殖され10代継代の前に実施することができ、その他の実施形態では、細胞は増殖され3代、4代、5代、6代、7代、8代、または9代継代までに実施することができる(採取後)。約10代継代以降に移植された細胞は、臨床用途では次第に効果がなくなる傾向がある。
【0015】
本発明の態様は、増殖された間葉系幹細胞を手作業で計数することで成長チャンネル内にあることを確実にする。本発明のその他の態様では、細胞が成長チャンネル内にあるという特徴的表示物質のために間葉系幹細胞を視覚的に検査する。適切な指標には、培養形態、培養パターン、および培養密度を含む。一部の形態では、細胞数および視覚的検査の両方が、細胞が本発明の成長チャンネル内にあるかどうかの指標として用いられる。なお視覚的検査は、培養された間葉系幹細胞がある現場、例えば細胞増殖の契約をしている病院の血液バンクで行うこともでき、また、別の場所に居る組織培養の経験が豊かな人員がデジタルカメラを用いた顕微鏡検査(生中継ビデオ、写真の更新、またはその他の技術)を通して培養を監視し、現場に居る人員に培養細胞の状態を伝えることもできる。
【0016】
最後に、本発明の態様は、本明細書に示した方法を用いて特定表現型が強化された細胞集団を提供する。前記表現型は次の細胞表面抗原の少なくとも1つを含む:CD29、CD44、CD59、CD90、CD166、CD73、およびCD105。本明細書において確認される細胞は通常、CD14、CD31、CD45、およびCD106の細胞表面抗原は陰性である。一部の実施形態では、最適化および増殖された細胞集団はCD29、CD44および次の細胞表面抗原の少なくとも1つを発現する:CD59、CD90、CD105、およびCD66。すなわち、一部の実施形態では、最適化された細胞集団は少なくとも次を発現する:CD29、CD44、およびCD59;またはCD29、CD44、およびCD90;またはCD29、CD44、およびCD105;またはCD29、CD44、およびCD66。
【0017】
本明細書で説明される方法を用いて生成され前述の表現型を持つ細胞は、それを要する患者への移植に最適な成長特性を示す。
【0018】
本発明のこれらおよびその他様々な特徴および利点については、後述の詳細な説明と添付の請求項を読めば明白である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0020】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0021】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0022】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0023】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1B】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0024】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0025】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0026】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0027】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1C】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0028】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0029】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0030】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0031】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1D】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0032】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0033】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0034】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0035】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1E−1】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0036】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0037】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0038】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0039】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1E−2】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0040】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0041】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0042】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0043】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図2】図2は、5〜10%の血小板溶解物においてインビトロで培養された変形性関節症患者8人の間の細胞の産出量や成長率の差を示す細胞増殖の線図である。
【図3A】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3B】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3C】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3D】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3E】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図4】図4は、患者の細胞が遅い成長または早い成長を見せた場合の5〜20%の血小板溶解物を用いた6人の異なった患者の間葉系幹細胞増殖を示す棒グラフである。
【図5】図5は5人の異なった患者の幹細胞成長チャンネルを重ねて表示した図である。
【図6A】図6AおよびBは本発明の実施例によって最適化された細胞を使用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度画像」である。
【図6B】図6AおよびBは本発明の実施例によって最適化された細胞を使用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度画像」である。
【図7】図7は、1、2、または3代継代において、10%または20%の血小板溶解物を用いて導入された結果における4人の患者の細胞成長を示す棒グラフである。
【図8】図8は、2つの異なった骨髄試料採取条件下でステージ3から4の虚血壊死にかかっている一人の患者の細胞増殖を示す図である。条件1:2回の10ccの骨髄試料採取において、4千8百万の有核細胞を産出したところ、10%の血小板溶解物において増殖はしなかった。2週間後に培養を中止。条件2:両側PSIS領域より1〜2ccの6つの少量アリコートの骨髄試料を採取したところ、1億6千4百万の有核細胞の産出となった。図は20%の血小板溶解物において培養された間葉系幹細胞の増殖の線図を示す。
【図9A】図9Aと9Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度MRI画像」である。図は膝の前内半月の部分的再生を示す。腰部虚血壊死にかかっている患者より単離された間葉系幹細胞の増殖。細胞移植前(2007年1月の左の図)、そして細胞移植3カ月後(2007年6月の右の図)の右膝の継続一致画像シーケンス。
【図9B】図9Aと9Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度MRI画像」である。図は膝の前内半月の部分的再生を示す。腰部虚血壊死にかかっている患者より単離された間葉系幹細胞の増殖。細胞移植前(2007年1月の左の図)、そして細胞移植3カ月後(2007年6月の右の図)の右膝の継続一致画像シーケンス。
【図10A】図10Aと10Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用した間葉系幹細胞移植前と移植後のレントゲン写真である。上腕骨の癒着不能骨折の部分的治癒を示す。
【図10B】図10Aと10Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用した間葉系幹細胞移植前と移植後のレントゲン写真である。上腕骨の癒着不能骨折の部分的治癒を示す。
【図11A】図11Aと11Bは、変形性関節症患者の重度に変性した内側半月と、本発明の実施例によって増殖された間葉系幹細胞を使用したその後の半月の部分的な修復の前状態と後状態の矢状プロトン密度画像を示す。
【図11B】図11Aと11Bは、変形性関節症患者の重度に変性した内側半月と、本発明の実施例によって増殖された間葉系幹細胞を使用したその後の半月の部分的な修復の前状態と後状態の矢状プロトン密度画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、最適化成長条件下で自己間葉系幹細胞を採取、増殖、および移植するための組成および方法を提供する。増殖条件は、合成または組み換え成長因子は必要なく、患者特有の間葉系幹細胞集団の個別の成長特性に基づいている。典型的な実施形態では、最適化成長条件の少なくとも一部は同じ患者の血小板溶解物により提供される。これらの血小板溶解物組成物は、患者自身の成長因子の組み合わせの均一で効果的な放出を提供する。なお、本発明の態様は間葉系幹細胞以外の他の種類の細胞、例えば幹細胞や軟骨細胞等にも同様に適用するが、便宜上本明細書で説明される実施形態は間葉系幹細胞を対象とする。さらに、細胞能力を強化して治療効果を向上するために、最適化成長した細胞は自己因子と組み合わせて移植でき、例えば血小板または血小板溶解物、つまり間葉系幹細胞の移植を受ける同じ患者から採取された血小板と組み合わせて移植できる。最後に、本明細書で説明される本発明の実施形態は、本明細書で説明される最適化成長条件から得られる均一な表現型を得るために強化された間葉系幹細胞を含み、このような細胞は間葉系幹細胞に基づいた再生治療に用いるために最適化された細胞として確認される。
定義:
後述の定義は、本明細書で頻出する特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0045】
「個別の成長特性」とは、採取された細胞の個人特有のエキソビボ成長特性を指す。例えば、変形性関節症を患う多くの個人から採取される細胞は一般的に成長が遅く、細胞が最適化成長しており、ゆえに患者に戻す移植に適していることを確認するために修正成長特性を要する。
【0046】
「間葉系幹細胞」または「MSC」とは、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、神経細胞、および膵島細胞等に分化できる多能性幹細胞を指す(下記参照)。
【0047】
「自然増殖因子」とは、インビトロで生成される合成または組み換えの増殖因子とは違い、それを要する患者に由来する因子を指す。自然増殖因子は、一般的に血小板溶解物に関係し、これから放出される。
【0048】
「血小板溶解物」とは、血小板を溶解することで放出された血小板に含有される自然成長因子の組み合わせを指す。これは、化学的手段(すなわちCaCl2)、浸透圧手段(蒸留されたH2Oの使用)、または凍結融解によって得ることができる。本発明の血小板溶解物は全血からも得ることができ、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,198,357号に説明されるように生成することができる。
【0049】
「蛋白質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」とは、アミノ酸重合体または2つ以上の相互作用または結合したアミノ酸重合体の組を指し、同じ意味で使われる。
【0050】
「幹細胞」とは、未分化で、細胞分裂により長期間にわたり再生でき、特殊化された細胞に誘導され得る特徴を持つすべての細胞を指す。
【0051】
「細胞培養措置」とは、血小板溶解物濃度の変更、違う密度での培養液中の細胞の再播種、または予定継代時間の変更(すなわち、培地交換までの培養液中に放置する時間の延長または短縮)を指す。
【0052】
「継代」とは、単層培養液中で使用済みの培地を交換すること、または細胞培養微環境を向上するために培地を交換することを指す。
間葉系幹細胞および血小板溶解物の供給源
間葉系幹細胞は骨髄、末梢血、および脂肪組織等の供給源に存在する多能性幹細胞である。間葉系幹細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、およびベータ膵島細胞を含む多くの種類の細胞に分化する能力がある。
【0053】
本発明の供給源となる間葉系幹細胞は一般的に修復/置換治療を要する患者(または適合するドナー)の腸骨稜から採取され、このような患者を本明細書では「〜(それ)を要する患者」と呼ぶ(なお、最近、脂肪組織、滑膜組織、および結合組織等のその他の供給源も間葉系幹細胞の供給源として確認されており、本発明の範囲に含まれる)。一実施形態では、約10〜20ccの骨髄が採取され、Centenoの米国特許出願第60/761,441号に説明される方法またはプラスチックへの付着を利用したCaplanらの米国特許第5,486,359号に説明される方法を用いて「単離」される。これらは参照することでその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明は、適当な有核細胞数を産出して説明された血小板溶解物技術を用いるために、標準的な骨髄穿刺の変更も組み入れる。発表されている研究の大部分は健康なヒトまたは動物で行われているため、様々な病状のヒトへのこの技術の適用は試されたことがない。図8の例では、骨壊死(AVN)を患った(骨壊死部位の骨修復が必要な)患者に、上記の両側性10cc骨髄穿刺技術を用いて骨髄穿刺を行ったが、血小板溶解物の培養増殖は失敗した。しかし、片側から2〜3ccの少量の骨髄アリコートを3回(全部で6アリコート)採取する変更された技術を用いた場合、必要な有核細胞を産出し、20%血小板溶解物で増殖に成功した。
【0055】
本明細書で使用される血小板溶解物はDoucetの方法を用いて採取した骨髄から生成され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的な溶解物は、約数千万個から数千億個の血小板を含む。Martineauら、「Biomaterials」、2004年、第25(18)巻、p4489〜503(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)で示されるように、血小板溶解物は、安定した間葉系幹細胞成長を促進するために必要な成長因子を本質的に含んでいる。典型的な実施形態では、血小板溶解物および間葉系幹細胞は自己由来であり、間葉系幹細胞の有効で安定した増殖に有用な量である(以下にさらに説明される)。特に、血小板溶解物では、間葉系幹細胞の増殖に一般に使用されるものに比べてTGF−β等の成長因子のレベルは大幅に低いが、血小板溶解物に含まれる低レベルの成長因子が併用されると、大きな相乗効果があるとされていることに注意すべきである。
成長チャンネルの考察
本発明者が発見したように、本発明の採取された間葉系幹細胞は、10代エキソビボ継代以前、好ましくは5代エキソビボ継代以前に患者に移植して戻すと最適化修復/再生治療を提供する(1代継代は、培地および/または組織培養ハウジング/基材の細胞数が増えるように採取し植え付けることに相当する)。このように、各患者の間葉系幹細胞は治療的利用のために、米国食品医薬品局に認可されていない医薬品や因子を使わずに限られた継代数内で、必要な数に増殖されなければならない。本発明の実施形態は、採取間葉系幹細胞が血小板溶解物を用いて必要な量までに増殖され、それにより標的患者に移植および使用するのに最適化されていることを確認するための成長チャンネル条件を提供する。
【0056】
患者の間葉系幹細胞成長ポテンシャルを特定するには(必要な数の細胞を確保するために)考慮すること、つまり個別の成長特性(上記定義参照)が多くある。これらの考慮には間葉系幹細胞の供給源、つまり年齢、性別、遺伝的抑制、および変形性関節症等の変性疾患の有無を含む。
【0057】
変形性関節症を患う患者から採取された間葉系幹細胞について、本発明者は「低成長」と「高成長」の2種類の細胞成長を特定した。患者に低成長細胞があると、素早く細胞増殖し、この細胞群内で分化の潜在力を最大限に維持する能力に実際問題が生じる。最大限の分化潜在能力にない細胞は移植時に機能しなくなる可能性が高い。Crisostomoら、「Shock」、2006年、第26(6)巻、p575〜80。従って、必要とされる間葉系幹細胞成長を促進するために、患者の血小板溶解物がさらに高レベルで必要となる。その結果、これらの細胞は、若年の健康な個人から単離された間葉系幹細胞とは全く違った扱いをしなければならない。なお、本発明において、エキソビボ増殖潜在能力が限られた細胞、すなわち一継代期間内(<3日)で細胞の増加数が100%未満の細胞は、低成長と見なされる。
【0058】
本発明の一実施形態では、間葉系幹細胞の最適化エキソビボ培養増殖に必要な血小板溶解物の量は、様々な成長条件下で採取された細胞を監視することで決定される。これは、変形性関節症、骨粗しょう症、骨壊死、またはその他の骨、軟骨、または結合組織の病気を持った患者に関係する細胞の場合に特に重要である。間葉系幹細胞の増殖は多くの可変要因に依存する:患者の血小板溶解物中の成長因子の量(これは細胞成長を最大限にするために必要な溶解物%を変更する)、これら成長因子のバイオアベイラビリティ(つまり、これら因子の患者の細胞への影響)、これら成長因子の相対濃度、および患者の初期供給源細胞の質/量。本発明の一実施形態では、これらの可変要因下で間葉系幹細胞の成長を最適化するために、「成長チャンネル」つまり所定の時間および/または細胞継代(最適化成長条件では10代継代以下)に関連した患者の細胞の標的増殖率が設けられた。この成長チャンネルは、特定の均質な細胞集団を生成するために必要な細胞培養についての決定をすべて考慮している。
【0059】
本発明の一実施形態では、最適な成長条件を決定するために、間葉系幹細胞の標的エキソビボ培養増殖に必要な血小板溶解物の量と、視覚パラメータを組み合わせている。特に、本実施形態では、上記の血小板溶解物の考慮点と、採取された間葉系幹細胞のコロニー形成と間葉系幹細胞の単層増殖の考慮点を組み合わせることが必要である。一態様では、コロニー形成中は間葉系幹細胞の過成長、つまりコロニーの端にある細胞がコロニーを覆うことを防がなければならない。別の態様では、コロニー形成中は間葉系幹細胞の成長不足、つまり細胞が増殖しないことを防がなければならない。コロニー形成中に間葉系幹細胞が過成長した場合、細胞をコロニー形成培養から取り除いて単層培養にしなければならず、コロニー形成中に間葉系幹細胞の成長が不足する場合、培地を一部(ほぼ半分)除去し、新しい培地(さらに、少なくとも以前使用された血小板溶解物濃度)と取り換えなければならない。別の態様では、単層増殖の細胞は過成長つまり高密度化していないか確認し、例えば10,000〜12,000細胞/cm2で再播種しなければならず、また、細胞が丸型、旗型、または膨れた形状となる細胞形態を示す成長不足がないか確認しなければならない。細胞がこの形態を示す場合は、血小板溶解物濃度は少なくとも10〜15%血小板溶解物に上げるべきである。
【0060】
さらに具体的には、本明細書で説明される、血小板溶解物中で生成される細胞の増殖および修復能力を最大限にするための「成長チャンネル」とは、以下の異なる4側面を含む。
【0061】
1.単層培養での細胞成長率
2.単層培養での細胞密度
3.単層培養での細胞培養パターン、および
4.単層培養での細胞形態
これらの概念は図1に図面的にも説明される。
【0062】
「単層培養での細胞成長率」−血小板溶解物の成長因子のレベルは患者によって変わるため、これら因子の培養増殖率への影響が分かるまで、生物活性を特定する方法はない。このため、「成長チャンネル」の中の増殖の重要な要素は最低成長率である。これは倍加時間が1日から3日の間になるまで血小板溶解物濃度および/または播種密度のパラメータを調整することと定義される。これで、5代〜7代継代の前に約50〜100倍の細胞増加が得られる(図1、グラフ1)。また図1(グラフ2)には、両側性10cc骨髄穿刺から始まる成長率チャンネルの例を示す(例示目的のみ)。上述の成長チャンネルから外れると図1のグラフ1および関連の説明で示すような細胞培養措置が必要になる。
【0063】
「単層培養での細胞密度」−細胞密度は細胞成長および分化能力に影響し得る。Doucet(上記参照)は、1ミリリットルあたり約数千個の細胞という非常に低い播種密度を述べている。しかし私たちは、変形性関節症、骨壊死、癒着不能骨折等の病気を持った患者は上記よりもかなり高い播種密度が必要であり、修復能力を持った増殖細胞を生成するためには継代中はこの密度を維持することが非常に重要であるということを確認した。それとして、本発明の実施形態として容認できる(細胞のインビボ修復能力を最適化するための)細胞密集チャンネルを図1のグラフ3に示す。本発明で説明される間葉系幹細胞の空間分布は次の式で定量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この数値は18〜23の範囲内にあるべきである。もし、数値が<18の場合、細胞は大変良く成長しているので細胞の播種密度を下げて播種することができる。もしこの数値が23〜27の間の場合、より高い播種密度(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2)で細胞を播種する必要がある。そして、数値が>27の場合、血小板溶解物濃度も上げるべきである。
【0064】
「単層培養での細胞培養パターン」−増殖を継続して細胞を未分化の状態で維持するためには細胞間隔が均等に分布されていることが必要であるため、本発明では細胞成長のパターンは重要である。これを確保するために、均一に分布された間葉系幹細胞が本明細書に記載の成長チャンネルに含まれる。詳細は図1のグラフ4で説明される。上述の細胞培養パターンから少しでも外れると、図1のグラフ4、および関連の説明で示す細胞培養措置が必要になる。
【0065】
「単層培養での細胞形態」:単層培養での細胞形態は本発明に係る特定の間葉系幹細胞の表現型を確保するために重要である。間葉系幹細胞のみに適用されるとして、好ましい形態は単層培養で(線維芽球様の)紡錘状である。なお、他の間葉系幹細胞株では、記載の成長チャンネルには無い表現型である多角形または旗型の形態が多く見受けられる。なお本発明のために、1〜4型を含む分類システムが設けられ、好ましい細胞種類は1型とされる。詳細は図1のグラフ5で説明される。なお、図1のグラフ5に示す2〜4型は従来技術によるものであり、各著者はこれらを各々の間葉系幹細胞株の形態として容認していた。なお、上述成長チャンネルの範囲内にある好ましい形態は紡錘状で小さな表面積を占める細胞であり、最適な1型より約50%大きな表面積を占める2〜4型の間葉系幹細胞とは違う。培養液中の形状2〜4型の間葉系幹細胞が>30%となったら、血小板溶解物の濃度を10%から15〜20%に上げるべきである。この時点で細胞集団は理想の形態から外れないように移植されるべきである。
【0066】
上述の細胞形態から少しでも外れると、図1のグラフ5、および関連の説明で示す細胞培養措置が必要になる。
【0067】
一実施形態では、成長チャンネルは、例えば膝関節等の標的部位に移植するための1千万個から1億個の細胞を得るために必要なエキソビボ培養での自己間葉系幹細胞の成長特性を示す。増殖細胞の数は再生が必要な標的部位にやや依存し、例えば脊椎椎間板の再生には約百万〜1千万個の細胞/mlが必要であるが、膝表面の再生には約数千万〜数億個の細胞/mlが必要である。採取された細胞は監視され、様々な量の自己血小板溶解物を用いて成長が修正される。
【0068】
本発明のエキソビボ増殖された間葉系幹細胞は、細胞計数法および/または視覚的細胞培養パラメータによって監視できる。細胞計数法は、細胞数がその細胞の利用可能な空間/密度を超えた際に、組織培養ハウジングまたは基質から細胞を採取して継代することに基づいている。細胞計数法は、血球計などの血球計算盤装置で用いてまたは分光光度法で細胞を採取し数えることのできる専門の技術者によって、現場で行わなければならない。本発明の一部として他の箇所で記載したように、細胞集計は、経験が豊かな技術者にインターネットを通してデジタル画像を送信することで遠隔でも実施できる。
【0069】
上述のように、本明細書で開示される視覚的細胞培養パラメータは、細胞が採取および移植される準備が整ったかを確認するために本発明の細胞を視覚的に検査する能力を含む。視覚的パラメータは、細胞培養形態、細胞培養パターン、および細胞培養密度を含む。特に、次の特定の定性的パラメータが見られる:コロニー形成の過成長、コロニー形成の成長不足、単層増殖培養の過成長、単層増殖培養の成長不足、血小板および幹細胞計数のための血球計の画像;骨髄穿刺後フラスコに最初に播種したときに付着した細胞数;いつ細胞を採取すべきかを特定するためのコロニー形成および後に成長するコロニー(過成長および成長不足を含む);どのくらい均一に細胞がフラスコに播種されたか(つまり、単層増殖では細胞はフラスコ内で均一であるべきである);どのくらいの密度で細胞が播種しているか;密集の段階およびいつ細胞の継代準備ができるかを特定するための細胞分裂の可視化;細胞がコロニーになったときフラスコがどのくらい血性に見えるか;血小板を得るために遠心分離した後の血液の分離具合;赤血球から有核細胞を分離するために骨髄を遠心分離した後に骨髄の分離がどのように見えるべきか;および細胞形態(つまり膨張している、明るい球状、散らばっているなど)。
【0070】
標的培養物の視覚的検査は、本明細書で説明される成長チャンネルの進行にわたり、組織培養の訓練を受けた人員が現場で、またはデジタル顕微鏡検査ビデオ技術(生中継)により遠隔で、またはデジタル顕微鏡カメラで撮影した写真を更新することで行うことができる。細胞培養の遠隔監視は、細胞培養複数施設にわたって制御がさらに制限されることが必要な場合に行うことができる。例えば、高度な訓練を受けたスペシャリストに多くの現場外の培養の視覚的データが提供される場合である。高度な訓練を受けたスペシャリストは、特定の視覚的パラメータ、例えば膝関節再生、虚血壊死の安定化、および癒着不能骨折の治癒等に対して良好な臨床結果をもたらした、特定の細胞密度、培養パターン、または形態などの使用を正当化する情報を入手できる。次にこのスペシャリストは、このようなすべての培養物にその培養形態を関連させることができる(一方で、多くの現場人員は、数カ月間、数年間にわたって、または全くこの関連に気づかないことがある)。一実施形態では、均一で過成長ではない細胞培養形態を持った細胞は、最適で成長チャンネル内であり、採取および移植される準備が出来たと見なされる。
【0071】
本発明の血小板溶解物組成は、有糸分裂に必要であることが知られている成長因子を多数含み、hFGF、PDGF−BB、TGF−β、およびVEGFを含む。無血清成長培地に血小板溶解物組成物を加えて、培地中に溶解物を標的量得る。例えば、血小板溶解物10%は体積で血小板溶解物組成物を10%含む。好ましい実施形態では、無血清基礎培地はDMEM、Hams F12、MEMまたはその他の類似培地である。有用な成長因子の量は患者の血小板溶解物に固有であり、通常は患者によって異なる。
【0072】
典型的な実施形態では、患者の細胞は最初にコロニー形成で10%血小板溶解物の培地で7〜10日間培養され、その後再度(コロニー形成が)集計される。患者が変形性関節症を患っている場合、細胞は初期10%血小板溶解物を用いた単層培養に移される。細胞は2〜4日間培養され、その患者の治療に必要な細胞総数と比較される。一部の実施形態では細胞を視覚的に検査する。上述の成長チャンネルから外れる細胞は、培地の血小板溶解物を(例えば15〜20%に)増量するためにその培地は変更され、チャンネルの範囲内にある細胞は、手順が繰り返されるまでそのまま少なくとも2〜4日間継続することを許される。チャンネル条件に依存する他の細胞培養措置は、より低いまたは高い密度での細胞の再播種、より高いまたは低い頻度での培地変更、より早いまたは遅い時期での細胞移植を含む。なお、細胞が上述の成長チャンネル内にあるかを確認するために、視覚的パラメータも利用できる。
【0073】
なお、間葉系幹細胞の増殖率の変動性は、採取された患者の間葉系幹細胞および患者の血小板中の成長因子のレベルの両方に依存する。それとして、特定の例で患者の間葉系幹細胞を成長チャンネル内に維持するために必要な血小板溶解物が高レベルなのは、細胞の成長特性のみが原因ではなく、必要なレベルの成長因子を提供するために、つまり、他の血小板溶解物と比べて患者の血小板溶解物の成長因子の濃度が低い場合は、血小板がさらに必要となるためでもある。驚くべきことに本発明者は、最適化条件下で培養した細胞は、最適化条件下で培養していない(成長チャンネル内にない)同じ数の細胞(例えば、必要とされる治療結果を得るのに十分な細胞数を得るために15代継代が必要な細胞培養)よりもはるかに治療効果があると確認した。例えば、本発明者は、本明細書で説明された成長チャンネル方法論を用いて最適化増殖された細胞と比べて、両側性PSIS骨髄穿刺10cc(骨髄総量20cc)を用いた最適でない増殖による細胞の臨床結果は劣るということを確認した(追跡MRI検査では、軟骨再生は無いまたはより少なく、半月再生は無いまたはより少なかった)。
自己間葉系幹細胞置換の方法
ここで説明される実施形態は、治療的再生が必要な患者の部位を治療的再生する方法を含む。例えば、変性した椎間板または関節の軟骨の治療的再生である。他の例としては、心筋の再生、皮膚創傷の治癒、骨折や骨癒着不能の治癒、神経修復、移植片対宿主反応やその他の免疫系の治療、およびその他の用途、膵島細胞の置換、骨粗しょう症の治療、難聴の治療、およびその他の用途のための間葉系幹細胞増殖を含む。本明細書で説明される方法は、間葉系幹細胞が自然(非合成/非組み換え)成長因子(通常、様々な血小板溶解物%の培養で得られる)で処理される自己間葉系幹細胞再生治療を利用する。
【0074】
初めに、幹細胞の治療的再生を要する患者から間葉系幹細胞の供給源を採取する。採取された供給源は手順全体を通して無菌環境で無菌状態に保たれる。本明細書で前述したように、採取された細胞は、本発明の成長チャンネルの実施形態の範囲内に細胞が維持される条件下で播種し、エキソビボ培養さる(供給源からの間葉系幹細胞の単離は上述している)。これは、例えば実施例1に示すように、患者から血小板溶解物を得て準備することが必要である。最適な増殖条件下で成長した自己間葉系幹細胞は、1千万個〜1億個の標的収量で10代継代される前に監視され移植の準備がされる。一部の実施形態で自己間葉系幹細胞は、1千万個〜4千万個の標的収量で細胞が5代継代される前に、移植のために培養され監視される。他の実施形態では自己間葉系幹細胞は、1千万個〜4千万個の標的収量で細胞が6、7、8、または9代継代される前に、移植のために培養され監視される。準備された間葉系幹細胞組成はこの後標的部位に移植され、それから数カ月にわたって有効性が監視される。この手順は望まれる結果によって繰り返し行ってもよい。4〜7代継代で1千万個〜4千万個の細胞が得られる条件下で処理された細胞は、それを要する患者の標的部位に移植されるのに最適な細胞である。
【0075】
特に、一部の実施形態で本発明は、初期コロニー形成および付着培養で、単離骨髄有核細胞を有する赤血球を播種させる新規の方法も含む。なお、赤血球も成長因子を含むため、これは細胞成長環境を強化し、単離間葉系幹細胞に対して他の分化作用もある。
【0076】
なお、この方法の実施形態は自己細胞および成長因子を用いて実施されるため、他の非自己間葉系幹細胞置換治療にある多くの免疫学的および感染的問題を避けることができる。最近の研究では、非自己間葉系幹細胞はナチュラルキラー細胞系を宿主内で活性化させるということが示されているため、上記のことは現時点で非常に重要である。Spaggiariら、「Blood」、2006年、第107(4)号、p1484〜90;Rasmussonら、「Transplantation」、2003年、第76(8)、p1208〜13。これらの実施形態は、移植された細胞がその部位で増殖して必要とされる細胞(関節表面では軟骨細胞、骨欠損では骨芽細胞、等)に分化する潜在能力を最適化する。次の実施形態で説明されるように、血小板溶解物組成(または血小板自体)を間葉系幹細胞の移植と同時にまたはその後に注射することもできる。
【0077】
本明細書で説明される細胞成長の実施形態を用いて、標的患者に使用するための最適化成長細胞が準備される。本明細書で説明される実施形態に従って成長させた細胞は、細胞形態を特定するために、つまり細胞表面抗原プロファイルを特定するためにFACSを用いて検査された。本発明の一態様では、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも1つに陽性である細胞集団が選択および増殖される。なお陽性結果とは、FACS分析で少なくとも90%の検査細胞が特定の細胞表面抗原に陽性であることを指す。
【0078】
典型的な実施形態では、特定された細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも2つに陽性である。さらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも3つに陽性である。またさらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも4つに陽性である。それよりさらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも5つに陽性である。最後に、本明細書で説明される一部の実施形態の細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、およびCD105の細胞表面抗原のうち6つまたは7つすべてに陽性である。これらの潜在的細胞表面抗原を持つ細胞についての実施形態は、治療的利用目的に最適であることが本明細書で示されている。さらに、本明細書の細胞集団についての実施形態において、上記の細胞表面抗原は含むが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の少なくとも1つの抗原を欠いている。本明細書の細胞集団についての他の実施形態においては、上記の細胞表面抗原は含むが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の少なくとも2つの抗原を欠いている。また、本明細書の細胞集団についてのさらに他の実施形態においては、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原には陽性であるが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の細胞表面抗原には陰性である。
血小板の標的部位への直接注射
本発明の一部の実施形態では、血小板組成物が直接患者の標的部位へ注射される。血小板注射は、間葉系幹細胞成長の環境を最適化するのを助けるため、間葉系幹細胞置換の前、間葉系幹細胞置換と組み合わせて(同時期)、または、間葉系幹細胞置換の後に実施され得る。典型的な実施形態においては、血小板溶解物を基とする培地と本発明の成長チャンネルの条件を使用し増殖された間葉系幹細胞は、(成長チャンネルの中にあるうちに)採取され標的部位へ自己血小板または血小板溶解物とともに注射される。
【0079】
部位直接注射するために必要とされる血小板の数を決定するために以下の計算が実施され得る。第一の問題は、エキソビボ間葉系幹細胞成長を最大限に維持するために必要な平均血小板数/ccを決定することである。例えば、もし患者の細胞が10%血小板溶解物を3日間、20%血小板溶解物を3日間、30%血小板溶解物を3日間要することを示すならば、血小板溶解物の最高濃度をもって、どれほどの血小板の補給が患部で必要とされるかを決定する。この例では、1日あたり血小板1ccにつき30%(3日間)が最高使用量であった。もし、患者への容積1ccあたりの最初分量の血小板が1.0×109であったならば、この期間に容積1ccあたり3×108血小板を3日間にわたり使用または、1日あたり容積1ccあたり1×108血小板が必要とされる。
【0080】
Marineauら、「Biomaterials」、2004年、第25(18)巻、p4489〜502(全目的のため、参照することにより本明細書に組み込まれる)は、血小板からの成長因子の放出を通じての、インビボ間葉系幹細胞増殖促進に必要なトロンビンとカルシウムのレベルに関しての見識を提供している。これは組織増殖と血管形成を促すための、最初の数週間の発達の自然な発生である。これらの研究から、活性血小板はほとんどの成長因子の荷を、7日間にわたるトロンビンとカルシウムによる活性化により放出すると推定できる。であるから、必要とされる1ccについての血小板最終量である7×108血小板/ccを提供するために、1日1ccにつき1×108血小板に7を乗じる。患者への最終注射量は、最初の液体統合量(IFJV)に加えられ、これが最終液体統合量(FFJV)を意味する。従って、上記の計算を使い、7×108血小板/ccに12.5を乗じて8.75×109にいたる。この数値は最終血小板投与量を示す(方程式1を参照)。
【0081】
(間葉系幹細胞成長を維持するための1ccあたりの平均血小板/培地変更前のこのレベルでの日数)×(培地変更が必要とされる前のこのレベルでの日数((7)(最終液体統合量))=PHC血小板投与量。(方程式(I))。
【0082】
または、増殖促進に必要な最高値のエキソビボパーセンテージと同等の血小板溶解物を使用し、統合量のために調整して、そしてより頻繁に補充することで補充を実施することができる。
間葉系幹細胞移植の部位監視
本明細書に示された移植細胞は、これらの細胞がインビボで生存し、細胞が必要な修復のために最終的に必要とされる細胞型に分化することを確保するために監視され得る。ある実施形態では、患部の非侵襲的監視のためMRI標識が実施される(しかし、この処置は磁粉を必要とし、細胞増殖や分化状態ではなく細胞の位置のみを提供することに留意すること)。
【0083】
従って、リアルタイム細胞監視が推奨される。最適に増殖された細胞の移植後、経皮洗浄液を移植部位から採取する。自由流動細胞と最小限付着性の間葉系幹細胞が得られ、細胞の数、細胞の種類、間葉系幹細胞の分化状態(もしあれば)、間葉系幹細胞の外観と間葉系幹細胞の増殖状態が検査される。関節洗浄液も、グリコアミノグリカン等の重要物質、主要蛋白質、遺伝子発現、関節微環境におけるその他の重要な化学的または遺伝的な改善の指標の発現を監視または測定することができる。
【0084】
2種類のリアルタイム監視が実施され得る:部位液体および/または部位液体の高圧「ノックオフ」の無作為試料採取。高圧「ノックオフ」はカテーテルや針(通常は14〜22ゲージ相当)を使って、高圧液体が押し通され最小限付着性間葉系幹細胞を打ち離すように実施される。
【0085】
または、分析のための組織試料を得るために、針による関節鏡検査法や、従来の関節鏡検査法も使用できる。
【0086】
経皮試料採取は間葉系幹細胞が移植される前のベースラインの段階で実施される(将来のすべての試料と比較可能な試料を作る)。試料採取は、標的部位への間葉系幹細胞移植後1週間、または可能性として2週間あるいは3週間で実施される。
【0087】
特に、移植1週間後に関節洗浄液または組織試料が採取され、検査される。細胞集団はエキソビボにおいて容易に検査され成長培地の調整がなされることは当たり前のこととされているが、インビボ試料採取法なしでは、インビボ成長と移植を確保するための前述の必要な調整は不可能である。しかし、このリアルタイム監視に基づき、血小板および/または血小板溶解物の補充の変更を標的部位に実施することができる。この過程は必要に応じて繰り返すことができる。加えて、追加の同系細胞で培養された間葉系幹細胞も部位に移植することができる。
【0088】
最後に、移植された間葉系幹細胞が生きていて増殖可能であり、さらに、または、関節微環境が細胞生存と移植にとって適切であることが認められた上で、分化剤が患部に接触され得る。さらに、リアルタイム監視分析から得られた細胞は、様々な分化剤の存在下で培養され、必要とされる結果に最適な薬剤が決められる。実例的薬剤としては、骨形態形成蛋白質2、デキサメタゾン、ヒアルロン酸等がある。加えて、リアルタイム監視において炎症細胞が収集された場合、抗炎症薬を治療に取り入れることや、または部位が乾燥している場合は、ヒアルロン酸を加えることができる。
【0089】
さらに、インビボ移植後の細胞は、例えばグリコアミノグリカン(GAG)の生成、既知の分解酵素の減少その他の因子等、組織再生の二次的効果が分析方法を使って監視され得る。この部分の本発明の重要な側面は、直接的または非直接的な監視が移植後も継続することである。繰り返すが、このことは、細胞の生存と移植、また分化後の機能を確保するために、リアルタイムで移植後のプロトコルの変更を可能にする。説明的実例としては、軟骨細胞の初期段階へ一旦分化した間葉系幹細胞は、完全に機能し、成熟した健康な軟骨細胞と生物学的に同等と認識されるようにGAG生成の監視がされる。さらに、監視されているGAG生成を増す目的のために、分化または補充のための特定の物質が関節に導入されることもある。この同じ例は、膵島細胞置換や島細胞へインビボ分化する間葉系幹細胞からのインシュリン生成の監視のような他の部分の組織修復にも使用できる。
治療への応用
本発明の方法と組成は、例えば、間葉系幹細胞応用を要する患者の標的部位の治療(すなわち修復または維持)に使用できる。本明細書に示された実施形態を使用して治療できる状態には、変形性関節症、変性円板疾患、関節の軟骨置換、骨虚血壊死部位の安定化、骨折やその他の骨癒着不能の治癒、心筋の再生、皮質修復、皮膚創傷治療、神経修復、免疫抑制のための細胞治療または調整、ベータ島細胞の置換、聴覚に関する細胞と構造の置換、骨粗しょう症治療、および間葉系幹細胞が損傷、欠損、または変性した細胞の修復と置換のための細胞に分化可能なその他の疾患が含まれる。
【実施例】
【0090】
下記の実施例は説明を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:成長チャンネルに対しての患者の間葉系幹細胞成長
有核細胞を患者の後腸骨稜より採取し、遠心分離法によってRBCと分離した(血清が勾配である)。
【0091】
対象患者より約10mlの骨髄を採取し、15mlの遠心分離器管に入れて細胞培養研究室へ運んだ。この骨髄試料を2〜3分間100gにおいて遠心分離処理をした。RBCペレットを検査することによってRBCの大半が試料の下半分に集まっていることを確認し、かつRBCペレットと試料の上部の間に透明な領域が存在していることを確認した。留意すべきこととしては、上部が総体積の40〜50%を占めていない場合、遠心分離処理を繰り返す必要がある。次に、上部を取り除き、15mlの遠心分離器管に入れ、1000gにおいて10分間遠心分離処理をした。留意すべきことしては、有核細胞ペレットは場合によって赤く見え、または場合によって緩く詰められた状態になっているが、これは存在しているRBCの数によるものである。血清の上澄みを取り除き、それをRBCペレットに戻す。有核細胞ペレットを1mlの食塩水に再懸濁する。上記の手順を繰り返すことによって追加の有核細胞を得た。
【0092】
懸濁液を1:20の比率で水に希釈し(溶解RBC)、有核細胞を計数して、有核細胞を数えた。RBCは1:2000の比率で希釈し、計数した。
【0093】
次に有核細胞を播種し、単層成長を行った。播種領域の1cm2あたり、約0.66〜1.25×106の有核細胞と0.16×109のRBCを組み合わせた(RBC懸濁液からの細胞と有核細胞懸濁液中の補足用RBC)。この細胞の組み合わせは1000gにおいて10分間遠心分離され、DMEM+シプロ+ヘパリン+10%血小板溶解物に再び懸濁された(Doucet記載の5%溶解物において著しく準最適な増殖率の結果になったため、自己データに基づいて10%を開始量として選択した)。次に、懸濁液を37°Cで30分温めた。温められた懸濁液を適切な大きさの組織培養フラスコに播種し、新しい培地を加えた。細胞培養物を5%CO2において、37°Cで7〜12日間培養した。
【0094】
図1に示されているように、8人の患者の間葉系幹細胞培養物を上述の条件で播種し、成長を細胞数対日数の関係としてグラフ化した。細胞数増殖の上に許容成長チャンネルが重ねて表示されている。7日目の時点で、Gi細胞が十分にあり、移植に最適となっている。8日目の時点で、St細胞が十分にあり、移植に最適となっている。そして10日目の時点で、Cl細胞が十分にあり、移植に最適となっている。その他のすべての細胞は許容成長率に及ばず、最適な成長を保証するためには培地により高いレベルの血小板溶解物を添加しなければならない。
実施例2:患者の間葉系幹細胞成長は患者の健康状態に依存する
間葉系幹細胞は変形性関節症にかかっている人から採取され、実施例1に記載の方法によって培養された。それぞれの患者の細胞の成長率と、総産出量を調べた。
採取された間葉系幹細胞は血小板溶解物のいくつかの量(5〜10%)を用いて成長させ、11日間の期間をグラフ化した(濃度500%の患者由来血小板濃度と凍結を利用した溶解)。図2が示すグラフ化された関連データでは、間葉系幹細胞産出量と成長率がかなり変動している。この実施例は患者間で観察された成長の変動性と間葉系幹細胞成長率を最適化する必要性を示す。
実施例3:5%の血小板溶解物は、間葉系幹細胞成長の最適化に効果がない
実施例1に記載のように変形性関節症患者より採取された間葉系幹細胞(低成長間葉系幹細胞)を5%血小板溶解物または、10%血小板溶解物、または20%血小板溶解物を用いて増殖した。図3A〜Eが示すように、10〜20%の血小板溶解物と比較して、5%の血小板溶解物で培養した多数の細胞ラインが最大増殖率を実現することができなかった。留意すべきこととしては、10%の血小板溶解物と比較して、20%の血小板溶解物の条件で培養されたほとんどの細胞ラインはわずかな増殖利点しか示さなかった。しかしながら、我々の実験データはOAにかかっている患者は大幅に変動する増殖率を持っていることを示していることを強調しなければならない。すなわち5%において数人の患者が成長チャンネル目標を達成でき、ほとんどの患者は10%で達成し、そしてまた数人は20%の補足を必要とした。さらに、例えば大腿骨頭の虚血壊死のような別の疾患にかかっている他の患者は、10%溶解物を用いても増殖に失敗し、研究プロトコルでのみ決定される複数の変更を必要とした(次の実施例を参照)。
【0095】
図4は更に、変形関節症患者より採取された間葉系幹細胞は最適な増殖を達成するために、一般的にはより高いレベルの血小板溶解物(10%+)を要することを示す。しかしながら、通常の成長を示す健康な人からの間葉系幹細胞は、5%または10%血小板溶解物の成長条件下、変動率はわずかであった。
【0096】
本実施例のデータは、変形関節症患者から細胞を採取した条件の場合、Doucetら記載の条件では、最適な増殖条件は得られなかったことを示す。これらの細胞は、最適な増殖を示すために、培地により高いパーセンテージの血小板溶解物を必要とした。
【0097】
しかしながら、細胞が採取され、「高成長型」を示す条件下では、細胞は5%または10%の血小板溶解物の条件下で成長することができた。
実施例4:5人の異なった患者の成長チャンネル実例
実施例1で採取したように、5人の患者が間葉系幹細胞を提供した。異なった溶解物濃度において細胞を成長させ、細胞数を計算した。細胞成長データは図5に示すが、その中では本発明の細胞成長チャンネルが重ねて表示されている。細胞成長チャンネルのパラメータ内で増殖できる細胞は最適であると見なされ、対象患者に使用可能なものであるが、患者5の細胞成長は産出量に乏しく、臨床的に成功する確率が低いものと考えられる。従って、記載成長チャンネル内の細胞成長を得るためには、血小板溶解物に基づく細胞の成長条件の変更を利用するべきである。さらに、細胞密度、培養パターンと形態に基づく、すでに記載の培養に関する判断を適用する必要もある。
実施例5:成長チャンネルパラメータ内で細胞が培養された際に存在する細胞表面の抗原
本明細書と実施例1および2記載の実施形態を利用して間葉系幹細胞を採取・増殖した。培養された細胞の表現型を調べるために、既知の幹細胞表面抗原に対して蛍光標識された単クローン抗原(mAbs)とともに細胞を培養した(表1および2に使用されたMAbsを示す)。
【0098】
FACSCalifurのフロー血球計算器を使用して、2人の被験者の培養細胞の細胞表面抗原の発現レベルを測定した。表1と2はその結果を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
表1は各対象細胞表面抗原の平均蛍光強度(MFI)を示す。表2は各細胞表面抗原のパーセントを正値で示す。表2が示すように、対象患者移植用に最適化された細胞の99%より多くがCD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105およびCD166を発現した。反対に、対象患者移植用として最適の能力を持つ細胞の表面に一般的に存在していると考えられる抗原ではないCD14、CD31、CD45およびCD106は、わずかな細胞しか発現しなかった。
【0101】
実施例6:本明細書実施例の形態を利用した間葉系幹細胞移植はインビボ骨軟骨の軟骨置換を提供する
膝の欠陥を治すために軟骨置換を必要としていた57歳の患者より骨髄試料を得た。実施例1に記載の方法によって骨髄試料を採取し、間葉系幹細胞を単離した。1千万個の細胞を得るまで、6継代を通して10〜20%の血小板溶解物において細胞を成長させた。本発明の成長チャンネル内に細胞を維持した。その後、自己間葉系幹細胞を利用して、対象部位に細胞を移植した。
【0102】
図6(AとB)は3.0 TのMRIの矢状高速回転プロトン密度画像を示す。大腿骨外側顆の後部重量荷担面の軟骨の欠陥が示されている(A)。39日後に画像が再び撮られ、軟骨の欠陥部が埋められている(図6B参照)。本実施例のデータは、標的部位の大幅な軟骨欠陥を治すために、本明細書記載の方法および組成物が有効であることを示す。
【0103】
実施例7:より高いレベルの血小板溶解物のタイミングは、より低成長型の間葉系幹細胞が成長チャンネルの成長目標に達成するための成長の勢いをつけることができる
以下の実施例は、エキソビボ増殖中の血小板溶解物濃度の変更によって間葉系幹細胞産出量を劇的に改善することができることを説明する。細胞がコロニー形態から出現する際、初期の増殖培養段階において20%の血小板溶解物濃度(「溶解物促進」)を使用した。4人の患者の細胞集団を検査し、それらをRe、Gi、VeとCaと標識した。成長条件を監視し、それを表3と図7に示す。
【0104】
表3に示す4人の患者のうち、GiとVeの継代あたりの間葉系幹細胞成長増加が劇的に改善されたことに留意すべきである。被験者Giの場合、20%溶解物促進を使用した時、継代あたりの間葉系幹細胞成長増加総量は9.74から12.96に増加した。Reの場合、この測定値は6.88から10.34に上昇し、ほぼ2倍に近い変化を示した。留意すべきこととしては、この2人の患者は間葉系幹細胞を用いる修復治療の標的人口統計学層内である(変形性関節症(OA)の診断を受けており、50代と60代である)。より若い方の被験者Ve(OAの診断を受けていない)は、継代あたりの間葉系幹細胞成長増加総量の改善はわずかであった(5.0から5.7)。最高年齢の70代で、複数関節に重度のOAの診断を受けていた被験者でも、この測定値の改善は軽度なものにすぎなかった(5.08から5.13)。
【0105】
4人の患者のうち半分は目立った産出量改善を示し、残りの2人は産出量の悪化はなく、わずかな産出量改善しか示さなかったことから、本明細書記載の方法および組成物は修復治療を要するOA患者集団において間葉系幹細胞産出量改善に有効である。
【0106】
実施例8:間葉系幹細胞移植を要する患者のための成長条件
虚血壊死を呈する44歳の白人女性から、各PSISより10ccの骨髄を採取し、本発明記載の方法によってその細胞を処理した。患者の有核細胞産出量は非常に乏しく、10%溶解物において細胞を単層条件下成長させたが、第2継代以降、増殖に失敗した。この患者から再び、左と右のPSISより、異なった骨髄採取方法で3つずつ少量のアリコートを採取し、コロニー形成培養で細胞を20%血小板溶解物で増加させ、20%血小板溶解物において成長させた。図8は両方の細胞増殖グラフを示し、この疾患にかかっている多くの患者は有核細胞の数を増やすために異なった骨髄採取方法と、コロニー形成培養では溶解物増加、そして単層培養増殖段階では非常に高い血小板溶解物濃度を必要としていることを強調している。
【0107】
実施例9:本発明による細胞の直接注射
外固定、観血的整復法と骨シミュレータによって、9カ月経過の上腕骨折の治療を受けていた37歳の白人女性。図10aが示すように、この骨折は著しく癒着不能状態に入った。患者の各PSISより100ccの骨髄を採取して間葉系幹細胞を単離し、10%の血小板溶解物において成長させた。これを透視下、減菌されたトロカールによって経皮的に癒着不能骨折部位に移植した。図10bは細胞の注射5週間後、癒着不能部分が著しく治癒していることを示す。この実施例は本発明によって増殖された間葉系幹細胞のインビボ骨形成能力を説明する。
【0108】
実施例10:膝軟骨の置換
内側前半月の著しい劣化を伴う重症の膝の内側区画の変性疾患にかかっている43歳の白人男性。図11Aは前部においてほとんどなくなっていることが確認できる著しく劣化した内側半月の3.0Tプロトン密度矢状MRI画像を示す。図11Bは入手された間葉系幹細胞を本明細書記載の成長チャンネル法によって増殖・経皮移植した3カ月後を示す。図11Bは半月の再生を示し、その後の3次元画像容量分析では半月容量の32.5%増加を示した。留意すべきこととしては、半月の内部の「白い」または「虚血」と呼ばれる領域で半月再生が起こったことである。これが起こるためには、この領域に血管を導かなければならない。このような現象が起きたのは、この細胞株固有の性質によるものか、よりあり得ることとしては細胞の移植後の関節への血小板溶解物注射による可能性が高い。例えば、血小板溶解物は新血管形成を起こす能力を持つVEGFレベルがかなり高いことは周知である。
【0109】
【表3】
多くの実施形態で本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者であれば本発明の精神と範囲から逸脱することなく本明細書記載実施形態の形式や内容を変更することが可能であることは理解でき、本明細書記載の各実施形態は請求範囲を制限する意図において述べられているものではない。
【0110】
本明細書は多くの特許、特許出願、そして公開文書よりの引用文を含むが、すべての目的に対して、それぞれは参照することにより本明細書に組み込まれることする。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、幹細胞の単離、増殖、およびそれを要する宿主への移植の組成物と方法に関する。より詳細には、本発明は最適成長条件下で増殖した自己間葉系幹細胞(MSC)を用いた標的組織の置換および修復に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は血液、骨髄、真皮、および骨膜に存在する多能性の芽球または胚様細胞である。一般的にこの細胞は長期間にわたり自己再生が可能であり、さらに、様々な環境条件下で軟骨、骨、およびその他の結合組織に分化することができる。最近では、多くの研究者が例えば骨や軟骨等の標的組織の修復または再生においてのこの細胞の利用の可能性を研究している。このように、間葉系幹細胞は多数の動物モデルにおいて再生能力があるということが報告されている。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5。さらに、これらの結果はヒトの臨床試験に拡大されているが、ほとんどの試験は高濃度の組み換えサイトカインおよび成長因子を用いて、単離された非自己間葉系幹細胞をインビトロ増殖することが必要とされている。例えば、ほとんどの臨床試験では、骨髄(または末梢血)から単離された間葉系幹細胞を用い、続いてその細胞を実験室環境で、多様な組み換え成長因子を含むウシ胎仔血清(FBS)を基にした培地でエキソビボ増殖している。このような強化されたウシ胎仔血清を基にした培地は、間葉系幹細胞の増殖をサポートする能力を示しているが、伝染性ベクターの二次汚染、米国食品医薬品局(FDA)に認可されていない医薬品/因子、例えば組み換えTGF−bやFGFの使用、異種間反応、および癌性前駆細胞の形成のリスク増加の可能性のリスクもある。
【0003】
さらに、間葉系幹細胞を基にした臨床試験のほとんどは、単離された間葉系幹細胞の増殖を行うために、訓練を受けた研究スタッフと実験機器が必要である。これらの技術は、医師および/または病院職員が実施するには適さず、特に医師の場合は、米国食品医薬品局により認可されていない医薬品に関して米国食品医薬品局のプロトコルや手続に法的に拘束されているため適さない。従って、間葉系幹細胞を用いた治療を実利的に実施する、つまり病院環境で病院職員が実施することは難しい。これら多くの懸念を鑑み、ほとんどの間葉系幹細胞に基づく研究は、単離され永久細胞株に培養された非自己間葉系幹細胞について行われている。
【0004】
Doucetは最近、5%血小板溶解物添加培地を用いて健康で若齢のドナーの間葉系幹細胞を増殖する方法を説明している(非特許文献6)。ただし、Doucetの研究はこれらの措置が高齢患者、変形性関節疾患(例えば変形性関節症)を持つ患者、または患者特有の特徴に対して有効であるかは確認していない。また、この研究は5%血小板溶解物添加培地以外の増殖条件は用いていない。この観点から、変形性関節症の有無、年齢、性別、および特定の遺伝的表現型によって間葉系幹細胞の成長は多様であるということが明らかになっている。そのためDoucetの研究は、間葉系幹細胞を用いた治療を要する患者のほとんどが一般的に高齢であるか、変形性関節、または臓器や脊椎脊髄疾患を持っているという現実では適用性が極めて限られている。また、Doucetのデータは、虚血壊死や骨壊死等の骨代謝の他の病状にも適用されない。さらに、Doucetの総括的な知見は性別や年齢に特異的ではなく、性別によってどのように治療すれば良いかや、高齢患者からの間葉系幹細胞の増殖についての助言がほとんどない。
【0005】
間葉系幹細胞は、サイトカイン曝露、環境条件(圧力、付着機会、継代処理等)またはその他の化学物質曝露によって培養液中で容易に分化する。例えば、様々なレベルのTGF−β、FGF、および/またはPDGFの曝露はすべて、培養液で生じる最終的な細胞表現型に影響し得る。また、細胞を培養液中により長時間放置することは分化能に影響する。細胞は特定の視覚的形態、密集度、または密度に培養することができ、いずれも最終的に生成される細胞産物およびその特定の組織修復の潜在能力に影響する。その結果、本発明は特定の修復能力を持った均質な細胞産物を生成するために、因子/パラメータの制御に焦点を合わせる。
【0006】
間葉系幹細胞で組織を置換または修復することにおいて1つ懸念されるのが、非自己細胞の使用である。間葉系幹細胞は従来、免疫特権を持つとされてきたが、最近の研究では、異種宿主内でナチュラルキラー細胞系を活性化させることを示している。(非特許文献7)これにより、宿主の免疫系がこれらの異物細胞を攻撃して移植された間葉系幹細胞の集団を破壊する可能性があり、修復能力が非常に制限されることが予想されるため、非自己細胞の使用は難しい。さらに、最近Uedaが発表した研究によると、非自己細胞の使用は他の広範囲にわたる影響の可能性があるとされている。(非特許文献8)この研究は、骨粗しょう症を持った老年マウスの骨髄ベクターが、その病気を正常なマウスに移したことを示した。これは、一度正常なマウスに移植された骨粗しょう症を持った老年マウスの間葉系幹細胞は、その病状を正常なマウスに移し得たということを示している。どのドナー間葉系幹細胞も理論的には、ドナーが移し得るすべての既知の遺伝的感受性および病気の検査を受ける必要があり、この病気伝播遺伝的ベクターは懸念を呼ぶものである。
【0007】
当技術分野では、米国食品医薬品局に認可されていない医薬品や成長因子を使わず、細胞置換を要する患者に効果的に用いることができる間葉系幹細胞増殖技術を必要としている。この置換は、患者の病状、年齢、性別、およびその他の関連の置換状態に基づいて最適増殖された自己細胞を用いて行われるべきである。さらに、公知の再生能力を持ち、厳格に品質管理された均質な細胞株を得るための自己移植技術が必要とされている。
本発明は上記の少なくとも1つの課題を解決するために行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Acostaら(2005年)「Neurosurg Focus」、第19(3)巻、E4
【非特許文献2】Barry(2003年)「Novartis Found Symp」、第249巻、p86〜102、170〜4、239〜41
【非特許文献3】Brisbyら(2004年)「Orthop Clin. North Am.」、第35(1)巻、p85〜89
【非特許文献4】BuckwalterおよびMankin(1998年)「Instr Course Lect.」、第47巻、p487〜504
【非特許文献5】Caplan(1991年)「J Orthop Res.」第9(5)巻、p641〜650参照
【非特許文献6】Doucet、Enrouら、2005年、「J. Cell Physiol」、第205(2)巻、p288〜36
【非特許文献7】Spaggiari、Capobiancoら、2006年、「Blood」第107(4)巻、p1484〜90
【非特許文献8】Ueda、Inabaら、2007年、「Stem Cells」、第25(6)巻、p1356〜63
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、ヒト自己間葉系幹細胞(MSC)のエキソビボ増殖およびそれを要する患者へのその後の移植の組成および方法を提供する。これらの間葉系幹細胞は、移植および標的組織を置換/再生する能力が最適化されており、例えば膝関節の軟骨を再生する。上述のように、これらの間葉系幹細胞はCD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD166、およびCD105の少なくとも1つの細胞表面抗原を発現する厳格に品質管理された均質細胞株を作るためにも最適化されており、一部の実施形態では上記細胞表面抗原を2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ発現するものもある。また、本明細書で述べられる最適化細胞の一部は、CD14、CD31、CD45、および/またはCD106の細胞表面抗原の少なくとも1つを発現しない。
【0010】
本発明の態様は、精製されたまたは組み換え型の成長因子、サイトカイン、または非自然発生的なヒューマンファクターを必要としない新規の増殖組成を含む。具体的には、増殖組成は細胞成長を最適化するために、様々な量(さらに、様々なタイミング)の血小板溶解物導入を含み、特に、標的患者に移植する際に細胞の成長を最適化するように考案されている。最適化とは、ある場合には細胞を要する患者に首尾よく移植するための細胞の能力を促進するために制御的に細胞を増殖することを含み、ある場合には、細胞を所定の「成長チャンネル」以内に保つために細胞成長および細胞成長条件を監視し修正する、つまり限られた細胞継代数以前の必要な数に細胞を増殖することを含む。これらの血小板溶解物に基づいた成長条件は、この成長チャンネル内でエキソビボ間葉系幹細胞増殖を促進するために必要な因子の一貫した自己放出を提供する。さらに、均質性と厳格な品質管理を確保するために、「成長チャンネル」は細胞密度、形態、および培養パターン等のその他複数の実施形態がある。なお、細胞成長のためのこの処方は少しでも変化すると、異なる分化および修復特性を持った全く異なる細胞産物ができるため、これらの組成は既知の細胞修復特性を持った均質な細胞を増殖するように考案されている。
【0011】
本発明の態様は、特定量の血小板または血小板溶解物を含む細胞を移植して、最適化培養された間葉系幹細胞の受け入れのための患者の準備を含む。細胞および血小板の移植は同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。典型的な実施形態では、間葉系幹細胞、血小板、および血小板溶解物は、それらを移植する患者から採取された間葉系幹細胞、血小板/血小板溶解物である。
【0012】
本発明の態様は、間葉系幹細胞を用いた修復治療を要する患者から間葉系幹細胞を単離し、標的が要する適切で均質な成長(すなわち、成長チャンネル内の成長)を確保するために必要な細胞特性(例えば、密集度、形態、培養パターン等)に基づいた様々な量の血小板溶解物および培養の決定を用いて得た細胞特異の増殖データを用いて単離された間葉系幹細胞を最適化増殖し、コンテキスト依存の間葉系幹細胞成長促進物質の有無にかかわらず増殖細胞を移植する方法を含む。
【0013】
本発明の態様は、変形性関節症またはその他の軟骨もしくは骨代謝の病気(虚血壊死または骨粗しょう症など)を持った患者から細胞を採取し、置換する際に特に有用である。それはこれらの患者から採取された細胞は従来的に置換治療に使用できる見込みはほとんどないためである。なお、上述は本発明の範囲または使用を1つの用途に制限することを意図しない。
【0014】
本発明の態様はさらに、患者に細胞を戻すための移植が容易に出来るよう、採取された間葉系幹細胞を自然な状態で維持できることを確保するための成長チャンネルを提供する。これらの細胞は自己由来で、細胞が採取された同じ宿主の自然因子のみを用いて、標的内での潜在的成長のために最適化されており、つまり、細胞成長を促進するための合成または組み合わせ因子は使用されない。典型的な成長チャンネルの実施形態では、細胞は増殖され10代継代の前に実施することができ、その他の実施形態では、細胞は増殖され3代、4代、5代、6代、7代、8代、または9代継代までに実施することができる(採取後)。約10代継代以降に移植された細胞は、臨床用途では次第に効果がなくなる傾向がある。
【0015】
本発明の態様は、増殖された間葉系幹細胞を手作業で計数することで成長チャンネル内にあることを確実にする。本発明のその他の態様では、細胞が成長チャンネル内にあるという特徴的表示物質のために間葉系幹細胞を視覚的に検査する。適切な指標には、培養形態、培養パターン、および培養密度を含む。一部の形態では、細胞数および視覚的検査の両方が、細胞が本発明の成長チャンネル内にあるかどうかの指標として用いられる。なお視覚的検査は、培養された間葉系幹細胞がある現場、例えば細胞増殖の契約をしている病院の血液バンクで行うこともでき、また、別の場所に居る組織培養の経験が豊かな人員がデジタルカメラを用いた顕微鏡検査(生中継ビデオ、写真の更新、またはその他の技術)を通して培養を監視し、現場に居る人員に培養細胞の状態を伝えることもできる。
【0016】
最後に、本発明の態様は、本明細書に示した方法を用いて特定表現型が強化された細胞集団を提供する。前記表現型は次の細胞表面抗原の少なくとも1つを含む:CD29、CD44、CD59、CD90、CD166、CD73、およびCD105。本明細書において確認される細胞は通常、CD14、CD31、CD45、およびCD106の細胞表面抗原は陰性である。一部の実施形態では、最適化および増殖された細胞集団はCD29、CD44および次の細胞表面抗原の少なくとも1つを発現する:CD59、CD90、CD105、およびCD66。すなわち、一部の実施形態では、最適化された細胞集団は少なくとも次を発現する:CD29、CD44、およびCD59;またはCD29、CD44、およびCD90;またはCD29、CD44、およびCD105;またはCD29、CD44、およびCD66。
【0017】
本明細書で説明される方法を用いて生成され前述の表現型を持つ細胞は、それを要する患者への移植に最適な成長特性を示す。
【0018】
本発明のこれらおよびその他様々な特徴および利点については、後述の詳細な説明と添付の請求項を読めば明白である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0020】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0021】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0022】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0023】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1B】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0024】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0025】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0026】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0027】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1C】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0028】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0029】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0030】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0031】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1D】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0032】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0033】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0034】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0035】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1E−1】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0036】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0037】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0038】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0039】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図1E−2】図1A〜Eは本明細書で説明される「成長チャンネル」のいくつかの説明的要素、つまり細胞成長率、細胞密度、細胞形態や細胞培養パターンなどを含めた図を示す。A:修復に向けた増殖を最適化する細胞成長率。倍加時間は、単層培養物中の細胞計数を2倍にするために必要な日数と定義される。これは重要な測定基準であり、その理由は修復のできる細胞は培養状態では容易に指数関数的に成長することができるからである。容認できる成長チャンネル内の倍加時間を可能にするのに必要な血小板溶解物の%は、細胞の増殖やインビボ移植を補助するために必要な血小板溶解物の量も決定する。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを上回る(>3日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 期待されるチャンネルを下回る(<1日)場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。B:PSISにて>100の有核細胞をコロニー形状にし、コロニー形状培養から約700,000の間葉系幹細胞を産生する(20%溶解物にて、7〜10日後)2つの10ccの骨髄試料の例。この例では成長チャンネルでは、上記のように倍加時間の遅れが細胞培養措置につながることが示されている。細胞培養措置: 示された期待されるチャンネルを上回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を増加させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより高い密度で再播種する; 示された期待されるチャンネルを下回る場合:期待されるチャンネル内の成長率になるまで血小板溶解物の濃度を減少させる;期待されるチャンネル内の成長率になるまでより低い密度で再播種する。C:「細胞密集度」とは、単層培養物中の細胞間の隙間のパーセンテージと定義される。ここで示すように、過剰に詰められた細胞は速やかに分化された状態に移り、離れすぎている細胞は成長率目標に到達しない。細胞の空間分布は次の方程式によって数量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この値は18から23の範囲内であるべきである。細胞培養措置: 期待されるチャンネルを下回る(<18)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまで血小板溶解物の密度を減少させる;期待されるチャンネル内の密集度になるまでより低い密度で再播種を行う; 期待されるチャンネルを上回る(>23)場合:期待されるチャンネル内の密集度になるまでより高い密度で再播種を行う(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2); 期待されるチャンネルをかなり上回る(>27)場合:血小板溶解物の濃度を増加させる。D:「細胞分布」とは、二次元空間(単層培養にて)でのランダム性と定義される。無作為に分布された細胞は成長チャンネルの範囲内にあり、集合している、または不均等に分布している細胞は成長チャンネルの範囲外である。細胞培養措置: 期待されるチャンネルの範囲外である場合(不均等に分布している):分布が均等になるまで、より高い密度で再播種を行う;予定より早く細胞を継代する。E:本発明と関連する、また関連しない間葉系幹細胞形態型。間葉系幹細胞は、ある表現型を他の表現型の代わりに選択するために、様々な環境的刺激や状況において成長することができる。本図に示されている表現型は、本発明に関連しない表現型である。本発明に関連している表現型は紡錘状である。または示されているI型である。本形態と異なるものはすべて、説明されているような細胞培養措置を要する。
【0040】
I型:本発明記載の成長チャンネル条件において成長させた人工多能性間葉系幹細胞(iMSC)を撮影した、I型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真。
【0041】
II型:II型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「環境に接しているヒト間葉系幹細胞:表面状況やインテグリンシステム」Denitsa Docheva *、Cvetan Popov、Wolf Mutschler、Matthias Schieker、「J. Cell Mol. Med.」第11巻1号、2007年、p21〜38。
【0042】
III型:III型の間葉系幹細胞の20x顕微鏡写真:「骨髄間葉幹細胞と比較した、脂肪組織のヒト間葉幹細胞の肝性分化」Raquel Talens−Visconti、Ana Bonora、Ramiro Jover、Vincente Mirabet、Francisco Carbonell、Jose Vincente Castell、Maria Jose Gomez−Dechon、「World J. Gastroenterol」、2006年9月28日、第12(36)巻、p5834〜5845。
【0043】
IV型:IV型の間葉系幹細胞の10x顕微鏡写真:「マウスとヒトの皮膚創傷の治癒を加速するフィブリン・スプレーによって施す自己骨髄由来の培養間葉幹細胞」V FALANGA、S IWAMOTO、M CHARTIER、T YUFIT、J BUTMARC、N KOUTTAB、D SHRAYER, P、「CARSON TISSUE ENGINEERING」第13巻6号、2007年。
細胞培養措置:
期待されるチャンネル範囲外である場合(II型細胞が>30%):I型の形態になるまで血小板溶解物濃度を増加するか、継代が>5の場合、移植する;
期待されるチャンネルよりかなり外の場合(IV細胞のIII型は>30%):予定より早く細胞を継代または移植する;細胞は望ましい効果を持たない可能性がある。
【図2】図2は、5〜10%の血小板溶解物においてインビトロで培養された変形性関節症患者8人の間の細胞の産出量や成長率の差を示す細胞増殖の線図である。
【図3A】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3B】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3C】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3D】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図3E】図3A〜Eは、5〜20%の血小板溶解物を用い、1日から6〜16日までの期間での5人の患者の単離された間葉系幹細胞個体数を示す棒グラフである。
【図4】図4は、患者の細胞が遅い成長または早い成長を見せた場合の5〜20%の血小板溶解物を用いた6人の異なった患者の間葉系幹細胞増殖を示す棒グラフである。
【図5】図5は5人の異なった患者の幹細胞成長チャンネルを重ねて表示した図である。
【図6A】図6AおよびBは本発明の実施例によって最適化された細胞を使用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度画像」である。
【図6B】図6AおよびBは本発明の実施例によって最適化された細胞を使用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度画像」である。
【図7】図7は、1、2、または3代継代において、10%または20%の血小板溶解物を用いて導入された結果における4人の患者の細胞成長を示す棒グラフである。
【図8】図8は、2つの異なった骨髄試料採取条件下でステージ3から4の虚血壊死にかかっている一人の患者の細胞増殖を示す図である。条件1:2回の10ccの骨髄試料採取において、4千8百万の有核細胞を産出したところ、10%の血小板溶解物において増殖はしなかった。2週間後に培養を中止。条件2:両側PSIS領域より1〜2ccの6つの少量アリコートの骨髄試料を採取したところ、1億6千4百万の有核細胞の産出となった。図は20%の血小板溶解物において培養された間葉系幹細胞の増殖の線図を示す。
【図9A】図9Aと9Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度MRI画像」である。図は膝の前内半月の部分的再生を示す。腰部虚血壊死にかかっている患者より単離された間葉系幹細胞の増殖。細胞移植前(2007年1月の左の図)、そして細胞移植3カ月後(2007年6月の右の図)の右膝の継続一致画像シーケンス。
【図9B】図9Aと9Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用して行った間葉系幹細胞移植前と移植後の状態を示す「高速回転プロトン密度MRI画像」である。図は膝の前内半月の部分的再生を示す。腰部虚血壊死にかかっている患者より単離された間葉系幹細胞の増殖。細胞移植前(2007年1月の左の図)、そして細胞移植3カ月後(2007年6月の右の図)の右膝の継続一致画像シーケンス。
【図10A】図10Aと10Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用した間葉系幹細胞移植前と移植後のレントゲン写真である。上腕骨の癒着不能骨折の部分的治癒を示す。
【図10B】図10Aと10Bは本発明の実施例によって最適化された細胞を利用した間葉系幹細胞移植前と移植後のレントゲン写真である。上腕骨の癒着不能骨折の部分的治癒を示す。
【図11A】図11Aと11Bは、変形性関節症患者の重度に変性した内側半月と、本発明の実施例によって増殖された間葉系幹細胞を使用したその後の半月の部分的な修復の前状態と後状態の矢状プロトン密度画像を示す。
【図11B】図11Aと11Bは、変形性関節症患者の重度に変性した内側半月と、本発明の実施例によって増殖された間葉系幹細胞を使用したその後の半月の部分的な修復の前状態と後状態の矢状プロトン密度画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、最適化成長条件下で自己間葉系幹細胞を採取、増殖、および移植するための組成および方法を提供する。増殖条件は、合成または組み換え成長因子は必要なく、患者特有の間葉系幹細胞集団の個別の成長特性に基づいている。典型的な実施形態では、最適化成長条件の少なくとも一部は同じ患者の血小板溶解物により提供される。これらの血小板溶解物組成物は、患者自身の成長因子の組み合わせの均一で効果的な放出を提供する。なお、本発明の態様は間葉系幹細胞以外の他の種類の細胞、例えば幹細胞や軟骨細胞等にも同様に適用するが、便宜上本明細書で説明される実施形態は間葉系幹細胞を対象とする。さらに、細胞能力を強化して治療効果を向上するために、最適化成長した細胞は自己因子と組み合わせて移植でき、例えば血小板または血小板溶解物、つまり間葉系幹細胞の移植を受ける同じ患者から採取された血小板と組み合わせて移植できる。最後に、本明細書で説明される本発明の実施形態は、本明細書で説明される最適化成長条件から得られる均一な表現型を得るために強化された間葉系幹細胞を含み、このような細胞は間葉系幹細胞に基づいた再生治療に用いるために最適化された細胞として確認される。
定義:
後述の定義は、本明細書で頻出する特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0045】
「個別の成長特性」とは、採取された細胞の個人特有のエキソビボ成長特性を指す。例えば、変形性関節症を患う多くの個人から採取される細胞は一般的に成長が遅く、細胞が最適化成長しており、ゆえに患者に戻す移植に適していることを確認するために修正成長特性を要する。
【0046】
「間葉系幹細胞」または「MSC」とは、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、神経細胞、および膵島細胞等に分化できる多能性幹細胞を指す(下記参照)。
【0047】
「自然増殖因子」とは、インビトロで生成される合成または組み換えの増殖因子とは違い、それを要する患者に由来する因子を指す。自然増殖因子は、一般的に血小板溶解物に関係し、これから放出される。
【0048】
「血小板溶解物」とは、血小板を溶解することで放出された血小板に含有される自然成長因子の組み合わせを指す。これは、化学的手段(すなわちCaCl2)、浸透圧手段(蒸留されたH2Oの使用)、または凍結融解によって得ることができる。本発明の血小板溶解物は全血からも得ることができ、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,198,357号に説明されるように生成することができる。
【0049】
「蛋白質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」とは、アミノ酸重合体または2つ以上の相互作用または結合したアミノ酸重合体の組を指し、同じ意味で使われる。
【0050】
「幹細胞」とは、未分化で、細胞分裂により長期間にわたり再生でき、特殊化された細胞に誘導され得る特徴を持つすべての細胞を指す。
【0051】
「細胞培養措置」とは、血小板溶解物濃度の変更、違う密度での培養液中の細胞の再播種、または予定継代時間の変更(すなわち、培地交換までの培養液中に放置する時間の延長または短縮)を指す。
【0052】
「継代」とは、単層培養液中で使用済みの培地を交換すること、または細胞培養微環境を向上するために培地を交換することを指す。
間葉系幹細胞および血小板溶解物の供給源
間葉系幹細胞は骨髄、末梢血、および脂肪組織等の供給源に存在する多能性幹細胞である。間葉系幹細胞は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、およびベータ膵島細胞を含む多くの種類の細胞に分化する能力がある。
【0053】
本発明の供給源となる間葉系幹細胞は一般的に修復/置換治療を要する患者(または適合するドナー)の腸骨稜から採取され、このような患者を本明細書では「〜(それ)を要する患者」と呼ぶ(なお、最近、脂肪組織、滑膜組織、および結合組織等のその他の供給源も間葉系幹細胞の供給源として確認されており、本発明の範囲に含まれる)。一実施形態では、約10〜20ccの骨髄が採取され、Centenoの米国特許出願第60/761,441号に説明される方法またはプラスチックへの付着を利用したCaplanらの米国特許第5,486,359号に説明される方法を用いて「単離」される。これらは参照することでその内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明は、適当な有核細胞数を産出して説明された血小板溶解物技術を用いるために、標準的な骨髄穿刺の変更も組み入れる。発表されている研究の大部分は健康なヒトまたは動物で行われているため、様々な病状のヒトへのこの技術の適用は試されたことがない。図8の例では、骨壊死(AVN)を患った(骨壊死部位の骨修復が必要な)患者に、上記の両側性10cc骨髄穿刺技術を用いて骨髄穿刺を行ったが、血小板溶解物の培養増殖は失敗した。しかし、片側から2〜3ccの少量の骨髄アリコートを3回(全部で6アリコート)採取する変更された技術を用いた場合、必要な有核細胞を産出し、20%血小板溶解物で増殖に成功した。
【0055】
本明細書で使用される血小板溶解物はDoucetの方法を用いて採取した骨髄から生成され、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。典型的な溶解物は、約数千万個から数千億個の血小板を含む。Martineauら、「Biomaterials」、2004年、第25(18)巻、p4489〜503(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)で示されるように、血小板溶解物は、安定した間葉系幹細胞成長を促進するために必要な成長因子を本質的に含んでいる。典型的な実施形態では、血小板溶解物および間葉系幹細胞は自己由来であり、間葉系幹細胞の有効で安定した増殖に有用な量である(以下にさらに説明される)。特に、血小板溶解物では、間葉系幹細胞の増殖に一般に使用されるものに比べてTGF−β等の成長因子のレベルは大幅に低いが、血小板溶解物に含まれる低レベルの成長因子が併用されると、大きな相乗効果があるとされていることに注意すべきである。
成長チャンネルの考察
本発明者が発見したように、本発明の採取された間葉系幹細胞は、10代エキソビボ継代以前、好ましくは5代エキソビボ継代以前に患者に移植して戻すと最適化修復/再生治療を提供する(1代継代は、培地および/または組織培養ハウジング/基材の細胞数が増えるように採取し植え付けることに相当する)。このように、各患者の間葉系幹細胞は治療的利用のために、米国食品医薬品局に認可されていない医薬品や因子を使わずに限られた継代数内で、必要な数に増殖されなければならない。本発明の実施形態は、採取間葉系幹細胞が血小板溶解物を用いて必要な量までに増殖され、それにより標的患者に移植および使用するのに最適化されていることを確認するための成長チャンネル条件を提供する。
【0056】
患者の間葉系幹細胞成長ポテンシャルを特定するには(必要な数の細胞を確保するために)考慮すること、つまり個別の成長特性(上記定義参照)が多くある。これらの考慮には間葉系幹細胞の供給源、つまり年齢、性別、遺伝的抑制、および変形性関節症等の変性疾患の有無を含む。
【0057】
変形性関節症を患う患者から採取された間葉系幹細胞について、本発明者は「低成長」と「高成長」の2種類の細胞成長を特定した。患者に低成長細胞があると、素早く細胞増殖し、この細胞群内で分化の潜在力を最大限に維持する能力に実際問題が生じる。最大限の分化潜在能力にない細胞は移植時に機能しなくなる可能性が高い。Crisostomoら、「Shock」、2006年、第26(6)巻、p575〜80。従って、必要とされる間葉系幹細胞成長を促進するために、患者の血小板溶解物がさらに高レベルで必要となる。その結果、これらの細胞は、若年の健康な個人から単離された間葉系幹細胞とは全く違った扱いをしなければならない。なお、本発明において、エキソビボ増殖潜在能力が限られた細胞、すなわち一継代期間内(<3日)で細胞の増加数が100%未満の細胞は、低成長と見なされる。
【0058】
本発明の一実施形態では、間葉系幹細胞の最適化エキソビボ培養増殖に必要な血小板溶解物の量は、様々な成長条件下で採取された細胞を監視することで決定される。これは、変形性関節症、骨粗しょう症、骨壊死、またはその他の骨、軟骨、または結合組織の病気を持った患者に関係する細胞の場合に特に重要である。間葉系幹細胞の増殖は多くの可変要因に依存する:患者の血小板溶解物中の成長因子の量(これは細胞成長を最大限にするために必要な溶解物%を変更する)、これら成長因子のバイオアベイラビリティ(つまり、これら因子の患者の細胞への影響)、これら成長因子の相対濃度、および患者の初期供給源細胞の質/量。本発明の一実施形態では、これらの可変要因下で間葉系幹細胞の成長を最適化するために、「成長チャンネル」つまり所定の時間および/または細胞継代(最適化成長条件では10代継代以下)に関連した患者の細胞の標的増殖率が設けられた。この成長チャンネルは、特定の均質な細胞集団を生成するために必要な細胞培養についての決定をすべて考慮している。
【0059】
本発明の一実施形態では、最適な成長条件を決定するために、間葉系幹細胞の標的エキソビボ培養増殖に必要な血小板溶解物の量と、視覚パラメータを組み合わせている。特に、本実施形態では、上記の血小板溶解物の考慮点と、採取された間葉系幹細胞のコロニー形成と間葉系幹細胞の単層増殖の考慮点を組み合わせることが必要である。一態様では、コロニー形成中は間葉系幹細胞の過成長、つまりコロニーの端にある細胞がコロニーを覆うことを防がなければならない。別の態様では、コロニー形成中は間葉系幹細胞の成長不足、つまり細胞が増殖しないことを防がなければならない。コロニー形成中に間葉系幹細胞が過成長した場合、細胞をコロニー形成培養から取り除いて単層培養にしなければならず、コロニー形成中に間葉系幹細胞の成長が不足する場合、培地を一部(ほぼ半分)除去し、新しい培地(さらに、少なくとも以前使用された血小板溶解物濃度)と取り換えなければならない。別の態様では、単層増殖の細胞は過成長つまり高密度化していないか確認し、例えば10,000〜12,000細胞/cm2で再播種しなければならず、また、細胞が丸型、旗型、または膨れた形状となる細胞形態を示す成長不足がないか確認しなければならない。細胞がこの形態を示す場合は、血小板溶解物濃度は少なくとも10〜15%血小板溶解物に上げるべきである。
【0060】
さらに具体的には、本明細書で説明される、血小板溶解物中で生成される細胞の増殖および修復能力を最大限にするための「成長チャンネル」とは、以下の異なる4側面を含む。
【0061】
1.単層培養での細胞成長率
2.単層培養での細胞密度
3.単層培養での細胞培養パターン、および
4.単層培養での細胞形態
これらの概念は図1に図面的にも説明される。
【0062】
「単層培養での細胞成長率」−血小板溶解物の成長因子のレベルは患者によって変わるため、これら因子の培養増殖率への影響が分かるまで、生物活性を特定する方法はない。このため、「成長チャンネル」の中の増殖の重要な要素は最低成長率である。これは倍加時間が1日から3日の間になるまで血小板溶解物濃度および/または播種密度のパラメータを調整することと定義される。これで、5代〜7代継代の前に約50〜100倍の細胞増加が得られる(図1、グラフ1)。また図1(グラフ2)には、両側性10cc骨髄穿刺から始まる成長率チャンネルの例を示す(例示目的のみ)。上述の成長チャンネルから外れると図1のグラフ1および関連の説明で示すような細胞培養措置が必要になる。
【0063】
「単層培養での細胞密度」−細胞密度は細胞成長および分化能力に影響し得る。Doucet(上記参照)は、1ミリリットルあたり約数千個の細胞という非常に低い播種密度を述べている。しかし私たちは、変形性関節症、骨壊死、癒着不能骨折等の病気を持った患者は上記よりもかなり高い播種密度が必要であり、修復能力を持った増殖細胞を生成するためには継代中はこの密度を維持することが非常に重要であるということを確認した。それとして、本発明の実施形態として容認できる(細胞のインビボ修復能力を最適化するための)細胞密集チャンネルを図1のグラフ3に示す。本発明で説明される間葉系幹細胞の空間分布は次の式で定量化できる:表面積*(密集度%)/細胞数。この数値は18〜23の範囲内にあるべきである。もし、数値が<18の場合、細胞は大変良く成長しているので細胞の播種密度を下げて播種することができる。もしこの数値が23〜27の間の場合、より高い播種密度(12×103細胞/cm2〜15×103細胞/cm2)で細胞を播種する必要がある。そして、数値が>27の場合、血小板溶解物濃度も上げるべきである。
【0064】
「単層培養での細胞培養パターン」−増殖を継続して細胞を未分化の状態で維持するためには細胞間隔が均等に分布されていることが必要であるため、本発明では細胞成長のパターンは重要である。これを確保するために、均一に分布された間葉系幹細胞が本明細書に記載の成長チャンネルに含まれる。詳細は図1のグラフ4で説明される。上述の細胞培養パターンから少しでも外れると、図1のグラフ4、および関連の説明で示す細胞培養措置が必要になる。
【0065】
「単層培養での細胞形態」:単層培養での細胞形態は本発明に係る特定の間葉系幹細胞の表現型を確保するために重要である。間葉系幹細胞のみに適用されるとして、好ましい形態は単層培養で(線維芽球様の)紡錘状である。なお、他の間葉系幹細胞株では、記載の成長チャンネルには無い表現型である多角形または旗型の形態が多く見受けられる。なお本発明のために、1〜4型を含む分類システムが設けられ、好ましい細胞種類は1型とされる。詳細は図1のグラフ5で説明される。なお、図1のグラフ5に示す2〜4型は従来技術によるものであり、各著者はこれらを各々の間葉系幹細胞株の形態として容認していた。なお、上述成長チャンネルの範囲内にある好ましい形態は紡錘状で小さな表面積を占める細胞であり、最適な1型より約50%大きな表面積を占める2〜4型の間葉系幹細胞とは違う。培養液中の形状2〜4型の間葉系幹細胞が>30%となったら、血小板溶解物の濃度を10%から15〜20%に上げるべきである。この時点で細胞集団は理想の形態から外れないように移植されるべきである。
【0066】
上述の細胞形態から少しでも外れると、図1のグラフ5、および関連の説明で示す細胞培養措置が必要になる。
【0067】
一実施形態では、成長チャンネルは、例えば膝関節等の標的部位に移植するための1千万個から1億個の細胞を得るために必要なエキソビボ培養での自己間葉系幹細胞の成長特性を示す。増殖細胞の数は再生が必要な標的部位にやや依存し、例えば脊椎椎間板の再生には約百万〜1千万個の細胞/mlが必要であるが、膝表面の再生には約数千万〜数億個の細胞/mlが必要である。採取された細胞は監視され、様々な量の自己血小板溶解物を用いて成長が修正される。
【0068】
本発明のエキソビボ増殖された間葉系幹細胞は、細胞計数法および/または視覚的細胞培養パラメータによって監視できる。細胞計数法は、細胞数がその細胞の利用可能な空間/密度を超えた際に、組織培養ハウジングまたは基質から細胞を採取して継代することに基づいている。細胞計数法は、血球計などの血球計算盤装置で用いてまたは分光光度法で細胞を採取し数えることのできる専門の技術者によって、現場で行わなければならない。本発明の一部として他の箇所で記載したように、細胞集計は、経験が豊かな技術者にインターネットを通してデジタル画像を送信することで遠隔でも実施できる。
【0069】
上述のように、本明細書で開示される視覚的細胞培養パラメータは、細胞が採取および移植される準備が整ったかを確認するために本発明の細胞を視覚的に検査する能力を含む。視覚的パラメータは、細胞培養形態、細胞培養パターン、および細胞培養密度を含む。特に、次の特定の定性的パラメータが見られる:コロニー形成の過成長、コロニー形成の成長不足、単層増殖培養の過成長、単層増殖培養の成長不足、血小板および幹細胞計数のための血球計の画像;骨髄穿刺後フラスコに最初に播種したときに付着した細胞数;いつ細胞を採取すべきかを特定するためのコロニー形成および後に成長するコロニー(過成長および成長不足を含む);どのくらい均一に細胞がフラスコに播種されたか(つまり、単層増殖では細胞はフラスコ内で均一であるべきである);どのくらいの密度で細胞が播種しているか;密集の段階およびいつ細胞の継代準備ができるかを特定するための細胞分裂の可視化;細胞がコロニーになったときフラスコがどのくらい血性に見えるか;血小板を得るために遠心分離した後の血液の分離具合;赤血球から有核細胞を分離するために骨髄を遠心分離した後に骨髄の分離がどのように見えるべきか;および細胞形態(つまり膨張している、明るい球状、散らばっているなど)。
【0070】
標的培養物の視覚的検査は、本明細書で説明される成長チャンネルの進行にわたり、組織培養の訓練を受けた人員が現場で、またはデジタル顕微鏡検査ビデオ技術(生中継)により遠隔で、またはデジタル顕微鏡カメラで撮影した写真を更新することで行うことができる。細胞培養の遠隔監視は、細胞培養複数施設にわたって制御がさらに制限されることが必要な場合に行うことができる。例えば、高度な訓練を受けたスペシャリストに多くの現場外の培養の視覚的データが提供される場合である。高度な訓練を受けたスペシャリストは、特定の視覚的パラメータ、例えば膝関節再生、虚血壊死の安定化、および癒着不能骨折の治癒等に対して良好な臨床結果をもたらした、特定の細胞密度、培養パターン、または形態などの使用を正当化する情報を入手できる。次にこのスペシャリストは、このようなすべての培養物にその培養形態を関連させることができる(一方で、多くの現場人員は、数カ月間、数年間にわたって、または全くこの関連に気づかないことがある)。一実施形態では、均一で過成長ではない細胞培養形態を持った細胞は、最適で成長チャンネル内であり、採取および移植される準備が出来たと見なされる。
【0071】
本発明の血小板溶解物組成は、有糸分裂に必要であることが知られている成長因子を多数含み、hFGF、PDGF−BB、TGF−β、およびVEGFを含む。無血清成長培地に血小板溶解物組成物を加えて、培地中に溶解物を標的量得る。例えば、血小板溶解物10%は体積で血小板溶解物組成物を10%含む。好ましい実施形態では、無血清基礎培地はDMEM、Hams F12、MEMまたはその他の類似培地である。有用な成長因子の量は患者の血小板溶解物に固有であり、通常は患者によって異なる。
【0072】
典型的な実施形態では、患者の細胞は最初にコロニー形成で10%血小板溶解物の培地で7〜10日間培養され、その後再度(コロニー形成が)集計される。患者が変形性関節症を患っている場合、細胞は初期10%血小板溶解物を用いた単層培養に移される。細胞は2〜4日間培養され、その患者の治療に必要な細胞総数と比較される。一部の実施形態では細胞を視覚的に検査する。上述の成長チャンネルから外れる細胞は、培地の血小板溶解物を(例えば15〜20%に)増量するためにその培地は変更され、チャンネルの範囲内にある細胞は、手順が繰り返されるまでそのまま少なくとも2〜4日間継続することを許される。チャンネル条件に依存する他の細胞培養措置は、より低いまたは高い密度での細胞の再播種、より高いまたは低い頻度での培地変更、より早いまたは遅い時期での細胞移植を含む。なお、細胞が上述の成長チャンネル内にあるかを確認するために、視覚的パラメータも利用できる。
【0073】
なお、間葉系幹細胞の増殖率の変動性は、採取された患者の間葉系幹細胞および患者の血小板中の成長因子のレベルの両方に依存する。それとして、特定の例で患者の間葉系幹細胞を成長チャンネル内に維持するために必要な血小板溶解物が高レベルなのは、細胞の成長特性のみが原因ではなく、必要なレベルの成長因子を提供するために、つまり、他の血小板溶解物と比べて患者の血小板溶解物の成長因子の濃度が低い場合は、血小板がさらに必要となるためでもある。驚くべきことに本発明者は、最適化条件下で培養した細胞は、最適化条件下で培養していない(成長チャンネル内にない)同じ数の細胞(例えば、必要とされる治療結果を得るのに十分な細胞数を得るために15代継代が必要な細胞培養)よりもはるかに治療効果があると確認した。例えば、本発明者は、本明細書で説明された成長チャンネル方法論を用いて最適化増殖された細胞と比べて、両側性PSIS骨髄穿刺10cc(骨髄総量20cc)を用いた最適でない増殖による細胞の臨床結果は劣るということを確認した(追跡MRI検査では、軟骨再生は無いまたはより少なく、半月再生は無いまたはより少なかった)。
自己間葉系幹細胞置換の方法
ここで説明される実施形態は、治療的再生が必要な患者の部位を治療的再生する方法を含む。例えば、変性した椎間板または関節の軟骨の治療的再生である。他の例としては、心筋の再生、皮膚創傷の治癒、骨折や骨癒着不能の治癒、神経修復、移植片対宿主反応やその他の免疫系の治療、およびその他の用途、膵島細胞の置換、骨粗しょう症の治療、難聴の治療、およびその他の用途のための間葉系幹細胞増殖を含む。本明細書で説明される方法は、間葉系幹細胞が自然(非合成/非組み換え)成長因子(通常、様々な血小板溶解物%の培養で得られる)で処理される自己間葉系幹細胞再生治療を利用する。
【0074】
初めに、幹細胞の治療的再生を要する患者から間葉系幹細胞の供給源を採取する。採取された供給源は手順全体を通して無菌環境で無菌状態に保たれる。本明細書で前述したように、採取された細胞は、本発明の成長チャンネルの実施形態の範囲内に細胞が維持される条件下で播種し、エキソビボ培養さる(供給源からの間葉系幹細胞の単離は上述している)。これは、例えば実施例1に示すように、患者から血小板溶解物を得て準備することが必要である。最適な増殖条件下で成長した自己間葉系幹細胞は、1千万個〜1億個の標的収量で10代継代される前に監視され移植の準備がされる。一部の実施形態で自己間葉系幹細胞は、1千万個〜4千万個の標的収量で細胞が5代継代される前に、移植のために培養され監視される。他の実施形態では自己間葉系幹細胞は、1千万個〜4千万個の標的収量で細胞が6、7、8、または9代継代される前に、移植のために培養され監視される。準備された間葉系幹細胞組成はこの後標的部位に移植され、それから数カ月にわたって有効性が監視される。この手順は望まれる結果によって繰り返し行ってもよい。4〜7代継代で1千万個〜4千万個の細胞が得られる条件下で処理された細胞は、それを要する患者の標的部位に移植されるのに最適な細胞である。
【0075】
特に、一部の実施形態で本発明は、初期コロニー形成および付着培養で、単離骨髄有核細胞を有する赤血球を播種させる新規の方法も含む。なお、赤血球も成長因子を含むため、これは細胞成長環境を強化し、単離間葉系幹細胞に対して他の分化作用もある。
【0076】
なお、この方法の実施形態は自己細胞および成長因子を用いて実施されるため、他の非自己間葉系幹細胞置換治療にある多くの免疫学的および感染的問題を避けることができる。最近の研究では、非自己間葉系幹細胞はナチュラルキラー細胞系を宿主内で活性化させるということが示されているため、上記のことは現時点で非常に重要である。Spaggiariら、「Blood」、2006年、第107(4)号、p1484〜90;Rasmussonら、「Transplantation」、2003年、第76(8)、p1208〜13。これらの実施形態は、移植された細胞がその部位で増殖して必要とされる細胞(関節表面では軟骨細胞、骨欠損では骨芽細胞、等)に分化する潜在能力を最適化する。次の実施形態で説明されるように、血小板溶解物組成(または血小板自体)を間葉系幹細胞の移植と同時にまたはその後に注射することもできる。
【0077】
本明細書で説明される細胞成長の実施形態を用いて、標的患者に使用するための最適化成長細胞が準備される。本明細書で説明される実施形態に従って成長させた細胞は、細胞形態を特定するために、つまり細胞表面抗原プロファイルを特定するためにFACSを用いて検査された。本発明の一態様では、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも1つに陽性である細胞集団が選択および増殖される。なお陽性結果とは、FACS分析で少なくとも90%の検査細胞が特定の細胞表面抗原に陽性であることを指す。
【0078】
典型的な実施形態では、特定された細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも2つに陽性である。さらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも3つに陽性である。またさらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも4つに陽性である。それよりさらに典型的な実施形態では、細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原のうち少なくとも5つに陽性である。最後に、本明細書で説明される一部の実施形態の細胞集団は、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、およびCD105の細胞表面抗原のうち6つまたは7つすべてに陽性である。これらの潜在的細胞表面抗原を持つ細胞についての実施形態は、治療的利用目的に最適であることが本明細書で示されている。さらに、本明細書の細胞集団についての実施形態において、上記の細胞表面抗原は含むが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の少なくとも1つの抗原を欠いている。本明細書の細胞集団についての他の実施形態においては、上記の細胞表面抗原は含むが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の少なくとも2つの抗原を欠いている。また、本明細書の細胞集団についてのさらに他の実施形態においては、CD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105、およびCD166の細胞表面抗原には陽性であるが、CD14、CD31、CD45、およびCD106の細胞表面抗原には陰性である。
血小板の標的部位への直接注射
本発明の一部の実施形態では、血小板組成物が直接患者の標的部位へ注射される。血小板注射は、間葉系幹細胞成長の環境を最適化するのを助けるため、間葉系幹細胞置換の前、間葉系幹細胞置換と組み合わせて(同時期)、または、間葉系幹細胞置換の後に実施され得る。典型的な実施形態においては、血小板溶解物を基とする培地と本発明の成長チャンネルの条件を使用し増殖された間葉系幹細胞は、(成長チャンネルの中にあるうちに)採取され標的部位へ自己血小板または血小板溶解物とともに注射される。
【0079】
部位直接注射するために必要とされる血小板の数を決定するために以下の計算が実施され得る。第一の問題は、エキソビボ間葉系幹細胞成長を最大限に維持するために必要な平均血小板数/ccを決定することである。例えば、もし患者の細胞が10%血小板溶解物を3日間、20%血小板溶解物を3日間、30%血小板溶解物を3日間要することを示すならば、血小板溶解物の最高濃度をもって、どれほどの血小板の補給が患部で必要とされるかを決定する。この例では、1日あたり血小板1ccにつき30%(3日間)が最高使用量であった。もし、患者への容積1ccあたりの最初分量の血小板が1.0×109であったならば、この期間に容積1ccあたり3×108血小板を3日間にわたり使用または、1日あたり容積1ccあたり1×108血小板が必要とされる。
【0080】
Marineauら、「Biomaterials」、2004年、第25(18)巻、p4489〜502(全目的のため、参照することにより本明細書に組み込まれる)は、血小板からの成長因子の放出を通じての、インビボ間葉系幹細胞増殖促進に必要なトロンビンとカルシウムのレベルに関しての見識を提供している。これは組織増殖と血管形成を促すための、最初の数週間の発達の自然な発生である。これらの研究から、活性血小板はほとんどの成長因子の荷を、7日間にわたるトロンビンとカルシウムによる活性化により放出すると推定できる。であるから、必要とされる1ccについての血小板最終量である7×108血小板/ccを提供するために、1日1ccにつき1×108血小板に7を乗じる。患者への最終注射量は、最初の液体統合量(IFJV)に加えられ、これが最終液体統合量(FFJV)を意味する。従って、上記の計算を使い、7×108血小板/ccに12.5を乗じて8.75×109にいたる。この数値は最終血小板投与量を示す(方程式1を参照)。
【0081】
(間葉系幹細胞成長を維持するための1ccあたりの平均血小板/培地変更前のこのレベルでの日数)×(培地変更が必要とされる前のこのレベルでの日数((7)(最終液体統合量))=PHC血小板投与量。(方程式(I))。
【0082】
または、増殖促進に必要な最高値のエキソビボパーセンテージと同等の血小板溶解物を使用し、統合量のために調整して、そしてより頻繁に補充することで補充を実施することができる。
間葉系幹細胞移植の部位監視
本明細書に示された移植細胞は、これらの細胞がインビボで生存し、細胞が必要な修復のために最終的に必要とされる細胞型に分化することを確保するために監視され得る。ある実施形態では、患部の非侵襲的監視のためMRI標識が実施される(しかし、この処置は磁粉を必要とし、細胞増殖や分化状態ではなく細胞の位置のみを提供することに留意すること)。
【0083】
従って、リアルタイム細胞監視が推奨される。最適に増殖された細胞の移植後、経皮洗浄液を移植部位から採取する。自由流動細胞と最小限付着性の間葉系幹細胞が得られ、細胞の数、細胞の種類、間葉系幹細胞の分化状態(もしあれば)、間葉系幹細胞の外観と間葉系幹細胞の増殖状態が検査される。関節洗浄液も、グリコアミノグリカン等の重要物質、主要蛋白質、遺伝子発現、関節微環境におけるその他の重要な化学的または遺伝的な改善の指標の発現を監視または測定することができる。
【0084】
2種類のリアルタイム監視が実施され得る:部位液体および/または部位液体の高圧「ノックオフ」の無作為試料採取。高圧「ノックオフ」はカテーテルや針(通常は14〜22ゲージ相当)を使って、高圧液体が押し通され最小限付着性間葉系幹細胞を打ち離すように実施される。
【0085】
または、分析のための組織試料を得るために、針による関節鏡検査法や、従来の関節鏡検査法も使用できる。
【0086】
経皮試料採取は間葉系幹細胞が移植される前のベースラインの段階で実施される(将来のすべての試料と比較可能な試料を作る)。試料採取は、標的部位への間葉系幹細胞移植後1週間、または可能性として2週間あるいは3週間で実施される。
【0087】
特に、移植1週間後に関節洗浄液または組織試料が採取され、検査される。細胞集団はエキソビボにおいて容易に検査され成長培地の調整がなされることは当たり前のこととされているが、インビボ試料採取法なしでは、インビボ成長と移植を確保するための前述の必要な調整は不可能である。しかし、このリアルタイム監視に基づき、血小板および/または血小板溶解物の補充の変更を標的部位に実施することができる。この過程は必要に応じて繰り返すことができる。加えて、追加の同系細胞で培養された間葉系幹細胞も部位に移植することができる。
【0088】
最後に、移植された間葉系幹細胞が生きていて増殖可能であり、さらに、または、関節微環境が細胞生存と移植にとって適切であることが認められた上で、分化剤が患部に接触され得る。さらに、リアルタイム監視分析から得られた細胞は、様々な分化剤の存在下で培養され、必要とされる結果に最適な薬剤が決められる。実例的薬剤としては、骨形態形成蛋白質2、デキサメタゾン、ヒアルロン酸等がある。加えて、リアルタイム監視において炎症細胞が収集された場合、抗炎症薬を治療に取り入れることや、または部位が乾燥している場合は、ヒアルロン酸を加えることができる。
【0089】
さらに、インビボ移植後の細胞は、例えばグリコアミノグリカン(GAG)の生成、既知の分解酵素の減少その他の因子等、組織再生の二次的効果が分析方法を使って監視され得る。この部分の本発明の重要な側面は、直接的または非直接的な監視が移植後も継続することである。繰り返すが、このことは、細胞の生存と移植、また分化後の機能を確保するために、リアルタイムで移植後のプロトコルの変更を可能にする。説明的実例としては、軟骨細胞の初期段階へ一旦分化した間葉系幹細胞は、完全に機能し、成熟した健康な軟骨細胞と生物学的に同等と認識されるようにGAG生成の監視がされる。さらに、監視されているGAG生成を増す目的のために、分化または補充のための特定の物質が関節に導入されることもある。この同じ例は、膵島細胞置換や島細胞へインビボ分化する間葉系幹細胞からのインシュリン生成の監視のような他の部分の組織修復にも使用できる。
治療への応用
本発明の方法と組成は、例えば、間葉系幹細胞応用を要する患者の標的部位の治療(すなわち修復または維持)に使用できる。本明細書に示された実施形態を使用して治療できる状態には、変形性関節症、変性円板疾患、関節の軟骨置換、骨虚血壊死部位の安定化、骨折やその他の骨癒着不能の治癒、心筋の再生、皮質修復、皮膚創傷治療、神経修復、免疫抑制のための細胞治療または調整、ベータ島細胞の置換、聴覚に関する細胞と構造の置換、骨粗しょう症治療、および間葉系幹細胞が損傷、欠損、または変性した細胞の修復と置換のための細胞に分化可能なその他の疾患が含まれる。
【実施例】
【0090】
下記の実施例は説明を目的としたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:成長チャンネルに対しての患者の間葉系幹細胞成長
有核細胞を患者の後腸骨稜より採取し、遠心分離法によってRBCと分離した(血清が勾配である)。
【0091】
対象患者より約10mlの骨髄を採取し、15mlの遠心分離器管に入れて細胞培養研究室へ運んだ。この骨髄試料を2〜3分間100gにおいて遠心分離処理をした。RBCペレットを検査することによってRBCの大半が試料の下半分に集まっていることを確認し、かつRBCペレットと試料の上部の間に透明な領域が存在していることを確認した。留意すべきこととしては、上部が総体積の40〜50%を占めていない場合、遠心分離処理を繰り返す必要がある。次に、上部を取り除き、15mlの遠心分離器管に入れ、1000gにおいて10分間遠心分離処理をした。留意すべきことしては、有核細胞ペレットは場合によって赤く見え、または場合によって緩く詰められた状態になっているが、これは存在しているRBCの数によるものである。血清の上澄みを取り除き、それをRBCペレットに戻す。有核細胞ペレットを1mlの食塩水に再懸濁する。上記の手順を繰り返すことによって追加の有核細胞を得た。
【0092】
懸濁液を1:20の比率で水に希釈し(溶解RBC)、有核細胞を計数して、有核細胞を数えた。RBCは1:2000の比率で希釈し、計数した。
【0093】
次に有核細胞を播種し、単層成長を行った。播種領域の1cm2あたり、約0.66〜1.25×106の有核細胞と0.16×109のRBCを組み合わせた(RBC懸濁液からの細胞と有核細胞懸濁液中の補足用RBC)。この細胞の組み合わせは1000gにおいて10分間遠心分離され、DMEM+シプロ+ヘパリン+10%血小板溶解物に再び懸濁された(Doucet記載の5%溶解物において著しく準最適な増殖率の結果になったため、自己データに基づいて10%を開始量として選択した)。次に、懸濁液を37°Cで30分温めた。温められた懸濁液を適切な大きさの組織培養フラスコに播種し、新しい培地を加えた。細胞培養物を5%CO2において、37°Cで7〜12日間培養した。
【0094】
図1に示されているように、8人の患者の間葉系幹細胞培養物を上述の条件で播種し、成長を細胞数対日数の関係としてグラフ化した。細胞数増殖の上に許容成長チャンネルが重ねて表示されている。7日目の時点で、Gi細胞が十分にあり、移植に最適となっている。8日目の時点で、St細胞が十分にあり、移植に最適となっている。そして10日目の時点で、Cl細胞が十分にあり、移植に最適となっている。その他のすべての細胞は許容成長率に及ばず、最適な成長を保証するためには培地により高いレベルの血小板溶解物を添加しなければならない。
実施例2:患者の間葉系幹細胞成長は患者の健康状態に依存する
間葉系幹細胞は変形性関節症にかかっている人から採取され、実施例1に記載の方法によって培養された。それぞれの患者の細胞の成長率と、総産出量を調べた。
採取された間葉系幹細胞は血小板溶解物のいくつかの量(5〜10%)を用いて成長させ、11日間の期間をグラフ化した(濃度500%の患者由来血小板濃度と凍結を利用した溶解)。図2が示すグラフ化された関連データでは、間葉系幹細胞産出量と成長率がかなり変動している。この実施例は患者間で観察された成長の変動性と間葉系幹細胞成長率を最適化する必要性を示す。
実施例3:5%の血小板溶解物は、間葉系幹細胞成長の最適化に効果がない
実施例1に記載のように変形性関節症患者より採取された間葉系幹細胞(低成長間葉系幹細胞)を5%血小板溶解物または、10%血小板溶解物、または20%血小板溶解物を用いて増殖した。図3A〜Eが示すように、10〜20%の血小板溶解物と比較して、5%の血小板溶解物で培養した多数の細胞ラインが最大増殖率を実現することができなかった。留意すべきこととしては、10%の血小板溶解物と比較して、20%の血小板溶解物の条件で培養されたほとんどの細胞ラインはわずかな増殖利点しか示さなかった。しかしながら、我々の実験データはOAにかかっている患者は大幅に変動する増殖率を持っていることを示していることを強調しなければならない。すなわち5%において数人の患者が成長チャンネル目標を達成でき、ほとんどの患者は10%で達成し、そしてまた数人は20%の補足を必要とした。さらに、例えば大腿骨頭の虚血壊死のような別の疾患にかかっている他の患者は、10%溶解物を用いても増殖に失敗し、研究プロトコルでのみ決定される複数の変更を必要とした(次の実施例を参照)。
【0095】
図4は更に、変形関節症患者より採取された間葉系幹細胞は最適な増殖を達成するために、一般的にはより高いレベルの血小板溶解物(10%+)を要することを示す。しかしながら、通常の成長を示す健康な人からの間葉系幹細胞は、5%または10%血小板溶解物の成長条件下、変動率はわずかであった。
【0096】
本実施例のデータは、変形関節症患者から細胞を採取した条件の場合、Doucetら記載の条件では、最適な増殖条件は得られなかったことを示す。これらの細胞は、最適な増殖を示すために、培地により高いパーセンテージの血小板溶解物を必要とした。
【0097】
しかしながら、細胞が採取され、「高成長型」を示す条件下では、細胞は5%または10%の血小板溶解物の条件下で成長することができた。
実施例4:5人の異なった患者の成長チャンネル実例
実施例1で採取したように、5人の患者が間葉系幹細胞を提供した。異なった溶解物濃度において細胞を成長させ、細胞数を計算した。細胞成長データは図5に示すが、その中では本発明の細胞成長チャンネルが重ねて表示されている。細胞成長チャンネルのパラメータ内で増殖できる細胞は最適であると見なされ、対象患者に使用可能なものであるが、患者5の細胞成長は産出量に乏しく、臨床的に成功する確率が低いものと考えられる。従って、記載成長チャンネル内の細胞成長を得るためには、血小板溶解物に基づく細胞の成長条件の変更を利用するべきである。さらに、細胞密度、培養パターンと形態に基づく、すでに記載の培養に関する判断を適用する必要もある。
実施例5:成長チャンネルパラメータ内で細胞が培養された際に存在する細胞表面の抗原
本明細書と実施例1および2記載の実施形態を利用して間葉系幹細胞を採取・増殖した。培養された細胞の表現型を調べるために、既知の幹細胞表面抗原に対して蛍光標識された単クローン抗原(mAbs)とともに細胞を培養した(表1および2に使用されたMAbsを示す)。
【0098】
FACSCalifurのフロー血球計算器を使用して、2人の被験者の培養細胞の細胞表面抗原の発現レベルを測定した。表1と2はその結果を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
表1は各対象細胞表面抗原の平均蛍光強度(MFI)を示す。表2は各細胞表面抗原のパーセントを正値で示す。表2が示すように、対象患者移植用に最適化された細胞の99%より多くがCD29、CD44、CD59、CD73、CD90、CD105およびCD166を発現した。反対に、対象患者移植用として最適の能力を持つ細胞の表面に一般的に存在していると考えられる抗原ではないCD14、CD31、CD45およびCD106は、わずかな細胞しか発現しなかった。
【0101】
実施例6:本明細書実施例の形態を利用した間葉系幹細胞移植はインビボ骨軟骨の軟骨置換を提供する
膝の欠陥を治すために軟骨置換を必要としていた57歳の患者より骨髄試料を得た。実施例1に記載の方法によって骨髄試料を採取し、間葉系幹細胞を単離した。1千万個の細胞を得るまで、6継代を通して10〜20%の血小板溶解物において細胞を成長させた。本発明の成長チャンネル内に細胞を維持した。その後、自己間葉系幹細胞を利用して、対象部位に細胞を移植した。
【0102】
図6(AとB)は3.0 TのMRIの矢状高速回転プロトン密度画像を示す。大腿骨外側顆の後部重量荷担面の軟骨の欠陥が示されている(A)。39日後に画像が再び撮られ、軟骨の欠陥部が埋められている(図6B参照)。本実施例のデータは、標的部位の大幅な軟骨欠陥を治すために、本明細書記載の方法および組成物が有効であることを示す。
【0103】
実施例7:より高いレベルの血小板溶解物のタイミングは、より低成長型の間葉系幹細胞が成長チャンネルの成長目標に達成するための成長の勢いをつけることができる
以下の実施例は、エキソビボ増殖中の血小板溶解物濃度の変更によって間葉系幹細胞産出量を劇的に改善することができることを説明する。細胞がコロニー形態から出現する際、初期の増殖培養段階において20%の血小板溶解物濃度(「溶解物促進」)を使用した。4人の患者の細胞集団を検査し、それらをRe、Gi、VeとCaと標識した。成長条件を監視し、それを表3と図7に示す。
【0104】
表3に示す4人の患者のうち、GiとVeの継代あたりの間葉系幹細胞成長増加が劇的に改善されたことに留意すべきである。被験者Giの場合、20%溶解物促進を使用した時、継代あたりの間葉系幹細胞成長増加総量は9.74から12.96に増加した。Reの場合、この測定値は6.88から10.34に上昇し、ほぼ2倍に近い変化を示した。留意すべきこととしては、この2人の患者は間葉系幹細胞を用いる修復治療の標的人口統計学層内である(変形性関節症(OA)の診断を受けており、50代と60代である)。より若い方の被験者Ve(OAの診断を受けていない)は、継代あたりの間葉系幹細胞成長増加総量の改善はわずかであった(5.0から5.7)。最高年齢の70代で、複数関節に重度のOAの診断を受けていた被験者でも、この測定値の改善は軽度なものにすぎなかった(5.08から5.13)。
【0105】
4人の患者のうち半分は目立った産出量改善を示し、残りの2人は産出量の悪化はなく、わずかな産出量改善しか示さなかったことから、本明細書記載の方法および組成物は修復治療を要するOA患者集団において間葉系幹細胞産出量改善に有効である。
【0106】
実施例8:間葉系幹細胞移植を要する患者のための成長条件
虚血壊死を呈する44歳の白人女性から、各PSISより10ccの骨髄を採取し、本発明記載の方法によってその細胞を処理した。患者の有核細胞産出量は非常に乏しく、10%溶解物において細胞を単層条件下成長させたが、第2継代以降、増殖に失敗した。この患者から再び、左と右のPSISより、異なった骨髄採取方法で3つずつ少量のアリコートを採取し、コロニー形成培養で細胞を20%血小板溶解物で増加させ、20%血小板溶解物において成長させた。図8は両方の細胞増殖グラフを示し、この疾患にかかっている多くの患者は有核細胞の数を増やすために異なった骨髄採取方法と、コロニー形成培養では溶解物増加、そして単層培養増殖段階では非常に高い血小板溶解物濃度を必要としていることを強調している。
【0107】
実施例9:本発明による細胞の直接注射
外固定、観血的整復法と骨シミュレータによって、9カ月経過の上腕骨折の治療を受けていた37歳の白人女性。図10aが示すように、この骨折は著しく癒着不能状態に入った。患者の各PSISより100ccの骨髄を採取して間葉系幹細胞を単離し、10%の血小板溶解物において成長させた。これを透視下、減菌されたトロカールによって経皮的に癒着不能骨折部位に移植した。図10bは細胞の注射5週間後、癒着不能部分が著しく治癒していることを示す。この実施例は本発明によって増殖された間葉系幹細胞のインビボ骨形成能力を説明する。
【0108】
実施例10:膝軟骨の置換
内側前半月の著しい劣化を伴う重症の膝の内側区画の変性疾患にかかっている43歳の白人男性。図11Aは前部においてほとんどなくなっていることが確認できる著しく劣化した内側半月の3.0Tプロトン密度矢状MRI画像を示す。図11Bは入手された間葉系幹細胞を本明細書記載の成長チャンネル法によって増殖・経皮移植した3カ月後を示す。図11Bは半月の再生を示し、その後の3次元画像容量分析では半月容量の32.5%増加を示した。留意すべきこととしては、半月の内部の「白い」または「虚血」と呼ばれる領域で半月再生が起こったことである。これが起こるためには、この領域に血管を導かなければならない。このような現象が起きたのは、この細胞株固有の性質によるものか、よりあり得ることとしては細胞の移植後の関節への血小板溶解物注射による可能性が高い。例えば、血小板溶解物は新血管形成を起こす能力を持つVEGFレベルがかなり高いことは周知である。
【0109】
【表3】
多くの実施形態で本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者であれば本発明の精神と範囲から逸脱することなく本明細書記載実施形態の形式や内容を変更することが可能であることは理解でき、本明細書記載の各実施形態は請求範囲を制限する意図において述べられているものではない。
【0110】
本明細書は多くの特許、特許出願、そして公開文書よりの引用文を含むが、すべての目的に対して、それぞれは参照することにより本明細書に組み込まれることする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞移植を用いた患者治療方法であって、その方法は以下の工程を含む:
患者から間葉系幹細胞を採取する工程、
前記患者から血小板を採取する工程、
前記患者の前記血小板から血小板溶解物を準備して前記患者の前記血小板溶解物を任意の量含んだ成長培地を生成する工程、
前記成長培地で前記間葉系幹細胞を増殖する工程、および
増殖された自己間葉系幹細胞を前記患者の必要な部位に移植する工程。
【請求項2】
さらに、増殖された間葉系幹細胞を移植した後に、標的部位をインビボ監視することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、間葉系幹細胞の増殖をさらに促進するために、増殖された前記自己間葉系幹細胞の移植中または後に、血小板または血小板溶解物を患者の標的修復部位に直接注入することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血小板溶解物を含有する前記培地が、体積で約5%〜30%の血小板溶解物を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞が、エキソビボ10代継代までに最適化成長するように増殖される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞が、エキソビボ7代継代までに最適化成長するように増殖される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記必要部位が、変性した椎間板である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記必要部位が、心筋である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記必要部位が、本来ニューロン性である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記必要部位が、変性した関節である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
注入される前記血小板または溶解物の濃度が、前記間葉系幹細胞のエキソビボ増殖を最大限にするために必要な濃度によって決定される請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、変形性関節症と診断された患者である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
基礎培地および約5%〜30%の血小板溶解物を含有する間葉系幹細胞のエキソビボ増殖のための細胞培地。
【請求項14】
前記血小板溶解物を約10%〜20%含有する請求項13に記載の細胞培地。
【請求項15】
前記血小板溶解物が、前記間葉系幹細胞に自己由来である請求項13に記載の細胞培地。
【請求項16】
増殖を最大限にするために、間葉系幹細胞の増殖中、特定の時期にさらに高濃度な溶解物を使用する請求項13に記載の細胞培地。
【請求項17】
患者への移植に有用な細胞を増殖するための成長チャンネルであって、その成長チャンネルは患者の細胞が採取されてから10継代内で増殖および移植ができることを確保するパラメータを含み、1つのパラメータは細胞の増殖に用いる血小板溶解物のレベルである。
【請求項18】
増殖のための前記間葉系幹細胞および血小板溶解物が、非自己ドナーにより提供される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
増殖収量を最適化するための、間葉系幹細胞の増殖に用いる成長チャンネル。
【請求項20】
部位修復を最適化するために、インビボ監視から得たデータを使用してインビボ補給を調整する請求項2に記載の方法。
【請求項21】
CD29、CD44、およびCD59の細胞表面抗原のために強化された細胞を含む単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項22】
前記細胞が、さらにCD73を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項23】
前記細胞が、さらにCD73およびCD90を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項24】
前記細胞が、さらにCD73、CD90、およびCD105を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項25】
前記細胞が、さらにCD73、CD90、CD105、およびCD166を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項26】
前記パラメータが、細胞培養播種密度、培地変更までの細胞培養時間、細胞形態、および細胞成長パターンである請求項17に記載の方法。
【請求項27】
変性した部位を治療するために使用する間葉系幹細胞の量は、百万個から1億個の細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項28】
骨髄穿刺が、間葉系幹細胞収量を高めるために1〜10mlを何度も採取することを示す請求項1に記載の方法。
【請求項29】
本明細書に記載した特定の間葉系幹細胞表現型の付着およびコロニー形成を向上させるために、初期コロニー形成培養に赤血球を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記インビボ監視に、外科的手段、関節鏡を用いた手段、および/または経皮的な手段を用いた、治療部位の直接可視化を含む請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記インビボ監視に、エキソビボ可視化のために付着または非付着細胞を除去することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項32】
前記インビボ監視に、グリコアミノグリカン、酵素、蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、または脂質等の細胞産物または二次的化学物質の分析を含む請求項2に記載の方法。
【請求項1】
間葉系幹細胞移植を用いた患者治療方法であって、その方法は以下の工程を含む:
患者から間葉系幹細胞を採取する工程、
前記患者から血小板を採取する工程、
前記患者の前記血小板から血小板溶解物を準備して前記患者の前記血小板溶解物を任意の量含んだ成長培地を生成する工程、
前記成長培地で前記間葉系幹細胞を増殖する工程、および
増殖された自己間葉系幹細胞を前記患者の必要な部位に移植する工程。
【請求項2】
さらに、増殖された間葉系幹細胞を移植した後に、標的部位をインビボ監視することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、間葉系幹細胞の増殖をさらに促進するために、増殖された前記自己間葉系幹細胞の移植中または後に、血小板または血小板溶解物を患者の標的修復部位に直接注入することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記血小板溶解物を含有する前記培地が、体積で約5%〜30%の血小板溶解物を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞が、エキソビボ10代継代までに最適化成長するように増殖される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞が、エキソビボ7代継代までに最適化成長するように増殖される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記必要部位が、変性した椎間板である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記必要部位が、心筋である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記必要部位が、本来ニューロン性である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記必要部位が、変性した関節である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
注入される前記血小板または溶解物の濃度が、前記間葉系幹細胞のエキソビボ増殖を最大限にするために必要な濃度によって決定される請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、変形性関節症と診断された患者である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
基礎培地および約5%〜30%の血小板溶解物を含有する間葉系幹細胞のエキソビボ増殖のための細胞培地。
【請求項14】
前記血小板溶解物を約10%〜20%含有する請求項13に記載の細胞培地。
【請求項15】
前記血小板溶解物が、前記間葉系幹細胞に自己由来である請求項13に記載の細胞培地。
【請求項16】
増殖を最大限にするために、間葉系幹細胞の増殖中、特定の時期にさらに高濃度な溶解物を使用する請求項13に記載の細胞培地。
【請求項17】
患者への移植に有用な細胞を増殖するための成長チャンネルであって、その成長チャンネルは患者の細胞が採取されてから10継代内で増殖および移植ができることを確保するパラメータを含み、1つのパラメータは細胞の増殖に用いる血小板溶解物のレベルである。
【請求項18】
増殖のための前記間葉系幹細胞および血小板溶解物が、非自己ドナーにより提供される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
増殖収量を最適化するための、間葉系幹細胞の増殖に用いる成長チャンネル。
【請求項20】
部位修復を最適化するために、インビボ監視から得たデータを使用してインビボ補給を調整する請求項2に記載の方法。
【請求項21】
CD29、CD44、およびCD59の細胞表面抗原のために強化された細胞を含む単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項22】
前記細胞が、さらにCD73を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項23】
前記細胞が、さらにCD73およびCD90を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項24】
前記細胞が、さらにCD73、CD90、およびCD105を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項25】
前記細胞が、さらにCD73、CD90、CD105、およびCD166を含む請求項21に記載の単離ヒト間葉系幹細胞集団。
【請求項26】
前記パラメータが、細胞培養播種密度、培地変更までの細胞培養時間、細胞形態、および細胞成長パターンである請求項17に記載の方法。
【請求項27】
変性した部位を治療するために使用する間葉系幹細胞の量は、百万個から1億個の細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項28】
骨髄穿刺が、間葉系幹細胞収量を高めるために1〜10mlを何度も採取することを示す請求項1に記載の方法。
【請求項29】
本明細書に記載した特定の間葉系幹細胞表現型の付着およびコロニー形成を向上させるために、初期コロニー形成培養に赤血球を用いる請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記インビボ監視に、外科的手段、関節鏡を用いた手段、および/または経皮的な手段を用いた、治療部位の直接可視化を含む請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記インビボ監視に、エキソビボ可視化のために付着または非付着細胞を除去することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項32】
前記インビボ監視に、グリコアミノグリカン、酵素、蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、または脂質等の細胞産物または二次的化学物質の分析を含む請求項2に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E−1】
【図1E−2】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E−1】
【図1E−2】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2010−532370(P2010−532370A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515083(P2010−515083)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068202
【国際公開番号】WO2009/006161
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004206)リジェネレイティブ サイエンシーズ, エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068202
【国際公開番号】WO2009/006161
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510004206)リジェネレイティブ サイエンシーズ, エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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