説明

関節リウマチ治療薬のスクリーニング法

【課題】
関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法及び新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療用医薬組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
DGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質及びDGPP2L蛋白質がリン酸分解酵素活性を有し、前記ポリペプチドがヒトRA患者滑膜組織の血管内皮で発現亢進していることを見出した。更に、血管内皮でのDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質の発現抑制が、血管内皮増殖抑制をもたらすことを見出した。関節リウマチでは滑膜組織における血管新生は病態進行に関与すると考えられていることから、DGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質抑制物質並びに/又はDGPP2S蛋白質及びDGPP2L蛋白質抑制物質を選択することにより関節リウマチ治療薬をスクリーニングする方法を確立して提供した。前記抑制物質を有効成分とする新たな関節リウマチ治療薬を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ治療薬のスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)は滑膜組織に病変の主座を持ち、関節の発赤、腫脹、熱感、疼痛、運動制限、および破壊をもたらす原因不明の慢性炎症性疾患である。RAの滑膜組織では、インターロイキン-1(interleukin-1、IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α、TNF-α)などの炎症性サイトカイン、一酸化窒素(nitric oxide、NO)、プロスタグランジン(prostaglandins、PGs)などの過剰産生が知られている(非特許文献1)。また、滑膜組織を構成する免疫担当細胞はCD40/CD40リガンド系、ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)/ LFA-1(leukocyte adhesion molecule-1)系などの細胞表面分子を介して相互に活性化しあい、炎症反応の遷延に関与すると考えられている(非特許文献2)。更に、滑膜組織での血管新生はパンヌス形成およびその維持に関与すると考えられている(非特許文献3)。
近年、モノクローナル抗体、可溶性受容体などを用い、IL-1、IL-6やTNF-αを標的とした治療法が開発されその有効性が注目を集めている(非特許文献4)。しかし、従来の治療標的分子を機序とする治療法では完全寛解導入には至らない患者群が存在する(非特許文献5)。従って、既存の報告とは異なる新しい治療標的分子の同定が望まれている。
【0003】
【非特許文献1】「ザ・ジャーナル・オブ・エクスメンタル・メディシン(The Journal of Experimental Medicine)」、(米国)、1991年、第173巻、p.569-574
【非特許文献2】「ザ・ジャーナル・オブ・リューマトロジー(The Journal of Rheumatology)」、(カナダ)、2002年、第29巻、p.875-882
【非特許文献3】「アースライティス・リサーチ (Arthritis Research)」、(英国)、2002年、第4巻 補遺3、p.S81-S90
【非特許文献4】「カレント・ファーマシューティカル・バイオテクノロジー(Current Pharmaceutical Biotechnology)」、(米国)、2000年、第1巻、p.217-233
【非特許文献5】「ネイチャー・レビューズ・イムノロジー(Nature Reviews Immunology)」、(英国)、2002年、第2巻、p.364-371
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は関節リウマチの改善及び/又は治療に有用な物質のスクリーニング方法及び新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療用医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
「配列番号2で表されるアミノ酸配列」からなるポリペプチドを「DGPP1L蛋白質」、「配列番号2の第50〜313番で表されるアミノ酸配列」からなるポリペプチドを「DGPP1S蛋白質」、「配列番号4で表されるアミノ酸配列」からなるポリペプチドを「DGPP2L蛋白質」、「配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列」からなるポリペプチドを「DGPP2S蛋白質」、「配列番号2の第50〜313番又は配列番号2の第50〜313番で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド」を「DGPP1機能的等価改変体」、「配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列又は配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド」を「DGPP2機能的等価改変体」と称する。また、「配列番号2で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド」を「DGPP1相同ポリペプチド」、「配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド」を「DGPP2相同ポリペプチド」と称する。
DGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP1機能的等価改変体及びDGPP1相同ポリペプチドを総称して「DGPP1ポリペプチド」と称する。DGPP2L蛋白質、DGPP2S蛋白質、DGPP2機能的等価改変体、及びDGPP2相同ポリペプチドを総称して「DGPP2ポリペプチド」と称する。また、DGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP1機能的等価改変体、DGPP1相同ポリペプチド、DGPP2L蛋白質、DGPP2S蛋白質、DGPP2機能的等価改変体、及びDGPP2相同ポリペプチドを総称して「本明細書のポリペプチド」と称する。DGPP1機能的等価改変体、DGPP1相同ポリペプチド、DGPP2機能的等価改変体、及び/又はDGPP2相同ポリペプチドとしては、リン酸分解酵素活性及び増殖抑制活性を有するポリペプチドが好ましい。
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、DGPP1S、DGPP1L、DGPP2S、及びDGPP2L蛋白質を取得(実施例2)し、該蛋白質がそれぞれリン酸分解酵素活性を有することを生化学的に見出した(実施例3)。DGPP1ポリペプチド及びDGPP2ポリペプチドは、ともにリン酸分解酵素であり、DGPP1L又はDGPP1S蛋白質とDGPP2L又はDGPP2S蛋白質の活性中心の相同性は83.7%であった。また、DGPP1S、DGPP1L、DGPP2S、及びDGPP2L蛋白質がヒトRA患者滑膜組織の血管内皮において発現亢進していること、RA病態を特徴づける組織で発現亢進していることを見出した(実施例1、実施例4)。更に、血管内皮でのDGPP1S及びDGPP1Lの発現抑制が、血管内皮増殖抑制をもたらすことを見出した(実施例6)。関節リウマチでは滑膜組織における血管新生は病態進行に関与すると考えられている。前記知見に基づき、DGPP1ポリペプチドを抑制する物質及び/又はDGPP2ポリペプチドを抑制する物質を選択することにより関節リウマチ治療薬をスクリーニングする方法を確立して提供した。DGPP1ポリペプチドを抑制するsiRNAを提供し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1](1)配列番号2、配列番号2の第50〜313番、配列番号4及び/又は配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(2)配列番号2の第50〜313番及び/若しくは配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列又は配列番号2の第50〜313番及び/若しくは配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド、あるいは(3)配列番号2又は配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド
を抑制するか否かを分析する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法、
[2]抑制が発現抑制である、[1]に記載のスクリーニング方法、
[3]抑制がリン酸分解酵素活性抑制である、[1]に記載のスクリーニング方法、
[4](1)[1]に記載のポリペプチド、(2)[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(3)[1]に記載のポリペプチドを発現している細胞からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
[5](1)[1]に記載のポリペプチド、(2)[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(3)[1]に記載のポリペプチドを発現している細胞の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用、
[6][1]乃至[3]に記載の分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法、
[7][1]乃至[3]に記載のスクリーニング方法で得ることができる物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物、
[8][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物、
[9][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を投与することを含む、関節リウマチ治療方法、
[10][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質の、関節リウマチ治療用医薬組成物製造のための使用、
[11]配列番号1に記載の塩基配列のNAに続く19〜21塩基からなる、配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに特異的な塩基配列に基づいて設計されるsiRNA、
[12]二重鎖RNA部分が、配列番号32で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNA、
[13][11]又は[12]に記載のsiRNAを有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物
に関する。
【0007】
本明細書において「リン酸分解酵素活性を有する」とは、リン酸含有物質末端のリン酸残基を遊離させる活性を有することをいう。あるポリペプチドが「リン酸分解酵素活性を有する」か否かは、特に限定されるものではないが、標識されたリン酸含有物質、例えば末端リン酸基が標識されたジアシルグリセロールピロリン酸の末端リン酸基が遊離されることを検出すること(Toke D.A et al J. Biol. Chem. 1998 (273) p3278-p3284 )、又は未標識のリン酸含有物質、例えばジアシルグリセロールピロリン酸の末端リン酸基が遊離されることを検出することで確認することができる。より好ましくは、実施例3に記載の方法により、確認することができる。リン酸含有物質としては、より好ましくはジアシルグリセロールピロリン酸を用いることができる。
「増殖抑制活性を有する」とは、所定の細胞集団において、細胞数の増加が抑制されることを意味する。「増殖抑制活性を有する」か否かは、例えば、実施例6に記載の方法で確認することができる。好ましくは、所定の細胞集団における細胞数の増加が抑制されるとは、この集団における細胞数が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、更に好ましくは少なくとも約50%、コントロールの集団における細胞数と比して少ないことを意味する。
「本明細書のポリペプチドを抑制する物質」としては本明細書のポリペプチドのうちDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質を抑制する物質がより好ましい。「本明細書のポリペプチドを抑制する物質」としては、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」と「本明細書のポリペプチドの機能を抑制する物質」が含まれるが、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」が好ましく、DGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質の発現を抑制する物質が更に好ましい。また、「関節リウマチ治療用医薬組成物」としては、本明細書のポリペプチドを抑制する物質(好ましくは、DGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質を抑制する物質)を有効成分とする関節リウマチ治療用医薬組成物がより好ましい。
本明細書において、「siRNA」とは、小分子量干渉RNA(small interfering RNA)を意味する。siRNAは、二重鎖のRNA部分と、好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、RNA干渉(RNAi;RNA interference)と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導する(Fire, A.等, Nature, 391, 806-811, 1998)。本発明のsiRNAとしては、配列番号6で表される塩基配列からなるセンス鎖と、配列番号7で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNAがより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスクリーニング方法によれば、関節リウマチの治療薬として有用な物質を得ることができる。本発明のスクリーニング方法で得られた物質は、本明細書のポリペプチドを発現抑制することにより血管新生を抑制するという全く新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療剤として有用である。
また、本発明のsiRNAは、本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物の有効成分として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。本明細書における遺伝子操作技術は特に断りのない限り「Molecular Cloning」 Sambrook, Jら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年等の公知技術に従って実施可能であり、蛋白質操作技術は特に断りのない限り「タンパク実験プロトコール」(秀潤社、1997年)等の公知技術に従って実施可能である。
【0010】
<本発明のスクリーニングツール及びスクリーニングのための使用>
(1)(i)本明細書のポリペプチド、即ちDGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP1機能的等価改変体(配列番号2で表されるアミノ酸配列の第50〜313番あるいは配列番号2の第50〜313番で表されるアミノ酸配列において、1〜10個(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド)、DGPP1相同ポリペプチド(配列番号2で表されるアミノ酸配列で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上)であるアミノ酸配列からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド)(以下、DGPP1ポリペプチド型スクリーニングツールと称する)、
DGPP2L蛋白質、DGPP2S蛋白質、DGPP2機能的等価改変体(配列番号4で表されるアミノ酸配列の第21〜291番あるいは配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列において、1〜10個(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド)並びに/あるいはDGPP2相同ポリペプチド(配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上)であるアミノ酸配列からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド)(DGPP2ポリペプチド型スクリーニングツールと称する)、
(以下、DGPP1ポリペプチド型スクリーニングツール及びDGPP2ポリペプチド型スクリーニングツールを本発明のポリペプチド型スクリーニングツールと称する)、
(ii)本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツールと称する)、あるいは
(iii)本明細書のポリペプチドを発現している細胞(以下、本発明の細胞型スクリーニングツールと称する)
からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
(2)(i)本明細書のポリペプチド、
(ii)本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は
(iii)本明細書のポリペプチドを発現している細胞
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用
が含まれる。
本明細書において、「スクリーニングツール」とは、スクリーニングの為に用いる物(具体的には、スクリーニングの為に用いるポリペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞)をいう。「関節リウマチ治療薬スクリーニングツール」とは、関節リウマチ治療薬をスクリーニングするために、本発明のスクリーニング方法において、試験化合物を接触させる対象となる細胞、ポリヌクレオチド又はポリペプチドである。当該ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞の、関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用も本発明に含まれる。
DGPP1機能的等価改変体及びDGPP2機能的等価改変体の起源はヒトに限定されない。例えば、配列番号2又は配列番号4で表されるアミノ酸配列のヒトにおける変異体が含まれるだけでなく、前述の(i)の本発明のポリペプチド型スクリーニングツールであるポリペプチドのいずれかに該当する限り、ヒト以外の他の脊椎動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ブタ、ニワトリなど)由来のものも含まれる。更には、前述の(i)の本発明のポリペプチド型スクリーニングツールであるポリペプチドいずれかに該当する限り、天然ポリペプチドに限定されず、配列番号2又は配列番号4で表されるアミノ酸配列を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドも含まれる。
なお、本明細書における前記「相同性」とは、BLASTパッケージ[sgi32bit版,バージョン2.0.12;National Center for Biotechnology Information(NCBI)より入手]のbl2seqプログラム(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,174,247-250,1999)を用いて得られた値を意味する。なお、パラメーターでは、ペアワイズアラインメントパラメーターとして、
「プログラム名」として「blastp」を、
「Gap挿入Cost値」を「0」で、
「Gap伸長Cost値」を「0」で、
「Matrix」として「BLOSUM62」を、
それぞれ使用する。
DGPP1機能的等価改変体には、配列番号2で表されるアミノ酸配列又は配列番号2で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチドが含まれ、DGPP2機能的等価改変体には、配列番号4で表されるアミノ酸配列又は配列番号4で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチドが含まれる。
本発明の細胞型スクリーニングツールである本明細書のポリペプチドを発現している細胞は、本明細書のポリペプチドを天然に発現している細胞及び本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞を含むが、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換され本明細書のポリペプチドを発現している細胞がより好ましい。
本発明のポリペプチド型スクリーニングツールとしてはDGPP1ポリペプチド(特に好ましくはDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質)及び/又はDGPP2ポリペプチド(特に好ましくはDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質)、本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツールとしてはDGPP1ポリペプチド(特に好ましくはDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質)及び/又はDGPP2ポリペプチド(特に好ましくはDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質)をコードするポリヌクレオチド(最も好ましくは配列番号1で表される塩基配列、配列番号1で表される塩基配列の第148〜939番、配列番号2で表される塩基配列、及び/又は配列番号2で表される塩基配列の第61〜873番)、本発明の細胞型スクリーニングツールとしてはDGPP1ポリペプチド(特に好ましくはDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質)及び/又はDGPP2ポリペプチド(特に好ましくはDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質)を発現している細胞が好ましい。
【0011】
本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明により開示された配列情報に基づいて一般的遺伝子工学的手法により容易に製造し取得することが出来る。
本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば次のように得ることができるが、この方法に限らず公知の操作「Molecular Cloning」[Sambrook, Jら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、等]でも得ることができる。
例えば、(1)PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子工学的手法(すなわちcDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から所望のアミノ酸を含む形質転換株を選択する方法)を用いる方法、又は(3)化学合成法などを挙げることができる。各製造方法については、WO01/34785に記載されているのと同様に実施できる。
PCRを用いた方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法a)第1製造法に記載された手順により、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。該記載において、「本発明の蛋白質を産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織」とは、例えば、ヒト滑膜組織、ヒト滑膜線維芽様細胞を挙げることができる。ヒト滑膜細胞又はヒト滑膜線維芽様細胞からmRNAを抽出する。次いで、このmRNAをランダムプライマーまたはオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い、第一鎖cDNAを合成することが出来る。得られた第一鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその一部を得ることができる。より具体的には、例えば参考例1に記載の方法により本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することが出来る。
常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法b)第2製造法に記載された手順により、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。
化学合成法を用いた方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法c)第3製造法、d)第4製造法に記載された方法によって、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを製造することができる。
【0012】
本明細書のポリペプチド、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞は、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」2)本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明の組換え蛋白の製造方法に記載された方法により実施できる。単離された本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、適当なベクターDNAに再び組込むことにより、真核生物又は原核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。また、これらのベクターに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞においてポリヌクレオチドを発現させることが可能である。
本発明の本明細書のポリペプチド、又は本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞作製用の発現ベクターは、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入することにより得られる発現ベクターを挙げることができる。
本発明の細胞型スクリーニングツール(すなわち本発明のポリペプチドを発現している細胞)には、内在性に本発明のポリペプチドを発現している細胞及び本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞の両方が含まれる。本発明の細胞型スクリーニングツールのうち本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞は、前記発現ベクターでトランスフェクションされ、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた細胞であることもできるし、あるいは、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの形で含有する細胞であることもできる。本発明の細胞型スクリーニングツールは、例えば、前記発現ベクターにより、所望の宿主細胞をトランスフェクションすることにより得ることができる。より具体的には、例えば、参考例2に記載のように本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをほ乳類動物細胞用の発現ベクターpcDNA3.1に組み込むことにより、所望の蛋白質の発現ベクターを得ることができ、該発現ベクターを市販のトランスフェクション試薬リポフェクトアミンを用いてヒト胎児腎臓由来293T細胞に取り込ませて本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞を製造することができる。
上記で得られる所望の形質転換細胞は、常法に従い培養することができ、該培養により本明細書のポリペプチドが生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば上記293T細胞であれば牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修飾イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えたものを使用できる。
又は、例えば、実施例2に記載のように本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを昆虫細胞用の発現ベクターpFastBacに組み込むことにより、所望の蛋白質の発現ベクターを得ることができ、該発現ベクターを市販のトランスフェクション試薬セルフェクチンを用いて昆虫細胞(例えばSf-9細胞)に取り込ませて本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現可能ならしめるウイルスを調製し、更に、昆虫細胞にそのウイルス感染させて本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞を製造することができる。
上記で得られる所望の細胞は、常法に従い培養することができ、該培養により本明細書のポリペプチドが生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した昆虫細胞種に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えばSf-9細胞であれば0.5% Penicillin-Streptomycinを加えたEX-CELL420培地を使用できる。
上記により、形質転換細胞に生産される本明細書のポリペプチドは、該ポリペプチドの物理的性質や生化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により、分離又は精製することができる。
本明細書のポリペプチドはマーカー配列とインフレームで融合して発現させることで、該ポリペプチドの発現の確認、精製等が可能になる。マーカー配列としては、例えば、FLAG epitope、Hexa-Histidine tag、Hemagglutinin tag、myc epitopeなどがある。また、マーカー配列と該新規蛋白の間にエンテロキナーゼ、ファクターXa、トロンビンなどのプロテアーゼが認識する特異的なアミノ酸配列を挿入することにより、マーカー配列部分をこれらのプロテアーゼにより切断除去する事が可能である。
【0013】
<本発明のスクリーニング方法>
本発明のスクリーニング方法は、本明細書のポリペプチドを抑制するか否かを分析(すなわち、検出又は測定)する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法である。本明細書のポリペプチドの「抑制」には、本明細書のポリペプチドの「発現抑制」及び「機能抑制」の両方が含まれるが、「発現抑制」がより好ましい。
本発明者らは、本明細書のポリペプチドに含まれるDGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP2L蛋白質、及びDGPP2S蛋白質は、RA患者由来の滑膜線維芽様細胞において発現が亢進しており(実施例1)、更にヒトRA滑膜組織のパンヌス形成及びその維持に関与すると考えられている血管新生を構成する血管内皮において発現亢進しており(実施例4)、更に、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質の発現を抑制すると微小血管内皮細胞の増殖が抑制されることを見出した(実施例6)。また、DGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP2L蛋白質、及びDGPP2S蛋白質ははリン酸分解酵素活性を有することを見出した(実施例3)。一般的に、発現抑制による細胞への生理的効果は、当該分子の活性の抑制によっても同様に起こることが認識されている。これらの知見により、本明細書のポリペプチドの活性及び/又は機能を抑制するか否かを分析する工程を含む関節リウマチ治療薬のスクリーニング系を構築することができる。
本明細書のポリペプチドを抑制するか否かを分析する工程としては、DGPP1ポリペプチド及び/又はDGPP2ポリペプチドを抑制するか否かを分析する工程が含まれるが、DGPP1ポリペプチドを抑制するか否かを分析する工程が好ましい。試験物質のうち、本発明のポリペプチドを抑制する物質(すなわちDGPP1ポリペプチド及び/又はDGPP2ポリペプチドを抑制する物質)、好ましくはDGPP1ポリペプチドを抑制する物質、更に好ましくはDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質を抑制する物質を選択することができる。
【0014】
(1)本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析する方法
本明細書のポリペプチドをコードするmRNA、又は、本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析することにより、関節リウマチ治療薬のスクリーニングが可能である。具体的には、組織、細胞における本明細書のポリペプチドの発現量の変化を分析することによってスクリーニングすることができる。
本明細書のポリペプチドをコードするmRNA、又は、本明細書のポリペプチドが、特定の細胞において産生されるか否かを決定するために、多様な核酸技術及び免疫学的技術を使用することができる。
例えば、本明細書のポリペプチドを発現している任意のヒト細胞(好ましくはRA滑膜組織、又は微小血管内皮細胞)を用い、試験物質の存在下若しくは非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドのmRNA又は蛋白質の発現を減少若しくは抑制するか否かを分析することができる。すなわち、本明細書のポリペプチドを減少若しくは抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサンプルに存在する本明細書のポリペプチドのmRNA並びに蛋白質の量を減少させるので、公知の分析方法、例えば、ノーザンブロット又はELISA法[例えば、DGPP1ポリペプチド又はDGPP2ポリペプチドを認識する抗体をプレート等の固相に吸着させた後、そこに試験物質を含むサンプルを加え、次いで、先の抗体とは抗原エピトープが異なるDGPP1ポリペプチド又はDGPP2ポリペプチドを認識する抗体を加えて、後者の抗体の固相への結合度合いを分析する(Methods in Enzymology, 118, 742-766, 1986)]等で同定することができる。より具体的には、実施例6に記載した方法で、本明細書のポリペプチドの発現抑制を分析することができる。本明細書のポリペプチドのうち、DGPP1ポリペプチド及び/又はDGPP2の発現抑制は、同時に分析することもできるし、いずれか一方を先に分析することもできる。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、DGPP1ポリペプチド及び/又はDGPP2ポリペプチドを発現している細胞(好ましくはヒト細胞)を、試験物質の存在下若しくは非存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるDGPP1ポリペプチド又はDGPP2ポリペプチドのmRNA又は蛋白質の量が、試験物質非存在下で培養した前記細胞における量と比較して減少したか否かを分析する工程を含む。
別の方法としては、プロモーター活性の阻害は下流の遺伝子の転写の抑制を生じる一般的事象に基づき、本明細書のポリペプチドのプロモーター領域を、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)上流に連結した作動可能なベクターを作製し、外因的に導入した宿主細胞を利用し、試験物質の存在下若しくは非存在下におけるレポーター活性(例えば、ルシフェラーゼ活性)を分析することにより、前記試験物質がレポーター遺伝子の発現を減少又は抑制するか否かを分析することができる。
前記ベクターとしては、例えば、本明細書のポリペプチドの開始コドンATGの上流域をレポーター遺伝子上流に連結した組み換えDNAであって、しかも、一過的な複製、あるいは、宿主染色体への挿入を可能とするベクターを用いることができる。こうして外因的に得られた宿主細胞を試験物質の存在下又は非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を減少又は抑制するか否かを決定することができる。本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を減少又は抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサンプルに存在するレポーター活性の量を減少させるので、それを指標として同定することができる。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子を連結したベクターで形質転換した細胞を、試験物質の存在下又は非存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるレポーター活性が、試験物質非存在下で培養した前記細胞と比較して減少したか否かを分析する工程を含む。
【0015】
(2)本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否かを分析する方法
本発明のスクリーニング方法には、本明細書のポリペプチドと試験物質と前記ポリペプチドの基質とを接触させる工程、及び、試験物質と接触させた前記ポリペプチドのリン酸分解酵素活性が、試験物質と非接触の時の活性と比較して減少したか否かを分析する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法が含まれる。
本発明のスクリーニング法におけるリン酸分解酵素活性の分析は、特に限定されるものではないが、本明細書のポリペプチドによる、標識されたリン酸含有物質、例えば末端リン酸基が標識されたジアシルグリセロールピロリン酸の末端リン酸基が遊離されることを検出すること(Toke D.A et al J. Biol. Chem. 1998 (273) p3278-p3284 )、又は未標識のリン酸含有物質、例えばジアシルグリセロールピロリン酸の末端リン酸基が遊離されることを検出することで行うことができる。より好ましくは、実施例3に記載の方法により、確認することができる。リン酸含有物質として、より好ましくはジアシルグリセロールピロリン酸である。
例えば、実施例3に記載の条件で、DGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質またはDGPP2L蛋白質、基質、及び試験物質の存在又は非存在下で、DGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質またはDGPP2L蛋白質のリン酸分解酵素活性を分析することにより、前記試験物質がDGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質またはDGPP2L蛋白質の機能を減少若しくは抑制するか否かを分析することができる。すなわち、DGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質またはDGPP2L蛋白質の機能を減少若しくは抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサンプルに存在するDGPP1S蛋白質、DGPP1L蛋白質、DGPP2S蛋白質またはDGPP2L蛋白質による遊離リン酸の量を減少させる。このようにして、IC50=10μM以下の物質を、好ましくはIC50=1μM以下の物質を、更に好ましくは、IC50=0.1μM以下の物質をリン酸分解酵素阻害活性を有する物質として、選択することができる。
【0016】
前記項目(1)の本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析する方法、又は、前記項目(2)の本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否かを分析する方法を用いる本発明のスクリーニング方法でスクリーニングすることのできる試験物質は、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Tetrahedron, 51, 8135-8137, 1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(J. Mol. Biol., 222, 301-310, 1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
【0017】
<本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物、及びその製造法>
<本発明のスクリーニング方法>に記載の方法による分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法も本発明に含まれる。
本発明の医薬組成物の有効成分は、本明細書のポリペプチドを抑制する物質である限り、特に限定されるものではない。これらは、例えば、本発明のスクリーニング方法と同様の工程で、本明細書のポリペプチドを抑制する物質を選択することにより得ることができる。
本発明の医薬組成物の有効成分として、例えば、siRNAを用いることができる。siRNAは、二重鎖のRNA部分と、好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、RNAiを誘導する。RNAiは進化的に保存された現象で、RNaseIIIエンドヌクレアーゼによって生じる21〜23塩基のsiRNAを介して起こる(Genes Dev. 15, 485-490, 2001)。その21〜23塩基のsiRNA間には、効果に差はあるもののいずれもRNAi効果を示す。また、3’側のオーバーハングはそれぞれ1又は2塩基の任意の核酸(リボ核酸又はデオキシリボ核酸)であるが、2塩基が好ましく、標的に相補した塩基が好ましいが、相補していないものでも充分なRNAi効果が認められる(EMBO. J., 20, 6877-7888, 2001; Genes Dev., 15, 188-200, 2001)。また、オーバーハングがないsiRNAもRNAi効果を示す。
なお、前記塩基数(21〜23塩基)は、オーバーハングを含むセンス鎖又はアンチセンス鎖の各々の塩基数である。また、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好ましい。
siRNAの3’側オーバーハングを構成するリボ核酸としては、例えば、U(ウリジン)、A(アデノシン)、G(グアノシン)、又はC(シチジン)を用いることができ、3’側のオーバーハングを構成するデオキシリボ核酸としては、例えば、dT(チミジン)、dA(デオキシアデノシン)、dG(デオキシグアノシン)、又はdC(デオキシシチジン)を用いることができる。
本発明の医薬組成物の有効成分として用いることのできる、本発明のsiRNAには、本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできるsiRNA(以下、本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAと称する)が含まれる。
本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAは、本明細書のポリペプチドをコードする塩基配列に特異的なDNA塩基配列(好ましくは21塩基〜23塩基からなる塩基配列)に基づいて設計され、本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできるsiRNAである限り、特に限定されるものではなく、常法(例えば、J. Am. Chem. Soc., 120, 11820-11821, 1998; 及びMethods, 23, 206-217, 2001)により製造することができる。より具体的には、本明細書のポリペプチドに特異的なDNA塩基配列は、例えば、以下の手順により選択することができる。すなわち、本明細書のポリペプチドの開始コドンから50塩基以上下流の最初のNAを見つける(転写因子の結合部位を避けるため)。NAに続く19〜21の塩基配列を記録し、NAを含む21〜23塩基のGCコンテントを計算し、50%前後であることを確認する。GCコンテントが30%以下や70%以上である場合、あるいは、50%前後であっても複数の候補が必要な場合には、更に下流のNAを選択し、同様にしてGCコンテントを計算する。得られた塩基配列候補について、データベース検索を実施し、本明細書のポリペプチドに特異的であることを確認する。Nは、A、T、G、又はCの何れであってもよく、実施例5で作製したsiRNAの場合のようにAであることが好ましい。
なお、本明細書のポリペプチドに特異的であるか否かは、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のBLAST(Basic local alignment search tool; J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990)サーチで本明細書のポリペプチドとは完全に一致するが、他には完全に一致する配列が存在しないことにより確認することができる。
siRNAを設計するためのDNA塩基配列が得られると、その配列に基づいてsiRNAを設計することができる。例えば、二重鎖RNA部分が、得られたDNA塩基配列をそのままRNA配列に変換したRNA塩基配列からなる、siRNAを設計することができる。なお、本明細書において、DNA塩基配列をRNA塩基配列に変換するとは、DNA塩基配列におけるdTをUに変換し、それ以外の塩基、すなわち、dA、dG、及びdCを、それぞれ、A、G、及びCに変換することを意味する。
本明細書のポリペプチドに特異的な塩基配列の例としては、例えば、配列番号5を挙げることができる。
配列番号5で表される塩基配列に基づいて設計される、本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAとしては、例えば、二重鎖RNA部分が、配列番号32で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNAを挙げることができる。
これらの本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAには、例えば、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基の任意の核酸[例えば、リボ核酸(U、A、G、若しくはC等)又はデオキシリボ核酸(dT、dA、dG、若しくはdC等)]が付加されたオーバーハングを有するsiRNA、並びにオーバーハングを有しないsiRNAが含まれる。なお、センス鎖及びアンチセンス鎖(オーバーハングを有する場合には、それを含む)は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好ましい。
前記オーバーハングとしては、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基の任意の核酸が付加されたオーバーハングが好ましい。
本発明のDGPP1ポリペプチド特異的なsiRNAとしては、配列番号6で表される塩基配列からなるセンス鎖と、配列番号7で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNAが特に好ましい。配列番号6で表される塩基配列からなるセンス鎖及び配列番号7で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖は、それぞれ、第1番目〜第19番目の塩基からなるRNA二重鎖を形成し、第20番目及び第21番目が3’側オーバーハングを形成する。
【0018】
本発明の医薬組成物の有効成分としては、siRNAの他にも、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド(DNA及びRNAを含む)を用いることができる。
アンチセンスポリヌクレオチドを設計及び作製する方法は、周知であり(J. Am. Chem. Soc., 103: 3185-3191, 1981)、まず、例えば、NCBIのBLASTサーチで本明細書のポリペプチド特異的な配列(例えば、配列番号5で表される塩基配列)を選択し、それに対するアンチセンスポリヌクレオチドを、本発明の医薬組成物の有効成分として用いることができる。
【0019】
本発明の医薬組成物は、非経口経路(例えば、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、又は頬内経路)を介して投与することができる。あるいは、または同時に、経口経路によって投与することもできる。投薬量は、レシピエントの年齢、健常度、及び体重、同時処置される種類(もしあれば)、処置の頻度、並びに所望される効果の性質に依存する。各成分の有効な量の至適な範囲の決定は、当業者の範囲内である。典型的な投薬量は0.1〜100μg/kg体重であり、好ましい投薬量は、0.1〜10μg/kg体重であり、最も好ましい投薬量は、0.1〜1μg/kg体重である。薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能な適切なキャリアーを含むことができ、これには、作用の部位に到達するために薬学的に使用可能な、調製物への活性な化合物のプロセシングを容易にする賦形剤及び/又は補助剤を含む。
非経口投与のために適切な処方物は、水溶性形態の活性化合物(例えば、水溶性の塩)の水溶液を含む。更に、適切な油性の注入懸濁液としての活性化化合物の懸濁液が投与可能である。適切な親油性溶媒又はベヒクルは、脂肪油又は合成の脂肪酸エステルを含む。水溶性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質を含むことができる。必要に応じて懸濁液は安定剤を含むことができる。リポソームも、細胞への送達のために、薬剤をカプセル化するために使用することができる。本発明に従う全身投与についての薬学的組成物は、腸投与、非経口投与、又は局所投与について処方することができる。実際、処方物の全ての3つのタイプは、有効成分の全身性投与を達成するために同時に使用することができる。
経口投与のための適切な処方物は、堅質又は軟質ゼラチンカプセル、丸剤、錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップ、又は吸入薬、及びそれらの制御された放出形態を含む。本発明の医薬組成物は、単独で、又は組み合わせで、あるいは、他の治療剤又は診断剤と組み合わせて使用することができる。特に好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、一般的に受容されている医療の実施に従って、これらの状態について典型的に処方される他の化合物とともに投与することができる。
【0020】
<遺伝子治療>
関節リウマチの治療において、本明細書のポリペプチド発現の調節因子をコードする遺伝子発現単位(例えば、配列番号5で表される塩基配列に対するアンチセンス分子又はsiRNA分子)を、処置される被験体に導入することにより、遺伝子治療をすることができる。このような調節因子は、細胞又は特定の標的細胞で、構成的に継続的に産生させることもできるし、あるいは、誘導性とすることもできる。
具体的には、前記アンチセンス分子、又はsiRNA分子(例えば、配列番号6で表される塩基配列からなるセンス鎖と配列番号7で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNA)を作製するための方法は、当該分野において周知である(J. Am. Chem. Soc., 103: 3185-3191, 1981)。
配列番号5で表される塩基配列に対するアンチセンス分子を含む組み換えDNAを作製する方法は、当該分野において周知であり(「Molecular Cloning A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989等)、好ましい組み換えDNAにおいて、配列番号5で表される塩基配列は、発現制御配列及び/又はベクター配列に作動可能に連結することができる。前記ベクターは、配列番号5で表される塩基配列を含む組み換えDNAの複製、あるいは、宿主染色体への挿入を少なくとも可能とし、遺伝子治療に用いることができる。
更に、本発明では、配列番号5で表される塩基配列に対するアンチセンスを含む組み換えDNAを外因的に導入した宿主細胞を提供し、これも遺伝子治療に用いることができる。宿主細胞は、任意のヒト細胞に限る。本発明の組み換えDNAでの適切な宿主細胞の形質転換は、周知の方法によって達成される。
【0021】
以下、実施例により本発明を詳述するが,本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(例えば、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989等の遺伝子操作実験マニュアル)や試薬等に添付の指示書に従った。
【0022】
(参考例1)全長オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)のクローニングと蛋白質発現プラスミドの構築
表1に示すプライマーセット(配列番号8−配列番号9、配列番号10−配列番号9、配列番号11−配列番号12、又は、配列番号13−配列番号12)、ヒト脾臓由来cDNA(Human spleen 5'-stretch plus cDNA ;インビトロジェン社)、及びDNAポリメラーゼ(Pyrobest(商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、94℃2分の後、98℃10秒、60℃30秒、72℃1分30秒のサイクルを20回、続いて72℃3分のPCR反応を行った。このPCR産物をフェノールクロロホルム処理し、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらのDNAをHindIII-XhoIで二重切断した。動物細胞発現ベクターpcDNA3.1-CFLのHindIII-XhoI部位に挿入し、各発現プラスミドをCFL-DGPP1L、CFL-DGPP1S、CFL-DGPP2L, CFL-DGPP2Sと名付けた。pcDNA3.1-CFLは、pcDNA3.1(+)(インビトロジェン社)のXhoI-XbaI部位に配列番号19及び配列番号20からなる2重鎖オリゴDNAを挿入したプラスミドであり、本プラスミドにより、目的蛋白質にFLAGタグが付加されて発現される。前記各プラスミドの配列をジデオキシターミネーター法により、ABI3700 DNA シークエンサー(アプライドバイオシステムズ社)を用いて解読したところ、配列番号1、配列番号3、配列番号5、 又は、配列番号7で表される配列が得られた。それぞれの全長ORF配列を決定した。該遺伝子をそれぞれDGPP1L, DGPP1S, DGPP2L,及び DGPP2Sと名付けた。
【表1】


【0023】
(参考例2)動物細胞株での発現
実施例1において作製した4個の動物細胞発現プラスミドを、トランスフェクション試薬(リポフェクトアミン;ギブコ社)を用いて、添付指示書に従い293T細胞(インビトロジェン社)にそれぞれ導入した。プラスミド導入後12-16時間で培地を無血清に置換した後、さらに48-60時間培養を継続し、細胞を回収した。回収した細胞に50mM Tris pH7.5, 0.25M NaCl, 10% Glycerol, 1% Triton X-100, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 1mM PMSF(シグマ社)から成る溶液を加えて溶解し、エッペンドルフチューブ遠心機(トミー精工社)にて15000回転15分遠心後の上清を回収した。この導入細胞ライゼート中に目的蛋白が存在することをC末端に付加したFLAGタグに対する抗体(マウス抗FLAGモノクローナル抗体M2;シグマ社)を用いたウエスタンブロッティングで確認した。すなわち、上記ライゼートをSDS/4%〜20% アクリルアミドゲル(第一化学薬品社)に電気泳動(還元条件)後、ブロッティング装置を用いてPVDF膜(ミリポア社)に転写した。転写後のPVDF膜にブロックエース(大日本製薬社)を添加してブロッキングした後、ビオチン化マウス抗FLAGモノクローナル抗体、西洋わさびパーオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(アマシャムファルマシア社)を順次反応させた。反応後、ECLウエスタンブロッティング検出システム(アマシャムファルマシア社)を用いて目的蛋白の発現を確認した。DGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、GDPP2L蛋白質、DGPP2S蛋白質の各発現プラスミドを導入した細胞のライゼートにおいて、各予想分子量(DGPP1L蛋白質:34.3kDa、DGPP1S蛋白質:29.5kDa、DGPP2L蛋白質:32.3kDa, 及びDGPP2S蛋白質:30.4kDa)付近に位置するバンドが検出され、各導入細胞で目的蛋白質が発現していることがわかった(図1)。
【0024】
(参考例3)滑膜組織サンプル、滑膜線維芽様細胞サンプルの取得
ヒトRA患者、ヒトOA患者から滑膜生検により滑膜組織、滑膜線維芽様細胞を得た。滑膜組織の調製はHarigai Mらの文献(J Rheumatol. 1999 May;26(5):1035-43)に、滑膜線維芽様細胞の調製はZhang HGらの文献(Arthritis Rheum. 2000 May;43(5):1094-105)に従った。RS1, RS2はヒトRA患者各1名の滑膜線維芽様細胞サンプルであり、各種病理所見スコアーは、表層細胞重層化についてはRS1:2, RS2:0, リンパ濾胞毛形成については、RS1:2, RS2:0, 血管新生についてはRS1:3, RS2:2であった。すなわちRS1とRS2の比較においてRS1はRS2よりも炎症の程度が大きいサンプルである。OA1, OA2はOA患者各1名の滑膜線維芽様細胞サンプルである。
【0025】
(実施例1)滑膜線維芽様細胞における各遺伝子の発現上昇
ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(PE バイオシステムズ社)(以降Prism7900とする)によるリアルタイムPCRをPCR検出定量試薬キットSYBR Green PCR Master Mix(PEバイオシステムズ社)を用いてキット添付の指示書に従って行い、滑膜線維芽様細胞サンプルにおける各遺伝子の発現量を定量的に測定した。以下に詳細を述べる。ABI7900による測定に用いたプライマーは、配列番号1及び配列番号3に表した配列情報からPrimer Express(PEバイオシステムズ社)により設計した。配列番号16および配列番号17は、DGPP1L遺伝子とDGPP1S遺伝子を共通して認識するプライマーである。配列番号18および配列番号19は、DGPP2L遺伝子とDGPP2S遺伝子を共通して認識するプライマーである。G3PDH遺伝子のプライマーは配列番号20および配列番号21である。
RA滑膜線維芽様細胞(RS1及びRS2サンプル)、OA滑膜線維芽様細胞(OA1及びOA2サンプル)からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて全RNA(total RNA) 抽出を行った。抽出は、試薬添付のプロトコールに従った。抽出方法の詳細を以下に記載する。1000000細胞 に対し、1ml のISOGEN を加え、ホモジナイズ゛後、5分静置した。0.2ml のクロロホルム(関東化学社) を加え、攪拌後3分静置した。12000×g で4℃にて15分の遠心分離を行った。上清を回収し、0.5ml の2-イソプロパノール(関東化学社) を加え、10分静置した。12000×g で4℃にて10分の遠心分離を行った。上清を除いた後、70%エタノールを1ml加えた。7500×g で4℃にて5分の遠心分離を行った。風乾後、50μl水に溶解した。
抽出した全RNA は、DNase処理キット(RNeasy Mini kit、RNase-Free DNase Set;共にキアゲン社)を用い、カラム上でDNase処理を行った。キット添付のプロトコールに従って処理を行った。詳細を以下に記載する。全RNA 溶液に水を加え、100μl とした。次に、350μl のキットに含まれるバッファーRLT を加え攪拌した。次に250μl のエタノールを加え攪拌後、キットに含まれるカラム(RNeasy mini spin column)に加えた。8000×gにて15秒遠心した。350μl のキットに含まれるバッファーRW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。さらに、10μl のDNaseI ストック溶液および70μlのキットに含まれるバッファーRDD を加え、室温で15分静置した。350μl のバッファーRW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。350μl のバッファー RW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。500μl のキットに含まれるバッファーRPE を加え、8000×gにて15秒遠心した。500μl のバッファーRPE を加え、15000×gにて1分遠心した。30μl水を加え、8000×gにて1分遠心し、全RNA 溶液を得た。
全RNA を鋳型とした逆転写反応により、cDNA を作成した。全RNA (1μg) を10μlのランダムヘキサマー(100ng/μl) (アマシャムファルマシアバイオテク社)と混合し、最終量が48μlとなるように水を加えた。70℃で10分処理後、氷上に置いた。次に32μl のRT反応混合液を加えた。混合液の組成を以下に示す。5×First-Strand Buffer(250mM Tris-HCl pH8.3, 375mM KCl, 15mM MgCl2 ),10mM DTT, 0.5mM dNTP, Superscript II RNase H- reverse transcriptase(800 units)(以上全てGIBCO BRL社)。混合後、25℃15分、42℃50分、70℃15分の処理を行った。
作製したcDNAを鋳型として、以下の実験を進めた。目的遺伝子の各測定サンプル間での相対的発現量を算出するための標準曲線を作成する鋳型として、human genomic DNA (クロンテック社)の希釈系列、あるいは各測定サンプルの混合液の希釈系列を用いた。また、サンプル中のcDNA濃度の差を補正するため、補正用内部標準としてG3PDH遺伝子について同様の定量解析を行い、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、DGPP1S遺伝子及びDGPP1L遺伝子並びにDGPP1S遺伝子及びDGPP2L遺伝子の発現量を算出した。RA滑膜線維芽様細胞サンプルRS1及びRS2では、OA滑膜線維芽様細胞サンプルOA1及びOA2に比して、DGPP1S遺伝子及びDGPP1L遺伝子並びにDGPP1S遺伝子及びDGPP2L遺伝子の発現量が有意に亢進していることが明らかとなった。また、RA滑膜線維芽様細胞サンプルのうち炎症程度の大きいRS1サンプルは炎症程度の小さいRS2サンプルに比して、DGPP1S遺伝子及びDGPP1L遺伝子並びにDGPP1S遺伝子及びDGPP2L遺伝子の発現量が有意に亢進しており、RAの病理所見スコアーに連動してDGPP1S遺伝子及びDGPP1L遺伝子並びにDGPP1S遺伝子及びDGPP2L遺伝子の発現量が亢進していること、すなわちRAの炎症症状の重篤性とDGPP1S遺伝子及びDGPP1L遺伝子並びにDGPP1S遺伝子及びDGPP2L遺伝子の発現量の亢進が相関することを見出した(図2)。
【0026】
(実施例2)DGPP1L、DGPP1S、DGPP2L、及びDGPP2S組み換え体蛋白質の精製
実施例1で作製した4個の動物細胞発現プラスミドを鋳型にして、表2に示すプライマーセット(配列番号22−配列番号23、配列番号24−配列番号23、配列番号25−配列番号26、又は、配列番号27−配列番号26)、及びDNAポリメラーゼ(Pyrobest(商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、94℃2分の後、98℃10秒、60℃30秒、72℃1分30秒のサイクルを20回、続いて72℃3分のPCR反応を行った。このPCR産物をフェノールクロロホルム処理し、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらのDNAをHindIII-XhoIで二重切断した。バキュロウイルス発現ベクターpFastBacBHFLのHindIII-XhoI部位に挿入し、各発現プラスミドをBFL-DGPP1L、BFL-DGPP1S、BFL-DGPP2L, BFL-DGPP2Sと名付けた。pFastBacBHFLは、pFastBacHTc(インビトロジェン社)のHindIII部位を平滑末端処理後、配列番号33及び配列番号34からなる2重鎖オリゴDNAをRsrII-BamHI部位に挿入したプラスミドであり、本プラスミドにより、目的蛋白質にFLAGタグが付加されて発現される。前記各プラスミドの配列はジデオキシターミネーター法により、ABI3700 DNA シークエンサー(アプライドバイオシステムズ社)を用いて確認した。各発現プラスミドをDH10Bacコンピテント大腸菌(インビトロジェン社)にトランスフェクトし、それぞれのバクミドDNAを調製した。バクミドDNAのトランスフェクション当日に6穴細胞培養プレート(イワキ)に穴あたり900000個のSf9細胞 (Sf-900II SFM adapted)(インビトロジェン社)を蒔き、0.5% Penicillin-Streptomycin(インビトロジェン社)を含むEX-CELL420培地(ニチレイ)で、27度で1時間保温した。1時間後、細胞をPenicillin-Streptomycinを含まない培地で洗浄し、常温で30分間インキュベートしたバクミド/CellFECTIN液(2μg バクミドDNA、6μl CellFECTIN (インビトロジェン社)、200μl EX-CELL420培地)及び、Penicillin-Streptomycinを含まない培地800μlを加え、27度で5時間振盪した。5時間後、メディウムを交換し27度で72時間培養した。
バクミドDNAをトランスフェクトして72時間後のSf9細胞の培養上清を、10,000回転で1分間遠心して回収し、その2mlを 6穴細胞培養プレート(イワキ社)に蒔いたSf9細胞に加え27度で72時間培養した。そして、その72時間後に、培養上清を10,000回転で1分間遠心して回収し、これをウイルス液とした。
細胞培養用225 cm2フラスコ(イワキ社)にサブコンフルエントなSf9細胞を蒔き、上記のウイルス液1ml及び培地2mlの計3mlを加えて常温で1時間振盪した。1時間後、20mlの培地を加え、27度で72時間培養し、培養上清を2000回転で3分間遠心後して回収し、遮光して4度で保存した。これをハイタイターウイルス液とした。
50000000個のSf9細胞を上記のハイタイターウイルス液30μlを培地3mlに添加した溶液で室温で1時間感染させた。1時間後、100mlの培地を加えスピナーフラスコで3日間培養した。3日後、細胞を5mM EDTA/TBS(20mM Tris ph7.4, 150mM NaCl(シグマ社))で洗浄後、1700回転で3分遠心しSf9細胞を回収した。
回収したSf9細胞を0.5%Triton-X100溶液(50mM Tris-HCl pH7.5, 0.25M NaCl, 0.5%Triton-X100,10% glycerol(シグマ社), Complete Protease Inhibitor Cocktail Tablets (ロシュダイアグノスティクス社))に可溶化し、シェーカーで4℃において150回転で1時間振盪した。1時間後、8000回転で30分間遠心し、上清を蛋白質溶液として回収した。
ANTI-FLAG M2-Agarose Affinity Gel(シグマ社)をバッファーA (100mM Tris-maleate (pH6.5), 2mM Triton X-100(シグマ社))で平衡化後、上記の蛋白質溶液を加えシェーカーで150回転、1時間振盪した。ゲルをカラムに移し、20ベッドボリュームのバッファーAで洗浄後、100μg/ml のFLAG ペプチド (シグマ社)で溶出した。これを粗精製液とした。PD-10カラム(アマシャムバイオサイエンス社)を25mlのバッファーAで平衡化後、上記の粗精製液2.5mlを流し、その後3.5mlのbuffer Aで溶出した。溶出蛋白の定量はBio-Rad protein assay kit (バイオラッド)を用いて定量した。本工程により、DGPP1L、DGPP1S、DGPP2L、及びDGPP2S組み換え体蛋白質(BFL-DGPP1L、BFL-DGPP1S、BFL-DGPP2L、BFL-DGPP2S蛋白質と称する)が精製できた。

【表2】


【0027】
(実施例3)DGPP1L, DGPP1S, DGPP2L, DGPP2S組み換え体蛋白質の酵素活性測定
実施例2で調製したBFL-DGPP1L、BFL-DGPP1S、BFL-DGPP2L, BFL-DGPP2S蛋白質のリン酸分解酵素活性は、基質としてジアシルグリセロールピロリン酸( DiC8、 Avanti Polar Lipids, Inc.) の末端から遊離させるリン酸をマラカイトグリーン法を用いて検出することにより測定した。実施例2で調製したBFL-DGPP1S(0.2ng/μl)、BFL-DGPP1L(0.2ng/μl)、BFL-DGPP2S(1ng/μl)、又はBFL-DGPP2L(1ng/μl)をそれぞれ5μlと基質溶液(ジアシルグリセロールピロリン酸無し(-)又は、ジアシルグリセロールピロリン酸添加(+))5μlとを混合し、37℃で2.5時間インキュベートした。2.5時間後、10μlの反応液に40μlのマラカイトグリーン溶液を加え、室温で20分インキュベー後、SPECTRA MAX 250(Molecular Devices Corporation)で642nmの吸光度を測定した。上記の基質溶液は、ジアシルグリセロールピロリン酸( DiC8、 Avanti Polar Lipids, Inc.)をクロロフォルムに溶解し、その後、減圧下クロロフォルムを取り除いた後、最終濃度100μg/mlになるようにバッファーA(100mM Tris-maleate (pH6.5), 2mM Triton X-100)を加え、1分間ソニケーションし完全に溶解して調製した。マラカイトグリーン溶液は、A溶液( 4M塩酸にソニケーションして溶解した4.2% ammonium molybdate (シグマ社))とB溶液( 水に溶解した0.045%Merck malachite green (シグマ社) )を1:3で混合し、室温で30分間攪拌した後、最後に1%Tween20を1/100添加して調製した。
測定の結果、BFL-DGPP1S、BFL-DGPP1L、BFL-DGPP2S及びBFL-DGPP2L蛋白質はジアシルグリセロールピロリン酸分解酵素活性を有することがわかった。また、DGPP1SとDGPP1L蛋白質の単位蛋白量あたりのジアシルグリセロールピロリン酸分解酵素活性は類似していた。また、DGPP2S蛋白質とDGPP2L蛋白質の単位蛋白量あたりのジアシルグリセロールピロリン酸分解酵素活性の程度も類似していた(図3)。
ところで、既知のリン酸分解酵素分子の配列比較(Brindley D.N. and Waggnoner D.W. J.Biol.Chem. 1998 (273) p24281-p24284)及び酵母DPP1の触媒ドメインの解析(Toke D.A. et al Biochemistry 1999(38) p14606-p14613)から、DGPP1S蛋白質(配列番号4の第108番―第124番、及び第147番―第152番、及び第199番―第220番)とDGPP1L蛋白質(配列番号2の第157番―第173番、および第196番―第201番、および第248番―第269番)の活性中心は同一であり、DGPP2S蛋白質(配列番号8の第102番-第118番、および第141番―第146番、および第193番-第214番)とDGPP2L蛋白質(配列番号6の第122番―第138番、および第161番―第166番、および第213番―第234番)の活性中心は同一である。更に、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質の活性中心のアミノ酸配列と、DGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質の活性中心のアミノ酸配列の相同性は、83.7%を示す。
(実施例4)正常滑膜組織、RA滑膜組織におけるDGPP1およびDGPP2の免疫組織化学的検出
抗DGPP1抗体及び抗DGPP2抗体は、抗ペプチド抗体作製法(竹縄ら編、分子生物学研究のためのタンパク実験法、バイオマニュアルシリーズ7、実験医学別冊、羊土社、77-86、1994)に従い作製し精製した(免疫生物研究所)。配列番号35で示される抗原ペプチドをウサギに接種し、DGPP1ポリペプチドに対する抗血清を作製した。また、配列番号36で示される抗原ペプチドをウサギに接種し、DGPP2ポリペプチドに対する抗血清を作製した。それぞれの抗原ペプチドを結合したアフィニティカラムを用いて抗血清を精製し、それぞれ抗DGPP1ポリクローナル特異抗体、抗DGPP2ポリクローナル特異抗体を調製した。これら特異抗体を用いて正常滑膜組織、およびRA滑膜組織でのDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質、又はDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質の免疫組織化学的検出を行った(LifeSpan社)。DGPP1免疫陽性細胞は正常滑膜組織の血管内皮に弱く検出されたが、RA滑膜組織ではリウマチ結節の血管内皮が強く検出された(図4(A))。DGPP2免疫陽性細胞は、正常滑膜組織では血管内皮および血清に弱く検出されたが、RA滑膜組織ではパンヌスマトリックス、血管内皮および血清に強く検出された(図4(B))。これらの結果より、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質並びにDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質はRA病態を特徴づける組織で発現亢進していることがわかった。
(実施例5)DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質特異的なsiRNAの作製
DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質をコードする塩基配列中で、DGPP1L及びDGPP1Sに共通する配列番号5で表される塩基配列からなるDNAに対応するsiRNAとして、二重鎖RNA部分が配列番号32で表されるDGPP1ポリペプチド特異的なsiRNAを作製した(ダーマコンリサーチ社)。
なお、NCBIのBLASTサーチの結果、配列番号5は、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質をコードする塩基配列に特異的な配列であることが示された。
非特異的なsiRNAの影響を検討する対照実験のために、哺乳類細胞に存在しない二本鎖RNAのコントロールsiRNA(Luciferase GL2 Duplex; ダーマコンリサーチ社)を入手した。
(実施例6)DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質特異的なsiRNAの微小血管内皮細胞への導入によるDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質特異的な発現抑制及び細胞増殖抑制
微小血管内皮細胞 Cryo HMVEC-Ad(Cambrex Bio Science Wallkersville, Inc.)を、添付指示書に従って、ブレットキットEGM-2MV培地(Clonetics社)で培養した。
トランスフェクション実験は、以下の手順で実施した。トランスフェクションの12時間前に、コラーゲンコート細胞培養用12穴プレート(イワキ)に、Cryo HMVEC-Adを1穴当たり60000細胞播いた。トランスフェクション当日に、血清無添加培地OPTI-MEM(インビトロジェン社)で細胞を洗浄した後、OPTI-MEM 400μLを加えた。実施例5に記載の各siRNAを、トランスフェクション試薬(オリゴフェクタミン;インビトロジェン社)を用いて、添付指示書に従い、導入した。導入したsiRNAは、コントロールsiRNA(Luciferase GL2 Duplex)、またはDGPP1特異的なsiRNAであった。
導入から4時間経過後に、細胞培養液上清を取り除き、1mlのブレットキットEGM-2MV培地を新たに加えた。トランスフェクションは、各サンプルに対して独立に3穴を用いて行なった。
前記各siRNAを導入してから24、48、72時間経過後に細胞を回収し、RNeasy Micro Kit(QUIAGEN, #74004)を使用してRNAを単離した。上記実施例4で示したように、全RNA を鋳型とした逆転写反応により、cDNA を作製後、上記実施例1で示したリアルタイムPCRの条件にて測定し、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、DGPP1L遺伝子及びDGPP1S遺伝子の発現量を算出した。コントロールsiRNAを導入したサンプルのDGPP1L遺伝子及びDGPP1S遺伝子の発現量を100とした場合、DGPP1L遺伝子及びDGPP1S遺伝子特異的なsiRNAを導入したサンプルのDGPP1L遺伝子及びDGPP1S遺伝子の発現量は48時間後には20以下であったことから、実施例5で作製したDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質特異的なsiRNAがDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質をコードする遺伝子発現を抑制することがわかった(図5(A))。
また、上記のsiRNA導入実験において、導入から24、48、72時間後に、それぞれ、独立の3穴から細胞を回収し、トリパンブルー染色によって生細胞数を計測した。siRNA導入時の細胞数は、60000個であった。コントロールsiRNAを導入した細胞は、経時的に細胞数を増加させたが、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質特異的なsiRNAを導入した細胞では、導入から48時間経過後には細胞数の増加が認められず、細胞増殖抑制が観察された(図5(B))。図5(A)で示したように、これらの導入細胞では、導入後24時間後からDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質をコードする遺伝子の発現抑制が認められたことから、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質の発現抑制が血管内皮細胞の増殖抑制を誘導することがわかった。
血管内皮細胞の増殖阻害は、滑膜組織でのパンヌス形成およびその維持に関与すると考えられおり血管新生を阻害すると期待できる(Paleolog E.M. Arthritis Res. 2002 4 Suppl 3 :S81-S90)。
ある分子の発現抑制によって誘導される細胞での効果は、当該分子の機能抑制によっても同等の効果があると一般的に認識されている。したがって、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質の発現抑制、又は、実施例3で示したDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質のリン酸分解酵素活性の抑制(機能抑制)は、血管内皮細胞の増殖抑制を示し、関節リウマチ治療効果を期待できる。
実施例3で示したようにDGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質はDGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質と同様のリン酸分解酵素活性を有しており、酵素活性部位の相同性も高い。更に、実施例4で示したようにRA滑膜組織でのDGPP1免疫陽性細胞とDGPP2免疫陽性細胞が重複していることから、DGPP1L蛋白質及びDGPP1S蛋白質を抑制した場合と同様に、DGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質、又は、DGPP1L蛋白質、DGPP1S蛋白質、DGPP2L蛋白質及びDGPP2S蛋白質の抑制も血管内皮細胞の増殖抑制を示し、関節リウマチ治療効果を期待できる。
【配列表フリーテキスト】
【0028】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号6の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したsiRNAのセンス鎖であり、第1〜19番はRNAであり、第20〜21番はDNAである。プライマー配列である。配列表の配列番号7の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したsiRNAのアンチセンス鎖であり、第1〜19番はRNAであり、第20〜21番はDNAである。配列番号8〜15、22〜29の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、293T細胞でのDGPP1S、DGPP1L、DGPP2S及びDGPP2L蛋白質発現を示した図である。
【図2】図2は、RA滑膜線維芽様細胞サンプル又はOA滑膜線維芽様細胞サンプルにおけるDGPP1及びDGPP2遺伝子の発現を比較した図である。
【図3】図3(A)は、DGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質の、(B)は、DGPP2S蛋白質及びDGPP2L蛋白質のリン酸分解酵素活性を示した図である。斜線のバーはジアシルグリセロールピロリン酸を添加しない場合、黒塗りのバーはジアシルグリセロールピロリン酸を添加した場合の結果を示す。図の縦軸は624nmの吸光度を示す。
【図4】図4(A)は、DGPP1抗体、(B)はDGPP2抗体による正常滑膜組織、RA滑膜組織の免疫染色を比較した図である。
【図5】図5(A)は、微小血管内皮細胞に各種siRNA導入して、24、48、72時間後のDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質特異的なsiRNA導入によるDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質の相対的な発現を示した図、(B)は(A)と同条件での生細胞数を計測した図である。(A)の縦軸はDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質の相対的な発現度(%)を、横軸はトランスフェクションした後の時間(hr)を示す。(B)の縦軸は生細胞数(×104)を、横軸はトランスフェクションした後の時間(hr)を示す。ひし形マークはコントロールsiRNA、黒塗り四角マークはDGPP1S蛋白質及びDGPP1L蛋白質特異的siRNAをトランスフェクションした場合の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号2、配列番号2の第50〜313番、配列番号4及び/又は配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(2)配列番号2の第50〜313番及び/若しくは配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列又は配列番号2の第50〜313番及び/若しくは配列番号4の第21〜291番で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド、あるいは(3)配列番号2又は配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸からなり、かつリン酸分解酵素活性を有するポリペプチド
を抑制するか否かを分析する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法。
【請求項2】
抑制が発現抑制である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
抑制がリン酸分解酵素活性抑制である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
(1)請求項1に記載のポリペプチド、(2)請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(3)請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール。
【請求項5】
(1)請求項1に記載のポリペプチド、(2)請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(3)請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3に記載の分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3に記載のスクリーニング方法で得ることができる物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質を投与することを含む、関節リウマチ治療方法。
【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質の、関節リウマチ治療用医薬組成物製造のための使用。
【請求項11】
配列番号1に記載の塩基配列のNAに続く19〜21塩基からなる、配列番号1に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに特異的な塩基配列に基づいて設計されるsiRNA。
【請求項12】
二重鎖RNA部分が、配列番号32で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNA。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のsiRNAを有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104902(P2007−104902A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−9881(P2004−9881)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(504021507)
【Fターム(参考)】