関節変性疾患及び炎症性疾患の治療に有用な分子標的及び化合物、並びにそれらの同定方法
本明細書は、配列番号:17〜127(以下「ターゲット」)を含むポリペプチド配列及びそれらのフラグメント、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)などの発現阻害剤を使用して、細胞外マトリクス(ECM)分解及び炎症を阻害する化合物の同定方法並びに使用方法を開示し、これは配列番号:17〜127のポリペプチドをコードする天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列又は人為的に加工した該核酸配列を含み、関節リウマチなどの慢性関節変性疾患及び/又は炎症性疾患の治療用若しくは予防用前記作用物質を含む医薬組成物に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年10月15日に出願された米国特許仮出願第60/619,384号への優先権を主張し、該開示は引用によって本明細書に組み込まれる。。
(発明の分野)
本発明は、細胞外マトリクス(ECM)の分解をもたらす経路に関与するタンパク質の発現を阻害し得る化合物及び発現阻害剤の同定方法に関するものであり、それらの阻害は、関節変性疾患並びに細胞外マトリクス(ECM)分解及び/又は炎症が関与する疾患の予防並びに治療に有用である。
【0002】
細胞外マトリクスの分解が関与する疾患は、これらに限定されないが、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病のような筋骨疾患、ガン転移、呼吸器系疾患(COPD、喘息)、腎臓繊維症及び肝臓繊維症、アテローム性動脈硬化症及び心不全のような心血管系疾患、並びに神経の炎症及び多発性硬化症のような神経系疾患を含む。主に関節変性が関与する疾患は、これらに限定されないが、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎を含む。
【0003】
関節リウマチ(RA)は、炎症及び関節構造の破壊によって特徴付けられる、慢性の関節変性疾患である。該疾患が調べられなかった場合、該疾患は実質的な身体障害、関節機能性の喪失のための痛み、並びに早死にすらもたらす。それゆえ、RA治療の目的は、該疾患を遅延させるのではなく、関節の破壊を停止させるための緩解を実現することである。該疾患の予後の重篤さに加え、(世界規模で、成人の0.8%が冒される)RAの高い罹患率は、強い社会経済的衝撃を意味する。(RAの総説として、発明者らは、Smolen及びSteinerの文献 (2003);Lee及びWeinblattの文献 (2001);Choy及びPanayiの文献 (2001);O'Dellの文献 (2004)並びにFiresteinの文献 (2003)を引用する)
【0004】
RAが自己免疫性疾患であることは広く受け入れられているが、該疾患の「開始段階」を駆動する詳細な機構に関する合意は得られていない。知られているのは、傾向宿主(predisposed host)において、初期誘発物質(initial trigger)(群)が、様々な細胞型(B細胞、T細胞、マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、樹状細胞など)の活性化をもたらす事象のカスケードを媒介する。これに付随し、関節内及び関節の周辺組織内で、様々なサイトカインの増強産生が認められる(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1、IL−15、IL−18など)。該疾患が進行するにつれて、細胞の活性化並びにサイトカイン産生カスケードは自己永続的となる。この初期段階においてすでに、関節構造の破壊はかなり明らかである。該患者の30パーセントは、診断時に骨の侵食の証拠となるX線像を有し、この割合は2年後に、60パーセントにまで増加する。
【0005】
RA患者の関節の組織学的解析は、RA関連性の分解過程に関与する機構を明らかに証拠付けた。滑膜は、関節夾膜を滑液腔から分離する亜裏打ち(sublining)領域及び裏打ち領域からなる細胞層である。炎症の起きた滑膜は、RAの病態生理の中核をなす。滑膜性関節は、それぞれが軟骨層で被覆され、関節腔で隔てられ、かつ滑膜及び関節夾膜で囲まれる、隣接する2つの骨の末端からなるものとして示される。滑膜は、滑膜の裏打ち(軟骨及び骨の上張り)からなり、これは滑膜細胞の薄い層(1〜3個の細胞)、並びに高度に血管新生化される亜裏打ち結合組織層からなる。滑膜は、軟骨を除くほとんど全ての関節内構造を被覆する。健常者とRA患者との間の滑膜における組織学的差異を図1に示す。
【0006】
関節炎の他の多くの形態のように、関節リウマチ(RA)は、局部的活性化又は浸潤単核球に加え、様々な型の単核球の重大な流入によって特徴付けられる滑膜の炎症性反応(「滑膜炎」)によってはじめに特徴付けられる。裏打ち層は肥厚型(該裏打ち層は20個の細胞より厚くなり得る)となり、滑膜は膨張する。しかしそれに加えて、RAの顕著な特徴は、関節の破壊である。関節腔は、軟骨変性及び隣接する骨の破壊の徴候に伴って狭まるか又は消失し、また「糜爛(erosion)」と称される現象が起こる。滑膜の破壊部分は、「パンヌス(pannus)」と称される。滑膜細胞によって分泌された酵素は、軟骨変性をもたらす。
【0007】
この解析は、RA関連性の関節変性の原因となる主要エフェクターがパンヌスであり、ここで、様々なタンパク質分解酵素を産生することによって、滑膜性線維芽細胞は軟骨糜爛及び骨糜爛の最も重要な駆動体であることを示す。進行型RAの患者において、パンヌスは、隣接する軟骨の変性を媒介し、関節腔の狭小化をもたらし、かつ近接する骨及び軟骨を侵襲する可能性がある。コラーゲンI型又はコラーゲンII型は、それぞれ骨組織及び軟骨組織の主要構成要素であり、パンヌスの破壊的特性及び侵襲特性は、コラーゲン分解プロテアーゼ、主にマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)の分泌によって媒介される。軟骨の下の骨、及び軟骨に隣接する骨の糜爛もまたRA過程の一部であり、骨及びパンヌスの接触部分で、破骨細胞の存在から主に生じる。破骨細胞は骨組織に接着して閉じた区画を形成し、その中で破骨細胞は、骨組織を分解するプロテアーゼ(カテプシンK、MMP9)を分泌する。関節内の破骨細胞集団は、活性化されたSF及びT細胞によって、NFkBリガンド(RANKL)の受容体活性化因子の分泌によって誘導される前駆細胞からの骨芽細胞形成によって、異常に増加する。
【0008】
様々なコラーゲン型が、細胞外マトリクス(ECM)の安定性を規定するのに重要な役割を担う。例えば、コラーゲンI型及びコラーゲンII型は、それぞれ骨及び軟骨の主要な構成要素である。典型的には、コラーゲンタンパク質は、コラーゲン繊維として言及される多量体構造へと組織化される。天然型コラーゲン繊維は、タンパク質分解的切断に非常に抵抗性である。ECM分解タンパク質の数種の型(マトリクス−メタロプロテアーゼ(MMP)及びカテプシン)のみが、天然型コラーゲンを分解する能力を有していることが報告されている。カテプシンの中で、主に破骨細胞において活性であるカテプシンKが最も特徴付けられている。
【0009】
マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)は様々な生理的役割をもち、例えばそれらは、他のプロテアーゼの成熟化、成長因子、及び細胞外マトリクス構成要素の分解に関与する。MMPの中で、MMP1、MMP2、MMP8、MMP13及びMMP14が、コラーゲン分解特性を有することが知られている。MMP1はMMPファミリーの一員であり、骨及び軟骨の重要な構成要素である天然型コラーゲンを分解することができる。滑膜性線維芽細胞(SF)によるMMPの増強発現と関節炎疾患の進行との間の相関関係はよく確立されており、関節の糜爛過程の前兆である(Cunnaneらの論文, 2001)。それゆえRAとの関連で、MMP1は、高度に関連するコラーゲン分解タンパク質を表す。インビトロにおいて、RAの病態に関連するサイトカインを用いた培養SFの処理(例えば、TNF−α及びIL1β)は、これらの細胞によってMMP1の発現を増加させる(Andreakosらの論文, 2003)。
【0010】
また、ECM分解タンパク質の活性は、関節の変性にも関与する、RA以外の様々な疾患の進行の原因となる又は該進行に関連する可能性がある。これらの疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎及び強直性脊椎炎を含むが、これらに限定されない。本発明に従って同定された化合物、並びに本明細書で記載するような、MMP発現に関与する標的を使用して治療し得る他の疾患は、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病のような筋骨疾患 (Gapskiらの論文、2004)、ガン転移 (Coussensらの論文、2002)、呼吸器系疾患 (COPD、喘息) (Suzukiらの論文、2004)、肺繊維症、腎臓繊維症 (Schanstraらの論文、2002)、慢性C型肝炎関連性肝臓繊維症 (Reiffらの論文、2005)、アテローム性動脈硬化症及び心不全のような心血管系疾患 (Creemersらの論文、2001)、並びに、神経の炎症及び多発性硬化症のような神経系疾患(Rosenberg、2002)である。そのような疾患を患っている患者は、ECMを酵素分解から保護する治療によって利益を得ることができる。
【0011】
(報告されている展開)
NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)は、RAに伴う痛みを低減させ、患者の生活の質を向上させるために使用される。しかしながらこれらの薬剤が、RA関連性の関節破壊を停止させることはない。
コルチコステロイドは、X線検査で検出されるようなRAの進行を減速させることが見出され、一部の患者(30〜60%)を治療するために低用量で使用される。しかしながら、長期のコルチコステロイド使用には深刻な副作用(皮膚の薄化、骨粗鬆症、白内障、高血圧、高脂血症)が伴う。
【0012】
合成DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)(例えば、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン)は主に、RAの免疫炎症性構成要素に対処する。主な不都合点は、これらの薬剤が、限定的な有効性のみを有することである(DMARDによって関節破壊が遅延されるのみであり、疾患の長期継続的進行は阻害されない)。有効性の欠如は、メトトレキサートを用いた治療の24時間後において、平均で30%の患者のみしか、ACR50スコアを達成しないという事実によって示される。米国リウマチ学会によると、これは、患者の30%のみしか、それらの症状の50%の回復を達成しないということを意味する(O'Dellらの論文, 1996)。さらに、DMARDの作用の詳細な機構は多くの場合明らかでない。
【0013】
生物学的DMARD(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムバブ、リツキシマブ、CTLA4-Ig)は治療用タンパク質であり、RAの病態生理学において重要な役割を有するサイトカイン(例えば、TNF−α)又は細胞(例えば、T細胞又はB細胞)を不活化させる(Kremerらの文献, 2003;Edwardsらの文献, 2004)。TNF−α遮断薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムバブ)とメトトレキサートとの併用療法は、現在利用可能な最も効果的なRA治療であるが、この治療でさえ、12ヶ月の治療後において、患者の50〜60%においてしか病徴の改善(ACR50)が達成されていないこと(St Clairらの論文, 2004)は特筆に値する。抗TNF−α薬に警告を発するいくつかの有害事象が存在し、この型の薬剤に関連する副作用を浮き彫りにしている。感染(結核)血液学的事象及び脱髄性障害の危険性の増大は、TNF−α遮断薬に記載されている(Gomez-Reinoらの文献, 2003も参照されたい)。深刻な副作用に加えて、TNF−α遮断薬はまた、不快な方法での投与(注射部位反応を伴う頻繁な注射)並びに高い生産費用という生物学的治療部門の一般的な不便を共有する。後期開発段階におけるより新しい作用物質は、T細胞共刺激分子及びB細胞を標的とする。これらの作用物質の有効性は、TNF−α遮断薬の有効性に類似していることが予想される。様々な標的療法が、類似してはいるが限定的な有効性を有するという事実は、RAの病原因子の多重度が存在することを示唆する。これはまた、RAに関連する病原性事象の発明者らの理解の欠如の指標となる。
【0014】
RAに対する現在の治療は、限定的有効性(患者の30%に適切な治療がない)のために満足のいくものではない。これは、緩解を達成させるためのさらなる戦略を必要としている。緩解は、余病が、進行的な関節損傷、すなわち進行的な能力障害の危険性に耐えるまで必要とされる。RA治療に現在使用される薬剤の主要標的を表す、RA疾患の免疫炎症性構成要素の阻害は、該疾患の主要な特徴である関節変性の阻害をもたらしはしない。
【0015】
RA患者の関節の組織学的解析は、関節変性の主因を示す高悪性度で侵襲性組織としてのパンヌスを明らかに同定する。パンヌス内において、滑膜性線維芽細胞は、RA発病の根底に横たわる異常に誘発された免疫系の開始と最終的な関節糜爛との間の関連性を表す。現在、長期にわたってパンヌスの糜爛活性を効率的に根絶するRA治療がないので、パンヌスの生成及び/又は該活性を阻害する新規薬剤並びに/若しくは薬剤標的の発見は、新規RA治療の開発の重要な画期的出来事を表現するであろう。
本発明は、特定のタンパク質が、MMP1などの細胞外マトリクス(ECM)分解プロテアーゼの発現をもたらす経路に機能するという発見に基づいており、これらのタンパク質の活性阻害剤は、そのようなプロテアーゼの異常に高い発現が関与する疾患の治療に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、関節変性疾患及び炎症性疾患の治療に有用な分子標的及び化合物、並びにそれらの同定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、細胞外マトリクス(ECM)分解を阻害する化合物を同定する方法に関するものであり、化合物を、配列番号:17〜32(本明細書では以降「ターゲット(TARGET)」)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及びそれらのフラグメントと、前記ポリペプチドが前記化合物に結合可能な条件下で接触させること、並びに細胞外マトリクス(ECM)分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、を含む。
【0018】
本方法の態様は、ターゲットのポリペプチド又はそれらのフラグメントを使用する化合物のインビトロアッセイを含み、そのようなフラグメントは配列番号:33〜127に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ細胞アッセイは、ターゲットの阻害に続いて、例えば、ターゲット発現レベル、ターゲット酵素活性及び/又はマトリクスメタロプロテイナーゼ−1レベルを含む有効な指標を観測することを含む。
【0019】
本発明はまた、(1)アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む発現阻害剤であって、前記ポリヌクレオチドが配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該天然型ポリヌクレオチド配列から設計される核酸配列を含む、前記発現阻害剤、並びに(2)前記発現阻害剤を含み、関節リウマチなどの慢性関節変性疾患の治療又は予防に有用な医薬組成物、に関するものである。
【0020】
本発明の別の実施態様は、細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する状態に苦しむ又は感受性である対象に、効果的にターゲットの発現を阻害する量の発現阻害剤、若しくは効果的にターゲット活性を阻害する量の活性阻害剤を含む医薬組成物を投与することによる、前記状態の治療又は予防方法である。
本発明のさらなる態様は、対象におけるターゲット発現のレベルの指標の測定を含む、細胞外マトリクス(ECM)分解によって特徴付けられる病態に関連する診断方法である。
本発明の別の態様は、炎症、特に異常なマトリクスメタロプロテアーゼ活性の疾患的特徴が関与する疾患の治療に有用な、治療方法、医薬組成物並びにそのような化合物の製造における、本化合物の使用に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(詳細な説明)
下記の用語は、そのすぐ後に記載する意味を有することを意図し、本明細書並びに本発明の意図する範囲を理解することに有用である。
用語「作用物質」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド並びに小分子を含む、任意の分子を意味する。
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンド結合受容体を刺激するリガンドをさす。
【0022】
用語「アッセイ」は、化合物の特定の特性を測定するために使用する任意の工程を意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物のコレクションから、それらの活性に基づいて化合物特徴付ける又は選択するために使用する工程を意味する。
用語「結合親和性」は、非共有結合的関係で、2以上の化合物が互いにどの程度強く相互作用するかを記載する特性である。結合親和性は、定性的(「強い」、「弱い」、「高い」又は「低い」など)又は定量的(KDの測定など)によって、特徴付けることができる。
【0023】
用語「担体」は、医薬組成物の製剤に使用する非毒性物質を意味し、医薬組成物に媒体、容積及び/又は使用可能な形態を提供する。担体は、賦形剤、安定剤又は水性pH緩衝液などの、1以上のそのような物質を含んでよい。生理的に許容し得る担体の例は、リン酸、クエン酸及び他の有機酸を含む水性緩衝液成分又は固体緩衝液成分;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/若しくはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0024】
用語「複合体」は、2以上の化合物が互いに結合する場合に作られる実体を意味する。
用語「化合物」は、本明細書において、本発明のアッセイとの関連で記載する「テスト化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で使用する。そのようなものとして、これらの化合物は、合成又は天然資源に由来する有機化合物若しくは無機化合物を含む。該化合物は、比較的低い分子量で特徴付けられるポリヌクレオチド、脂質又はホルモン類似体などの無機化合物若しくは有機化合物を含む。他の生体高分子有機テスト化合物は、約2個〜約40個のアミノ酸を含むペプチド、並びに抗体又は抗体複合体などの約40個〜約500個のアミノ酸を含むより大きなポリペプチド、を含む。
【0025】
用語「状態」又は「疾患」は、症状の露呈(すなわち、疾病)又は異常な臨床的指標(例えば、生化学的指標)の顕在化を意味する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状又は異常な臨床的指標を進行させる遺伝的リスク若しくは環境的リスク又は傾向をさす。
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロ系又はインビボ系のいずれかにおいて、少なくとも2つの部分が結集することを意味する。
【0026】
用語「ポリペプチドの誘導体」は、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素に関するものであり、該ポリペプチドの連続する一続きのアミノ酸を含み、かつ例えば、該ポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較してアミノ酸変異を有するポリペプチドのようなタンパク質の生物活性を保持する。誘導体は、該ポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較して、付加型天然型アミノ酸残基、変更アミノ酸残基、グリコシル化アミノ酸残基、アシル化アミノ酸残基又は非天然型アミノ酸残基をさらに含んでもよい。それはまた、例えば前記アミノ酸配列に共有結合的又は非共有結合的に結合するレポーター分子若しくは他のリガンドのようなポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較して、1以上の非アミノ酸置換基を含んでもよい。
【0027】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、DNA分子、RNA分子及びオリゴヌクレオチドに関するものであり、該ポリヌクレオチドの天然型形態の核酸配列に比較した場合に核酸変異を有し得るポリヌクレオチドのような一続きのポリヌクレオチド又は核酸残基を含む。誘導体は、PNA、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ) エチル-ホスホロチオエートなどの修飾骨格、非天然型核酸残基、又はメチル-、チオ-、硫酸、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、若しくはその検出を促進させるレポーター分子を有する核酸をさらに含んでもよい。
【0028】
用語「ECM分解タンパク質」及び「ECM分解活性」はそれぞれ、骨及び軟骨に見出される細胞外マトリクスを分解可能なタンパク質及び活性をさす。
用語「有効量」又は「治療的有効量」は、医師又は他の臨床医に診断される対象の生物学的反応又は医学的反応を誘起させる化合物若しくは作用物質の量を意味する。
用語「内因性」は、哺乳動物が自然的に産生する物質を意味するものとする。用語「プロテアーゼ」、「キナーゼ」又はGタンパク質共役受容体(「GPCR」)に関連する内因性は、哺乳動物(例えば、限定しないが、ヒト)によって自然に産生されるものを意味するものとする。対照的に、この文脈における用語非内因性は、哺乳動物(例えば、限定しないが、ヒト)によって自然に産生されないものを意味するものとする。両方の用語は、「インビボ」及び「インビトロ」の両方を記載するのに使用できる。例えば、限定ではないが、スクリーニングアプローチにおいて、内因性ターゲット又は非内因性ターゲットを、インビトロのスクリーニング系に引用してもよい。限定ではないがさらなる例として、哺乳動物のゲノムを操作して非内因性ターゲットを含ませた場合、インビボ系を用いる候補化合物のスクリーニングが利用可能である。
【0029】
用語「発現性核酸」は、タンパク質性分子、RNA分子、又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
用語「発現」は、内因性発現、及び形質導入による過剰発現の両方を含む。
用語「発現阻害剤」は、細胞内で本来発現する特定のポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現に選択的に干渉するように設計したポリヌクレオチドを意味する。より詳細には、「発現阻害剤」は、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド配列内の、少なくとも約17個の連続するヌクレオチドに同一又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA分子若しくはRNA分子を含む。典型的な発現阻害剤分子は、リボザイム、二本鎖siRNA分子、自己相補的一本鎖siRNA分子、遺伝的アンチセンス構築物、及び修飾された安定化骨格を有する合成RNAアンチセンス分子を含む。
【0030】
用語「発現性核酸」は、タンパク質性分子、RNA分子、又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
用語「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列の活性に、同一である必要性はないが実質的に類似性を示す一続きの連続した核酸残基を含むオリゴヌクレオチドをさす。
用語「ポリペプチドのフラグメント」は、完全な配列の機能的活性に、同一である必要性はないが実質的に類似性を示す一続きの連続したアミノ酸残基を含むペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素をさす。
【0031】
用語「ハイブリダイゼーション」は、塩基対を介して、一方の核酸鎖が相補鎖と結合することによる、任意の工程を意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補塩基間の水素結合形成の効力により、2つの核酸配列間で形成される複合体をさす。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中で形成してよく(例えば、C0t解析又はR0t解析)、又は溶液中に存在する核酸配列と、固相支持体(例えば、紙、膜、フィルター、チップ、ピン又はスライドガラス、若しくは細胞又はそれらの核酸が固定されている任意の他の適切な基質)上に固定化された別の核酸配列との間で形成してもよい。用語「厳しい条件」は、ポリヌクレオチドと、特許請求の範囲に記載のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件をさす。厳しい条件は、塩濃度、例えばホルムアミドのような有機溶媒の濃度、温度、並びに当業者に周知の他の条件によって規定することができる。特に、塩濃度の低下、ホルムアミド濃度の増大、又はハイブリダイゼーション温度の上昇は、厳しさを増大させ得る。
【0032】
用語「反応」との関連での用語「阻害する」又は「阻害すること」は、反応が、化合物の不在下とは対照的に、化合物の存在下で低減すること又は阻害されることを意味する。
用語「阻害」は、タンパク質又はポリペプチドの発現の不在若しくは最少化をもたらす過程の減少、該過程の下方制御、又は該過程に対する刺激の除去をさす。
用語「誘導」は、タンパク質又はポリペプチドの発現をもたらす過程の誘発、上方制御又は刺激をさす。
用語「リガンド」は、内因性の天然型受容体に特異的な内因性の天然型分子を意味する。
【0033】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明化合物の非毒性無機酸付加塩及び有機酸付加塩並びに塩基付加塩をさす。
これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終単離及び精製の間、インサイチュウで調製することができる。
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク質性分子、タンパク質画分、ペプチド、オリゴペプチド、酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCR酵素など)に関するものである。
【0034】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖形態又は二本鎖形態のポリ核酸、及びセンス方向又はアンチセンス方向のポリ核酸、厳しい条件下で特定のポリ核酸にハイブリダイズする相補的ポリ核酸、並びにその塩基対の少なくとも約60%で相同なポリヌクレオチド、及びより好ましくはその塩基対の70%、最も好ましくは90%、並びに最も特別な実施態様においてはその塩基対の100パーセントが共通なポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、及びそれらの合成類似体を含む。ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸を含む。ポリヌクレオチドを、その長さが、約10塩基〜約5000塩基、好ましくは約100塩基〜約4000塩基、より好ましくは約250塩基〜約2500塩基の範囲で変化する配列によって記載する。ポリヌクレオチドの一実施態様は、約10塩基〜約30塩基の長さを含む。ポリヌクレオチドの特別な実施態様は、約17個〜約22個のヌクレオチドからなるポリリボヌクレオチドであり、より一般的には低分子干渉RNA(siRNA)として記載する。別の特別な実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、又は非天然型核酸残基を含む核酸、若しくはメチル-、チオ-、硫酸、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基を含む核酸、又はその検出を促進させるレポーター分子含む核酸である。
【0035】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(ターゲットなど)、タンパク質性分子、タンパク質ペプチド及びオリゴペプチド画分に関するものである。
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と本発明に有用な化合物の物理的会合を意味する。この物理的会合は水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば1以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合に単離可能である。「溶媒和物」は、液相溶媒和物と単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的溶媒和物は、水和物、エタノラート及びメタノラートを含む。
【0036】
用語「対象」は、ヒト及び他の哺乳動物を含む。
用語「ターゲット(TARGET又はTARGETS)」は、本明細書に記載するアッセイに従って同定され、MMP1の発現レベルの調節に関与するタンパク質(群)を意味する。
「治療的有効量」は、医師又は他の臨床医に診断される対象の生物学的又は医学的反応を誘起させる薬剤若しくは医薬品の量を意味する。特に、細胞外マトリクス分解によって特徴付けられる病態の治療に関して、用語「効果的なマトリクスメタロプロテアーゼ阻害量」は、細胞外マトリクス分解が有意に減少するような対象の疾患罹患組織におけるMMP−1産生の生物学的に有意な減少をもたらす本発明の化合物の有効量を意味することを意図する。マトリクスメタロプロテアーゼ阻害特性を有する化合物、又は「マトリクスメタロプロテアーゼ阻害化合物」は、有効量で細胞に与える場合、そのような細胞におけるMMP−1の産生の生物学的に有意な減少をもたらすことができる化合物を意味する。
【0037】
用語「治療(treating)」は、進行の阻止又は該病態を変化させる意図をもって実施し、それによって障害、疾患又はそのような障害又は状態の1以上の症状を含む状態を緩和させる介入を意味する。したがって、「治療(treating)」は、治療的処理、及び予防的処置(prophylactic measure)又は予防的処置(preventative measure)の両方をさす。治療が必要な対象は、該障害が予防すべき対象に加えて、すでに障害となった対象を含む。本明細書で使用するように、関連用語「治療(treatment)」は、用語「治療(treating)」を先に定義したように、障害、症状、疾患又は病理状態を治療する行動をさす。
【0038】
(細胞外マトリクス分解に関連するターゲットに基づく出願人の発明)
SFによるMMP1発現は、インビボにおいて、軟骨変性に関与する糜爛性表現型に対するSFの活性化に関連するのと同様に、ECM分解に関与する。これは、関節変性の減少をもたらすMMP群の阻害剤であるTIMP1を過剰発現するアデノウイルスにより、関節炎表現型が自然発症的に進行するTNFα遺伝子組換えマウスへの投与によって示されている(Shettらの論文, Arthritis Rheum. (2001) 44:2888-98)。それゆえ、SFによるMMP1発現の阻害は、RAの治療に対して有益な治療的アプローチを提示する。したがって、活性化SFにおける候補タンパク質の発現の減少が、MMP1の減少を付随的にもたらすのであれば、それからそのようなタンパク質はMMP1発現の減少に関与し、かつRA治療の治療戦略の開発の関連標的である。本発明者は、本明細書で「Ad−siRNA」として言及するshRNAライブラリーの発現を媒介する組換えアデノウイルスをスクリーニングすることによって、そのような標的タンパク質を同定している。本明細書で使用するコレクションはさらに、「アデノウイルスsiRNAライブラリー」又は「サイレンスセレクト(SilenceSelect)」コレクションとして言及する。これらのライブラリーは組換えアデノウイルスを含み、RNA干渉(RNAi)に基づく機構(WO03/020931)によって、標的遺伝子の発現レベルを減少させるshRNAの細胞内発現を媒介するノックダウン(KD)ウイルス又はAd−siRNAとしてさらに言及する。スクリーニング研究を、以下の実施例1に記載する。
【0039】
先に記載したように、本発明は、以下に記載する実施例での様々な選別の結果として同定されたターゲットポリペプチドが、MMP1の上方制御及び/又は誘導のみならず、細胞外マトリクス分解の上方制御及び/又は誘導にすらも機能する因子であるという、本発明者の発見に基づく。ECM分解タンパク質の活性は、関節の変性を伴う疾患を含む、細胞外マトリクスの進展的変性に関連する様々な疾患の進行の原因であり、かつ関連すると考えられる。
【0040】
一態様において、本発明は、細胞外マトリクス分解を阻害する薬剤候補化合物のアッセイ方法に関連し、前記ポリペプチドが前記化合物へと結合することを可能にさせる条件下で、前記化合物を、配列番号:17〜127のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそれらのフラグメントと接触させること、並びに前記ポリペプチドと化合物との複合体形成を検出する、ことを含む。複合体形成を測定する好ましい一手段は、前記ポリペプチドへの前記化合物の結合親和性を測定することである。
【0041】
より詳細には、本発明は、細胞外マトリクス分解を阻害する作用物質の同定方法に関するものであり、該方法は:
(a)哺乳動物細胞集団を、ターゲットポリペプチド又はそれらのフラグメントに対する結合親和性を阻害する1以上の化合物に接触させること、及び、
(b)細胞外マトリクス分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、
をさらに含む。
【0042】
前記化合物−ポリペプチド特性は上述のように、ターゲットの発現及び/又は活性に関連し、当業者によって選択される測定可能な事象であることに言及する。該測定可能な特性は、例えば、配列番号:33〜127などのポリペプチドターゲットのペプチドドメインに対する結合親和性、又は細胞外マトリクス分解の多くの生化学的マーカーの任意の1つのレベルであってよい。細胞外マトリクス分解は、例えば、MMPポリペプチド及び/又はカテプシンポリペプチドの発現などの前記過程の間に誘導される酵素のレベルを測定することによって測定可能である。
本発明の好ましい実施態様において、ターゲットポリペプチドは、表1に一覧化したような、配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の別の特別な実施態様は、配列番号:19〜22、25、26、29、30及び32として同定したキナーゼターゲットを含む。本発明の別の特別な実施態様は、配列番号:17、18、24及び27として同定したイオンチャネルターゲットを含む。さらに好ましい実施態様は、配列番号:23として同定した核ホルモン受容体(NHR)ターゲットである。
【0045】
当業者の選択によって、本アッセイ方法を、各々が前記薬剤候補化合物が実際に前記ポリペプチド上で作用し、それによって細胞外マトリクス分解を阻害するかどうかを決定するために設計する、一連の測定として機能させるために設計してよい。例えば、前記ポリペプチド又はそれらのフラグメントへの化合物の結合親和性を測定するために設計したアッセイは、前記テスト化合物を対象に投与した場合に細胞外マトリクス分解を阻害するのに有用であるかを解明するのに必要ではあるが十分ではない。
【0046】
そのような結合に関する情報は、異なる特性を測定し、さらに例えばMMP−1発現などの生化学的経路を低減させ得るアッセイに使用する、一連のテスト化合物を同定するのに有用であり得る。そのような第二アッセイを設計し、前記テスト化合物が前記ポリペプチドに対する結合親和性を有し、実際には細胞外マトリクス分解を阻害することを確認してもよい。誤った陽性の読み取りを防ぐために、常に適切なコントロールを置くべきである。
【0047】
これらの測定を行う順番は、本発明の実施に決定的であるとは考えられず、任意の順番で実施可能である。例えば、前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性に関する情報が知られていない場合、一連の化合物のスクリーニングアッセイをはじめに実施してよい。あるいは、ポリペプチドドメインに対して結合親和性を有するものとして同定した一連の化合物、又は前記ポリペプチドの阻害剤であるものとして同定した化合物の群を選別してもよい。しかしながら、本アッセイが薬剤候補化合物の最終的使用に意味を有するためには、細胞外マトリクス分解活性の測定が必要である。それでもなお、本発明の前記ポリペプチドへの結合親和性の制御及び測定を含む検証的研究は、任意の治療的適用又は診断的適用に有用な化合物を同定することに有用である。
本アッセイ方法を、1以上のターゲットタンパク質又はそれらのフラグメントを使用して、インビトロで実施してよい。選択したターゲットの典型的タンパク質ドメインフラグメントのアミノ酸配列は、下記表中に一覧化した配列番号:33〜127である。
【0048】
【表1A】
【0049】
化合物と前記ポリペプチドターゲットとの結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)、標識化合物を用いる飽和結合解析(例えば、スキャッチャード及びリンドモ(Lindmo)解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー (FLIPR)システム、蛍光共鳴エネルギー転移及び生物発光共鳴エネルギー転移の使用などの、当業者に既知の方法で測定可能である。また、化合物の結合親和性は、解離定数(Kd)、又はIC50若しくはEC50で表現することができる。IC50は、前記ポリペプチドへの別のリガンドの結合の50%阻害に必要な化合物濃度を示す。EC50は、ターゲット機能を測定する任意のアッセイにおける、最大効率の50%を得るのに必要な濃度を示す。解離定数Kdは、リガンドが前記ポリペプチドにどの程度よく結合するかの尺度であり、該ポリペプチド上の結合部位のちょうど半分が飽和するのに必要なリガンド濃度に等しい。高親和性結合を有する化合物は、例えば100nM〜1pM程度の低いKd値、低いIC50値及び低いEC50値を有し;中程度親和性結合から低親和性結合は、例えばマイクロモラー程度の高いKd値、高いIC50値及び高いEC50値に関連する。
【0050】
また、本アッセイ方法を細胞性アッセイで実施してよい。ターゲットを発現している宿主細胞は内因性発現を有する細胞、又は例えば形質導入によってターゲットを過剰発現している細胞であり得る。前記ポリペプチドの内因性発現が、容易に測定可能な基線を決定するのに十分でない場合、ターゲットを過剰発現する宿主細胞を使用してもよい。過剰発現は、ターゲット基質の最終生成物のレベルが、内因性発現による活性レベルよりも高いという利点を有する。したがって、現在利用可能な技術を使用してそのようなレベルを測定することは、より容易である。
【0051】
細胞外マトリクス(ECM)分解を減少させる化合物の同定方法の一実施態様は、ターゲットポリペプチド又はそれらの機能的フラグメント若しくは誘導体を発現している哺乳動物細胞集団を培養すること;前記細胞集団におけるECM分解の第一レベルを測定すること;任意の時間に該細胞集団を活性化させること;化合物又は化合物群の混合物に前記細胞集団を曝露すること;前記化合物又は前記化合物群の混合物への前記細胞集団の曝露中、若しくは曝露後に、前記細胞集団におけるECM分解の第二レベルを測定すること;並びに、ECM分解を減少させる化合物(群)を同定すること;を含む。先に記載したように、ECM分解は、ターゲットポリペプチド及び/又は既知のECM分解タンパク質の発現並びに/若しくは活性を測定することで測定してよい。好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はコラーゲンを分解することができ、より好ましくはコラーゲンI型及び/又はコラーゲンII型を分解することができる。本発明の別の好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)であり、より好ましくは、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP13及びMMP14からなる群から選択される。この文脈において、最も好ましいECM分解タンパク質はマトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP1)である。さらに別の好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はカテプシンKである。
【0052】
ECM分解タンパク質の発現は、特異抗体を使用するウエスタンブロッティング、又は特定のECM分解タンパク質を特異的に認識する抗体を使用するELISAなどの、当業者に既知の方法で測定できる。
ECM分解タンパク質の活性は、蛍光性の小ペプチド基質を使用することによって測定することができる。しかしながら、これらの基質の特異性はしばしば限定される。一般的に、これらの基質の使用は、他のプロテアーゼの干渉を避けた生化学的アッセイにおける精製プロテアーゼの試験に限定される。本発明者は、ハイスループットモードで、培養細胞上清などの複雑な培地中のコラーゲン分解酵素の活性の検出を可能にさせるプロトコルを開発した。このプロトコルは、基質として蛍光ラベルで標識した天然型コラーゲンを使用する。
【0053】
本発明者は、「ノックダウン」ライブラリーを使用することによって、ECM分解に関与するターゲット遺伝子群を同定した。この型のライブラリーは、細胞内で、該対応遺伝子産物の発現及び活性に加えて、特定遺伝子の発現を阻害又は抑制するsiRNA分子を、組換えアデノウイルスによって細胞へと形質導入することによる選別である。ウイルスベクター内の各siRNAは、特定の天然の遺伝子に対応する。ECM分解を抑制するsiRNAを同定することによって、特定の遺伝子発現とECM分解との間の直接的な関連性を示すことができる。ノックダウンライブラリー(本明細書において、それらのタンパク質発現産物は「ターゲット」ポリペプチドとして言及される)を使用して同定したターゲット遺伝子群を、その次に本発明の化合物同定方法に使用して、ECM分解を阻止するために使用することができる。実際に、表2(配列番号:128〜141及び231〜244)に一覧化した配列を含むshRNAは、これらターゲット遺伝子の発現及び/又は活性を阻害し、細胞のECM分解活性を減少させ、これらはECM分解におけるターゲットの役割を裏付ける。
【0054】
【表2】
【0055】
化合物の存在下又は不在下で実施する、キナーゼによる基質のリン酸化を測定することによる、該キナーゼ活性を測定する特定の方法は、当業者に周知である。
イオンチャネルは膜タンパク質複合体であり、それらの機能は、生体膜を通るイオンの拡散を促進させることである。膜又は脂質二重層は、疎水性で、親水性分子及び荷電分子への低誘電体バリアを構築する。イオンチャネルは、前記膜の疎水的内部を通る、高伝導性で親水性の経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的なパッチクランプ法を使用して測定できる。ハイスループットの蛍光に基づくアッセイ又はハイスループットのトレーサーに基づくアッセイもまた、イオンチャネルの活性を測定するのに広く使用できる。これらの蛍光に基づくアッセイは、イオンチャネルを開けるか又は閉じる能力に基づく化合物を選別し、それによって膜を通る特定の蛍光色素濃度を変化させる。トレーサーに基づくアッセイの場合、細胞内外のトレーサー濃度の変化は、放射能測定又はガス吸収分析法で測定する。
【0056】
核受容体の活性化は、リガンドが結合することによって誘導される受容体の立体構造変化が関与すると考えられる。プロテアーゼ保護アッセイの結果は、核ホルモンのアゴニスト及びアンタゴニストが、受容体タンパク質を異なる立体構造に適合化させることを裏付けた(Keidelらの論文 Mol Cell. Biol. 14:287 (1994);Allanらの論文. J. Biol.Chem. 267:19513 (1992))。したがって、プロテアーゼ保護アッセイを使用して、NHRの活性を測定することができる。活性化補助因子又はリプレッサーの動員は、NHR活性の評価用に開発された別のアッセイに基づく。
【0057】
化合物の存在下又は不在下で実施する、デヒドロゲナーゼによる基質の酸化を測定する、デヒドロゲナーゼ活性特異的な測定方法は、当業者に周知である。
プロテアーゼであるポリペプチドによる基質の切断を測定することによって、前記化合物による阻害を測定する特定の方法は、当業者に周知である。古典的には、基質は、標的プロテアーゼによって切断され得る基質であるペプチド配列を介して消光剤に連結する蛍光基を使用する。該リンカーの切断は、蛍光基と消光剤を分離させ、蛍光の増幅を生じさせる。
【0058】
表4は、以下に記載するMMP1アッセイに対して、出願人のノックダウンライブラリーを使用して同定した多数の他のポリペプチド型を一覧表にしている。そのようなポリペプチドは、エフェクタータンパク質を活性化させることができるGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、細胞内の二次メッセンジャーレベルの変化をもたらす。GPCRの活性は、そのような二次メッセンジャーの活性レベルを測定することによって測定可能である。細胞内における2つの重要かつ有用な二次メッセンジャーは、サイクリックAMP(cAMP)及びCa2+である。活性レベルは、ELISA又は放射性技術、若しくはCa2+と接触したときに蛍光あるいは発光シグナルを生じさせる基質を使用することによって直接的に、又はレポーター遺伝子解析によって間接的に、当業者に既知の方法で測定できる。典型的には、1以上の二次メッセンジャーの活性レベルを、二次メッセンジャーに応答性のプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子を用いて測定してよい。すでに知られたそのような目的で使用されるプロモーターは、細胞内のサイクリックAMPレベルに応答性であるサイクリックAMP応答性プロモーター、及び細胞内の細胞質性Ca2+レベルに感受性であるNF−AT応答性プロモーターである。レポーター遺伝子は一般的に、容易に検出可能な遺伝子産物を有する。レポーター遺伝子は、細胞へ安定的に感染又は一過的に形質移入させることができる。有用なレポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、強化型緑色蛍光タンパク質、不安定化色色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びβ−ガラクトシダーゼである。
【0059】
前記ポリペプチドを発現している細胞は、先に記載したように、天然に該ポリペプチドを発現している細胞であってよく、又は該細胞に形質移入をして該ポリペプチドを発現させてもよいことは理解されるべきである。
一実施態様において、本発明の方法は、前記細胞集団を前記ポリペプチドのアゴニストと接触させる工程をさらに含むことが好ましい。これは、特定の選択した細胞集団におけるポリペプチドの発現が、その活性の適切な検出に低すぎる場合の方法として有用である。アゴニストを使用することによって、前記ポリペプチドを誘発させてよく、前記化合物が該ポリペプチドを阻害する場合に、適切な読み出しが可能である。同様な考え方を、ECM分解の測定に適用する。好ましい実施態様において、本方法に使用する細胞は哺乳動物の滑膜性線維芽細胞であり、ECM分解活性を誘導するために使用してよい誘発物質は、関節炎の分野で関連するサイトカイン:例えば、TNFアルファ、ILベータ、IL6、OSM、IL17、IL15、IL18及びMIF1アルファである。別の好ましい実施態様において、前記誘発物質は、単球、マクロファージ、T細胞及びB細胞などの、関節炎の分野に関連するサイトカイン産生細胞を接触させることによって産生される因子の混合物である。サイトカイン産生細胞は、因子群の複雑かつ不偏的混合物を産生させることによる接触に応答する。また、使用するサイトカイン産生細胞がパンヌス内に見出される場合、この誘発に適用したサイトカインは、関節リウマチ患者の滑液中に見出され、最終的に産生された因子の混合物は、関節炎患者の関節に存在する因子群を含むであろう。
【0060】
本発明はさらに、細胞外マトリクス分解を阻害する化合物を同定する方法に関するものであり:
(a)化合物を、配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
(b)前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性を測定すること;
(c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞集団を、少なくとも10マイクロモラーの結合親和性を示す化合物と接触させること;及び、
(d)細胞外マトリクス分解を阻害する化合物を同定すること;
を含む。
【0061】
前記細胞集団を、例えば培地中での直接的インキュベーション、又は該細胞内への核酸の移入による異なる手段を介して、前記化合物又は化合物の混合物に曝露させてもよい。そのような移入を、例えば裸の単離DNA、又はRNAでの直接的形質移入、若しくは組換えベクターなどの送達系手段による様々な手段によって達成してよい。また、リポソーム又は他の脂質に基づくベクターなどの他の送達手段を使用してもよい。好ましくは、前記核酸化合物は、組換えウイルスなどの(組換え)ベクターの手段で送達する。
【0062】
ハイスループット用に、抗体フラグメントライブラリー、ペプチドファージライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)又は天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec社)などの化合物ライブラリーを使用してよい。
【0063】
好ましい薬剤候補化合物は、低分子量化合物である。低分子量化合物は、例えば500ダルトン以下の分子量を有し、生体システムにおける良好な吸収及び透過性を有するであろう化合物であり、結果的に500ダルトンよりも大きな分子量を有する化合物よりも、より成功的な薬剤候補でありそうな化合物である(Lipinskiらの論文. (1997))。ペプチドは、別の好ましい薬剤候補化合物のクラスを含む。ペプチドは優れた薬剤候補であり得、生殖ホルモン及び血小板凝集阻害剤などの商業的に価値の高い数々の例がある。天然化合物は、薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。そのような化合物を天然資源中に見出して抽出し、その後合成してよい。脂質は、別の好ましい薬剤候補化合物のクラスである。
【0064】
薬剤候補化合物の別の好ましいクラスは、抗体である。また、本発明は、ターゲットに対して指示された抗体を提供する。これらの抗体は、内因的に産生されて前記細胞内のターゲットに結合してもよく、又は前記組織に添加して該細胞外に存在するターゲットポリペプチドに結合してもよい。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよい。本発明は、FAbフラグメント及びFAb発現ライブラリーの製品、並びにFvフラグメント及びFv発現ライブラリーの製品に加え、キメラ抗体、一本鎖抗体及びヒト化抗体を含む。別の実施態様において、前記化合物は、天然型単一ドメイン抗体の最も小さな機能的フラグメントであるナノボディ(nanobody)(Cortez-Retamozoらの論文、2004)であってよい。
【0065】
特定の実施態様において、ポリクローナル抗体を本発明の実施に使用してよい。当業者はポリクローナル抗体の調製方法を知っている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物に、例えば免疫作用物質と、所望であればアジュバントの1回以上の注射することによって、抗体価を上げることができる。典型的には、該免疫作用物質及び/又はアジュバントを、複数回の皮下注射又は腹腔内注射によって、哺乳動物内に注入する。また、抗体を、そのままのターゲットタンパク質又はポリペプチド、フラグメント、若しくはコンジュゲート(conjugate)を含む誘導体、あるいは細胞膜に埋め込まれたターゲットなどのターゲットタンパク質又はポリペプチドの他の抗原決定基、若しくはファージディスプレイライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対して産生してよい。
【0066】
免疫した哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に前記免疫作用物質を連結させることは有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例は、これらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン及びダイズトリプシン阻害因子を含む。使用してよいアジュバントの例は、フロイント完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート(dicorynomycolate))を含む。当業者は過度の実験をせずに、免疫プロトコルを選択してよい。
【0067】
いくつかの実施態様において、前記抗体はモノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体は、当業者に既知の方法を使用して調製してよい。本発明のモノクローナル抗体は、該宿主が該抗体への免疫応答を開始することを妨げる「ヒト化」であってよい。「ヒト化抗体」は、相補性決定領域(CDR)並びに/若しくは非ヒト免疫グロブリンに由来する軽可変ドメイン構造及び/又は重可変ドメイン構造の他の部分であるが、該分子の残りの部分が1以上のヒト免疫グロブリン由来である抗体である。また、ヒト化抗体は、提供者又は受容者の非修飾軽鎖又はキメラ軽鎖に結合したヒト化重鎖によって特徴付けられる抗体を含み、その逆のものも含む。抗体のヒト化は、当業者に既知の方法で達成してよい(例えば、Mark及びPadlanの文献, (1994)、『実験薬理学ハンドブック(The Handbook of Experimental Pharmacology)』「4章 モノクローナル抗体のヒト化」、113巻、Springer-Verlag, New Yorkを参照されたい)。遺伝子導入動物を使用してヒト化抗体を発現させてもよい。
【0068】
また、ヒト化抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom及びWinterの論文, (1991) J. Mol. Biol. 227:381 8;Marksらの論文 (1991). J. Mol. Biol. 222:581-97)を含む、当業者に既知の様々な技術を使用して産生することもできる。Coleらの論文、及びBoernerらの論文の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleらの文献,(1985) 『モノクローナル抗体及びがん治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)』, Alan R. Liss, 77頁;Boernerらの論文 (1991). J. Immunol, 147(1):86-95)。
【0069】
一本鎖抗体の産生用の当業者に既知の技術を適用して、本発明のターゲットポリペプチド及びタンパク質に対する一本鎖抗体を産生することができる。該抗体は、一価抗体であってよい。一価抗体の調製方法は、当業者に周知である。例えば、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む方法である。一般的には、重鎖の架橋を防ぐために、Fc領域の任意の点で該重鎖を切断する。あるいは、関連するシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換する、又は架橋を防ぐために削除する。
【0070】
二重特異性抗体はモノクローナル抗体であり、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体であり、少なくとも2つの異なる抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又は受容体若しくは受容体サブユニットに対する結合特異性を有する抗体である。本事例において、一方の結合特異性はターゲットの1ドメインであるが、もう一方の結合特異性はターゲットの同一又は異なる別のドメインである。
【0071】
二重特異性抗体の作成方法は、当業者に既知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産物は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づいており、該2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの論文, (1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為的組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合体を産生し、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー段階は通常、正しい分子の精製を達成させる。同様な手順は、Trauneekerらの論文 (1991) EMBO J. 10:3655-9に記載される。
【0072】
別の好ましい実施態様に従って、本アッセイ方法は、ターゲットに対する結合親和性を有するものとして同定された薬剤候補化合物、及び/又は1以上のターゲットに対するアンタゴニスト活性などの下方制御活性を有するものとしてすでに同定された薬剤候補化合物を使用する。
本発明はさらに細胞外マトリクス分解を阻害する方法に関連し、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約30個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチド配列を含む、発現阻害剤と哺乳動物細胞を接触させることを含む。
【0073】
本発明の別の態様は、細胞外マトリクス分解の阻害方法に関連し、哺乳動物細胞内における、ターゲットポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドの翻訳を阻害する発現阻害剤に、哺乳動物細胞を接触させることを含む。特定の実施態様は、ターゲットmRNAと発現阻害剤を対合させ、それによってターゲットポリペプチドの発現を下方制御又は阻害するのに機能する、少なくとも1つのアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含む組成物に関するものである。好ましくは該阻害剤はアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、前記阻害剤は、配列番号:1〜16からなる群から選択される天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該配列から人為的に加工した核酸配列を含む。
【0074】
本発明の特別な実施態様は、前記発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:1〜16をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(siRNA、好ましくはshRNA;該siRNA、好ましくは該shRNAが、ターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するような、siRNA、好ましくはshRNA)からなる群から選択される方法に関するものである。
【0075】
本発明の別の実施態様は、前記発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:1〜16をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(該siRNA、好ましくはshRNAがターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するような、siRNA、好ましくはshRNA)を発現する核酸である方法に関するものである。好ましくは、該発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又はsiRNA、好ましくはshRNAであり、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約30個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチドを含む。より好ましくは、該発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又はsiRNA、好ましくはshRNAであり、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約25個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチドを含む。特別な実施態様は、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を補完するポリリボヌクレオチド配列を含む。
【0076】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現の下方制御は、翻訳レベル又は転写レベルで達成することができる。好ましくは、本発明のアンチセンス核酸は、具体的には、ターゲットポリペプチドをコードする核酸又は対応するメッセンジャーRNAの全体若しくは一部にハイブリダイズすることができる核酸フラグメントである。さらに、その一次転写産物のスプライシングを阻害することによって、ターゲットポリペプチドをコードし得る核酸配列の発現を減少させるアンチセンス核酸を設計してよい。ターゲットをコードする核酸の発現を下方制御する又は阻害し得る、任意の長さのアンチセンス配列が、本発明の実施に適する。好ましくは、該アンチセンス配列は、少なくとも約17個のヌクレオチドである。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードするDNAの調製及び使用、並びにオリゴ及び遺伝的アンチセンスの使用は、当業者に既知である。
【0077】
発現阻害剤の一実施態様は、配列番号:1〜16を含む核酸に対するアンチセンスである核酸であり、例えばアンチセンス核酸(例えば、DNA)をインビトロで細胞に導入するか、又は遺伝子治療としてインビボで対象に投与して、配列番号:1〜16を含む核酸の細胞性発現を阻害してもよい。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約17個〜約100個のヌクレオチドを含む配列、及びより好ましくは約18個〜約30個のヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンス核酸は、反対方向に発現する、配列番号:1〜16の配列から選択される、約17個〜約30個の連続するヌクレオチドから調製してよい。
【0078】
アンチセンス核酸は好ましくはオリゴヌクレオチドであり、完全にデオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、又は両方のいくつかの組み合わせから構成してよい。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであり得る。該オリゴヌクレオチドは、所望であれば、安定性及び/又は選択性を向上させるために化学的に修飾してよい。オリゴヌクレオチドは細胞内ヌクレアーゼによる分解に影響を受けやすいので、該修飾は例えば、ホスホジエステル結合の遊離酸素を置換する硫黄基の使用を含み得る。この修飾は、ホスホロチオエート結合とよばれる。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性、ポリアニオン性、かつ内因性ヌクレアーゼに抵抗性である。さらに、ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがそのターゲット部位にハイブリダイズすると、該RNA−DNA二重鎖は該ハイブリッド分子のmRNA構成要素を切断する内因性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化させる。
【0079】
さらに、ホスホラミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に非常に抵抗性であるべきである。さらに、化学基を、糖部分の2'炭素と、ピリミジンの5位炭素(C−5)に付加し、安定性を高め、そのターゲット部位へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合を促進させることができる。修飾は、当業者に既知の他の修飾に加えて、2'-デオキシ、O−ペントキシ、O−プロポキシ、O−メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオエート、修飾塩基を含み得る。
【0080】
ターゲットのレベルを減少させる発現阻害剤の別の型はリボザイムである。リボザイムは、触媒ドメインと基質結合ドメインを別々に有する触媒RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性、また場合によっては非水素結合による相互作用によって、そのターゲット配列と結合する。触媒部分は、特定部位でターゲットRNAを切断する。リボザイムの基質ドメインを人為的に加工して、それを特定のmRNA配列へと指示させることができる。リボザイムは、相補的塩基対を介して、ターゲットmRNAを認識し、それから結合する。いったん正しいターゲット部位へと結合すると、リボザイムは酵素的に作用してターゲットmRNAを切る。リボザイムによるmRNAの切断は、対応するポリペプチドの合成を指示するそのmRNAの能力を破壊する。一度リボザイムがそのターゲット配列を切断すると、リボザイムは放出され、繰り返し他のmRNAに結合して切断することができる。
【0081】
リボザイムの形態は、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ肝炎ウイルスモチーフ、グループIイントロンモチーフ又はRNaseP RNAモチーフ(RNAガイド配列との関連で)、若しくはアカパンカビVS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド構造又はヘアピン構造を有するリボザイムは、細胞内で真核生物プロモーターから発現可能(Chenらの論文,(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)であるので、容易に調製される。本発明のリボザイムは、真核生物細胞内で、適切なDNAベクターから発現可能である。所望であれば、該リボザイム活性を、第二リボザイムによる一次転写産物からのその放出によって増強させてよい(Venturaらの論文,(1993) Nucleic Acids Res. 21:3249-55)。
【0082】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後にターゲットmRNAにハイブリダイズする配列に隣接するリボザイムの触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と結合させることによって、化学的に合成してよい。該オリゴデオキシリボヌクレオチドを、プライマーとして基質結合配列を使用することによって増幅させる。該増幅産物を真核生物性の発現ベクターにクローン化する。
【0083】
リボザイムは、DNA、RNA又はウイルスベクターに挿入した転写単位から発現する。リボザイム配列の転写は、真核生物性RNAポリメラーゼI(pol (I)、RNAポリメラーゼ II (pol II)、又はRNAポリメラーゼ III (pol III)のプロモーターから駆動される。pol IIプロモーター又はpol IIIプロモーターからの転写産物は、全細胞において高レベルで発現するであろう。所与の細胞型での所与のpol IIプロモーターのレベルは、近傍の遺伝子制御配列に依存するであろう。原核生物性RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞内で発現する場合、原核生物性RNAポリメラーゼプロモーターも使用する(Gao及びHuangの論文, (1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモーターから発現したリボザイムが哺乳動物細胞内で機能し得ることは示されている(Kashani-Sabetらの論文,(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0084】
特に好ましい阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA、好ましくはスモールヘアピン(small hairpin)RNA「shRNA」)である。siRNA、好ましくはshRNAは、抑制されたRNAに相同な配列である二本鎖RNA(dsRNA)による遺伝子抑制の転写後過程を媒介する。本発明に従ったsiRNAは、配列番号:1〜16、好ましくは配列番号:128〜141及び231〜244に記載される配列からなる群から選択される、連続した17個〜25個のヌクレオチド配列に相補的又は相同な17個〜25個のヌクレオチドからなるセンス鎖、及び該センス鎖に相補的な17個〜25個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖を含む。最も好ましいsiRNAはセンス鎖とアンチセンス鎖を含み、これらは互いに、及びターゲットポリヌクレオチド配列に100パーセント相補的である。好ましくは該siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を連結させるループ領域を含む。
【0085】
本発明に従った自己相補的一本鎖shRNA分子ポリヌクレオチドは、ループ領域リンカーによって連結されたセンス部分及びアンチセンス部分を含む。好ましくは、該ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長であり、より好ましくは5〜15ヌクレオチド長であり、最も好ましくは8ヌクレオチド長である。最も好ましい実施態様において、該リンカー配列は、UUGCUAUA (配列番号:871)又はGUUUGCUAUAAC (配列番号:872)である。自己相補的一本鎖siRNAはヘアピンループを形成し、普通のdsRNAよりもより安定である。さらに、それらはベクターからより容易に産生される。
【0086】
アンチセンスRNAと同様に、siRNAを修飾して核酸分解に対する抵抗性を確認、又は活性を増幅、若しくは細胞分布を促進、あるいは細胞の取り込みを増進させることができ、そのような修飾は、修飾されたヌクレオシド内結合、修飾核酸塩基、修飾糖、及び/又は1以上の部分又はコンジュゲートへの該siRNAの化学的結合から構成してもよい。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNA設計則(これらの法則の議論及びsiRNAの調製例として、引用により本明細書に組み込まれる2004年11月4日に公開されたW02004094636、及びUA20030198627)に適合しないヌクレオチド配列に比較したターゲット配列の改良的減縮を与えるsiRNA設計則に従って選択する。
【0087】
また、本発明は細胞外マトリクス分解を阻害し得るポリヌクレオチドを発現し得るDNA発現ベクター、及び発現阻害剤として先に記載した、組成物、並びに前記組成物の使用方法に関するものである。
これらの組成物及び方法の特別の態様は、ターゲットポリペプチドと選択的に相互作用し得る細胞内結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの誘導発現による、該ターゲットポリペプチドの発現の下方制御又は阻害に関するものである。細胞内結合タンパク質は、細胞内で、発現して前記ポリペプチドの機能を中和するポリペプチドと選択的に相互作用又は結合し得る全てのタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は中和抗体、又は配列番号:17〜32のターゲットポリペプチドの抗原決定基、好ましくは配列番号:33〜127のドメインに結合親和性を有する中和抗体のフラグメントである。より好ましくは、該結合タンパク質は一本鎖抗体である。
【0088】
この組成物の特別な実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:17〜32をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、及び配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(siRNA;該siRNAが、ターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するようなsiRNA)からなる群から選択される発現阻害剤を含む。
【0089】
該発現阻害剤を発現するポリヌクレオチドは、好ましくはベクター内に含まれる。該ポリ核酸を、前記核酸配列を発現させ得るシグナルに機能的に連結させ、好ましくは、いったん該細胞内に導入するとアンチセンス核酸を発現する組換えベクター構築物を利用する細胞内に導入する。アデノウイルスベクター系、レトロウイルスベクター系、アデノ随伴ウイルスベクター系、レンチウイルスベクター系、単純ヘルペスウイルスベクター系又はセンダイウイルスベクター系を含む、様々なウイルスに基づく系が利用可能であり、これらの全てを使用して、ターゲット細胞内における発現阻害剤のポリヌクレオチド配列を導入し、発現させてよい。
【0090】
好ましくは、本発明の方法に使用するウイルスベクターは複製欠損型である。通常、そのような複製欠損型ベクターは、該感染細胞における該ウイルスの複製に必要な、少なくとも1領域を包む。これらの領域は、任意の当業者に既知の技術で(全体的に、又は部分的に)削除するか、又は付加することで非機能的にすることができる。これらの技術は、全体削除、置換、(複製に)必須な領域に対する1個以上の塩基の部分的削除又は部分的付加を含む。そのような技術は、遺伝子操作技術を使用して、又は突然変異誘発物質で処理することによって、インビトロ(単離DNA上で)又はインサイチュウで実施してよい。好ましくは該複製欠損型ウイルスは、該ウイルス粒子のキャプシド化に必要なゲノム配列を保持する。
【0091】
好ましい実施態様において、ウイルス性成分はアデノウイルス由来である。好ましくは、媒体は、アデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体内に梱包されたアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よく知られている。アデノウイルスベクター用の多くのツールが開発され続けており、それゆえアデノウイルスキャプシドを、本発明のライブラリーにおける組み込みに好ましい媒体とさせている。アデノウイルスは、種々の細胞に感染し得る。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、異なる細胞優先傾向を有する。本発明のアデノウイルスキャプシドが、好ましい実施態様において入り得るターゲット細胞集団を組み合わせ、拡張することは、該媒体が、少なくとも2種のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、引用によって本明細書に組み込まれる米国公開特許出願第20030180258号及び第20040071660号に開示される。
【0092】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を都合に合わせて使用して、特定細胞へ該媒体をターゲット化させてよく、又は該細胞への該媒体の強化した送達を誘導してもよい。好ましくはアデノウイルス由来の核酸は、本質的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、完全なアデノウイルスキャプシド又はその機能的部分、類似体及び/又は誘導体の形成を可能にさせる。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスE2A又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞内で、アデノウイルス由来の核酸の複製を少なくとも部分的には促進させる、少なくとも1つのE4領域タンパク質又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。本出願の実施例に使用するアデノウイルスベクターは、本方法の処理発明に有用なベクターの典型である。
【0093】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクター系である。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、それらの構築は当業者に既知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)及びフレンドウイルスなどの、異なる型のレトロウイルスから構築できる。レンチウイルスベクター系もまた、本発明の実施に使用してよい。レトロウイルス系及びヘルペスウイルス系は、神経細胞の形質移入の好ましい媒体であり得る。
【0094】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が利用できる。AAVウイルスは、感染細胞のゲノム内に、安定的かつ部位特異的様式で組み込まれる、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。AAVは、細胞増殖、細胞形態又は細胞分化にいかなる影響をも与えずに幅広い範囲の細胞に感染することができ、かつヒトの病理的状態には関与していないようである。
ベクター構築において、本発明のポリリボヌクレオチド作用物質を、1以上の制御領域に連結させてよい。適切な制御領域(群)の選択は、一般的な当業者のレベルの範囲内で日常的事項である。制御領域はプロモーターを含み、エンハンサー、サプレッサーなどを含んでよい。
【0095】
本発明の発現ベクターに使用してよいプロモーターは、構成的プロモーター及び制御型(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主次第で、原核生物性又は真核生物性であってよい。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なプロモーターは、lacプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、ラムダP.sub.rプロモーター、P.sub.1プロモーター、及びtrpプロモーターである。真核生物(ウイルスを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なプロモーターは、遍在性プロモーター(例えば、HPRT、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異性を示し、かつ遺伝子導入動物で使用されてきた動物性転写制御領域を含む組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞内のアクチンプロモーター、又は内皮細胞において活性なFltプロモーター及びFlkプロモーター):膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの論文,(1984)Cell 38:639-46;Ornitzらの論文、(1986)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの論文,(1987)Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの論文,(1985)Nature 315:115-22)、リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの論文、(1984)Cell 38:647-58;Adamesらの論文、(1985)Nature 318:533-8;Alexanderらの論文、(1987)Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳腺、リンパ球、及び肥満細胞において活性なマウス乳ガンウイルス制御領域(Lederらの論文,(1986)Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの論文,(1987)Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの論文,(1985)Mol. Cell. Biol.,5:1639-48;Hammerらの論文,(1987)Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの論文,(1987)Genes and Devel.、1:161-71)、骨髄性細胞において活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramらの論文,(1985)Nature 315:338-40;Kolliasらの論文,(1986)Cell 46:89-94)、脳内の乏突起膠細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの論文,(1987)Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Saniの論文,(1985)Nature 314.283-6)、及び視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの論文,(1986)Science 234:1372-8)である。
【0096】
本発明の実施に使用してよい他のプロモーターは、分裂細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激に応答するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン制御型転写モジュレーター、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV−40プロモーター、E1aプロモーター、及びMLPプロモーターを含む。
【0097】
追加的なベクター系は、患者へのポリヌクレオチド作用物質の導入を促進する非ウイルス性システムを含み、例えば、リポフェクションによって、所望の配列をコードするDNAベクターをインビボで導入することができる。リポソーム介在性形質移入が直面する困難を制限するために設計した合成陽イオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のインビボ形質移入用リポソームを調製できる(Felgner,らの論文,(1987)Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの論文,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの論文,(1993)Science 259:1745-8を参照されたい)。陽イオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸の封入を促進し、かつ負に荷電した細胞膜との融合を促進し得る(Felgner及びRingoldの論文,(1989)Nature 337:387-8)。核酸の輸送に特に有用な脂質化合物及び脂質組成物が、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823、並びに米国特許第5,459,127号に記載されている。インビボで、特定の器官に外因性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、確かな実用上の利点を有し、かつ、特定の細胞型への形質移入を指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓及び脳などの、細胞の不均質性を有する組織に特に都合がよい。標的化の目的で、脂質を他の分子と化学的に共役させてよい。例えば、ホルモン又は神経伝達物質のような標的化ペプチド、及び、例えば抗体のようなタンパク質、又は非ペプチド分子を、化学的にリポソームに共役させることができる。また、他の分子、例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際特許公報WO 96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO 95/21931)は、インビボでの核酸の形質移入を促進させるのに有用である。
【0098】
また、裸プラスミドとして、インビボでDNAベクターを導入することが可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号を参照されたい)。治療目的用の裸DNAベクターは、当業者に既知の方法、例えば形質移入、電子穿孔法、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞内に導入できる(例えば、Wilsonらの論文,(1992)J. Biol. Chem. 267:963-7;Wu及びWuの論文,(1988)J. Biol. Chem. 263:14621-4;Hartmutらの論文、1990年3月15日に出願されたカナダ特許出願第2,012,311号;Williamsらの論文(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい)。また、受容体介在性DNA送達アプローチも使用できる(Curielらの論文、(1992)Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの論文,(1987)J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0099】
また、本発明は、ターゲット阻害剤として同定した1以上の化合物の有効量、及び/又は先に記載したような発現阻害剤を含む、生体適合性の細胞外マトリクス分解阻害組成物を提供する。
生体適合性組成物は、固体、液体、ゲル又は他の形態であってよい組成物であり、本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター及び抗体を活性形態、例えば生物活性に影響し得る形態で維持する。例えば、本発明の化合物は、ターゲットの逆アゴニスト活性又はアンタゴニスト活性を有するであろうし;核酸は複製、伝達内容を翻訳、又はターゲットの相補的mRNAにハイブリダイズすることができるであろうし;ベクターはターゲット細胞に形質移入させ、先に記載したようなアンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現させることができるであろうし;抗体は、ターゲットポリペプチドドメインに結合するであろう。
【0100】
好ましい生体適合性組成物は、例えば、塩イオンを含むトリス緩衝液、塩イオンを含むリン酸緩衝液、又は塩イオンを含むHEPES緩衝液を使用して緩衝化された水溶液である。通常、塩イオン濃度は、生理的レベルと同等である。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含んでよい。より好ましい実施態様において、生体適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所、経口経路、非経口経路、鼻腔内経路、皮下経路、及び眼球内経路による投与用に製剤可能である。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、又は注入技術を含むものを意味する。該組成物を、所望の標準的で周知で非毒性の生理的に許容し得る担体、アジュバント及び媒体を含む用量単位製剤で、非経口的に投与してよい。
【0101】
本組成物発明の特に好ましい実施態様は、医薬として許容し得る担体との混合物で、先に記載したような治療的有効量の発現阻害剤を含む、細胞外マトリクス分解阻害組成物である。別の好ましい実施態様は、ECM分解が関与する状態、又は該状態に対する感受性の治療又は予防用医薬組成物であって、効果的に細胞外マトリクス分解を阻害する量のターゲットアンタゴニスト又は逆アゴニスト、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、若しくは医薬として許容し得る担体との混合物中のそのプロドラッグを含む。
【0102】
経口投与用医薬組成物は、経口投与に適した用量で、当業者に周知の医薬として許容し得る担体を使用して製剤することができる。そのような担体は、該医薬組成物が、患者による経口摂取用に、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することを可能にする。経口使用用医薬組成物は、所望であれば、錠剤核又は糖衣錠核を得るために適切な助剤を添加した後、活性化合物と固形賦形剤を混合し、選択的にできた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工しることによって調製できる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの、炭水化物充填剤若しくはタンパク質充填剤;トウモロコシ、コムギ、イネ、イモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、又はカルボキシメチル−セルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むゴム;及び、ゼラチン並びにコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、架橋結合したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。糖衣錠核を、濃縮糖溶液などの適切な被覆剤と合わせて使用してもよく、また糖衣錠核は、アラビアゴム、滑石、ポリビニル−ピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒混合物又は有機溶媒混合物を含んでよい。染料又は色素を、製品の識別のため、若しくは活性化合物の量、すなわち用量を明らかにするために、錠剤被覆剤又は糖衣錠被覆剤に添加してもよい。
【0103】
経口的に使用可能な医薬製剤は、ゼラチンから作られる軟らかい密封カプセルに加えて、ゼラチンから作られた押し込み型カプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどの被覆剤を含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤若しくは結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び、選択的に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟らかいカプセル内で、活性化合物を、安定剤と共に、又は安定剤を含まずに、脂肪油、液体、若しくは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁してよい。
【0104】
好ましい滅菌注射製剤は、非毒性の、非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液若しくは懸濁液であり得る。医薬として許容し得る担体の例は、生理食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム、又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又はそれらのような塩の混合物)、リンガー溶液、ブドウ糖、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせであり、1,3−ブタンジオール及び滅菌固定油を、溶媒又は懸濁溶剤として都合に合わせて使用する。モノ−グリセリド、又はジ−グリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸も注射製剤での使用が見出される。
【0105】
また、組成物媒質は、薬剤吸収スポンジとして機能し得る親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの、任意の生体適合性又は非細胞毒性のホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製されるハイドロゲルであり得る。特に、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンから得られたような特定のハイドロゲルは市販されている。例えば、外科的介入の間、ハイドロゲルを、治療組織表面上に直接的に付着させることができる。
【0106】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明のポリヌクレオチド阻害剤をコードする複製欠損型組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどの形質移入賦活剤を含む。ポロクサマーの例は、市販のポロクサマー407(BASF社、Parsippany、N.J.)、及び非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸させたポロクサマーを、例えば、外科的介入の間、治療組織の表面上に、直接的に付着させてもよい。ポロクサマーは、より低い粘度を有しているが、ハイドロゲルと実質的に同じ利点を有する。
【0107】
また、活性発現阻害剤を、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンで、例えば界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル内のそれぞれに封入してよい。そのような手法は、『レミングトンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)』(1980)第16版、Osol, A.編に記載されている。
【0108】
持続放出製剤を調製してよい。持続放出製剤の適切な例は、マトリクスが例えば薄膜又はマイクロカプセルのような造形品の形態中に前記抗体を含む、固体の疎水性重合体の半透性マトリクスを含む。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル樹脂)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる、注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル、及び乳酸−グリコール酸などの重合体は、100日間以上にわたる分子の放出が可能であるが、特定のハイドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に存在する場合、抗体は37℃での水分への曝露の結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の損失、及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。関与する機構によって、安定化のために合理的な戦略を工夫してよい。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、含水率を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特定の重合体マトリクス組成物を開発することによって達成してよい。
【0109】
先に記載したように、治療的有効量は、前記症状又は前記状態を緩和させる、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストの量を意味する。そのような化合物の治療効果及び毒性は、培養細胞又は実験動物での標準的な薬学的手法、例えばED50(集団の50%に治療効果のある用量)、及びLD50(集団の50%に対する致死用量)によって決定できる。治療効果に対する毒性の用量比が治療指数であり、これは比率、LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。培養細胞アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用の用量範囲を策定することに使用する。そのような化合物の用量は血中濃度の範囲内にあるのが好ましく、毒性がほとんど若しくは全くないED50を含む。該用量は、実施する投薬形態、患者の感受性、及び投与経路次第で、この範囲内で変化する。
【0110】
任意の化合物に関して、治療的有効量を、培養細胞アッセイ、又は動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、若しくはブタのいずれかで、はじめに見積もることができる。また、所望の濃度範囲及び投与経路を達成するために、動物モデルを使用する。それから、そのような情報を使用して、ヒトでの投与に有用な用量及び経路を決定することができる。的確な用量は、治療患者を考慮して、それぞれの医師によって選択される。用量及び投与を調整して十分なレベルの活性部分を提供する、又は所望の効果を維持させる。考慮されてよい付加的因子は、患者の病状の重篤度、年齢、体重、及び性別;食事、所望の治療の持続時間、投与方法、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応性を含む。特定の製剤の半減期及びクリアランス速度次第で、長時間作用性医薬組成物を、3〜4日毎、毎週、又は2週毎に1回投与してもよい。
【0111】
本発明に従った医薬組成物を、様々な方法で対象に投与してよい。 医薬組成物を、陽イオン性脂質と複合体を形成させ、リポソーム内に封入して標的組織に直接的に付加してよく、又は当業者に既知の他の方法で標的細胞へと送達してもよい。所望の組織への局所的投与を、直接注入、経皮吸収、カテーテル、輸液ポンプ、又はステントで実施してよい。DNA、DNA/媒体複合体、又は組換えウイルス粒子を、治療部位に局所的に投与する。送達の選択的経路は、これらに限定されないが、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤形態、又は丸薬形態)、局所送達、全身送達、眼球送達、腹腔内送達、及び/又はくも膜下腔送達を含む。リボザイムの送達及び投与の実施例が、Sullivanらの文献WO 94/02595で提供されている。
【0112】
本発明に従った抗体を、ボーラスのみ、時間をかける注入、又はボーラス及び時間をかける注入の投与の両方で送達してよい。当業者は、異なるタンパク質用製剤よりも、異なるポリヌクレオチド用製剤を利用する可能性がある。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置に特異的である。
本明細書において先に論じたように、組換えウイルスを使用して、本発明で有用なポリヌクレオチド作用物質をコードするDNAを導入してよい。本発明に従った組換えウイルスは一般的に、約104〜約1014pfuの用量形態で製剤及び投与する。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量を使用するのが好ましい。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ウイルス粒子懸濁液の感染力に対応し、適切な培養細胞へ感染させ、形成されたプラークの数を測定することで決定する。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための手法は、先行技術中に詳細に説明されている。
【0113】
また、本発明は、細胞外マトリクス分解が関与する病態を患う対象に、本明細書に記載するような細胞外マトリクス分解を阻害する医薬組成物、好ましくは治療的有効量の本発明の発現阻害剤を投与することを含む、細胞外マトリクス分解の阻害方法を提供する。細胞外マトリクス分解が関与する疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病などの筋骨疾患、ガン転移、呼吸器系疾患(COPD、喘息)、腎臓繊維症及び肝臓繊維症、アテローム性動脈硬化症及び心不全などの心血管系疾患、並びに神経の炎症及び多発性硬化症などの神経系疾患を含む。本発明に従った治療により好ましい疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎などの変形性関節疾患である。本方法に従う治療の最も好ましい変形性関節疾患は、関節リウマチである。また、本発明は、炎症性疾患の治療方法を提供する。
【0114】
前記患者への本発明の発現阻害剤の投与は自己投与、及び他人による投与の両方を含む。該患者は、現在の疾患又は病状の治療を必要としていてもよく、又は骨代謝の障害に冒される疾患及び病状の危険性を阻止又は減少させるための予防的治療を望んでいてもよい。対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放性製剤を介して、本発明の発現阻害剤を送達してよい。
【0115】
本方法の好ましい投与計画は、前記患者における異常なレベルの細胞外マトリクス分解を減少させる、及び好ましくは前記変性の原因である自己永続的過程を終結させるのに十分な時間、本発明の発現阻害剤の効果的阻害量を、炎症によって特徴付けられる病態を患っている対象に投与することを含む。本方法の特別な実施態様は、前記患者の関節におけるコラーゲン分解及び骨変性をそれぞれ低減又は阻止する、及び好ましくは前記変性の原因である自己永続的過程を終結させるのに十分な時間、マトリクスメタロプロテアーゼを阻害する量の本発明の発現阻害剤を、関節リウマチの進行を患っている対象、若しくは該進行に感受性の対象に投与することを含む。
【0116】
また、本発明は、先に記載したような、細胞外マトリクス分解が関与する疾患の治療用薬剤又は予防用薬剤の調製用作用物質の使用に関するものである。好ましくは、該病理的状態は関節炎である。より好ましくは、該病理状態は関節リウマチである。
先に記載したような本発明の実施に有用なポリペプチド又はポリヌクレオチドを、溶液中で遊離、固相支持体に固定、細胞表面上に付着、又は細胞内に位置させてよい。本方法を実施するために、該アッセイの自動化を適合させるのに加えて、ターゲットポリペプチド又は前記化合物のどちらか一方を固定化して、該ポリペプチドの非複合体形態からの複合体の分離を促進させる。ターゲットポリペプチドと化合物との相互作用(例えば、結合の)は、反応物質を含む、任意の適切な容器内で達成できる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管を含む。一実施態様において、ポリペプチドをマトリクスに結合させることができるドメインを付加した融合タンパク質が提供可能である。例えば、ターゲットポリペプチドに「His」タグを付加し、その後にNi−NTAマイクロタイタープレート上に吸着させることができる、又はターゲットポリペプチドとのProtA融合体をIgGに吸着させることができ、それから該ポリペプチドを細胞溶解物(例えば、(35)S標識)及び候補化合物と混合し、該混合物を複合体系性に有利な条件下(例えば、生理的条件の塩及びpH)でインキュベートする。インキュベーションの後、該プレートを洗浄して結合していない全ての標識を除去してマトリクスを固定する。放射能の量は直接的に、又は該複合体の解離の後の上清で測定できる。あるいは、該複合体をマトリクスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、標準的な電気泳動技術を使用して、ゲルからターゲットタンパク質に結合しているタンパク質のレベルを定量することができる。
【0117】
マトリクス上にタンパク質を固定する他の手法もまた、化合物を同定する方法に使用可能である。例えば、ターゲット又は前記化合物のどちらかを、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用して固定することができる。本発明の、ビオチン化ターゲットタンパク質分子は、当業者に周知の技術を使用するビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)(例えば、ビオチン化キット(biotinylation kit)、Pierce Chemicals社、Rockford、Ill.)から調製することができ、ストレプトアビジンで被覆した96ウエルプレート(Pierce Chemical社)のウエル内に固定させることができる。あるいは、ターゲットと反応するが、前記化合物へのターゲットの結合には干渉しない抗体を、該プレートのウエルに誘導体化することができ、抗体結合によって、ターゲットをウエル内に補足することができる。先に記載したように、前記ターゲットが存在する該プレートのウエル内で、標識候補化合物の調合液をインキュベートし、ウエル内に補足された複合体の量を定量することができる。
【0118】
配列番号:1〜16のターゲットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定する。本発明者は本明細書で、これらの遺伝子を標的とするAd−siRNAを用いた哺乳動物細胞の形質移入が、細胞外マトリクス分解を促進させる因子の放出を減少させることを示す。
また、本発明は、ECM分解が関与する病理的状態の診断方法に関するものであり、対象のゲノムDNA内の、配列番号:1〜16の少なくとも1つの核酸配列を測定すること;該配列を、データベース及び/又は健常者から得た核酸配列と比較すること;及び、病理的状態の発現に関連するあらゆる差異を同定すること;を含む。
【0119】
さらに本発明の別の態様は、対象の細胞外マトリクス分解が関与する病理的状態、又は該状態への感受性を診断する方法に関するものであり、生体サンプル中の配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの量を測定すること;及び該量を、健常者におけるポリペプチド量と比較すること(ここで、健常者に比較したポリペプチド量の増加が、該病理的状態の存在の指標となる);を含む。
さらに、本発明を下記の図面及び実施例で説明する。
【実施例】
【0120】
並べられたアデノウイルスshRNA(スモールヘアピンRNA)発現ライブラリー(WO99/64582に記載される産物及び使用法)との組み合わせで使用する場合、下記アッセイは、滑膜性線維芽細胞(SF)の能力を調節してMMP1を産生させ、かつ軟骨の重要な構成要素であるコラーゲンを分解させる因子の発見に有用である。候補因子を、一次アッセイを介してはじめに選別し、次に二次アッセイで選別する。
【0121】
実施例1は、マトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP1)のタンパク質レベルの検出用ELISAを使用するアデノウイルスsiRNAライブラリーの一次アッセイスクリーニングの開発及び設定を記載し、「リバースMMP1アッセイ(reverse MMP1 assay)」として本明細書で言及する。実施例2は、該スクリーニング及びその結果を記載する。実施例3は、非特異的方法で、MMP1発現を阻害する任意の標的を取り除く選別を記載する。実施例4は、内因性SFの発現用標的の部分集合の試験を記載する。実施例5は、サイトカイン誘導性のMMP1発現の阻害用Ad−siRNAの部分集合を試験する用量反応実験を記載する。実施例6は、本明細書において、より機能的に配向し、かつSFの上清中のコラーゲン分解を検出する「コラーゲン分解アッセイ」に言及する第二アッセイを記載する。実施例7は、サイトカイン誘導性のIL−8発現の阻害用Ad−siRNAの部分集合の試験を記載する。
【0122】
(使用したコントロールウイルス):
これらの調査に使用するコントロールウイルスを、以下に一覧化する。dE1/dE2Aアデノウイルスを、以下に記載するアダプタープラスミドとWO99/64582に記載されるPER.E2Aパッケージング細胞内のヘルパープラスミドpWEAd5AflII-rITR.dE2Aとの共形質移入で作成する。
(A)ネガティブコントロールウイルス:
Ad5-LacZ:WO02/070744においてpIPspAdApt6-lacZとして記載される:
Ad5-ALPP:1.9kbの挿入断片をNsiIを用いた消化によってpGT65-PLAP(Invitrogen社)から単離し、平滑末端化し、続いてEcoR1で消化し、EcoRI及びHpaIで消化したpIPspAdApt6にクローン化する。
Ad5-eGFP:WO02/070744においてpIPspAdApt6-EGFPとして記載される。
Ad5-eGFP_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:245)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0123】
Ad5-ルシフェラーゼ_v13_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:246)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-DCK_v1_KD:標的配列ATGAAGAGCAAGGCATTCC (配列番号:247)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-PRKCL1_v1_KD:標的配列TGCCTGGGACCAGAGCTTC (配列番号:248)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-TNFSF15_v1_KD:標的配列GGAAGTAATTGGATCATGC (配列番号:249)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-M6PR_v1_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:250)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0124】
(B)ポジティブコントロールウイルス:
Ad5-MMP1:pIPspAdapt6プラスミドへとクローン化したMMP1をコードするcDNAを、古典的なフィルターコロニーハイブリダイゼーション法によって、ヒト胎盤cDNAライブラリー(WO02/070744を参照されたい)から単離する。ヒト胎盤cDNAライブラリーを細菌へと形質転換し、寒天プレート上にまく。(Q-pix装置(Q-pix device)(Genetix社)を使用して)数千個のコロニーを拾い、寒天プレート上に再配置する。細菌を成長させた後、これらのプレート上にハイブリダイゼーションフィルターを被せる。これらのフィルターに、MMP1特異的プローブを用いた古典的ハイブリダイゼーション手順を適用する。このプローブは、下記のプライマーを使用する胎盤cDNAライブラリーでのPCRから得る:
上流:GTTCTGGGGTGTGGTGTCTCACAGC (配列番号:873);及び、
下流:CAAACTGAGCCACATCAGGCACTCC (配列番号:874)。
ハイブリダイゼーション後のフィルター上の陽性シグナルスポットに対応する細菌コロニーを拾い、プラスミド調製に使用する。5'配列の検証は、該挿入断片の5'配列がNM_002421に対応することを裏付ける。
【0125】
Ad5-MMP13:MMP13のcDNAを、PCRによって、ヒト滑膜性線維芽細胞由来cDNA標本から単離する。1498bpのPCR産物を、HindIII/EcoRIクローニング法を使用して、pIPspAdapt6へとクローン化する。配列検証は、該挿入断片が、NM_002427の18bp〜1497bpに対応することを裏付ける。
Ad5-MYD88:このcDNAは、pIPspAdapt6で構築されたヒト胎盤cDNAライブラリーから単離する。MYD88の発現を媒介するウイルスは、Galapagos Genomics社で行ったゲノム選別の1つでヒットしたものとして同定する。該挿入断片配列の検証は、該挿入断片がNM_002468の40bp〜930bpに対応することを裏付する。
Ad5-MMP1_v10_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:251)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-PRKCE_v11_KD:標的配列GTCATGTTGGCAGAACTC (配列番号:252)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0126】
(実施例1):リバースMMP1アッセイの開発
MMP1を産生する滑膜性線維芽細胞(SF)の能力を最初に試験することによって、MMP1アッセイを開発する。
MMP1を産生するSFの能力を評価するにあたり、これらの細胞を、前炎症性IL1βシグナル伝達経路に関与するMYD88アダプター分子の発現を媒介する組換えアデノウイルスで感染させた。このウイルスは、これらの細胞におけるMMP1発現を増加させることが予期される(Vincenti及びBrinckerhoffの文献, 2002を参照されたい)。
【0127】
6ウエルプレートの1ウエルにつき40,000個のSFを、DMEM+10%FBS中に播種し、各々のウエルは、eGFP、MYD88又はMMP1(1細胞あたり7500個のウイルス粒子(vp/細胞)の感染多重度(MOI)で)の発現を媒介する組換えアデノウイルスで感染させる、若しくは非感染のまま(ブランク)である。はじめに、SFによるMMP1の発現を、リアルタイム定量PCRを用いて、mRNAレベルで測定する。コントロールウイルスで感染させた細胞のRNAは、メーカーの説明書に従いSV RNA単離キット(SV RNA isolation kit)(Promega社)を使用して、感染48時間後に調製する。cDNAは、マルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(50U/μl、Applied Biosystems社)及びランダム六量体を使用して、このRNAから調製する。cDNA合成を、1×TaqMan緩衝液A(PE Applied Biosystems社)、5mMのMgCl2、dNTP(各dNTPにつき終濃度500μM)、2.5mMのランダム六量体、0.4U/μlのRNase阻害剤、及び1.25U/μlのマルチスクライブ逆転写酵素からなる25μlの総容積で実施する。該混合物を、25℃で10分、48℃で30分及び95℃で5分間、インキュベートする。特定のDNA産物を、結果として生じるcDNAから、適切なプライマー対を使用する40回のPCRサイクルの間に、アンプリタック・ゴールド(AmpliTaq Gold)DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いて増幅させる。該特定のDNA産物の増幅は、ABI PRISM(登録商標)7000配列検出システム上でモニターする。次のリアルタイムPCR反応は、1×SYBRグリーンミックス(SYBR Green mix)(Applied Biosystems社)、300nMフォワードプライマー及び300nMリバースプライマーからなる25μlの総容積中に、5μlのRT反応生成物を含む。各サンプルを、2回反復で解析する。PCR反応を以下のプログラムを使用して実施する:95℃での10分間に続き、(95℃で15秒、60℃で1分)のサイクルを40サイクル。各PCR反応の後、該産物を95℃で15秒間及び60℃で15秒間インキュベートし、続いて20分かけて95℃に温度を上昇させ、最後は95℃の15秒間で終結させる。MMP1の検出に使用したプライマー対の配列を、表3に一覧化する。
【0128】
【表3】
【0129】
PCR反応用の内部較正物質として使用される18S rRNAのレベルを、市販のプライマー対、及びTaqmanプローブ(TaqMan(登録商標)リボソームRNAコントロール試薬(TaqMan Ribosomal RNA Control Reagents)、Applied Biosystems社)を使用して測定するSYBRグリーン法を使用して、MMP1を検出する。増幅プロット、及び生じる閾値Ct値は、該サンプル中に存在する特定のmRNA量の指標である。デルタ−デルタCt値が存在し、これはAd5−eGFP感染コントロールサンプルにおける発現レベルと比較して、ポジティブコントロールウイルスで感染させたサンプルにおけるMMP1 mRNAの標準化した(18S較正物質と比較した)レベルを意味する。結果は、非感染SF、又はAd5−eGFP感染SFと比較して、MYD88を発現するSFで、MMP1 mRNAレベルの強い上方制御を示す(図2、パネルA)。
【0130】
また、SFによって発現されたMMP1のレベルを、ウエスタンブロッティングによって、タンパク質レベルでも測定する。感染2日後に、リアルタイムPCR実験用に示した様々な組換えアデノウイルスを用いて感染させた細胞の上清を回収し、古典的なTCA沈殿によって15倍に濃縮する。上清の15μlを、10%ポリアクリルアミドゲルを使用するSDS−PAGEで分離する。これらの実験用に使用する培地は、M199培地+1%FBSである。MMP1コントロールサンプル用に、Ad5−MMP1で感染させた非濃縮細胞上清をゲル上で泳動する。該分離タンパク質を、ニトロセルロース膜上に転写する。該転写の質、及び該サンプルの等しい泳動を、該膜のポンソー−S(Ponceau−S)染色で検証する。一次抗体としてヤギ抗MMP1ポリクローナル抗体(R&D Systems社、1/500希釈)、及び二次抗体としてHRP結合ウサギ抗ヤギ抗体(DAKO社、1/10000希釈)、並びにECLプラスHRP基質(Amersham Biosciences社)を使用して、免疫検出を実施する。ウエスタンブロッティングは、Ad5−eGFP感染細胞と比較して、Ad5−MYD88の発現を媒介するアデノウイルスを用いて感染させたSFの上清中のMMP1タンパク質レベルの強い増加を示す。非常に強いシグナルが、Ad5−MMP1感染細胞の上清で検出される(図2、パネルB)。
【0131】
Ad5−MYD88感染SFの上清に存在する高レベルのMMP1タンパク質を、市販のMMP1活性ELISA(RPN2629、Amersham Biosciences社)を用いて確認する。このELISAでは、MMP1はウエルに固定化された抗体によって捕捉され、該量をその後、MMP1基質の変換に基づいて定量化する。製造業者によって推奨されるように、(ウエスタンブロッティング実験で示したように調製した)50μlのSFの非濃縮上清を、このELISAで処理する(図2、パネルC)。
【0132】
これらの実験は、一般的なSFの能力、並びにスクリーニング及び検証実験、特に炎症経路の誘起後のMMP1タンパク質産生に使用する細胞処理単位をを確認する。
MMP1の測定用384ウエルフォーマットELISAを開発する。様々なELISAプロトコルと同様、様々な一次抗体を試験する。下記のプロトコルを開発して検証し、384ウエルプレート内のSFの上清中のMMP1レベルを測定する:白色ルミトラック(Lumitrac)600の384ウエルプレート(Greiner社)を、2μg/mlの抗MMP1抗体MAB1346(Chemicon社)で被覆する。抗体を、緩衝液40(1LのミリQ(milliQ)水中に、1.21gのトリス塩基(Sigma社)、0.58gのNaCl(Calbiochem社)及び5mlの10%NaN3(Sigma社)、pH8.5に調整)で希釈する。4℃で一晩インキュベーションの後、プレートをPBS(10LのmilliQ中に80gのNaCl、2gのKCl(Sigma社)、11.5gのNa2HPO4・7H2O及び2gのKH2PO4;pH7.4)で洗浄し、100μl/ウエルのカゼイン緩衝液(PBS中に2%カゼイン(VWR International社))でブロックする。翌日、ELISAプレートからカゼイン緩衝液を除去し、50μl/ウェルのEC緩衝液(1LのmilliQ中に4gのカゼイン、2.13gのNa2HPO4(Sigma社)、2gのウシアルブミン(Sigma社)、0.69gのNaH2PO4・H2O(Sigma社)、0.5gのCHAPS(Roche社)、23.3gのNaCl、4mlの0.5M EDTA pH8(Invitrogen社)、5mlの10%NaN3、pH7.0に調整)で置換する。0.25mMのDTT(Sigma社)を加え、サンプルプレートを解凍する。EC緩衝液の除去後、サンプルの20μlを該ELISAプレートへ移す。4℃で一晩のインキュベーション後、該プレートをPBSで2回、PBST(0.05%のTween20(Sigma社)を含有するPBS)で1回洗浄し、35μl/ウエルのビオチン化抗MMP1抗体溶液(R&D社)とインキュベートする。この二次抗体を、緩衝液C(2LのmilliQ中に0.82gのNaH2PO4・H2O、4.82gのNa2HPO4、46.6gのNaCl、20gのウシアルブミン及び4mlの0.5M EDTA pH8、pH7.0に調整)で、5μg/mlの濃度に希釈する。室温で2時間のインキュベーションの後、先に記載したように該プレートを洗浄し、50μl/ウエルのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート体(Biosource社)とインキュベートする。ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート体を、緩衝液Cで0.25μg/mlの濃度に希釈する。45分後、先に記載したように該プレートを洗浄し、50μl/ウエルのBM Chem ELISA基質(Roche社)と5分間インキュベートする。読み出しは、200ミリ秒の積算時間を有するルミノスキャン上昇照度計(Luminoscan Ascent Luminometer)(Labsystems社)、又はエンビジョンリーダー(Envision reader)(Perkin Elmer社)で実施する。
【0133】
開発したMMP1 ELISAで得られた典型的結果を図3に示す。この実験用に、3000個のSFを96ウエルプレートの内のDMEM+10%FBS中に播種する。24時間後、SFを、ALPP、MYD88、MMP1の発現を媒介するアデノウイルスを用いて10000MOIで感染させるか、又は非感染のままにする。感染翌日、該細胞の培地を、1%FBSを添加したM199培地(Invitrogen社)で置換する。48時間のインキュベーションの後、該上清を回収して384ウエルプレートへ移し、先に記載したMMP1 ELISA手法を実施する。前記シグナルの3.5倍を超える強い上方制御が観察される。この実験は、MMP1 ELISAの強さ及び特異性を示した。
【0134】
RAの分野に関連するサイトカイン(TNFα、IL1β及びOSM)又はそれらの組合せを用いて処理したSFによるMMP1発現の増加をモニターする。結果を、図4の白色バーとして示す。この実験用に、SFを96ウエルプレートに3000細胞/ウエルで播種する。24時間後に、該培地を、1%FBSを添加したM199培地に交換する。培地変更翌日、サイトカイン又はそれらの組合せを、各サイトカインの最終濃度が25ng/mlになるまで該培地に加える。図3に記載しているように、サイトカイン添加72時間後に、該上清を収集してELISAで処理する。図4の白色のバーで示すように、TNFαのみが、非処理細胞のほぼ3倍のMMP1発現の増加を誘導する。TNFα及びOSM及び/又はIL1βの組合せを用いたSFの誘起は、さらにより高いMMP1発現レベルをもたらす。この実験は、開発したMMP1 ELISAの感度が、RAの発病に関係するサイトカインによって誘導されるSFによるMMP1発現の増加を測定するのに十分であることを証明する。
【0135】
上記の実験と平行して、同じサイトカイン又はサイトカインの組み合わせを用いて、M199培地+1%FBS中で48時間処理したTHP1細胞の上清(M199+1%FBSで2倍希釈)を用いて、同じプロトコルを使用してSFを誘起させる。これらのサンプルのMMP1レベルを、図4に灰色バーで示す。TNFα処理THP1細胞の上清単独で、非処理のTHP1細胞上清のレベルに比較して、4.5倍を超えるMMP1発現を誘導する。該4.5倍の増加は、組換えTNFα単独を用いての3倍の誘導を超え、かつ3種の精製サイトカイン(TNFα、IL1b、OSM)の混合物によって得られるほぼ5倍の誘導に等しい。それゆえ、TNFα誘導THP1細胞の上清は、TNFαに加えて、SFのMMP1発現を活性化させる付加的な前炎症性因子を含む。このTNFαを主成分とする誘起物質混合物(THP−1細胞をTNFαと接触させることで調製される)は、おそらくRA患者の関節に存在する因子群を含み、それゆえRAに関連性を有する。さらに、このTNFαに基づく複雑な誘発は、「TNFαを主成分とする誘起物質」として言及し、「リバースMMP1アッセイ」の基礎として使用する。
【0136】
「TNFαを主成分とする誘起物質」によるSFの活性化は、齧歯類におけるコラーゲン誘導性関節炎を強力に減少させる、潜在的な抗炎症性作用物質であるデキサメタゾンを用いてSFを処理することで、用量依存的様式で阻害可能である(Yangらの論文, 2004)(図5)。SFを96ウエルプレートに、3000細胞/ウエルの密度で播種する。播種24時間後、様々な濃度のデキサメタゾンを該細胞に添加する。一晩のインキュベーション後、各細胞からの培地を、TNFα(M199+0.5%FBSで50%希釈)処理THP−1細胞上清で交換し、先に記載したのと同濃度のデキサメタゾンを添加する。処理24時間後、該上清を回収し、先に記載したMMP1 ELISAに使用する。SFによるMMP1発現は、デキサメタゾンの添加によって用量依存的様式で減少し、約1nMのIC50値を示す(図5を参照されたい)。このデータは、活性化SFによるMMP1発現を、生理的関連阻害剤の添加によって減少させることができることを示し、「リバースMMP1アッセイ」の原理に正当性を与える。
【0137】
(実施例2):リバースMMP1アッセイにおける11,744個の「Ad−siRNA」のスクリーニング
(一次スクリーニング)
リバースMMP1アッセイを使用して、SFにおけるshRNAの発現を媒介する、11,744個の異なる組換えアデノウイルスの整列したコレクションを選別する。これらのshRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られる機構によって、相同配列を含む遺伝子の発現レベルの減少をもたらす。該整列したコレクションに含まれる11,744個のAd−siRNAは、5046個の異なる転写産物を標的とする。平均で、各転写産物は、2〜3個の独立なAd−siRNAによって標的化される。スクリーニング過程の模式的説明を図6に示す。以下により詳細に述べるように、SFを384ウエルプレートに播種し、その日のうちに、各ウエルを別々のAd−siRNAで感染させた整列shRNAライブラリーで感染させる。感染5日後、該培地を交換し、細胞をTNFα処理THP−1細胞の上清で誘起させる。該誘発物質の添加2日後に、上清を回収し、MMP1 ELISAに使用する。
【0138】
異なるスクリーニング実施間の、該アッセイの質を評価する384ウエルプレートを作成する。このプレートの構成を図7Aに示す。ウエルを、サイレンスセレクトアデノウイルスコレクションと同じ条件下で作成したコントロールウイルスで満たす。該ウイルスは、対角に並んだ3セットの48個のポジティブコントロールウイルス(P1 (Ad5-DCK_v1_KD), P2 (Ad5-PRKCL1_v1_KD), P3 (Ad5-TNFSF15_v1_KD))、合間の3セットの48個のネガティブコントロールウイルス(N1 (Ad5-eGFP_v5_KD), N2 (Ad5-Luc_v15_KD), N3 (Ad5-eGFP_v1_KD), B1: ブランコ(blanco), 非感染)。コントロールプレートの各ウエルは、50μlのウイルス粗溶解物を含んだ。このコントロールプレートの複数回分の一定分量を産生し、−80℃で保存する。
【0139】
最適スクリーニングプロトコル:初代(passage 1)RASF(Cell Applications社)を、10%ウシ胎仔血清(ICN社)、100単位/mlのペニシリン(Invitrogen社)及び100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen社)を添加したDMEM培地(Invitrogen社)で培養し、37℃及び10%CO2でインキュベートする。該細胞を、週に一度、1/3分割によって継代培養する。本スクリーニングで用いたRASFの最大継代数は11である。スクリーニング用に、SFを0.1%ゼラチン(Merck社)で被覆された透明な384ウエルプレート(Greiner社)内に、25μlの滑膜細胞増殖培地(Synovial Cell growth medium)(Cell Applications社)中、1500細胞/ウエルの密度で播種する。翌日、前記サイレンスセレクトコレクション(WO 03/020931)由来Ad−siRNAウイルスを、SFを含む384ウエルプレートの各々のウエルへと移す。アデノウイルスの平均力価は1×109ウイルス粒子/mlであり、これは約1700MOIであることを意味する。サイレンスセレクトコレクションを384ウエルプレート内に保存し、96/384−チャンネルディスペンサーを使用してSFへと移す。感染5日後、該培地を除去し、該ウエルを1%FBS含有M199培地を1度添加してすすぎ、次に該培地を除去する。それから該ウエルを、1%FBS含有M199培地で2倍希釈した、60μlの「TNFαを主成分とする誘起物質」で満たす。該「TNFαを主成分とする誘起物質」の添加2日後、該上清を384ウエルプレート(Greiner社)中に回収し、MMP1 ELISAの次の工程まで、−80℃で保存する。該感染物をすすぎ、培地回収段階を、TECAN Freedomピペット(TeMO96、TeMO384及びRoMaを搭載したTecan Freedom 200、Tecan AG社、Switzerland)を用いて実施する。25μlの回収上清をMMP1 ELISAに使用する。ELISA段階を、実施例1に示すように実施する。
【0140】
該「TNFαを主成分とする誘起物質」を、10%FBS(Invitrogen社)並びにペニシリン(100単位/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)(Invitrogen社)を添加したRPMI培地(Invitrogen社)で浮遊培養した継代8〜16代目のTHP−1細胞から産生させる。該培養物を毎週、2×105細胞/mlの細胞密度に希釈し、1.5×106細胞/mlを超えることを避ける。該「TNFαを主成分とする誘起物質」の産生は、1×106細胞/mlの密度で、1%血清含有M199培地中のTHP−1細胞を播種することで開始される。播種の翌日、組換えヒトTNFα(Sigma社)を、25ng/mlの終濃度になるまで、培養フラスコに添加する。前記サイトカインの添加48時間後、該上清を回収し、次の使用まで、一定分量で、−80℃で保存する。各「TNFαを主成分とする誘起物質」の新たな処理単位を、SFによるそのMMP1発現誘導効率で特徴付ける。
【0141】
先に記載したスクリーニングプロトコルを用いて試験したコントロールプレートの成績の代表例を図7Bに示す。各ウエルで得られた未加工の発光シグナルを示す。ポジティブコントロールサンプルを、1つの384ウエルサイレンスセレクトプレートの限定的な予備スクリーニングで得た、3個の最も強力なヒットとして選択する。
厳しいカットオフを適用する、すなわち、全144個のネガティブコントロールの平均から1.82倍の標準偏差を差し引く。下記のこのカットオフで得点化したサンプルを、陽性ヒットとみなす。これらの陽性ヒットを、灰色の背景上の白色の番号として示す。予想通り、本アッセイでのポジティブコントロールウイルスは非常に良好で、それぞれP1,P2及びP3ポジティブコントロールサンプルのカットオフは、88%、81%及び94%のサンプルで下にある。感染ウエルに比較して非感染ウエルがより低いシグナルを示すように、ブランコサンプルはしばしば陽性の得点である。この理由は知られていない。ウイルス不在にも関わらず、サンプルが陽性となることを除外するために、定量的リアルタイムPCRのウエル当たりのアデノウイルス粒子量を調べるのと同様に、ヒットウイルスが増殖する場合、細胞変性作用(CPE)を調べることによって、全ウエルのウイルス含有量をモニターする(Maらの文献, 2000)。前記3個のネガティブコントロールウイルスについて、N1ウイルスが、毒性によって同じ擬陽性を生じる。スクリーニングの間、N1ネガティブコントロールに対する約5%の擬陽性を許容する。この実施例2においては、48サンプル(+/−4%)中の2サンプルが、N1コントロールに対して陽性のスコアである。
【0142】
30×384ウエルプレート上に収容される、5046個の転写産物を標的化する11,744個のAd−siRNAからなる、完全なサイレンスセレクトコレクションを、先に記載したプロトコルに従う「リバースMMP1アッセイ」で選別する。各Ad−siRNAプレートを、一次選別において2回重複で選別し、選別を繰り返す。そのようにして、4つのデータ点を、各々のAd−siRNAから得る。一次選別及び反復選別の両方での少なくとも1個のデータ点を下記の閾値で得点化した場合、Ad−siRNAウイルスをヒットとして選び出す。スクリーニング結果及びヒットを同定するために行った解析の代表例を図8に示す。
【0143】
ヒットと称するためのカットオフ値を決定するために、標準偏差に加えて、プレート上の全てのデータ点で平均を計算する。それから該平均から該標準偏差を差し引いたものとして、カットオフ値を定義する。このカットオフを、図8に示すグラフ中の横線として示す。図8に示すデータは、下記のプレート平均に対する相対的発現である:サンプルの相対的シグナル=[(該サンプルの未加工発光シグナル)−(該プレート全体の平均シグナル)]/(該プレート全体の標準偏差)。一次選別(図8A)及び該反復選別(図8B)における、全ての384個のAd−siRNAで獲得された2回反復シグナルの平均を示す。ヒットとして同定されたデータ点を丸で示す。カットオフよりも下に得点化された合計408個のヒットを、以下に論じる3MOI反復選別で単離する。ほとんど全ての同じAd−siRNAが、一次選別及び反復選別の両方で陽性のスコアである。これらのデータは、スクリーニング及びサイレンスセレクトコレクションの質の指標となる。
【0144】
図9に、リバースMMP1アッセイに対するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。一次選別(Y軸)において、2回反復サンプルから得られた平均化した相対的発光を、反復選別(X軸)で得られた対応するAd−siRNAの平均化した相対的発光に対してプロットする。カットオフ(−1.82倍の標準偏差)を破線で示す。ヒットとして選び出したAd−siRNAのデータ点を三角形で示し、ヒットでないAd−siRNAのデータ点を四角形で示す。一次選別のデータと反復選別のデータとの間に見られる強い対称性(該データ点は、直線の周りに集中する)は、該スクリーニングの質及び再現性の指標となる。
【0145】
(「3」MOI反復選別)
先に同定した408個のヒットを再増殖させる。サイレンスセレクトコレクション由来のヒットしたAd−siRNAサンプルの粗溶解物を取り出し、9×96ウエルプレート内のネガティブコントロールと共に配置する。未精製溶解物の容器を、バーコード(Screenmates(商標)、Matrix technologies社)で標識し、該プレート上で質のチェックを実施する。そのような「3」MOI反復選別プレートの一般的配置を図10Aに示す。該ウイルスを増殖させるために、96ウエルプレートの各ウエル内に、10%の非加熱不活性化FCSを含む200μlのDMEM中の2.25×104個のPerC6.E2A細胞を播種し、10%CO2の加湿インキュベータ内で、39℃で一晩インキュベートする。先に記載したような96ウエルプレートに配列させた、各々のヒットしたAd−siRNAからの1μlの粗溶解物をそれから添加し、96ウエルディスペンサーを使用して、PerC6E2A細胞のウエルを分ける。10%CO2の加湿インキュベータ内での7日から10日のインキュベーション後、完全なCPEを観察することができたという条件で、該再増殖プレートを−20℃で凍結させる。
【0146】
「3」MOI反復選別用に、SFを、滑膜細胞増殖培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート(Greiner社, 組織培養処理)に播種する。翌日、96ウエルディスペンサー(TECAN freedom 200)を使用して、先に記載した再増殖プレート内に含まれる粗溶解物の3μl、6μl又は12μlを用いてSFに感染させる。感染5日後、VacuSafe装置(Integra社)を使用して該プレートから培地を除去し、2倍希釈した100μlのTNFαを主成分とする誘起物質を添加する。2日のインキュベーション後、96ウエルディスペンサー(TECAN Freedom 200)を使用して培地を回収し、実施例1に記載したプロトコルに従ったリバースMMP1 ELISAの次なる工程で使用するまで、384ウエルプレート中で−80℃保存する。
【0147】
MMP1 ELISAからのデータを以下のように解析する:ヒットと称するためのカットオフ値を決定するために、各プレートに関して、ネガティブコントロールの平均を計算する。各MOIに関して、ネガティブコントロールの3%未満が、該9プレート全体のヒットとして得点化されるような割合を選択する。該割合は、3μl、6μl及び12μlの感染に対して、それぞれ23%、26%及び19%である。試験した408個のヒットの339個を、2回重複の1MOIで得点化し、ヒットとして同定する。それゆえ、一次選別のヒットの84%は、再増殖させたAd−siRNA物質を使用する、この3MOI反復選別で確認する。
【0148】
(標的Ad−siRNAの品質管理)
PER.C6(C)細胞の誘導体(Crucell社, Leiden, The Netherlands)を使用して、96ウエルプレート内で標的Ad−siRNAを増殖させ、続いて該標的Ad−siRNAウイルスにコードされるsiRNAの配列決定を行う。PERC6.E2A細胞を、180μlのPER.E2A培地中40,000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレートに播種する。それから細胞を、10%CO2加湿インキュベータ内で、39℃で一晩インキュベートする。翌日、細胞を、標的Ad−siRNAを含むサイレンスセレクトストックからの1μlの未精製細胞溶解物を用いて感染させる。細胞をさらに、細胞変性作用(典型的には感染7日後、該細胞の膨張及び凝集として示される)が出現するまで、34℃、10%CO2でインキュベートする。該上清を回収し、滅菌PCRチューブ内の12μlの粗溶解物に、4μlの溶解緩衝液(1mg/mlのプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号745 723)及び0.45%のTween-20(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号1335465)を添加しMgCl2を含有する1×エクスパンドハイフィデリティー(Expand High Fidelity)緩衝液(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号1332465)、を添加することによって、該ウイルス粗溶解物を処理する。これらのチューブを55℃で2時間インキュベートし、続いて95℃で15分間の不活化を行う。PCR反応用に、1μlの溶解物を、MgCl2を含む5μlの10×エクスパンドハイフィデリティー緩衝液、0.5μlのdNTPミックス(各dNTPは10mM)、1μlの「フォワードプライマー」(10mMストック、配列:5' CCG TTT ACG TGG AGA CTC GCC 3')(配列番号:879)、1μlの「リバースプライマー」(10mMストック、配列:5' CCC CCA CCT TAT ATA TAT TCT TTC C)(配列番号:880)、0.2μlのエクスパンドハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(3.5U/μl、Roche Molecular Biochemicals社)、及び41.3μlのH2O、からなるPCRマスターミックスに添加する。下記のように、PE Biosystems GeneAmp PCR system 9700でPCRを実施する:該PCR混合物(全量で50μl)を95℃で5分間インキュベートし;各サイクルを95℃15秒、55℃30秒、68℃4分で実行し、これを35サイクル繰り返す。最後の68℃のインキュベーションを7分間で実施する。該PCR混合物の5μlを、2μlの6×ゲルローディング(gel loading)緩衝液と混合し、0.5μg/μlの臭化エチジウムを含む0.8%アガロースゲル上で泳動し、該増幅産物を分離する。該増幅フラグメントのサイズを、同一ゲル上に泳動した標準DNAラダーから概算する。予想サイズは約500bpである。配列決定解析用に、前記pIPspAdapt6-U6プラスミドのSapI部位に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを使用するPCRによって、標的アデノウイルスによって発現されるsiRNA構築物を増幅させる。該PCRフラグメント配列を決定し、前記予想配列と比較する。全ての配列が、該予想配列と同一であることが見出される。
【0149】
(実施例3A):非特異的様式でMMP1発現レベルに影響を与えるヒットを除外する「リバースMMP1アッセイ」の339個のヒットの試験
リバースMMP1アッセイにおいてMMP1の発現の減少をもたらすような、Ad−siRNAによるSFの一般的毒性(生存率の減少)を除去するために、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega社)を使用する。このアッセイは、代謝的に活性な細胞の存在に比例して存在するATPの量に基づいて、培養物中の生存細胞の数を測定する。このアッセイにおいて、細胞を、100μlの滑膜細胞増殖培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、白色の96ウエルプレート内で培養する。一晩のインキュベーション後、細胞を、リバースMMP1アッセイから確認されたヒットを用いて感染させる。感染5日後、該培地を除去し、1%FBSを添加した50μlのM199培地で置き換える。該プレート及びその内容物を、室温で30分間平衡化させる。50μlのcelltiter-Glo試薬を該ウエルに添加した後、暗条件下、軌道振盪機(5分)上でインキュベーションする。luminoskan Ascent (Labsystems社)照度計で、100msの積算時間で、測定を実施する。
【0150】
一次試験において、3MOI反復選別プレート(図10Aに示す配置)内に含まれる12μlのウイルスを使用してRASFを感染させ、読み出しを先に記載するように実施する。ヒットウイルスがもたらす一般的毒性を測定するために、該プレートに含まれる全てのデータ点(50個のヒット、及び10個のコントロール)に対するシグナルの平均化し、全てのデータ点の1.5倍の標準偏差を差し引くことによって、カットオフを計算する。一次選別におけるカットオフ値より下に得点化されたヒットは、以下のように再試験する:該ヒットを取り出し、(図10Bに示す配置に従って)96ウエルプレートに配置し、先に記載したプロトコルに従って、3MOI(3μl、6μl及び12μl)でSFを感染させるために使用する。反復選別用に、全てのコントロールのシグナルを平均化し、該コントロール全ての標準偏差の2倍を差し引くことによって、カットオフを計算する。1MOIで2回重複のカットオフより下に得点化されたヒットは、毒性を誘導するものとみなす。
【0151】
SFによるTIMP−2の分泌を測定して、リバースMMP1アッセイにおいてMMP1の発現の減少をもたらすものとしての、Ad−siRNAによるSF分泌活性の一般的抑制因子を除去する。TIMP−2は、SFが構成的に発現し分泌するタンパク質である。SF上清へのTIMP−2の分泌を、分泌の小分子阻害剤であるブレフェルジンAの添加によって阻害する。SFのTIMP−2タンパク質分泌のレベルを、ELISAによって検出する。RASF細胞を、100μlの滑膜増殖培地中3000細胞/ウエルで、96ウエルのゼラチン被覆プレート内に播種する。一晩のインキュベーション後、細胞を感染させ、37℃の10%CO2インキュベータ内で5日間インキュベートする。ウイルスを除去し、100μlのM199+1%FBS(HI)培地を、該細胞の上部に適用する。さらなる48時間のインキュベーション後に該上清を回収し、−20℃で保存する。実質的にはMMP1 ELISAに概要を示すように、TIMP2レベルを標準的ELISAアッセイで測定する。手短に述べると、384ウエルの白色グライナー(Greiner)プレート(Lumitrac 600)を、PBS中で1μg/mlの抗hTIMP2捕捉抗体(カタログ番号MAB9711;R&D systems社)40μlを用いて、4℃で一晩被覆する。80μlの0.1%カゼイン緩衝液を用いて室温で4時間ブロッキングし、洗浄段階(30μlのEC緩衝液)の後、40μlの該サンプルを該ウエルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、PBST(0.05% Tween-20)及びPBSでの2回の洗浄後、40μlのビオチン化抗hTIMP2検出抗体(緩衝液C中に100ng/ml)(カタログ番号BAF971;R&D systems社)をウエルに添加する。室温での2時間のインキュベーション後、プレートを再び洗浄し、緩衝液Cで1/3000希釈した40μlのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(カタログ番号SNN2004;BioSource社)の添加後、さらに45分間室温でインキュベートする。最後に、プレートを洗浄し、50μlのBM Chemiluminescence ELISA substrate(POD)(カタログ番号1582950;Roche Diagnostic社)をウエルに添加する。暗条件下での5分のインキュベーション後、発光を照度計(Luminoscan Ascent)で定量する。
【0152】
これらの実験に適用した先に記載した手順(プレートの配置、MOI、カットオフの決定方法)は、前記毒性測定(すなわち、12μlの感染容積、及び3μl、6μl、12μlの感染容積での再試験)に記載されるものと同一であるが、一次試験に適用したカットオフが、全てのサンプルの平均から、全てのサンプルの2倍の標準偏差として決定されることのみが異なる。このアッセイにおいて、該再試験における少なくとも1MOIの2回反復のカットオフより下のTIMP2レベルの減少を媒介するウイルスは、SFの一般的な分泌機構に影響を与えるものとみなす。
【0153】
毒性アッセイ及びTIMP分泌アッセイで試験した339個のヒットからの16個が、これらのアッセイで陽性を得点し、特定の方法で、サイトカイン誘導性MMP1発現の減少を媒介すると考えられる。そのようなものとして、323個のヒットを、サイトカイン誘導性MMP1発現の調節物質として同定し、そのうちの16個を最も好ましいヒットとし、表1に一覧化する。
この実験から、発明者らは、これらのヒット及びそれらの発現タンパク質と関連性のある遺伝子が、これらの研究によって、SFにおけるMMP1発現を調節することが示された価値ある薬剤標的であることを示すと結論を下す。
【0154】
【表4】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
(実施例3B):追加アッセイ及び除外基準の適用
「TNFαを主成分とする誘起物質」で処理したRA SFの上清がコラーゲン分解の潜在能力を有するという知見に基づき、「リバースコラーゲン分解アッセイ」を使用して、前記一次「リバースMMP1アッセイ」によって同定した323個のヒットをさらに優先順位づけする。天然型コラーゲンの分解は、複数のプロテアーゼ(コラゲナーゼ)によって介在され、コラーゲン分解の減少は、MMP1発現のみの読み出しと比較して、より厳しい読み出しである。RA SFによる、サイトカイン誘導性コラーゲン分解のRA SF(KDウイルスを用いる)におけるターゲット発現減少の効果を、社内で開発したアッセイを使用して試験する。このアッセイにおいて、FITC標識天然型コラーゲンの分解は、蛍光シグナルの増加を生じる。(このアッセイのプロトコルを、実施例6の説明に詳細に記載する(図12))。
【0176】
「リバースMMP1アッセイ」で同定した323個のヒットKDウイルスを、各プレートが、4個のポジティブコントロールウイルスと16個のネガティブコントロールウイルスと共に60個のヒットウイルスを含むような、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)内に並べる。完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中、3000細胞/ウエルの密度で96ウエルプレート内に播種したRA SFを、その翌日、該「ヒットプレート」に含まれる5μl又は10μlのウイルスで感染させる。適用したウイルスを、61個の中性ウイルス(neutral virus)Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KDの添加によって完全化する。このコレクションは、観察された効果が、前記細胞に適用したウイルスと異なる結果にならないことを保証する。感染5日後、活性化段階を実施する。この段階は、全てのウエルにおいて、15μlの「TNFαを主成分とする誘起物質」を添加した45μlのM199培地による、前記成長培地の置換を含む。4日後、該上清を回収し、図12に示す実験に記載するプロトコルに従った、小規模型コラーゲンI型分解アッセイに適用する。各標的KDウイルスの2つの独立な増殖物質を両方のMOIで2回試験し、各MOIにつき4個のデータ点を生じさせる。該結果を以下のように解析する:各プレートに、全てのネガティブコントロールの平均から全てのネガティブコントロールの標準偏差の2.1倍(感染51個)又は1.6倍(感染101個)を差し引いたものよりも低い蛍光値に対応するサンプルを、本アッセイで陽性反応を与えるものみなす。本アッセイで陽性の読み出しを与える4個のデータ点のうちの3個を生じさせる全ての標的KDウイルスを、RA SFによる「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性コラーゲン分解を有意に減少させるものとみなす。あるいは、試験した各MOIで、本アッセイで(4個のデータ点のうち)2個の陽性反応を生じさせる全ての標的KDウイルスを、コラーゲン分解を有意に減少させるものとみなす。試験した323個の標的KDウイルスの192個が、RA SFによる「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性コラーゲン分解を有意に減少させた。
【0177】
好ましいヒットを選択するために、発明者らは、RA SFによる、LPS誘導性又はTNFα誘導性のIL8発現における(KDウイルスを用いる)RA SFの標的発現減少効果を試験する第二アッセイを使用した。このアッセイは、(1)病原体に対する患者の反応にLPSシグナル伝達が必要であり、その完全な阻害は患者の自然免疫を損なう恐れがあるので、選択した標的KDウイルスが、RA SFにおけるLPSシグナル伝達をそれほど阻害しないことを確認し;かつ(2)該標的が、炎症マーカーのTNFα誘導性発現を促進しないことを確認する。ケモカインIL8を、このアッセイの読み出しとして選択する。このケモカインは、炎症部位(RAの場合では関節)への免疫系細胞(例えば、単球、好中球)の動員に役割を担い、局部的な炎症をsらに増加させる。IL8の増加は、RA治療の望む特性ではない。
【0178】
「リバースMMP1アッセイ」で同定し、「リバースコラーゲン分解アッセイ」で陽性の読み出しを与えた標的KDウイルスを、以下のようなLPS/TNFα誘導性IL8アッセイで試験する:各プレートが、20個のネガティブコントロールウイルスと共に60個の標的ウイルスを含むような、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)内に、192個の標的KDウイルスを並べる。1日目に、SF(継代9〜12代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中、1ウエルあたり3000細胞の密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、先に記載した96ウエルプレート内に並べた標的KDウイルスの2種類の量(6μl又は12μl)で感染させる。その後、各ウエルでの、10%胎児ウシ血清(加熱不活化済)及び誘発物質(2ng/mlの組換えヒトTNFα又は1μg/mlのLPS)を添加した150μlのDMEMでの成長培地の置換を含む活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。活性化段階の48時間後、80μlの上清を回収し、これを希釈したものを、図13に示す実験に記載したようなIL−8 ELISAに使用する。TNFαを用いて誘起させたサンプル用に、40倍希釈物をPBS+1%BSAで作成し、LPSサンプル用に、16倍希釈を実施する。これらの希釈物からの35μlを、IL−8 ELISAに使用する。2つの独立に調製した前記標的KDウイルスを、2MOIで2回の独立実験で試験し、試験した各標的KDウイルスのMOIにつき、4個のデータ点を生じる。
【0179】
以下のようにデータを解析する:前記標的の発現を減少させるように設計したKDウイルスを含む96ウエルプレートも、20個のネガティブコントロールを含んだ。以下のように、IL8発現の阻害割合を、ネガティブコントロールウイルスに対する相対的割合として計算する:はじめに、(IL8不在下での)該ELISAのバックグラウンドシグナルを、全てのサンプルの全ての値から差し引く。その後、全てのプレートに下記式を適用する:%阻害=[100×(((全てのネガティブコントロールの平均値)−標的サンプル値)/(全てのネガティブコントロールの平均値))]。TNFα誘導性及びLPS誘導性IL8アッセイにおけるそれらの成績によって、全ての標的KDウイルスを順位づけする。RA SFによる、TNFα誘導性IL8発現の強力な増加を生じさせる標的KDウイルスの5%と同様に、LPS誘導性IL8の強力な阻害を与える標的KDウイルスの10%はより好ましくないとみなす。そのようなものとして、このアッセイで試験した192個の標的KDウイルスのうちの40個を、より好ましくないとみなす。さらに、本発明をさらなる特異性で規定するのに使用する除外基準を、以下に記載する。
【0180】
本発明で同定したターゲットは、RAの治療用に開発した小分子阻害剤の同定に基づくことを示す。そのようなものとして、ヒトでの実験を実施する前に、関節炎の実験的モデルにおいて、そのようなRA治療の新たな候補を試験することが必要である。一般的には、ラット又はマウスにけるコラーゲン誘導性関節炎モデルを、関節炎の実験的モデルとして使用する。その結果として、ラット又はマウスにおいてオルソログを見出すことができなかったターゲットは、あまり好ましくない。(実験カスケード(「リバースMMP1」一次アッセイ、「リバースコラーゲン分解」二次アッセイ、及び「TNFα/LPS IL8誘導アッセイ」)を通じて同定した)152個の標的の解析は、27個がラット又はマウスでオルソログがなく、125個のみが好ましい標的であることを示した。さらなる除外基準は、以下のインシリコ(in silico)解析を含む:
【0181】
「薬剤利用可能性」。本開発の小分子阻害剤が、短い時間枠内で最も成功見込みのないことを測定できた場合、標的を除外した。この解析は、薬理学的慣例に基づき、特定のターゲットが属する遺伝子クラスの一般的な薬剤利用可能性の評価を含んだ。さらに、ターゲットの小分子阻害剤の発見を可能にさせるアッセイの存在を調査する。発明者らは、このアッセイに使用した125個のターゲットのうち69個がアッセイに利用可能であることを見出した。
【0182】
「危険特性(Risk profile)」。対応する「ノックアウトマウス」の表現型が疾患性又は致死性である標的遺伝子は、小分子を用いてのこれらの遺伝子産物の阻害が、この表現型の部分的な原因となることが予想されるので、より低い優先順位を有するとみなす。前記細胞又は生物体の基礎代謝機能に重要な役割を果たすターゲットもまた、より低い優先順位を与える。危険特性は、解析した69個の標的のうち18個で高いとみなす。
「疾患関連性」。既に、炎症過程又は自己免疫過程に関連するターゲットは、より好ましいとみなす。
実験及び解析なしで済ませたセットは、323個の標的のリストから、16個の最も好ましいターゲットの現在のセットの限定を許容した。
【0183】
(実施例4):RA患者の滑膜由来のヒト初代滑膜性線維芽細胞で同定した特定標的の発現レベルの解析
特定の同定した標的の発現レベルを、初代ヒト滑膜性線維芽細胞の少なくとも2種の異なる分離体で測定する。
RASF分離体を、Cell Applications 社(カタログ番号 404-05)製の凍結保存された継代2代目として得る。これらの細胞を培養し、10%(v/v)加熱不活化済FBS(ICN社)及び1×Pen/Strep (Invitrogen社)を添加したDMEM(Invitrogen社)中で増殖させる。発現解析用に、細胞を継代11代目まで培養する。
【0184】
RNA調製用に、初代ヒト滑膜性線維芽細胞を、6ウエルプレート内の10cmのペトリディッシュ(500,000細胞/ディッシュ)に播種する。一晩のインキュベーション後、培地を、1×Pen/Strepを含む1%(v/v)加熱不活化済FBSを添加する、6mlのM199培地で交換する。24時間後、総RNAを、SV RNA単離キット(Promega社)を使用して抽出する。
【0185】
各々のサンプル中のRNA濃度を、「リボグリーンRNA定量キット(Ribogreen RNA quantitation kit)」(Molecular Probes社)を使用して、蛍光分析的に定量する。各標本由来の同等量のRNAを、Applied Biosystems社製の「タックマン逆転写キット(Taqman reverse transcription kit)」を用いて、第一鎖cDNAへと逆転写する。手短に述べると、50pmolのランダム六量体、10UのRnase阻害剤、25Uのマルチスクライブ逆転写酵素、5mMのMgCl2、及び各々0.5mMのdNTPを含む、20μlの反応混合物につき40ngのRNAを含ませる。該反応混合物を25℃で10分間インキュベートし、続いて48℃で30分間インキュベーションし、サーモサイクラー(thermocycler)(Dyad, MJ Research社)で逆転写酵素の熱不活化(5分、95℃)させる。該プログラム終了後、反応物をすぐに4℃まで冷却する。得られたcDNAの複数回の凍結/融解サイクルを避けるため、異なるサンプルを96ウエルプレート内に貯蔵し、一定分量に分け、−20℃で保存する。
【0186】
「ABI PRISM 7000配列検出システム分析機器(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System Instrument)」を使用して、リアルタイムPCR反応を行う。設計前の、遺伝子特異的タックマンプローブ(Taqman probe)及び定量的遺伝子発現のプライマー対を、「応需型アッセイ(Assays on Demand)」遺伝子発現産物の一部として、Applied Biosystems社から購入する。これらの市販のキットは供給業者によって質が調べられており、本サンプル中の標的cDNAの量の定量的測定を可能にさせる。「応需型アッセイ」遺伝子発現産物を、供給業者から届けられたプロトコルに従って使用する。該PCR混合物は、総量25μl中の、1×「(タックマンユニバーサルPCRマスターミックスno AmpErase UNG)Taqman Universal PCR Mastermix no AmpErase UNG」及び1×「タックマン遺伝子発現応需型アッセイミックス(Taqman Gene Expression Assay on Demand mix)」並びに(1〜100ngのRNAをcDNAへと転換した)5μlのレトロ転写反応産物からなる。95℃10分間の開始変性段階の後、95℃15秒間及び60℃1分間からなる40サイクルで、該cDNA産物を増幅させる。異なるサンプル間における、cDNAの開始量の可変性を標準化するために、製造業者の説明書に従い、前開発型β−アクチン「応需型アッセイ」プライマーセット及びタックマンプローブ並びに「タックマンユニバーサルPCRマスターミックス(Taqman Universal PCR Mastermix)」(全てApplied Biosystems社)を使用して、同じcDNAを用いる増幅反応を、ハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンで実施する。剰余のゲノムDNAから生じる全ての混入を同定するため、同条件ではあるが該逆転写酵素を添加しない条件下で実施するコントロール(−RT)逆転写反応由来産物を用いたリアルタイムPCR反応を、各サンプルに含ませる。閾値サイクル値(Ct)は例えば、各サンプルに関して、興味のある遺伝子の増幅量が固定した閾値に達したサイクル数を測定する。各サンプルに関して、該標的遺伝子から得られたCt値から内因性コントロール(βアクチン)のCt値を差し引くことによって、ΔCt値を測定する。活性型であろうとなかろうと、このヒットで得られたΔCt値が、利用可能な2つの滑膜性分離体の少なくとも1つで13.3よりも低い場合、遺伝子は初代ヒトSFで発現しているものとみなす。9.9よりも低いΔCt値を有する遺伝子は、RASFにおいて高度に発現しているものとみなす。発現プロファイリング実験の結果を、表5に要約する。非誘発型SFの2つの分離体における様々な標的で得られたβ−アクチンと比較したΔCt値を、この表5に記載する。
【0187】
【表5】
【0188】
(実施例5):ILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAPK13及びDGKBのRASF発現のAd−siRNAの減少は、用量依存的様式で、サイトカイン誘導性MMP1発現を阻害する
先に記載したように、前記サイレンスセレクトコレクションのスクリーニングは、サイトカイン誘導性のRASF MMP1発現を減少させる能力を阻害するAd5−siRNAのセットを同定する。これらのウイルスの部分集合を、「リバースMMP1アッセイ」の用量反応実験で、様々な濃度で試験する。
【0189】
SF(継代9〜10代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレートに播種する。翌日、増加的量(3μl、7.5μl、12μl又は15μl)のAd5-MMP1_v10_KD (ポジティブコントロール)又はAd5-ルシフェラーゼ_v13_KD (ネガティブコントロール)を用いて、該細胞を感染させる。中性ウイルスAd5-ルシフェラーゼ_v13_KDの添加によって該添加ウイルスを補正し、各ウエル中の該細胞上の最終ウイルス容積を15μlにする。このコレクションは、観察された効果が、該細胞に適用したウイルスの違いから生じたのではないことを保証する。それから、活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。この段階は、全てのウエルにおける、25μlの「複合的誘発物質」を添加した75μlのM199培地での前記成長培地の置換を含む。該活性化段階の48時間後、該上清を回収し、先に記載したように、MMP1 ELISAに使用する。図11Aは、2回反復の平均を示す。
【0190】
この実験は明らかに、RASFへの増加的量のAd5−siRNAの適用が、RASFにおける前記標的の発現の減少の増大をもたらすことを示す。この場合において、該細胞に増加的量のAd5-MMP1_v10_KDを適用することは、該細胞内のMMP1タンパク質発現の高度な減少をもたらす。(図11A)まとめると、RASFに適用する増加的量のAd5−siRNAが、RASFにおける標的の発現の減少の増大をもたらすにつれて、表1に一覧化した遺伝子を標的化する増加的量のAd5−siRNAもまた、サイトカイン誘導性MMP1発現の減少の増大をもたらすことが予想される。そのような容量反応実験の結果を、図11Bに示す。
【0191】
これらの容量反応実験で使用するAd−siRNAを、WO03/020931に記載される手順に従って作成する。siRNA上に設計し、組換えアデノウイルスを作成するために使用したこれらの遺伝子の標的配列を表1に一覧化する。表1に一覧化した複数のAd−siRNA標的化遺伝子を使用して該細胞を感染させるという違いのみを有するポジティブコントロール及びネガティブコントロールに関して、前記MMP1 ELISAにおけるAd5−siRNA効率を、先に記載したように試験する。該細胞を感染させるために使用するウイルスを、ネガティブコントロールとして使用するAd5-eGFP-v5_KD、Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KD及びAd M6PR-v1_KD、並びにポジティブコントロールとして使用するAd5-MMP1-v10_KDと共に、図11Bに示す。該実験結果を図11Bに示す。
【0192】
図11Bに示すデータを以下のように計算する:解析した各々のプレートに関して、15μlでのAd5-MMP1_v10-KD(ポジティブコントロール)の未加工シグナル(RLU)を、最も可能性の低いシグナル(すなわち、獲得し得るMMP1発現の最も大幅な減少)とみなし、それゆえ、本アッセイのバックグラウンドとして設定する。このプレートの全てのシグナルを、このバックグラウンドシグナルから調整する。それから各々のMOIに関して、特定のAd5-標的-KDウイルスから得られるシグナルを、同プレート上から得られるネガティブコントロールウイルス(Ad5-eGFP-v5_KD、Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KD又はAd-M6PR-v1_KD)のシグナルに対して標準化する(除算する)。図11Bは、RASF内のILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAPK13及びDGKBの発現における減少を媒介するAd−siRNAウイルスが、これらの細胞によるサイトカイン誘導性MMP1発現の有意な減少をもたらすことを示す。明らかに、より多量のAd5−siRNAは、MMP1発現レベルのより大幅な減少をもたらす。これらの結果は、該細胞に適用したAd5−siRNAの量が、得られたMMP1発現の減少の強度を決定することを示す。
【0193】
この実験から発明者らは、これらの遺伝子が、SFにおけるMMP1発現を調節することが示された価値ある薬剤標的であることを示し、小分子化合物などの阻害剤によるこれらの遺伝子由来のタンパク質産生の活性阻害は、「リバースMMP1アッセイ」における「複合サイトカイン」誘導性MMP1発現を減少させることが予測される、と結論を下す。また発明者らは、そのような作用物質によるこれらの遺伝子由来のタンパク質産物の活性阻害もRA患者に観察される関節変性を減少させるであろうと考える。
【0194】
表1は、表1で特定した全ての標的遺伝子から得られた複数のKD配列を一覧化する。異なるAd−siRNAを、ターゲットmRNA内の異なる標的配列から作成する。Ad−siRNAウイルスのいくつかは、「リバースMMP1アッセイ」で有効性を示すが、発明者らは、これらのAd−siRNAウイルスのいくつかが、「リバースMMP1アッセイ」で有効性を示さないことを観察する。しかしながら、全てのshRNAが、標的の発現を減少させるのに有効ではないことは理解すべきである。siRNA分解機構に対する標的RNAの物理的利用可能性(例えば、他の細胞性タンパク質に密接に近接する及び/又は該タンパク質に結合する全てのターゲットmRNAの3次元的折り畳みであり、siRNAの会合用の結合部位を提供するために、mRNAの画分のみを「曝露」させてよい)、該標的タンパク質の効力、特定のshRNAそれ自体に影響を与える分解過程などを含む、ノックダウン効率におけるこの差をもたらす多くの原因があり得る。より詳細には、「リバースMMP1アッセイ」における特定のAd−siRNAの低効率は、該細胞によるサイトカイン誘導性MMP1発現を減少させるのに必要とされる標的遺伝子発現の減少レベルによって説明可能である。いくつかの標的は、MMP1経路を遮断するのに50%の減少のみを必要とする可能性があるが、他の標的は、同効果を達成するのに90%を必要とする可能性がある。いくつかの標的は、標的の減少を補う代謝経路に関与する可能性があるが、他の標的にはない。結果として、高用量でこれらのウイルスを試験することは、リバースMMP1アッセイでより高い効率をもたらす可能性がある。
【0195】
(実施例6): ILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAP12、MAPK13及びDGKBのRASF発現のAd−siRNA誘導性の減少は、サイトカイン誘導性コラーゲン分解を阻害する
特定のMMP亜型(例えば、MMP1、MMP13)はコラゲナーゼであり、顕著な天然型コラーゲン分解能力を有する。天然型コラーゲンは、タンパク質分解事象に非常に抵抗性である、安定な線維内に組織化される。そのようなものとして、天然型コラーゲンの分解を使用して、MMP1のみならず、RASFによって産生されるコラゲナーゼの完全な補完物をモニターする。本明細書に記載するのは開発したアッセイであり、RASF培養上清中での、天然型コラーゲンのサイトカイン誘導性の分解を検出する。
【0196】
「小規模型コラーゲンI型分解アッセイ」プロトコル:(特に明記しない場合、試薬類はChondrex社, Redmond社, Washington社 (コラゲナーゼアッセイキット)製である)。96ウエルプレート(V−ボトム(V-bottom), Greiner)の1ウエルあたりを、9μlの溶液B及び1μlのトリプシン溶液で満たす。ウエル毎に10μlのサンプル(RASF上清)を添加し、続いて34℃で15分間インキュベーションする。インキュベーション後、1μlのSBTIを添加する。20μlのFITC−コラーゲン混合物(10μlのFITC標識コラーゲンI型+10μlの溶液A)を該活性化サンプルに添加し、続いて34℃で24時間のインキュベーションを行う。1μlの1,10フェナントロリンを、該反応混合物に添加する。1μlのエンハンサー溶液(エラスターゼ)を添加し、続いて34℃で30分間インキュベーションする。該反応混合物が室温の時点で、40μlの抽出緩衝液を添加し、該プレートを密封(ヌンクシール(Nunc seals))し、ボルテックスする。4000rpmで25分間の遠心分離(ベックマン遠心機(Beckman centrifuge))後、50μlの上清を黒色F−ボトムプレート(Greiner社)へと移し、蛍光をフルオスターリーダー(Fluostar reader)(BMG社)で測定する(480nmの励起波長、520nmの発光波長)。
【0197】
「小規模型コラーゲンI型分解アッセイ」におけるAd5−siRNA効率を、以下のように試験する:SF(継代9〜10代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、図12Aに示す5μl又は10μlのAd−siRNAで感染させる。これらのKDウイルスを、12個のネガティブコントロールウイルスと共に96ウエルプレート上に並べる。該添加ウイルスを、中性ウイルスAd5-ルシフェラーゼe-v13_KDの添加によって補正し、全てのウエルで、該細胞上の最終容量を15μlにする。このコレクションは、観察される効果が、該細胞に適用する該ウイルス添加における差からは生じないことを保証する。それから、活性化段階前に、該細胞をインキュベートする。この段階は、全てのウエルでの、15μlの「複合的誘発物質」を添加した45μlのM199培地による、前記成長培地の置換を含む。4日後、該上清を回収し、先に記載したプロトコルに従って、小規模型コラーゲンI型分解アッセイに使用する。該結果を以下のように解析する:12個のネガティブコントロールから得られた蛍光シグナルを、全てのプレートに関して平均化する。各々のプレート及び各々のMOI(5μl又は10μl)に関して、表1に一覧化した遺伝子を標的化するKDウイルスを用いて感染させた細胞から放出されるサンプルで観察された蛍光シグナルを、ネガティブコントロールの平均パーセント(100%に設定)として表現する。図12Aに示すデータは、2回重複測定の平均値である。表2に一覧化する遺伝子を標的化するAd−siRNAは、初代ヒトSFによる、複合的誘発物質誘導性コラーゲン分解の明らかな減少を媒介する。発明者らはこの実験から、これらの遺伝子は、RASFによるMMP1発現のみならず、RASFによるコラーゲン分解もまた調節することが示される価値ある薬剤標的を示すと結論を下す。同様に、小分子化合物などの阻害剤によるこれらの遺伝子のタンパク質産物の活性の阻害は、SFによる「複合サイトカイン」誘導性コラーゲン分解を減少させることを予測させる。また、発明者らは、そのような作用物質によるこれらの遺伝子のタンパク質産物の活性の阻害が、RA患者において観察される関節変性を減少させるであろうと考える。
【0198】
同様な実験(図12B)において、Ad5-MMP1 v1O-KDウイルスは、SFによるサイトカイン誘導性コラーゲン分解を大幅に減少させることを示し、これはMMP1が、SFによるサイトカイン誘導性コラーゲン分解に関与する主要なコラゲナーゼであることを示唆する。この実験を、図12Aに示す実験に記載するプロトコルに従って実施する。図12Bに示すデータは、8個のデータ点から放射される未加工蛍光シグナル全体の平均及び標準偏差である。そのようなものとして、この実験は、MMP1発現のSFの調節が、RAに関連する軟骨変性を減少させるのに十分であることを示す。そのようなものとして、RASFによるMMP1の減少は、骨及び軟骨の主要構成要素の1つである天然型コラーゲンの減弱された分解の前兆である。
【0199】
(実施例7):Ad−siRNAによる、ARAF1、CHRNA5、DGKB、FGFR3、ILK、KCNF1、MAPK12、MAPK13、NQO2、NR2F6及びSCN9AのRASFにおける発現の減少は、サイトカイン誘導性IL−8発現を阻害する。
(先の実施例に記載した実験に従い同定した)ターゲットの特性(profile)をよりよく理解するために、並びにMMP1とは異なる別の炎症性マーカーであるIL8のターゲット発現減少効果の特異性を調べるために、下記の実施例を使用する。このサンプルは、RA SFでのTNFα誘導性IL8発現におけるターゲット発現減少の効果を測定する。IL8の発現はTNFαによって増加し、炎症性事象に役割を担う。さらに、IL8受容体の小分子阻害剤は、関節炎の動物モデルにおいて効力を有することが示されている(Weidner-Wells MAらの論文, Bioorg Med Chem Lett. (2004)14:4307-11、「小分子インターロイキン−8(IL−8)受容体アンタゴニストの新規クラスである、3,5−ジアリールイソオキサゾール及び3,5−ジアリール−1,2,4−オキサジアゾールの合成並びに構造−活性関連性」を参照されたい)。そのようなものとして、IL8発現阻害を達成することは、RA治療の望ましい特徴である。
【0200】
「IL−8アッセイ」プロトコル:SF(継代9〜12代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、2種類の量(6μl又は12μl)のKDウイルスで感染させる。それから活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。該活性化段階は、全てのウエルでの、10%胎児ウシ血清(加熱不活化済)及び誘発物質(2ng/mlの組換えヒトTNFアルファ)を添加した150μlのDMEMでの該成長培地の置換を含む。活性化段階の48時間後、80μlの上清を回収し、以下に記載するようなIL−8 ELISAでの使用のために希釈する。TNFαで誘起させたサンプル用に、PBS+1%BSAで40倍希釈液を作成する。これらの希釈液からの35μlを、IL−8 ELISAプレートに添加する。
【0201】
白色ルミトラック600(Lumitrac 600)384ウエルプレート(Greiner社)を、0.5μg/mlの抗IL−8抗体MAB208(R&D社)で被覆する。該抗体を、1×PBS(Gibco社)で希釈する。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを、1×PBST(10LのミリQ中に、80gのNaCl、2gのKCl (Sigma社)、11.5gのNa2HPO4・7H20及び2gのKH2PO4;pH 7.4 =10×PBS溶液+0.05%のtween (sigma社))で1回、PBS1×で1回洗浄し、80μlのブロッキング緩衝液(1%BSA+5%スクロース+0.05%NaN3)でブロッキングする。翌日、該プレートを逆さにして該ブロッキング緩衝液を該ELISAプレートから取り除き、吸収紙上で軽くたたく。該プレートを、90μlのPBSTと、90μlのPBS1×で洗浄する。その直後、該プレートに35μlの希釈上清を添加することによってさらに処理する。4℃で一晩のインキュベーション後、該プレートを(先に記載したように)PBSTで1回、PBSで1回洗浄し、1×PBS+1%BSA中の35μl/ウエルのビオチン化抗IL8抗体溶液BAF208(R&D社)50ng/mlと共にインキュベートする。室温で2時間のインキュベーション後、プレートを先に記載したように洗浄し、50μl/ウエルのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(Biosource社)と共にインキュベートする。ストレプトアビジン−HRPコンジュゲートを、1×PBS+1%BSAで1/2000倍希釈する。45分後、プレートを先に記載したように洗浄し、50μl/ウエルのBM Chem ELISA基質(Roche社)と共に5分間インキュベートする。ルミノスキャン上昇照度計(Labsystems社)を用いて、100msの積算時間で、読み出しを実施する。
【0202】
該96ウエルプレート内に、20個のネガティブコントロールを含ませる。IL8発現の阻害割合を以下のように計算する。はじめに、ELISAのバックグラウンドシグナル(IL8不在下)を、全てのサンプルの全ての値から差し引く。それから下記式を適用する:%阻害=[100×(((全てのネガティブコントロールの平均値)−ターゲットサンプルの値)/(全てのネガティブコントロールの平均値))]。図13に示す結果から、発明者らは、ほとんどのターゲットの発現が、MAPK12、MAPK13及びARAF1に見られる最も強力な効果、並びにSLC9A8及びAXLに見出される最も弱い効果を伴って、減弱されたTNFα駆動性IL8発現を媒介したと結論を下す。
【0203】
【表6】
【0204】
以下の配列は、配列番号:1〜244に対応する:
【表7】
【0205】
【表8】
【0206】
【表9】
【0207】
【表10】
【0208】
【表11】
【0209】
【表12】
【0210】
【表13】
【0211】
【表14】
【0212】
【表15】
【0213】
【表16】
【0214】
【表17】
【0215】
【表18】
【0216】
【表19】
【0217】
【表20】
【0218】
【表21】
【0219】
【表22】
【0220】
【表23】
【0221】
【表24】
【0222】
【表25】
【0223】
【表26】
【0224】
【表27】
【0225】
【表28】
【0226】
【表29】
【0227】
【表30】
【0228】
【表31】
【0229】
【表32】
【0230】
【表33】
【0231】
【表34】
【0232】
【表35】
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】正常な関節と、関節リウマチにおけるその変化の模式図(Smolen及びSteinerの文献, 2003より)。
【図2】滑膜性線維芽細胞によるMMP1発現の性質決定。パネルAにおいて、SF溶解物中に存在するMMP1のmRNAレベルをリアルタイムPCRで測定する。これらのMMP1レベルを、同サンプルのリアルタイムPCRによって同様に測定した18Sのレベルに対して標準化する。パネルBは、MMP1特異的ポリクローナル抗体を使用するMMP1タンパク質レベルの検出用ウエスタンブロッティングに使用した上清から検出されたMMP1シグナルを示す。パネルCは、市販のMMP1「活性ELISA(activity ELISA)」(Amersham Biosciences社)に前記上清を適用した結果を示す。示されたシグナルは、試験したサンプルに存在するMMP1活性に比例する。
【0234】
【図3】様々なモデルアデノウイルスを用いて誘起させたSFによるMMP1の発現増加。非感染SF、及び表示のモデル組換えアデノウイルスを用いて感染させたSFからのSF上清をMMP1 ELISAに適用し、発光生成基質を使用することによって測定したMMP1レベルを示す。
【図4】関節リウマチ病理に関連する様々なサイトカインを用いて誘起させたSFによるMMP1の発現増加。SF上清をMMP1 ELISAに適用し、発光生成基質を使用することによって測定したMMP1レベルを示す。白色のバーは、非処理SF、及び表示のサイトカイン又はサイトカイン群の組み合わせを用いて処理したSFからのSF上清のMMP1レベルを示す。灰色のバーは、非処理THP1、又は表示のサイトカイン又はサイトカイン群の組み合わせを用いて処理したTHP1の上清を用いて処理したSF上清のMMP1レベルを示す。
【0235】
【図5】既知の抗炎症性化合物による、SFによるMMP1の「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性発現の用量依存的阻害。「TNFαを主成分とする誘起物質」及び様々な濃度の抗炎症性化合物を用いて処理したSFからのSF上清をMMP1 ELISAに使用し、MMP1発現阻害割合対抗炎症性化合物の対数濃度を示す。
【図6】「リバースMMP1アッセイ」を使用するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングの模式的説明図。
【図7】リバースMMP1 ELISAアッセイで得られたコントロールプレートの配置及び成績。
【0236】
【図8】2回反復の一次選別(A)及び反復選別(B)で試験するサイレンスセレクトコレクションの384個のAd−siRNAの部分集合で実施した、リバースMMP1 ELISAアッセイ成績の代表例。
【図9】リバースMMP1アッセイに対するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。一次選別(Y軸)における二回重複サンプルから得られた平均化相対的発光データを、反復選別(X軸)で得られた対応Ad−siRNAの平均化相対的発光データに対してプロットする。
【0237】
【図10】リバースMMP1アッセイの3MOI反復選別(10A)、並びに該リバースMMP1アッセイの反復選別の細胞毒性及び分泌(10B)用に作成したプレートの配置。
【図11】Ad−siRNAによる、初代SFにおけるターゲットの発現の減少が、用量依存的様式で、サイトカイン誘導性MMP1発現を阻害する。コントロール遺伝子(11A)及び表1に一覧化した遺伝子を標的化するAd−siRNAの様々な量を用いて感染させたSF由来の上清をMMP1 ELISAに使用し、MMP1レベル(11A)又は該ネガティブコントロールに関連するMMP1レベル(11B)を示す。
【0238】
【図12】Ad−siRNAによる初代SFにおけるターゲットの発現の減少は、サイトカイン誘導性天然型コラーゲン分解を阻害する。表示のAd−siRNAで感染させた「TNFαを主成分とする誘起物質」処理SF由来のSF上清を、コラーゲン分解アッセイに使用する。
【図12A】図12Aは、該コントロールに比較して、分解されたコラーゲンの割合を示す。図12Bは、未処理蛍光シグナルを示す。
【図13】Ad−siRNAによる初代SFにおけるターゲットの発現の減少は、TNFα誘導性IL−8発現を調節する。表示のAd−siRNAで感染させたSF由来の上清をIL−8ELISAアッセイに使用し、ネガティブコントロールに対するIL−8発現の阻害割合を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年10月15日に出願された米国特許仮出願第60/619,384号への優先権を主張し、該開示は引用によって本明細書に組み込まれる。。
(発明の分野)
本発明は、細胞外マトリクス(ECM)の分解をもたらす経路に関与するタンパク質の発現を阻害し得る化合物及び発現阻害剤の同定方法に関するものであり、それらの阻害は、関節変性疾患並びに細胞外マトリクス(ECM)分解及び/又は炎症が関与する疾患の予防並びに治療に有用である。
【0002】
細胞外マトリクスの分解が関与する疾患は、これらに限定されないが、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病のような筋骨疾患、ガン転移、呼吸器系疾患(COPD、喘息)、腎臓繊維症及び肝臓繊維症、アテローム性動脈硬化症及び心不全のような心血管系疾患、並びに神経の炎症及び多発性硬化症のような神経系疾患を含む。主に関節変性が関与する疾患は、これらに限定されないが、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎を含む。
【0003】
関節リウマチ(RA)は、炎症及び関節構造の破壊によって特徴付けられる、慢性の関節変性疾患である。該疾患が調べられなかった場合、該疾患は実質的な身体障害、関節機能性の喪失のための痛み、並びに早死にすらもたらす。それゆえ、RA治療の目的は、該疾患を遅延させるのではなく、関節の破壊を停止させるための緩解を実現することである。該疾患の予後の重篤さに加え、(世界規模で、成人の0.8%が冒される)RAの高い罹患率は、強い社会経済的衝撃を意味する。(RAの総説として、発明者らは、Smolen及びSteinerの文献 (2003);Lee及びWeinblattの文献 (2001);Choy及びPanayiの文献 (2001);O'Dellの文献 (2004)並びにFiresteinの文献 (2003)を引用する)
【0004】
RAが自己免疫性疾患であることは広く受け入れられているが、該疾患の「開始段階」を駆動する詳細な機構に関する合意は得られていない。知られているのは、傾向宿主(predisposed host)において、初期誘発物質(initial trigger)(群)が、様々な細胞型(B細胞、T細胞、マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、樹状細胞など)の活性化をもたらす事象のカスケードを媒介する。これに付随し、関節内及び関節の周辺組織内で、様々なサイトカインの増強産生が認められる(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1、IL−15、IL−18など)。該疾患が進行するにつれて、細胞の活性化並びにサイトカイン産生カスケードは自己永続的となる。この初期段階においてすでに、関節構造の破壊はかなり明らかである。該患者の30パーセントは、診断時に骨の侵食の証拠となるX線像を有し、この割合は2年後に、60パーセントにまで増加する。
【0005】
RA患者の関節の組織学的解析は、RA関連性の分解過程に関与する機構を明らかに証拠付けた。滑膜は、関節夾膜を滑液腔から分離する亜裏打ち(sublining)領域及び裏打ち領域からなる細胞層である。炎症の起きた滑膜は、RAの病態生理の中核をなす。滑膜性関節は、それぞれが軟骨層で被覆され、関節腔で隔てられ、かつ滑膜及び関節夾膜で囲まれる、隣接する2つの骨の末端からなるものとして示される。滑膜は、滑膜の裏打ち(軟骨及び骨の上張り)からなり、これは滑膜細胞の薄い層(1〜3個の細胞)、並びに高度に血管新生化される亜裏打ち結合組織層からなる。滑膜は、軟骨を除くほとんど全ての関節内構造を被覆する。健常者とRA患者との間の滑膜における組織学的差異を図1に示す。
【0006】
関節炎の他の多くの形態のように、関節リウマチ(RA)は、局部的活性化又は浸潤単核球に加え、様々な型の単核球の重大な流入によって特徴付けられる滑膜の炎症性反応(「滑膜炎」)によってはじめに特徴付けられる。裏打ち層は肥厚型(該裏打ち層は20個の細胞より厚くなり得る)となり、滑膜は膨張する。しかしそれに加えて、RAの顕著な特徴は、関節の破壊である。関節腔は、軟骨変性及び隣接する骨の破壊の徴候に伴って狭まるか又は消失し、また「糜爛(erosion)」と称される現象が起こる。滑膜の破壊部分は、「パンヌス(pannus)」と称される。滑膜細胞によって分泌された酵素は、軟骨変性をもたらす。
【0007】
この解析は、RA関連性の関節変性の原因となる主要エフェクターがパンヌスであり、ここで、様々なタンパク質分解酵素を産生することによって、滑膜性線維芽細胞は軟骨糜爛及び骨糜爛の最も重要な駆動体であることを示す。進行型RAの患者において、パンヌスは、隣接する軟骨の変性を媒介し、関節腔の狭小化をもたらし、かつ近接する骨及び軟骨を侵襲する可能性がある。コラーゲンI型又はコラーゲンII型は、それぞれ骨組織及び軟骨組織の主要構成要素であり、パンヌスの破壊的特性及び侵襲特性は、コラーゲン分解プロテアーゼ、主にマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)の分泌によって媒介される。軟骨の下の骨、及び軟骨に隣接する骨の糜爛もまたRA過程の一部であり、骨及びパンヌスの接触部分で、破骨細胞の存在から主に生じる。破骨細胞は骨組織に接着して閉じた区画を形成し、その中で破骨細胞は、骨組織を分解するプロテアーゼ(カテプシンK、MMP9)を分泌する。関節内の破骨細胞集団は、活性化されたSF及びT細胞によって、NFkBリガンド(RANKL)の受容体活性化因子の分泌によって誘導される前駆細胞からの骨芽細胞形成によって、異常に増加する。
【0008】
様々なコラーゲン型が、細胞外マトリクス(ECM)の安定性を規定するのに重要な役割を担う。例えば、コラーゲンI型及びコラーゲンII型は、それぞれ骨及び軟骨の主要な構成要素である。典型的には、コラーゲンタンパク質は、コラーゲン繊維として言及される多量体構造へと組織化される。天然型コラーゲン繊維は、タンパク質分解的切断に非常に抵抗性である。ECM分解タンパク質の数種の型(マトリクス−メタロプロテアーゼ(MMP)及びカテプシン)のみが、天然型コラーゲンを分解する能力を有していることが報告されている。カテプシンの中で、主に破骨細胞において活性であるカテプシンKが最も特徴付けられている。
【0009】
マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)は様々な生理的役割をもち、例えばそれらは、他のプロテアーゼの成熟化、成長因子、及び細胞外マトリクス構成要素の分解に関与する。MMPの中で、MMP1、MMP2、MMP8、MMP13及びMMP14が、コラーゲン分解特性を有することが知られている。MMP1はMMPファミリーの一員であり、骨及び軟骨の重要な構成要素である天然型コラーゲンを分解することができる。滑膜性線維芽細胞(SF)によるMMPの増強発現と関節炎疾患の進行との間の相関関係はよく確立されており、関節の糜爛過程の前兆である(Cunnaneらの論文, 2001)。それゆえRAとの関連で、MMP1は、高度に関連するコラーゲン分解タンパク質を表す。インビトロにおいて、RAの病態に関連するサイトカインを用いた培養SFの処理(例えば、TNF−α及びIL1β)は、これらの細胞によってMMP1の発現を増加させる(Andreakosらの論文, 2003)。
【0010】
また、ECM分解タンパク質の活性は、関節の変性にも関与する、RA以外の様々な疾患の進行の原因となる又は該進行に関連する可能性がある。これらの疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎及び強直性脊椎炎を含むが、これらに限定されない。本発明に従って同定された化合物、並びに本明細書で記載するような、MMP発現に関与する標的を使用して治療し得る他の疾患は、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病のような筋骨疾患 (Gapskiらの論文、2004)、ガン転移 (Coussensらの論文、2002)、呼吸器系疾患 (COPD、喘息) (Suzukiらの論文、2004)、肺繊維症、腎臓繊維症 (Schanstraらの論文、2002)、慢性C型肝炎関連性肝臓繊維症 (Reiffらの論文、2005)、アテローム性動脈硬化症及び心不全のような心血管系疾患 (Creemersらの論文、2001)、並びに、神経の炎症及び多発性硬化症のような神経系疾患(Rosenberg、2002)である。そのような疾患を患っている患者は、ECMを酵素分解から保護する治療によって利益を得ることができる。
【0011】
(報告されている展開)
NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)は、RAに伴う痛みを低減させ、患者の生活の質を向上させるために使用される。しかしながらこれらの薬剤が、RA関連性の関節破壊を停止させることはない。
コルチコステロイドは、X線検査で検出されるようなRAの進行を減速させることが見出され、一部の患者(30〜60%)を治療するために低用量で使用される。しかしながら、長期のコルチコステロイド使用には深刻な副作用(皮膚の薄化、骨粗鬆症、白内障、高血圧、高脂血症)が伴う。
【0012】
合成DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)(例えば、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン)は主に、RAの免疫炎症性構成要素に対処する。主な不都合点は、これらの薬剤が、限定的な有効性のみを有することである(DMARDによって関節破壊が遅延されるのみであり、疾患の長期継続的進行は阻害されない)。有効性の欠如は、メトトレキサートを用いた治療の24時間後において、平均で30%の患者のみしか、ACR50スコアを達成しないという事実によって示される。米国リウマチ学会によると、これは、患者の30%のみしか、それらの症状の50%の回復を達成しないということを意味する(O'Dellらの論文, 1996)。さらに、DMARDの作用の詳細な機構は多くの場合明らかでない。
【0013】
生物学的DMARD(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムバブ、リツキシマブ、CTLA4-Ig)は治療用タンパク質であり、RAの病態生理学において重要な役割を有するサイトカイン(例えば、TNF−α)又は細胞(例えば、T細胞又はB細胞)を不活化させる(Kremerらの文献, 2003;Edwardsらの文献, 2004)。TNF−α遮断薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムバブ)とメトトレキサートとの併用療法は、現在利用可能な最も効果的なRA治療であるが、この治療でさえ、12ヶ月の治療後において、患者の50〜60%においてしか病徴の改善(ACR50)が達成されていないこと(St Clairらの論文, 2004)は特筆に値する。抗TNF−α薬に警告を発するいくつかの有害事象が存在し、この型の薬剤に関連する副作用を浮き彫りにしている。感染(結核)血液学的事象及び脱髄性障害の危険性の増大は、TNF−α遮断薬に記載されている(Gomez-Reinoらの文献, 2003も参照されたい)。深刻な副作用に加えて、TNF−α遮断薬はまた、不快な方法での投与(注射部位反応を伴う頻繁な注射)並びに高い生産費用という生物学的治療部門の一般的な不便を共有する。後期開発段階におけるより新しい作用物質は、T細胞共刺激分子及びB細胞を標的とする。これらの作用物質の有効性は、TNF−α遮断薬の有効性に類似していることが予想される。様々な標的療法が、類似してはいるが限定的な有効性を有するという事実は、RAの病原因子の多重度が存在することを示唆する。これはまた、RAに関連する病原性事象の発明者らの理解の欠如の指標となる。
【0014】
RAに対する現在の治療は、限定的有効性(患者の30%に適切な治療がない)のために満足のいくものではない。これは、緩解を達成させるためのさらなる戦略を必要としている。緩解は、余病が、進行的な関節損傷、すなわち進行的な能力障害の危険性に耐えるまで必要とされる。RA治療に現在使用される薬剤の主要標的を表す、RA疾患の免疫炎症性構成要素の阻害は、該疾患の主要な特徴である関節変性の阻害をもたらしはしない。
【0015】
RA患者の関節の組織学的解析は、関節変性の主因を示す高悪性度で侵襲性組織としてのパンヌスを明らかに同定する。パンヌス内において、滑膜性線維芽細胞は、RA発病の根底に横たわる異常に誘発された免疫系の開始と最終的な関節糜爛との間の関連性を表す。現在、長期にわたってパンヌスの糜爛活性を効率的に根絶するRA治療がないので、パンヌスの生成及び/又は該活性を阻害する新規薬剤並びに/若しくは薬剤標的の発見は、新規RA治療の開発の重要な画期的出来事を表現するであろう。
本発明は、特定のタンパク質が、MMP1などの細胞外マトリクス(ECM)分解プロテアーゼの発現をもたらす経路に機能するという発見に基づいており、これらのタンパク質の活性阻害剤は、そのようなプロテアーゼの異常に高い発現が関与する疾患の治療に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、関節変性疾患及び炎症性疾患の治療に有用な分子標的及び化合物、並びにそれらの同定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
本発明は、細胞外マトリクス(ECM)分解を阻害する化合物を同定する方法に関するものであり、化合物を、配列番号:17〜32(本明細書では以降「ターゲット(TARGET)」)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド及びそれらのフラグメントと、前記ポリペプチドが前記化合物に結合可能な条件下で接触させること、並びに細胞外マトリクス(ECM)分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、を含む。
【0018】
本方法の態様は、ターゲットのポリペプチド又はそれらのフラグメントを使用する化合物のインビトロアッセイを含み、そのようなフラグメントは配列番号:33〜127に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ細胞アッセイは、ターゲットの阻害に続いて、例えば、ターゲット発現レベル、ターゲット酵素活性及び/又はマトリクスメタロプロテイナーゼ−1レベルを含む有効な指標を観測することを含む。
【0019】
本発明はまた、(1)アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む発現阻害剤であって、前記ポリヌクレオチドが配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該天然型ポリヌクレオチド配列から設計される核酸配列を含む、前記発現阻害剤、並びに(2)前記発現阻害剤を含み、関節リウマチなどの慢性関節変性疾患の治療又は予防に有用な医薬組成物、に関するものである。
【0020】
本発明の別の実施態様は、細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する状態に苦しむ又は感受性である対象に、効果的にターゲットの発現を阻害する量の発現阻害剤、若しくは効果的にターゲット活性を阻害する量の活性阻害剤を含む医薬組成物を投与することによる、前記状態の治療又は予防方法である。
本発明のさらなる態様は、対象におけるターゲット発現のレベルの指標の測定を含む、細胞外マトリクス(ECM)分解によって特徴付けられる病態に関連する診断方法である。
本発明の別の態様は、炎症、特に異常なマトリクスメタロプロテアーゼ活性の疾患的特徴が関与する疾患の治療に有用な、治療方法、医薬組成物並びにそのような化合物の製造における、本化合物の使用に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(詳細な説明)
下記の用語は、そのすぐ後に記載する意味を有することを意図し、本明細書並びに本発明の意図する範囲を理解することに有用である。
用語「作用物質」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド並びに小分子を含む、任意の分子を意味する。
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンド結合受容体を刺激するリガンドをさす。
【0022】
用語「アッセイ」は、化合物の特定の特性を測定するために使用する任意の工程を意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物のコレクションから、それらの活性に基づいて化合物特徴付ける又は選択するために使用する工程を意味する。
用語「結合親和性」は、非共有結合的関係で、2以上の化合物が互いにどの程度強く相互作用するかを記載する特性である。結合親和性は、定性的(「強い」、「弱い」、「高い」又は「低い」など)又は定量的(KDの測定など)によって、特徴付けることができる。
【0023】
用語「担体」は、医薬組成物の製剤に使用する非毒性物質を意味し、医薬組成物に媒体、容積及び/又は使用可能な形態を提供する。担体は、賦形剤、安定剤又は水性pH緩衝液などの、1以上のそのような物質を含んでよい。生理的に許容し得る担体の例は、リン酸、クエン酸及び他の有機酸を含む水性緩衝液成分又は固体緩衝液成分;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/若しくはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0024】
用語「複合体」は、2以上の化合物が互いに結合する場合に作られる実体を意味する。
用語「化合物」は、本明細書において、本発明のアッセイとの関連で記載する「テスト化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で使用する。そのようなものとして、これらの化合物は、合成又は天然資源に由来する有機化合物若しくは無機化合物を含む。該化合物は、比較的低い分子量で特徴付けられるポリヌクレオチド、脂質又はホルモン類似体などの無機化合物若しくは有機化合物を含む。他の生体高分子有機テスト化合物は、約2個〜約40個のアミノ酸を含むペプチド、並びに抗体又は抗体複合体などの約40個〜約500個のアミノ酸を含むより大きなポリペプチド、を含む。
【0025】
用語「状態」又は「疾患」は、症状の露呈(すなわち、疾病)又は異常な臨床的指標(例えば、生化学的指標)の顕在化を意味する。あるいは、用語「疾患」は、そのような症状又は異常な臨床的指標を進行させる遺伝的リスク若しくは環境的リスク又は傾向をさす。
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロ系又はインビボ系のいずれかにおいて、少なくとも2つの部分が結集することを意味する。
【0026】
用語「ポリペプチドの誘導体」は、それらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素に関するものであり、該ポリペプチドの連続する一続きのアミノ酸を含み、かつ例えば、該ポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較してアミノ酸変異を有するポリペプチドのようなタンパク質の生物活性を保持する。誘導体は、該ポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較して、付加型天然型アミノ酸残基、変更アミノ酸残基、グリコシル化アミノ酸残基、アシル化アミノ酸残基又は非天然型アミノ酸残基をさらに含んでもよい。それはまた、例えば前記アミノ酸配列に共有結合的又は非共有結合的に結合するレポーター分子若しくは他のリガンドのようなポリペプチドの天然型形態のアミノ酸配列に比較して、1以上の非アミノ酸置換基を含んでもよい。
【0027】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、DNA分子、RNA分子及びオリゴヌクレオチドに関するものであり、該ポリヌクレオチドの天然型形態の核酸配列に比較した場合に核酸変異を有し得るポリヌクレオチドのような一続きのポリヌクレオチド又は核酸残基を含む。誘導体は、PNA、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ) エチル-ホスホロチオエートなどの修飾骨格、非天然型核酸残基、又はメチル-、チオ-、硫酸、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、若しくはその検出を促進させるレポーター分子を有する核酸をさらに含んでもよい。
【0028】
用語「ECM分解タンパク質」及び「ECM分解活性」はそれぞれ、骨及び軟骨に見出される細胞外マトリクスを分解可能なタンパク質及び活性をさす。
用語「有効量」又は「治療的有効量」は、医師又は他の臨床医に診断される対象の生物学的反応又は医学的反応を誘起させる化合物若しくは作用物質の量を意味する。
用語「内因性」は、哺乳動物が自然的に産生する物質を意味するものとする。用語「プロテアーゼ」、「キナーゼ」又はGタンパク質共役受容体(「GPCR」)に関連する内因性は、哺乳動物(例えば、限定しないが、ヒト)によって自然に産生されるものを意味するものとする。対照的に、この文脈における用語非内因性は、哺乳動物(例えば、限定しないが、ヒト)によって自然に産生されないものを意味するものとする。両方の用語は、「インビボ」及び「インビトロ」の両方を記載するのに使用できる。例えば、限定ではないが、スクリーニングアプローチにおいて、内因性ターゲット又は非内因性ターゲットを、インビトロのスクリーニング系に引用してもよい。限定ではないがさらなる例として、哺乳動物のゲノムを操作して非内因性ターゲットを含ませた場合、インビボ系を用いる候補化合物のスクリーニングが利用可能である。
【0029】
用語「発現性核酸」は、タンパク質性分子、RNA分子、又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
用語「発現」は、内因性発現、及び形質導入による過剰発現の両方を含む。
用語「発現阻害剤」は、細胞内で本来発現する特定のポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現に選択的に干渉するように設計したポリヌクレオチドを意味する。より詳細には、「発現阻害剤」は、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド配列内の、少なくとも約17個の連続するヌクレオチドに同一又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA分子若しくはRNA分子を含む。典型的な発現阻害剤分子は、リボザイム、二本鎖siRNA分子、自己相補的一本鎖siRNA分子、遺伝的アンチセンス構築物、及び修飾された安定化骨格を有する合成RNAアンチセンス分子を含む。
【0030】
用語「発現性核酸」は、タンパク質性分子、RNA分子、又はDNA分子をコードする核酸を意味する。
用語「ポリヌクレオチドのフラグメント」は、完全な配列の活性に、同一である必要性はないが実質的に類似性を示す一続きの連続した核酸残基を含むオリゴヌクレオチドをさす。
用語「ポリペプチドのフラグメント」は、完全な配列の機能的活性に、同一である必要性はないが実質的に類似性を示す一続きの連続したアミノ酸残基を含むペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素をさす。
【0031】
用語「ハイブリダイゼーション」は、塩基対を介して、一方の核酸鎖が相補鎖と結合することによる、任意の工程を意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補塩基間の水素結合形成の効力により、2つの核酸配列間で形成される複合体をさす。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中で形成してよく(例えば、C0t解析又はR0t解析)、又は溶液中に存在する核酸配列と、固相支持体(例えば、紙、膜、フィルター、チップ、ピン又はスライドガラス、若しくは細胞又はそれらの核酸が固定されている任意の他の適切な基質)上に固定化された別の核酸配列との間で形成してもよい。用語「厳しい条件」は、ポリヌクレオチドと、特許請求の範囲に記載のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを可能にする条件をさす。厳しい条件は、塩濃度、例えばホルムアミドのような有機溶媒の濃度、温度、並びに当業者に周知の他の条件によって規定することができる。特に、塩濃度の低下、ホルムアミド濃度の増大、又はハイブリダイゼーション温度の上昇は、厳しさを増大させ得る。
【0032】
用語「反応」との関連での用語「阻害する」又は「阻害すること」は、反応が、化合物の不在下とは対照的に、化合物の存在下で低減すること又は阻害されることを意味する。
用語「阻害」は、タンパク質又はポリペプチドの発現の不在若しくは最少化をもたらす過程の減少、該過程の下方制御、又は該過程に対する刺激の除去をさす。
用語「誘導」は、タンパク質又はポリペプチドの発現をもたらす過程の誘発、上方制御又は刺激をさす。
用語「リガンド」は、内因性の天然型受容体に特異的な内因性の天然型分子を意味する。
【0033】
用語「医薬として許容し得る塩」は、本発明化合物の非毒性無機酸付加塩及び有機酸付加塩並びに塩基付加塩をさす。
これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終単離及び精製の間、インサイチュウで調製することができる。
用語「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク質性分子、タンパク質画分、ペプチド、オリゴペプチド、酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCR酵素など)に関するものである。
【0034】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖形態又は二本鎖形態のポリ核酸、及びセンス方向又はアンチセンス方向のポリ核酸、厳しい条件下で特定のポリ核酸にハイブリダイズする相補的ポリ核酸、並びにその塩基対の少なくとも約60%で相同なポリヌクレオチド、及びより好ましくはその塩基対の70%、最も好ましくは90%、並びに最も特別な実施態様においてはその塩基対の100パーセントが共通なポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドは、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸、及びそれらの合成類似体を含む。ポリヌクレオチドはまた、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸を含む。ポリヌクレオチドを、その長さが、約10塩基〜約5000塩基、好ましくは約100塩基〜約4000塩基、より好ましくは約250塩基〜約2500塩基の範囲で変化する配列によって記載する。ポリヌクレオチドの一実施態様は、約10塩基〜約30塩基の長さを含む。ポリヌクレオチドの特別な実施態様は、約17個〜約22個のヌクレオチドからなるポリリボヌクレオチドであり、より一般的には低分子干渉RNA(siRNA)として記載する。別の特別な実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'−O−(2−メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、又は非天然型核酸残基を含む核酸、若しくはメチル-、チオ-、硫酸、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-、及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基を含む核酸、又はその検出を促進させるレポーター分子含む核酸である。
【0035】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(ターゲットなど)、タンパク質性分子、タンパク質ペプチド及びオリゴペプチド画分に関するものである。
用語「溶媒和物」は、1以上の溶媒分子と本発明に有用な化合物の物理的会合を意味する。この物理的会合は水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば1以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合に単離可能である。「溶媒和物」は、液相溶媒和物と単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的溶媒和物は、水和物、エタノラート及びメタノラートを含む。
【0036】
用語「対象」は、ヒト及び他の哺乳動物を含む。
用語「ターゲット(TARGET又はTARGETS)」は、本明細書に記載するアッセイに従って同定され、MMP1の発現レベルの調節に関与するタンパク質(群)を意味する。
「治療的有効量」は、医師又は他の臨床医に診断される対象の生物学的又は医学的反応を誘起させる薬剤若しくは医薬品の量を意味する。特に、細胞外マトリクス分解によって特徴付けられる病態の治療に関して、用語「効果的なマトリクスメタロプロテアーゼ阻害量」は、細胞外マトリクス分解が有意に減少するような対象の疾患罹患組織におけるMMP−1産生の生物学的に有意な減少をもたらす本発明の化合物の有効量を意味することを意図する。マトリクスメタロプロテアーゼ阻害特性を有する化合物、又は「マトリクスメタロプロテアーゼ阻害化合物」は、有効量で細胞に与える場合、そのような細胞におけるMMP−1の産生の生物学的に有意な減少をもたらすことができる化合物を意味する。
【0037】
用語「治療(treating)」は、進行の阻止又は該病態を変化させる意図をもって実施し、それによって障害、疾患又はそのような障害又は状態の1以上の症状を含む状態を緩和させる介入を意味する。したがって、「治療(treating)」は、治療的処理、及び予防的処置(prophylactic measure)又は予防的処置(preventative measure)の両方をさす。治療が必要な対象は、該障害が予防すべき対象に加えて、すでに障害となった対象を含む。本明細書で使用するように、関連用語「治療(treatment)」は、用語「治療(treating)」を先に定義したように、障害、症状、疾患又は病理状態を治療する行動をさす。
【0038】
(細胞外マトリクス分解に関連するターゲットに基づく出願人の発明)
SFによるMMP1発現は、インビボにおいて、軟骨変性に関与する糜爛性表現型に対するSFの活性化に関連するのと同様に、ECM分解に関与する。これは、関節変性の減少をもたらすMMP群の阻害剤であるTIMP1を過剰発現するアデノウイルスにより、関節炎表現型が自然発症的に進行するTNFα遺伝子組換えマウスへの投与によって示されている(Shettらの論文, Arthritis Rheum. (2001) 44:2888-98)。それゆえ、SFによるMMP1発現の阻害は、RAの治療に対して有益な治療的アプローチを提示する。したがって、活性化SFにおける候補タンパク質の発現の減少が、MMP1の減少を付随的にもたらすのであれば、それからそのようなタンパク質はMMP1発現の減少に関与し、かつRA治療の治療戦略の開発の関連標的である。本発明者は、本明細書で「Ad−siRNA」として言及するshRNAライブラリーの発現を媒介する組換えアデノウイルスをスクリーニングすることによって、そのような標的タンパク質を同定している。本明細書で使用するコレクションはさらに、「アデノウイルスsiRNAライブラリー」又は「サイレンスセレクト(SilenceSelect)」コレクションとして言及する。これらのライブラリーは組換えアデノウイルスを含み、RNA干渉(RNAi)に基づく機構(WO03/020931)によって、標的遺伝子の発現レベルを減少させるshRNAの細胞内発現を媒介するノックダウン(KD)ウイルス又はAd−siRNAとしてさらに言及する。スクリーニング研究を、以下の実施例1に記載する。
【0039】
先に記載したように、本発明は、以下に記載する実施例での様々な選別の結果として同定されたターゲットポリペプチドが、MMP1の上方制御及び/又は誘導のみならず、細胞外マトリクス分解の上方制御及び/又は誘導にすらも機能する因子であるという、本発明者の発見に基づく。ECM分解タンパク質の活性は、関節の変性を伴う疾患を含む、細胞外マトリクスの進展的変性に関連する様々な疾患の進行の原因であり、かつ関連すると考えられる。
【0040】
一態様において、本発明は、細胞外マトリクス分解を阻害する薬剤候補化合物のアッセイ方法に関連し、前記ポリペプチドが前記化合物へと結合することを可能にさせる条件下で、前記化合物を、配列番号:17〜127のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はそれらのフラグメントと接触させること、並びに前記ポリペプチドと化合物との複合体形成を検出する、ことを含む。複合体形成を測定する好ましい一手段は、前記ポリペプチドへの前記化合物の結合親和性を測定することである。
【0041】
より詳細には、本発明は、細胞外マトリクス分解を阻害する作用物質の同定方法に関するものであり、該方法は:
(a)哺乳動物細胞集団を、ターゲットポリペプチド又はそれらのフラグメントに対する結合親和性を阻害する1以上の化合物に接触させること、及び、
(b)細胞外マトリクス分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、
をさらに含む。
【0042】
前記化合物−ポリペプチド特性は上述のように、ターゲットの発現及び/又は活性に関連し、当業者によって選択される測定可能な事象であることに言及する。該測定可能な特性は、例えば、配列番号:33〜127などのポリペプチドターゲットのペプチドドメインに対する結合親和性、又は細胞外マトリクス分解の多くの生化学的マーカーの任意の1つのレベルであってよい。細胞外マトリクス分解は、例えば、MMPポリペプチド及び/又はカテプシンポリペプチドの発現などの前記過程の間に誘導される酵素のレベルを測定することによって測定可能である。
本発明の好ましい実施態様において、ターゲットポリペプチドは、表1に一覧化したような、配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の別の特別な実施態様は、配列番号:19〜22、25、26、29、30及び32として同定したキナーゼターゲットを含む。本発明の別の特別な実施態様は、配列番号:17、18、24及び27として同定したイオンチャネルターゲットを含む。さらに好ましい実施態様は、配列番号:23として同定した核ホルモン受容体(NHR)ターゲットである。
【0045】
当業者の選択によって、本アッセイ方法を、各々が前記薬剤候補化合物が実際に前記ポリペプチド上で作用し、それによって細胞外マトリクス分解を阻害するかどうかを決定するために設計する、一連の測定として機能させるために設計してよい。例えば、前記ポリペプチド又はそれらのフラグメントへの化合物の結合親和性を測定するために設計したアッセイは、前記テスト化合物を対象に投与した場合に細胞外マトリクス分解を阻害するのに有用であるかを解明するのに必要ではあるが十分ではない。
【0046】
そのような結合に関する情報は、異なる特性を測定し、さらに例えばMMP−1発現などの生化学的経路を低減させ得るアッセイに使用する、一連のテスト化合物を同定するのに有用であり得る。そのような第二アッセイを設計し、前記テスト化合物が前記ポリペプチドに対する結合親和性を有し、実際には細胞外マトリクス分解を阻害することを確認してもよい。誤った陽性の読み取りを防ぐために、常に適切なコントロールを置くべきである。
【0047】
これらの測定を行う順番は、本発明の実施に決定的であるとは考えられず、任意の順番で実施可能である。例えば、前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性に関する情報が知られていない場合、一連の化合物のスクリーニングアッセイをはじめに実施してよい。あるいは、ポリペプチドドメインに対して結合親和性を有するものとして同定した一連の化合物、又は前記ポリペプチドの阻害剤であるものとして同定した化合物の群を選別してもよい。しかしながら、本アッセイが薬剤候補化合物の最終的使用に意味を有するためには、細胞外マトリクス分解活性の測定が必要である。それでもなお、本発明の前記ポリペプチドへの結合親和性の制御及び測定を含む検証的研究は、任意の治療的適用又は診断的適用に有用な化合物を同定することに有用である。
本アッセイ方法を、1以上のターゲットタンパク質又はそれらのフラグメントを使用して、インビトロで実施してよい。選択したターゲットの典型的タンパク質ドメインフラグメントのアミノ酸配列は、下記表中に一覧化した配列番号:33〜127である。
【0048】
【表1A】
【0049】
化合物と前記ポリペプチドターゲットとの結合親和性は、表面プラズモン共鳴バイオセンサー(Biacore)、標識化合物を用いる飽和結合解析(例えば、スキャッチャード及びリンドモ(Lindmo)解析)、微分紫外分光光度計、蛍光偏光アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー (FLIPR)システム、蛍光共鳴エネルギー転移及び生物発光共鳴エネルギー転移の使用などの、当業者に既知の方法で測定可能である。また、化合物の結合親和性は、解離定数(Kd)、又はIC50若しくはEC50で表現することができる。IC50は、前記ポリペプチドへの別のリガンドの結合の50%阻害に必要な化合物濃度を示す。EC50は、ターゲット機能を測定する任意のアッセイにおける、最大効率の50%を得るのに必要な濃度を示す。解離定数Kdは、リガンドが前記ポリペプチドにどの程度よく結合するかの尺度であり、該ポリペプチド上の結合部位のちょうど半分が飽和するのに必要なリガンド濃度に等しい。高親和性結合を有する化合物は、例えば100nM〜1pM程度の低いKd値、低いIC50値及び低いEC50値を有し;中程度親和性結合から低親和性結合は、例えばマイクロモラー程度の高いKd値、高いIC50値及び高いEC50値に関連する。
【0050】
また、本アッセイ方法を細胞性アッセイで実施してよい。ターゲットを発現している宿主細胞は内因性発現を有する細胞、又は例えば形質導入によってターゲットを過剰発現している細胞であり得る。前記ポリペプチドの内因性発現が、容易に測定可能な基線を決定するのに十分でない場合、ターゲットを過剰発現する宿主細胞を使用してもよい。過剰発現は、ターゲット基質の最終生成物のレベルが、内因性発現による活性レベルよりも高いという利点を有する。したがって、現在利用可能な技術を使用してそのようなレベルを測定することは、より容易である。
【0051】
細胞外マトリクス(ECM)分解を減少させる化合物の同定方法の一実施態様は、ターゲットポリペプチド又はそれらの機能的フラグメント若しくは誘導体を発現している哺乳動物細胞集団を培養すること;前記細胞集団におけるECM分解の第一レベルを測定すること;任意の時間に該細胞集団を活性化させること;化合物又は化合物群の混合物に前記細胞集団を曝露すること;前記化合物又は前記化合物群の混合物への前記細胞集団の曝露中、若しくは曝露後に、前記細胞集団におけるECM分解の第二レベルを測定すること;並びに、ECM分解を減少させる化合物(群)を同定すること;を含む。先に記載したように、ECM分解は、ターゲットポリペプチド及び/又は既知のECM分解タンパク質の発現並びに/若しくは活性を測定することで測定してよい。好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はコラーゲンを分解することができ、より好ましくはコラーゲンI型及び/又はコラーゲンII型を分解することができる。本発明の別の好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はマトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)であり、より好ましくは、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP13及びMMP14からなる群から選択される。この文脈において、最も好ましいECM分解タンパク質はマトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP1)である。さらに別の好ましい実施態様において、前記ECM分解タンパク質はカテプシンKである。
【0052】
ECM分解タンパク質の発現は、特異抗体を使用するウエスタンブロッティング、又は特定のECM分解タンパク質を特異的に認識する抗体を使用するELISAなどの、当業者に既知の方法で測定できる。
ECM分解タンパク質の活性は、蛍光性の小ペプチド基質を使用することによって測定することができる。しかしながら、これらの基質の特異性はしばしば限定される。一般的に、これらの基質の使用は、他のプロテアーゼの干渉を避けた生化学的アッセイにおける精製プロテアーゼの試験に限定される。本発明者は、ハイスループットモードで、培養細胞上清などの複雑な培地中のコラーゲン分解酵素の活性の検出を可能にさせるプロトコルを開発した。このプロトコルは、基質として蛍光ラベルで標識した天然型コラーゲンを使用する。
【0053】
本発明者は、「ノックダウン」ライブラリーを使用することによって、ECM分解に関与するターゲット遺伝子群を同定した。この型のライブラリーは、細胞内で、該対応遺伝子産物の発現及び活性に加えて、特定遺伝子の発現を阻害又は抑制するsiRNA分子を、組換えアデノウイルスによって細胞へと形質導入することによる選別である。ウイルスベクター内の各siRNAは、特定の天然の遺伝子に対応する。ECM分解を抑制するsiRNAを同定することによって、特定の遺伝子発現とECM分解との間の直接的な関連性を示すことができる。ノックダウンライブラリー(本明細書において、それらのタンパク質発現産物は「ターゲット」ポリペプチドとして言及される)を使用して同定したターゲット遺伝子群を、その次に本発明の化合物同定方法に使用して、ECM分解を阻止するために使用することができる。実際に、表2(配列番号:128〜141及び231〜244)に一覧化した配列を含むshRNAは、これらターゲット遺伝子の発現及び/又は活性を阻害し、細胞のECM分解活性を減少させ、これらはECM分解におけるターゲットの役割を裏付ける。
【0054】
【表2】
【0055】
化合物の存在下又は不在下で実施する、キナーゼによる基質のリン酸化を測定することによる、該キナーゼ活性を測定する特定の方法は、当業者に周知である。
イオンチャネルは膜タンパク質複合体であり、それらの機能は、生体膜を通るイオンの拡散を促進させることである。膜又は脂質二重層は、疎水性で、親水性分子及び荷電分子への低誘電体バリアを構築する。イオンチャネルは、前記膜の疎水的内部を通る、高伝導性で親水性の経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的なパッチクランプ法を使用して測定できる。ハイスループットの蛍光に基づくアッセイ又はハイスループットのトレーサーに基づくアッセイもまた、イオンチャネルの活性を測定するのに広く使用できる。これらの蛍光に基づくアッセイは、イオンチャネルを開けるか又は閉じる能力に基づく化合物を選別し、それによって膜を通る特定の蛍光色素濃度を変化させる。トレーサーに基づくアッセイの場合、細胞内外のトレーサー濃度の変化は、放射能測定又はガス吸収分析法で測定する。
【0056】
核受容体の活性化は、リガンドが結合することによって誘導される受容体の立体構造変化が関与すると考えられる。プロテアーゼ保護アッセイの結果は、核ホルモンのアゴニスト及びアンタゴニストが、受容体タンパク質を異なる立体構造に適合化させることを裏付けた(Keidelらの論文 Mol Cell. Biol. 14:287 (1994);Allanらの論文. J. Biol.Chem. 267:19513 (1992))。したがって、プロテアーゼ保護アッセイを使用して、NHRの活性を測定することができる。活性化補助因子又はリプレッサーの動員は、NHR活性の評価用に開発された別のアッセイに基づく。
【0057】
化合物の存在下又は不在下で実施する、デヒドロゲナーゼによる基質の酸化を測定する、デヒドロゲナーゼ活性特異的な測定方法は、当業者に周知である。
プロテアーゼであるポリペプチドによる基質の切断を測定することによって、前記化合物による阻害を測定する特定の方法は、当業者に周知である。古典的には、基質は、標的プロテアーゼによって切断され得る基質であるペプチド配列を介して消光剤に連結する蛍光基を使用する。該リンカーの切断は、蛍光基と消光剤を分離させ、蛍光の増幅を生じさせる。
【0058】
表4は、以下に記載するMMP1アッセイに対して、出願人のノックダウンライブラリーを使用して同定した多数の他のポリペプチド型を一覧表にしている。そのようなポリペプチドは、エフェクタータンパク質を活性化させることができるGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、細胞内の二次メッセンジャーレベルの変化をもたらす。GPCRの活性は、そのような二次メッセンジャーの活性レベルを測定することによって測定可能である。細胞内における2つの重要かつ有用な二次メッセンジャーは、サイクリックAMP(cAMP)及びCa2+である。活性レベルは、ELISA又は放射性技術、若しくはCa2+と接触したときに蛍光あるいは発光シグナルを生じさせる基質を使用することによって直接的に、又はレポーター遺伝子解析によって間接的に、当業者に既知の方法で測定できる。典型的には、1以上の二次メッセンジャーの活性レベルを、二次メッセンジャーに応答性のプロモーターによって制御されるレポーター遺伝子を用いて測定してよい。すでに知られたそのような目的で使用されるプロモーターは、細胞内のサイクリックAMPレベルに応答性であるサイクリックAMP応答性プロモーター、及び細胞内の細胞質性Ca2+レベルに感受性であるNF−AT応答性プロモーターである。レポーター遺伝子は一般的に、容易に検出可能な遺伝子産物を有する。レポーター遺伝子は、細胞へ安定的に感染又は一過的に形質移入させることができる。有用なレポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、強化型緑色蛍光タンパク質、不安定化色色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びβ−ガラクトシダーゼである。
【0059】
前記ポリペプチドを発現している細胞は、先に記載したように、天然に該ポリペプチドを発現している細胞であってよく、又は該細胞に形質移入をして該ポリペプチドを発現させてもよいことは理解されるべきである。
一実施態様において、本発明の方法は、前記細胞集団を前記ポリペプチドのアゴニストと接触させる工程をさらに含むことが好ましい。これは、特定の選択した細胞集団におけるポリペプチドの発現が、その活性の適切な検出に低すぎる場合の方法として有用である。アゴニストを使用することによって、前記ポリペプチドを誘発させてよく、前記化合物が該ポリペプチドを阻害する場合に、適切な読み出しが可能である。同様な考え方を、ECM分解の測定に適用する。好ましい実施態様において、本方法に使用する細胞は哺乳動物の滑膜性線維芽細胞であり、ECM分解活性を誘導するために使用してよい誘発物質は、関節炎の分野で関連するサイトカイン:例えば、TNFアルファ、ILベータ、IL6、OSM、IL17、IL15、IL18及びMIF1アルファである。別の好ましい実施態様において、前記誘発物質は、単球、マクロファージ、T細胞及びB細胞などの、関節炎の分野に関連するサイトカイン産生細胞を接触させることによって産生される因子の混合物である。サイトカイン産生細胞は、因子群の複雑かつ不偏的混合物を産生させることによる接触に応答する。また、使用するサイトカイン産生細胞がパンヌス内に見出される場合、この誘発に適用したサイトカインは、関節リウマチ患者の滑液中に見出され、最終的に産生された因子の混合物は、関節炎患者の関節に存在する因子群を含むであろう。
【0060】
本発明はさらに、細胞外マトリクス分解を阻害する化合物を同定する方法に関するものであり:
(a)化合物を、配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
(b)前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性を測定すること;
(c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞集団を、少なくとも10マイクロモラーの結合親和性を示す化合物と接触させること;及び、
(d)細胞外マトリクス分解を阻害する化合物を同定すること;
を含む。
【0061】
前記細胞集団を、例えば培地中での直接的インキュベーション、又は該細胞内への核酸の移入による異なる手段を介して、前記化合物又は化合物の混合物に曝露させてもよい。そのような移入を、例えば裸の単離DNA、又はRNAでの直接的形質移入、若しくは組換えベクターなどの送達系手段による様々な手段によって達成してよい。また、リポソーム又は他の脂質に基づくベクターなどの他の送達手段を使用してもよい。好ましくは、前記核酸化合物は、組換えウイルスなどの(組換え)ベクターの手段で送達する。
【0062】
ハイスループット用に、抗体フラグメントライブラリー、ペプチドファージライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich社)、脂質ライブラリー(BioMol社)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich社)又は天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec社)などの化合物ライブラリーを使用してよい。
【0063】
好ましい薬剤候補化合物は、低分子量化合物である。低分子量化合物は、例えば500ダルトン以下の分子量を有し、生体システムにおける良好な吸収及び透過性を有するであろう化合物であり、結果的に500ダルトンよりも大きな分子量を有する化合物よりも、より成功的な薬剤候補でありそうな化合物である(Lipinskiらの論文. (1997))。ペプチドは、別の好ましい薬剤候補化合物のクラスを含む。ペプチドは優れた薬剤候補であり得、生殖ホルモン及び血小板凝集阻害剤などの商業的に価値の高い数々の例がある。天然化合物は、薬剤候補化合物の別の好ましいクラスである。そのような化合物を天然資源中に見出して抽出し、その後合成してよい。脂質は、別の好ましい薬剤候補化合物のクラスである。
【0064】
薬剤候補化合物の別の好ましいクラスは、抗体である。また、本発明は、ターゲットに対して指示された抗体を提供する。これらの抗体は、内因的に産生されて前記細胞内のターゲットに結合してもよく、又は前記組織に添加して該細胞外に存在するターゲットポリペプチドに結合してもよい。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であってよい。本発明は、FAbフラグメント及びFAb発現ライブラリーの製品、並びにFvフラグメント及びFv発現ライブラリーの製品に加え、キメラ抗体、一本鎖抗体及びヒト化抗体を含む。別の実施態様において、前記化合物は、天然型単一ドメイン抗体の最も小さな機能的フラグメントであるナノボディ(nanobody)(Cortez-Retamozoらの論文、2004)であってよい。
【0065】
特定の実施態様において、ポリクローナル抗体を本発明の実施に使用してよい。当業者はポリクローナル抗体の調製方法を知っている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物に、例えば免疫作用物質と、所望であればアジュバントの1回以上の注射することによって、抗体価を上げることができる。典型的には、該免疫作用物質及び/又はアジュバントを、複数回の皮下注射又は腹腔内注射によって、哺乳動物内に注入する。また、抗体を、そのままのターゲットタンパク質又はポリペプチド、フラグメント、若しくはコンジュゲート(conjugate)を含む誘導体、あるいは細胞膜に埋め込まれたターゲットなどのターゲットタンパク質又はポリペプチドの他の抗原決定基、若しくはファージディスプレイライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対して産生してよい。
【0066】
免疫した哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に前記免疫作用物質を連結させることは有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例は、これらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン及びダイズトリプシン阻害因子を含む。使用してよいアジュバントの例は、フロイント完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート(dicorynomycolate))を含む。当業者は過度の実験をせずに、免疫プロトコルを選択してよい。
【0067】
いくつかの実施態様において、前記抗体はモノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体は、当業者に既知の方法を使用して調製してよい。本発明のモノクローナル抗体は、該宿主が該抗体への免疫応答を開始することを妨げる「ヒト化」であってよい。「ヒト化抗体」は、相補性決定領域(CDR)並びに/若しくは非ヒト免疫グロブリンに由来する軽可変ドメイン構造及び/又は重可変ドメイン構造の他の部分であるが、該分子の残りの部分が1以上のヒト免疫グロブリン由来である抗体である。また、ヒト化抗体は、提供者又は受容者の非修飾軽鎖又はキメラ軽鎖に結合したヒト化重鎖によって特徴付けられる抗体を含み、その逆のものも含む。抗体のヒト化は、当業者に既知の方法で達成してよい(例えば、Mark及びPadlanの文献, (1994)、『実験薬理学ハンドブック(The Handbook of Experimental Pharmacology)』「4章 モノクローナル抗体のヒト化」、113巻、Springer-Verlag, New Yorkを参照されたい)。遺伝子導入動物を使用してヒト化抗体を発現させてもよい。
【0068】
また、ヒト化抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom及びWinterの論文, (1991) J. Mol. Biol. 227:381 8;Marksらの論文 (1991). J. Mol. Biol. 222:581-97)を含む、当業者に既知の様々な技術を使用して産生することもできる。Coleらの論文、及びBoernerらの論文の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleらの文献,(1985) 『モノクローナル抗体及びがん治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)』, Alan R. Liss, 77頁;Boernerらの論文 (1991). J. Immunol, 147(1):86-95)。
【0069】
一本鎖抗体の産生用の当業者に既知の技術を適用して、本発明のターゲットポリペプチド及びタンパク質に対する一本鎖抗体を産生することができる。該抗体は、一価抗体であってよい。一価抗体の調製方法は、当業者に周知である。例えば、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む方法である。一般的には、重鎖の架橋を防ぐために、Fc領域の任意の点で該重鎖を切断する。あるいは、関連するシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換する、又は架橋を防ぐために削除する。
【0070】
二重特異性抗体はモノクローナル抗体であり、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体であり、少なくとも2つの異なる抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又は受容体若しくは受容体サブユニットに対する結合特異性を有する抗体である。本事例において、一方の結合特異性はターゲットの1ドメインであるが、もう一方の結合特異性はターゲットの同一又は異なる別のドメインである。
【0071】
二重特異性抗体の作成方法は、当業者に既知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産物は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づいており、該2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの論文, (1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為的組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合体を産生し、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー段階は通常、正しい分子の精製を達成させる。同様な手順は、Trauneekerらの論文 (1991) EMBO J. 10:3655-9に記載される。
【0072】
別の好ましい実施態様に従って、本アッセイ方法は、ターゲットに対する結合親和性を有するものとして同定された薬剤候補化合物、及び/又は1以上のターゲットに対するアンタゴニスト活性などの下方制御活性を有するものとしてすでに同定された薬剤候補化合物を使用する。
本発明はさらに細胞外マトリクス分解を阻害する方法に関連し、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約30個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチド配列を含む、発現阻害剤と哺乳動物細胞を接触させることを含む。
【0073】
本発明の別の態様は、細胞外マトリクス分解の阻害方法に関連し、哺乳動物細胞内における、ターゲットポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドの翻訳を阻害する発現阻害剤に、哺乳動物細胞を接触させることを含む。特定の実施態様は、ターゲットmRNAと発現阻害剤を対合させ、それによってターゲットポリペプチドの発現を下方制御又は阻害するのに機能する、少なくとも1つのアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含む組成物に関するものである。好ましくは該阻害剤はアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、前記阻害剤は、配列番号:1〜16からなる群から選択される天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該配列から人為的に加工した核酸配列を含む。
【0074】
本発明の特別な実施態様は、前記発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:1〜16をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(siRNA、好ましくはshRNA;該siRNA、好ましくは該shRNAが、ターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するような、siRNA、好ましくはshRNA)からなる群から選択される方法に関するものである。
【0075】
本発明の別の実施態様は、前記発現阻害剤が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:1〜16をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(該siRNA、好ましくはshRNAがターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するような、siRNA、好ましくはshRNA)を発現する核酸である方法に関するものである。好ましくは、該発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又はsiRNA、好ましくはshRNAであり、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約30個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチドを含む。より好ましくは、該発現阻害剤は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、又はsiRNA、好ましくはshRNAであり、配列番号:1〜16からなる群から選択されるヌクレオチド配列の、少なくとも約17個〜約25個の連続したヌクレオチドを補完するポリリボヌクレオチドを含む。特別な実施態様は、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を補完するポリリボヌクレオチド配列を含む。
【0076】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現の下方制御は、翻訳レベル又は転写レベルで達成することができる。好ましくは、本発明のアンチセンス核酸は、具体的には、ターゲットポリペプチドをコードする核酸又は対応するメッセンジャーRNAの全体若しくは一部にハイブリダイズすることができる核酸フラグメントである。さらに、その一次転写産物のスプライシングを阻害することによって、ターゲットポリペプチドをコードし得る核酸配列の発現を減少させるアンチセンス核酸を設計してよい。ターゲットをコードする核酸の発現を下方制御する又は阻害し得る、任意の長さのアンチセンス配列が、本発明の実施に適する。好ましくは、該アンチセンス配列は、少なくとも約17個のヌクレオチドである。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードするDNAの調製及び使用、並びにオリゴ及び遺伝的アンチセンスの使用は、当業者に既知である。
【0077】
発現阻害剤の一実施態様は、配列番号:1〜16を含む核酸に対するアンチセンスである核酸であり、例えばアンチセンス核酸(例えば、DNA)をインビトロで細胞に導入するか、又は遺伝子治療としてインビボで対象に投与して、配列番号:1〜16を含む核酸の細胞性発現を阻害してもよい。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約17個〜約100個のヌクレオチドを含む配列、及びより好ましくは約18個〜約30個のヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンス核酸は、反対方向に発現する、配列番号:1〜16の配列から選択される、約17個〜約30個の連続するヌクレオチドから調製してよい。
【0078】
アンチセンス核酸は好ましくはオリゴヌクレオチドであり、完全にデオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、又は両方のいくつかの組み合わせから構成してよい。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであり得る。該オリゴヌクレオチドは、所望であれば、安定性及び/又は選択性を向上させるために化学的に修飾してよい。オリゴヌクレオチドは細胞内ヌクレアーゼによる分解に影響を受けやすいので、該修飾は例えば、ホスホジエステル結合の遊離酸素を置換する硫黄基の使用を含み得る。この修飾は、ホスホロチオエート結合とよばれる。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性、ポリアニオン性、かつ内因性ヌクレアーゼに抵抗性である。さらに、ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがそのターゲット部位にハイブリダイズすると、該RNA−DNA二重鎖は該ハイブリッド分子のmRNA構成要素を切断する内因性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化させる。
【0079】
さらに、ホスホラミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に非常に抵抗性であるべきである。さらに、化学基を、糖部分の2'炭素と、ピリミジンの5位炭素(C−5)に付加し、安定性を高め、そのターゲット部位へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合を促進させることができる。修飾は、当業者に既知の他の修飾に加えて、2'-デオキシ、O−ペントキシ、O−プロポキシ、O−メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオエート、修飾塩基を含み得る。
【0080】
ターゲットのレベルを減少させる発現阻害剤の別の型はリボザイムである。リボザイムは、触媒ドメインと基質結合ドメインを別々に有する触媒RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性、また場合によっては非水素結合による相互作用によって、そのターゲット配列と結合する。触媒部分は、特定部位でターゲットRNAを切断する。リボザイムの基質ドメインを人為的に加工して、それを特定のmRNA配列へと指示させることができる。リボザイムは、相補的塩基対を介して、ターゲットmRNAを認識し、それから結合する。いったん正しいターゲット部位へと結合すると、リボザイムは酵素的に作用してターゲットmRNAを切る。リボザイムによるmRNAの切断は、対応するポリペプチドの合成を指示するそのmRNAの能力を破壊する。一度リボザイムがそのターゲット配列を切断すると、リボザイムは放出され、繰り返し他のmRNAに結合して切断することができる。
【0081】
リボザイムの形態は、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ肝炎ウイルスモチーフ、グループIイントロンモチーフ又はRNaseP RNAモチーフ(RNAガイド配列との関連で)、若しくはアカパンカビVS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド構造又はヘアピン構造を有するリボザイムは、細胞内で真核生物プロモーターから発現可能(Chenらの論文,(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)であるので、容易に調製される。本発明のリボザイムは、真核生物細胞内で、適切なDNAベクターから発現可能である。所望であれば、該リボザイム活性を、第二リボザイムによる一次転写産物からのその放出によって増強させてよい(Venturaらの論文,(1993) Nucleic Acids Res. 21:3249-55)。
【0082】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後にターゲットmRNAにハイブリダイズする配列に隣接するリボザイムの触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と結合させることによって、化学的に合成してよい。該オリゴデオキシリボヌクレオチドを、プライマーとして基質結合配列を使用することによって増幅させる。該増幅産物を真核生物性の発現ベクターにクローン化する。
【0083】
リボザイムは、DNA、RNA又はウイルスベクターに挿入した転写単位から発現する。リボザイム配列の転写は、真核生物性RNAポリメラーゼI(pol (I)、RNAポリメラーゼ II (pol II)、又はRNAポリメラーゼ III (pol III)のプロモーターから駆動される。pol IIプロモーター又はpol IIIプロモーターからの転写産物は、全細胞において高レベルで発現するであろう。所与の細胞型での所与のpol IIプロモーターのレベルは、近傍の遺伝子制御配列に依存するであろう。原核生物性RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞内で発現する場合、原核生物性RNAポリメラーゼプロモーターも使用する(Gao及びHuangの論文, (1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモーターから発現したリボザイムが哺乳動物細胞内で機能し得ることは示されている(Kashani-Sabetらの論文,(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0084】
特に好ましい阻害剤は、低分子干渉RNA(siRNA、好ましくはスモールヘアピン(small hairpin)RNA「shRNA」)である。siRNA、好ましくはshRNAは、抑制されたRNAに相同な配列である二本鎖RNA(dsRNA)による遺伝子抑制の転写後過程を媒介する。本発明に従ったsiRNAは、配列番号:1〜16、好ましくは配列番号:128〜141及び231〜244に記載される配列からなる群から選択される、連続した17個〜25個のヌクレオチド配列に相補的又は相同な17個〜25個のヌクレオチドからなるセンス鎖、及び該センス鎖に相補的な17個〜25個のヌクレオチドからなるアンチセンス鎖を含む。最も好ましいsiRNAはセンス鎖とアンチセンス鎖を含み、これらは互いに、及びターゲットポリヌクレオチド配列に100パーセント相補的である。好ましくは該siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖を連結させるループ領域を含む。
【0085】
本発明に従った自己相補的一本鎖shRNA分子ポリヌクレオチドは、ループ領域リンカーによって連結されたセンス部分及びアンチセンス部分を含む。好ましくは、該ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長であり、より好ましくは5〜15ヌクレオチド長であり、最も好ましくは8ヌクレオチド長である。最も好ましい実施態様において、該リンカー配列は、UUGCUAUA (配列番号:871)又はGUUUGCUAUAAC (配列番号:872)である。自己相補的一本鎖siRNAはヘアピンループを形成し、普通のdsRNAよりもより安定である。さらに、それらはベクターからより容易に産生される。
【0086】
アンチセンスRNAと同様に、siRNAを修飾して核酸分解に対する抵抗性を確認、又は活性を増幅、若しくは細胞分布を促進、あるいは細胞の取り込みを増進させることができ、そのような修飾は、修飾されたヌクレオシド内結合、修飾核酸塩基、修飾糖、及び/又は1以上の部分又はコンジュゲートへの該siRNAの化学的結合から構成してもよい。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNA設計則(これらの法則の議論及びsiRNAの調製例として、引用により本明細書に組み込まれる2004年11月4日に公開されたW02004094636、及びUA20030198627)に適合しないヌクレオチド配列に比較したターゲット配列の改良的減縮を与えるsiRNA設計則に従って選択する。
【0087】
また、本発明は細胞外マトリクス分解を阻害し得るポリヌクレオチドを発現し得るDNA発現ベクター、及び発現阻害剤として先に記載した、組成物、並びに前記組成物の使用方法に関するものである。
これらの組成物及び方法の特別の態様は、ターゲットポリペプチドと選択的に相互作用し得る細胞内結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの誘導発現による、該ターゲットポリペプチドの発現の下方制御又は阻害に関するものである。細胞内結合タンパク質は、細胞内で、発現して前記ポリペプチドの機能を中和するポリペプチドと選択的に相互作用又は結合し得る全てのタンパク質を含む。好ましくは、細胞内結合タンパク質は中和抗体、又は配列番号:17〜32のターゲットポリペプチドの抗原決定基、好ましくは配列番号:33〜127のドメインに結合親和性を有する中和抗体のフラグメントである。より好ましくは、該結合タンパク質は一本鎖抗体である。
【0088】
この組成物の特別な実施態様は、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号:17〜32をコードするポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、及び配列番号:1〜16に対応するポリリボヌクレオチドの部分に十分に相同な低分子干渉RNA(siRNA;該siRNAが、ターゲットポリリボヌクレオチドからターゲットポリペプチドへの翻訳に干渉するようなsiRNA)からなる群から選択される発現阻害剤を含む。
【0089】
該発現阻害剤を発現するポリヌクレオチドは、好ましくはベクター内に含まれる。該ポリ核酸を、前記核酸配列を発現させ得るシグナルに機能的に連結させ、好ましくは、いったん該細胞内に導入するとアンチセンス核酸を発現する組換えベクター構築物を利用する細胞内に導入する。アデノウイルスベクター系、レトロウイルスベクター系、アデノ随伴ウイルスベクター系、レンチウイルスベクター系、単純ヘルペスウイルスベクター系又はセンダイウイルスベクター系を含む、様々なウイルスに基づく系が利用可能であり、これらの全てを使用して、ターゲット細胞内における発現阻害剤のポリヌクレオチド配列を導入し、発現させてよい。
【0090】
好ましくは、本発明の方法に使用するウイルスベクターは複製欠損型である。通常、そのような複製欠損型ベクターは、該感染細胞における該ウイルスの複製に必要な、少なくとも1領域を包む。これらの領域は、任意の当業者に既知の技術で(全体的に、又は部分的に)削除するか、又は付加することで非機能的にすることができる。これらの技術は、全体削除、置換、(複製に)必須な領域に対する1個以上の塩基の部分的削除又は部分的付加を含む。そのような技術は、遺伝子操作技術を使用して、又は突然変異誘発物質で処理することによって、インビトロ(単離DNA上で)又はインサイチュウで実施してよい。好ましくは該複製欠損型ウイルスは、該ウイルス粒子のキャプシド化に必要なゲノム配列を保持する。
【0091】
好ましい実施態様において、ウイルス性成分はアデノウイルス由来である。好ましくは、媒体は、アデノウイルスキャプシド、又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体内に梱包されたアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルスの生物学はまた、分子レベルで比較的よく知られている。アデノウイルスベクター用の多くのツールが開発され続けており、それゆえアデノウイルスキャプシドを、本発明のライブラリーにおける組み込みに好ましい媒体とさせている。アデノウイルスは、種々の細胞に感染し得る。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、異なる細胞優先傾向を有する。本発明のアデノウイルスキャプシドが、好ましい実施態様において入り得るターゲット細胞集団を組み合わせ、拡張することは、該媒体が、少なくとも2種のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。好ましいアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、引用によって本明細書に組み込まれる米国公開特許出願第20030180258号及び第20040071660号に開示される。
【0092】
好ましい実施態様において、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルス後期タンパク質又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を都合に合わせて使用して、特定細胞へ該媒体をターゲット化させてよく、又は該細胞への該媒体の強化した送達を誘導してもよい。好ましくはアデノウイルス由来の核酸は、本質的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、完全なアデノウイルスキャプシド又はその機能的部分、類似体及び/又は誘導体の形成を可能にさせる。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、アデノウイルスE2A又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。好ましくは、アデノウイルス由来の核酸は、細胞内で、アデノウイルス由来の核酸の複製を少なくとも部分的には促進させる、少なくとも1つのE4領域タンパク質又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードする核酸を含む。本出願の実施例に使用するアデノウイルスベクターは、本方法の処理発明に有用なベクターの典型である。
【0093】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクター系である。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルスであり、それらの構築は当業者に既知である。レトロウイルスベクターは、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)及びフレンドウイルスなどの、異なる型のレトロウイルスから構築できる。レンチウイルスベクター系もまた、本発明の実施に使用してよい。レトロウイルス系及びヘルペスウイルス系は、神経細胞の形質移入の好ましい媒体であり得る。
【0094】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が利用できる。AAVウイルスは、感染細胞のゲノム内に、安定的かつ部位特異的様式で組み込まれる、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。AAVは、細胞増殖、細胞形態又は細胞分化にいかなる影響をも与えずに幅広い範囲の細胞に感染することができ、かつヒトの病理的状態には関与していないようである。
ベクター構築において、本発明のポリリボヌクレオチド作用物質を、1以上の制御領域に連結させてよい。適切な制御領域(群)の選択は、一般的な当業者のレベルの範囲内で日常的事項である。制御領域はプロモーターを含み、エンハンサー、サプレッサーなどを含んでよい。
【0095】
本発明の発現ベクターに使用してよいプロモーターは、構成的プロモーター及び制御型(誘導性)プロモーターの両方を含む。プロモーターは、宿主次第で、原核生物性又は真核生物性であってよい。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なプロモーターは、lacプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、ラムダP.sub.rプロモーター、P.sub.1プロモーター、及びtrpプロモーターである。真核生物(ウイルスを含む)プロモーターの中で、本発明の実施に有用なプロモーターは、遍在性プロモーター(例えば、HPRT、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモーター(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療遺伝子プロモーター(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異性を示し、かつ遺伝子導入動物で使用されてきた動物性転写制御領域を含む組織特異的プロモーター(例えば、平滑筋細胞内のアクチンプロモーター、又は内皮細胞において活性なFltプロモーター及びFlkプロモーター):膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの論文,(1984)Cell 38:639-46;Ornitzらの論文、(1986)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの論文,(1987)Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの論文,(1985)Nature 315:115-22)、リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの論文、(1984)Cell 38:647-58;Adamesらの論文、(1985)Nature 318:533-8;Alexanderらの論文、(1987)Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳腺、リンパ球、及び肥満細胞において活性なマウス乳ガンウイルス制御領域(Lederらの論文,(1986)Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの論文,(1987)Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なアルファ−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの論文,(1985)Mol. Cell. Biol.,5:1639-48;Hammerらの論文,(1987)Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの論文,(1987)Genes and Devel.、1:161-71)、骨髄性細胞において活性なベータ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramらの論文,(1985)Nature 315:338-40;Kolliasらの論文,(1986)Cell 46:89-94)、脳内の乏突起膠細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの論文,(1987)Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Saniの論文,(1985)Nature 314.283-6)、及び視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの論文,(1986)Science 234:1372-8)である。
【0096】
本発明の実施に使用してよい他のプロモーターは、分裂細胞において優先的に活性化されるプロモーター、刺激に応答するプロモーター(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)、テトラサイクリン制御型転写モジュレーター、サイトメガロウイルス前初期プロモーター、レトロウイルスLTRプロモーター、メタロチオネインプロモーター、SV−40プロモーター、E1aプロモーター、及びMLPプロモーターを含む。
【0097】
追加的なベクター系は、患者へのポリヌクレオチド作用物質の導入を促進する非ウイルス性システムを含み、例えば、リポフェクションによって、所望の配列をコードするDNAベクターをインビボで導入することができる。リポソーム介在性形質移入が直面する困難を制限するために設計した合成陽イオン性脂質を使用して、マーカーをコードする遺伝子のインビボ形質移入用リポソームを調製できる(Felgner,らの論文,(1987)Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの論文,(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの論文,(1993)Science 259:1745-8を参照されたい)。陽イオン性脂質の使用は、負に荷電した核酸の封入を促進し、かつ負に荷電した細胞膜との融合を促進し得る(Felgner及びRingoldの論文,(1989)Nature 337:387-8)。核酸の輸送に特に有用な脂質化合物及び脂質組成物が、国際特許公報WO 95/18863及びWO 96/17823、並びに米国特許第5,459,127号に記載されている。インビボで、特定の器官に外因性遺伝子を導入するためのリポフェクションの使用は、確かな実用上の利点を有し、かつ、特定の細胞型への形質移入を指示することは、例えば、膵臓、肝臓、腎臓及び脳などの、細胞の不均質性を有する組織に特に都合がよい。標的化の目的で、脂質を他の分子と化学的に共役させてよい。例えば、ホルモン又は神経伝達物質のような標的化ペプチド、及び、例えば抗体のようなタンパク質、又は非ペプチド分子を、化学的にリポソームに共役させることができる。また、他の分子、例えば、陽イオン性オリゴペプチド(例えば、国際特許公報WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際特許公報WO 96/25508)、又は陽イオン性ポリマー(例えば、国際特許公報WO 95/21931)は、インビボでの核酸の形質移入を促進させるのに有用である。
【0098】
また、裸プラスミドとして、インビボでDNAベクターを導入することが可能である(米国特許第5,693,622号、第5,589,466号及び第5,580,859号を参照されたい)。治療目的用の裸DNAベクターは、当業者に既知の方法、例えば形質移入、電子穿孔法、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞内に導入できる(例えば、Wilsonらの論文,(1992)J. Biol. Chem. 267:963-7;Wu及びWuの論文,(1988)J. Biol. Chem. 263:14621-4;Hartmutらの論文、1990年3月15日に出願されたカナダ特許出願第2,012,311号;Williamsらの論文(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい)。また、受容体介在性DNA送達アプローチも使用できる(Curielらの論文、(1992)Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの論文,(1987)J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0099】
また、本発明は、ターゲット阻害剤として同定した1以上の化合物の有効量、及び/又は先に記載したような発現阻害剤を含む、生体適合性の細胞外マトリクス分解阻害組成物を提供する。
生体適合性組成物は、固体、液体、ゲル又は他の形態であってよい組成物であり、本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター及び抗体を活性形態、例えば生物活性に影響し得る形態で維持する。例えば、本発明の化合物は、ターゲットの逆アゴニスト活性又はアンタゴニスト活性を有するであろうし;核酸は複製、伝達内容を翻訳、又はターゲットの相補的mRNAにハイブリダイズすることができるであろうし;ベクターはターゲット細胞に形質移入させ、先に記載したようなアンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現させることができるであろうし;抗体は、ターゲットポリペプチドドメインに結合するであろう。
【0100】
好ましい生体適合性組成物は、例えば、塩イオンを含むトリス緩衝液、塩イオンを含むリン酸緩衝液、又は塩イオンを含むHEPES緩衝液を使用して緩衝化された水溶液である。通常、塩イオン濃度は、生理的レベルと同等である。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含んでよい。より好ましい実施態様において、生体適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。そのような組成物は、局所、経口経路、非経口経路、鼻腔内経路、皮下経路、及び眼球内経路による投与用に製剤可能である。非経口投与は、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、又は注入技術を含むものを意味する。該組成物を、所望の標準的で周知で非毒性の生理的に許容し得る担体、アジュバント及び媒体を含む用量単位製剤で、非経口的に投与してよい。
【0101】
本組成物発明の特に好ましい実施態様は、医薬として許容し得る担体との混合物で、先に記載したような治療的有効量の発現阻害剤を含む、細胞外マトリクス分解阻害組成物である。別の好ましい実施態様は、ECM分解が関与する状態、又は該状態に対する感受性の治療又は予防用医薬組成物であって、効果的に細胞外マトリクス分解を阻害する量のターゲットアンタゴニスト又は逆アゴニスト、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物、若しくは医薬として許容し得る担体との混合物中のそのプロドラッグを含む。
【0102】
経口投与用医薬組成物は、経口投与に適した用量で、当業者に周知の医薬として許容し得る担体を使用して製剤することができる。そのような担体は、該医薬組成物が、患者による経口摂取用に、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することを可能にする。経口使用用医薬組成物は、所望であれば、錠剤核又は糖衣錠核を得るために適切な助剤を添加した後、活性化合物と固形賦形剤を混合し、選択的にできた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工しることによって調製できる。適切な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの、炭水化物充填剤若しくはタンパク質充填剤;トウモロコシ、コムギ、イネ、イモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、又はカルボキシメチル−セルロースナトリウムなどのセルロース;アラビア及びトラガカントを含むゴム;及び、ゼラチン並びにコラーゲンなどのタンパク質である。所望であれば、架橋結合したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤又は可溶化剤を添加してもよい。糖衣錠核を、濃縮糖溶液などの適切な被覆剤と合わせて使用してもよく、また糖衣錠核は、アラビアゴム、滑石、ポリビニル−ピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒混合物又は有機溶媒混合物を含んでよい。染料又は色素を、製品の識別のため、若しくは活性化合物の量、すなわち用量を明らかにするために、錠剤被覆剤又は糖衣錠被覆剤に添加してもよい。
【0103】
経口的に使用可能な医薬製剤は、ゼラチンから作られる軟らかい密封カプセルに加えて、ゼラチンから作られた押し込み型カプセル、及びグリセロール又はソルビトールなどの被覆剤を含む。押し込み型カプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤若しくは結合剤、滑石又はステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び、選択的に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟らかいカプセル内で、活性化合物を、安定剤と共に、又は安定剤を含まずに、脂肪油、液体、若しくは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁してよい。
【0104】
好ましい滅菌注射製剤は、非毒性の、非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液若しくは懸濁液であり得る。医薬として許容し得る担体の例は、生理食塩水、緩衝食塩水、等張食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム、又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又はそれらのような塩の混合物)、リンガー溶液、ブドウ糖、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせであり、1,3−ブタンジオール及び滅菌固定油を、溶媒又は懸濁溶剤として都合に合わせて使用する。モノ−グリセリド、又はジ−グリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を使用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸も注射製剤での使用が見出される。
【0105】
また、組成物媒質は、薬剤吸収スポンジとして機能し得る親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの、任意の生体適合性又は非細胞毒性のホモポリマー若しくはヘテロポリマーから調製されるハイドロゲルであり得る。特に、酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンから得られたような特定のハイドロゲルは市販されている。例えば、外科的介入の間、ハイドロゲルを、治療組織表面上に直接的に付着させることができる。
【0106】
本発明の医薬組成物の実施態様は、本発明のポリヌクレオチド阻害剤をコードする複製欠損型組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどの形質移入賦活剤を含む。ポロクサマーの例は、市販のポロクサマー407(BASF社、Parsippany、N.J.)、及び非毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸させたポロクサマーを、例えば、外科的介入の間、治療組織の表面上に、直接的に付着させてもよい。ポロクサマーは、より低い粘度を有しているが、ハイドロゲルと実質的に同じ利点を有する。
【0107】
また、活性発現阻害剤を、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンで、例えば界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル内のそれぞれに封入してよい。そのような手法は、『レミングトンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)』(1980)第16版、Osol, A.編に記載されている。
【0108】
持続放出製剤を調製してよい。持続放出製剤の適切な例は、マトリクスが例えば薄膜又はマイクロカプセルのような造形品の形態中に前記抗体を含む、固体の疎水性重合体の半透性マトリクスを含む。持続放出マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル樹脂)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる、注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニル、及び乳酸−グリコール酸などの重合体は、100日間以上にわたる分子の放出が可能であるが、特定のハイドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。封入された抗体が長時間体内に存在する場合、抗体は37℃での水分への曝露の結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の損失、及び免疫原性の変化の可能性をもたらす。関与する機構によって、安定化のために合理的な戦略を工夫してよい。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合であることが発見されたならば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、含水率を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特定の重合体マトリクス組成物を開発することによって達成してよい。
【0109】
先に記載したように、治療的有効量は、前記症状又は前記状態を緩和させる、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストの量を意味する。そのような化合物の治療効果及び毒性は、培養細胞又は実験動物での標準的な薬学的手法、例えばED50(集団の50%に治療効果のある用量)、及びLD50(集団の50%に対する致死用量)によって決定できる。治療効果に対する毒性の用量比が治療指数であり、これは比率、LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。培養細胞アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用の用量範囲を策定することに使用する。そのような化合物の用量は血中濃度の範囲内にあるのが好ましく、毒性がほとんど若しくは全くないED50を含む。該用量は、実施する投薬形態、患者の感受性、及び投与経路次第で、この範囲内で変化する。
【0110】
任意の化合物に関して、治療的有効量を、培養細胞アッセイ、又は動物モデル、通常はマウス、ウサギ、イヌ、若しくはブタのいずれかで、はじめに見積もることができる。また、所望の濃度範囲及び投与経路を達成するために、動物モデルを使用する。それから、そのような情報を使用して、ヒトでの投与に有用な用量及び経路を決定することができる。的確な用量は、治療患者を考慮して、それぞれの医師によって選択される。用量及び投与を調整して十分なレベルの活性部分を提供する、又は所望の効果を維持させる。考慮されてよい付加的因子は、患者の病状の重篤度、年齢、体重、及び性別;食事、所望の治療の持続時間、投与方法、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、及び治療に対する耐性/反応性を含む。特定の製剤の半減期及びクリアランス速度次第で、長時間作用性医薬組成物を、3〜4日毎、毎週、又は2週毎に1回投与してもよい。
【0111】
本発明に従った医薬組成物を、様々な方法で対象に投与してよい。 医薬組成物を、陽イオン性脂質と複合体を形成させ、リポソーム内に封入して標的組織に直接的に付加してよく、又は当業者に既知の他の方法で標的細胞へと送達してもよい。所望の組織への局所的投与を、直接注入、経皮吸収、カテーテル、輸液ポンプ、又はステントで実施してよい。DNA、DNA/媒体複合体、又は組換えウイルス粒子を、治療部位に局所的に投与する。送達の選択的経路は、これらに限定されないが、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、エアロゾル吸入、経口(錠剤形態、又は丸薬形態)、局所送達、全身送達、眼球送達、腹腔内送達、及び/又はくも膜下腔送達を含む。リボザイムの送達及び投与の実施例が、Sullivanらの文献WO 94/02595で提供されている。
【0112】
本発明に従った抗体を、ボーラスのみ、時間をかける注入、又はボーラス及び時間をかける注入の投与の両方で送達してよい。当業者は、異なるタンパク質用製剤よりも、異なるポリヌクレオチド用製剤を利用する可能性がある。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置に特異的である。
本明細書において先に論じたように、組換えウイルスを使用して、本発明で有用なポリヌクレオチド作用物質をコードするDNAを導入してよい。本発明に従った組換えウイルスは一般的に、約104〜約1014pfuの用量形態で製剤及び投与する。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量を使用するのが好ましい。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ウイルス粒子懸濁液の感染力に対応し、適切な培養細胞へ感染させ、形成されたプラークの数を測定することで決定する。ウイルス溶液のpfu力価を決定するための手法は、先行技術中に詳細に説明されている。
【0113】
また、本発明は、細胞外マトリクス分解が関与する病態を患う対象に、本明細書に記載するような細胞外マトリクス分解を阻害する医薬組成物、好ましくは治療的有効量の本発明の発現阻害剤を投与することを含む、細胞外マトリクス分解の阻害方法を提供する。細胞外マトリクス分解が関与する疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、腱炎及び歯周病などの筋骨疾患、ガン転移、呼吸器系疾患(COPD、喘息)、腎臓繊維症及び肝臓繊維症、アテローム性動脈硬化症及び心不全などの心血管系疾患、並びに神経の炎症及び多発性硬化症などの神経系疾患を含む。本発明に従った治療により好ましい疾患は、乾癬性関節炎、若年性関節炎、早期関節炎、反応性関節炎、変形性関節炎、強直性脊椎炎などの変形性関節疾患である。本方法に従う治療の最も好ましい変形性関節疾患は、関節リウマチである。また、本発明は、炎症性疾患の治療方法を提供する。
【0114】
前記患者への本発明の発現阻害剤の投与は自己投与、及び他人による投与の両方を含む。該患者は、現在の疾患又は病状の治療を必要としていてもよく、又は骨代謝の障害に冒される疾患及び病状の危険性を阻止又は減少させるための予防的治療を望んでいてもよい。対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放性製剤を介して、本発明の発現阻害剤を送達してよい。
【0115】
本方法の好ましい投与計画は、前記患者における異常なレベルの細胞外マトリクス分解を減少させる、及び好ましくは前記変性の原因である自己永続的過程を終結させるのに十分な時間、本発明の発現阻害剤の効果的阻害量を、炎症によって特徴付けられる病態を患っている対象に投与することを含む。本方法の特別な実施態様は、前記患者の関節におけるコラーゲン分解及び骨変性をそれぞれ低減又は阻止する、及び好ましくは前記変性の原因である自己永続的過程を終結させるのに十分な時間、マトリクスメタロプロテアーゼを阻害する量の本発明の発現阻害剤を、関節リウマチの進行を患っている対象、若しくは該進行に感受性の対象に投与することを含む。
【0116】
また、本発明は、先に記載したような、細胞外マトリクス分解が関与する疾患の治療用薬剤又は予防用薬剤の調製用作用物質の使用に関するものである。好ましくは、該病理的状態は関節炎である。より好ましくは、該病理状態は関節リウマチである。
先に記載したような本発明の実施に有用なポリペプチド又はポリヌクレオチドを、溶液中で遊離、固相支持体に固定、細胞表面上に付着、又は細胞内に位置させてよい。本方法を実施するために、該アッセイの自動化を適合させるのに加えて、ターゲットポリペプチド又は前記化合物のどちらか一方を固定化して、該ポリペプチドの非複合体形態からの複合体の分離を促進させる。ターゲットポリペプチドと化合物との相互作用(例えば、結合の)は、反応物質を含む、任意の適切な容器内で達成できる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管を含む。一実施態様において、ポリペプチドをマトリクスに結合させることができるドメインを付加した融合タンパク質が提供可能である。例えば、ターゲットポリペプチドに「His」タグを付加し、その後にNi−NTAマイクロタイタープレート上に吸着させることができる、又はターゲットポリペプチドとのProtA融合体をIgGに吸着させることができ、それから該ポリペプチドを細胞溶解物(例えば、(35)S標識)及び候補化合物と混合し、該混合物を複合体系性に有利な条件下(例えば、生理的条件の塩及びpH)でインキュベートする。インキュベーションの後、該プレートを洗浄して結合していない全ての標識を除去してマトリクスを固定する。放射能の量は直接的に、又は該複合体の解離の後の上清で測定できる。あるいは、該複合体をマトリクスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、標準的な電気泳動技術を使用して、ゲルからターゲットタンパク質に結合しているタンパク質のレベルを定量することができる。
【0117】
マトリクス上にタンパク質を固定する他の手法もまた、化合物を同定する方法に使用可能である。例えば、ターゲット又は前記化合物のどちらかを、ビオチンとストレプトアビジンとの結合を利用して固定することができる。本発明の、ビオチン化ターゲットタンパク質分子は、当業者に周知の技術を使用するビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)(例えば、ビオチン化キット(biotinylation kit)、Pierce Chemicals社、Rockford、Ill.)から調製することができ、ストレプトアビジンで被覆した96ウエルプレート(Pierce Chemical社)のウエル内に固定させることができる。あるいは、ターゲットと反応するが、前記化合物へのターゲットの結合には干渉しない抗体を、該プレートのウエルに誘導体化することができ、抗体結合によって、ターゲットをウエル内に補足することができる。先に記載したように、前記ターゲットが存在する該プレートのウエル内で、標識候補化合物の調合液をインキュベートし、ウエル内に補足された複合体の量を定量することができる。
【0118】
配列番号:1〜16のターゲットポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定する。本発明者は本明細書で、これらの遺伝子を標的とするAd−siRNAを用いた哺乳動物細胞の形質移入が、細胞外マトリクス分解を促進させる因子の放出を減少させることを示す。
また、本発明は、ECM分解が関与する病理的状態の診断方法に関するものであり、対象のゲノムDNA内の、配列番号:1〜16の少なくとも1つの核酸配列を測定すること;該配列を、データベース及び/又は健常者から得た核酸配列と比較すること;及び、病理的状態の発現に関連するあらゆる差異を同定すること;を含む。
【0119】
さらに本発明の別の態様は、対象の細胞外マトリクス分解が関与する病理的状態、又は該状態への感受性を診断する方法に関するものであり、生体サンプル中の配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの量を測定すること;及び該量を、健常者におけるポリペプチド量と比較すること(ここで、健常者に比較したポリペプチド量の増加が、該病理的状態の存在の指標となる);を含む。
さらに、本発明を下記の図面及び実施例で説明する。
【実施例】
【0120】
並べられたアデノウイルスshRNA(スモールヘアピンRNA)発現ライブラリー(WO99/64582に記載される産物及び使用法)との組み合わせで使用する場合、下記アッセイは、滑膜性線維芽細胞(SF)の能力を調節してMMP1を産生させ、かつ軟骨の重要な構成要素であるコラーゲンを分解させる因子の発見に有用である。候補因子を、一次アッセイを介してはじめに選別し、次に二次アッセイで選別する。
【0121】
実施例1は、マトリクスメタロプロテアーゼ1(MMP1)のタンパク質レベルの検出用ELISAを使用するアデノウイルスsiRNAライブラリーの一次アッセイスクリーニングの開発及び設定を記載し、「リバースMMP1アッセイ(reverse MMP1 assay)」として本明細書で言及する。実施例2は、該スクリーニング及びその結果を記載する。実施例3は、非特異的方法で、MMP1発現を阻害する任意の標的を取り除く選別を記載する。実施例4は、内因性SFの発現用標的の部分集合の試験を記載する。実施例5は、サイトカイン誘導性のMMP1発現の阻害用Ad−siRNAの部分集合を試験する用量反応実験を記載する。実施例6は、本明細書において、より機能的に配向し、かつSFの上清中のコラーゲン分解を検出する「コラーゲン分解アッセイ」に言及する第二アッセイを記載する。実施例7は、サイトカイン誘導性のIL−8発現の阻害用Ad−siRNAの部分集合の試験を記載する。
【0122】
(使用したコントロールウイルス):
これらの調査に使用するコントロールウイルスを、以下に一覧化する。dE1/dE2Aアデノウイルスを、以下に記載するアダプタープラスミドとWO99/64582に記載されるPER.E2Aパッケージング細胞内のヘルパープラスミドpWEAd5AflII-rITR.dE2Aとの共形質移入で作成する。
(A)ネガティブコントロールウイルス:
Ad5-LacZ:WO02/070744においてpIPspAdApt6-lacZとして記載される:
Ad5-ALPP:1.9kbの挿入断片をNsiIを用いた消化によってpGT65-PLAP(Invitrogen社)から単離し、平滑末端化し、続いてEcoR1で消化し、EcoRI及びHpaIで消化したpIPspAdApt6にクローン化する。
Ad5-eGFP:WO02/070744においてpIPspAdApt6-EGFPとして記載される。
Ad5-eGFP_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:245)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0123】
Ad5-ルシフェラーゼ_v13_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:246)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-DCK_v1_KD:標的配列ATGAAGAGCAAGGCATTCC (配列番号:247)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-PRKCL1_v1_KD:標的配列TGCCTGGGACCAGAGCTTC (配列番号:248)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-TNFSF15_v1_KD:標的配列GGAAGTAATTGGATCATGC (配列番号:249)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-M6PR_v1_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:250)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0124】
(B)ポジティブコントロールウイルス:
Ad5-MMP1:pIPspAdapt6プラスミドへとクローン化したMMP1をコードするcDNAを、古典的なフィルターコロニーハイブリダイゼーション法によって、ヒト胎盤cDNAライブラリー(WO02/070744を参照されたい)から単離する。ヒト胎盤cDNAライブラリーを細菌へと形質転換し、寒天プレート上にまく。(Q-pix装置(Q-pix device)(Genetix社)を使用して)数千個のコロニーを拾い、寒天プレート上に再配置する。細菌を成長させた後、これらのプレート上にハイブリダイゼーションフィルターを被せる。これらのフィルターに、MMP1特異的プローブを用いた古典的ハイブリダイゼーション手順を適用する。このプローブは、下記のプライマーを使用する胎盤cDNAライブラリーでのPCRから得る:
上流:GTTCTGGGGTGTGGTGTCTCACAGC (配列番号:873);及び、
下流:CAAACTGAGCCACATCAGGCACTCC (配列番号:874)。
ハイブリダイゼーション後のフィルター上の陽性シグナルスポットに対応する細菌コロニーを拾い、プラスミド調製に使用する。5'配列の検証は、該挿入断片の5'配列がNM_002421に対応することを裏付ける。
【0125】
Ad5-MMP13:MMP13のcDNAを、PCRによって、ヒト滑膜性線維芽細胞由来cDNA標本から単離する。1498bpのPCR産物を、HindIII/EcoRIクローニング法を使用して、pIPspAdapt6へとクローン化する。配列検証は、該挿入断片が、NM_002427の18bp〜1497bpに対応することを裏付ける。
Ad5-MYD88:このcDNAは、pIPspAdapt6で構築されたヒト胎盤cDNAライブラリーから単離する。MYD88の発現を媒介するウイルスは、Galapagos Genomics社で行ったゲノム選別の1つでヒットしたものとして同定する。該挿入断片配列の検証は、該挿入断片がNM_002468の40bp〜930bpに対応することを裏付する。
Ad5-MMP1_v10_KD:標的配列:GCTGACCCTGAAGTTCATC (配列番号:251)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
Ad5-PRKCE_v11_KD:標的配列GTCATGTTGGCAGAACTC (配列番号:252)。WO03/020931に記載されるように、Sap1部位を使用してベクターへとクローン化して作成したウイルス。
【0126】
(実施例1):リバースMMP1アッセイの開発
MMP1を産生する滑膜性線維芽細胞(SF)の能力を最初に試験することによって、MMP1アッセイを開発する。
MMP1を産生するSFの能力を評価するにあたり、これらの細胞を、前炎症性IL1βシグナル伝達経路に関与するMYD88アダプター分子の発現を媒介する組換えアデノウイルスで感染させた。このウイルスは、これらの細胞におけるMMP1発現を増加させることが予期される(Vincenti及びBrinckerhoffの文献, 2002を参照されたい)。
【0127】
6ウエルプレートの1ウエルにつき40,000個のSFを、DMEM+10%FBS中に播種し、各々のウエルは、eGFP、MYD88又はMMP1(1細胞あたり7500個のウイルス粒子(vp/細胞)の感染多重度(MOI)で)の発現を媒介する組換えアデノウイルスで感染させる、若しくは非感染のまま(ブランク)である。はじめに、SFによるMMP1の発現を、リアルタイム定量PCRを用いて、mRNAレベルで測定する。コントロールウイルスで感染させた細胞のRNAは、メーカーの説明書に従いSV RNA単離キット(SV RNA isolation kit)(Promega社)を使用して、感染48時間後に調製する。cDNAは、マルチスクライブ(Multiscribe)逆転写酵素(50U/μl、Applied Biosystems社)及びランダム六量体を使用して、このRNAから調製する。cDNA合成を、1×TaqMan緩衝液A(PE Applied Biosystems社)、5mMのMgCl2、dNTP(各dNTPにつき終濃度500μM)、2.5mMのランダム六量体、0.4U/μlのRNase阻害剤、及び1.25U/μlのマルチスクライブ逆転写酵素からなる25μlの総容積で実施する。該混合物を、25℃で10分、48℃で30分及び95℃で5分間、インキュベートする。特定のDNA産物を、結果として生じるcDNAから、適切なプライマー対を使用する40回のPCRサイクルの間に、アンプリタック・ゴールド(AmpliTaq Gold)DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems)を用いて増幅させる。該特定のDNA産物の増幅は、ABI PRISM(登録商標)7000配列検出システム上でモニターする。次のリアルタイムPCR反応は、1×SYBRグリーンミックス(SYBR Green mix)(Applied Biosystems社)、300nMフォワードプライマー及び300nMリバースプライマーからなる25μlの総容積中に、5μlのRT反応生成物を含む。各サンプルを、2回反復で解析する。PCR反応を以下のプログラムを使用して実施する:95℃での10分間に続き、(95℃で15秒、60℃で1分)のサイクルを40サイクル。各PCR反応の後、該産物を95℃で15秒間及び60℃で15秒間インキュベートし、続いて20分かけて95℃に温度を上昇させ、最後は95℃の15秒間で終結させる。MMP1の検出に使用したプライマー対の配列を、表3に一覧化する。
【0128】
【表3】
【0129】
PCR反応用の内部較正物質として使用される18S rRNAのレベルを、市販のプライマー対、及びTaqmanプローブ(TaqMan(登録商標)リボソームRNAコントロール試薬(TaqMan Ribosomal RNA Control Reagents)、Applied Biosystems社)を使用して測定するSYBRグリーン法を使用して、MMP1を検出する。増幅プロット、及び生じる閾値Ct値は、該サンプル中に存在する特定のmRNA量の指標である。デルタ−デルタCt値が存在し、これはAd5−eGFP感染コントロールサンプルにおける発現レベルと比較して、ポジティブコントロールウイルスで感染させたサンプルにおけるMMP1 mRNAの標準化した(18S較正物質と比較した)レベルを意味する。結果は、非感染SF、又はAd5−eGFP感染SFと比較して、MYD88を発現するSFで、MMP1 mRNAレベルの強い上方制御を示す(図2、パネルA)。
【0130】
また、SFによって発現されたMMP1のレベルを、ウエスタンブロッティングによって、タンパク質レベルでも測定する。感染2日後に、リアルタイムPCR実験用に示した様々な組換えアデノウイルスを用いて感染させた細胞の上清を回収し、古典的なTCA沈殿によって15倍に濃縮する。上清の15μlを、10%ポリアクリルアミドゲルを使用するSDS−PAGEで分離する。これらの実験用に使用する培地は、M199培地+1%FBSである。MMP1コントロールサンプル用に、Ad5−MMP1で感染させた非濃縮細胞上清をゲル上で泳動する。該分離タンパク質を、ニトロセルロース膜上に転写する。該転写の質、及び該サンプルの等しい泳動を、該膜のポンソー−S(Ponceau−S)染色で検証する。一次抗体としてヤギ抗MMP1ポリクローナル抗体(R&D Systems社、1/500希釈)、及び二次抗体としてHRP結合ウサギ抗ヤギ抗体(DAKO社、1/10000希釈)、並びにECLプラスHRP基質(Amersham Biosciences社)を使用して、免疫検出を実施する。ウエスタンブロッティングは、Ad5−eGFP感染細胞と比較して、Ad5−MYD88の発現を媒介するアデノウイルスを用いて感染させたSFの上清中のMMP1タンパク質レベルの強い増加を示す。非常に強いシグナルが、Ad5−MMP1感染細胞の上清で検出される(図2、パネルB)。
【0131】
Ad5−MYD88感染SFの上清に存在する高レベルのMMP1タンパク質を、市販のMMP1活性ELISA(RPN2629、Amersham Biosciences社)を用いて確認する。このELISAでは、MMP1はウエルに固定化された抗体によって捕捉され、該量をその後、MMP1基質の変換に基づいて定量化する。製造業者によって推奨されるように、(ウエスタンブロッティング実験で示したように調製した)50μlのSFの非濃縮上清を、このELISAで処理する(図2、パネルC)。
【0132】
これらの実験は、一般的なSFの能力、並びにスクリーニング及び検証実験、特に炎症経路の誘起後のMMP1タンパク質産生に使用する細胞処理単位をを確認する。
MMP1の測定用384ウエルフォーマットELISAを開発する。様々なELISAプロトコルと同様、様々な一次抗体を試験する。下記のプロトコルを開発して検証し、384ウエルプレート内のSFの上清中のMMP1レベルを測定する:白色ルミトラック(Lumitrac)600の384ウエルプレート(Greiner社)を、2μg/mlの抗MMP1抗体MAB1346(Chemicon社)で被覆する。抗体を、緩衝液40(1LのミリQ(milliQ)水中に、1.21gのトリス塩基(Sigma社)、0.58gのNaCl(Calbiochem社)及び5mlの10%NaN3(Sigma社)、pH8.5に調整)で希釈する。4℃で一晩インキュベーションの後、プレートをPBS(10LのmilliQ中に80gのNaCl、2gのKCl(Sigma社)、11.5gのNa2HPO4・7H2O及び2gのKH2PO4;pH7.4)で洗浄し、100μl/ウエルのカゼイン緩衝液(PBS中に2%カゼイン(VWR International社))でブロックする。翌日、ELISAプレートからカゼイン緩衝液を除去し、50μl/ウェルのEC緩衝液(1LのmilliQ中に4gのカゼイン、2.13gのNa2HPO4(Sigma社)、2gのウシアルブミン(Sigma社)、0.69gのNaH2PO4・H2O(Sigma社)、0.5gのCHAPS(Roche社)、23.3gのNaCl、4mlの0.5M EDTA pH8(Invitrogen社)、5mlの10%NaN3、pH7.0に調整)で置換する。0.25mMのDTT(Sigma社)を加え、サンプルプレートを解凍する。EC緩衝液の除去後、サンプルの20μlを該ELISAプレートへ移す。4℃で一晩のインキュベーション後、該プレートをPBSで2回、PBST(0.05%のTween20(Sigma社)を含有するPBS)で1回洗浄し、35μl/ウエルのビオチン化抗MMP1抗体溶液(R&D社)とインキュベートする。この二次抗体を、緩衝液C(2LのmilliQ中に0.82gのNaH2PO4・H2O、4.82gのNa2HPO4、46.6gのNaCl、20gのウシアルブミン及び4mlの0.5M EDTA pH8、pH7.0に調整)で、5μg/mlの濃度に希釈する。室温で2時間のインキュベーションの後、先に記載したように該プレートを洗浄し、50μl/ウエルのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート体(Biosource社)とインキュベートする。ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート体を、緩衝液Cで0.25μg/mlの濃度に希釈する。45分後、先に記載したように該プレートを洗浄し、50μl/ウエルのBM Chem ELISA基質(Roche社)と5分間インキュベートする。読み出しは、200ミリ秒の積算時間を有するルミノスキャン上昇照度計(Luminoscan Ascent Luminometer)(Labsystems社)、又はエンビジョンリーダー(Envision reader)(Perkin Elmer社)で実施する。
【0133】
開発したMMP1 ELISAで得られた典型的結果を図3に示す。この実験用に、3000個のSFを96ウエルプレートの内のDMEM+10%FBS中に播種する。24時間後、SFを、ALPP、MYD88、MMP1の発現を媒介するアデノウイルスを用いて10000MOIで感染させるか、又は非感染のままにする。感染翌日、該細胞の培地を、1%FBSを添加したM199培地(Invitrogen社)で置換する。48時間のインキュベーションの後、該上清を回収して384ウエルプレートへ移し、先に記載したMMP1 ELISA手法を実施する。前記シグナルの3.5倍を超える強い上方制御が観察される。この実験は、MMP1 ELISAの強さ及び特異性を示した。
【0134】
RAの分野に関連するサイトカイン(TNFα、IL1β及びOSM)又はそれらの組合せを用いて処理したSFによるMMP1発現の増加をモニターする。結果を、図4の白色バーとして示す。この実験用に、SFを96ウエルプレートに3000細胞/ウエルで播種する。24時間後に、該培地を、1%FBSを添加したM199培地に交換する。培地変更翌日、サイトカイン又はそれらの組合せを、各サイトカインの最終濃度が25ng/mlになるまで該培地に加える。図3に記載しているように、サイトカイン添加72時間後に、該上清を収集してELISAで処理する。図4の白色のバーで示すように、TNFαのみが、非処理細胞のほぼ3倍のMMP1発現の増加を誘導する。TNFα及びOSM及び/又はIL1βの組合せを用いたSFの誘起は、さらにより高いMMP1発現レベルをもたらす。この実験は、開発したMMP1 ELISAの感度が、RAの発病に関係するサイトカインによって誘導されるSFによるMMP1発現の増加を測定するのに十分であることを証明する。
【0135】
上記の実験と平行して、同じサイトカイン又はサイトカインの組み合わせを用いて、M199培地+1%FBS中で48時間処理したTHP1細胞の上清(M199+1%FBSで2倍希釈)を用いて、同じプロトコルを使用してSFを誘起させる。これらのサンプルのMMP1レベルを、図4に灰色バーで示す。TNFα処理THP1細胞の上清単独で、非処理のTHP1細胞上清のレベルに比較して、4.5倍を超えるMMP1発現を誘導する。該4.5倍の増加は、組換えTNFα単独を用いての3倍の誘導を超え、かつ3種の精製サイトカイン(TNFα、IL1b、OSM)の混合物によって得られるほぼ5倍の誘導に等しい。それゆえ、TNFα誘導THP1細胞の上清は、TNFαに加えて、SFのMMP1発現を活性化させる付加的な前炎症性因子を含む。このTNFαを主成分とする誘起物質混合物(THP−1細胞をTNFαと接触させることで調製される)は、おそらくRA患者の関節に存在する因子群を含み、それゆえRAに関連性を有する。さらに、このTNFαに基づく複雑な誘発は、「TNFαを主成分とする誘起物質」として言及し、「リバースMMP1アッセイ」の基礎として使用する。
【0136】
「TNFαを主成分とする誘起物質」によるSFの活性化は、齧歯類におけるコラーゲン誘導性関節炎を強力に減少させる、潜在的な抗炎症性作用物質であるデキサメタゾンを用いてSFを処理することで、用量依存的様式で阻害可能である(Yangらの論文, 2004)(図5)。SFを96ウエルプレートに、3000細胞/ウエルの密度で播種する。播種24時間後、様々な濃度のデキサメタゾンを該細胞に添加する。一晩のインキュベーション後、各細胞からの培地を、TNFα(M199+0.5%FBSで50%希釈)処理THP−1細胞上清で交換し、先に記載したのと同濃度のデキサメタゾンを添加する。処理24時間後、該上清を回収し、先に記載したMMP1 ELISAに使用する。SFによるMMP1発現は、デキサメタゾンの添加によって用量依存的様式で減少し、約1nMのIC50値を示す(図5を参照されたい)。このデータは、活性化SFによるMMP1発現を、生理的関連阻害剤の添加によって減少させることができることを示し、「リバースMMP1アッセイ」の原理に正当性を与える。
【0137】
(実施例2):リバースMMP1アッセイにおける11,744個の「Ad−siRNA」のスクリーニング
(一次スクリーニング)
リバースMMP1アッセイを使用して、SFにおけるshRNAの発現を媒介する、11,744個の異なる組換えアデノウイルスの整列したコレクションを選別する。これらのshRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られる機構によって、相同配列を含む遺伝子の発現レベルの減少をもたらす。該整列したコレクションに含まれる11,744個のAd−siRNAは、5046個の異なる転写産物を標的とする。平均で、各転写産物は、2〜3個の独立なAd−siRNAによって標的化される。スクリーニング過程の模式的説明を図6に示す。以下により詳細に述べるように、SFを384ウエルプレートに播種し、その日のうちに、各ウエルを別々のAd−siRNAで感染させた整列shRNAライブラリーで感染させる。感染5日後、該培地を交換し、細胞をTNFα処理THP−1細胞の上清で誘起させる。該誘発物質の添加2日後に、上清を回収し、MMP1 ELISAに使用する。
【0138】
異なるスクリーニング実施間の、該アッセイの質を評価する384ウエルプレートを作成する。このプレートの構成を図7Aに示す。ウエルを、サイレンスセレクトアデノウイルスコレクションと同じ条件下で作成したコントロールウイルスで満たす。該ウイルスは、対角に並んだ3セットの48個のポジティブコントロールウイルス(P1 (Ad5-DCK_v1_KD), P2 (Ad5-PRKCL1_v1_KD), P3 (Ad5-TNFSF15_v1_KD))、合間の3セットの48個のネガティブコントロールウイルス(N1 (Ad5-eGFP_v5_KD), N2 (Ad5-Luc_v15_KD), N3 (Ad5-eGFP_v1_KD), B1: ブランコ(blanco), 非感染)。コントロールプレートの各ウエルは、50μlのウイルス粗溶解物を含んだ。このコントロールプレートの複数回分の一定分量を産生し、−80℃で保存する。
【0139】
最適スクリーニングプロトコル:初代(passage 1)RASF(Cell Applications社)を、10%ウシ胎仔血清(ICN社)、100単位/mlのペニシリン(Invitrogen社)及び100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen社)を添加したDMEM培地(Invitrogen社)で培養し、37℃及び10%CO2でインキュベートする。該細胞を、週に一度、1/3分割によって継代培養する。本スクリーニングで用いたRASFの最大継代数は11である。スクリーニング用に、SFを0.1%ゼラチン(Merck社)で被覆された透明な384ウエルプレート(Greiner社)内に、25μlの滑膜細胞増殖培地(Synovial Cell growth medium)(Cell Applications社)中、1500細胞/ウエルの密度で播種する。翌日、前記サイレンスセレクトコレクション(WO 03/020931)由来Ad−siRNAウイルスを、SFを含む384ウエルプレートの各々のウエルへと移す。アデノウイルスの平均力価は1×109ウイルス粒子/mlであり、これは約1700MOIであることを意味する。サイレンスセレクトコレクションを384ウエルプレート内に保存し、96/384−チャンネルディスペンサーを使用してSFへと移す。感染5日後、該培地を除去し、該ウエルを1%FBS含有M199培地を1度添加してすすぎ、次に該培地を除去する。それから該ウエルを、1%FBS含有M199培地で2倍希釈した、60μlの「TNFαを主成分とする誘起物質」で満たす。該「TNFαを主成分とする誘起物質」の添加2日後、該上清を384ウエルプレート(Greiner社)中に回収し、MMP1 ELISAの次の工程まで、−80℃で保存する。該感染物をすすぎ、培地回収段階を、TECAN Freedomピペット(TeMO96、TeMO384及びRoMaを搭載したTecan Freedom 200、Tecan AG社、Switzerland)を用いて実施する。25μlの回収上清をMMP1 ELISAに使用する。ELISA段階を、実施例1に示すように実施する。
【0140】
該「TNFαを主成分とする誘起物質」を、10%FBS(Invitrogen社)並びにペニシリン(100単位/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)(Invitrogen社)を添加したRPMI培地(Invitrogen社)で浮遊培養した継代8〜16代目のTHP−1細胞から産生させる。該培養物を毎週、2×105細胞/mlの細胞密度に希釈し、1.5×106細胞/mlを超えることを避ける。該「TNFαを主成分とする誘起物質」の産生は、1×106細胞/mlの密度で、1%血清含有M199培地中のTHP−1細胞を播種することで開始される。播種の翌日、組換えヒトTNFα(Sigma社)を、25ng/mlの終濃度になるまで、培養フラスコに添加する。前記サイトカインの添加48時間後、該上清を回収し、次の使用まで、一定分量で、−80℃で保存する。各「TNFαを主成分とする誘起物質」の新たな処理単位を、SFによるそのMMP1発現誘導効率で特徴付ける。
【0141】
先に記載したスクリーニングプロトコルを用いて試験したコントロールプレートの成績の代表例を図7Bに示す。各ウエルで得られた未加工の発光シグナルを示す。ポジティブコントロールサンプルを、1つの384ウエルサイレンスセレクトプレートの限定的な予備スクリーニングで得た、3個の最も強力なヒットとして選択する。
厳しいカットオフを適用する、すなわち、全144個のネガティブコントロールの平均から1.82倍の標準偏差を差し引く。下記のこのカットオフで得点化したサンプルを、陽性ヒットとみなす。これらの陽性ヒットを、灰色の背景上の白色の番号として示す。予想通り、本アッセイでのポジティブコントロールウイルスは非常に良好で、それぞれP1,P2及びP3ポジティブコントロールサンプルのカットオフは、88%、81%及び94%のサンプルで下にある。感染ウエルに比較して非感染ウエルがより低いシグナルを示すように、ブランコサンプルはしばしば陽性の得点である。この理由は知られていない。ウイルス不在にも関わらず、サンプルが陽性となることを除外するために、定量的リアルタイムPCRのウエル当たりのアデノウイルス粒子量を調べるのと同様に、ヒットウイルスが増殖する場合、細胞変性作用(CPE)を調べることによって、全ウエルのウイルス含有量をモニターする(Maらの文献, 2000)。前記3個のネガティブコントロールウイルスについて、N1ウイルスが、毒性によって同じ擬陽性を生じる。スクリーニングの間、N1ネガティブコントロールに対する約5%の擬陽性を許容する。この実施例2においては、48サンプル(+/−4%)中の2サンプルが、N1コントロールに対して陽性のスコアである。
【0142】
30×384ウエルプレート上に収容される、5046個の転写産物を標的化する11,744個のAd−siRNAからなる、完全なサイレンスセレクトコレクションを、先に記載したプロトコルに従う「リバースMMP1アッセイ」で選別する。各Ad−siRNAプレートを、一次選別において2回重複で選別し、選別を繰り返す。そのようにして、4つのデータ点を、各々のAd−siRNAから得る。一次選別及び反復選別の両方での少なくとも1個のデータ点を下記の閾値で得点化した場合、Ad−siRNAウイルスをヒットとして選び出す。スクリーニング結果及びヒットを同定するために行った解析の代表例を図8に示す。
【0143】
ヒットと称するためのカットオフ値を決定するために、標準偏差に加えて、プレート上の全てのデータ点で平均を計算する。それから該平均から該標準偏差を差し引いたものとして、カットオフ値を定義する。このカットオフを、図8に示すグラフ中の横線として示す。図8に示すデータは、下記のプレート平均に対する相対的発現である:サンプルの相対的シグナル=[(該サンプルの未加工発光シグナル)−(該プレート全体の平均シグナル)]/(該プレート全体の標準偏差)。一次選別(図8A)及び該反復選別(図8B)における、全ての384個のAd−siRNAで獲得された2回反復シグナルの平均を示す。ヒットとして同定されたデータ点を丸で示す。カットオフよりも下に得点化された合計408個のヒットを、以下に論じる3MOI反復選別で単離する。ほとんど全ての同じAd−siRNAが、一次選別及び反復選別の両方で陽性のスコアである。これらのデータは、スクリーニング及びサイレンスセレクトコレクションの質の指標となる。
【0144】
図9に、リバースMMP1アッセイに対するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。一次選別(Y軸)において、2回反復サンプルから得られた平均化した相対的発光を、反復選別(X軸)で得られた対応するAd−siRNAの平均化した相対的発光に対してプロットする。カットオフ(−1.82倍の標準偏差)を破線で示す。ヒットとして選び出したAd−siRNAのデータ点を三角形で示し、ヒットでないAd−siRNAのデータ点を四角形で示す。一次選別のデータと反復選別のデータとの間に見られる強い対称性(該データ点は、直線の周りに集中する)は、該スクリーニングの質及び再現性の指標となる。
【0145】
(「3」MOI反復選別)
先に同定した408個のヒットを再増殖させる。サイレンスセレクトコレクション由来のヒットしたAd−siRNAサンプルの粗溶解物を取り出し、9×96ウエルプレート内のネガティブコントロールと共に配置する。未精製溶解物の容器を、バーコード(Screenmates(商標)、Matrix technologies社)で標識し、該プレート上で質のチェックを実施する。そのような「3」MOI反復選別プレートの一般的配置を図10Aに示す。該ウイルスを増殖させるために、96ウエルプレートの各ウエル内に、10%の非加熱不活性化FCSを含む200μlのDMEM中の2.25×104個のPerC6.E2A細胞を播種し、10%CO2の加湿インキュベータ内で、39℃で一晩インキュベートする。先に記載したような96ウエルプレートに配列させた、各々のヒットしたAd−siRNAからの1μlの粗溶解物をそれから添加し、96ウエルディスペンサーを使用して、PerC6E2A細胞のウエルを分ける。10%CO2の加湿インキュベータ内での7日から10日のインキュベーション後、完全なCPEを観察することができたという条件で、該再増殖プレートを−20℃で凍結させる。
【0146】
「3」MOI反復選別用に、SFを、滑膜細胞増殖培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート(Greiner社, 組織培養処理)に播種する。翌日、96ウエルディスペンサー(TECAN freedom 200)を使用して、先に記載した再増殖プレート内に含まれる粗溶解物の3μl、6μl又は12μlを用いてSFに感染させる。感染5日後、VacuSafe装置(Integra社)を使用して該プレートから培地を除去し、2倍希釈した100μlのTNFαを主成分とする誘起物質を添加する。2日のインキュベーション後、96ウエルディスペンサー(TECAN Freedom 200)を使用して培地を回収し、実施例1に記載したプロトコルに従ったリバースMMP1 ELISAの次なる工程で使用するまで、384ウエルプレート中で−80℃保存する。
【0147】
MMP1 ELISAからのデータを以下のように解析する:ヒットと称するためのカットオフ値を決定するために、各プレートに関して、ネガティブコントロールの平均を計算する。各MOIに関して、ネガティブコントロールの3%未満が、該9プレート全体のヒットとして得点化されるような割合を選択する。該割合は、3μl、6μl及び12μlの感染に対して、それぞれ23%、26%及び19%である。試験した408個のヒットの339個を、2回重複の1MOIで得点化し、ヒットとして同定する。それゆえ、一次選別のヒットの84%は、再増殖させたAd−siRNA物質を使用する、この3MOI反復選別で確認する。
【0148】
(標的Ad−siRNAの品質管理)
PER.C6(C)細胞の誘導体(Crucell社, Leiden, The Netherlands)を使用して、96ウエルプレート内で標的Ad−siRNAを増殖させ、続いて該標的Ad−siRNAウイルスにコードされるsiRNAの配列決定を行う。PERC6.E2A細胞を、180μlのPER.E2A培地中40,000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレートに播種する。それから細胞を、10%CO2加湿インキュベータ内で、39℃で一晩インキュベートする。翌日、細胞を、標的Ad−siRNAを含むサイレンスセレクトストックからの1μlの未精製細胞溶解物を用いて感染させる。細胞をさらに、細胞変性作用(典型的には感染7日後、該細胞の膨張及び凝集として示される)が出現するまで、34℃、10%CO2でインキュベートする。該上清を回収し、滅菌PCRチューブ内の12μlの粗溶解物に、4μlの溶解緩衝液(1mg/mlのプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号745 723)及び0.45%のTween-20(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号1335465)を添加しMgCl2を含有する1×エクスパンドハイフィデリティー(Expand High Fidelity)緩衝液(Roche Molecular Biochemicals社, カタログ番号1332465)、を添加することによって、該ウイルス粗溶解物を処理する。これらのチューブを55℃で2時間インキュベートし、続いて95℃で15分間の不活化を行う。PCR反応用に、1μlの溶解物を、MgCl2を含む5μlの10×エクスパンドハイフィデリティー緩衝液、0.5μlのdNTPミックス(各dNTPは10mM)、1μlの「フォワードプライマー」(10mMストック、配列:5' CCG TTT ACG TGG AGA CTC GCC 3')(配列番号:879)、1μlの「リバースプライマー」(10mMストック、配列:5' CCC CCA CCT TAT ATA TAT TCT TTC C)(配列番号:880)、0.2μlのエクスパンドハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(3.5U/μl、Roche Molecular Biochemicals社)、及び41.3μlのH2O、からなるPCRマスターミックスに添加する。下記のように、PE Biosystems GeneAmp PCR system 9700でPCRを実施する:該PCR混合物(全量で50μl)を95℃で5分間インキュベートし;各サイクルを95℃15秒、55℃30秒、68℃4分で実行し、これを35サイクル繰り返す。最後の68℃のインキュベーションを7分間で実施する。該PCR混合物の5μlを、2μlの6×ゲルローディング(gel loading)緩衝液と混合し、0.5μg/μlの臭化エチジウムを含む0.8%アガロースゲル上で泳動し、該増幅産物を分離する。該増幅フラグメントのサイズを、同一ゲル上に泳動した標準DNAラダーから概算する。予想サイズは約500bpである。配列決定解析用に、前記pIPspAdapt6-U6プラスミドのSapI部位に隣接するベクター配列に相補的なプライマーを使用するPCRによって、標的アデノウイルスによって発現されるsiRNA構築物を増幅させる。該PCRフラグメント配列を決定し、前記予想配列と比較する。全ての配列が、該予想配列と同一であることが見出される。
【0149】
(実施例3A):非特異的様式でMMP1発現レベルに影響を与えるヒットを除外する「リバースMMP1アッセイ」の339個のヒットの試験
リバースMMP1アッセイにおいてMMP1の発現の減少をもたらすような、Ad−siRNAによるSFの一般的毒性(生存率の減少)を除去するために、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega社)を使用する。このアッセイは、代謝的に活性な細胞の存在に比例して存在するATPの量に基づいて、培養物中の生存細胞の数を測定する。このアッセイにおいて、細胞を、100μlの滑膜細胞増殖培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、白色の96ウエルプレート内で培養する。一晩のインキュベーション後、細胞を、リバースMMP1アッセイから確認されたヒットを用いて感染させる。感染5日後、該培地を除去し、1%FBSを添加した50μlのM199培地で置き換える。該プレート及びその内容物を、室温で30分間平衡化させる。50μlのcelltiter-Glo試薬を該ウエルに添加した後、暗条件下、軌道振盪機(5分)上でインキュベーションする。luminoskan Ascent (Labsystems社)照度計で、100msの積算時間で、測定を実施する。
【0150】
一次試験において、3MOI反復選別プレート(図10Aに示す配置)内に含まれる12μlのウイルスを使用してRASFを感染させ、読み出しを先に記載するように実施する。ヒットウイルスがもたらす一般的毒性を測定するために、該プレートに含まれる全てのデータ点(50個のヒット、及び10個のコントロール)に対するシグナルの平均化し、全てのデータ点の1.5倍の標準偏差を差し引くことによって、カットオフを計算する。一次選別におけるカットオフ値より下に得点化されたヒットは、以下のように再試験する:該ヒットを取り出し、(図10Bに示す配置に従って)96ウエルプレートに配置し、先に記載したプロトコルに従って、3MOI(3μl、6μl及び12μl)でSFを感染させるために使用する。反復選別用に、全てのコントロールのシグナルを平均化し、該コントロール全ての標準偏差の2倍を差し引くことによって、カットオフを計算する。1MOIで2回重複のカットオフより下に得点化されたヒットは、毒性を誘導するものとみなす。
【0151】
SFによるTIMP−2の分泌を測定して、リバースMMP1アッセイにおいてMMP1の発現の減少をもたらすものとしての、Ad−siRNAによるSF分泌活性の一般的抑制因子を除去する。TIMP−2は、SFが構成的に発現し分泌するタンパク質である。SF上清へのTIMP−2の分泌を、分泌の小分子阻害剤であるブレフェルジンAの添加によって阻害する。SFのTIMP−2タンパク質分泌のレベルを、ELISAによって検出する。RASF細胞を、100μlの滑膜増殖培地中3000細胞/ウエルで、96ウエルのゼラチン被覆プレート内に播種する。一晩のインキュベーション後、細胞を感染させ、37℃の10%CO2インキュベータ内で5日間インキュベートする。ウイルスを除去し、100μlのM199+1%FBS(HI)培地を、該細胞の上部に適用する。さらなる48時間のインキュベーション後に該上清を回収し、−20℃で保存する。実質的にはMMP1 ELISAに概要を示すように、TIMP2レベルを標準的ELISAアッセイで測定する。手短に述べると、384ウエルの白色グライナー(Greiner)プレート(Lumitrac 600)を、PBS中で1μg/mlの抗hTIMP2捕捉抗体(カタログ番号MAB9711;R&D systems社)40μlを用いて、4℃で一晩被覆する。80μlの0.1%カゼイン緩衝液を用いて室温で4時間ブロッキングし、洗浄段階(30μlのEC緩衝液)の後、40μlの該サンプルを該ウエルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、PBST(0.05% Tween-20)及びPBSでの2回の洗浄後、40μlのビオチン化抗hTIMP2検出抗体(緩衝液C中に100ng/ml)(カタログ番号BAF971;R&D systems社)をウエルに添加する。室温での2時間のインキュベーション後、プレートを再び洗浄し、緩衝液Cで1/3000希釈した40μlのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(カタログ番号SNN2004;BioSource社)の添加後、さらに45分間室温でインキュベートする。最後に、プレートを洗浄し、50μlのBM Chemiluminescence ELISA substrate(POD)(カタログ番号1582950;Roche Diagnostic社)をウエルに添加する。暗条件下での5分のインキュベーション後、発光を照度計(Luminoscan Ascent)で定量する。
【0152】
これらの実験に適用した先に記載した手順(プレートの配置、MOI、カットオフの決定方法)は、前記毒性測定(すなわち、12μlの感染容積、及び3μl、6μl、12μlの感染容積での再試験)に記載されるものと同一であるが、一次試験に適用したカットオフが、全てのサンプルの平均から、全てのサンプルの2倍の標準偏差として決定されることのみが異なる。このアッセイにおいて、該再試験における少なくとも1MOIの2回反復のカットオフより下のTIMP2レベルの減少を媒介するウイルスは、SFの一般的な分泌機構に影響を与えるものとみなす。
【0153】
毒性アッセイ及びTIMP分泌アッセイで試験した339個のヒットからの16個が、これらのアッセイで陽性を得点し、特定の方法で、サイトカイン誘導性MMP1発現の減少を媒介すると考えられる。そのようなものとして、323個のヒットを、サイトカイン誘導性MMP1発現の調節物質として同定し、そのうちの16個を最も好ましいヒットとし、表1に一覧化する。
この実験から、発明者らは、これらのヒット及びそれらの発現タンパク質と関連性のある遺伝子が、これらの研究によって、SFにおけるMMP1発現を調節することが示された価値ある薬剤標的であることを示すと結論を下す。
【0154】
【表4】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
(実施例3B):追加アッセイ及び除外基準の適用
「TNFαを主成分とする誘起物質」で処理したRA SFの上清がコラーゲン分解の潜在能力を有するという知見に基づき、「リバースコラーゲン分解アッセイ」を使用して、前記一次「リバースMMP1アッセイ」によって同定した323個のヒットをさらに優先順位づけする。天然型コラーゲンの分解は、複数のプロテアーゼ(コラゲナーゼ)によって介在され、コラーゲン分解の減少は、MMP1発現のみの読み出しと比較して、より厳しい読み出しである。RA SFによる、サイトカイン誘導性コラーゲン分解のRA SF(KDウイルスを用いる)におけるターゲット発現減少の効果を、社内で開発したアッセイを使用して試験する。このアッセイにおいて、FITC標識天然型コラーゲンの分解は、蛍光シグナルの増加を生じる。(このアッセイのプロトコルを、実施例6の説明に詳細に記載する(図12))。
【0176】
「リバースMMP1アッセイ」で同定した323個のヒットKDウイルスを、各プレートが、4個のポジティブコントロールウイルスと16個のネガティブコントロールウイルスと共に60個のヒットウイルスを含むような、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)内に並べる。完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中、3000細胞/ウエルの密度で96ウエルプレート内に播種したRA SFを、その翌日、該「ヒットプレート」に含まれる5μl又は10μlのウイルスで感染させる。適用したウイルスを、61個の中性ウイルス(neutral virus)Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KDの添加によって完全化する。このコレクションは、観察された効果が、前記細胞に適用したウイルスと異なる結果にならないことを保証する。感染5日後、活性化段階を実施する。この段階は、全てのウエルにおいて、15μlの「TNFαを主成分とする誘起物質」を添加した45μlのM199培地による、前記成長培地の置換を含む。4日後、該上清を回収し、図12に示す実験に記載するプロトコルに従った、小規模型コラーゲンI型分解アッセイに適用する。各標的KDウイルスの2つの独立な増殖物質を両方のMOIで2回試験し、各MOIにつき4個のデータ点を生じさせる。該結果を以下のように解析する:各プレートに、全てのネガティブコントロールの平均から全てのネガティブコントロールの標準偏差の2.1倍(感染51個)又は1.6倍(感染101個)を差し引いたものよりも低い蛍光値に対応するサンプルを、本アッセイで陽性反応を与えるものみなす。本アッセイで陽性の読み出しを与える4個のデータ点のうちの3個を生じさせる全ての標的KDウイルスを、RA SFによる「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性コラーゲン分解を有意に減少させるものとみなす。あるいは、試験した各MOIで、本アッセイで(4個のデータ点のうち)2個の陽性反応を生じさせる全ての標的KDウイルスを、コラーゲン分解を有意に減少させるものとみなす。試験した323個の標的KDウイルスの192個が、RA SFによる「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性コラーゲン分解を有意に減少させた。
【0177】
好ましいヒットを選択するために、発明者らは、RA SFによる、LPS誘導性又はTNFα誘導性のIL8発現における(KDウイルスを用いる)RA SFの標的発現減少効果を試験する第二アッセイを使用した。このアッセイは、(1)病原体に対する患者の反応にLPSシグナル伝達が必要であり、その完全な阻害は患者の自然免疫を損なう恐れがあるので、選択した標的KDウイルスが、RA SFにおけるLPSシグナル伝達をそれほど阻害しないことを確認し;かつ(2)該標的が、炎症マーカーのTNFα誘導性発現を促進しないことを確認する。ケモカインIL8を、このアッセイの読み出しとして選択する。このケモカインは、炎症部位(RAの場合では関節)への免疫系細胞(例えば、単球、好中球)の動員に役割を担い、局部的な炎症をsらに増加させる。IL8の増加は、RA治療の望む特性ではない。
【0178】
「リバースMMP1アッセイ」で同定し、「リバースコラーゲン分解アッセイ」で陽性の読み出しを与えた標的KDウイルスを、以下のようなLPS/TNFα誘導性IL8アッセイで試験する:各プレートが、20個のネガティブコントロールウイルスと共に60個の標的ウイルスを含むような、96ウエルプレート(「ヒットプレート」)内に、192個の標的KDウイルスを並べる。1日目に、SF(継代9〜12代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中、1ウエルあたり3000細胞の密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、先に記載した96ウエルプレート内に並べた標的KDウイルスの2種類の量(6μl又は12μl)で感染させる。その後、各ウエルでの、10%胎児ウシ血清(加熱不活化済)及び誘発物質(2ng/mlの組換えヒトTNFα又は1μg/mlのLPS)を添加した150μlのDMEMでの成長培地の置換を含む活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。活性化段階の48時間後、80μlの上清を回収し、これを希釈したものを、図13に示す実験に記載したようなIL−8 ELISAに使用する。TNFαを用いて誘起させたサンプル用に、40倍希釈物をPBS+1%BSAで作成し、LPSサンプル用に、16倍希釈を実施する。これらの希釈物からの35μlを、IL−8 ELISAに使用する。2つの独立に調製した前記標的KDウイルスを、2MOIで2回の独立実験で試験し、試験した各標的KDウイルスのMOIにつき、4個のデータ点を生じる。
【0179】
以下のようにデータを解析する:前記標的の発現を減少させるように設計したKDウイルスを含む96ウエルプレートも、20個のネガティブコントロールを含んだ。以下のように、IL8発現の阻害割合を、ネガティブコントロールウイルスに対する相対的割合として計算する:はじめに、(IL8不在下での)該ELISAのバックグラウンドシグナルを、全てのサンプルの全ての値から差し引く。その後、全てのプレートに下記式を適用する:%阻害=[100×(((全てのネガティブコントロールの平均値)−標的サンプル値)/(全てのネガティブコントロールの平均値))]。TNFα誘導性及びLPS誘導性IL8アッセイにおけるそれらの成績によって、全ての標的KDウイルスを順位づけする。RA SFによる、TNFα誘導性IL8発現の強力な増加を生じさせる標的KDウイルスの5%と同様に、LPS誘導性IL8の強力な阻害を与える標的KDウイルスの10%はより好ましくないとみなす。そのようなものとして、このアッセイで試験した192個の標的KDウイルスのうちの40個を、より好ましくないとみなす。さらに、本発明をさらなる特異性で規定するのに使用する除外基準を、以下に記載する。
【0180】
本発明で同定したターゲットは、RAの治療用に開発した小分子阻害剤の同定に基づくことを示す。そのようなものとして、ヒトでの実験を実施する前に、関節炎の実験的モデルにおいて、そのようなRA治療の新たな候補を試験することが必要である。一般的には、ラット又はマウスにけるコラーゲン誘導性関節炎モデルを、関節炎の実験的モデルとして使用する。その結果として、ラット又はマウスにおいてオルソログを見出すことができなかったターゲットは、あまり好ましくない。(実験カスケード(「リバースMMP1」一次アッセイ、「リバースコラーゲン分解」二次アッセイ、及び「TNFα/LPS IL8誘導アッセイ」)を通じて同定した)152個の標的の解析は、27個がラット又はマウスでオルソログがなく、125個のみが好ましい標的であることを示した。さらなる除外基準は、以下のインシリコ(in silico)解析を含む:
【0181】
「薬剤利用可能性」。本開発の小分子阻害剤が、短い時間枠内で最も成功見込みのないことを測定できた場合、標的を除外した。この解析は、薬理学的慣例に基づき、特定のターゲットが属する遺伝子クラスの一般的な薬剤利用可能性の評価を含んだ。さらに、ターゲットの小分子阻害剤の発見を可能にさせるアッセイの存在を調査する。発明者らは、このアッセイに使用した125個のターゲットのうち69個がアッセイに利用可能であることを見出した。
【0182】
「危険特性(Risk profile)」。対応する「ノックアウトマウス」の表現型が疾患性又は致死性である標的遺伝子は、小分子を用いてのこれらの遺伝子産物の阻害が、この表現型の部分的な原因となることが予想されるので、より低い優先順位を有するとみなす。前記細胞又は生物体の基礎代謝機能に重要な役割を果たすターゲットもまた、より低い優先順位を与える。危険特性は、解析した69個の標的のうち18個で高いとみなす。
「疾患関連性」。既に、炎症過程又は自己免疫過程に関連するターゲットは、より好ましいとみなす。
実験及び解析なしで済ませたセットは、323個の標的のリストから、16個の最も好ましいターゲットの現在のセットの限定を許容した。
【0183】
(実施例4):RA患者の滑膜由来のヒト初代滑膜性線維芽細胞で同定した特定標的の発現レベルの解析
特定の同定した標的の発現レベルを、初代ヒト滑膜性線維芽細胞の少なくとも2種の異なる分離体で測定する。
RASF分離体を、Cell Applications 社(カタログ番号 404-05)製の凍結保存された継代2代目として得る。これらの細胞を培養し、10%(v/v)加熱不活化済FBS(ICN社)及び1×Pen/Strep (Invitrogen社)を添加したDMEM(Invitrogen社)中で増殖させる。発現解析用に、細胞を継代11代目まで培養する。
【0184】
RNA調製用に、初代ヒト滑膜性線維芽細胞を、6ウエルプレート内の10cmのペトリディッシュ(500,000細胞/ディッシュ)に播種する。一晩のインキュベーション後、培地を、1×Pen/Strepを含む1%(v/v)加熱不活化済FBSを添加する、6mlのM199培地で交換する。24時間後、総RNAを、SV RNA単離キット(Promega社)を使用して抽出する。
【0185】
各々のサンプル中のRNA濃度を、「リボグリーンRNA定量キット(Ribogreen RNA quantitation kit)」(Molecular Probes社)を使用して、蛍光分析的に定量する。各標本由来の同等量のRNAを、Applied Biosystems社製の「タックマン逆転写キット(Taqman reverse transcription kit)」を用いて、第一鎖cDNAへと逆転写する。手短に述べると、50pmolのランダム六量体、10UのRnase阻害剤、25Uのマルチスクライブ逆転写酵素、5mMのMgCl2、及び各々0.5mMのdNTPを含む、20μlの反応混合物につき40ngのRNAを含ませる。該反応混合物を25℃で10分間インキュベートし、続いて48℃で30分間インキュベーションし、サーモサイクラー(thermocycler)(Dyad, MJ Research社)で逆転写酵素の熱不活化(5分、95℃)させる。該プログラム終了後、反応物をすぐに4℃まで冷却する。得られたcDNAの複数回の凍結/融解サイクルを避けるため、異なるサンプルを96ウエルプレート内に貯蔵し、一定分量に分け、−20℃で保存する。
【0186】
「ABI PRISM 7000配列検出システム分析機器(ABI PRISM 7000 Sequence Detection System Instrument)」を使用して、リアルタイムPCR反応を行う。設計前の、遺伝子特異的タックマンプローブ(Taqman probe)及び定量的遺伝子発現のプライマー対を、「応需型アッセイ(Assays on Demand)」遺伝子発現産物の一部として、Applied Biosystems社から購入する。これらの市販のキットは供給業者によって質が調べられており、本サンプル中の標的cDNAの量の定量的測定を可能にさせる。「応需型アッセイ」遺伝子発現産物を、供給業者から届けられたプロトコルに従って使用する。該PCR混合物は、総量25μl中の、1×「(タックマンユニバーサルPCRマスターミックスno AmpErase UNG)Taqman Universal PCR Mastermix no AmpErase UNG」及び1×「タックマン遺伝子発現応需型アッセイミックス(Taqman Gene Expression Assay on Demand mix)」並びに(1〜100ngのRNAをcDNAへと転換した)5μlのレトロ転写反応産物からなる。95℃10分間の開始変性段階の後、95℃15秒間及び60℃1分間からなる40サイクルで、該cDNA産物を増幅させる。異なるサンプル間における、cDNAの開始量の可変性を標準化するために、製造業者の説明書に従い、前開発型β−アクチン「応需型アッセイ」プライマーセット及びタックマンプローブ並びに「タックマンユニバーサルPCRマスターミックス(Taqman Universal PCR Mastermix)」(全てApplied Biosystems社)を使用して、同じcDNAを用いる増幅反応を、ハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンで実施する。剰余のゲノムDNAから生じる全ての混入を同定するため、同条件ではあるが該逆転写酵素を添加しない条件下で実施するコントロール(−RT)逆転写反応由来産物を用いたリアルタイムPCR反応を、各サンプルに含ませる。閾値サイクル値(Ct)は例えば、各サンプルに関して、興味のある遺伝子の増幅量が固定した閾値に達したサイクル数を測定する。各サンプルに関して、該標的遺伝子から得られたCt値から内因性コントロール(βアクチン)のCt値を差し引くことによって、ΔCt値を測定する。活性型であろうとなかろうと、このヒットで得られたΔCt値が、利用可能な2つの滑膜性分離体の少なくとも1つで13.3よりも低い場合、遺伝子は初代ヒトSFで発現しているものとみなす。9.9よりも低いΔCt値を有する遺伝子は、RASFにおいて高度に発現しているものとみなす。発現プロファイリング実験の結果を、表5に要約する。非誘発型SFの2つの分離体における様々な標的で得られたβ−アクチンと比較したΔCt値を、この表5に記載する。
【0187】
【表5】
【0188】
(実施例5):ILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAPK13及びDGKBのRASF発現のAd−siRNAの減少は、用量依存的様式で、サイトカイン誘導性MMP1発現を阻害する
先に記載したように、前記サイレンスセレクトコレクションのスクリーニングは、サイトカイン誘導性のRASF MMP1発現を減少させる能力を阻害するAd5−siRNAのセットを同定する。これらのウイルスの部分集合を、「リバースMMP1アッセイ」の用量反応実験で、様々な濃度で試験する。
【0189】
SF(継代9〜10代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレートに播種する。翌日、増加的量(3μl、7.5μl、12μl又は15μl)のAd5-MMP1_v10_KD (ポジティブコントロール)又はAd5-ルシフェラーゼ_v13_KD (ネガティブコントロール)を用いて、該細胞を感染させる。中性ウイルスAd5-ルシフェラーゼ_v13_KDの添加によって該添加ウイルスを補正し、各ウエル中の該細胞上の最終ウイルス容積を15μlにする。このコレクションは、観察された効果が、該細胞に適用したウイルスの違いから生じたのではないことを保証する。それから、活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。この段階は、全てのウエルにおける、25μlの「複合的誘発物質」を添加した75μlのM199培地での前記成長培地の置換を含む。該活性化段階の48時間後、該上清を回収し、先に記載したように、MMP1 ELISAに使用する。図11Aは、2回反復の平均を示す。
【0190】
この実験は明らかに、RASFへの増加的量のAd5−siRNAの適用が、RASFにおける前記標的の発現の減少の増大をもたらすことを示す。この場合において、該細胞に増加的量のAd5-MMP1_v10_KDを適用することは、該細胞内のMMP1タンパク質発現の高度な減少をもたらす。(図11A)まとめると、RASFに適用する増加的量のAd5−siRNAが、RASFにおける標的の発現の減少の増大をもたらすにつれて、表1に一覧化した遺伝子を標的化する増加的量のAd5−siRNAもまた、サイトカイン誘導性MMP1発現の減少の増大をもたらすことが予想される。そのような容量反応実験の結果を、図11Bに示す。
【0191】
これらの容量反応実験で使用するAd−siRNAを、WO03/020931に記載される手順に従って作成する。siRNA上に設計し、組換えアデノウイルスを作成するために使用したこれらの遺伝子の標的配列を表1に一覧化する。表1に一覧化した複数のAd−siRNA標的化遺伝子を使用して該細胞を感染させるという違いのみを有するポジティブコントロール及びネガティブコントロールに関して、前記MMP1 ELISAにおけるAd5−siRNA効率を、先に記載したように試験する。該細胞を感染させるために使用するウイルスを、ネガティブコントロールとして使用するAd5-eGFP-v5_KD、Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KD及びAd M6PR-v1_KD、並びにポジティブコントロールとして使用するAd5-MMP1-v10_KDと共に、図11Bに示す。該実験結果を図11Bに示す。
【0192】
図11Bに示すデータを以下のように計算する:解析した各々のプレートに関して、15μlでのAd5-MMP1_v10-KD(ポジティブコントロール)の未加工シグナル(RLU)を、最も可能性の低いシグナル(すなわち、獲得し得るMMP1発現の最も大幅な減少)とみなし、それゆえ、本アッセイのバックグラウンドとして設定する。このプレートの全てのシグナルを、このバックグラウンドシグナルから調整する。それから各々のMOIに関して、特定のAd5-標的-KDウイルスから得られるシグナルを、同プレート上から得られるネガティブコントロールウイルス(Ad5-eGFP-v5_KD、Ad5-ルシフェラーゼ-v13_KD又はAd-M6PR-v1_KD)のシグナルに対して標準化する(除算する)。図11Bは、RASF内のILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAPK13及びDGKBの発現における減少を媒介するAd−siRNAウイルスが、これらの細胞によるサイトカイン誘導性MMP1発現の有意な減少をもたらすことを示す。明らかに、より多量のAd5−siRNAは、MMP1発現レベルのより大幅な減少をもたらす。これらの結果は、該細胞に適用したAd5−siRNAの量が、得られたMMP1発現の減少の強度を決定することを示す。
【0193】
この実験から発明者らは、これらの遺伝子が、SFにおけるMMP1発現を調節することが示された価値ある薬剤標的であることを示し、小分子化合物などの阻害剤によるこれらの遺伝子由来のタンパク質産生の活性阻害は、「リバースMMP1アッセイ」における「複合サイトカイン」誘導性MMP1発現を減少させることが予測される、と結論を下す。また発明者らは、そのような作用物質によるこれらの遺伝子由来のタンパク質産物の活性阻害もRA患者に観察される関節変性を減少させるであろうと考える。
【0194】
表1は、表1で特定した全ての標的遺伝子から得られた複数のKD配列を一覧化する。異なるAd−siRNAを、ターゲットmRNA内の異なる標的配列から作成する。Ad−siRNAウイルスのいくつかは、「リバースMMP1アッセイ」で有効性を示すが、発明者らは、これらのAd−siRNAウイルスのいくつかが、「リバースMMP1アッセイ」で有効性を示さないことを観察する。しかしながら、全てのshRNAが、標的の発現を減少させるのに有効ではないことは理解すべきである。siRNA分解機構に対する標的RNAの物理的利用可能性(例えば、他の細胞性タンパク質に密接に近接する及び/又は該タンパク質に結合する全てのターゲットmRNAの3次元的折り畳みであり、siRNAの会合用の結合部位を提供するために、mRNAの画分のみを「曝露」させてよい)、該標的タンパク質の効力、特定のshRNAそれ自体に影響を与える分解過程などを含む、ノックダウン効率におけるこの差をもたらす多くの原因があり得る。より詳細には、「リバースMMP1アッセイ」における特定のAd−siRNAの低効率は、該細胞によるサイトカイン誘導性MMP1発現を減少させるのに必要とされる標的遺伝子発現の減少レベルによって説明可能である。いくつかの標的は、MMP1経路を遮断するのに50%の減少のみを必要とする可能性があるが、他の標的は、同効果を達成するのに90%を必要とする可能性がある。いくつかの標的は、標的の減少を補う代謝経路に関与する可能性があるが、他の標的にはない。結果として、高用量でこれらのウイルスを試験することは、リバースMMP1アッセイでより高い効率をもたらす可能性がある。
【0195】
(実施例6): ILK、CHRNA5、NQO2、KCNF1、SLC9A8、ARAF1、AXL、FGFR3、NR2F6、SCN9A、MAP12、MAPK13及びDGKBのRASF発現のAd−siRNA誘導性の減少は、サイトカイン誘導性コラーゲン分解を阻害する
特定のMMP亜型(例えば、MMP1、MMP13)はコラゲナーゼであり、顕著な天然型コラーゲン分解能力を有する。天然型コラーゲンは、タンパク質分解事象に非常に抵抗性である、安定な線維内に組織化される。そのようなものとして、天然型コラーゲンの分解を使用して、MMP1のみならず、RASFによって産生されるコラゲナーゼの完全な補完物をモニターする。本明細書に記載するのは開発したアッセイであり、RASF培養上清中での、天然型コラーゲンのサイトカイン誘導性の分解を検出する。
【0196】
「小規模型コラーゲンI型分解アッセイ」プロトコル:(特に明記しない場合、試薬類はChondrex社, Redmond社, Washington社 (コラゲナーゼアッセイキット)製である)。96ウエルプレート(V−ボトム(V-bottom), Greiner)の1ウエルあたりを、9μlの溶液B及び1μlのトリプシン溶液で満たす。ウエル毎に10μlのサンプル(RASF上清)を添加し、続いて34℃で15分間インキュベーションする。インキュベーション後、1μlのSBTIを添加する。20μlのFITC−コラーゲン混合物(10μlのFITC標識コラーゲンI型+10μlの溶液A)を該活性化サンプルに添加し、続いて34℃で24時間のインキュベーションを行う。1μlの1,10フェナントロリンを、該反応混合物に添加する。1μlのエンハンサー溶液(エラスターゼ)を添加し、続いて34℃で30分間インキュベーションする。該反応混合物が室温の時点で、40μlの抽出緩衝液を添加し、該プレートを密封(ヌンクシール(Nunc seals))し、ボルテックスする。4000rpmで25分間の遠心分離(ベックマン遠心機(Beckman centrifuge))後、50μlの上清を黒色F−ボトムプレート(Greiner社)へと移し、蛍光をフルオスターリーダー(Fluostar reader)(BMG社)で測定する(480nmの励起波長、520nmの発光波長)。
【0197】
「小規模型コラーゲンI型分解アッセイ」におけるAd5−siRNA効率を、以下のように試験する:SF(継代9〜10代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、図12Aに示す5μl又は10μlのAd−siRNAで感染させる。これらのKDウイルスを、12個のネガティブコントロールウイルスと共に96ウエルプレート上に並べる。該添加ウイルスを、中性ウイルスAd5-ルシフェラーゼe-v13_KDの添加によって補正し、全てのウエルで、該細胞上の最終容量を15μlにする。このコレクションは、観察される効果が、該細胞に適用する該ウイルス添加における差からは生じないことを保証する。それから、活性化段階前に、該細胞をインキュベートする。この段階は、全てのウエルでの、15μlの「複合的誘発物質」を添加した45μlのM199培地による、前記成長培地の置換を含む。4日後、該上清を回収し、先に記載したプロトコルに従って、小規模型コラーゲンI型分解アッセイに使用する。該結果を以下のように解析する:12個のネガティブコントロールから得られた蛍光シグナルを、全てのプレートに関して平均化する。各々のプレート及び各々のMOI(5μl又は10μl)に関して、表1に一覧化した遺伝子を標的化するKDウイルスを用いて感染させた細胞から放出されるサンプルで観察された蛍光シグナルを、ネガティブコントロールの平均パーセント(100%に設定)として表現する。図12Aに示すデータは、2回重複測定の平均値である。表2に一覧化する遺伝子を標的化するAd−siRNAは、初代ヒトSFによる、複合的誘発物質誘導性コラーゲン分解の明らかな減少を媒介する。発明者らはこの実験から、これらの遺伝子は、RASFによるMMP1発現のみならず、RASFによるコラーゲン分解もまた調節することが示される価値ある薬剤標的を示すと結論を下す。同様に、小分子化合物などの阻害剤によるこれらの遺伝子のタンパク質産物の活性の阻害は、SFによる「複合サイトカイン」誘導性コラーゲン分解を減少させることを予測させる。また、発明者らは、そのような作用物質によるこれらの遺伝子のタンパク質産物の活性の阻害が、RA患者において観察される関節変性を減少させるであろうと考える。
【0198】
同様な実験(図12B)において、Ad5-MMP1 v1O-KDウイルスは、SFによるサイトカイン誘導性コラーゲン分解を大幅に減少させることを示し、これはMMP1が、SFによるサイトカイン誘導性コラーゲン分解に関与する主要なコラゲナーゼであることを示唆する。この実験を、図12Aに示す実験に記載するプロトコルに従って実施する。図12Bに示すデータは、8個のデータ点から放射される未加工蛍光シグナル全体の平均及び標準偏差である。そのようなものとして、この実験は、MMP1発現のSFの調節が、RAに関連する軟骨変性を減少させるのに十分であることを示す。そのようなものとして、RASFによるMMP1の減少は、骨及び軟骨の主要構成要素の1つである天然型コラーゲンの減弱された分解の前兆である。
【0199】
(実施例7):Ad−siRNAによる、ARAF1、CHRNA5、DGKB、FGFR3、ILK、KCNF1、MAPK12、MAPK13、NQO2、NR2F6及びSCN9AのRASFにおける発現の減少は、サイトカイン誘導性IL−8発現を阻害する。
(先の実施例に記載した実験に従い同定した)ターゲットの特性(profile)をよりよく理解するために、並びにMMP1とは異なる別の炎症性マーカーであるIL8のターゲット発現減少効果の特異性を調べるために、下記の実施例を使用する。このサンプルは、RA SFでのTNFα誘導性IL8発現におけるターゲット発現減少の効果を測定する。IL8の発現はTNFαによって増加し、炎症性事象に役割を担う。さらに、IL8受容体の小分子阻害剤は、関節炎の動物モデルにおいて効力を有することが示されている(Weidner-Wells MAらの論文, Bioorg Med Chem Lett. (2004)14:4307-11、「小分子インターロイキン−8(IL−8)受容体アンタゴニストの新規クラスである、3,5−ジアリールイソオキサゾール及び3,5−ジアリール−1,2,4−オキサジアゾールの合成並びに構造−活性関連性」を参照されたい)。そのようなものとして、IL8発現阻害を達成することは、RA治療の望ましい特徴である。
【0200】
「IL−8アッセイ」プロトコル:SF(継代9〜12代目)を、完全滑膜成長培地(Cell Applications社)中3000細胞/ウエルの密度で、96ウエルプレート内に播種する。翌日、該細胞を、2種類の量(6μl又は12μl)のKDウイルスで感染させる。それから活性化段階前の5日間、該細胞をインキュベートする。該活性化段階は、全てのウエルでの、10%胎児ウシ血清(加熱不活化済)及び誘発物質(2ng/mlの組換えヒトTNFアルファ)を添加した150μlのDMEMでの該成長培地の置換を含む。活性化段階の48時間後、80μlの上清を回収し、以下に記載するようなIL−8 ELISAでの使用のために希釈する。TNFαで誘起させたサンプル用に、PBS+1%BSAで40倍希釈液を作成する。これらの希釈液からの35μlを、IL−8 ELISAプレートに添加する。
【0201】
白色ルミトラック600(Lumitrac 600)384ウエルプレート(Greiner社)を、0.5μg/mlの抗IL−8抗体MAB208(R&D社)で被覆する。該抗体を、1×PBS(Gibco社)で希釈する。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを、1×PBST(10LのミリQ中に、80gのNaCl、2gのKCl (Sigma社)、11.5gのNa2HPO4・7H20及び2gのKH2PO4;pH 7.4 =10×PBS溶液+0.05%のtween (sigma社))で1回、PBS1×で1回洗浄し、80μlのブロッキング緩衝液(1%BSA+5%スクロース+0.05%NaN3)でブロッキングする。翌日、該プレートを逆さにして該ブロッキング緩衝液を該ELISAプレートから取り除き、吸収紙上で軽くたたく。該プレートを、90μlのPBSTと、90μlのPBS1×で洗浄する。その直後、該プレートに35μlの希釈上清を添加することによってさらに処理する。4℃で一晩のインキュベーション後、該プレートを(先に記載したように)PBSTで1回、PBSで1回洗浄し、1×PBS+1%BSA中の35μl/ウエルのビオチン化抗IL8抗体溶液BAF208(R&D社)50ng/mlと共にインキュベートする。室温で2時間のインキュベーション後、プレートを先に記載したように洗浄し、50μl/ウエルのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(Biosource社)と共にインキュベートする。ストレプトアビジン−HRPコンジュゲートを、1×PBS+1%BSAで1/2000倍希釈する。45分後、プレートを先に記載したように洗浄し、50μl/ウエルのBM Chem ELISA基質(Roche社)と共に5分間インキュベートする。ルミノスキャン上昇照度計(Labsystems社)を用いて、100msの積算時間で、読み出しを実施する。
【0202】
該96ウエルプレート内に、20個のネガティブコントロールを含ませる。IL8発現の阻害割合を以下のように計算する。はじめに、ELISAのバックグラウンドシグナル(IL8不在下)を、全てのサンプルの全ての値から差し引く。それから下記式を適用する:%阻害=[100×(((全てのネガティブコントロールの平均値)−ターゲットサンプルの値)/(全てのネガティブコントロールの平均値))]。図13に示す結果から、発明者らは、ほとんどのターゲットの発現が、MAPK12、MAPK13及びARAF1に見られる最も強力な効果、並びにSLC9A8及びAXLに見出される最も弱い効果を伴って、減弱されたTNFα駆動性IL8発現を媒介したと結論を下す。
【0203】
【表6】
【0204】
以下の配列は、配列番号:1〜244に対応する:
【表7】
【0205】
【表8】
【0206】
【表9】
【0207】
【表10】
【0208】
【表11】
【0209】
【表12】
【0210】
【表13】
【0211】
【表14】
【0212】
【表15】
【0213】
【表16】
【0214】
【表17】
【0215】
【表18】
【0216】
【表19】
【0217】
【表20】
【0218】
【表21】
【0219】
【表22】
【0220】
【表23】
【0221】
【表24】
【0222】
【表25】
【0223】
【表26】
【0224】
【表27】
【0225】
【表28】
【0226】
【表29】
【0227】
【表30】
【0228】
【表31】
【0229】
【表32】
【0230】
【表33】
【0231】
【表34】
【0232】
【表35】
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】正常な関節と、関節リウマチにおけるその変化の模式図(Smolen及びSteinerの文献, 2003より)。
【図2】滑膜性線維芽細胞によるMMP1発現の性質決定。パネルAにおいて、SF溶解物中に存在するMMP1のmRNAレベルをリアルタイムPCRで測定する。これらのMMP1レベルを、同サンプルのリアルタイムPCRによって同様に測定した18Sのレベルに対して標準化する。パネルBは、MMP1特異的ポリクローナル抗体を使用するMMP1タンパク質レベルの検出用ウエスタンブロッティングに使用した上清から検出されたMMP1シグナルを示す。パネルCは、市販のMMP1「活性ELISA(activity ELISA)」(Amersham Biosciences社)に前記上清を適用した結果を示す。示されたシグナルは、試験したサンプルに存在するMMP1活性に比例する。
【0234】
【図3】様々なモデルアデノウイルスを用いて誘起させたSFによるMMP1の発現増加。非感染SF、及び表示のモデル組換えアデノウイルスを用いて感染させたSFからのSF上清をMMP1 ELISAに適用し、発光生成基質を使用することによって測定したMMP1レベルを示す。
【図4】関節リウマチ病理に関連する様々なサイトカインを用いて誘起させたSFによるMMP1の発現増加。SF上清をMMP1 ELISAに適用し、発光生成基質を使用することによって測定したMMP1レベルを示す。白色のバーは、非処理SF、及び表示のサイトカイン又はサイトカイン群の組み合わせを用いて処理したSFからのSF上清のMMP1レベルを示す。灰色のバーは、非処理THP1、又は表示のサイトカイン又はサイトカイン群の組み合わせを用いて処理したTHP1の上清を用いて処理したSF上清のMMP1レベルを示す。
【0235】
【図5】既知の抗炎症性化合物による、SFによるMMP1の「TNFαを主成分とする誘起物質」誘導性発現の用量依存的阻害。「TNFαを主成分とする誘起物質」及び様々な濃度の抗炎症性化合物を用いて処理したSFからのSF上清をMMP1 ELISAに使用し、MMP1発現阻害割合対抗炎症性化合物の対数濃度を示す。
【図6】「リバースMMP1アッセイ」を使用するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングの模式的説明図。
【図7】リバースMMP1 ELISAアッセイで得られたコントロールプレートの配置及び成績。
【0236】
【図8】2回反復の一次選別(A)及び反復選別(B)で試験するサイレンスセレクトコレクションの384個のAd−siRNAの部分集合で実施した、リバースMMP1 ELISAアッセイ成績の代表例。
【図9】リバースMMP1アッセイに対するサイレンスセレクトコレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。一次選別(Y軸)における二回重複サンプルから得られた平均化相対的発光データを、反復選別(X軸)で得られた対応Ad−siRNAの平均化相対的発光データに対してプロットする。
【0237】
【図10】リバースMMP1アッセイの3MOI反復選別(10A)、並びに該リバースMMP1アッセイの反復選別の細胞毒性及び分泌(10B)用に作成したプレートの配置。
【図11】Ad−siRNAによる、初代SFにおけるターゲットの発現の減少が、用量依存的様式で、サイトカイン誘導性MMP1発現を阻害する。コントロール遺伝子(11A)及び表1に一覧化した遺伝子を標的化するAd−siRNAの様々な量を用いて感染させたSF由来の上清をMMP1 ELISAに使用し、MMP1レベル(11A)又は該ネガティブコントロールに関連するMMP1レベル(11B)を示す。
【0238】
【図12】Ad−siRNAによる初代SFにおけるターゲットの発現の減少は、サイトカイン誘導性天然型コラーゲン分解を阻害する。表示のAd−siRNAで感染させた「TNFαを主成分とする誘起物質」処理SF由来のSF上清を、コラーゲン分解アッセイに使用する。
【図12A】図12Aは、該コントロールに比較して、分解されたコラーゲンの割合を示す。図12Bは、未処理蛍光シグナルを示す。
【図13】Ad−siRNAによる初代SFにおけるターゲットの発現の減少は、TNFα誘導性IL−8発現を調節する。表示のAd−siRNAで感染させたSF由来の上清をIL−8ELISAアッセイに使用し、ネガティブコントロールに対するIL−8発現の阻害割合を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外マトリクス(ECM)分解を阻害する化合物を同定する方法であって、化合物を、配列番号:17〜32からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチド及びそれらのフラグメントと接触させること;及び、細胞外マトリクス(ECM)分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調製物中にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記特性が、前記ポリペプチドへの前記化合物の結合親和性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記特性が、細胞外マトリクス(ECM)分解の指標となる生化学的マーカーを産生する生物学的経路の不活性化である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記指標がMMP1である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物、及び配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドへの結合親和性を有する化合物、からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリー又は抗体フラグメントライブラリー中のペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項10】
アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される、細胞外マトリクス(ECM)分解、又は炎症の阻害に効果的な作用物質であって、前記作用物質が、配列番号:1〜16からなる群から選択される核酸配列中の連続した約17個〜約30個のヌクレオチドからなる天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該天然型ポリヌクレオチド配列から人為的に加工された核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項11】
請求項10記載の作用物質を発現する哺乳動物細胞内のベクター。
【請求項12】
リバースMMP−1アッセイでMMP−1の発現を減少させるのに効果的である、請求項10記載の作用物質。
【請求項13】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター又はセンダイウイルスベクターである、請求項11記載の作用物質。
【請求項14】
前記アンチセンスポリヌクレオチド及び前記siRNAが、センス鎖に相補的な17個〜25個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、前記センス鎖が、配列番号:1〜16からなる群から選択される核酸配列中の連続した17個〜25個のヌクレオチドから選択される、請求項10記載の作用物質。
【請求項15】
前記siRNAが、前記センス鎖をさらに含む、請求項14記載の作用物質。
【請求項16】
前記センス鎖が、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択される、請求項15記載の作用物質。
【請求項17】
前記siRNAが、前記センス鎖と前記アンチセンス鎖とを連結させるループ領域をさらに含む、請求項16記載の作用物質。
【請求項18】
前記ループ領域が、配列番号:871〜872からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項17記載の作用物質。
【請求項19】
前記作用物質が、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択される核酸配列に相補的な核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム又はsiRNAである、請求項18記載の作用物質。
【請求項20】
医薬として許容し得る担体との混合物中に、治療的有効量の請求項10記載の作用物質を含む、ECM分解阻害医薬組成物。
【請求項21】
細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する疾患を患っている対象又は該疾患に感受性である対象において、該疾患を治療及び/又は予防する方法であって、前記対象に請求項20記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記疾患が関節変性疾患である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が関節リウマチである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する疾患の治療及び/又は予防用薬剤の製造における、請求項10〜19記載の作用物質の使用。
【請求項25】
前記疾患が、関節変性疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される、請求項24記載の使用。
【請求項26】
前記疾患が関節リウマチである、請求項24又は25記載の使用。
【請求項27】
異常なマトリクスメタロプロテイナーゼ活性によって特徴付けられる状態の治療方法であって、請求項10記載のマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
MMP1の異常な細胞性発現が関与する疾患から選択される状態の治療方法であって、請求項10記載のマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
対象において、細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する病理的状態、又は該状態への感受性を診断する方法であって、前記対象から得られる生体サンプル中に存在する配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1量のポリペプチドを測定すること、及び前記第1量を健常者の集団内で測定されたポリペプチドの量の範囲と比較すること(ここで健常者で測定された量の範囲に比較しての前記生体サンプル中のポリペプチド量の増加は、前記病理的状態の存在の指標となる)、を含む、前記方法。
【請求項1】
細胞外マトリクス(ECM)分解を阻害する化合物を同定する方法であって、化合物を、配列番号:17〜32からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチド及びそれらのフラグメントと接触させること;及び、細胞外マトリクス(ECM)分解に関連する化合物−ポリペプチド特性を測定すること、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調製物中にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、哺乳動物細胞に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記特性が、前記ポリペプチドへの前記化合物の結合親和性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記特性が、細胞外マトリクス(ECM)分解の指標となる生化学的マーカーを産生する生物学的経路の不活性化である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記指標がMMP1である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリーの化合物、及び配列番号:17〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドへの結合親和性を有する化合物、からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリー又は抗体フラグメントライブラリー中のペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項10】
アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される、細胞外マトリクス(ECM)分解、又は炎症の阻害に効果的な作用物質であって、前記作用物質が、配列番号:1〜16からなる群から選択される核酸配列中の連続した約17個〜約30個のヌクレオチドからなる天然型ポリヌクレオチド配列に相補的な核酸配列、又は該天然型ポリヌクレオチド配列から人為的に加工された核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項11】
請求項10記載の作用物質を発現する哺乳動物細胞内のベクター。
【請求項12】
リバースMMP−1アッセイでMMP−1の発現を減少させるのに効果的である、請求項10記載の作用物質。
【請求項13】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター又はセンダイウイルスベクターである、請求項11記載の作用物質。
【請求項14】
前記アンチセンスポリヌクレオチド及び前記siRNAが、センス鎖に相補的な17個〜25個のヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、前記センス鎖が、配列番号:1〜16からなる群から選択される核酸配列中の連続した17個〜25個のヌクレオチドから選択される、請求項10記載の作用物質。
【請求項15】
前記siRNAが、前記センス鎖をさらに含む、請求項14記載の作用物質。
【請求項16】
前記センス鎖が、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択される、請求項15記載の作用物質。
【請求項17】
前記siRNAが、前記センス鎖と前記アンチセンス鎖とを連結させるループ領域をさらに含む、請求項16記載の作用物質。
【請求項18】
前記ループ領域が、配列番号:871〜872からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項17記載の作用物質。
【請求項19】
前記作用物質が、配列番号:128〜141及び231〜244からなる群から選択される核酸配列に相補的な核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム又はsiRNAである、請求項18記載の作用物質。
【請求項20】
医薬として許容し得る担体との混合物中に、治療的有効量の請求項10記載の作用物質を含む、ECM分解阻害医薬組成物。
【請求項21】
細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する疾患を患っている対象又は該疾患に感受性である対象において、該疾患を治療及び/又は予防する方法であって、前記対象に請求項20記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記疾患が関節変性疾患である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が関節リウマチである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する疾患の治療及び/又は予防用薬剤の製造における、請求項10〜19記載の作用物質の使用。
【請求項25】
前記疾患が、関節変性疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される、請求項24記載の使用。
【請求項26】
前記疾患が関節リウマチである、請求項24又は25記載の使用。
【請求項27】
異常なマトリクスメタロプロテイナーゼ活性によって特徴付けられる状態の治療方法であって、請求項10記載のマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
MMP1の異常な細胞性発現が関与する疾患から選択される状態の治療方法であって、請求項10記載のマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤の治療的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
対象において、細胞外マトリクス(ECM)分解が関与する病理的状態、又は該状態への感受性を診断する方法であって、前記対象から得られる生体サンプル中に存在する配列番号:17〜32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む第1量のポリペプチドを測定すること、及び前記第1量を健常者の集団内で測定されたポリペプチドの量の範囲と比較すること(ここで健常者で測定された量の範囲に比較しての前記生体サンプル中のポリペプチド量の増加は、前記病理的状態の存在の指標となる)、を含む、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公表番号】特表2008−516593(P2008−516593A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536196(P2007−536196)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055315
【国際公開番号】WO2006/040357
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055315
【国際公開番号】WO2006/040357
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】
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