説明

関節炎関連B細胞遺伝子発現

B細胞が、自己抗体およびサイトカインを分泌すること、ならびにT細胞に抗原を提示することによって、自己免疫性炎症の維持に主要な役割を果たすことを示す証拠は増えつつある。モノクローナル抗体を使った最近の臨床研究では、慢性関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および他の自己免疫疾患を持つ患者において、B細胞枯渇は有効な治療アプローチであることが示されている。慢性関節リウマチにおける患部関節組織は、活性化B細胞の浸潤を示す。本発明は、関節炎関連B細胞に観察される差次的遺伝子発現の利益を受ける方法および組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎関連B細胞遺伝子発現、ならびに関節炎関連B細胞遺伝子を診断および処置のために使用する方法に関連する。
【0002】
(配列表への参照)
本願は、2006年8月25日に出願された米国仮特許出願第60/840,380号に関連し、米国仮特許出願第60/840,380号は最初に出願された内容の一部として、「コピー1」および「コピー2」とラベルされた二つのコンパクトディスクを含み、それぞれのディスクは配列表を含む。それぞれのコンパクトディスクのコンピュータフォーマットはIBM−PCであり、そしてそれぞれのコンパクトディスクのオペレーティングシステムはMS−Windows(登録商標)である。該それぞれのコンパクトディスクは、「WYE−068PR.ST25.txt」と名付けられた単一のテキストファイル(583kb、2006年8月25日に作成された)を含む。「コピー1」および「コピー2」とラベルされた該コンパクトディスクの内容は、その全体が全ての目的のために本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
B細胞が、自己抗体およびサイトカインを分泌すること、ならびにT細胞に抗原を提示することによって、自己免疫性炎症の維持に主要な役割を果たすことを示す証拠は増えつつある。モノクローナル抗体を使った最近の臨床研究では、慢性関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および他の自己免疫疾患を持つ患者において、B細胞枯渇は有効な治療アプローチであることが示されている。慢性関節リウマチにおける患部関節組織は、活性化B細胞の浸潤を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、B細胞におけるその発現レベルが慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患において調整される遺伝子を特徴とする。それゆえに、本明細書において「B細胞活性化調節遺伝子(B cell activation−regulated gene)」または「BCARG」と呼ばれるこれらの遺伝子の発現レベルを検出することを使って、自己免疫疾患を検出または監視することができる。同様に、これらの遺伝子または遺伝子産物を、自己免疫疾患を処置するための標的として使用することもできる。
【0005】
BCARGには、自己免疫疾患において活性化B細胞中で差次的に発現されると本明細書に記載する遺伝子のそれぞれ(例えば表1に列挙する遺伝子のそれぞれを含む)が包含される。それらの遺伝子の一部は、これらの活性化B細胞において、より多量に発現(「アップレギュレート」)され、そのような遺伝子には、例えばPBEF/ビスファチン、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、SMC(structural maintenance of chromosomes(染色体構造維持))5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント(exosome component)10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、およびジンクフィンガータンパク質106などが含まれる。他の遺伝子はダウンレギュレートされ、例えばcopine(コピン)III、宿主細胞因子制御因子I、Rab3D、BLOC(biogenesis of lysosome−related organelles complex(リソソーム関連オルガネラ生合成複合体)−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア(choroideremia)、ユビキチンB、およびSTK10が含まれる。
【0006】
したがって一態様として、本発明は、関節炎関連B細胞活性化を評価するための方法を提供する。本方法は、1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出し、その発現レベルを、B細胞の活性化状態を示す基準発現レベルと比較することを含む。1つ以上の遺伝子には、好ましくは、以下に挙げる遺伝子の少なくとも一つが含まれる:PBEF/ビスファチン、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、またはジンクフィンガータンパク質106。B細胞において検出される遺伝子発現は内在性遺伝子のものであるだろうから、そのB細胞がヒト由来であると1つ以上のヒト遺伝子の発現が検出され、そのB細胞がマウス由来であると1つ以上のマウス遺伝子の発現が検出されるという具合になるだろう。ある実施形態では、1つ以上の遺伝子が、以下に挙げるヒト遺伝子の少なくとも一つを含む:AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、またはジンクフィンガータンパク質106。
【0007】
また、本発明は、自己免疫応答の徴候に関して患者、例えばヒトを評価する方法を提供する。本方法は、患者から採取した試料において、1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出し、その発現レベルを、その患者における免疫応答を示す基準発現レベルと比較することを含む。免疫応答は慢性関節リウマチなどの自己免疫応答であることができる。試料は血液、リンパ、または滑膜などの流体試料であることができ、場合によっては、例えば蛍光励起細胞分取などにより、検出工程に先だってB細胞を試料から精製することができる。1つ以上の遺伝子は、好ましくは、以下に挙げる遺伝子の少なくとも一つを含む:PBEF/ビスファチン、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、またはジンクフィンガータンパク質106。B細胞において検出される遺伝子発現は内在性遺伝子のものであるだろうから、そのB細胞がヒト由来であると1つ以上のヒト遺伝子の発現が検出され、そのB細胞がマウス由来であると1つ以上のマウス遺伝子の発現が検出されるという具合になるだろう。ある実施形態では、1つ以上の遺伝子が、以下に挙げるヒト遺伝子の少なくとも一つを含む:AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、またはジンクフィンガータンパク質106。
【0008】
本発明は、例えばB細胞活性化を低減(reduce)、防止(prevent)、または阻止(forestall)するために、活性化B細胞においてダウンレギュレートされる遺伝子もしくは遺伝子産物、例えばコピンIII、宿主細胞因子制御因子I、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、もしくはSTK10を活性化することによって、または活性B細胞においてアップレギュレートされる遺伝子もしくは遺伝子産物、例えばAHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、もしくはジンクフィンガータンパク質106を阻害することによって、B細胞を処置する方法も提供する。本方法は、場合によっては、1つ以上のダウンレギュレートされる遺伝子または遺伝子産物の活性化と、1つ以上のアップレギュレートされる遺伝子または遺伝子産物の阻害とを、両方とも組み入れることができる。本方法は、場合によっては、患者のB細胞を処置することにより、患者の慢性関節リウマチを処置するために使用することができる。
【0009】
本発明はB細胞に関する処置を評価するための方法も提供する。本方法は、処置の適用後に、1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出し、その発現レベルを、B細胞活性化状態を示す基準発現レベルと比較することによって、処置の効力を評価することを含む。例えば、基準発現レベルは処置を適用する前の発現レベルに相当することができる。1つ以上の遺伝子は、好ましくは、以下に挙げる遺伝子の少なくとも一つを含む:AHCYL1、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、BLOC−1、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、およびジンクフィンガータンパク質106。患者がヒトであるとき、遺伝子はヒト遺伝子である。
【0010】
本発明は、活性化B細胞において(例えば自己免疫疾患時の活性化ヒトB細胞において)過剰発現される遺伝子産物、例えばPBEF/ビスファチン、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、SMC5、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、およびジンクフィンガータンパク質106を特異的に結合する抗体、例えば精製抗体およびモノクローナル抗体も提供する。本明細書で使用する用語「抗体」は、可変ドメインおよび定常ドメインを持つ完全長抗体、可変ドメインまたは抗原に特異的に結合する能力を持つその一部を保持している抗体フラグメント、単鎖抗体などを包含する。抗原がアクセス可能であると、抗体の投与(例えば細胞培養物への投与またはヒト対象への投与)を、活性化B細胞(例えば、その抗体で活性化B細胞を標的化することによって処置しうる慢性関節リウマチであると以前に診断されているヒトに由来するもの)を標的化するために使用することができる。
【0011】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明から明白である。ただし、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、それは例示であって、限定ではないと理解すべきである。当業者には、本発明の範囲に含まれる様々な改変および変更が、詳細な説明から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】0日目のコラーゲン免疫および21日目の追加免疫後のマウスにおける関節炎症状の誘発を表す図である。臨床スコアを28日目、35日目、42日目、49日目、56日目、63日目および70日目に評価し、4本の足の炎症を以下のようにスコア化した:0(炎症なし);1(1本または2本の腫脹した指);2(3本以上の腫脹した指または足の軽度〜中等度の腫脹);3(足全体の広範囲にわたる腫脹);4(腫脹の消散、足の関節強直)。表示したスコアは、各動物に関する個々の総スコアである。高い臨床スコアを持つ動物は56日目に屠殺した。したがって、63日目および70日目に観察されたスコアは、これらの日に実験に参加しつづけていた、動物の部分集合における疾患の継続的進行を表すのであって、56日目以降の疾患重症度の減少を表すのではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
疾患時に差次的に発現される遺伝子は、その疾患のマーカーとして有用であり、治療的介入の標的としても有用である。慢性関節リウマチのマウスマーカーを使って、B細胞において差次的に発現される遺伝子を同定した。これらの遺伝子を、本明細書では、「B細胞活性化調節遺伝子」または「BCARG」と呼ぶ。
BCARGの同定
ヒト慢性関節リウマチに似た自己免疫応答の過程で調節される新規B細胞標的を同定するために、マウスコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルにおけるB細胞の転写プロファイルの時間的変化を評定した。
【0014】
マウスコラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルは、RAの特徴、例えば多発性関節炎、滑膜炎および続発する軟骨/骨びらんなどを全て持つ慢性炎症性疾患である。CIAはマウスの感受性株、例えばDBA1/Jにおいて、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化された異種II型コラーゲンの免疫(0日目)および不完全フロイントアジュバント(IFA)中に乳化されたコラーゲンIIの追加免疫(21日目)によって誘発される。CIAの発生はT細胞に依存すると考えられ、疾患感受性はMHC領域に関連づけられる。T細胞活性化に続いて、T細胞、B細胞、マクロファージ/単球、および活性化滑膜細胞が関与する炎症カスケードがトリガーされる。
【0015】
免疫および追加免疫後の種々な時点で流入領域リンパ節から精製されたB細胞から、遺伝子チップハイブリダイゼーション用のRNAを抽出した。CFA(追加免疫についてはIFA)のみを注射した動物は、類似する全般的免疫応答を示すものの、その関節に関節炎症状を発生させることは決してないので、これらを対照群とした。
【0016】
BCARGは実施例1に説明するように同定された。460を超える遺伝子が、抗コラーゲン免疫応答を発生させるマウスのB細胞中で差次的発現を持つと同定された。これらの遺伝子は、もちろん、マウスB細胞の活性化状態を評定するために単独で、または集合的に使用することができ、治療的介入の標的である。CIAはヒト慢性関節リウマチの広く認識された動物モデルであるから、対応するヒト遺伝子をそのように使用することもできる。これらのヒト遺伝子のいくつかを下記の表に要約し、以下に議論する。
【0017】
【表1A】

【0018】
【表1B】

【0019】
ヒトS−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1(AHCYL1)遺伝子は、アデノシルホモシステイナーゼ2(S−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ2)(AdoHcyase2)とも呼ばれ、ヒト1番染色体上の1p13.2にマッピングされている。そのタンパク質配列および核酸配列は周知である。代表的なタンパク質配列および核酸配列を、それぞれ配列番号1および配列番号2として、配列表に示す。Dekkerら(2002)Immunogenetics 53(12):993−1001において、AHCYL1 mRNAは血液および皮膚樹状細胞(DC)の活性化時に著しく増加するが、最終分化した扁桃DCでは減少することが測定された。
PKCδ
ヒトnPKCδ遺伝子は3番染色体上の3p21.31にマッピングされている。ヒト遺伝子に対応するタンパク質配列および核酸配列は周知であり、代表的な核酸配列およびタンパク質配列を、それぞれ配列番号3および配列番号4として提供する。
【0020】
nPKCδはB細胞シグナリングに関与し、種々な細胞タイプの増殖、アポトーシス、および分化の調節に関与する。nPKCδは、正常マウスのリンパ器官のBおよびTリンパ球、大脳、ならびに腸に最も豊富に存在する。nPKCδは転写因子CREBをSer−133でリン酸化して、その活性化を促進する。Miyamotoら(2002)Nature 416(6883):865−9では、Prkcd遺伝子が破壊されたマウスを作出することにより、1年までは生存可能であるが、自己免疫疾患を起こしやすく、数多くの胚中心を含有する肥大したリンパ節および脾臓を持つことが観察された。Mecklenbraeukerら(2004)Nature 431:456−461は、マウスモデルを使って、セリン/スレオニンプロテインキナーゼC−δによる末梢B細胞サバイバルの調節機序、すなわち休止B細胞の自発的な死は、ヒストンH2Bのセリン−14におけるリン酸化に寄与するPkcdの核局在化によって調節されることを報告した。
GNG12;グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質),γ12
Gタンパク質γ12はヒト1番染色体上の1p31.3にマッピングされている。そのタンパク質配列および核酸配列は周知であり、代表的な核酸配列およびタンパク質配列を配列番号5および配列番号6として提供する。このタンパク質は、活性化PKCによるリン酸化の標的であると報告されている(Morishitaら(1995)J.Biol.Chem.270(49):29469−29475)。
PDE7A;ホスホジエステラーゼ7A
ヒトPDE7A遺伝子は8番染色体上の8q13にマッピングされている。ヒト遺伝子のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列を配列番号7および配列番号8として提供する。PDE7Aはヒト炎症誘発細胞および免疫細胞において発現され、サイトカイン産生、増殖および活性化マーカーの発現を含むヒトT細胞機能を調節する潜在能力を持つ。
STE−20様キナーゼ(SLK)
Ste20グループキナーゼはMAPキナーゼカスケードの制御因子であると提唱されている。SLKはヒト10番染色体上の10q25.1にマッピングされている。SLKの核酸配列およびタンパク質配列は既知であり、典型的な配列を配列番号9および配列番号10として提供する。
MAP4K5
1番染色体上の14q11.2−g21にマッピングされているヒトMAP4K5遺伝子は、酵母SPS1/STE20キナーゼに対して高い類似性を示すセリン/スレオニンプロテインキナーゼファミリーのメンバーである。MAP4K5は哺乳動物細胞中でJunキナーゼを活性化することが示されていることから、ストレス応答における役割が示唆される。この遺伝子については、同じタンパク質をコードする、選択的にスプライシングされた2つの転写変異体が記載されている。典型的な核酸配列を配列番号11および配列番号13として提示し、タンパク質翻訳を配列番号12および配列番号14として2回提示する。MAP4K5はキナーゼ活性を持ち、JNKを活性化するが、ERK1は活性化しない。
MKNK2;MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2;Gタンパク質共役受容体キナーゼ7
MKNK2遺伝子はヒト19番染色体上の19p13.3にマッピングされている。この遺伝子は、C末端が異なるタンパク質をコードする、選択的にスプライシングされた転写変異体を持つと報告されており、どちらも形態のタンパク質も、真核生物開始因子eIF4Eをリン酸化すると報告されている(Scheperら(2003)Mol.Cell.Biol.23(16):5692−705)。典型的な核酸配列を配列番号15および配列番号17として提示し、対応するタンパク質配列をそれぞれ配列番号16および配列番号18として提示する。
FAM60A;ホモサピエンス配列類似性ファミリー60,メンバーA
FAM60Aはヒト12番染色体上の12p11にマッピングされている。ヒトFAM60Aのタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号19および配列番号20として提供する。
TCTE1L;DYNLT3;ダイニン軽鎖Tctex3型
TCTE1LはヒトX染色体上のXp21にマッピングされている。ヒトTCTE1Lのタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号21および配列番号22として提供する。
PIK3R4;ホスホイノシチド−3−キナーゼ,調節サブユニット4,p150
PIK3R4はインビボでホスホイノシチド−3−キナーゼと会合し、インビトロでその活性を増強する(Panaretouら(1997)J.Biol.Chem.272(4):2477−85)。PIK3R4はヒト3番染色体上の3q22.1にマッピングされている。ヒトPIK3R4のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号23および配列番号24として提供する。
STUB1/CHIP;STIP1ホモロジーおよびUボックス含有タンパク質1
CHIPはヒト16番染色体上の16p33にマッピングされている。ヒトCHIPのタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号25および配列番号26として提供する。
【0021】
Jiangら(2001)J.Biol.Chem.276(46):42938−42944は、インビトロユビキチン化アッセイと組換えタンパク質とを使って、CHIPが固有のE3ユビキチンリガーゼ活性を有し、ユビキチン化を促進することを証明した。この活性はC末端Uボックス(酵母UFD2と類似性を共有するドメイン)に依存した。CHIPはストレス応答性ユビキチン結合酵素ファミリーUBCH5と機能的にも物理的にも相互作用した。CHIPのユビキチンリガーゼ活性の主な標的はHSC70そのものであった。CHIPは主として短い非典型的マルチユビキチン鎖でHSC70をユビキチン化するが、このタンパク質の定常状態レベルまたは半減期に対して、それとわかるほどの影響は持たなかった。著者らは、CHIPは真の(bona fide)ユビキチンリガーゼであり、Uボックス含有タンパク質はE3の新規ファミリーを構成しうると結論した。
SSA1/TRIM21/Ro52
Ro/SSAは、全身性エリテマトーデス(SLE)を持つ患者の35〜50%およびシェーグレン症候群を持つ患者の97%までにおいて、自己抗体に結合するリボ核タンパク質である。この遺伝子がコードするタンパク質はトリパータイト(tripartite)モチーフ(TRIM)ファミリーのメンバーである。TRIMモチーフは、3つの亜鉛結合ドメイン、RING、B−ボックス1型およびBボックス2型、ならびにコイルドコイル領域を含む。このタンパク質は、単一のポリペプチドと4つの小RNA分子の一つとを含むRoSSAリボ核タンパク質の一部である。RoSSA粒子は細胞質および核の両方に局在する。RoSSAはシェーグレン症候群および全身性エリテマトーデスを持つ患者において自己抗原と相互作用する。
【0022】
TRIM21遺伝子はヒト11番染色体上の11p15.5にマッピングされている。この遺伝子については、選択的にスプライシングされた2つの転写変異体が記載されている。代表的な核酸配列およびタンパク質配列をそれぞれ配列番号27および配列番号28として提供する。
SMC5;ホモサピエンス染色体構造維持5
ヒトSMC5はヒトSMC6(Taylorら(2001)Mol.Cell.Biol.12(6):1583−1594)およびヒトMMS21(Pottsら(2005)Mol.Cell.Biol.25(16):7021−7032)と相互作用し、おそらくはDNA修復に参加する。SMC5はヒト9番染色体上の9q21.11にマッピングされている。ヒトSMC5のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号29および配列番号30として提供する。
WDR12;WDリピートドメイン12
この遺伝子は、WDリピートタンパク質ファミリーのメンバーをコードし、インビボでPes1およびBop1と会合すると報告され、またリボソームRNAプロセシングに要求されると報告されている(Hoelzelら(2005)J.Cell.Biol.170(3):367−378)。この遺伝子はヒト2番染色体上の2q33.1にマッピングされている。ヒトWDR12のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号31および配列番号32として提供する。
EXOSC10;エキソソームコンポーネント10
エキソソームは、種々な細胞過程(いずれもRNAのプロセシングまたは分解に関与するもの)において機能する3’→5’エキソリボヌクレアーゼの複合体である。ヒトEXOSC10遺伝子は1番染色体上の1p36.22にマッピングされている。EXOSC10のタンパク質配列および核酸配列は既知である。代表的な核酸配列を配列番号33および配列番号35として提供し、対応するアミノ酸翻訳をそれぞれ配列番号34および配列番号36として提供する。
CAPN3;カルパイン3
カルパイン3はBおよびTリンパ球内では優先的に発現されるが、ナチュラルキラー細胞では発現量が少なく、多形核細胞ではほとんど検出することができない細胞内プロテアーゼである。この遺伝子中の突然変異は肢帯型筋ジストロフィー2型に関連する。この遺伝子は選択的にスプライシングされ、数個の転写変異体および関連タンパク質アイソフォームが既知である。典型的な核酸を配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、および配列番号53として提示し、対応するポリペプチド配列をそれぞれ配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、および配列番号54として提示する。
SLA;Src様アダプター;SLAP
Src様アダプタータンパク質(SLAP)は、TCRレパートリーが選択される胸腺細胞発生の特異的段階中に、T細胞受容体(TCR)−CD3複合体の発現をダウンレギュレートする。組換えSLAPは活性型Eck受容体チロシンキナーゼに結合することが示されている。ヒト遺伝子はヒト8番染色体上の8q22.3−qter|8q24にマッピングされている。ヒトWDR12のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号55および配列番号56として提供する。
CDC様キナーゼ1(CLK1)
CLK1はヒト2番染色体上の2q33にマッピングされている。ヒトCLK1遺伝子は、エクソン4を含んで、またはエクソン4を省いて、選択的にスプライシングされる。この遺伝子のタンパク質配列および核酸配列は既知である。代表的な核酸配列を配列番号57および配列番号59として提供し、その翻訳産物をそれぞれ配列番号58および配列番号60として提供する。
HCFC1R1;宿主細胞因子C1制御因子1(XPO1依存性)
HCFC1R1は、細胞性転写因子LZIPおよびGABPの活性化補助因子であるHCF−1に結合すると報告されており、HCF−1の細胞内局在を調整することによってHCF−1を調節しうる(Mahajanら(2002)J.Biol.Chem.277(46):44292−44299)。この遺伝子はヒト16番染色体上の16p13.3にマッピングされている。ヒトHCFC1R1のタンパク質配列および核酸配列は既知である。代表的な核酸配列を配列番号61、配列番号63、および配列番号65として提供し、それらの翻訳をそれぞれ配列番号62、配列番号64、および配列番号66として提供する。
RAB3D
Rab3Dは小胞輸送の既知制御因子である。この遺伝子はヒト19番染色体上の19p13.2にマッピングされている。ヒトRAB3Dのタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号67および配列番号68として提供する。
BLOC1S1;リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1,サブユニット1
BLOC1S1は、「メラノソームおよび血小板密顆粒などといったエンドソーム−リソソーム系の特殊化した細胞小器官の正常な生合成に必要な遍在的に発現されるマルチサブユニットタンパク質複合体」であるBLOC−1(リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1)複合体のサブユニットである(Starcevicら(2004)J.Biol.Chem.279(27):28393−401)。この遺伝子はヒト12番染色体の12q13−q14にマッピングされている。ヒトBLOC1S1のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号69および配列番号70として提供する。
コピンIII;CPNE3;カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質
CPNE3は、古典的なキナーゼドメインは欠いているものの、内在性キナーゼ活性を持つようである(Caudellら(2000)Biochem.39(42):13034−43)。この遺伝子はヒト8番染色体の8q21.3にマッピングされている。ヒトCPNE3のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号71および配列番号72として提供する。
TMEM4;膜貫通タンパク質4
MSAP/TMEM4は、神経突起伸長を強化し、ミオシン調節軽鎖のレベルを増加させるMIR相互作用タンパク質である(Bornhauserら(2003)J.Biol.Chem.278(37):35412−35420)。TMEM4遺伝子はヒト12番染色体の12q15にマッピングされている。ヒトTMEM4のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号73および配列番号74として提供する。
STK10
STK10は、polo様キナーゼキナーゼファミリーのメンバーであり、造血組織では多量に発現される(Walterら(2003)J.Biol.Chem.278(20):18221−8)。この遺伝子はヒト5番染色体の5q35.1にマッピングされている。ヒトSTK10のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号75および配列番号76として提供する。
酸性ホスファターゼ5;ACP5;酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRACP)
ACP5は、オルトリン酸モノエステルからアルコールおよびオルトリン酸塩への変換を触媒する鉄含有糖タンパク質である。ACP5は最も基本的な酸性ホスファターゼであり、L−酒石酸によって阻害されない唯一の形態である。慢性関節リウマチでは、おそらく炎症性マクロファージまたは樹状細胞が分泌したと思われる血清酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼアイソフォームが検出されている(Janckilaら(2002)Clin.Chem.Acta320(1−2):49−58)。活性化マクロファージおよび破骨細胞は多量の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼを発現させる。ACP5によって生成される反応性酸素種は、活性化マクロファージにおける抗原提示中に、外来化合物の分解に参加しうる。この遺伝子はヒト19番染色体上の19p13.3−p13.2にマッピングされている。ヒトACP5のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号77および配列番号78として提供する。
CHM;コロイデレミア(Rabエスコートタンパク質1)
コロイデレミア遺伝子は、膜輸送に関与するタンパク質Rabエスコートタンパク質−1(REP1)をコードする。この遺伝子はヒトX染色体上のXq21.2にマッピングされている。ヒト遺伝子のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号79および配列番号80として提供する。
PBEF
プレB細胞コロニー強化因子(PBEF)は、初期B細胞の増殖因子であり、ビスファチンおよびニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(Nampt)とも呼ばれている。この遺伝子は7q22.2にマッピングされており、そのタンパク質配列および核酸配列は周知である。代表的な核酸配列およびタンパク質配列を配列表にそれぞれ配列番号81および配列番号82として示す。PBEFはIL−1βによって好中球中でアップレギュレートされ、種々な炎症刺激に呼応して、アポトーシスの新規阻害因子として機能する。PBEFは、ヒトでもマウスでも内臓脂肪に高度に濃縮され、肥満の発達時には血漿中でその発現レベルが増加するアディポサイトカインでもある。
UBB;ユビキチンB
ユビキチンB遺伝子は、分解されるべきタンパク質に共有結合されるユビキチンをコードする。この遺伝子はヒト17番染色体上の17p12−p11.2にマッピングされている。ヒト遺伝子のタンパク質配列および核酸配列は既知である。代表的な核酸配列を配列番号83として提供する。その翻訳産物は最後のアミノ酸として余分なバリンを持つポリユビキチン前駆体であり、ポリユビキチン前駆体の代表的なアミノ酸配列を配列番号84として提供する。
ZFP106;ジンクフィンガータンパク質106;SH3BP3;SIRM(son of insulin receptor mutant)
ZFP106遺伝子は、核小体と共局在するジンクフィンガータンパク質である(Grasbergerら(2005)Int.J.Biochem.Cell Biol.37(7):1421−37)。この遺伝子はヒト15番染色体上の15q15.1にマッピングされている。ヒト遺伝子のタンパク質配列および核酸配列は既知であり、代表的な配列をそれぞれ配列番号85および配列番号86として提供する。
評価および処置
本発明のBCARGは、関節炎関連B細胞活性化の評価、および関節炎または他の自己免疫疾患の予測、診断または予後に使用することができる。例えばこれらの遺伝子は、慢性関節リウマチを発症しそうな患者を同定するために使用することができる。これらの遺伝子は、関心対象の患者における自己免疫疾患の進行またはその処置の有効性を評価するために使用することもできる。
【0023】
関心対象者のB細胞試料におけるBCARGの発現レベルは、その関心対象者における慢性関節リウマチの進行または処置を予測、診断または評定するために、同じ遺伝子の基準発現レベルと比較することができる。基準発現レベルは、関心対象者の試料と同じタイプのB細胞試料(例えば、血液、リンパ、脾臓、または滑膜などの同じ由来源組織から得られるもの)を使って調製することができる。同じ調製手法または方法論を使って両方の発現レベルを決定することができる。基準発現レベルは前もって決定または前もって記録することができる。また、関心対象者のBCARG発現レベルの決定と同時に、または関心対象者のBCARG発現レベルの決定後に、調製することもできる。
【0024】
本発明で使用される基準発現レベルは、典型的には、無疾患のヒトまたは慢性関節リウマチを持つこともしくは発症することがわかっている患者のB細胞試料における当該遺伝子の発現パターンを示唆する値または範囲を含むか、そのような値または範囲からなる。一実施形態では、基準発現レベルが、無疾患のヒトのB細胞試料における当該遺伝子の平均発現レベルを含む。別の例では、基準発現レベルが、慢性関節リウマチを持つことまたは発症することがわかっている患者のB細胞試料における当該遺伝子の平均発現レベルを含む。算術平均、調和平均、絶対値の平均、対数変換値の平均、および加重平均を含む(ただしこれらに限定されない)任意の平均化法を使用することができる。
【0025】
本発明では他のタイプの基準発現レベルを使用することもできる。例えば数値的閾を基準として使用することができる。
【0026】
関心対象の患者の発現レベルおよび基準発現レベルは、任意の形で構成させることができる。発現レベルは絶対レベル、標準化レベル、または相対レベルであることができる。適切な標準化手法には、核酸アレイ遺伝子発現解析で使用されているもの、またはHillら(2001)Genome Biol.,2:research0055.1−0055.13に記載されているものなどがあるが、これらに限定されない。一例では、平均が0になり、標準偏差が1になるように、発現レベルを標準化する。別の例では、当業者には理解されるとおり、内部対照または外部対照に基づいて発現レベルを標準化する。さらに別の例では、B細胞内で既知の存在度を持つ1つ以上の対照転写物に対して、発現レベルを標準化する。
【0027】
B細胞は、対象から得られる任意の適切な由来源から単離することができる。由来源は血液試料またはリンパ試料などの流体試料であることができる。一例として、血液、例えば末梢血を対象から単離することができ、次に細胞調製用チューブ(CPT)を使って末梢血単核球(PBMC)を単離することができる。非B細胞を選択的に結合する抗体カラムにPBMCを通すことにより、B細胞を高度に濃縮することができる。
【0028】
関心対象者におけるBCARGの発現レベルは、その対象のB細胞試料におけるそれら遺伝子のそれぞれのRNA転写物レベルを測定することによって決定することができる。この目的に適した方法には、例えば定量RT−PCR、競争的RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、ディファレンシャルディスプレイRT−PCR、ノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、スロットブロット法、ヌクレアーゼ保護アッセイ、および核酸アレイ(ビーズアレイを含む)などがあるが、これらに限定されない。
【0029】
BCARGのRNA転写物の検出には、RNAまたは対応するcDNAに相補的なプローブの使用を組み入れることができる。関心対象の転写物にハイブリダイズする能力を持つプローブは、標識されていても、標識されていなくてもよい。標識プローブは、分光測光法的手段、光化学的手段、生化学的手段、生物電子工学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、化学的手段、または他の適切な手段によって検出することができる。プローブ用の典型的な標識部分には、放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー、例えば蛍光マーカーおよび色素、磁気ラベル、結合酵素(linked enzyme)、質量分析タグ、スピンラベル、電子移動ドナーおよびアクセプタなどがある。一実施形態では、プローブが1つ以上の基板支持体に安定に取り付けられる。核酸ハイブリダイゼーションまたはイムノアッセイは、その基板支持体で直接行うことができる。この目的に適した基板支持体には、ガラス、シリカ、セラミックス、ナイロン、石英ウェハ、ゲル、金属、紙、ビーズ、チューブ、繊維、フィルム、膜、カラムマトリクス、またはマイクロータイタープレートウェルなどがあるが、これらに限定されない。
【0030】
ノーザンブロットなどのハイブリダイゼーションに基づく方法は、ストリンジェントなまたは高度にストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションおよび洗浄を含むことができる。本明細書にいう「ストリンジェントな条件」は、表2の条件G〜Lと少なくとも同程度にストリンジェントである。「高度にストリンジェントな条件」は、表2のA〜Fと少なくとも同程度にストリンジェントである。条件毎に、対応するハイブリダイゼーション条件(「ハイブリダイゼーション温度およびバッファ」)下でハイブリダイゼーションを約4時間行った後、対応する洗浄条件(「洗浄温度およびバッファ」)下で、20分の洗浄を2回行うことができる。
【0031】
【表2A】

【0032】
【表2B】

【0033】
疾患遺伝子の発現プロファイルは、関心対象者のB細胞試料における各遺伝子のタンパク質産物レベルを測定することによって決定することもできる。この目的に適した方法には、イムノアッセイ(例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、FACS(蛍光励起細胞分取装置)、ウェスタンブロット、ドットブロット、免疫組織化学、抗体に基づくラジオイメージング、タンパク質アレイ、ハイスループットタンパク質シーケンシング、二次元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、および質量分析などがあるが、これらに限定されない。また、疾患遺伝子がコードするタンパク質産物の生物学的活性(例えば酵素活性またはタンパク質/DNA結合活性)も、関心対象のB細胞試料における遺伝子の発現レベルを測定するために使用することができる。
【0034】
関心対象者の発現レベルと基準発現レベルとの間の相違または類似性は、例えば、標準化後に、変化倍率、絶対的相違、または相対的相違を評価することによって決定することができる。一例において、関心対象者におけるBCARGの発現レベルと、対応する基準発現レベルとは、それら二つのレベルの間の相違が基準発現レベルの50%、40%、30%、20%、または10%未満である場合に、類似しているとみなされる。別の例において、関心対象者におけるBCARGの発現レベルと、対応する基準発現レベルとは、前者のレベルが基準発現レベルの標準偏差(またその倍数もしくは分数)内にある場合に、類似しているとみなされる。
【0035】
ある患者の複数のBCARGの発現レベルを評価する場合は、その患者に由来するB細胞におけるBCARGの発現プロファイルを作成し、それを基準発現プロファイルと比較することができる。関心対象者の発現プロファイルと基準発現プロファイルとの間の総合的類似性に関する基準は、予測、診断または評価に関する正確度(正しいコールと間違ったコールとの合計に対する正しいコールの比率)が比較的高くなるように選択することができる。例えば類似性基準は、予測、診断または評価に関する正確度が少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上になるように選択することができる。一例では、関心対象者の発現プロファイル中の構成要素の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上が基準発現プロファイル中の対応する構成要素に類似するとみなされる場合に、総合的類似コールがなされる。発現プロファイル中の異なる構成要素は、比較に際して同じ重みまたは異なる重みを持ちうる。予測、診断または評価の正確度を改善するために、遺伝子発現に基づく方法を他の臨床検査と併用することもできる。
【0036】
重みつき投票(weighted voting)アルゴリズムは、関心対象者にクラスへの帰属関係を割り当てることができる。Golubら(1999)Science286:531−537;Slonimら(2000)Procs.of the Fourth Annual International Conference on Computational Molecular Biology、Tokyo、Japan、April 8−11、pp.263−272を参照されたい。この目的に適したソフトウェアプログラムには、GeneCluster2ソフトウェア(Broad Institute、マサチューセッツ州ケンブリッジ)があるが、これに限定されない。
【0037】
重みつき投票解析の一形態では、関心対象者が二つのクラス(すなわちクラス0またはクラス1)の一方に割り当てられ、各クラスは異なる状態(例えば慢性関節リウマチまたは無疾患)を表す。例えばクラス0は無疾患のヒトを含むことができ、クラス1は慢性関節リウマチ患者を含む。一組のBCARGを表1から選択して、分類子(classifier)(すなわちクラス予測子(class prodictor))を形成させることができる。分類子中の各遺伝子は、二つのクラス(クラス0またはクラス1)の一方に、重みつきの票(vote)を投じる。遺伝子「g」の票は、v=a(x−b)と定義することができ、式中、aはP(g,c)に等しく、遺伝子「g」の発現レベルとクラス0およびクラス1間のクラス識別との間の相関関係を反映する。bは[x0(g)+x1(g)]/2に等しく、これは、クラス0およびクラス1における遺伝子「g」の発現レベルの平均log(mean log)の平均値である。xは、関心対象の試料における遺伝子「g」の発現レベルの標準化log(normalized log)を表す。正のvはクラス0への票を示し、負のvはクラス1への票を示す。V0は全ての正の票の和を表し、V1は全ての負の票の和の絶対値を表す。予測強度(prediction strength:PS)は、PS=(V0−V1)/(V0+V1)と定義される。
【0038】
本発明では任意の数のBCARGを使用することができる。一実施形態では、表1から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、またはそれ以上の遺伝子を、関心対象者における免疫応答の処置の有効性の予測、診断または評定に使用する。本発明で使用される疾患遺伝子は、慢性関節リウマチ患者では無疾患のヒトと比較してアップレギュレートされる遺伝子、ならびに慢性関節リウマチ患者では無疾患のヒトと比較してダウンレギュレートされる遺伝子を含むように選択することができる。
【0039】
本発明のBCARGは、B細胞媒介免疫応答を調整するための薬物を同定または試験するために使用することもできる。BCARG発現レベルを、無疾患のヒトにおける発現レベルにより一層似かよった状態にまで戻す薬物候補の能力は、自己免疫疾患におけるその薬物候補の有効性を示唆する。薬物候補をスクリーニングまたは評定するための方法は当技術分野では周知である。これらの方法は、動物モデルで行うか、またはヒト臨床試験中に行うことができる。
【0040】
本発明では、BCARG(その一部は自己免疫疾患を持つ患者のB細胞中で過少発現される)をコードする発現ベクターも考えられる。それらの発現ベクターをその必要がある患者に導入することにより、これらの遺伝子の異常な発現を修正することができる。この目的に適した発現ベクターおよび遺伝子送達技法は、当技術分野では周知である。
【0041】
さらにまた、一部のBCARGは自己免疫疾患を持つ患者のB細胞において過剰発現されるので、本発明では、BCARGまたはそれをコードする発現ベクターに対してアンチセンスである配列も考えられる。アンチセンス配列またはそれをコードする発現ベクターを導入することにより、これらの疾患遺伝子の異常な発現を修正することができる。
【0042】
BCARGの発現はRNA干渉(「RNAi」)によって阻害することもできる。RNAiは転写後遺伝子サイレンシング(「PTGS」)において使用される技法であり、この技法では標的にされた遺伝子活性が特異的に打ち消される。一実施形態では、標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、少なくとも約21ヌクレオチドのdsRNAが細胞に導入される。
【0043】
さらにまた本発明はBCARGがコードするポリペプチドを特異的に認識する抗体を特徴とする。これらの抗体は、それを必要とする患者に投与することができる。一実施形態において、本発明の抗体は、疾患遺伝子の活性を実質的に減少させるか、または阻害することができる。例えば抗体は、BCARGの活性を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少させることができる。本発明に好適な抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、またはFab発現ライブラリーによって産生されるフラグメントがあるが、これらに限定されない。多くの実施形態において、本発明の抗体は、各BCARG産物または他の所望の抗原に、少なくとも10−1、10−1、10−1、10−1、またはそれ以上の結合アフィニティ定数Kで結合することができる。
【0044】
本発明の抗体またはポリヌクレオチドを含む医薬組成物を製造することができる。医薬組成物は、意図した投与経路に適合するように製剤化することができる。投与経路の例には、非経口、静脈内、皮内、皮下、経口、吸入、経皮、局所外用、経粘膜、および直腸投与などがあるが、これらに限定されない。望ましい医薬組成物を製造するための方法は当技術分野では周知である。
【0045】
上述の実施形態および以下の実施例は、限定ではなく例示のために記載されると理解すべきである。本発明の範囲に含まれる種々な改変および変更が本明細書から当業者には明白になるだろう。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
免疫および追加免疫後の種々な時点で流入領域リンパ節から精製したB細胞から、遺伝子チップハイブリダイゼーション用のRNAを抽出した。完全フロイントアジュバント(CFA)(追加免疫時は不完全フロイントアジュバント(IFA))だけを注射した動物は、類似する全般的免疫応答を示すものの、その関節に関節炎症状を発生させることはないので、これらを対照群とした。
関節炎誘発
DBA/1LacJ雄マウスの尾基部の皮内にCFAのみ(対照群)またはCFA中に乳化したウシII型コラーゲン100μg(関節炎誘発受容群)を免疫した。次いで21日目に、マウスにIFA(対照群)またはIFA中のウシII型コラーゲン100μg(関節炎誘発受容群)を追加免疫した。免疫(0日目)後の28、35、42、49、56、63および70日目に臨床スコアを評価し、4本の足の炎症を以下のようにスコア化した:
0:炎症なし
1:1本または2本の腫脹した指
2:3本以上の腫脹した指または軽度〜中等度の腫脹
3:足全体の広範囲にわたる腫脹
4:腫脹の消散、足の関節強直。
【0047】
図1は、転写プロファイリング実験に使用した動物と並行する別個の動物のコホートから得られた疾患の進行を示す。
RNAの単離、定量およびハイブリダイゼーション
CD19抗体を用いるFACS選別によってリンパ節試料からB細胞を単離した。標準的なQiagen RNeasyミニキット手順を使って全RNAをB細胞から極めて高純度(範囲88.5%〜99.5%)に精製した。RNAをUV−Vis吸光度スペクトルによって定量したところ、全RNA量はおおむね1μg程度(500ng〜3.5μgの範囲)だった。全RNA量が少ないため、2ラウンド線形増幅法を使用した。後に解析に影響を及ぼすであろう試料処理バイアスが導入される可能性を避けるために、RNA単離工程の後に、まず試料をランダム化した。ビオチン化cRNAを調製するために、Affymetrix two−cycle Target Labelingキットと一緒に提供されるプロトコールに従った。
【0048】
AffymetrixチップMOE430 2.0へのチップハイブリダイゼーションには、標準的プロトコールを使用した。
【0049】
全ての試料について標的作成には2ラウンドの増幅が必要だったが、さらなる解析から除外する必要がある系統的異常値(systematic outlier)はほとんどなかった。一つの試料群の複製試料間のピアソン相関は高かったことから(r−Pearson>96%、おおむね>98%)、与えられた時間/処置点におけるロバストで再現性のあるB細胞応答が示された。
【0050】
教師なし(2元)クラスタリングにより、試料レプリケートを、おおむね隣同士にグループ分けし、試料セット全体を、以下のように記述することができる3つの主要分枝に分割した:
・ナイーブ(全てのナイーブ試料+免疫後30日および免疫後35日由来の試料)
・プレ応答(全ての2日CFAまたはCFA+CII)および初期応答(6、8および20日試料)
・追加免疫後(極後期(30〜35日)の試料を除き、追加免疫後に得られる試料の大半)。
【0051】
以後の転写プロファイリング解析では、21日目の追加免疫付近の時点に焦点を絞った。というのも、この処置は、CFA+CII処置動物から得られるリンパ節由来B細胞において、CFA注射動物のみから得られる応答よりも強い、ロバストな応答を与えたからである。22日目(追加免疫の1日後)にCFA+CII処置動物から得られるB細胞の差次的発現を、以下の条件のいずれかにおいてやはり差次的である遺伝子を差し引いて探すことにより、差次的遺伝子リストを確立した:
・22日目にCFA処置動物から得られるB細胞と2日目ナイーブとの間で差次的に発現される遺伝子(差次的遺伝子リストをコラーゲン応答特異的遺伝子に集中させるため)
・20日目にCFAまたはCFA+CII処置動物から得られるB細胞と2日目ナイーブとの間で差次的に発現される遺伝子(初期応答中に誘発されるが、このモデルにおけるRA様症状を生じさせるのに不可欠な追加免疫後のB細胞活性化には必ずしも必要とされない遺伝子を避けるため)。
【0052】
この解析により、CFA+CII追加免疫後にB細胞において差次的に発現され、他の全ての基準に合致する470の遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子を表3に提示する。表3には、遺伝子名の他に、追加免疫後B細胞をナイーブB細胞と比較した場合の遺伝子発現の変化倍率(正の数字はナイーブB細胞と比較した発現量の増加を示し、負の数字は発現量の減少を示す);発現レベルの相違の有意性を示すt検定p値;ナイーブ試料における平均発現レベル;および追加免疫後試料における平均発現レベルが含まれる。
【0053】
【表3A】

【0054】
【表3B】

【0055】
【表3C】

【0056】
【表3D】

【0057】
【表3E】

【0058】
【表3F】

【0059】
【表3G】

【0060】
【表3H】

【0061】
【表3I】

【0062】
【表3J】

【0063】
【表3K】

【0064】
【表3L】

【0065】
【表3M】

【0066】
【表3N】

【0067】
【表3O】

【0068】
【表3P】

【0069】
【表3Q】

【0070】
【表3R】

【0071】
【表3S】

【0072】
【表3T】

【0073】
【表3U】

【0074】
【表3V】

【0075】
【表3W】

【0076】
【表3X】

【0077】
【表3Y】

【0078】
【表3Z1】

【0079】
【表3Z2】

【0080】
【表3Z3】

【0081】
上述した本発明の説明は実例および解説を与えるものであるが、本発明を網羅しているつもりはなく、本発明をここに開示したものだけに限定しようとするものでもない。変更および変形は先に教示した内容に照らして可能であるか、または本発明の実施によって獲得される。したがって本発明の範囲は請求項およびその等価物によって定義されることを注記する。
【0082】
本願は、2006年8月25日に出願された米国仮特許出願第60/840,380号に関係し、この仮特許出願は、あらゆる目的で、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎関連B細胞活性化を評価する方法であって、
(a)1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出する工程、および
(b)該発現レベルを、B細胞の活性化状態を示す基準発現レベルと比較する工程
を含み、該1つ以上の遺伝子が、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1(biogenesis of lysosome−related organelles complex−1)、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、PBEF/ビスファチン、ユビキチンB、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される方法。
【請求項2】
前記B細胞がヒトB細胞であり、前記1つ以上の遺伝子がヒト遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己免疫応答の徴候に関して患者を評価する方法であって、
(a)該患者由来の試料において、1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出する工程、および
(b)該発現レベルを、該患者における免疫応答を示す基準発現レベルと比較する工程
を含み、該1つ以上の遺伝子が、AHCYL1、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1(biogenesis of lysosome−related organelles complex−1)、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、PBEF/ビスファチン、ユビキチンB、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される方法。
【請求項4】
免疫応答が自己免疫応答である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記自己免疫応答が慢性関節リウマチである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
試料が血液、リンパ、および滑膜からなる群より選択される流体試料である、請求項3〜5のいずれか一項またはそれ以上に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)に先だって試料からB細胞を精製する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項またはそれ以上に記載の方法。
【請求項8】
前記患者がヒト患者であり、前記1つ以上の遺伝子がヒト遺伝子である、請求項1〜7のいずれか一項またはそれ以上に記載の方法。
【請求項9】
コピンIII、宿主細胞因子制御因子I、Rab3D、リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1(biogenesis of lysosome−related organelles complex−1)、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、および/またはSTK10からなる群より選択される遺伝子または遺伝子産物を活性化する工程、またはAHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される遺伝子または遺伝子産物を阻害する工程を含む、B細胞を処置する方法。
【請求項10】
コピンIII、宿主細胞因子制御因子I、Rab3D、リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1(biogenesis of lysosome−related organelles complex−1)、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、およびSTK10からなる群より選択される遺伝子または遺伝子産物を、該遺伝子産物をコードする核酸の発現によって活性化することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される遺伝子を、該遺伝子の発現を阻害する核酸の発現によって阻害することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
患者における慢性関節リウマチを処置する方法であって、請求項9〜11のいずれか一項またはそれ以上に記載の方法に従って、該患者におけるB細胞を処置する工程を含む方法。
【請求項13】
B細胞に関する処置を評価する方法であって、該処置の適用後に、1つ以上の遺伝子のB細胞発現レベルを検出し、該発現レベルを、B細胞活性化状態を示す基準発現レベルと比較することによって、該処置の効力を評価することを含み、該1つ以上の遺伝子が、AHCYL1、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、コピンIII、STK10、STE−20様キナーゼ、MAP4K5、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、Ro52、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、宿主細胞因子C1制御因子1、Rab3D、リソソーム関連オルガネラ生合成複合体−1(biogenesis of lysosome−related organelles complex−1)、膜貫通タンパク質4、酸性ホスファターゼ5、コロイデレミア、ユビキチンB、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される方法。
【請求項14】
前記基準発現レベルが処置を適用する前の発現レベルに相当する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の遺伝子がヒト遺伝子である、請求項13〜14のいずれか一項またはそれ以上に記載の方法。
【請求項16】
PBEF/ビスファチン、AHCYL1(S−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ様1)、PKC−δ、GNG12、ホスホジエステラーゼ7A、STE−20様キナーゼ、MAPキナーゼ相互作用セリン/スレオニンキナーゼ2、ホスホイノシチド−3−キナーゼ調節サブユニット4(p150)、染色体構造維持5(structural maintenance of chromosomes 5)、WDリピートドメイン12、エキソソームコンポーネント10、カルパイン3、Src様アダプタータンパク質、CDC様キナーゼ1、FAM60A、TCTE1L、STUB1/CHIP、MAP4K5、Ro52、およびジンクフィンガータンパク質106からなる群より選択される遺伝子産物を特異的に結合する精製された抗体またはモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記遺伝子産物がヒト遺伝子産物である、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
請求項16〜17のいずれか一項またはそれ以上に記載の抗体を投与する工程を含む、活性化B細胞を標的化する方法。
【請求項19】
前記抗体をヒトに投与する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヒトが、抗体で活性化B細胞を標的化することによって処置しうる慢性関節リウマチであると以前に診断されている、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−501182(P2010−501182A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525615(P2009−525615)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/018540
【国際公開番号】WO2008/027256
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】