説明

防塵防滴機構を有する押釦装置

【課題】筐体内への埃や液体の浸入を防止し、押釦操作のクリック感をも確保した防塵防滴機構を有する押釦装置の提供。
【解決手段】防塵防滴機構を有する押釦装置において、軸部が形成された押釦カバーの軸部を、押釦ゴムに形成され、周囲をスカート部で包囲された筒状部の貫通穴に挿設し、さらに軸部の先端は押釦ゴム押えの軸ガイド部によりガイドされ、押釦ゴムは押釦ゴム押えにより外装カバーへ圧接されることで、押釦装置の防塵防滴性能とクリック感の確保を両立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器等において、ユーザの押下操作により、各種設定や処理の実行を命令する、防塵防滴機構を有する押釦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器等、特に撮像装置、交換レンズ、電子閃光装置等などの携帯可能な電子機器には、押釦装置が多数設けられている。
【0003】
ユーザは、押釦装置を押下することにより、電子機器に対して各種設定や処理の実行を命令することができる。
【0004】
携帯可能である電子機器は、屋外に持ち出される機会が多く、そのため風雨にさらされるおそれも多い。
また、屋内外での使用によらず、特に電子化の進んだデジタルカメラ等の携帯電子機器では、微少の埃や液体によってもその機能に大きなダメージを受けるおそれがある。
【0005】
上記の課題に対して、従来の技術では、筐体内部へ埃や液体等の異物が浸入しにくい防塵防滴機構を有する押釦装置が開示されている。
【0006】
従来の押釦装置では、押釦操作のためにやむを得ず外装部材へ開けた開口部を、ユーザが操作可能な弾力性のあるゴム部材等で封止し、筐体外部から操作可能で、かつ、防塵防滴性能を有するのが一般的である。
【0007】
また、上記の従来の押釦装置では、ゴム部材等の弾性力による形状記憶作用を利用して、押釦装置の押下操作時若しくは押下解除操作時にユーザに対してクリック感を与えている。
【0008】
次に示す特許文献には、防塵防滴機構を有する押釦装置の従来例が開示されている。
【0009】
特許文献1(特開平9−259686号公報)には、操作釦を支持する中心軸を設け、多方向への入力が可能で、筐体内部への水やゴミの浸入を防ぐ多入力押釦スイッチの発明が記載されている。
【0010】
特許文献2(特開平9−306283号公報)には、押釦の小型化・高密度化した配置が可能で、ゴム部材からなるキートップ部材の押釦の頭部操作端の面積を大きく確保し、操作性を向上させることが可能な押釦装置の発明が記載されている。
また、特許文献2に記載の押釦装置では、キートップ外側縁に堀部を設け、遮光・防水効果を得ることとしている。
【0011】
特許文献3(特開平11−224558号公報)には、ゴム材料の防水押圧部材を、ボディの開口部を水密に塞ぐように接着剤でボディに固定し、さらに、防水押圧部材の上に操作部材を別個に設置し、押圧操作面を大きく確保することのできる防水押しボタンスイッチの発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−259686号公報
【特許文献2】特開平9−306283号公報
【特許文献3】特開平11−224558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の特許文献等に記載された従来の押釦装置では、外装部材の一部を、弾性力を有するゴム部材等により封止し、筐体外部から操作できるように外装表面を柔軟にしただけで、ユーザが押釦装置を安定的に押下できるようにするという操作性まで十分に考慮されていない課題が存在する。
【0014】
特許文献1に記載された発明では、操作釦が多方向へ傾くことにより、複数の押圧スイッチを直接押圧可能としており、ユーザの直進的な押釦操作はそもそも考慮されていない。
また、操作釦を、傾かせることで押圧スイッチを操作するため、押釦操作の安定性とクリック感を得ることが難しくなっている。
また、組み立てによるゴムスイッチの位置決め精度によっては、多入力押釦スイッチの防塵防滴性能が変化してしまうおそれがある。
【0015】
特許文献2に記載された発明では、押釦装置のキートップ部材に直接形成された頭部操作端をユーザが操作するため、操作面積が小さくなり、操作性に欠ける。
【0016】
さらに、特許文献2に記載された押釦装置において、ユーザのための操作面積を大きく確保すると、すなわち押釦の頭部操作端の面積を大きくすると、頭部操作端が傾きやすくなり、押釦操作の安定性が悪くなってしまうおそれがある。
また、押釦装置のキートップ部材を挟持する外カバー(外装部材)と基板(ベース部材)との挟持状態、位置決め状態により、防塵防滴性能が変化してしまうおそれがある。
【0017】
特許文献3に記載された発明では、押圧操作面の大きな操作部材が間接的に防水被押圧部材を押下する機構のため、特許文献2に記載された押釦装置に比べ、ユーザにとっての操作面積が大きく確保されやすく、ある程度操作性が良いと言える。
しかしながら、押釦操作の安定性及びクリック感までは十分に考慮されていない。特許文献3に記載の防水押しボタンスイッチにおいて、操作部材には、ボディの案内溝に沿って移動できる案内突起が形成されているものの、軸線方向の移動の安定性にはまだ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の発明は、外装カバーと、軸部が形成された押釦カバーと、貫通穴を有する筒状部と該筒状部を包囲するスカート部が形成された押釦ゴムと、軸ガイド部が形成された押釦ゴム押えとを有し、押釦ゴムの筒状部の貫通穴に押釦カバーの軸部が挿設され、さらに押釦カバーの軸部の先端は押釦ゴム押えの軸ガイド部にガイドされ、押釦ゴムは押釦ゴム押えにより外装カバーへ圧接される、ことを特徴とする防塵防滴機構を有する押釦装置を提供する。
【0019】
また、本発明に係る第2の発明は、外装カバーには密閉突起部が形成され、密閉突起部が押釦ゴムへ圧接することにより防塵防滴となる、ことを特徴とする第1の発明の防塵防滴機構を有する押釦装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、十分な防塵防滴性能を維持しつつ、かつ、直進的な押釦操作をすることが可能であり、また、適度なクリック感を得ることが可能である、ユーザの操作性を確保した、防塵防滴機構を有する押釦装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の防塵防滴機構を有する押釦装置の分解斜視図である。
【図2】押釦を複数有するカメラボディ背面の斜視図である。
【図3】押釦カバーの単体斜視図である。
【図4】押釦ゴムの単体斜視図である。
【図5】本実施例の押釦装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る防塵防滴機構を有する押釦装置の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
各図面において、同一部材は同一番号で示すこととする。
【0023】
図2は、押釦を複数有するカメラボディ背面の斜視図である。
【0024】
本発明は、本実施例に係るカメラボディの他にも、ビデオカメラ、ケータイ電話、時計などの携帯電子機器、若しくは電化製品等に適用可能である。すなわち、筐体内部へ埃や液体等の異物が浸入させてはならず、かつ、押釦装置を設置することが必要なあらゆる製品に適用可能である。
【0025】
本実施例のカメラボディにおいて、ユーザが操作可能である物理的な押釦装置を設けるには、筐体内部の電子基板等に設けられたスイッチへアクセスするため、外装カバーに開口部を形成することは回避できない。
したがって、外装カバーにやむを得ず開口部が形成されることで、操作部材と開口部との隙間から埃や液体などの異物が外部から筐体内部へ浸入し、カメラボディ等の電子機器を故障させてしまうおそれが発生してしまう。
【0026】
本発明は、外装カバーに形成された開口部と操作部材との隙間から異物が浸入したとしても筐体内部にまで浸入しない、防塵防滴機構を有する押釦装置を提供する。
【0027】
図1は、本実施例の防塵防滴機構を有する押釦装置の分解斜視図である。
【0028】
図1において、101は外装カバー、102は押釦カバー、103は押釦ゴム、104は押釦ゴム押え、105はビスを示す。
【0029】
外装カバー101は、カメラボディ背面の筐体全体を覆うカバーであり、押釦装置や表示装置等を設置するための開口部101aが複数形成されている。
【0030】
外装カバー101内側に形成された開口部の周囲には、密閉突起部101bが形成されている。
後述するように、外装カバー101は押釦ゴムと密閉突起部101bとが密接することで、外装カバー101の開口部101aから異物が浸入したとしても、それ以上、カメラボディの筐体内部へ異物が浸入することを阻止している。
【0031】
押釦カバー102は、図3(押釦カバーの単体斜視図)で詳細に示すように、ユーザが押釦操作するための操作部102aと、操作部102aを取り囲んで外装カバーにより移動が規制されるためのフランジ部102bと、操作部102aと回転中心軸を同軸にした軸部102cとが一体的に形成されている。
【0032】
押釦ゴム103は、図4(押釦ゴムの単体斜視図)で詳細に示すように、外形は、外装カバー101の所定の位置に裏側から位置決めされるように形成されている。
【0033】
また、押釦ゴム103には、複数の押釦カバー102それぞれに対応する位置に、筒状部103aが形成されており、さらに筒状部103aの回転中心部には、押釦カバー102の軸部102cが挿設されるための、貫通穴103bが形成されている。
【0034】
押釦ゴム103は、ゴム部材等の弾性素材からなり、その弾性力によって、押釦カバー102の軸部102cが、押釦ゴム103の筒状部103aの貫通穴103bに隙間なく挿設されることとなるため、カメラボディの筐体内部に埃や液体等の異物が浸入しない構造となっている。
【0035】
また、押釦ゴム103の筒状部103aの周囲は、スカート部103cで包囲されており、スカート部103cの形状記憶作用により、ユーザは押釦操作のクリック感を得ることができる。
【0036】
図1の分解斜視図では、フレキシブル基板を不図示としているが、フレキシブル基板は、押釦ゴム103と押釦ゴム押え104との間、すなわち押釦ゴム103の筐体内部側に配置されている。
本実施例の押釦装置では、フレキシブル基板が、押釦ゴム押え104を包むように設置されており、後述する本実施例の押釦装置の断面図(図5)において説明する。
【0037】
次に、図5の本実施例に係る押釦装置の断面図を用いて、本発明の防塵防滴機構について詳細に説明する。
【0038】
図5に示す断面図は、図2に示すカメラボディ背面において、X−X断面にあたる本実施例の押釦装置の断面図である。図5において、106は、フレキシブル基板を示す。
【0039】
前述したように、フレキシブル基板106は押釦ゴム押え104を包むように設置されており、押釦ゴム押え104の上下面はフレキシブル基板106で覆われている。
また、フレキシブル基板106は、特に押釦ゴム103と押釦ゴム押え104との間において、ビス105による押釦ゴム押え104と外装カバー101との間の圧接力により保持されている。
【0040】
押釦ゴム103のスカート部103c上部は、筐体内部側の押釦カバー102のフランジ部102b下部と接している。
ユーザにより押下されていない場合、押釦ゴム103は、スカート部103cの弾性力による形状記憶作用で、押釦カバー102のフランジ部102bを外装カバー101側へ向かって押し上げている。
図5の断面図では、押釦ゴム103の弾性力を表すため、押釦ゴム103のスカート部103c上部と押釦カバー102のフランジ部102b下部とが重なるように図示している。
【0041】
押釦カバー102がユーザにより押下された場合には、押釦カバー102がスカート部103cを変形させるため、ユーザは押釦操作時のクリック感を得ることができる。
また、押釦ゴム103の筒状部103aの貫通穴103bと、押釦カバー102の軸部102cとの間は、隙間なく密接に挿設されているため、押釦操作時であっても互いに摺動することはない。したがって、押釦ゴム103の筒状部103aの貫通穴103bから異物がカメラボディの筐体内部へ浸入することを防止できる。
【0042】
外装カバー101側の押釦カバー102のフランジ部102bは、押釦ゴム103のスカート部103cの弾性力により、外装カバーの開口部101a周囲と接している。
【0043】
押釦カバー102の軸部102cは、押釦ゴム103の筒状部103a及びフレキシブル基板106を貫き、その先端で押釦ゴム押え104の軸ガイド部104aにガイドされている。
【0044】
押釦ゴム押え104の軸ガイド部104aは、押釦カバー102が押下された時に、押釦カバー102の軸部102cの先端が、ガイドされるために形成された構造である。
【0045】
また、上述したように、押釦ゴム103の筒状部103aの貫通穴103bと押釦カバー102の軸部102cとの嵌合で押釦装置の防塵防滴性能が既に達成されているため、押釦ゴム押え104の軸ガイド部104aと押釦カバー102の軸部102c先端との嵌め合いは、押釦操作時に適度に摺動できる程度の精度で構わない。
【0046】
押釦カバー102の軸部102cの先端が押釦ゴム押え104の軸ガイド部104aでガイドされることにより、押釦カバー102の押下時における直進性が確保され、ユーザはぐらつきのない安定した押釦操作をすることが可能となる。
【0047】
押釦ゴム103は、複数のビス105により押釦ゴム押え104で外装カバー101へ向かって圧接されている。
また、特に押釦カバー102を設置するために外装カバー101内側に形成された開口部101a周囲の近傍には、密閉突起部101bが形成されており、押釦ゴム103が、密閉突起部101bで外装カバー101に圧接することで、外装カバー101の開口部101aから埃や液体等の異物が浸入したとしても、それ以上筐体内部へ浸入することを強力に防止できる。
【0048】
次に、押釦装置における押釦操作の動作について説明する。
【0049】
ユーザが押釦カバー102の操作部102aを押下すると、筐体内部側の押釦カバー102のフランジ部102bが押釦ゴム103のスカート部103cを変形させ、スカート部103cに支持されている筒状部103aがフレキシブル基板106へ向かって押し込まれる。
【0050】
また、この時、押釦カバー102の軸部102cは、その先端で押釦ゴム押え104の軸ガイド部104aに沿って摺動するため、押釦ゴム103の筒状部103aは、押釦カバー102とともに直進的に安定して移動される。
また、押釦ゴム103のスカート部103cは、筒状部103aの貫通穴103bの軸方向に沿って直進的に変形されるため、押釦カバー102全体に対して偏りが無くバランスの良いクリック感を与えることができる。
したがって、本発明に係る押釦装置では、ユーザは押釦操作において適度な安定性とクリック感を得ることが可能である。
【0051】
押釦ゴム103の筒状部103aがフレキシブル基板106へ接触するまで達すると、押釦装置を操作したことによる電気的なスイッチ信号がカメラボディへ命令される。
本実施例では、押釦操作による電気的なスイッチ信号をカメラボディに与えるための部材としてフレキシブル基板を示したが、ハード基板等の他の種類の電子基板を採用することも可能である。
【0052】
ユーザが押釦カバー102の押下を解除すると、押釦ゴム103のスカート部103cの弾性力により、押釦カバー102及び押釦ゴム103の筒状部103cが上方へ復帰するように外装カバー101へ向かって移動され、押釦操作が終了する。
【0053】
本実施例において、押釦ゴム押えは、押釦ゴムを外装カバーに対してビスにより圧接させている。その際、特に外装カバーの開口部周囲の近傍に形成された密閉突起部が押釦ゴムに圧接することとなる。
これにより、押釦ゴムに形成されたスカート部周囲において、外装カバーの密閉突起部が押釦ゴムへ圧接するため、電子機器等の防塵防滴性能が強固に維持される。
【0054】
また、本実施例において、押釦ゴム押えには、押釦カバーに形成された軸部の先端をガイドするための軸ガイド部が形成されている。軸ガイド部は、押釦カバーの軸部を上下に摺動させるためのガイドとなる。
これにより、ユーザは、押釦カバーの押釦操作に直進性を得られることができ、押釦操作の安定感と押釦ゴムからの適度なクリック感を得ることができる。
【0055】
以上に説明した通り、本発明により、防塵防滴性能を確保しながら、かつ、押釦操作の安定感とクリック感を得ることが可能な、防塵防滴機構を有する押釦装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
101 外装カバー
102 押釦カバー
103 押釦ゴム
104 押釦ゴム押え
105 ビス
106 フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装カバーと、
軸部が形成された押釦カバーと、
貫通穴を有する筒状部と該筒状部を包囲するスカート部が形成された押釦ゴムと、
軸ガイド部が形成された押釦ゴム押えとを有し、
前記押釦ゴムの筒状部の貫通穴に前記押釦カバーの軸部が挿設され、
さらに前記押釦カバーの軸部の先端は前記押釦ゴム押えの軸ガイド部にガイドされ、
前記押釦ゴムは前記押釦ゴム押えにより前記外装カバーへ圧接される、ことを特徴とする防塵防滴機構を有する押釦装置。
【請求項2】
前記外装カバーには密閉突起部が形成され、密閉突起部が前記押釦ゴムへ圧接することにより防塵防滴となる、ことを特徴とする請求項1に記載の防塵防滴機構を有する押釦装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216353(P2012−216353A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79827(P2011−79827)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】